礼拝所不敬罪とは「神祠や仏堂、墓所など礼拝所と呼ばれる場所で不敬な行為を行った場合に成立する犯罪」です。少し難しい言葉が出てきたり、成立要件が理解できない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、礼拝所不敬罪とは何か?どういった場合に成立するのか?について詳しく解説しています。礼拝所不敬罪について詳しく知りたい人は、本記事をぜひ参考にしてください。
目次
礼拝所不敬罪とは
礼拝所不敬罪とは、神祠や仏堂、墓所など礼拝所と呼ばれる場所で不敬な行為を行った場合に成立する犯罪です。まずは、礼拝所不敬罪の成立要件や罰則規定について詳しく解説します。
礼拝所不敬罪の成立要件
礼拝所不敬罪は、「神祠や仏堂、墓所など礼拝所と呼ばれる場所で不敬な行為を行った場合に成立する犯罪」です。つまり、礼拝所不敬罪の成立要件は「礼拝所」と「不敬な行為」がポイントです。
そもそも礼拝所とは「神祠や仏堂、墓所など」のことを指します。神祠とは、神をまつった建物のことを指します。あまり聞きなれないかもしれませんが、具体的には祠(ほこら)のことであり、木造であったり小さな鳥居であったり態様はさまざまです。
仏堂とは、仏像を安置する場所であると考えておけば良いです。そして墓所とは墓地や霊園を想像しておけば良いでしょう。こういったいわゆる「礼拝所」と呼ばれる場所において、不敬な行為をした場合に礼拝所不敬罪という犯罪が成立します。
では、不敬な行為とはどのような行為を指すのでしょうか。簡単に言えば、一般の人の宗教感情を害するような行為を指します。
たとえば、自分の先祖のお墓でイタズラをされた場合は、ほとんどの人が嫌な思いをするでしょう。このような行為を「礼拝所不敬罪」と言います。
宗教の自由は日本国憲法で定められており、多くの人が宗教を信仰していたり、神を信じたりしています。そういった人の気分を害するような行為が禁止されていると考えておけば良いです。
また、礼拝所不敬罪は「公然と不敬な行為」をした場合に成立する犯罪です。公然とは、「不特定多数の人が認識する可能性」があれば成立すると考えられています。周りに人がいなかったとしても、結果的に不特定多数の人が認識して気分を害する可能性がある場合は、礼拝所不敬罪が成立するのです。
たとえば、墓石を倒すという行為は、結果的に多くの人の気分を害する行為となり得ます。そのため、倒す瞬間を誰も見ていなかったとしても「公然性」が認められます。
「不敬な行為」は広い意味で使用される言葉であるため、礼拝所に対しては敬意を持つことが大切です。もし、宗教感情等がなくてもそこに立ち寄り、信仰している人たちの気分を害するような行為は避けるべきでしょう。
礼拝所不敬罪の罰則規定
礼拝所不敬罪の罰則規定は「6カ月以上の懲役もしくは禁錮または10万円以下の罰金」です。
懲役刑と禁錮刑はいずれも身柄の拘束が必要となる自由刑の一つです。それぞれの違いは、刑務作業が義務付けられているかどうかです。懲役刑の場合は刑務作業が義務付けられていますが、禁錮刑の場合は刑務作業が義務付けられていません。
なお、2025年6月1日以降は懲役刑と禁錮刑が一本化され、「拘禁刑」と呼ばれる刑罰に変わります。そのため、懲役刑のように刑務作業が義務付けられなくなり、各受刑者の状況に応じて判断されることとなります。
そして、礼拝所不敬罪は懲役刑や禁錮刑といった自由刑の規定がある犯罪です。多くのケースで罰金刑で済むものの、最悪の場合は懲役刑等の可能性があることを覚えておきましょう。
礼拝所不敬罪に類似した犯罪と違い
礼拝所不敬罪とは、礼拝所等で不敬な行為を行った場合に成立する犯罪であることは、先ほど解説したとおりです。そのうえで、類似した犯罪についても確認しておきましょう。具体的には、以下のような犯罪があります。
- 説教等妨害罪
- 墳墓発掘罪
- 墳墓発掘死体損壊罪
- 死体損壊等罪
- 器物損壊罪
次に、礼拝所不敬罪に類似した犯罪の成立要件や罰則規定についても詳しく解説します。自分の行動がどういった犯罪に該当するかを確認し、今後は絶対に行わないようにしましょう。
説教等妨害罪
説教等妨害罪とは、以下に該当する行為を行っている場合に妨害することで成立する犯罪です。
- 説教
- 礼拝
- 葬式
上記の儀式を妨害した場合に成立する犯罪です。たとえば、自分の家族の葬式を誰かに妨害された場合、葬式に参加している人たちの感情を考慮すると「許せない」という気持ちになるのは当然です。そのため、この場合は説教等妨害罪という犯罪が成立するのです。
また、宗教的儀式の場合は説教等妨害罪ではなく、偽計業務妨害や威力業務妨害といった犯罪が成立します。
ちなみに、説教等妨害罪の法定刑は「1年以下の懲役または禁錮もしくは10万円以下の罰金」です。礼拝所不敬罪と比較すると、自由刑の部分でより厳しい罰則規定があるため注意しましょう。
墳墓発掘罪
墳墓発掘罪とは、墳墓を発掘した場合に成立する犯罪です。「墳墓(ふんぼ)」とは、死体や遺骨、遺品などが埋められている場所を指します。つまり、お墓のことを想像しておけば良いでしょう。
墳墓はお墓もいわゆる礼拝所とにているため、礼拝所不敬罪と似たような犯罪であることがわかります。しかし、墳墓発掘罪とは「墳墓を発掘」することによって成立する犯罪である一方、礼拝所不敬罪は「礼拝所(お墓含む)で不敬な行為をした場合」に成立する犯罪です。
発掘とは、「掘り起こすこと」を意味するため、お墓を掘り起こした場合は礼拝所不敬罪よりも重い「墳墓発掘罪」という犯罪に問われることになるのです。もちろん、お墓の発掘も不敬な行為であることに変わりはありません。
しかし、遺族の感情を逆撫でするような行為であり、相当悪質な行為であることから墳墓発掘罪という犯罪によって処罰しています。
ちなみに、墳墓発掘罪の法定刑は「2年以下の懲役」です。礼拝所不敬罪とは異なり、罰金刑の定めがありません。そのため、執行猶予付きの判決が下されなければ、最長で2年間にわたって刑務所に収監されることになるため注意しましょう。
執行猶予とは。刑罰の執行を猶予することです。たとえば、「懲役2年執行猶予5年」の判決が言い渡された場合は、直ちに刑務所に収監されることなく、社会に戻って生活を送ります。その後、5年以内に罰金刑以上の刑罰が確定しなければ刑罰は失効します。
墳墓発掘死体損壊等罪
墳墓発掘死体損壊等罪とは、墳墓をハッkつして埋められている死体等を損壊した場合に成立する犯罪です。先ほども解説したとおり、墳墓とは「死体等が埋められている場所」です。
たとえば、お墓に埋められている遺骨を掘り起こして損壊した場合は、墳墓発掘死体損壊等罪に問われます。当然、このような行為も礼拝所で行われている不敬な行為ではあるものの、相当悪質な行為であるため、より厳しい犯罪として成立しています。
なお、墳墓発掘死体損壊等罪の法定刑は「3カ月以上5年以下の懲役」です。礼拝所不敬罪と比較すると、罰金刑がないだけではなく最長5年という長期間にわたる懲役刑の可能性があります。
さらに、懲役5年以内であるため、執行猶予付き判決が付かない可能性があります。そもそも、執行猶予は懲役3年以下の判決にしか付けることのできないものであるためです。
罰金刑の規定がなく、最長で5年もの間刑務所に収監されなければいけないため、たとえ遊び半分で行った行為であっても取り返しのつかないことになり得ます。絶対にやめましょう。
死体損壊等罪
死体損壊等罪とは、「死体・遺骨・遺髪・棺に納めてある物を損壊・遺棄・領得」した場合に成立する犯罪です。たとえば、棺に入れられているしたいを損壊したり領得(取得すること)した場合には、死体損壊罪が成立するのです。
これらの行為も、不敬な行為であり、場所によっては「礼拝所で不敬な行為をした」という事実が認められるでしょう。しかし、上記のような行為はより厳しい死体損壊罪という犯罪で処罰されることになるため注意しましょう。
なお、死体損壊等罪の法定刑は「3年以下の懲役」です。礼拝所不敬罪と比較すると、懲役刑の上限が3年以下と長いうえに、罰金刑の規定がありません。そのため、執行猶予が付かなければ、刑務所へ収監されることとなるため注意しましょう。
執行猶予とは。刑罰の執行を猶予することです。たとえば、「懲役2年執行猶予5年」の判決が言い渡された場合は、直ちに刑務所に収監されることなく、社会に戻って生活を送ります。その後、5年以内に罰金刑以上の刑罰が確定しなければ刑罰は失効します。
器物損壊罪
器物損壊罪とは、人の物を故意に損壊(壊すこと)した場合に成立する犯罪です。たとえば、礼拝所と呼ばれる場所で人の物を故意に壊した場合は、礼拝所不敬罪の他に器物損壊罪が成立する可能性があります。
具体的には、人のお墓を倒して壊した場合は、礼拝所不敬罪に加えて器物損壊罪が成立するのです。器物損壊罪は、「故意に人の物を壊した場合」に成立する犯罪であるため、故意を持って壊した場合はいずれの罪にも問われることになるでしょう。
なお、「故意」とは何らかのことをしようとする意思を指します。たとえば、「お墓を倒そう」として行った場合は故意が認められます。また、「何らかのことをしよう」という意思がなくても、未必の故意が認められることもあるため注意が必要です。
未必の故意とは、行為者が罪となる事実の発生をいとしたり積極的に行おうと思った場合ではなくても、起こるであろうことを予想できた場合などに成立します。故意がなくても、故意があったものとして認められ、犯罪として成立するため注意しましょう。
礼拝所不敬罪に問われた場合の流れ
礼拝所不敬罪に問われた場合、逮捕されてしまう可能性があるため注意しなければいけません。もし、逮捕された場合は、どのような流れで事件は進んでいくのか?と不安を抱えている人も多いでしょう。
次に、礼拝所不敬罪で罪に問われた場合の流れについても詳しく解説します。
逮捕
礼拝所不敬罪は、犯罪であるため当然逮捕されてしまう可能性があります。しかし、罪を犯したからといって、必ずしも逮捕されるわけではなく、「証拠隠滅の遅れ」もしくは「逃亡の恐れ」がある場合に限られています。
とくに礼拝所不敬罪は、比較的軽微な犯罪であるため逮捕をせずに捜査を行うケースも多々あるため覚えておくと良いでしょう。とはいえ、絶対に逮捕されないという保証はありません。犯罪である以上は、逮捕されてしまう可能性もあるため注意が必要です。
まず、逮捕という行為は被疑者の身柄拘束を行うためのものです。被疑者とは、「犯罪の疑いをかけられている人」のことを指します。つまり、礼拝所不敬罪の疑いをかけられているあなたは、逮捕によって身柄拘束されてしまう可能性があるのです。
逮捕をすると初めに48時間以内の身柄拘束が可能となります。この間に警察官等の捜査機関は取り調べを行い、検察官へ事件を送致します。検察官への送致は原則すべての事件において行わなければいけず、これを「全件送致の原則」と言います。
ただし、例外もあり少年事件である場合や微罪処分として処分すべき場合は、検察官へ送致されることはありません。ただ原則的にはすべて検察官へ装置しなければいけないため、送致されるものであると考えておくと良いでしょう。
なお、逮捕されている被疑者の場合は「逮捕から48時間以内に送致しなければいけない」と定められていますが、在宅の場合は期限に定めがありません。つまり、逮捕せずに捜査が行われている場合は、期限に定めがなく、通常は事件発生から2カ月〜3カ月程度かかります。
上記の理由は、逮捕は身柄拘束が伴うため可能な限り早めに手続きを進める必要があるためです。在宅捜査の場合は、身柄拘束が発生しないため優先度が低くなってしまうためです。
勾留請求
事件を検察官へ送致すると、さらに24時間以内に検察官が引き続き被疑者の身柄を拘束するかどうかを判断します。勾留に必要となる要件は逮捕時同様に「証拠隠滅の恐れ」もしくは「逃亡の恐れ」があるかどうかです。
いずれの心配もなく、他に勾留する必要がないと判断されれば在宅捜査に切り替わります。もし、勾留の必要があると判断された場合は、被疑者を裁判所へ連れて行き、勾留質問を経て裁判官が勾留の決定を行います。
勾留請求が認められた場合は、初めに10日間の身柄拘束が可能となります。通常は勾留延長されるケースが大半であり、さらに10日間の勾留が続くため、合計で20日間となることが多いです。
ここまでで合計最長23日間の身柄拘束となるため、社会的な影響が大きくなり得ます。そのため、可能な限り早期の釈放を目指すためにも弁護士への相談を検討したほうが良いでしょう。
起訴・不起訴の判断
勾留されている被疑者の場合は、勾留期間中に被疑者を起訴するか不起訴とするかを判断します。起訴には「略式起訴」と「正式起訴」の2種類があり、礼拝所不敬罪の場合はいずれの可能性もあります。
略式起訴とは、通常の刑事裁判を行わずに罰金刑を略式命令として言い渡して罰金を支払って事件が終了します。ただし、略式命令は刑事裁判を開かれないため、弁解する機会が与えられません。そのため、自分に言い分がある場合は略式命令を選択しなければ良いです。
正式起訴された場合は、刑事裁判が行われます。これは通常の流れとなり、最終的に判決が言い渡されてその判決に従って刑に服します。
不起訴となった場合は、何ら刑事罰を受けることなく事件は終了します。当然、前科は付きませんが前歴は付くため、今後何らかの罪を犯してしまった場合は、悪影響となる可能性があるため注意しましょう。
なお、在宅捜査されている被疑者については、期限に定めがなく、通常は書類送検の2カ月〜3カ月程度の期間がかかります。
刑事裁判を受ける
正式起訴された被疑者は、刑事裁判を受けます。刑事裁判では、あなたの犯した罪について審理し、有罪か無罪かを判断します。ただ、罪を犯している事実がある以上、無罪判決となる可能性は、限りなくゼロに近いです。
また、そもそも起訴された事件の99%は有罪判決が下されると言われています。そのため、いかにして減刑を目指すかに焦点を当てて裁判を行うと良いでしょう。刑事裁判における戦い方は、担当している弁護人が行ってくれるため、方針をよく話し合っておくと良いでしょう。
判決に従って刑に服する
最終的に判決が言い渡され、不服があれば上訴・上告が可能です。最終的に判決が言い渡されるため、その判決に従って刑に服します。
懲役刑であれば一定期間刑務所に収監されて刑務作業を行います。罰金刑であれば、罰金を納めて事件は終了しますが、罰金を支払えなければ一日5,000円程度で労役場留置となるため注意しましょう。
礼拝所不敬罪に問われた場合の対処法
礼拝所不敬罪に問われた場合の対処法は以下のとおりです。
- 弁護士へ相談をする
- 反省している態度を示す
次に、礼拝所不敬罪に問われた場合にできるだけ減刑を目指す方法、対処法について詳しく解説します。
弁護士へ相談をする
初めに弁護士への相談を検討しましょう。弁護士へ相談をすることによって、適切な弁護活動を早期に開始できます。結果的に、身柄の拘束を回避できたり減刑されたりなど、被疑者にとってさまざまなメリットが発生します。
なお、刑事事件の被疑者となった場合は、無料で弁護人が付けられる制度もあります。これは、「国選弁護人制度」と呼ばれるものです。国選弁護人は、経済的な事情で自分で弁護人をつけることが難しい人でも安心して裁判を受けられるためにする制度です。
そのため、国選弁護人が付くタイミングは「勾留後」もしくは「起訴後」のいずれかです。タイミングとしてはとても遅い点に注意が必要です。先ほども解説したとおり、起訴された場合は99%の確率で有罪判決が下されます。
そのため、可能であれば私選弁護人を自ら選任することを検討したほうが良いでしょう。私選弁護人であれば、自分のタイミングで自由に選任することができるため、早期の釈放を目指すのであれば私選弁護人一択となるでしょう。
反省している態度を示す
刑事事件において、被疑者が反省しているかどうかは処分や量刑判断に大きな影響を与えます。そのため、しっかりと反省している態度を示すことによって、心象が良くなり、結果的に有利な処分や判決を受けられる可能性が高まります。
礼拝所不敬罪に問われた場合のリスク
礼拝所不敬罪に問われた場合、逮捕されるだけではなく以下のようなリスクもあるため注意しましょう。
- 長期勾留のリスク
- 解雇・退学などの社会的リスク
- 弁償等による経済的なリスク
次に、礼拝所不敬罪に問われた場合に起こり得るリスクについて詳しく解説します。
長期勾留リスク
礼拝所不敬罪に問われた場合、長期間にわたって身柄拘束をされてしまう可能性があるため注意しなければいけません。まず、逮捕〜勾留確定まで最長72時間(3日間)の身柄拘束が発生します。
その後、勾留が確定した場合は追加で20日、そのまま起訴された場合は公判開始〜判決確定までおおよそ2カ月〜3カ月の間身柄拘束が続きます。合計すると、この時点で3カ月〜4カ月にもわたって身柄を拘束され続けてしまうのです。
もちろん、起訴されたあとは保釈請求を行うことが可能であり、認められれば一時的に社会へ戻ってくることができます。しかし、認められなければ、数カ月単位で身柄拘束が行われてしまうのです。
さらに、礼拝所不敬罪の最高刑である「懲役6カ月」が確定すれば、さらに長期間にわたって身柄の拘束が続くことになります。未決勾留日数は刑期に算入される可能性はあるものの、いずれにせよ長期間の拘束となることは間違いありません。
身柄が拘束されている間は、当然、社会に戻ることはできないためさまざまな影響が出るでしょう。家族や友人等にも要らぬ心配をかけてしまう可能性もあるため注意しましょう。
解雇・退学などの社会的リスク
礼拝所不敬罪に問われた場合、解雇や退学といった処分を受ける可能性もあるため注意しましょう。必ずこれらの処分が下されるとは限りませんが、逮捕や前科といった背景を考慮したうえで厳しい判決が下されることもあるでしょう。
ただし、会社員の場合は「逮捕された」という事実だけで解雇処分を下すことはできません。解雇をするためにはさまざまな要件を満たしている必要があります。たとえば、礼拝所不敬罪を行ったことによって、自分の勤めている会社に甚大な損失を与えたようなケースが考えられます。
具体的には、有名企業に勤める従業員が礼拝所不敬罪で逮捕、処分され、全国ニュースで大きく報道されてしまったようなケースが考えられます。
学生の場合は学校教育法や校則に基づいて処分されるため、通っている学校次第では、退学処分となる可能性が高くなるでしょう。一概にはいえないものの、さまざまな可能性があることを理解しておいたほうが良いでしょう。
弁償等による経済的なリスク
礼拝所不敬罪の内容はさまざまですが、たとえば人の物を壊してしまった場合は、当然弁償をしなければいけません。礼拝所に集まるものは高額なものも多いため、経済的なリスクも負うことになるでしょう。
また、被害者の処罰感情が厳しい場合は示談交渉も検討する必要があります。示談交渉とは、「弁償や慰謝料を支払うから許してほしい」と伝え、和解を目指すことを指します。示談をする場合は、当然弁護士費用や被害者に対して支払う費用が発生するため、結果的に経済的な損失も大きくなるでしょう。
礼拝所不敬罪に関するよくある質問
礼拝所不敬罪に関するよくある質問を紹介します。
Q.肝試しも礼拝所不敬罪に問われますか?
A.肝試しが直ちに礼拝所不敬罪になるとは考えにくいです。
礼拝所不敬罪とは、礼拝所で不敬な行為を行った場合に成立する犯罪です。具体的には宗教的感情を害された場合に成立すると考えておけば良いです。わかりやすく考えるのであれば、たとえば自分の家族の墓を倒された場合は、気分を害することでしょう。
しかし、肝試しは日本の習慣の一つであり、「宗教的な感情を害するものではない」と考えられるのが一般的です。とくにお墓は、遺骨がおいてあることから、心霊スポットと考えている人も少なくはありません。
礼拝所不敬罪は、習慣的なことを規制する法律ではないため、直ちに犯罪になることは考えにくいです。
ただし、お墓を倒したり放尿したりするような仕草を見せたりすることによって、礼拝所不敬罪に問われる可能性があるため注意しなければいけません。また、肝試しの一環として他人のお墓等に落書きをするような行為は、器物損壊罪に問われます。
なお、沖縄ではお墓の前で宴会をする習慣(清明祭)があります。これも、各地方の収監であるため、礼拝所不敬罪には問われません。このように、昔からある習慣のような場合は、処罰の対象にはならないことを覚えておきましょう。
Q.具体的にどのような行為が処罰対象になり得ますか?
A.礼拝所不敬罪では「不敬な行為」を処罰対象としています。
不敬な行為とは、簡単に言えば「尊厳を害するような行為」です。具体的には、損壊や汚損、除去、転倒といった行為が該当します。たとえば、他人のお墓を倒したり放尿したり落書きしたりするような行為を「不敬な行為」とされています。
礼拝所は宗教的意味合いの強い場所であるため、そういった感情を外してしまうような行為はすべきではありません。
Q.礼拝所不敬罪の対象は何ですか?
A.礼拝所不敬罪は「礼拝所」で「不敬な行為」を行った場合に成立する犯罪です。
礼拝所とは、「神祠や仏堂、墓所など」のことを指します。不敬な行為とは、「尊厳を害するような行為」です。これらの行為を行うことによって、礼拝所不敬罪が成立します。
Q.礼拝所不敬罪は何のためにある法律なのですか?
A.宗教的風俗や宗教的感情を保護するためにある法律です。
日本国憲法では、宗教の自由を保障しています。誰がどのような物を信じ、信仰しても良いです。そのため、誰かが宗教的風俗や宗教的感情を害する必要もないでしょう。
たとえば、人のことを侮辱した場合には「侮辱罪」が成立します。人の物を故意に壊せば「器物損壊罪」、人に暴言を吐けば「軽犯罪法違反」に問われる可能性があります。これらと同等であり、人の宗教的感情等を害する行為を法律によって禁止しているのです。
Q.日本以外でも「礼拝所不敬罪」に似た法律はあるのでしょうか?
A.海外に目を向けると「不敬罪」という犯罪がある国も多くあります。
不敬罪は、日本で言うところの「礼拝所不敬罪」に該当します。世界中に目を向けると、多くの国で似たような犯罪があります。
まとめ
今回は、礼拝所不敬罪について解説しました。
礼拝所不敬罪は、「神祠や仏堂、墓所など礼拝所と呼ばれる場所で不敬な行為を行った場合に成立する犯罪」です。宗教風俗や宗教感情を害するような行為を処罰するための法律です。
遊び半分で礼拝所に立ち入り、イタズラをしてしまうと礼拝所不敬罪に問われてしまう恐れがあるため注意しなければいけません。また、礼拝所不敬罪以外にもさまざまな犯罪が成立し、処罰されてしまう恐れもあるため注意しましょう。
もし、自分の行いが「礼拝所不敬罪に該当するのではないか?」と不安を感じているのであれば、まずは弁護士へ相談をしてみましょう。今回解説した内容を踏まえ、今後の対応方法について検討してみてはいかがでしょうか。