指名手配になる条件とは?逃げるリスクや今後の流れについても詳しく解説

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指名手配とは「逮捕状が発布されている被疑者のうち、所在が不定である場合に全国の警察に被疑者検挙のために必要となる事項を手配すること」です。

罪を犯した人は、警察等の捜査機関が捜査を行い、被疑者を特定して逮捕したり聴取したりして検察へ送致します。その後、起訴された場合は刑事裁判を受けるのが一般的な流れです。

しかし、罪を犯してしまった人の中には、逮捕されるのが怖くてそのまま逃亡してしまう人がいます。結果的に所在がわからなくなった場合に指名手配として全国の警察に情報が共有されるのです。

この記事では、「指名手配になる条件とは?」「逮捕されたらどうなるの?」など、さまざまな不安や疑問について解説しています。指名手配について詳しく知りたい人は、本記事をぜひ参考にしてください。

目次

指名手配とは

指名手配とは、「逮捕状が発布されている被疑者のうち、所在が不定である場合に全国の警察に被疑者検挙のために必要となる事項を手配すること」です。

簡単に言うと以下3つの要件を満たしている場合に、指名手配となる可能性があります。

  • 逮捕状が出ている被疑者であること
  • 所在が不定であること
  • 全国の警察に被疑者検挙に必要な事項を手配すること

難しい単語が数多く出てきていますが、詳しく解説しますのでぜひ参考にしてください。

逮捕状が出ている被疑者であること

指名手配の条件のひとつとして「逮捕状が出ている被疑者であること」が挙げられます。ひとつひとつ、詳しく解説します。

まず、被疑者とは「犯罪の疑いをかけられている人のうち、起訴される前の者」を指します。たとえば、Aという人が何らかの罪を犯し、警察から犯人として疑われている状態を「被疑者」と言います。被疑者になると、警察から事情聴取を受けたり、逮捕されたりしてしまう恐れがあるため注意しなければいけません。

そして、「起訴される前の者」というのは、罪を犯した人は最終的には刑事裁判を受けて判決が言い渡され、判決に従って刑罰を受けることになります。刑事裁判を行うためには、検察官が「起訴」をする必要があります。

起訴とは、「検察官が裁判官に対して起訴状を提出し、刑事裁判を提起すること」と考えておけば良いです。つまり、検察官が裁判官に対して起訴状を提出する前の状態であり、警察等から犯罪の疑いをかけられている人を「被疑者」と呼ぶと考えておけば良いでしょう。

そして、被疑者を逮捕するためには、原則、裁判官から逮捕状を発布してもらわなければいけません。なぜなら、「逮捕」という行為は、被疑者の身柄を拘束するための手続きであり、自由を奪うことになってしまうためです。

警察等の捜査機関が犯罪の内容を精査し、Aが罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠を揃え、裁判官に逮捕状の請求を行い、発布されるというのが一連の流れです。

【ポイント】

罪を犯した被疑者は必ずしも逮捕されるとは限りません。逮捕されるためには、証拠隠滅の恐れや逃亡の恐れなど、さまざまな要件を満たしている必要があります。指名手配の場合は「逮捕状の発布」が条件となっています。

なお、逮捕状の有効期限は、原則として発布から7日間です。しかし、指名手配される被疑者の場合は、所在がわからないため、7日間を超える期間が定められるケースもあります。

所在が不定であること

指名手配される要件の一つとして「所在が不定であること」が挙げられます。所在が不定であることというのは、被疑者がどこにいるかわからない状態を指します。

警察等の捜査機関は、被疑者が特定でき次第、被疑者の勤務先や生活サイクルを確認したりするなどして、逮捕へ向けた準備を進めていきます。しかし、これらの内偵捜査を行うためには、前提として被疑者の所在がわかっていなければいけません。

通常、被疑者が特定された時点で住所や氏名等が発覚するため、そこから勤務先や生活サイクルなど、逮捕をするために必要となる準備をスムーズに進められます。しかし、中には所在がまったくわからない被疑者も存在し、そういった人たちが指名手配の対象となります。

いわゆる「逃亡」をしている被疑者については、所在が不定であると判断されることになるでしょう。たとえば、偽名を使って働いていたり、海外へ逃亡をしたりしている被疑者は所在を把握することができず、指名手配の対象になります。

全国の警察に被疑者検挙に必要な事項を手配すること

指名手配は「全国の警察に被疑者検挙に必要な事項を手配すること」を指します。通常、事件が発生すると、事件が発生した場所を管轄する警察署が捜査を行います。

たとえば、東京都で事件が発生した場合は、警視庁にある警察署に本部が置かれ、捜査を行うのが一般的です。大きくみると「警視庁」があり、東京都の各地域に警察署があるため、事件が発生した場所を管轄する東京都の警察署が事件を担当することになります。

そのため、たとえば被疑者が東京都で事件を起こして北海道へ逃亡している場合であっても、東京都の警察が北海道まで出向き、捜査を行うのが通常です。

なぜなら、事件が発生したのは東京都であるため、事件が発生した場所を管轄する警察署が事件を捜査しているためです。東京で発生した事件をわざわざ北海道の警察に伝え、北海道の警察署で捜査をすることは基本的にありません。

しかし、指名手配をすることによって、全国の警察に被疑者検挙に必要となる事項を手配します。つまり、東京都で事件を起こした被疑者の情報を北海道を含む全国の警察に手配することによって、各都道府県の警察官が情報を知っている状態になるということです。

結果的に「所在が不定である被疑者」を検挙しやすくなるのです。つまり、逃亡している可能性のある被疑者を逮捕しやすくするために行うのが、指名手配であると考えておけば良いでしょう。

指名手配の種類

指名手配は、「逮捕状が発布されている被疑者のうち、所在が不定である場合に全国の警察に被疑者検挙のために必要となる事項を手配すること」であり、以下3つの種類があります。

  • 警視庁指定特別手配被疑者
  • 警察庁指定重要指名手配被疑者
  • 都道府県警察指定重要指名手配被疑者

次に、指名手配の種類について詳しく解説します。

警察庁指定特別手配被疑者

警察では、指名手配犯のうち「とくに重大な犯罪指名手配被疑者」については、警察庁指定特別手配被疑者として指名手配を行っています。警察庁指定特別手配被疑者は、具体的に全国的に強力な組織捜査を行う必要がある被疑者に対して行われるものです。

日本国内で行われる指名手配の中では、もっとも重大な指名手配の種類であると考えておけば良いでしょう。

先ほど東京都を管轄する警察のことを「警視庁」と呼ぶと解説しました。警視庁に似た組織として「警察庁」があります。警察庁は日本の行政機関の一つであり、警察組織の一括管理・運営を行う中央機関であり、まったく異なります。

警察庁指定特別手配被疑者に指定された指名手配犯は、ポスターに名前や似顔絵、生年月日などが掲載され、全国のお店や公衆浴場等、さまざまな場所で公開されます。

実際、外を歩いていて「指名手配犯ポスター」をみたことがある人も多いのではないでしょうか。そのポスターに記載されている人こそが「警察庁指定特別手配被疑者」と呼ばれる人たちです。

重大な事件を起こし、全国的に強力な組織捜査を行う必要があると判断された被疑者であるため、多くの人の目に付きやすいようにしています。

警察庁指定重要指名手配被疑者

警察庁指定重要指名手配被疑者とは、警察庁が凶悪犯罪もしくは広域犯罪の指名手配容疑者のうち、全国にある警察を挙げて検挙すべきと判断した場合に行われる指名手配です。凶悪犯罪とは、殺人や強盗、不同意性交等罪などの犯罪を指します。

広域犯罪とは、広い地域にわたって行われる犯罪であり、詐欺や連続殺人などが該当します。これらの犯罪で指名手配されている容疑者のうち、とくに重大な犯罪であり、全国の警察の協力が必要であると判断された場合に、「警察庁指定重要指名手配被疑者」となるのです。警察庁指定重要指名手配被疑者強化月間に併せて指定されます。

都道府県警察指定重要指名手配被疑者

都道府県警察指定重要指名手配被疑者とは、詐欺罪や常習的な窃盗、重大犯罪や広域犯罪のうち、組織をあげて捜査を行う必要性が高い場合に指定されます。

指名手配される条件

指名手配されるための条件は、「逮捕状が発布されていること」と「被疑者の行方がわからないこと」です。また、基本的にはとくに重大な事件である場合に指名手配となります。次に、指名手配されるための条件について詳しく解説します。

逮捕状が発布されていること

指名手配となるためには、被疑者に対して逮捕状が発布されていることが条件です。逮捕状とは、被疑者を逮捕するために必要となる書類であり、警察官等が請求をして裁判官が発行します。

逮捕という行為は、被疑者の身柄を強制的に拘束するための手続きであるため、罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠がなければいけません。そのため、まずは事件が発生した場所を管轄する警察署が事件を捜査し、証拠を集めたうえで容疑者を特定し、裁判官に対して逮捕状を請求します。

もし、逮捕状が発布されていない状態で被疑者を見つけたとしても、その人の身柄を拘束することは原則できません。たとえば、逮捕状が発布されていない状態で容疑者を見つけたとしても、その人を捕まえることができないため、あくまでも任意同行しか求めることができません。

もし、その場で逮捕することができなければ、また逃走されてしまう可能性もあります。そのため、必ず逮捕状が発布されていることが条件となります。

なお、逮捕状が手元になくても逮捕できる方法として「緊急逮捕」というものがあります。緊急逮捕は、指名手配犯のように重大な事件を犯したことが明らかである被疑者を発見した場合に、逮捕状がなくても逮捕できる方法です。

緊急逮捕を行った場合は、「直ちに逮捕状を請求しなければいけない」という条件があります。

被疑者の行方がわからないこと

指名手配するためには、被疑者の行方が不明であることが条件です。指名手配をすることによって、全国の警察署に情報が共有されます。

もし、被疑者の場所を特定できており、生活サイクルなどの内偵捜査を行っている場合は、そもそも全国の警察署に情報を共有する必要がありません。なぜなら、所轄警察署の捜査員が被疑者の生活サイクルを捜査したうえで逮捕に踏み切れば良いためです。

つまり、指名手配される被疑者は、「行方がわからないため、全国の警察に情報を提供して、被疑者検挙に協力してもらう」ための制度であると考えれば良いでしょう。

軽微な指名手配されることは稀

指名手配される事件の多くは、凶悪犯罪や広域犯罪、常習性のある犯罪等です。たとえば、殺人や強盗、不同意性交等罪や詐欺罪のように重大な事件や広域にわたる犯罪等です。

犯罪には多くの種類があり、軽微なものから重大なものまであります。軽微な犯罪、たとえば軽犯罪法違反に抵触するような犯罪の場合は、指名手配をするケースは稀です。

なぜなら、軽犯罪法に抵触するような軽微な犯罪の被疑者一人一人をすべて指名手配していればキリがありません。日々、さまざまな犯罪が発生している中で、全国の警察官がすべての指名手配犯の情報を記憶し、協力をすることは非常に困難です。

そのため、基本的には重大な犯罪を犯した被疑者のみ、指名手配の対象となるのです。とはいえ、指名手配の条件は「逮捕状の発布」と「被疑者の行方がわからないこと」であるため、軽微な犯罪であっても必ずしも指名手配されないとは限りません。

指名手配されるまでの流れ

指名手配は「逮捕状が発布されている被疑者のうち、所在が不定である場合に全国の警察に被疑者検挙のために必要となる事項を手配すること」です。そのため、重大な犯罪を犯したからといって、直ちに指名手配されてしまうわけではありません。

指名手配されるまでには、大まかな流れがあります。大まかな流れは、基本的には通常の事件同様に進んでいきますが、指名手配される被疑者は、所在が不定であるため少し異なる場合があります。

次に、事件が発生してから実際に指名手配されてしまうまでの流れについて詳しく解説します。

犯罪発生

指名手配犯は「被疑者」が対象となるため、初めに何らかの犯罪が発生します。どのような犯罪であっても指名手配の可能性はあるものの、基本的には重大な事件が発生した場合に指名手配となります。

たとえば、殺人事件や強盗事件、詐欺事件や不同意性交等罪のような重大事件が発生した場合に指名手配の対象となり得るため注意しましょう。なお、犯罪発生時点ではまだ、指名手配にはなりません。

指名手配は「逮捕状が発布されている被疑者のうち、所在が不定である場合に全国の警察に被疑者検挙のために必要となる事項を手配すること」であるため、まずは初動捜査を開始します。

捜査

警察は、事件が発生してすぐに初動捜査を開始します。初動捜査とは、現場到着後に現場に残されている証拠を集めたり、周辺の人に聞き込みを行ったり、防犯カメラの映像を確認するなどの捜査を初動捜査と言います。

初動捜査は警察組織の中でも非常に重要視されています。なぜなら、犯罪が行われた直後は、人の記憶も新鮮であり、物的な証拠も数多く残されている可能性が高いためです。そのため、初動捜査の時点でおおよその容疑者を絞り込めている事件もとても多いです。

容疑者をある程度絞り、裏付け捜査も行います。裏付け捜査とは、容疑者が犯人であることを裏付けるための証拠集めです。

たとえば、犯罪現場に犯罪で使われた凶器が残っていたとしましょう。この凶器に指紋が残っている場合、警察にデータとして保存してある個人の指紋と照会し、特定を急ぎます。

必ずしもデータがあるとは限らないものの、さまざまな証拠等を集めて裏付け捜査を行い、犯人を特定していく流れです。

裏付け捜査が必要な理由は、逮捕という行為が人の自由を奪う行為であるためです。本記事で何度も解説しているとおり、逮捕という行為は罪を犯した疑いのある人の身柄を強制的に拘束するための手続きです。

そのため、「罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠」がなければ、逮捕状は発布されません。十分な証拠を集めたうえで、誰がみても「この人が犯人であることに間違いない」と思われる証拠を揃える必要があるのです。

また、たとえ罪を犯した人であっても、裁判で刑罰が確定するまでは、推定無罪の原則に従わなければいけません。推定無罪の原則とは、裁判で有罪判決が確定するまでは、無罪であるものとして扱われなければいけない原則です。

逮捕をすると、その人の身柄を拘束されてしまうため、その人は自由を奪われてしまうことになります。もし、逮捕された人が何ら罪を犯していない人であれば、「何も罪を犯していないにも関わらず、警察によって自由を奪われてしまった」という状況になります。このような状況は、絶対にあってはいけません。

上記のことから、警察等の捜査機関は慎重に捜査を行う、裏付けをとって裁判官に対して逮捕状の請求を行います。

逮捕状の発布

警察が裁判官に対して逮捕状を請求すると、裁判官は警察から渡された書類の内容を確認し、「罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠がある」と判断した場合に逮捕状を発布します。

すべての事件において、逮捕状を請求したからといって発布されるわけではありません。何度もお伝えしている通り、逮捕という行為で間違いがあってはいけないため、十分な証拠を揃え、裁判官が「罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠がある」と判断した場合のみ、逮捕状が発布されるのです。

通常、逮捕の準備を進める段階で、被疑者が特定されているため、被疑者の生活サイクルを確認する捜査を行います。基本的には、容疑者の自宅近くに張り込み、毎日何時頃に家を出てどこへ行くのか。何時頃に帰宅をするのか、といったことを確認します。

逮捕は、被疑者に知られないように行う必要があるため、必ず生活サイクルの確認を行って「必ずいる時間帯」を狙って逮捕を決行します。万が一、生活サイクルを確認せずに行ってしまえば、逮捕を行おうとしても「被疑者がいなかった」ということも起こり得ます。

そうすると、「自分が逮捕されるかもしれない」と気付き、すぐさま逃亡されてしまうリスクがあります。逃亡のリスクを回避するためにも、必ず生活サイクルを確認して逮捕のタイミングを伺います。

ただし、指名手配される被疑者の場合は、所在がわからないため、逮捕状が発布されても直ちに逮捕することができません。生活サイクルを探ろうとしても、被疑者がどこにいるかわからないため、把握することができないため、指名手配となります。

指名手配

通常は、逮捕状が発布される前に生活サイクルを確認して逮捕を行います。しかし、罪を犯した直後に逃亡した被疑者は、所在がわからないため、直ちに逮捕することができません。

もちろん、所轄の警察は被疑者が隠れていそうな場所を探します。たとえば、家族や友人、恋人の自宅等を重点的に捜査するものの、それでもなお、発見に至らない場合は指名手配として全国の警察に情報共有して検挙を目指します。

指名手配されるとどうなる?

指名手配をされてしまうと、以下のことが起こり得ます。

  • 全国の警察に情報が渡される
  • ポスターが配布される
  • 警察署HPで公開される

すべての指名手配犯が上記の影響を受けるわけではありません。指名手配の種類によっても、今後起こり得ることは異なります。

しかし、一つ言えることは、これまで以上に生活がしづらくなるということです。全国に指名手配をされてしまうと、どこにいても周りの人から通報されてしまうのではないか?逮捕されてしまうのではないか?と、さまざまな不安を抱えることになるでしょう。

就職をすることもできない、家を借りることもできない、外を出歩くことも難しいというのが現実です。そのため、罪を犯した事実があるのであれば、直ちに出頭して罪を償い、人生をリスタートしたほうが良いでしょう。

次に、指名手配をされてしまった場合に起こり得ることについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

全国の警察に情報が渡される

指名手配された場合、全国の警察に被疑者の情報が共有されます。主に顔写真や似顔絵、年齢や特徴、犯した罪やその他知り得る情報です。

全国の警察に情報が渡ることによって、情報共有された警察官はすべて頭の中に情報を入れます。結果的にパトロール中や捜査中など、指名手配被疑者に似ている人物を発見した場合は、職務質問をしたり逮捕したりしやすくなるため、被疑者検挙に繋がりやすくなります。

ポスターが配布される

一定の重大な指名手配犯に指定された場合は、ポスターが配布され、民間の店舗等で誰でも目につく場所に張り出されます。結果的に、一般の人からも情報提供を受けやすくなります。

なお、中には「すべての指名手配犯をポスター等で公開すれば良い」と考える人がいるかもしれません。しかし、これはあまり現実的ではありません。

なぜなら、2024年8月末時点で590人以上の指名手配犯がいると言われています。これだけ大人数のポスターを貼ることは困難であり、とくに重大な犯罪を犯している人が見つけにくくなってしまいます。

また、一般の人からの情報提供の中には、誤った情報が含まれていることも多いです。590人もの指名手配犯を公開し、誤った情報が多くあれば、警察の職務にも多大な支障をきたす恐れがあります。

そのため、ポスターとして公開される指名手配は、一部の重大な事件を犯した人に限定されています。

警察署HPで公開される

ポスターにて公開されないまでも、警察署のHPで公開されてしまう可能性があります。警察のHPに公開されることによって、誰でも指名手配犯の顔や情報を確認できるようになります。結果的に、被疑者検挙に繋がりやすくなります。また、被疑者は捕まりやすくなるでしょう。

指名手配された場合のリスク

指名手配された場合は、以下のようなリスクが発生します。

  • 身柄拘束のリスク
  • 日常生活に大きな影響
  • 自首は成立しない

次に、指名手配された場合のリスクについても詳しく解説します。

身柄拘束の可能性が高い

指名手配されている被疑者は、逮捕状が発布されているため、見つかり次第必ず身柄拘束が発生します。その後、事件は検察官へ引き継がれますが、その際も引き続き勾留(身柄拘束)される可能性が高いでしょう。

勾留は、逮捕同様に「証拠隠滅の可能性」もしくは「逃亡の可能性」がある場合に限って認められます。

指名手配されているということは、罪を犯した後に逃亡しているため、「逃亡の可能性が高い」と判断されてしまいます。結果的に、長期間にわたる身柄拘束が発生することになるでしょう。

なお、勾留が確定し、保釈請求も認められなかった場合は、刑罰が確定するまで半年〜1年程度(事件の内容による)は身柄拘束が続くでしょう。その後、自由刑の実刑判決が確定した場合は、さらに長期間にわたる身柄拘束が続きます。

【自由刑とは】
自由刑とは、懲役刑や禁錮刑、拘留のように身柄拘束を伴う刑罰です。2025年6月1日以降は、懲役刑と禁錮刑が一本化され、「拘禁刑」という刑罰に変更となります。懲役刑は、刑務作業が義務付けられている一方で、禁錮刑は義務付けられていません。これらが一つの刑罰としてまとめられます。

日常生活に大きな影響を与える

指名手配されてしまうと、日常生活を送ることが難しくなります。なぜなら、全国の警察に情報が共有されてしまうためです。

外を歩いていれば「捕まるのではないか?」と不安に感じ、誰も信用することができなくなるでしょう。さらに、就職することも難しいため、日々を生活するための費用を稼ぐことも難しくなります。

また、住居を借りることも難しく、友人や知人、恋人や家族の周辺にも警察から連絡が入っているため、会うことはできません。一般的な日常生活を送ることすらもできなくなってしまうのが「指名手配」というものです。

さまざまなストレスを感じながら日々を過ごさなければいけないため、できるだけ早く出頭をしたうえで、罪を償ってしまったほうが自分自身も楽になるでしょう。

「自首」は成立しない

指名手配されている時点で「自首」は成立しません。そもそも「自首」とは、犯罪事実や被疑者が特定されていない状態で自ら警察等に出頭することを言います。自首をすることによって、減刑されるため、被疑者にとっても大きなメリットになります。

しかし、指名手配されている被疑者の場合は、事件が発覚しているうえに被疑者としても特定されています。そのため、これから警察署等に出頭をしたとしても自首は成立せず、あくまでも「出頭」として扱われてしまうのです。

出頭の場合は、減刑規定がないため、原則減刑されることはありません。つまり、被疑者にとっては一切のメリットがないということです。

ただし、自ら名乗り出ていることを考慮して、少なからず情状に影響を与える可能性はあるでしょう。自首の場合は大幅な減刑が認められることは、刑事訴訟法という法律によって定められています。しかし、出頭であれば減刑による規定が法律で定められていないため、覚えておきましょう。

また、長きにわたって逃亡生活を送っていることによって、被害者の処罰感情は非常に厳しくなります。さらに、情状にも影響を与えるため、結果的に重い罪が科される可能性が高いです。

そのため、可能であれば指名手配される前にできるだけ早めに自ら出頭することを検討しましょう。

なお、1人で出頭するのが怖い、と感じる場合は弁護士等に付き添ってもらうこともできます。1人で不安な場合は、まずは弁護士へ相談をしたうえで今の不安を伝え、不安を解消してから相談をするのも一つの手段です。

指名手配後に逮捕された場合の流れ

指名手配後に逮捕された場合、その後はどのように事件は進んでいくことになるのか?と不安や疑問を抱えている人も多いのではないでしょうか。次に、指名手配犯が逮捕された後の流れについても詳しく解説します。

逮捕

指名手配犯は全国の警察に情報が共有されているため、発見され次第すぐに逮捕されるでしょう。逮捕は「現行犯逮捕」「緊急逮捕」「通常逮捕」の3種類ありますが、指名手配犯の場合は緊急逮捕もしくは通常逮捕となるのが一般的です。

緊急逮捕は、指名手配犯など緊急を要する場合に行える逮捕です。緊急逮捕は、逮捕状がなくても逮捕することはできますが、直ちに逮捕状を請求しなければいけません。

通常逮捕は、通常通りの逮捕の手段であり、逮捕状を請求したうえで被疑者に逮捕状を見せて逮捕する手続きです。いずれの場合も「逮捕」であることに変わりはなく、その後の手続きに変わりはありません。

逮捕された場合は、身柄を拘束されます。その後、48時間以内に検察官へ事件を送致しなければいけないため、初めの48時間の間で事情聴取等を行います。この間は、警察署内にある留置所と呼ばれる場所で生活を送ることになります。

事件の送致・勾留請求

逮捕から48時間以内に検察官へ事件を送致します。事件を引き継いだ検察官は、引き続き被疑者の身柄を拘束する必要があるかを判断し、必要があると判断された場合は、裁判官へ「勾留請求」を行います。

勾留請求を行うかどうかはさらに24時間以内に判断しなければいけません。勾留請求を行った場合は、被疑者を連れて裁判所へ行き、勾留質問を経て裁判官が勾留の有無を決定することになります。

なお、指名手配犯の場合はこれまで逃亡をしていた事実があるため、「逃亡の可能性が高い」と判断され、勾留請求が認められることになるでしょう。そして、勾留が認められると初めに10日間の身柄拘束が可能となります。

さらに、10日間の勾留延長が認められるケースが多いため、結果的に20日間の勾留が認められることになるでしょう。そのため、この時点で最長23日間の身柄拘束が発生することになると思っておけば良いです。

起訴・不起訴の判断

勾留期間中に被疑者を起訴するか不起訴とするかを判断します。不起訴となった場合は、その時点で事件は終了します。しかし、指名手配されるほどの事件を起こしている以上、不起訴処分となる可能性は限りなくゼロに近いでしょう。

そして、起訴には大きく分けて「略式起訴」と「正式起訴」の2種類があります。略式起訴は、100万円以下の罰金に対してのみ行える起訴方法であり、指名手配されるほどの事件を起こしている人に適用されるケースは少ないため、ここでは詳しく解説しません。

正式起訴された場合は、刑事裁判を開きます。刑事裁判で判決が確定次第、罪を償うことになります。

なお、起訴された被疑者は呼び方が「被告人」に変わります。その後、保釈請求を行うことができ、認められれば保釈金を支払って、一時的に社会へ戻ることができます。

しかし、指名手配されてしまっている人は重大な事件を起こしているうえに逃亡の恐れがあると判断されやすいため、保釈請求は難しいでしょう。仮に認められれば、判決が確定するまでは、一部制限はあるものの日常生活を送れます。

刑事裁判

刑事裁判では、あなたの犯した罪について審理し、有罪か無罪かを判断します。日本の刑事事件では、起訴をされた時点で99%の確率で有罪判決が確定すると言われています。

なぜなら、逮捕の時点から「罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠があること」が条件であるためです。身柄を拘束する以上、絶対に間違い(冤罪)があってはいけません。そのため、警察や検察官も証拠を集め、確固たる証拠を元に起訴をしているため、無罪判決が下されるケースは稀です。

有罪である場合は、どの程度の刑罰に処するのが妥当かを判断し、被告人に言い渡します。

刑罰に従って刑に服する

判決が確定すると、その刑罰に従って刑に服します。自由刑である場合は、一定期間刑務所へ収監されて刑務所内で生活を送ることになります。

【自由刑とは】
自由刑とは、懲役刑や禁錮刑、拘留のように身柄拘束を伴う刑罰です。2025年6月1日以降は、懲役刑と禁錮刑が一本化され、「拘禁刑」という刑罰に変更となります。懲役刑は、刑務作業が義務付けられている一方で、禁錮刑は義務付けられていません。これらが一つの刑罰としてまとめられます。

生命刑(死刑)であれば、拘置所と呼ばれる場所に収監されて、死刑を待ちます。死刑囚は、「死ぬこと」が刑罰であるため、刑務作業は義務付けられていません。

財産刑(罰金刑・科料・過料)であれば、金銭を納付して事件は終了しますが、支払えなければ労役場留置となります。労役場留置では、1日5,000円程度で刑務作業を行い、罰金を支払い終えるまでは社会に戻ることができません。

なお、労役場留置では原則土日が休みですが、1日5,000円として換算されて罰金等に充てられます。

指名手配の条件に関するよくある質問

指名手配の条件に関するよくある質問を紹介します。

Q.指名手配中は時効が停止しますか?

A.指名手配中も時効は停止しません。

指名手配中であっても時効は停止しませんが、そもそも時効がない犯罪によって指名手配されている場合は、時効成立の概念がありません。たとえば、殺人罪や強盗殺人罪のような重大な事件の場合は公訴時効がありません

また、被疑者が国外に逃亡している場合は、時効が停止するため注意しなければいけません。指名手配によって時効が停止することはないものの、時効の停止要件を満たしている場合は停止するため覚えておきましょう。

Q.自分が指名手配されているか確認する方法はありますか?

A.確認する方法はありますが、必ずしも特定できるとは限りません。

自分自身が指名手配されているかどうかを知りたい場合は、事件を起こした場所を管轄する警察署のHPを確認してみましょう。指名手配犯として名前や似顔絵、写真等が掲載されている場合は、指名手配されています。

ただし、掲載されていないからといって指名手配されていないとは限りません。本記事でも解説している通り、公開指名手配となるケースは指名手配の中でもとくに重大な事件を起こしている人です。

そのため、指名手配となっていても「公開指名手配」ではない限り、自分で確認をする方法はありません。たとえ軽い罪であっても、指名手配となっている可能性は考えられるため、早めに出頭をすることを検討したほうが良いでしょう。

Q.現在、日本では何人くらいの指名手配犯がいますか?

A.令和6年8月末時点で約590人です。

指名手配にはさまざまな種類がありますが、すべての指名手配犯を合計すると全国で590人に上ります。中でも、公開指名手配という手段を用いられた指名手配犯については、警察署のHPやポスターによって広く公開されます。

公開されていない指名手配犯を含めると、590人にも上ります。ちなみに指名手配犯の顔や特徴をすべて記憶し、捜査にあたっている捜査員のことを「見当たり捜査員」と呼ぶことがあります。

Q.指名手配犯の情報を提供したらお金をもらえるのですか?

A.懸賞金がかけられている指名手配犯の場合、お金をもらえる可能性があります。

公開指名手配されている被疑者のうち、懸賞金がかけられている被疑者の検挙につながるような、情報を提供した場合は「報奨金」をもらえることがあります。情報提供をしたとしても、情報の内容によって減額されることもあるため、必ずしも満額支給されるとは限りません。

なお、懸賞金は警察の予算の中に含まれている「捜査特別報奨金」と呼ばれる予算から決定し、重要な情報提供をしてくれた方へ報奨金を渡しています。他にも、被害者遺族が懸賞金を支払って情報提供を求めるケースもあります。

いずれにせよ、犯人逮捕につながるような重要な情報を提供することがとても大切です。とはいえ、たとえ些細な情報であっても、犯人検挙につながる可能性があります。積極的に情報提供をするようにしましょう。

Q.指名手配犯はどのように生活を送っているのでしょうか?

A.広く公開されているものではないため、詳細は不明です。

現在指名手配されている指名手配犯がどのような生活を送っているのかを知る術はありません。もし、知っているようであれば、警察の捜査がおよび、検挙につながっていることでしょう。

ただ、指名や写真を広く公開されてしまっている指名手配犯の場合は、同等と日常生活を送ることはできません。そのため、偽名を使い、その日暮らしの生活を送っていることが予想できます。

家族や友人、恋人にも会うことができずにストレスの溜まる逃亡生活を送っていることが予想できるでしょう。

まとめ

今回は、指名手配の条件について詳しく解説しました。

指名手配は「逮捕状が発布されている被疑者のうち、所在が不定である場合に全国の警察に被疑者検挙のために必要となる事項を手配すること」です。この条件を満たしている場合に指名手配犯となり、全国の警察から追われてしまうことになるでしょう。

もしも今、罪を犯して逃亡生活を送っているのであれば、いずれ逮捕されてしまうことになります。今の生活を送り続けることは困難であり、あなた自身も苦しい生活を強いられていることでしょう。

素直に罪を認め、出頭をしたうえで罪を償い、社会復帰を目指すのがベストな選択でしょう。1人で出頭するのが怖い、今後どのようになるのか不安、など考えがある場合はまずは弁護士へ相談をしてみましょう。

弁護士は守秘義務があるため、安心をして話をできます。仮に刑事事件に発展したとしても、あなたの味方となってくれる唯一の人です。不安な場合は、まずは弁護士への相談を検討してみても良いでしょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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