無在庫転売の違法性とは?違法・合法の定義について詳しく解説

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近年、ネットショップやフリマアプリの普及に伴い、「無在庫転売」というビジネスモデルが注目を集めています。無在庫転売とは、商品を在庫として抱えることなく、注文を受けてから仕入れ・発送を行うスタイルの転売方法です。初期費用が抑えられ、リスクが少ないというメリットから、副業や個人事業として取り組む人が増えています。

一方で、無在庫転売には「違法なのでは?」という声も少なくありません。たしかに、無在庫転売にはトラブルのリスクがつきものであり、販売者が気づかぬうちに法律に違反してしまうケースもあります。

本記事では、無在庫転売の基本的な仕組みを解説したうえで、どのような点に違法性があるのか、また合法的に運営するために必要な注意点についてもわかりやすく解説します。副業やネットビジネスを考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

無在庫転売とは

無在庫転売とは、在庫を持たずに販売するビジネスモデルです。手元に商品がないにも関わらず、あえてそのことを記載せずに販売し、売れてから商品を仕入れ、発送する流れです。

無在庫転売自体に違法性はないものの、内容やその行為次第では違法となる可能性もあるため注意しなければいけません。まずは、無在庫転売とはどのような行為を指すのか?について詳しく解説します。

在庫を持たずに販売するビジネスモデル

無在庫転売とは、在庫を持たずに販売をするビジネスモデルです。たとえば、あなたがAという商品を転売しようと考えているものの、手元にはAがありません。しかし、「売却できた後に仕入れて発送しよう」と考えていたとします。

上記考えのもとで実際にAの販売を開始し、実際に売れたとします。売れたため、商品を仕入れ、発送する流れです。実際に在庫を抱えないため、在庫を抱える場所が不要であるうえに確実に商品が売れてから仕入れるため、キャッシュフローの改善も可能です。

上記のとおり、無在庫転売はとてもメリットの多いビジネスモデルです。

商品を仕入れる前に購入者を集める手法

無在庫転売は、商品を仕入れる前に購入者を集める手法です。たとえば、大型家電のような商品の場合、多くの在庫を抱えておくためには、大きな倉庫を借りなければいけません。

倉庫を借りるための費用や管理費用、万が一売却できなかった場合のリスク等を考えると一個人では難しいでしょう。しかし、無在庫転売であれば、在庫を抱えておく必要がないため、倉庫を借りる必要もありません。

手元に在庫がない状態であっても、確実に仕入れを行えるルートを確保できている場合は特に問題はありません。「商品を仕入れてから集客する」と「集客してから商品を仕入れる」と、順番が逆になっているだけであり、違法性はありません。

利益率は高いがトラブルリスクも伴う

無在庫転売は、売却できたあとに商品を仕入れるため利益率は高いです。たとえば、先に商品を仕入れてしまったとしても、その商品が絶対に売却できるとは限りません。万が一売却できなければ、在庫分の費用を自分で負担しなければいけません。

無在庫転売であれば、売却できた分の仕入れで済むため、無駄な費用を発生させることなく確実に利益を挙げられます。

ただし、無在庫転売は以下のようなトラブルが発生する可能性があるため注意しなければいけません。

  • 商品の確認ができない
  • 商品を仕入れられない
  • 出荷遅延やキャンセル
  • 利用規約違反

まず、無在庫転売の場合は商品の確認が難しいです。なぜなら「売却→仕入れ→発送」となるためです。通常は、手元にある商品を自分の目で見てから売却を行い、発送する流れです。

無在庫転売の場合は、自分の目で確かめずに発送を行ってしまうため、不良品発送等によって購入者とのトラブル発生が起こり得ます。他にも、商品を仕入れられない可能性もあるため注意しなければいけません。

無在庫転売は違法ではない

無在庫転売は、違法ではありません。そもそも、無在庫転売を規制する法律自体が存在しません。適法に行えばビジネスとして成立するため、ビジネスとして開始しようと検討している人も多いのではないでしょうか。

ただし、トラブルが多いのも事実です。また、販売方法によっては、違法となる可能性もあるため、違法性を理解しながら合法の範囲内でビジネスとして行う必要があります。

次に、無在庫転売の違法性についても詳しく解説しますので、これからビジネスとして行おうとしている人はぜひ参考にしてください。

無在庫転売そのものを禁止する法律は存在しない

無在庫転売は、在庫を抱えないまま転売する行為を指します。この行為を規制する法律は現時点ではありません。

無在庫転売は「販売活動→購入→仕入れ→発送」の順番で行われます。一方で、通常の販売は「仕入れ→販売活動→購入→発送」の順番で行われるだけであり、順番が異なるというだけです。

結果的には購入者の手元に商品が届くため、とくに違法性はありませんし、規制する必要もありません。そのため、現在は法律として規制されておらず、無在庫転売が直ちに違法になることはありません。

適法に行えばビジネスとして成立する

無在庫転売は、在庫を抱えて販売する通常の手法と比較してリスクが少ないです。そのため、適法に行えばビジネスとして成立する点が大きな特徴です。

たとえば、通常通りの販売を行おうとした場合、売れるかどうかわからない商品の在庫を抱えなければいけません。商品を置く場所、商品が売れなかった場合のリスクを考慮する必要があります。

一方で、無在庫転売であれば在庫を抱える必要がありません。商品が売れてから仕入れを行えば良いため、在庫が残ってしまうリスクも回避できます。そのため、通常の販売手法と比較すると、無在庫転売のほうが安心で効率が良いです。

無在庫転売自体は違法ではないため、適法に行えばビジネスモデルとして有効な手法であると言えます。では、なぜ多くの人が無在庫転売を行わないのか?その理由は、主に以下のとおりです。

  • 商品の確認ができない
  • 商品を仕入れられない
  • 出荷遅延やキャンセル
  • 利用規約違反

先ほども紹介したとおり、無在庫転売は上記のようなリスクがあるため注意しなければいけません。

販売方法によっては違法となるリスクがある

販売方法によっては違法となる可能性があるため注意しなければいけません。無在庫転売が違法となる主なケースは以下のとおりです。

  • 商品を発送しない
  • 誇大広告・虚偽表示をした
  • 偽物のブランド品を販売した
  • 無断輸入を行った
  • 転売禁止商品を転売した

上記のようなケースはいずれも違法と判断され、処罰対象となるため注意しなければいけません。適法に行えば良いビジネスモデルになり得ますが、法律に触れる可能性やリスクもしっかり検討しておかなければいけません。

無在庫転売が違法になるケース

無在庫転売が違法となる主なケースは以下のとおりです。

  • 商品を発送しなかった場合
  • 誇大広告・虚偽表示をした場合
  • 偽物のブランド品を販売した場合
  • 無断輸入を行った場合
  • 転売禁止商品を転売した場合

次に、無在庫転売が違法となる主なケースについて詳しく解説します。これから無在庫転売を行おうと考えている人は、ぜひ参考にしてください。

商品を発送しなかった場合は詐欺罪に問われる

商品を発送しなかった場合は、詐欺罪に問われる可能性があるため注意しましょう。

無在庫転売の場合、手元に商品がない状態で売却を行います。そのため、いざ販売できた際に仕入れをしようとしていた商品の販売が中止されていた、売り切れていた、などのことが発生する可能性があります。

さまざまな事情から商品を発送できなかった場合、民法上の「債務不履行」に該当します。この場合は、返金をしたうえでキャンセルするか、何らかの方法で商品を仕入れて発送するしかありません。

代金の支払いを受けているにも関わらず、商品を発送しなかった場合、最悪の場合は詐欺罪(10年以下の懲役)に問われる可能性があるため注意しなければいけません。ただし、詐欺罪は「初めから相手を騙すつもり(商品発送の意思がなかった)」場合に成立する犯罪です。

そのため、無在庫転売で商品の仕入れが難しくなってしまった場合、直ちに詐欺罪に問われる可能性は低いでしょう。とはいえ、可能性としてはゼロではないためくれぐれも注意してください。

誇大広告・虚偽表示で景品表示法違反に問われる

誇大広告や虚偽表示を行えば、景品表示法違反に問われる可能性があるため注意しましょう。無在庫転売の場合、手元に商品がないため商品の説明が曖昧であったり、誇大広告・虚偽表示をしてしまうことがあります。

たとえば、「在庫切れ寸前!」と記載する行為は、実際には在庫を抱えていないにも関わらず、あたかも在庫を抱えているかのような虚偽広告になります。また、「在庫切れ寸前!」と記載することで、消費者に「人気商品である」と誤認させることにもなり、違法行為となるため注意しましょう。

偽物のブランド品を扱えば商標権侵害になる

偽物のブランド品を販売したり、リメイク品の販売をしたりした場合は商標権侵害になるため注意しましょう。無在庫転売は、在庫を抱えずに転売をする販売手法です。

自分の目で確認することができないため、結果的に偽物を販売したり、リメイク品を販売したりしてしまう結果となる可能性があります。誤って偽物を販売してしまった場合であっても、犯罪となり得るため注意しなければいけません。

とくに正規販売店以外の場所から仕入れをしてしまうと、「発送後に購入者から偽物であることが伝えられた」というケースも少なくありません。

なお、商標権侵害に問われた場合は「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」または「10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」が科されます。また、偽物であることを知っていながら相手を騙す目的で偽ブランド品を発送した場合は、詐欺罪に問われる可能性もあるため注意しなければいけません。

無断輸入は関税法違反になる恐れがある

無断で輸入(仕入れ)した商品が関税法で規制されている商品であった場合は、関税法違反に問われる可能性があるため注意しましょう。とくに海外で販売されている商品の無在庫転売を行う場合は注意が必要です。

なお、関税法違反に問われた場合は「10年以下の懲役または3,000万円以下の罰金、もしくは両方が科される(併科)」となるため注意してください。

転売禁止商品を転売した場合も違法

転売が禁止されている商品を転売した場合は、さまざまな法律によって違法となる可能性があるため注意しましょう。たとえば、コンサート等の興行チケットを高額転売した場合は、「チケット不正転売禁止法(1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金)」という法律によって罪に問われます。

他にも、転売が禁止されている商品はたくさんあります。無在庫転売を行う場合は、その商品が転売禁止の商品かどうかをしっかり確認しておきましょう。

無在庫転売の違法性についてよくある質問

無在庫転売の違法性についてよくある質問を紹介します。

Q.無在庫転売は本当に合法なのですか?

A.無在庫転売自体は合法です。

無在庫転売自体は合法です。わかりやすく言えば、A社の商品をB社が代理店となって販売しているケースがあります。この場合、B社で在庫を抱えていなくても、代理店であるため違法とはなりません。

無在庫転売も上記と同じイメージです。結果的に転売が許されている商品を販売しているのであれば、何らかの罪に問われる可能性は低いです。

しかし、一個人が無在庫転売を行おうとすると、法律知識が浅く、結果的に違法となる可能性もあるため注意しなければいけません。法律の範囲内でビジネスとして展開するのであれば、しっかり弁護士等の専門家へ相談をしたうえで開始するべきでしょう。

Q.無在庫転売でも古物商の許可は必要ですか?

A.原則必要です。

古物商とは中古品を仕入れて販売したり、有料での貸し出し、もしくは物々交換を行う場合などに必要となる資格です。無在庫転売であっても、結果的に「仕入れ」をして販売を行うため、古物商の資格が必要となるケースが大半です。

古物商の資格を得ずに無在庫転売を行った場合は、「3年以下の懲役または100万円以下の罰金もしくは両方が科される(併科)」となるため注意しましょう。なお、ネットビジネスとして展開し、販売元が主にフリマアプリ等であっても古物商の資格が必要です。

無在庫転売は、一見すると簡単に始められるビジネスのように思いますが、実際はさまざまな資格や法律を遵守したうえで行わなければいけません。適切にビジネスを行うためにも、弁護士への相談を検討しましょう。

Q.商品が届かない場合、詐欺罪になりますか?

A.商品が届かないからといって、直ちに詐欺罪が成立するわけではありません。

詐欺罪が成立するためには以下4つの要件を満たしている必要があります。

  • 欺罔行為
  • 錯誤
  • 財産の処分
  • 財産の移転

欺罔行為とは、「相手を騙そうとする意思」です。錯誤は「相手が騙されていること」です。そして実際に財産の処分・移転があって初めて詐欺罪が成立します。

つまり、販売元が「あなたを騙そう」としていなければ、そもそも詐欺罪は成立しません。たとえば、「商品の仕入れができず、商品を発送できない」という状況であれば詐欺罪に問うことはできません。

一方で、販売元が商品の仕入れが難しいことを知っていながら商品を販売し、代金を受け取っているにも関わらず、商品を発送しない場合。この場合は、詐欺罪に問える可能性があります。なぜなら、「商品の仕入れが難しいことを知っている=欺罔行為」と判断されるためです。

上記のことから、商品の発送がなくても直ちに詐欺罪が成立するわけではありません。あくまでも、販売元の意思によるものであると思っておきましょう。

なお、購入者は債務不履行に伴う賠償請求等が可能です。あくまでも民事的な請求となりますが、検討されている人は弁護士への相談を検討されてみてはいかがでしょうか。

Q.海外サイトの商品を日本で転売しても大丈夫ですか?

A.法律に抵触しなければ転売しても問題ありません。

海外サイトで販売されている商品の中には、日本への輸入が禁止されているものや偽ブランド品などが多くあります。これらの商品を輸入し、販売した場合は当然罪に問われます。

一方で、禁止されていない商品を輸入している場合やブランド品であっても正規品である場合、その他法律に抵触しない場合は違法ではありません。とくに海外からの輸入品はトラブルが発生するケースが多いため輸入時や販売時は注意しましょう。

Q.偽物を販売してしまった場合、どうなりますか?

A.商標権侵害の罪に問われる可能性があります。

偽物のブランド品等を販売した場合は、商標権侵害の罪に問われ、非常に重い罪が科される可能性があるため注意しましょう。たとえ、あなたと購入者が偽物であることを知り、お互いに納得していた場合であっても違法です。

そのため、とくにブランド品の販売を検討している場合は、かならず自分の目で見て本物であるかどうかを確認してから販売する必要があります。もし、偽物か本物かの判断が付かない場合は、販売しないようにしましょう。

なお、あなた自身も「本物である」と誤認して仕入れ、販売した場合であっても、結果的に商標権侵害に問われる可能性があります。そのため、とくにブランド品の無在庫転売は注意が必要です。

まとめ

今回は、無在庫転売について解説しました。

無在庫転売自体に違法性はありません。しかし、さまざまな法律によって禁止されている行為もあるため、無在庫転売を行う際は「法令遵守の徹底」を意識し、不安な場合は弁護士への相談を検討するなどの対策が必要です。

また、無在庫転売は購入者とのトラブルが発生しやすいビジネスモデルです。そのため、リスクヘッジもしっかり行っておく必要があります。

無在庫転売は、合法であり適切に行えばビジネスモデルとして優秀です。しかし、一歩間違えれば犯罪になることを意識しておきましょう。本記事を参考にしていただき、不安な場合は弁護士への相談も検討しておくと安心です。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

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