「自分の犯罪歴・前科がどのように保管されているか調べたい」
「これから転職を考えているが、第三者に無断で自分の犯罪歴・前科を調べられると困る」
犯罪歴や前科があるだけで、社会生活を営むうえでさまざまな不安・ストレスに悩まされるものです。
たとえば、刑事責任を果たしてしっかり更生の道を歩んでいるのに、「会社の上司や同僚に前科がバレたらどうしよう」「犯罪歴がバレたら今まのでキャリアが無駄になるのではないか」などと不安を抱えながら生活をするのは大変でしょう。
ですから、前科や犯罪歴がある場合には、前科・犯罪歴があることでどのようなデメリット・リスクがあるのか、前科や犯罪歴はどのようなタイミング・方法でバレるのかなどについてしっかりと理解することが重要だと考えられます。
そこで、この記事では、前科や犯罪歴にまつわるさまざまな不安を抱える人のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。
- 前科や犯罪歴の調べ方
- 前科や犯罪歴によってもたらされるデメリット
- 前科や犯罪歴が調べられる可能性が高いタイミング
- 前科や犯罪歴が残らないようにするポイント
- 刑事事件を起こしたときに弁護士に相談・依頼するメリット
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目次
犯罪歴や前科の調べ方4つ
まずは、前科や犯罪歴がどのような方法で調査されるのかについて解説します。
新聞の報道情報
刑事事件を起こしたことが新聞で報道されると犯罪歴や前科が調べられる可能性が高いです。
たとえば、国立国会図書館の新聞資料室では、全国紙・地方紙・業界紙・政党紙・スポーツ新聞などの日本語の新聞紙や主な外国語の新聞が、原紙・縮刷版・復刻版・マイクロフィルム・マイクロフィッシュ・デジタル資料などの、さまざまな形態で所蔵されています。また、全国の図書館にも過去の新聞紙が保存されていることが多いです。
国立国会図書館や全国の図書館に所蔵されている新聞紙は誰でも閲覧できるので、新聞の報道情報を丁寧にチェックされると、犯罪歴や前科は調べられてしまうでしょう。
テレビ番組の報道内容
過去のテレビ番組の報道番組が録画されており、動画サイトなどで公開されていた場合には、当該番組内で報道された事件に関する情報は調べられてしまいます。
もっとも、過去のテレビ番組のニュース番組がオフィシャルに公開されつづけるケースは稀なので、テレビ番組の報道内容から直接犯罪歴や前科が調査されるリスクは少ないでしょう。
インターネット検索
刑事事件がネットニュースやSNSで報道・発信されると、半永久的にWeb上に事件に関する情報が残りつづけます。また、現在ではインターネットメディアが普及しているため、テレビの報道番組で流された情報もネット上に拡散されるのが実情です。
ですから、一度でもニュースなどで実名報道された場合には、氏名をインターネット検索されると、犯罪歴や前科情報が調べられると覚悟しておきましょう。
探偵や興信所による調査
対象者の犯罪歴・前科を調べるときには、探偵や興信所が利用されることが多いです。
探偵や興信所は、インターネットに残っている情報だけではなく、新聞や週刊誌、テレビ番組の情報、さらに、事件の関係者、対象者の知人・家族・親族・同僚などに対して直接的にアプローチをかけて、犯罪歴や前科に関する情報を収集します。
【注意!】犯罪歴や前科情報を掲載した民間公開データベース・検索サイトは存在しない
現在、日本には、犯罪歴や前科情報を集計して公表している民間の公開データベースは存在しません。
ですから、犯罪歴や前科情報は一般の第三者では簡単に調べられない状況だといえるでしょう。
犯罪歴や前科はどこに記録されている?
ここまで紹介したように、新聞やインターネットメディアなどで刑事事件が報道された場合には、これらの情報源から犯罪歴・前科が調べられる可能性が生まれます。
ただし、すべての刑事事件が新聞・テレビなどで報道されるわけではありません。つまり、ニュースメディアで刑事事件について報道されなければ、これらをきっかけに犯罪歴・前科が調べられることはないということです。
それでは、刑事事件についての報道が一切おこなわれず少なくとも事件が世間に知られなかった場合に、犯罪歴や前科がバレることはないのでしょうか。ここでは、犯罪歴や前科の情報が保管されている場所について解説します。
検察庁が管理している前科調書
検察庁では、過去に有罪判決を受けた人物の前科情報を「前科調書」という形式で保管しています(犯歴事務規程第13条)。前科調書とは、検察事務官が作成する前科の調査結果の報告書のことです。
たとえば、検察官が被疑者を起訴猶予処分に付するかどうかを決定するときには事件に関するすべての事情を総合的に斟酌しなければいけませんが、この際には、被疑者の前科の有無・前科の種類も対象に含まれます。そして、被疑者に前科があるかを確認するには、検察庁が保管している前科調書に対して前科照会をかける方法によっておこなわれます。このように、前科情報は捜査活動や起訴・不起訴の判断の際などのさまざまな場面で必要になるので、検察庁がすべての前科情報をデータベース化して保管・管理しているのが実情です。
前科調書(甲)に記載される内容は以下のとおりです。
- 氏名
- 生年月日
- 異名
- 本籍または国籍
- 裁判の日等(裁判の日、確定の日、刑の始期、仮釈放・仮出獄の日、実刑部分の期間の執行終了の日、刑執行終了の日など)
- 裁判所名等(裁判区分、確定事由、言渡裁判所、執行猶予取消裁判所)
- 形名刑期金額等
- 罪名
- 備考
警視庁及び都道府県警察本部の犯歴照会センター
警視庁及び各都道府県警察本部が運営する犯歴照会センターでは、すべての犯罪歴・前歴に関する情報を管理・運用しています。
たとえば、警察官が職務質問を実施する際には、提示された運転免許証などの情報をもとに現場の警察官が犯歴照会センターに問い合わせをおこない、対象者に犯罪歴などがあるかがチェックされます。
市区町村が保管している犯罪人名簿
犯罪人名簿とは、前科以上の有罪判決が確定した人物に関する情報を登録した帳簿のことです。犯罪人名簿は、対象者の戸籍を管掌する市区町村で保管・管理されています(犯罪人名簿事務処理要綱)。
犯罪人名簿に記載される事項は以下のとおりです。
- 本籍
- 筆頭者
- 氏名
- 生年月日
- 性別
- 作成日
- 併科刑区分
- 裁判または略式命令の日
- 裁判確定日
- 裁判所名
- 裁判区分
- 形名
- 刑期
- 金額
- 執行猶予期間
- 補導処分
- 罪名
- 未決勾留
- 刑終了の日
- 犯行時少年
- 公民権停止
犯罪人名簿は、選挙権や被選挙権の有無、資格制限の対象か否かなど、特定の目的のために活用されます。警察・検察・裁判所・関係行政庁などから市区町村に対して照会があったときに市区町村が回答する際に犯罪人名簿のデータが参照される、という流れで活用されます。
【注意!】公的機関に記録されている犯罪歴・前科情報には一般人はアクセスできない
以上を踏まえると、犯罪歴や前科に関する情報を公的に管理しているのは、検察庁の前科調書・警察の犯歴照会センター・市区町村の犯罪人名簿だけだということです。
そして、個人情報保護の観点から、これらの公的機関に記録されている犯罪歴・前科情報には、一般人がアクセスできないようになっています。
これらの公的情報にアクセスできるのは正当な権限・理由・目的がある者に限られるので、たとえば、対象者の犯罪歴・前科を調べている人物が探偵や弁護士に依頼をしても、公的機関から探偵・弁護士に犯罪歴・前科情報が開示されることはありません。
ですから、「市役所や警察に問い合わせられると、自分の犯罪歴・前科が第三者にバレるのではないか」という不安を抱く必要はないといえるでしょう。
参照:こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議|こども家庭庁HP
犯罪歴や前科が調べられるタイミング
犯罪歴や前科が調べられるタイミングについて解説します。
就職や転職のタイミング
就職や転職のタイミングで犯罪歴や前科の有無がチェックされる可能性があります。
まず、就職活動・転職活動の際には、企業側から履歴書の提出を求められるのが一般的です。そして、履歴書には「賞罰欄」の記入項目が設けられており、賞罰欄には前科の有無について記載しなければいけません。つまり、企業から賞罰欄付きの履歴書の提出を求められた場合には、企業側に前科があることがバレるということです。前科を隠して内定を獲得したとしても、入社後に前科や犯罪歴があることが発覚すると、経歴詐称を理由に懲戒処分を下されます。
次に、企業によっては、採用予定者の経歴などについて厳しい身元調査を実施する場合があります。たとえば、金融関係の業種では、リファレンスチェック・バックグラウンドチェック・インターネット調査を駆使して、求職者だけではなく、求職者の近親者の身元などについても調べられることが多いです。
また、前科を理由とする資格制限・就業制限が定められている職業に従事する際にも、犯罪歴や前科の有無が調べられます。代表的な職業制限として以下のものが挙げられます。
職業 | 制限の内容 |
---|---|
国家公務員・地方公務員 | 禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わるまでまたは執行を受けることがなくなるまでの者 |
保護司 | 禁錮以上の刑に処せられた者 |
医師・看護師 | ・罰金以上の刑に処せられた者 ・業務に関し犯罪または不正の行為のあった者 |
弁護士 | 禁固以上の刑に処せられた者 |
司法書士・行政書士 | 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または、執行を受けることがなくなってから3年を経過しない者 |
保育士 | ・禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または、執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者 ・児童福祉法の規定その他児童の福祉に関する法律の規定であって政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者 |
その他の職業制限については、「資格制限について|法務省HP」を参考にしてください。
結婚するタイミング
結婚するタイミングで前科や犯罪歴が調べられることがあります。たとえば、親が興信所に依頼して結婚相手の経歴などを調べさせるというのはよくあるケースです。
また、そもそも自分の前科・犯罪歴を隠したまま結婚をして、あとから前科・犯罪歴があることが配偶者にバレると、法定離婚事由に該当すると判断される可能性が高いため、離婚を言い渡されても拒否できません。
前科や犯罪歴があることを結婚相手に伝えるのは簡単ではないでしょうが、身元調査や噂がきっかけで知られるよりも、自分の口でしっかりと事実を伝えて関係性構築を目指すべきでしょう。
犯罪歴や前科の調べ方に関するFAQ
さいごに、犯罪歴・前科の調べ方についてよく寄せられる質問をQ&A形式で紹介します。
犯罪歴や前科は誰にでも調べられますか?
まず、公的に保管・管理されている前科・犯罪歴を調べることができるのは、警察や検察、裁判所、関係行政官庁などの担当者が正当な理由・目的があるときだけです。
ですから、対象者とまったく関係のない第三者や依頼を受けて調査をしている探偵・興信所などの一般人では、犯罪人名簿などの情報にアクセスできないと考えられます。
ただし、刑事事件を起こしたことが新聞やテレビで報道されたりSNSで拡散されたりした場合には、一般人でも簡単に前科・犯罪歴を調べることができます。
自分の前科を調べる方法はありますか?
犯罪人名簿や前科調書、犯歴照会センターに記録されている前科・犯罪歴の情報は、本人であったとしてもアクセス不可能です。
なお、前科がある人がパスポートの申請をするときには、渡航証明書(犯罪経歴証明書、無犯罪証明書)を取得しなければいけませんが、渡航証明書は開封すると効力を失うので、これを利用して前科の有無などを確認するのは推奨されません。
犯罪歴・前科・前歴の違いはありますか?
前科とは、有罪判決を受けた経歴のことです。そして、前歴は、被疑者として捜査対象になった経歴を意味します。
第1に、前科があれば前歴は当然つきますが、前歴があるからといって前科がつくわけではない、ということを押さえておきましょう。後述するように、前科がつくとさまざまなデメリットを抱えますが、前歴があるだけなら今後の日常生活に悪影響が生じることはありません。
第2に、前科がつくのは「有罪判決が確定したとき」です。微罪処分や不起訴処分の獲得に成功したときには前科はつきません。これに対して、有罪判決が確定したときには常に前科がつきます。たとえば、懲役刑や禁固刑などの実刑判決が確定したときだけではなく、罰金刑や執行猶予付き判決が確定した場合にも前科者になってしまいます。
第3に、前科・前歴は法律用語ですが、犯罪歴(犯歴)はただの一般用語でしかありません。犯罪歴という言葉は多義的に使用されることが多く、前科・前歴・逮捕歴などを広く含む概念として位置づけられるでしょう。
犯罪歴や前科がつくとどんなデメリットがありますか?
まず、犯罪歴は一般用語なので、「犯罪歴によるデメリット」についての説明は省略します。
次に、前歴が残るデメリットは、その後の人生で被疑者として捜査対象になったときに捜査活動が厳しくなる可能性があるという点です。前歴がついただけの状態は特に刑事責任を問われる事態ではないので、何かしらのペナルティが科されることはありません。
これに対して、前科がつくと、今後の社会生活に以下のデメリットが生じる可能性が高いです。
- 就職活動や転職活動の難易度が高くなる
- 職業制限・資格制限の対象になるとその仕事に従事できない
- パスポートやビザの発給制限を受けると海外旅行・海外出張・海外赴任に悪影響が出る
- 再犯時に刑罰が加重されるリスクがある、厳しい刑事処分・判決が下される可能性が高い
- 選挙権・被選挙権が制限される可能性がある
- 前科を理由に離婚を求められると拒否できない(慰謝料や親権、面会交流権などの諸条件も不利になる可能性が高い)
- よからぬ噂が原因で社会的信用が失墜しかねない
- インターネット上に情報が残り続けると知人や会社の同僚などに隠し通すのが難しい など
犯罪歴や前科を消すことはできますか?
公的機関に管理されている犯罪歴や前科の情報は捜査機関や関係行政官庁が使用する目的で保存・管理されているので、本人であっても抹消できません。
ですから、生きている限りは前科によるデメリットは残りつづけます。
犯罪歴や前科がつかないようにするにはどうすれば良いですか?
前科がつくとさまざまなデメリットが生じることを踏まえると、刑事事件を起こしたあとの社会復帰の難易度を軽減するには、前科がつかないように防御活動を展開するのが重要だと考えられます。
そして、前科を回避するには、弁護士に依頼することを強くおすすめします。
というのも、刑事事件を得意とする弁護士の力を借りることで、以下のメリットを得られるからです。
- 被害者が警察に通報する前に示談交渉を開始して刑事事件化回避を目指してくれる
- 警察に事件が発覚しても、早期に示談交渉を成立させることで、微罪処分や起訴猶予処分獲得の可能性を高めてくれる
- 早期に防御活動をスタートすることで、逮捕・勾留という強制的な身柄拘束処分を回避し、在宅事件化を実現してくれる
- 取り調べでの供述方針を明確化して、一貫性のある主張を展開し、供述内容に信憑性をもたせてくれる
- 被疑者にとって有利な情状証拠・証人を用意してくれる など
刑事手続きを有利に進めるには、できるだけ早いタイミングで防御活動をスタートする必要があります。ですから、刑事訴追のリスクを抱えているときには、速やかに信頼できる弁護士までお問い合わせのうえ、今後の対応方法などについてアドバイスをもらいましょう。
犯罪歴や前科が調べられるか不安なときは弁護士に相談しよう
犯罪歴や前科は公的機関経由で調べられる可能性は極めて低いですが、その一方で、インターネット上などに事件の情報が残っていると、いつ前科が発覚するかわかりません。
ですから、今後刑事訴追のリスクを抱えている状況なら、できるだけ前科がつかないように微罪処分や起訴猶予処分獲得を目指した防御活動が不可欠だと考えられます。
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