ぶつかり男(体当たり)は何罪に問われる?逮捕後の流れや対処法について解説

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意図的に人にぶつかりにいく行為を「体当たり男」「ぶつかり男」などと言います。昨今、電車内や駅構内等で意図的にぶつかりに行く行為を繰り返す人が増えています。

これらの行為は当然犯罪行為であり、暴行罪や傷害罪といった重い罪に問われる可能性があるため注意しなければいけません。

この記事では、ぶつかり・体当たり行為で問われる可能性のある罪や罪に問われてしまった場合の対処法等について解説しています。ぶつかり・体当たり行為を行ってしまい、今後どうすれば良いのだろうか?と不安を抱えている人は、本記事をぜひ参考にしてください。

体当たりで問われる罪とは

混雑した場所等で故意に体当たりをする、いわゆる「ぶつかり男」と呼ばれる人たちがいます。これらの行為は、いずれも刑法犯であり以下の犯罪が成立する可能性があります。

  • 暴行罪
  • 傷害罪
  • 迷惑防止条例違反

まずは、ぶつかり男(体当たり)が犯罪として成立するのか?どのような犯罪が成立するのか?について詳しく解説します。

暴行罪

体当たり行為は刑法第208条に規定されている行為であり、定義は「暴行の結果、相手が傷害に至らなかった場合」に成立する犯罪です。傷害とは、「怪我」のことです。つまり、体当たりをしたものの、相手に怪我を負わせる程度ではなかった場合に暴行罪が成立します。

そして、暴行とは「人の身体に対して物理的な力を行使した場合」に成立する行為です。体当たりは、人の体に物理的な力を加えている行為であるため、暴行として成立します。

暴行罪は、たとえば殴る、蹴る、唾を吐きかける、胸ぐらを掴むといった行為でも成立する行為です。つまり、「人の身体に対して物理的な力を行使した場合」であれば、さまざまな状況で暴行罪が成立します。

暴行罪の法定刑は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。比較的刑罰は軽いですが、逮捕される可能性があるため注意しましょう。

【拘留とは】
拘留とは1日以上30日未満の間、刑事施設へ収監する刑事罰の一つです。内容は懲役刑と同様ですが、1日以上30日未満である場合は拘留と呼びます。また、同じ呼び方で「勾留(こうりゅう)」というものがあります。

勾留は、裁判で判決が確定していない未決勾留者の身柄を拘束しておくために行われる手続きであり、拘留とはまったく異なります。

【科料】
科料とは、1,000円以上1万円未満の金銭納付を命じる刑事罰です。内容は罰金刑と同じですが、1,000円以上1万円未満の場合は「科料」と呼びます。

なお、拘留や科料はいずれも刑事罰です。そのため、判決が確定した場合は前科が残るため注意しましょう。

傷害罪

体当たりの結果、相手に対して傷害を負わせた場合は傷害罪が成立します。傷害とは、「怪我」のことを指します。

たとえば、体当たりをした結果、相手が転んで骨折したり擦り傷を負った場合は、傷害罪という犯罪が成立します。傷害罪は、「暴行の結果、相手を傷害に至らしめた場合」に成立する犯罪であり、暴行罪よりも厳しい刑罰が科されます。

傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。暴行罪の法定刑が「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」であるため、非常に重い刑罰であることがわかります。

「体当たりをした」という行為であっても、結果次第で暴行罪・傷害罪のどちらが成立するかが異なります。いずれの場合であっても、何らかの罪に問われる可能性が高いため注意してください。

迷惑防止条例

迷惑防止条例は条例であるため、各都道府県によって定められている法律です。体当たり行為に対する直接的な罰則規定はないものの、「女性の体に触れたい」など痴漢目的での接触は、迷惑防止条例違反に問われる可能性があります。

東京都迷惑防止条例違反を例に見ると、法定刑は「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」です。ただし、常習的な犯行であると認められた場合は、上記以上の刑罰が科される可能性があるため注意してください。

体当たりで罪に問われた場合の流れ

体当たり行為で罪に問われた場合、逮捕される可能性があります。その後、身柄を拘束され、起訴、刑事裁判を受けるといった流れになります。次に、体当たりで罪に問われた場合の流れについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

逮捕

体当たり行為は暴行罪や傷害罪、もしくは迷惑防止条例違反で逮捕される可能性がある行為です。逮捕という行為は、罪を犯した疑いのある者の身柄を一時的に拘束するための手続きです。

逮捕された場合は、逮捕されたときから最長48時間の身柄拘束が可能となります。この間は、警察署内にある留置所と呼ばれる場所に収監され、原則1日8時間を超えない範囲で取り調べを受けます。

逮捕から48時間以内は、留置所で身柄を拘束されるため、当然学校や会社へ行くことはできません。通学、出社等できないことによる影響が発生する可能性があるため注意が必要です。

なお、罪を犯したからといって必ずしも逮捕されるとは限りません。逮捕せずに捜査を行うケースもあります。これを「在宅捜査」と呼びます。

逮捕という行為は、人の身柄を拘束するための手続きであることから、以下のうちいずれかの条件を満たしている場合にしか認められません。

  • 逃亡の恐れがあること
  • 証拠隠滅の恐れがあること
  • その他逮捕する事情がある場合

上記いずれの条件も満たしていない場合は、逮捕が認められず在宅捜査となります。つまり、体当たりをしたからといって、必ずしも逮捕されるとは限りません。

勾留請求

逮捕された被疑者の場合、逮捕から48時間以内に検察官へ身柄を送致しなければいけません。これを「身柄付送致」と呼びます。逮捕されていない被疑者の場合は、時間に制限はありません。

身柄付送致された被疑者は、送致から24時間以内に引き続き被疑者の身柄を拘束する必要があるかどうかを判断されます。判断をするのは検察官であり、勾留が必要であると判断した場合は裁判所へ勾留請求を行い、最終的には裁判官が勾留の必要性を判断する流れです。

この時点で最長72時間の身柄拘束が発生します。その後、勾留が認められれば最長10日間の身柄拘束となります。一般的には勾留延長が認められるケースが大半であるため、さらに10日、合計20日間の勾留が認められると思っておきましょう。

つまり、勾留が認められた場合は最長で23日間の身柄拘束が発生します。この間は、警察署内にある留置所と呼ばれる場所で過ごさなければいけません。逮捕時同様に学校や会社へ行くなどの社会生活も難しくなるため注意しましょう。

なお、勾留が認められなかった場合は、在宅捜査に切り替わります。在宅捜査になった場合は、社会生活を送ることはできますが、検察等の呼び出しには応じなければいけません。もし、応じなかった場合は「逃亡・証拠隠滅の恐れがある」と判断され、勾留となるため注意しましょう。

起訴・不起訴の判断

勾留されている被疑者の場合、勾留期間中に体当たり行為について起訴するか不起訴とするかを判断します。体当たりを行った事実があっても、被害者との示談交渉成立有無や本人の反省度などを考慮して不起訴となる可能性があります。

一方で、常習性がある場合や示談が成立していない、本人が反省していないなどさまざまな事情を考慮して起訴となるケースもあります。起訴方法には「略式起訴」と「正式起訴」の2種類があります。

略式起訴の場合は、刑事裁判を行わずに罰金刑が確定します。刑事裁判が開かれない分、早期の釈放が見込まれる点が大きなメリットです。しかし、検察側の主張を全面的に認めなければいけないため、弁解したい被疑者にとってはデメリットとなり得ます。正式起訴が選択された場合は、かならず刑事裁判が開かれます。

刑事裁判を受ける

刑事裁判では、あなたの犯した罪について有罪か無罪かを判断し、有罪である場合はどの程度の刑罰に処するべきかを判断し、最終的には刑事裁判で判決として言い渡されます。

判決に従って刑に服する

刑事裁判で言い渡された判決に従って、刑に服します。懲役刑であれば刑務所に一定期間収監されます。罰金刑が確定すれば、罰金を納めることによって事件は終了しますが、支払えなければ労役場留置となるため注意しましょう。

なお、執行猶予付きの判決が下される可能性があります。執行猶予とは、刑罰の執行を一定期間猶予することを指します。

たとえば、「懲役3年執行猶予5年」の判決が言い渡された場合は、直ちに懲役3年の刑罰が執行されることはありません。5年間、社会生活を送りながら更生を目指し、罰金刑以上の刑罰が確定しなければ刑罰が執行されることはありません。

一方で、執行猶予期間中に罰金刑以上の刑罰が確定した場合は、執行が猶予されていた5年の刑罰が加算される可能性があるため注意しましょう。

体当たりで罪に問われた場合の対処法

体当たりで罪に問われた場合は、以下の対処法を検討しましょう。

  • 刑事事件に強い弁護士へ相談をする
  • 被害者と示談交渉を進める

次に体当たりで罪に問われた場合の対処法について詳しく解説します。

刑事弁護に強い弁護士へ相談をする

刑事弁護に強い弁護士への相談を検討しましょう。体当たり行為は、暴行罪や傷害罪もしくは迷惑防止条例違反に問われる可能性がある行為です。いずれの場合も罰金刑の規定があります。

そのため、刑事弁護に強い弁護士へあらかじめ相談をしておくことで、懲役刑を回避できる可能性が高まります。また、早期に被害者との示談交渉を進められれば、不起訴となる可能性も高まるため、できるだけ早めに弁護士へ相談をしておくことが好ましいです。

なお、逮捕された被疑者は逮捕後に一度だけ、当番弁護人を無料で呼ぶことができます。ただ、当番弁護人は弁護活動を目的としているわけではありません。今後の流れや被疑者が抱えている不安を解消するためのアドバイスをしてくれるだけです。

その後は、勾留確定後もしくは起訴後に国選弁護人を選任されますが、タイミングとしてはとても遅いです。仮に勾留確定後であれば、起訴・不起訴の判断まで20日間しかなく、被害者との示談交渉を進める時間が少ないです。

起訴後であれば、99%の確率で有罪判決が下されます。そのため、可能であれば実費ではあるものの私選弁護人へ依頼をしたうえで早期に被害者との示談交渉を進めておきましょう。

被害者と示談交渉を進める

被害者との示談交渉成立有無は、起訴・不起訴の判断や量刑を判断するうえで非常に重要です。起訴・不起訴の前に示談が成立していた場合は、不起訴となる可能性が高まります。不起訴になれば、前科は付かないためその後の影響を最小限に抑えられます。

早めに示談を成立させるためにも、できるだけ早めに弁護人へ依頼しておいたほうが良いです。なお、私選弁護人は被疑者本人じゃなくても家族や友人等でも依頼可能であるため、身近な人が検討しても良いでしょう。

体当たりで罪に問われた場合によくある質問

体当たり行為で罪に問われた場合によくある質問を紹介します。

Q.示談交渉をするにはどうすればいい?

A.弁護人へ依頼をしておきましょう。

示談交渉は被害者に対して弁償をしたり慰謝料を支払ったりして、許してもらう交渉です。通常は、被害者もしくは被害者の代理人(弁護士)対加害者もしくは加害者の弁護士同士で示談交渉を行います。

とくに加害者側は直接被害者とやり取りをすることが難しいため、基本的には弁護士へ相談をしたうえで示談交渉を進めていく必要があります。

体当たり行為は示談交渉成立有無によって起訴不起訴の判断に大きな影響を与える可能性が高いです。そのため、起訴される前に弁護士へ相談をしたうえで、示談交渉の成立を目指しておきましょう。

Q.被害届が出されたらどう対応すべき?

A.早期に被害者と示談交渉を進めておきましょう。

体当たり行為で問われる可能性の高い、暴行罪や傷害罪、迷惑防止条例はいずれも親告罪ではありません。そのため、被害届の有無に関わらず「体当たりをした」という事実のみで事件化され、罪に問われる可能性があります。

【親告罪とは?】
親告罪とは、被害者等の告訴がなければ罪に問うことができない犯罪を指します。

しかし、被害届が提出された後に被害者と示談交渉を行って和解が成立した場合、被害者側が被害届を取り下げる可能性があります。被害届が取り下げられた場合は、被害者の処罰感情が気薄化していることが明らかとなるため、起訴・不起訴の判断や量刑判断に影響を与えます。

そのため、被害届が出された場合も早期に被害者と示談交渉を進めておくことがとても大切です。

Q.罪で前科がつく期間はどれくらい?

A.前科は一生消えません。

体当たり行為で罪に問われ、有罪判決が確定した場合は、前科が残ります。前科は一生消えません。とはいえ、前科による影響は限定的であり、自分から「前科がある」と伝えなければ、周囲の人に知られる可能性も低いです。

Q.体当たりの事件で弁護士に相談するタイミングはいつがベスト?

A.行為を行った直後、もしくは捜査対象となった時点が良いでしょう。

弁護士への相談は「とにかく早め」がポイントです。体当たり行為を行った事実がある以上、遅かれ早かれ罪に問われる可能性が高いです。そのため、自首や出頭を含めた検討をしている場合は、すぐにでも弁護士へ相談をするべきでしょう。

遅くとも、捜査対象となり警察から呼び出しを受けた時点、もしくは逮捕された時点で弁護士へ相談し、早期に弁護活動を開始してもらうことが大切です。

Q.不注意でぶつかってしまった場合は罪に問われますか?

A.不注意でぶつかってしまった場合は、罪に問われない可能性が高いでしょう。

たとえば、「街中を歩いていて周囲に気を取られて他の歩行者に接触してしまった」という場面があったとしましょう。この場合は、お互いに不注意であるため罪に問われる可能性は低いでしょう。

しかし、ぶつかってしまった結果、相手に対して怪我を負わせてしまった場合は、過失傷害罪という罪が成立する可能性があります。過失傷害とは、自身の不注意によって人に怪我をさせてしまった場合に成立する犯罪です。30万円以下の罰金または科料が科される可能性があります。

とはいえ、意図的にぶつかろうとしたわけではないため、あなただけが悪いわけではありません。お互いの不注意であるため、過失傷害罪が成立する可能性は低いでしょう。

まとめ

今回は、ぶつかり行為(体当たり)で問われる可能性のある罪や、罪に問われた場合の対処法等について解説しました。

ぶつかり行為は、暴行罪や傷害罪もしくは迷惑防止条例違反に問われる可能性が高い行為です。意図的に人に体当たりし、結果的に怪我をさせてしまった場合は傷害罪に問われる可能性があるため注意しなければいけません。

意図せずぶつかってしまった場合は罪に問われることはないものの、明らかに意図的である場合は当然犯罪として成立します。有罪判決が確定した場合は、前科として残り、その後の人生に生きづらさも感じてしまうでしょう。

もし、一時の感情でぶつかり行為をしてしまったのであれば、早期に弁護士へ相談をしたうえで解決を目指しましょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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