カンニングは逮捕される?法律上のリスクと処分を詳しく解説

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カンニングは「少しくらいならバレないだろう」と軽く考えられがちな行為ですが、その代償は想像以上に大きいものです。学校の定期テストや大学入試、資格試験など、どのような場面でも「不正行為」として厳しく扱われ、発覚すれば停学・退学処分や受験無効といった重大な結果を招く恐れがあるでしょう。

さらに近年では、スマートフォンやインターネットを使った不正が増加しています。このことにより、単なる校内ルール違反にとどまらず、偽計業務妨害罪や不正アクセス禁止法違反 など、刑事事件として立件されるケースも発生しています。

とくに国家資格試験や大学入試のように社会的影響が大きい試験では、警察が介入して逮捕に発展することもあるため注意が必要です。本記事では、カンニングの定義から逮捕・起訴の可能性、成立し得る犯罪や警察が介入するケースまで詳しく解説します。

目次

カンニングの定義

カンニングとは、本来自分の力で解答するべき試験で、他人の答えを盗み見したり、メモやスマートフォンなどを不正に使用したりする行為を指します。日本では、カンニング自体が刑法で処罰されるわけではありませんが、学校や試験運営団体の規則上「不正行為」とされ、停学・退学、受験無効などの処分が下されることがあるため注意が必要です。

また、近年では大学入試や国家資格試験で、試験問題の不正入手や不正解答の共有など、業務妨害や不正アクセス禁止法に関わる行為として立件されるケースもありました。つまり、軽い気持ちの不正でも、場合によっては逮捕や刑事処分につながる可能性があることを理解しておく必要があります。

まずは、カンニングとはどのような行為を指すのか?学校試験や入学試験、あるいは資格試験における違いや日本でのカンニングの位置付けについて詳しく解説します。

学校試験・入学試験・資格試験における違い

カンニングの扱いは、試験の種類によって大きく異なります。たとえば、学校内の定期テストでは、発覚しても停学や退学など校内処分にとどまることが大半です。

一方で、大学入試や国家資格試験では、受験無効や数年間の受験禁止といった重い処分が科されることがあります。とくに資格試験の場合、不正行為が発覚すると合格取り消しや受験機関から警察へ通報されてしまうケースもあり、人生や将来のキャリアに影響を及ぼす可能性が高いです。

日本でのカンニングの位置づけ(不正行為)

日本では、試験中のカンニング行為そのものを処罰するための刑法上の犯罪はありません。しかし、試験問題を事前に入手する行為や、他人と不正に解答をやり取りする行為は、場合によっては「偽計業務妨害罪」や「不正アクセス禁止法」に該当し、刑事処分の対象となることがあります。

つまり、一般的な学校のテストでは逮捕されることは稀でも、公共性の高い試験や大規模な資格試験でのカンニングは逮捕される可能性があるのです。そのため、カンニングを軽く考えることは非常に危険であり、行為の種類や規模によっては逮捕されたり有罪判決を受けて前科がついたりする可能性があるため注意しなければいけません。

カンニングで逮捕される可能性

カンニング行為が直ちに刑法上の犯罪に該当することはありません。そのため、「カンニング=犯罪(逮捕)」と紐づけることはできません。ただし、カンニングを行った行為が何らかの犯罪に該当するケースもあり、結果として逮捕、有罪判決となる可能性もあるため注意しなければいけません。

次に、カンニングで逮捕される可能性についても詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

カンニング自体が犯罪になる可能性

カンニング行為自体が直ちに、犯罪となる可能性は低いです。そもそも一般的に、試験中に何らかの方法で解答を盗み見する行為は、学校や試験機関の規則違反にあたりますが、刑法で直接処罰されるものではありません。

しかし、行為の方法や規模によっては、刑事事件として立件される可能性があります。たとえば不正行為が試験の運営を妨げる行為である場合は、偽計業務妨害罪に該当し、逮捕の可能性があります。

とくに、大学入試や資格試験など公共性の高い試験では、不正行為が試験運営の妨害や情報流出につながる場合があり、逮捕や起訴のリスクが存在することを理解しておく必要があるでしょう。

刑法における直接の規定はない

日本の刑法には、一般的なカンニングを直接処罰する法律はありません。つまり、学校のテストや定期試験でこっそり答案を見る行為そのものでは、警察に逮捕されることはありません。

しかし、本記事で何度も解説しているとおり、試験運営を妨害する行為や他人に不正行為を助けさせる行為は、刑法に定められている偽計業務妨害罪に問われる可能性があります。

整理すると、カンニングをしたからといって直ちに逮捕したり刑事罰に問うたりすることはできません。ただ、カンニング行為が試験運営を妨害するような行為に該当した場合は、偽計業務妨害罪などの刑法犯に該当する可能性があるということです。

つまり、状況やカンニングの方法次第では、逮捕や刑事罰に問われる可能性があるため注意しましょう。

【注意】逮捕に発展するケースがある

逮捕につながるのは、単純な鉛筆やメモでのカンニングではなく、試験運営や第三者の業務に大きな影響を与えるケースです。たとえば、試験問題の不正入手や、外部の協力者と解答を共有する行為、ネットやスマートフォンを用いた大規模な不正などが挙げられます。

こうしたケースでは、偽計業務妨害罪や不正アクセス禁止法違反で逮捕される可能性があります。

警察が介入する可能性のあるケース

警察が介入するのは、試験の公平性や業務運営に重大な影響を与える不正行為があった場合です。たとえば、以下に該当した場合は警察が介入する可能性があるでしょう。

  • 試験問題を外部から入手して配布した
  • 大規模な資格試験で答案を不正に改ざんした
  • SNSやメールを使って複数人で解答をやり取りした

通常の学校テストや大学の授業内試験では警察が関与することはありません。なぜなら、犯罪として成立しないためです。しかし、入試や国家資格など社会的影響が大きい試験では介入される可能性があることを覚えておきましょう。

カンニングで成立し得る犯罪

カンニング行為で成立し得る犯罪については、以下のとおりです。

  • 偽計業務妨害罪
  • 私文書偽造・同行使罪
  • 不正アクセス禁止法違反
  • 電波法違反

次に、カンニング行為で成立し得る犯罪について詳しく解説します。

偽計業務妨害罪が適用される場合

カンニングの中でも、試験の運営や公平性を妨害する行為は、刑法233条の偽計業務妨害罪に該当する可能性があります。たとえば、試験問題を事前に入手して不正に利用したり、答案を他人に送信して結果に影響を与えたりした場合です。

偽計業務妨害罪が成立すると、逮捕や起訴、罰金刑・拘禁刑の対象になることがあり、カンニング行為の中でもとくに刑事リスクが高いケースといえます。

なお、偽計業務妨害罪に問われた場合の法定刑は「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑」です。悪質な場合は、拘禁刑が科される可能性があるため注意しましょう。

私文書偽造・同行使罪にあたるケース

カンニングの過程で成績証明書や受験票などの書類を改ざんした場合、私文書偽造罪(刑法159条)や私文書同行使罪(刑法160条)が成立する可能性があります。具体例としては、試験の受験番号を書き換えたり、答案用紙に他人の名前を書き換えて提出する行為などです。

こうした場合も、単なる不正行為ではなく刑事事件として立件されるため、逮捕や前科がつくリスクがあります。なお、私文書偽造罪の法定刑は有印無印で異なります。有印無印とは、印鑑の有無のことを指します。カンニングである場合は、通常は無印であると考えられます。

そのため、法定刑は「1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金」です。なお、有印の場合は「3カ月以上5年以下の拘禁刑」となり、罰金刑の規定がなくなるため注意しましょう。

不正アクセス禁止法違反(スマホ利用など)

近年増えているのが、スマートフォンやタブレットを利用したカンニングです。試験中にスマホで外部と連絡を取り合ったり、クラウド上の解答データを閲覧したりすると、不正アクセス禁止法違反に該当する可能性があります。

この場合も、警察が介入して逮捕や捜査につながることがあるため、スマホや通信機器を用いた不正は非常に危険です。なお、不正アクセス禁止法違反に問われた場合の法定刑は、「3年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金」です。

電波法違反の可能性

無線機器やBluetooth機器などを使った不正行為では、場合によって電波法違反に問われることがあります。たとえば、電波法で規制されている無線送信機を使って試験解答を外部に送信する行為です。

逮捕されるリスクは低いケースもありますが、複数の法律に違反することで刑事責任が重くなる可能性がある点には注意が必要です。

逮捕までの流れ

カンニングで逮捕されるまでの大まかな流れは、カンニングの対象となった試験等の状況によって異なります。そのため、さまざまな状況から見る逮捕までの大まかな流れについて詳しく解説します。

なお、カンニングを行ったからといって必ずしも逮捕されるとは限りません。何らかの犯罪として成立し、尚且つ、証拠隠滅や逃亡の恐れがあると判断された場合しか逮捕は認められません。

仮に「罪を犯した」という事実があったとしても、逮捕されるとは限らないため覚えておきましょう。そして、逮捕されなかった場合は、在宅捜査となります。

試験会場での発覚から退場処分まで

カンニングは、試験会場で監督者や試験官に発覚した時点で、まず退場処分や解答無効などの内部的な対応が行われます。たとえば、大学入試では、スマートフォンやメモによる不正が確認されると、その場で答案を没収され、試験中の退場や成績の失効が即座に決定されます。

この段階では、まだ刑事事件としては扱われませんが、重大な不正や公共性の高い試験の場合、学校や試験主催団体が警察への通報を検討するケースがあります。

学校や主催団体から警察への通報

試験の公平性や運営への影響が大きいと判断された場合、学校や資格試験の主催団体は警察に通報することがあります。

通報のタイミングや内容は団体によって異なりますが、主に以下のようなケースが対象です

  • 試験問題の事前入手・流出
  • 他人と共謀して解答をやり取りした
  • 電子機器や無線機器を用いた大規模な不正

この段階で警察が関与すると、事案の重大性に応じて事情聴取や捜査の準備が進められます。

事情聴取・任意同行の流れ

警察から呼び出される場合、まずは任意での事情聴取が行われるのが一般的です。このとき、カンニング行為の状況や方法、共犯者の有無などが確認されます。重要なのは、任意同行であっても警察官の質問には正確に答えることが求められる一方、黙秘権は認められている点です。

【黙秘権とは】
黙秘権とは「言いたくないことは言わなくても良い」という権利です。たとえば、自分にとって不利となる可能性がある供述はしない、といった選択をしても問題ありません。また、黙秘権の行使が処分や判決に影響を与えることはありません。

事情聴取の結果、刑事事件として立件する価値があると判断されれば、逮捕状を請求・発付して正式に逮捕する流れになります。

逮捕が行われる場合と行われない場合の違い

逮捕されるかどうかは、主に以下の条件で判断されます:

  • 試験運営や第三者の業務に重大な影響を与えたか
  • 共謀や計画性があったか
  • 試験問題の入手や外部への流出があったか

単純に鉛筆やカンペでこっそり答案を見る程度の行為では逮捕に至ることはほとんどありません。 しかし、不正の規模が大きく、業務妨害や情報漏洩に該当する場合は逮捕される可能性が高いため注意が必要です。

なお、先ほども解説したとおり、罪を犯したからといって必ずしも逮捕されるわけではありません。共犯者がいる場合など、証拠隠滅の可能性が高い場合は逮捕される可能性が高いでしょう。

起訴・不起訴の分かれ目

逮捕された後は、検察官が事件の内容を精査して起訴するか不起訴にするかを判断します。

起訴されるかどうかは、以下の要素がポイントになります。

  • 不正行為の規模・影響の大きさ
  • 共犯者や計画性の有無
  • 被害者(試験機関や他の受験者)への影響
  • 初犯かどうか・反省の有無

初犯で被害が軽微な場合、略式罰金や不起訴処分になることもありますが、国家資格や入試のように社会的影響が大きい場合は、起訴されて有罪判決を受けて前科がつくケースもあります。そのため、カンニングは軽い気持ちで行うと逮捕・刑事処分・前科のリスクにつながることを認識しておく必要があります。

カンニングと主な処分

カンニング行為を行った場合、その場面ごとに応じたさまざまな処分が下される可能性が高いです。次に、以下の場面ごとの主な処分について詳しく解説します。

  • 大学入試
  • 高校・大学(テスト)
  • 資格試験

上記シチュエーション以外に処分の重さに影響する要素や処分後の進路、就職への影響についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。

大学入試での処分

大学入試におけるカンニングは、とても厳しく取り扱われます。不正が発覚した場合、当該科目だけでなく全科目が無効となり、受験自体が取り消されるのが一般的です。

さらに、大学入試センター試験(共通テスト)などの全国的な試験では、他大学の出願資格まで失う可能性があります。実際、スマートフォンを使用した不正行為や、他人との答案共有が発覚したケースでは、全受験結果の無効・今後数年間の受験禁止措置が取られた例もあります。

大学入試のカンニングは、単なる校内ルール違反ではなく、「社会的信用を失う重大な不正行為」と見なされるため注意しましょう。

高校・大学での処分

高校や大学など、在学中の試験でカンニングが発覚した場合も、校内規定に基づいて厳重な懲戒処分が科されます。 一般的な処分としては、以下のような段階があります。

  • 当該科目の単位を無効、成績評価の減点
  • 停学・特別指導・試験全体の無効化
  • 退学処分・除籍

とくに大学では、卒業論文やレポートでの盗用も「学問上の不正」としてカンニングと同列に扱われることがあります。また、大学内で処分を受けた記録は学内外の推薦や編入にも影響する可能性があり、安易な行為が将来の選択肢を狭めることになるため注意しましょう。

資格試験での処分

国家資格や公的資格試験におけるカンニングは、法律違反や業務妨害として刑事事件に発展するリスクが高いため注意しましょう。たとえば、公務員試験、司法試験、看護師試験、簿記検定などでは、不正行為が確認されると以下の処分が下される可能性があります。

  • その年度の合格取り消し
  • 一定期間の受験禁止(1〜数年)
  • 不正行為者として公表される場合もある

資格試験の場合、主催団体が警察へ通報することもあります。さらに、すでに資格を取得している人が不正を行った場合、免許の取り消しや登録抹消といった行政処分に発展する可能性もあるため注意しましょう。

処分の重さに影響する要素

カンニングに対する処分の重さは、「不正の方法」「意図」「影響の大きさ」によって変わります。 具体的には以下のような要素が考慮されます:

  • 計画的だったかどうか(共謀や組織的関与の有無)
  • 試験の公平性をどの程度損なったか
  • 使用した手段(メモ・スマホ・通信機器など)
  • 不正の回数や過去の処分歴

同じ「カンニング」であっても、小さな不注意と明確な意図的行為では処分が大きく異なるでしょう。たとえば、組織的な犯行である場合は、計画性や使用手段が悪質であると判断され、処分が重くなるでしょう。また、反省の態度や再発防止の意思が示されない場合、処分がより重くなります。

処分後の進路や就職への影響

カンニングの発覚・処分は、進学や就職活動にも大きな影響を与えます。大学入試で不正があった場合は、他大学への受験資格が一時的に失われることがありますし、在学中の懲戒処分は推薦入試・大学院進学・留学審査にも不利に働きます。

さらに、就職活動でも、退学や停学の事実が履歴書や推薦書で確認されると、採用担当者からの印象が悪くなるでしょう。結果的に、就職へも大きな影響を与える可能性があります。

資格試験の場合は、不正をした事実が主催団体や業界団体に共有されることもあるため、再挑戦が難しくなるケースもあります。カンニングは一度の行為で終わらず、その後の人生やキャリアに長期的な影響を及ぼす可能性がある点を十分理解しておくべきでしょう。

カンニングで逮捕されるリスクが高いケース

カンニング行為が直ちに刑法犯に該当することはないものの、カンニングをした方法等によっては、罪に問われる可能性があるため注意しなければいけません。具体的に、カンニングで逮捕されるリスクが高いケースは以下のとおりです。

  • 組織的なカンニング
  • SNSやインターネットを使った大規模不正
  • 替え玉受験
  • 資格試験での不正行為
  • 試験運営を妨害する行為

次に、カンニングで逮捕される可能性のある行為について詳しく解説します。

組織的なカンニング

複数人が役割分担をして行うカンニングは、個人の不正行為よりも悪質と判断されやすく、「組織的犯行」として刑事責任を問われるリスクが高いです。 実際、過去には、大学入試で受験者と外部協力者がスマートフォンを使って問題を撮影・共有し、回答を得た事案で逮捕者が出ているケースがあります

上記のケースでは、試験運営を欺いて混乱させた行為が「偽計業務妨害罪」に該当する可能性が高くなるため注意しましょう。

SNSやインターネットを使った大規模不正

試験問題をSNSや掲示板に投稿し、外部から回答を募る行為は、不正アクセス禁止法違反や偽計業務妨害罪に問われる可能性があります。 とくに、リアルタイムで問題を拡散した場合、試験全体の公正性を損なうため、警察が介入する可能性が高い行為です。

また、SNS投稿の履歴や通信記録は容易に特定されるため、匿名であっても責任を免れることはできません。

替え玉受験

他人になりすまして試験を受ける替え玉受験は、私文書偽造・同行使罪にあたる可能性があります。 受験票や本人確認書類を偽造した場合には、刑法上の犯罪行為として逮捕される可能性が高いため注意しましょう。 実際、過去には有名大学の入試で替え玉受験が発覚し、依頼者・実行者ともに逮捕された事例があります。

資格試験での不正行為

司法試験、公認会計士試験、宅建などの国家資格試験では、公的資格に関わる信頼性が重視されるため、不正が発覚すると警察が動くケースがあります。とくに、スマホやイヤホンを利用した不正、代理受験、問題漏洩などは、業務妨害罪や不正アクセス禁止法違反が成立する可能性があります。

また、資格試験センターが刑事告訴するケースもあり、単なる退場処分で済まない点に注意が必要です。

試験運営を妨害する行為

試験問題を盗み出したり、会場で他の受験生に不正を持ちかけたりする行為は、「業務妨害罪」に該当する場合があります。 試験主催者の運営を妨害したと認定されると、拘禁刑や罰金刑の対象になる可能性もあるため注意しましょう。

カンニングで逮捕されないケース

カンニングが発覚しても、逮捕されないケースがあります。そもそも、逮捕をするためには「何らかの罪を犯した疑いがある」という前提が必要です。そのため、犯罪として成立しない場合は、カンニングを行ったとしても逮捕まで至ることはありません。

ただし、逮捕されなくてもその試験等が無効となったり、合格を取り消されたりします。あくまでも、カンニング行為自体が犯罪として成立するか否かという点で、参考にしてください。

小規模な不正で学校内部処分にとどまる場合

試験中にカンニングペーパーを使ったり、周囲の答案を一時的にのぞいた程度の行為は、学校の規律違反(不正行為)として処理されるのが一般的です。 この場合、退場処分や試験無効、停学・留年などの校内処分で完結することが多く、警察沙汰になることはほとんどありません。

刑法上の犯罪が成立するには「他人の業務を妨害した」「文書を偽造した」といった明確な違法性が必要なため、単独かつ軽微なカンニングでは逮捕されることはありません。

未成年の初犯で軽微なケース

高校生などの未成年が初めて行ったカンニングの場合、教育的指導の一環として処分にとどめる判断がなされるケースが多いです。 とくに刑法上の犯罪構成要件を満たさない場合、学校側は「再教育を優先」する方針を取ることが多く、警察への通報や逮捕の可能性は低いといえます。

ただし、同じ行為でも悪質性が高い(替え玉・ネット投稿など)場合は、未成年でも捜査対象となる可能性があるため注意しましょう。

試験中のメモ持ち込みなど軽度の不正

ポケットにメモを入れていた、消しゴムの裏に小さく書いていたといった行為も、多くの場合は「不正行為」として内部処分で終わります。ただし、他人の答案や試験内容を盗み見る、外部と通信する、録画・録音するといった行為に発展すれば、業務妨害など刑事責任を問われる可能性もあります。

つまり、「意図的かどうか」「他人を巻き込んだか」が処分と逮捕の分かれ目になるでしょう。

警察が介入しないことが多い理由

カンニング行為は、基本的に学校や試験機関内部での規律違反として完結する性質を持っています。 そのため、警察が介入するのは「試験運営を妨害した」「大規模な不正」「他人を巻き込んだ」など、社会的影響が大きい場合に限られます。 試験会場でカンニングが発覚しても、主催者が被害届を出さなければ、警察が独自に動くことはほぼないでしょう。

処分と逮捕の線引き

処分で済むか、逮捕されるかの線引きは、「行為の悪質性」「被害の範囲」「主催者の対応」によって変わります。 学校内部での軽度な不正 である場合は、校内処分や試験無効といった処分で終了するケースが多いです。

一方で、資格試験などでの大規模不正を犯した場合は、刑事事件化の可能性があります。また、他人の業務を妨害したり替え玉受験をしたりした場合は、 逮捕や起訴される可能性があるでしょう。

逮捕されなかったとしても残るリスク

カンニング行為を行い、仮に逮捕まで至らなかったとしても以下のようなリスクが発生するため注意しましょう。

  • 進学や就職での不利益
  • 学校での内部記録
  • 家族への影響
  • SNSで拡散されるリスク
  • 信用失墜の回復の難しさ

次に、逮捕されかなかったとしてもカンニングによって発生し得るリスクにつて詳しく解説します。

進学や就職での不利益

カンニングを行うと、進学や就職に影響を与える可能性があるため注意しましょう。なぜなら、不正行為を理由に受験資格の取り消しや出願制限が課される場合があるためです。

たとえば、大学入試でカンニングが発覚した場合、翌年度以降の受験が禁止されることもあり、将来的な進学の道が狭まる可能性があります。 また、大学や資格試験での不正が履歴に残った場合、就職活動時の面接・背景調査などで不利に働くこともあるでしょう。

とくに公務員や金融機関など、信用を重視する職種では、過去の不正行為がマイナス評価される可能性が高いです。

学校での内部記録

カンニングが発覚すると、「不正行為」として学校内部に記録が残るのが一般的です。 この記録は、転校・推薦・進学時に参照されることがあり、本人が反省していても記録が完全に消えるわけではありません。

とくに大学では、懲戒記録が残ることで奨学金の継続支給や単位認定に影響することもあるため、注意しましょう。

親や家族への影響

カンニングが発覚した場合、学校や試験機関から保護者に連絡が入ることが多く、家庭内にも影響が及びます。保護者が呼び出されて説明を受けたり、本人が謝罪文の提出を求められたりすることも少なくありません。

本人だけでなく家族の信頼関係にもヒビが入り、精神的なダメージを受けるケースも多いです。

SNSで拡散されるリスク

SNSが普及している現代では、試験中の不正行為がSNSで瞬く間に拡散されることがあります。 受験者や監督者の目撃投稿、試験名や学校名が添えられた情報などが拡散すると、実名が特定され社会的信用を失う可能性があるでしょう。

一度インターネット上に出回った情報は完全には削除できず、将来の進学・就職活動にも悪影響を及ぼす可能性が高いです。

信用失墜の回復の難しさ

カンニング行為は、たとえ軽微でも「誠実さを欠く行為」として周囲の信頼を大きく損ないます。 謝罪や反省をしても、「不正をした人」という印象は簡単には消えません。 とくに友人関係や教師、指導者との信頼を取り戻すには時間がかかり、精神的にも強いストレスを感じるでしょう。

逮捕されなかったとしても、社会的な信用の回復には長期的な努力が必要だといえるでしょう。

カンニングと刑罰の重さ

カンニング行為を行うと、さまざまな犯罪に抵触する可能性があります。万が一、何らかの刑法犯に該当した場合、当然刑事罰を受ける可能性もあるため注意しなければいけません。

次に、カンニングが刑法犯に該当した場合の刑罰と重さについて詳しく解説します。

偽計業務妨害罪の刑罰

試験の運営を混乱させたり、不正な手段で試験結果に影響を与える行為は、刑法233条に定められている偽計業務妨害罪に該当する可能性があります。 偽計業務妨害罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」です。

実際、大学入試や資格試験で不正アクセスを用いた大規模カンニングが発覚した場合、業務妨害として逮捕・送検された事例もあります。単なる規律違反にとどまらず、「他人の業務を妨害した」と認定されると、刑事罰が言い渡され、前科が付く可能性もあるため注意しましょう。

替え玉受験と私文書偽造の刑罰

他人になりすまして試験を受ける「替え玉受験」は、刑法159条・160条の私文書偽造罪および同行使罪に問われる可能性があります。 私文書偽造罪の法定刑は、「3カ月以上5年以下の拘禁刑」となっており、罰金刑の規定がありません。

とくに、受験票や身分証を偽造・変造した場合、複数の罪が併合されることもあり、悪質と判断されれば実刑の可能性も高まります。替え玉受験は「受けた本人だけでなく、依頼した側も共犯」として処罰されるため、軽い気持ちで関与するのはやめましょう。

【実刑とは】
実刑とは、執行猶予付きの判決が付かない判決を指します。拘禁刑の実刑判決となった場合は、刑務所へ収監されて一定期間刑務所内で生活をしなければいけません。

資格試験での詐欺罪の可能性

国家資格や検定試験で不正に合格したうえで、その資格を利用して金銭的利益を得た場合は、刑法246条に定められている詐欺罪に該当する可能性があります。 詐欺罪の法定刑は、 「10年以下の拘禁刑」であり、とても重い刑事罰が科されます。

たとえば、虚偽の資格をもとに就職したり、報酬を得たりする行為は、「不正に利益を得た」として詐欺罪が成立する可能性があります。資格試験における不正は、単なるカンニングにとどまらず、社会的信用を失う重大な犯罪行為に発展する点に注意が必要です。

執行猶予の可能性

カンニング関連の犯罪で有罪判決を受けた場合でも、初犯で反省の意思が明確な場合は執行猶予が付くケースが多いです。 執行猶予とは、判決後すぐに刑務所へ行くのではなく、一定期間、刑の執行を猶予する制度です。

ただし、同じような不正を繰り返した場合や、他人を巻き込んだ悪質なケースでは、猶予が認められず実刑となる可能性もあります。 軽い気持ちでの不正でも、刑事責任の重さは想像以上に大きいといえるでしょう。

初犯・未成年の扱い

未成年者が初めてカンニング行為を行った場合、基本的には警察ではなく学校・家庭での指導にとどまるケースが多いです。 仮に刑事事件として扱われても、家庭裁判所での審判や保護処分が中心で、逮捕・勾留まで進むケースはまれです。

ただし、替え玉受験のように他人を巻き込んだ行為や、試験システムへの不正アクセスなどは、少年事件として警察が介入することもあります。未成年でも「刑事責任を免れる」とは限らないため、早期に弁護士へ相談することが重要です。

カンニングを疑われた場合の対応

カンニングをしていないのに「不正行為をしたのでは」と疑われた場合、焦って誤った対応をすると状況が悪化する可能性があります。ここでは、誤解を解くための行動や、警察・学校への対応、弁護士への相談タイミングなどを詳しく解説します。

誤解を解くためにすべきこと

まずは冷静に事実関係を整理し、客観的に自分の潔白を示せる材料を集めましょう。たとえば、スマホの使用履歴・メモの内容・試験中の行動などを具体的に説明できると有利です「不正行為をしていない」と感情的に否定するだけでは説得力がありません。

また、教員や監督者の指示に従いつつ、丁寧な態度で説明することが大切です。誠実な対応を心がけることで、誤解が早期に解ける可能性が高まるでしょう。

警察に呼ばれたときの注意点

カンニング行為が刑法に触れる可能性がある場合、学校や試験機関から警察に通報されることもあります。警察に呼ばれたとしても、これは任意同行であるケースが多く、必ずしも逮捕を意味しません。

このとき重要なのは、以下のとおりです。

  • 事実を正確に話すこと
  • 不用意に自分に不利な発言をしないこと

とくに、曖昧な記憶で発言すると「自白した」と誤解されるリスクがあります。不安がある場合は、その場で「弁護士に相談してから話します」と伝えておきましょう。

弁護士に相談すべきタイミング

「不正を疑われている」「警察から呼び出しを受けた」「学校で処分を検討されている」といった段階では、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。

弁護士は、以下の主張を行ってあなたが不正をしていないことを証明していきます。

  • 不当な疑いを晴らすための主張立証
  • 警察・学校との交渉や対応の代行
  • 将来的な処分や記録への影響を最小化

早期に相談することで、誤解を防ぎ、不利な展開を回避できる可能性が高まります。

黙秘権と供述の扱い

警察から事情を聞かれる際には、刑事訴訟法で定められた黙秘権があります。黙秘権とは、「話したくないことは話さなくてもよい」権利です。無理にすべて答える必要はなく、不明点や曖昧な部分は「わかりません」「弁護士と相談してから回答します」と言っても問題ありません。

供述内容は、良くも悪くも調書に記録され、後に証拠として扱われることもあるため、軽率な発言は避けるようにしましょう。

よくある質問

カンニングで逮捕される可能性について、よくある質問を紹介します。

Q.カンニングで本当に逮捕された人はいるの?

A.実際に存在します。

カンニングで逮捕された事例は、過去に何度も発生しています。たとえば、資格試験で不正を行い、偽計業務妨害罪に問われた事例や自動車運転免許を取得する際に、替え玉受験を行ったとして道路交通法違反に問われた事例などがあります。

カンニング行為は、その内容次第で刑法犯に問われ、逮捕・起訴・有罪判決となる可能性があるため注意しましょう。

Q.未成年でもカンニングで逮捕される可能性はある?

A.未成年者であっても、逮捕される可能性はあります。

そもそも、刑事罰に問える年齢は14歳以上です。そのため、18歳未満の未成年者であっても犯罪を犯した場合は、逮捕される可能性があります。

ただし、カンニング行為の程度にもよりますが、直ちに逮捕される可能性は低いと思っておいて良いでしょう。通常は、少年事件として扱われ、何らかの保護処分が言い渡されて終了するケースが大半です。

Q.カンニングがバレたら前科がつくの?

A.必ずしも前科がつくとは限りません。

そもそも前科が付く条件は「有罪判決が確定した時点」です。つまり、カンニングをした事実が発覚したり、逮捕されたりした時点で直ちに前科が付くわけではありません。

逮捕の有無に関わらず、起訴されて刑事裁判等で有罪判決が言い渡された場合は、前科として記録が残り続けるため注意しましょう。

Q.替え玉受験は必ず逮捕される?

A.かならず逮捕されるとは限りません。

「逮捕」という行為は、あくまでも罪を犯した疑いのある人の身柄を一時的に拘束するための手続きにしかすぎません。つまり、罪を犯したからと言って、必ずしも逮捕されるわけではないのです。

逮捕するためには、被疑者が証拠隠滅をする恐れもしくは逃亡する恐れがある、という前提条件がなければいけません。これらの条件を満たせていない場合は、逮捕せずに在宅捜査となります。

なお、在宅捜査となった場合であっても、後に起訴されて有罪判決を受ければ前科が残るため注意しましょう。

Q.カンニングを疑われたときはどうすればいい?

A.不正行為を行っていないのであれば、冷静にその旨を主張しましょう。

試験会場等で不正行為と見なされる行為を行ってしまった場合、カンニングの有無に関わらず試験中止となる可能性があります。ただ実際に不正行為を行っていない場合は、「そのような行為は行っていない」と主張し、証拠等を提示するようにしましょう。

試験の継続は難しくても、警察への通報等は避けられる可能性が高いです。いずれにせよ、怪しまれる行為は避けたほうが良いでしょう。

まとめ

カンニングは一見「小さな不正」に思えるかもしれませんが、その結果は非常に重く、人生を大きく左右する可能性があります。学校内での処分にとどまるケースもありますが、国家資格試験や大学入試のような公共性の高い試験では、偽計業務妨害罪や不正アクセス禁止法違反として刑事事件化することがあります。これらが成立すれば、逮捕・起訴・前科という重大な結果を招くおそれもあります。

また、仮に刑事事件に発展しなかったとしても、停学・退学処分や資格の取り消しなど、将来の進学・就職に深刻な影響を与えることは避けられません。スマートフォンやSNSを使った不正が増加する今、「つい出来心で」「みんなやっているから」といった軽率な行動が思わぬリスクを招きかねません。

カンニングは単なる不正行為ではなく、時に「犯罪」になり得る行為です。もし誤って疑われた場合や警察から呼び出しを受けた場合には、決して一人で判断せず、刑事事件に詳しい弁護士へ早急に相談することが大切です。

自分の将来を守るためにも、安易な不正行為に手を染めず、正々堂々と挑む姿勢を忘れないようにしましょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、勾留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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