「執行猶予中にまた事件を起こしてしまった。もう実刑は避けられないのか」「ダブル執行猶予って本当にあり得るの?」こうした不安や疑問を持つ人は少なくありません。一般に「ダブル執行猶予」と呼ばれるのは、過去に執行猶予付き判決を受けた人が、別件でもう一度執行猶予付き判決を得るケースを指す俗称です。
法律上の正式名称ではありませんが、実務では「再犯でも例外的に執行猶予が付くか」が重大な争点になります。もっとも、執行猶予は本来「社会内で更生できる」と裁判所が判断したときに与えられる最後のチャンスに近い制度です。
そのため再犯は極めて厳しく評価され、執行猶予期間中に有罪判決を受ければ、原則として前の猶予が取り消され、前刑と今回の刑が執行される可能性もあります。では、どんな場合に二度目の執行猶予が認められるのか。量刑の軽重、前回猶予後の生活状況、被害弁償や示談、更生計画の具体性、家族・支援機関の監督体制、治療の継続など、裁判官は多角的に判断します。
本記事では、ダブル執行猶予の意味と位置づけ、執行猶予中の再犯がもたらす不利益、例外的に猶予が検討される条件について詳しく解説します。そして実刑回避のために準備すべきポイントを、実務目線でわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
ダブル執行猶予とは
「ダブル執行猶予」という言葉を聞いたことがある人は多いかもしれません。しかしこれは、法律用語として明確に定義された制度名称ではなく、裁判実務や法律実務における俗称です。とくに、過去に執行猶予付き判決を受けた人が、再度執行猶予付き判決を受けるケースを指して用いられます。
執行猶予制度はもともと、初犯や軽微な犯罪について「再犯のおそれが低い」と裁判所が判断した場合に、刑の執行を一定期間猶予し、社会内での更生の機会を与えるものです。そのため、基本的に2度目の執行猶予が下されるケースは相当稀です。
では、実際に「2度目の執行猶予」が本当にあり得るのか、どのような条件が必要なのか、実務ではどのように扱われるのか、多くの人が疑問を抱いていることでしょう。まずは、「ダブル執行猶予とは何か」という基本をわかりやすく解説します。
過去に執行猶予判決を受けている者が再度執行猶予を得ること
一般的に「ダブル執行猶予」と呼ばれるのは、既に執行猶予付き判決を受けたことのある者が、その後の別件でもう一度執行猶予付き判決を受けることを指します。たとえば、初犯で執行猶予付き判決を受けた後、別の犯罪で再び逮捕・起訴され、裁判の結果として再び執行猶予付き判決が言い渡されるようなケースです。
そもそも、執行猶予とは「刑罰の執行を一定期間猶予すること」を指します。たとえば、「拘禁刑1年執行猶予3年」の刑罰が言い渡されたとしましょう。
この場合、「拘禁刑1年」の刑罰を直ちに執行せずに3年間猶予します。猶予期間中は、社会生活を送りながら更生を目指します。しかし、執行猶予期間中に罰金刑以上の刑事罰が確定した場合は、執行猶予が取り消される可能性があるのです。
つまり、執行猶予期間中に罪を犯した場合、通常は執行猶予が取り消されて刑務所に収監されたり罰金を支払ったりしなければいけません。このことから、そもそも「ダブル執行猶予」ということ自体が基本的には起こり得ません。
とはいえ、執行猶予期間中に他の罪を犯し、改めて別の事件で刑事裁判を受け、再度執行猶予判決が下されるケースも稀ながらあります。これを「ダブル執行猶予」と呼びます。
法律上明確な制度名称ではない俗称である
重要なポイントとして、「ダブル執行猶予」は法律上の正式な名称ではありません。刑法や刑事訴訟法、刑事政策を定める法令群には「ダブル執行猶予」という制度は存在しません。これは、あくまで社会・実務・法律相談の現場で用いられる俗称です。
法律上正式に規定されているのは、たとえば「執行猶予付き判決(刑法第25条)」そのものや、再犯予防のための一般的な執行猶予の要件、そして再犯時の量刑判断基準です。これらの法令や判例理論を踏まえたうえで、「執行猶予が再び認められるかどうか」を裁判官が判断しているのです。
つまり、インターネットやSNSで「ダブル執行猶予は〇〇だ」「2回目の猶予はこうなる」という表現を見たとしても法的用語ではありません。あくまでも、理解を助けるための呼び方であることを理解しましょう。専門家同士の会話でも、正式には「執行猶予が再び付いたケース」といった説明が用いられます。
成立には厳格な要件があり例外的に認められる
2度目の執行猶予(いわゆるダブル執行猶予)は、相当稀なケースです。では、なぜ「二度目の執行猶予」が珍しいのか。それは、執行猶予が認められるための要件が非常に厳格だからです。刑法25条が定める執行猶予の要件には主に次のようなポイントがあります。
(刑の全部の執行猶予)
第二十五条 次に掲げる者が三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者
二 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者
2 前に拘禁刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が二年以下の拘禁刑の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、この項本文の規定により刑の全部の執行を猶予されて、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。引用元:刑法|第25条
執行猶予は「将来の更生を見込んで刑の執行を猶予する」という、非常に前向きな裁判官の判断です。そのため、再犯で二度目の執行猶予が認められるには、最初の執行猶予後の経過、改善行動・反省の深さ、具体的な社会復帰の状況など、複数の厳しい判断が必要になります。
実務的には、たとえば以下のような要素が検討されます。
- 初回執行猶予後の行動が真摯であったか
- 再犯の内容が軽微か(反社会性の低さ)
- 反省文や更生計画が具体性を帯びているか
- 被害者との示談が成立しているか
これらがすべて整って初めて、裁判官が「この人には更生の可能性がある」と認める状況となり、例外的に二度目の執行猶予が言い渡されることがあります。もちろん、この判断は裁判官の裁量判断が大きいため、同じような事案でも執行猶予が認められるケースと、実刑判決になるケースがあり得ます。
そのため、「ダブル執行猶予」を狙う、あるいはそれを期待するというよりは、再犯防止のための生活改善・具体的な立証資料の準備・専門家への相談が不可欠です。
執行猶予の目的とダブル執行猶予の可能性
「ダブル執行猶予」は、単なる運や甘い判断で認められるものではありません。そもそも執行猶予制度が何のために存在しているのかを理解すると、なぜ二度目の執行猶予が極めて厳しく判断されるのかが見えてきます。
ここでは、執行猶予の本来の目的と、それを前提としたダブル執行猶予の難しさについて、実務的視点から詳しく解説します。
【目的】社会内での更生を促すこと
執行猶予制度の最大の目的は、刑務所に収容すること自体ではなく、社会の中で更生させることにあります。刑法25条が執行猶予を認めている背景には、「一定の条件を満たす者であれば、実刑を科さなくても再犯を防げる」という考え方があります。
裁判所は、執行猶予を付けるかどうかを判断する際、次のような点を重視します。
- 犯行の悪質性・計画性の有無
- 被告人の反省の深さと態度
- 家族・職場など監督環境の有無
- 社会復帰後に再犯を防げる具体性
つまり執行猶予は、「もう一度チャンスを与える制度」であると同時に、社会で適切に行動できることを前提とした条件付きの猶予なのです。この前提が崩れると、制度そのものが成り立たなくなります。
ダブル執行猶予=再犯であり認められにくい
ダブル執行猶予が極めて難しい理由は明確です。それは、「すでに一度、社会内での更生チャンスを与えられているにもかかわらず、再び犯罪に及んだ」という評価を受けるからです。実務では、再犯であるという事実自体が、以下のように厳しく受け止められます。
- 初回の執行猶予が更生につながらなかった
- 社会内処遇では再犯を防げなかった
- 規範意識・自制心に重大な問題がある
その結果、裁判官の視点は「再度の執行猶予で本当に立ち直れるのか」という、極めて慎重なものになります。とくに、前回の執行猶予期間中または期間満了後すぐの再犯であれば、量刑判断は一気に実刑寄りになります。ダブル執行猶予は、「再犯でもなお例外的に更生可能性がある」と認められた場合に限られる、非常に狭い判断枠なのです。
社会での更生が難しいと判断される
裁判所がダブル執行猶予を否定する最大の理由は、「社会内での更生が困難」と評価される点にあります。一度目の執行猶予は、「社会の中で立ち直れるはずだ」という前提で与えられたものです。
それにもかかわらず再犯に至った場合、裁判官は以下のように考えます。
- 社会的監督や指導が機能しなかった
- 本人の意識改革が不十分だった
- 再犯リスクが高い
この評価が下されると、「社会内での更生よりも、施設内での矯正が必要」と判断され、実刑判決が選択されやすくなります。そのため、ダブル執行猶予を目指す場合には、以下のことが重要です。
- 前回の反省と失敗をどう分析しているか
- 今回はなぜ再犯に至ったのか
- 再発防止策が具体的・客観的に示されているか
上記の点を、客観的資料や環境面の整備によって立証する必要があります。単なる反省文だけでは足りず、専門的な弁護活動が不可欠となる場面です。
執行猶予期間中に有罪判決を受けた場合の扱い
執行猶予とは「直ちに刑罰を執行せずに、一定期間猶予すること」を指します。しかし、この執行猶予期間中に別の罪で新たに有罪判決を受けた場合、状況は一気に厳しくなります。
ここでは、執行猶予期間中の有罪判決がどのように扱われるのか、刑事手続き上の影響をわかりやすく具体例を交えて解説します。
原則として前刑の猶予は取り消される
執行猶予期間中に有罪判決を受けた場合、原則として「前の執行猶予」は取り消されます。執行猶予が認められるのは、「再犯の可能性が低い」と判断された者に対して、社会内で更生の機会を与えるためです。
しかし、執行猶予期間中に別件で有罪判決を受けるということは、まさに「再犯をした」と評価され、猶予の趣旨が失われることになります。刑法26条では、執行猶予者がその猶予期間中に罪を犯した場合、原則として猶予は取り消されるとしています。
(刑の全部の執行猶予の必要的取消し)
第二十六条 次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十五条第一項第二号に掲げる者であるとき、又は次条第三号に該当するときは、この限りでない。
一 猶予の期間内に更に罪を犯して拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
二 猶予の言渡し前に犯した他の罪について拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
三 猶予の言渡し前に他の罪について拘禁刑以上の刑に処せられたことが発覚したとき。引用元:刑法|第26条
なお、執行猶予の取消は自動的に起きるわけではなく、裁判所(裁判官)の判断によって行われますが、実務上ほぼ取消しの方向で判断されるケースが一般的です。具体的には、執行猶予期間中に別の事件で起訴・有罪判決が下されると、裁判所は前件の執行猶予に関する審理を行い、「前の猶予は継続すべきではない」と判断した場合には、執行猶予を取り消す決定をします。
取消決定後は前刑の実刑+今回の刑が併合される可能性あり
執行猶予が取り消されると、これまで執行を猶予されていた刑罰が執行されます。たとえば、「拘禁刑1年執行猶予3年」の刑罰が言い渡されていたとしましょう。
その後、執行猶予期間中に新たな罪を犯したとしましょう。この場合、執行猶予が取り消され、これまで猶予されていた前の刑罰(1年の拘禁刑)が執行されます。そして、さらに新たな罪で1年の拘禁刑が確定したとしましょう。この場合は、前刑の1年と新たな刑罰の1年、合計2年の拘禁刑が執行されることになります。
執行猶予期間の行状が量刑に大きく影響する
執行猶予期間中に有罪判決を受けたとしても、量刑や裁判官の判断には、その人の執行猶予期間中の行状や背景が強く影響します。具体的な評価要素として、以下の点が裁判所で重視されます。
- 執行猶予期間中にどのように生活していたか
- 前件の反省や更生の努力があったか
- 被害者への償い・示談が進んでいるか
- 再犯内容が暴力性や社会悪性が高いかどうか
- 社会内での雇用・生活基盤があるかどうか
同じ再犯であっても、前件執行猶予中の行動が真摯で、反省や改善の証拠がある場合は、量刑が重くならない方向で検討される余地があります。逆に、執行猶予中に無断欠勤や社会的ルール違反を繰り返していた場合は、「社会内での更生が困難」と見なされやすく、厳しい判断へと傾くことが多くなります。
実務上は、再犯後の裁判で弁護側が執行猶予期間中の行状に関する証拠(勤務記録・反省文・通院記録・更生プログラム参加歴等)を丁寧に提出することが、執行猶予取消し回避や量刑軽減の重要なポイントになります。
ダブル執行猶予が認められる条件とは
一般に「ダブル執行猶予」と呼ばれるのは、すでに執行猶予付きの有罪判決を受けた人物が、別件でもう一度執行猶予付き判決を得るケースを指す俗称です。これは法律上の正式な制度名ではありませんが、実務上は「2度目の執行猶予が例外的に認められるか」が争点となります。
ダブル執行猶予が認められるのは極めて例外的であり、単に「2回執行猶予になればいい」という話ではありません。裁判官が再犯者の更生可能性を総合的に評価した結果として認められる場合のみ、ダブル執行猶予(執行猶予期間中の執行猶予)となります。次に、ダブル執行猶予がつくか否かの判断ポイントをわかりやすく整理します。
軽微な犯罪・比較的低い量刑であること
ダブル執行猶予が認められる条件としてもっとも基本となるのが、今回の犯罪が比較的軽微で、量刑が軽いことです。裁判所は、執行猶予を付けるかどうかを判断する際、罪の重さ・悪質性・社会への影響を重視します。
つまり、前回の執行猶予が付いた背景も踏まえつつ、今回の事件が社会的に見て軽度であり、再犯予防の余地があると評価される場合に限り、二度目の執行猶予が検討されます。具体的には以下のような傾向が考慮されます。
- 被害の程度が軽微(小額の窃盗、軽度の過失傷害など)
- 被害者への影響が限定的・回復可能
- 犯行態様に計画性・悪質性が乏しい
これに対して、暴力性・組織的犯罪・重大な経済的損害を与える行為など、社会的非難が極めて強いケースでは、二度目の執行猶予は認められにくい傾向にあります。
前回の猶予判決からの経過状況が考慮される
ダブル執行猶予を判断するうえで重要なのは、前回の執行猶予判決後の経過や行状です。再犯が起きたとしても、どのように更生努力を行ってきたかは量刑判断に大きく影響します。たとえば、以下の状況があると考慮されます。
- 前回の執行猶予中に定職に就いていた
- 家族・地域社会との関係が安定している
- 更生プログラムや反省活動を継続していた
- 社会内処遇が一定程度機能していた
といった状況があると、裁判官は「社会内での更生の可能性が一定程度ある」と評価することがあり、二度目の執行猶予を前向きに検討する材料となります。逆に、前回の執行猶予期間中に長期にわたる無断欠勤や生活の乱れがあった場合、裁判所は「社会内での更生環境が整っていない」と判断しやすく、実刑判断に傾きやすくなります。
情状酌量が極めて強い事情があること
二度目の執行猶予を認めるためには、単なる反省だけでは不十分で、裁判官が重い刑を回避する妥当性を認めるだけの情状酌量要素があることが不可欠です。情状酌量として考えられる事情には、以下のようなものがあります。
- 犯行時に深刻な心理的・経済的ストレスがあった
- 健康状態・高齢など身体面の脆弱性がある
- 被害者が厳しい処罰を望んでいない
- 犯行が一時的・偶発的で計画性がない
- 加害者に明確な反省・更生意欲がある
これらが裁判所に「量刑を軽くするべき事情」として認定されると、例外的に二度目の執行猶予が認められる可能性が出てきます。ただし、情状酌量はいわゆる裁判官の裁量判断が大きく左右する部分です。単純に「こう言えば通る」というものではありません。証拠に基づいた具体的な主張・立証が求められます。
示談成立や被害弁償は重要な判断材料となる
示談成立や被害弁償は、裁判における重要な情状として扱われ、二度目の執行猶予の判断を大きく左右する要素となります。これは単に「金銭を返した」「被害者と和解した」という事実だけでなく、被害者の受けた損害の回復・加害者の反省と責任の履行として評価されるからです。
裁判所は、以下のような点を重視して評価します。
- 被害者との示談が成立しているか
- 被害の補償や弁償が行われているか
- 被害者の処罰感情が和らいでいるか
- 示談交渉や謝罪の誠実性が認められるか
示談が成立し、かつ被害者が「厳しい処罰を望まない」という意思を示している場合、裁判官は情状酌量を強く認める傾向があります。これは、被害者の感情や社会的な和解の実現が「更生を期待できる要素」として評価されるからです。
ダブル執行猶予を目指す際にできること
執行猶予を一度受けた人が別件でもう一度執行猶予を獲得する。いわゆる「ダブル執行猶予」は、ごく例外的であり、裁判官が社会内で更生可能であると判断しない限り認められません。
そのためには単に「反省しています」と述べるだけでなく、客観的な根拠・具体的な行動計画・支援体制を示すことが必要です。ここでは、弁護戦略として実践的な4つのポイントをわかりやすく解説します。
前刑記録の確認と取消リスクの整理
ダブル執行猶予を目指す第一歩は、前回の執行猶予判決の記録を正確に把握することです。裁判所は前件執行猶予の内容、執行猶予期間中の遵守状況、処罰や処遇の履歴を重要視します。この段階でやるべきことは以下の通りです。
- 前件の判決文・執行猶予付帯条件を確認
- 執行猶予中の生活状況・遵守義務(社会内処遇)を整理
- 前件との関連性(類似性や行為の重さ)を分析
- 前件執行猶予の取消リスクを専門家と評価
取消リスクを整理することは、戦略立案の土台になります。たとえば、前件執行猶予期間中に特定の禁止事項(無断欠勤・飲酒禁止など)があった場合、その遵守状況が新件の量刑判断に大きく響きます。
弁護士と協力して事実関係を精査し、誤解がある点や訂正可能な事項は法的に整理しておくことが重要です。
示談交渉・返済計画の策定
ダブル執行猶予を認めてもらううえで、示談成立や返済計画の有無は非常に重要な判断材料になります。被害者との関係修復は、裁判官に「反省・責任感・具体的行動」を示すもっともわかりやすい証拠になります。
具体的には以下のことを検討しましょう。
- 被害者との示談交渉の開始
- 返済計画書の作成(返済期間・方法・収支計画付き)
- 示談合意書の取得
- 示談金・弁済金の分割支払い計画
示談が成立しているケースでは、裁判官が「被害感情が和らいでいる可能性がある」と評価しやすくなります。また、返済計画を具体的な収支・就労計画に基づいて書面化し、被害者及び裁判所に提出することで、更生可能性を強力に裏付けることができます。
保護観察機関や家族支援体制の提示
執行猶予は単なる猶予ではなく、社会内での更生を前提にした期間的措置です。そのため、裁判所が「本人単独では再犯防止が困難」と判断した場合でも、周囲の支援体制があるかどうかが量刑判断に大きく影響します。
提示すべき支援体制としては、以下のものがあります。
- 保護観察官との面談履歴・観察計画
- 家族の支援計画書(生活・就労・監督体制)
- 就労先・住居の安定性
- 支援機関・福祉サービスとの連携
とくに、保護観察機関による評価・助言書がある場合は、裁判官にとって「社会内での再犯防止策が具体的である」という前向きな材料になります。家族支援については、具体的に以下を示すと評価が高まります。
- 同居家族による日常監督体制
- 経済的支援・生活支援の明示
- 行動管理・再発予防プログラムの参加計画
これらが書面として整っていると、裁判官にとって「本人だけでなく社会全体で再犯防止を支える環境がある」と判断されやすくなります。
精神疾患治療や社会復帰計画の書面提出
再犯の背景に精神疾患や依存症(アルコール・ギャンブルなど)がある場合、適切な治療計画とその履行が執行猶予判断に強く影響します。ただし「治療中」というだけでは不十分で、次のような具体的な計画と証拠書類が必要です。
- 医師の診断書・治療方針書
- 定期通院・プログラム参加の証拠
- 社会復帰支援計画書(就労支援・メンタルケア等)
- 継続的モニタリング計画
裁判官は「治療意欲・計画性・継続可能性」を重視します。たとえば、アルコール依存症治療の場合、単に「断酒しています」と述べるだけでなく、専門医による治療スケジュールと改善状況の記録を提出することで、社会内更生の可能性を強く訴えることができます。
よくある質問
ダブル執行猶予についてよくある質問を紹介します。
Q.初犯で執行猶予が付かなかったのに二回目は可能?
A.初犯で執行猶予がつかなかった場合でも、その後の事件で執行猶予判決が下される可能性はあります。
たとえば、初犯で殺人罪の罪を犯した場合、基本的に執行猶予付きの判決が下されることはありません。出所後、別の罪(たとえば窃盗罪)で逮捕されたとしましょう。この窃盗罪については、執行猶予判決が下される可能性はあります。
初犯で執行猶予が付かなかったとしても、別の罪で逮捕されて有罪判決を受けた場合は、別で審理されることとなるため、執行猶予の可能性はあると思っておきましょう。
Q.執行猶予中の交通違反でも影響する?
A.影響が出る可能性はあります。
執行猶予の取り消しは、「執行猶予期間中に、罰金刑以上の刑罰が確定した場合に取り消される可能性」があります。たとえば、交通違反でも反則金で済む違反である場合は、執行猶予に影響を与えません。
一方で、飲酒運転や轢き逃げなど、罰金刑の規定がある重大な違反を犯した場合は、執行猶予が取り消されてしまう可能性があります。ただし、実務上は罰金刑程度の有罪判決で執行猶予が取り消されることはほとんどありません。あくまでも、「取り消される可能性がある」程度に考えておいた良いでしょう。
なお、交通違反であっても拘禁刑の刑事罰が下される可能性もあります。この場合は、執行猶予が取り消される可能性が非常に高いと思っておいたほうが良いでしょう。
Q.ダブル執行猶予は裁判官によって違う?
A.裁判官によって、判断が分かれる可能性はあります。
裁判官は、これまでの判例や被疑者の情状、被害者の処罰感情等さまざまなことを考慮したうえで被告人に判決を言い渡します。判決は、裁判官によって感じ方や考え方が異なるため、必ずしもすべての裁判官が同じ判決を下すとは限りません。
たとえば、刑事事件で第一審では有罪判決を受けた被告人が、第二審では無罪判決を受けたという事例も数多くあります。理不尽に思う人がいるかもしれませんが、裁判官の判断はそれぞれ異なることを覚えておきましょう。
Q.実刑回避には示談が必須?
A.必須ではありませんが、示談成立が大きな影響を与える可能性が高いです。
示談交渉が成立していると、検察官や裁判官は「被害者の処罰感情は薄れている」と判断します。刑事裁判においては、被害者の処罰感情が判決に多大な影響を与えます。そのため、示談交渉は成立させておいたほうが実刑回避の可能性は高まるでしょう。
とはいえ、示談交渉が成立したからといって、必ずしも執行猶予付き判決が下されるとは限りません。また、示談交渉が成立しなかったからといって、執行猶予を得られないとも限りません。
あくまでも、示談交渉の成立有無が判決に影響を与える可能性がある。という程度に考えておけば良いでしょう。
Q.再犯でも保護観察なしの猶予はあり得る?
A.再犯でも保護観察なしの執行猶予判決が下される可能性はあります。
保護観察付きの執行猶予は、「再犯防止のために保護観察が必要である」と判断された場合に限ります。つまり、再犯であっても「保護観察が必要ない」と判断されれば、いわゆる保護観察なしの執行猶予付き判決が下される可能性もあるでしょう。
とはいえ、判断は裁判官によって行われるため、一概に「〇〇だから保護観察が付く・付かない」の基準はありません。
まとめ
ダブル執行猶予は法律上の制度名ではなく、過去に執行猶予付き判決を受けた人が、別件でもう一度執行猶予を得るケースを指す俗称です。執行猶予は「社会内で更生できる」という前提で与えられるものです。そのため、再犯は不利に働き、とくに猶予期間中に有罪判決が確定すると、原則として前刑の猶予は取り消され、前刑の実刑に加えて今回の刑も執行される可能性があります。
もっとも、刑法25条2項が想定するように、情状に特に酌量すべき事情がある場合には、例外的に二度目の執行猶予が検討され得ます。判断の中心は「更生可能性」と「再犯防止策の具体性」です。
今回の犯行が軽微で悪質性が低いこと、前回猶予後の生活が安定していたこと、示談成立や被害弁償が進み被害者感情が緩和していること。さらに、家族や支援機関による監督体制が明確であること、依存症や精神疾患が背景にあるなら治療計画と通院実績が示せること。こうした要素を客観資料で積み上げることが重要になります。
単なる反省の言葉だけでは足りず、前刑記録の確認、取消リスクの整理、示談・返済計画、支援体制や更生計画の書面化など、専門的な弁護活動が結果を左右します。再犯での実刑回避を考えるなら、早期に弁護士へ相談し、証拠と環境整備を一体で進めることが現実的な第一歩です。