アリバイがあるのに逮捕された場合には、できるだけ早いタイミングでアリバイを立証する証拠を収集して、不当な身柄拘束を回避し、不起訴処分獲得を目指す必要があります。
逮捕されてすぐの事情聴取への対応を誤ったり、客観的証拠を用意できずにいたりすると、長期間身柄拘束されて起訴処分が下されかねません。
そこで、この記事では、アリバイがあるのにご家族が逮捕されてしまった人や、アリバイがあるのに警察から任意での出頭要請を受けている人のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。
- アリバイがあるのに逮捕されたときに起こること
- アリバイがあるのに逮捕されたときの対応策
- アリバイがあるのに逮捕されたときに弁護士に相談するメリット
- 不当逮捕や誤認逮捕のあと、無罪・無実を証明できたときに利用できる補償制度
目次
アリバイがあるのに逮捕されるとどうなる?
被疑者側としては明確に主張するべきアリバイがあったとしても、捜査活動が進められた結果、警察に逮捕される可能性があります。
まずは、アリバイがあるのに逮捕されてしまったときに生じる出来事やデメリットについて解説します。
逮捕・勾留によって一定期間強制的身柄拘束される
事件当時にアリバイがあったとしても、「被疑者が犯行に及んだと判断するのが相当な客観的証拠が存在し、かつ、逃亡または証拠隠滅のおそれがある」と判断されると、逮捕状が発付されて、通常逮捕されてしまいます。
そして、逮捕処分が下されると、警察段階で48時間以内、検察段階の24時間以内、合計72時間以内の範囲で強制的に身柄拘束付きの取り調べを受けなければいけません。
また、事件当時のアリバイを主張するとなると、取り調べにおいて犯行を否認することになりますが、事情聴取で否認の対応をとると、検察官が勾留請求をする可能性が高いため、捜査段階の身柄拘束期間がさらに20日間以内の範囲内で延長される可能性が高いです。
身柄拘束期間中は外出・帰宅は一切許されません。厳しい取り調べと留置場生活で過大なストレスを強いられかねないでしょう。また、会社や学校にも連絡ができず、無断欠勤・無断欠席扱いになる危険性もあります。
捜査機関から厳しい取り調べを受けて不利な供述を強要されかねない
捜査機関は、犯人の目星をつけた人物が犯行に及んだ事実を立証するために捜査機関をおこないます。
そして、被疑者がアリバイを主張するように、捜査機関側が思い描いた犯罪ストーリーと異なる供述をする場合には、以下のような取り調べ手法によって捜査機関側に有利な供述(被疑者側に不利な供述)を引き出そうとしてくるでしょう。
- 長時間連続の取り調べ
- 早朝深夜の取り調べ
- 捜査員から厳しい言葉や暴言を吐かれる
- 威圧的な態度で恐怖心を抱かせられる
- 「自白するまで取り調べは終わらないからな」などの誘導をされる
供述や証拠の状況次第では起訴される危険性がある
被疑者側がどれだけアリバイを主張して犯行を否認したとしても、被疑者が犯行に及んだ事実を基礎付ける客観的証拠が存在すると、検察官から起訴処分の判断を下される可能性があります。
起訴処分が下されると、1ヶ月〜2ヶ月後に開かれる公開の刑事裁判を受けなければいけません。また、アリバイを主張するなどして犯行を否認していると、逃亡または証拠隠滅のおそれがあると判断された結果、保釈請求が認められずに起訴後も勾留が継続しかねないでしょう。
刑事手続きの進行状況次第では有罪判決が下されかねない
被告人がどれだけアリバイを主張したとしても、信用度の高い他の客観的証拠や目撃者の証言などが存在すると、刑事裁判で有罪判決が下される可能性があります。
たとえば、拘禁刑が確定すると、刑期を満了するまで刑務所への服役を強いられます。服役期間中は社会生活から隔離されてしまうので、出所後の仕事や住む場所などを見つけるのに苦労をするでしょう。
また、執行猶予付き判決なら今までどおりの社会生活を送ることができるものの、執行猶予期間中の生活にはさまざまな制約が課される点に注意が必要です。さらに、罰金刑が確定すると、被害者に対する示談金・損害賠償金とは別に、刑事責任として判決で指定された金額を全額一括で現金納付しなければいけません。
有罪になってしまうと前科持ちとしてさまざまなデメリットを強いられる
アリバイがあるのに逮捕されて、最終的に有罪判決が下されると、刑事罰を科されるだけではなく、前科持ちと扱われます。
前科とは、有罪判決を下された経歴のことです。前科者になってしまうと、今後の社会生活に以下のデメリットが生じる可能性が高いです。
- 賞罰欄付き履歴書への記載義務、採用面接での回答義務が課されるので、就職活動や転職活動が成功しにくくなる
- 義務を履行せずに前科がある事実を隠したまま内定を獲得しても、企業側に発覚すると、経歴詐称を理由に内定が取り消されたり懲戒解雇処分を下されたりする可能性が高い
- 前科を理由に制限される仕事・資格に従事できない
- 前科は法定離婚事由に該当すると判断されることが多いため、配偶者から離婚を求められると拒否できない
- 前科があるとビザ・パスポートの発給制限を受けることがあり、海外旅行や海外出張に影響が出る
- 再犯時の刑事処分が重くなる可能性が高い
刑事事件の内容次第では実名報道されるリスクにも晒される
被疑者側がアリバイを主張している事案であったとしても、捜査活動が進められて逮捕に至ると、その時点で実名報道されるリスクに晒されます。
一度でも実名報道されると、半永久的にインターネット上に犯罪歴に関する情報が残ってしまいます。仮にアリバイの証明に成功して無実が明らかになったとしても、インターネット上の情報が原因で、就職や転職、結婚などへ悪影響を及ぼしかねないでしょう。
アリバイがあるのに逮捕されたときの対処法
アリバイがあるのに逮捕されたときの対処法について解説します。
被疑事実を正確に把握する
アリバイがあるのに逮捕された場合には、どのような容疑をかけられているのか、なぜ自分が犯人と扱われているのかについて正確に把握してください。
容疑をかけられている事実関係を明確にすることで、今後反論するときの方針がはっきりするでしょう。
罪を認めるような供述をしない
アリバイがあるのに誤認逮捕された場合でも、捜査機関から厳しい取り調べが実施されます。
しかし、どれだけ厳しい取り調べであったとしても、主張するべきアリバイがある以上、やってもいない罪を認めるような供述をしてはいけません。
というのも、実際に犯行に及んだ事実があるか否かにかかわらず、自ら犯行に及んだ旨を供述し、その旨が記載された供述調書に署名・押印してしまうと、自白調書自体が刑事手続き上、有力な証拠と扱われてしまうからです。一度でも事情聴取で犯行を認めてしまうと、あとからアリバイを主張して犯行を否認するのが相当難しくなってしまいます。
アリバイがあるとしっかりと主張する
捜査機関は、被疑者の目星をつけた人物を自供させるために厳しい取り調べを実施します。
しかし、被疑者側として明確に主張するべきアリバイがあるのなら、一貫してその旨を主張しつづけてください。
主張するアリバイに矛盾があったり供述内容が変遷したりすると、捜査機関から「嘘のアリバイを主張しているのではないか」と疑われて、さらに厳しい取り調べが実施されかねません。逆に、事情聴取の最初から一貫したアリバイを主張していれば、「被疑者が主張しているアリバイは本当で、捜査活動に誤りがあるのではないか」と判断させることができるでしょう。
すぐに刑事事件に強い弁護士に連絡をする
アリバイがあるのに逮捕されたときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に連絡をしてください。
被疑者には弁護人選任権が認められているので、逮捕されたとしても、すぐに弁護士を選任して助けを借りることができます。
アリバイがあるのに逮捕されたときに弁護士に相談・依頼するメリット4つ
アリバイがあるのに逮捕されたときに私選弁護人に相談・依頼するメリットを4つ解説します。
- アリバイ証明に役立つ客観的証拠や証人を用意してくれる
- 取り調べへの対応方法についてアドバイスを期待できる
- 早期の身柄釈放や不起訴処分獲得を目指してくれる
- 起訴されたとしても刑事裁判で無罪判決獲得を目指してくれる
アリバイを証明する客観的証拠や証人を用意してくれる
アリバイがあるのに逮捕された場合には、警察や検察官に対して捜査活動が誤っている旨を説得的な材料を添えて提示する必要があります。
被疑者本人がどれだけ「自分にはアリバイがある」と主張したとしても、他の情況証拠がある場合には、捜査活動の進展を妨げることができません。
刑事事件に強い弁護士は、犯行当時に被疑者が別の場所にいたことを証言してくれる証人や、防犯カメラやドライブレコーダーの記録などを用意して、被疑者のアリバイを客観的証拠で証明してくれるでしょう。
取り調べでの供述内容や供述姿勢、注意事項などについてアドバイスを期待できる
アリバイがあるのに逮捕されたときには、逮捕後に実施される取り調べでどのような対応をするかが重要になります。
たとえば、逮捕されて気が動転しているところ厳しい取り調べが実施されて、やってもいないことをやったと供述してしまうと、犯人扱いをされたまま捜査活動が進められてしまうでしょう。
刑事事件に強い弁護士にすぐに連絡をすれば、逮捕後の取り調べで黙秘・否認をするべきか否か、アリバイがある旨をどのように説明するべきかについて具体的なアドバイスを期待できるでしょう。
誤認逮捕を立証して不起訴処分や早期の身柄釈放を目指してくれる
アリバイがあるのに逮捕されてしまった場合でも、早期に弁護士に連絡をして適切な防御活動を展開すれば、アリバイがある旨を捜査機関に納得させることができます。
そして、アリバイの立証に成功すれば、逮捕・勾留といった強制的な身柄拘束処分の根拠が失われるので、早期に身柄が釈放されるでしょう。
また、明確なアリバイが存在する以上、被疑者が犯行に及ぶのは不可能なので、検察官から嫌疑なしを理由とする不起訴処分を獲得できるでしょう。
仮に起訴されたとしても刑事裁判で無罪判決獲得を目指してくれる
被疑者側としてはアリバイを主張していたとしても、その他の証拠の状況次第では、検察官が起訴処分の判断を下す可能性もゼロではありません。
刑事事件を得意とする弁護士に相談・依頼すれば、公開の刑事裁判でアリバイを主張・立証して、無罪判決の獲得を目指してくれるでしょう。
アリバイがあるのに逮捕されたあと、無罪を立証できたときに検討するべき補償制度
アリバイがあるのに逮捕されてしまった場合でも、その後に不起訴処分・無罪判決を獲得できたときには、誤認逮捕・不当逮捕によって生じた損失などの補償を請求できます。
被疑者補償規程に基づく補償金請求
被疑者補償規程とは、逮捕・勾留によって捜査機関に身柄拘束をされた被疑者が利用できる補償制度です。
逮捕・勾留されたものの、明確なアリバイが存在するなど、被疑者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるときには、身柄拘束期間1日につき1,000円以上12,500円以下の補償金を受け取ることができます。
被疑者補償規程に基づく補償を受けるには、補償に関する裁定通知書を受け取ってから6ヶ月以内に補償金申し立ての手続きをする必要があります。また、逮捕されたことによって生じた名誉毀損の回復を求める場合、補償金が交付された日から30日以内に補償公示の申し立てをすることで、官報や新聞紙などに補償裁定の要旨を掲載してもらえます。
刑事補償法に基づく補償金請求
刑事補償法では、刑事裁判において無罪判決を受けた者が身柄拘束を受けていた期間に生じた損失を補償することを目的とした法律です。
たとえば、逮捕・勾留によって捜査手続き中に身柄拘束をされた場合や、起訴後勾留によって無罪判決まで未決拘留を強いられていた場合には、身柄拘束期間1日あたり1,000円以上12,500円以下の補償金を受け取ることができます。補償金の金額が決定される際には、拘束の種類、期間の長短、本人が受けた財産上の損失、本来得るはずだった利益の喪失、精神上の苦痛、身体上の損傷、警察・検察・裁判の各機関の故意過失の有無などの諸般の事情が総合的に考慮されます。
刑事補償法に基づく補償請求は、無罪判決確定日から3年以内におこなう必要があります。
国賠法に基づく損害賠償請求
被疑者補償規程や刑事補償法に基づく補償請求だけでは、被疑者・被告人に生じた損失や精神的損害を回復しきれないケースは少なくありません。
このような場合には、国家賠償法に基づいて損害賠償請求を検討するべきだと考えられます。
ただし、国家賠償法に基づく損害賠償請求をおこなうには、「捜査機関や裁判所が、故意または過失によって違法に損害を加えたこと」という要件を満たさなければいけません。
たとえば、明白なアリバイがあるのにこれを示す証拠をわざと隠滅して被疑者を犯人に仕立て上げた場合など、捜査機関側に明らかな違法行為が認められるケースでなければ、国家賠償法に基づく請求は認められにくいでしょう。
アリバイがあるのに逮捕されたときにはすぐに弁護士に相談しよう
アリバイがあるのに逮捕されてしまったときには、すぐに刑事事件に強い弁護士に連絡をしてください。
早期に適切な防御活動を展開しなければ、アリバイがあるのに起訴されてしまったり、長期間身柄拘束されたりしかねないからです。
被疑者側として主張できるアリバイがあったとしても、捜査対象になった以上は、捜査機関側が納得するだけの証拠を用意しなければいけません。被疑者本人だけでは証拠収集をスムーズにおこなうことができない以上、できるだけ早いタイミングで弁護士に依頼をして適切な防御活動を展開するべきでしょう。
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