のぞき行為は立派な犯罪行為であり、逮捕・勾留され、刑事罰を受ける可能性があります。もし、のぞきによって逮捕されてしまった場合は、今後の社会生活にも多大な影響を与えることでしょう。
この記事では、のぞき行為によって成立する犯罪の例や逮捕された場合の流れ、対処法について詳しく解説しています。のぞきを行おうとしている人や繰り返し行っている人は、本記事を参考にした上で絶対に行わないように注意してください。
のぞき行為によって成立する犯罪例
のぞき行為による犯罪は、以下の法律によって厳しく規制されています。
- 迷惑行為防止条例
- 軽犯罪法
- 住居侵入・建造物侵入罪(刑法)
のぞき行為は「窃視」とも呼びます。まずは、のぞき行為がどういった犯罪行為に抵触し、処罰されるのかについて詳しく解説します。
迷惑行為防止条例
迷惑行為防止条例は、条例であるため各都道府県で定められています。たとえば、東京都ではのぞき行為について迷惑行為防止条例で以下の通り定めています。
(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。引用元:東京都迷惑行為防止条例|第5条
のぞき行為は、上記行為に該当すると解されています。のぞき行為は、本来であれば隠されている部分であったり、プライベートな部分であり、見られていることを前提としていません。よって、人によっては羞恥心を感じたり不安に思ったりするのは当然です。
そのため、東京都の条例の場合は第5条に違反する行為としてみなされます。
ちなみに、東京都の迷惑行為防止条例に違反した場合の罰則は、「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」です。初犯であっても、罰金刑に処される可能性が高い犯罪であるため注意してください。
軽犯罪法
軽犯罪法では、のぞき(窃視行為)について以下の通り明記しています。
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
引用元:軽犯罪法|第1条
つまり、軽犯罪法では住居や浴室、更衣室や便所であり、一般的に考えて人が衣服を付けていないことがあり得る場所をのぞき見る行為について明記しています。そして、軽犯罪法に違反した場合の罰則規定は、拘留または科料に処されます。
拘留とは1日以上30日未満の刑事施設に拘置することです。
逮捕後に行われる可能性がある「勾留」とは漢字も異なりますし、意味合いもまったく異なります。ちなみに「勾留」とは、捜査を行うにあたって、必要であると判断された場合に最大20日間行える身柄勾留を指します。
そして、科料とは1,000円以上1万円未満の金銭納付を命令する罰です。罰金刑と意味合いは同じですが、法律では1万円以上の金銭納付を命令する罰を「罰金刑」と呼びます。
つまり、軽犯罪法に違反した場合は懲役刑や罰金刑の可能性はなく、拘留または科料といった比較的軽い罰を受けることになります。もちろん、罪が軽いからといってのぞき行為を行って良いわけではありません。絶対にやめてください。
住居侵入罪・建造物侵入罪
のぞき行為を目的として他人の住居へ侵入したり、建造物に侵入したりした場合は、住居侵入罪もしくは建造物侵入罪が適用されます。それぞれ、刑法によって定められており、条文は以下の通りです。
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法|第130条
のぞき行為は、当然ながら「正当な理由」としては認められません。そのため、のぞきを行う目的で他人の住居に侵入したり、建造物に侵入したりした場合は、住居侵入罪・建造物侵入罪に問われてしまいます。
ちなみに、建造物侵入罪とは住居以外の場所です。たとえば、公衆浴場や学校、オフィスなど侵入が許されていない場所へ侵入をした場合に適用されます。
たとえば、のぞき行為を行う目的で学校に侵入した場合は、実際にのぞき行為を行っていなかったとしても、建造物侵入罪は成立するため注意しなければいけません。
万が一、住居侵入罪・建造物侵入罪に問われた場合は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処されます。当然、逮捕の可能性もあるため十分に注意してください。
のぞき行為の具体的な事例
のぞき(窃視行為)は、本来であれば隠されている場所やプライベートな空間を覗き込む行為を指します。具体的には、他人の家に侵入して生活を盗み見る行為等が該当します。
また、のぞきは「窃視行為」とも呼ばれている通り、盗み視することです。つまり、自分の目で見た行為がのぞきとして処罰されることになります。そのためたとえば、盗撮はのぞき行為には該当せず、他の法律によって処罰されることになるのです。
次に、具体的に「窃視行為(のぞき)」とはどういった行為を指すのか?について、例を元に詳しく解説します。
他人の家の敷地に入り込んでのぞき行為を行った場合
他人の家の敷地に侵入し、のぞき行為を行った場合は「窃視行為(のぞき)」として処罰されます。たとえば、過去に実際にあった事例としては、「女性宅へ侵入してベランダから行動を覗き見していた」「他人の家のクローゼットに入って生活を覗き見していた」というケースです。
上記の場合は、住居侵入罪や軽犯罪法違反(窃視行為)として処罰されることになるでしょう。
しかし、たとえば「女性の自宅へ侵入してカメラ盗聴器を仕掛けた」といった場合は、窃視行為には該当しません。間接的に他人の生活を覗き見ていることに違いはありませんが、窃視行為はあくまでも「視る行為」が前提であるためです。
そのため、上記の場合は住居侵入罪や条例違反(盗撮)等の罪に問われます。
専用トイレへ侵入してのぞき行為を行った場合
異性の専用トイレに侵入して、排泄行為等を覗き見する行為も当然に「窃視行為(のぞき)」であり違法です。たとえば、男性が女性の排泄行為等をのぞき見ることを目的として、女性専用トイレへ侵入した場合に成立します。
この場合、建造物侵入罪となります。法定刑は住居侵入罪と同じです。ただ、「心は女性であり、覗き見するつもりはなかった」と言われてしまえば、その行為背景などを考慮して難しい判断をしなければいけなくなります。
専用浴場へ侵入した場合
専用浴場へ侵入した場合も当然に窃視行為として処罰される可能性があります。
一般的に「のぞき」と言われると、こっそり影から見ている姿を想像するかもしれません。しかし、実際に専用浴場へ堂々と侵入している場合ものぞきによって処罰される可能性があるのです。
たとえば、男性が女性を装って女性専用の大衆浴場へ行く場合です。多くの人が想像するのぞきではなくても、その行為や目的が窃視行為であるため、のぞきとして処罰されることになります。
のぞき行為で逮捕された場合の流れ
のぞき行為を行った場合は、刑法に定める住居侵入罪等や各都道府県の条例違反、軽犯罪法違反等によって処罰される可能性があります。いずれも、刑事罰が定められているため、のぞきを行った時点で逮捕されてしまう可能性があるため注意しなければいけません。
次に、万が一のぞき行為によって逮捕されてしまった場合、実際にどういった流れでことが進んでいくのか?について詳しく解説します。
逮捕をされてしまうと、今後の生活にも多大な影響を与える可能性があります。そのため、のぞき行為等を繰り返していたり行おうとしたりしている場合は、参考にした上で今後絶対に行わないようにしてください。
逮捕・送致
のぞき行為を行った場合、逮捕される可能性があります。逮捕は、以下の3種類があります。
- 現行犯もしくは準現行犯の場合に行う「現行犯逮捕」
- 逮捕状を請求して行う「通常逮捕」
- 指名手配犯を発見した場合などに行う「緊急逮捕」
のぞき行為は、その場で逮捕される「現行犯逮捕」や捜査を行って証拠を集めた上で逮捕上を請求して逮捕する「通常逮捕」の可能性があります。いずれの逮捕であっても「逮捕」であることに変わりはないため、その後の手続きに相違はありません。
逮捕されてしまうと、逮捕された時刻から48時間以内に検察官へ事件を送致しなければいけないことになっています。その後、事件を受け取った検察官がさらに24時間以内に勾留請求の有無を判断します。
この時点で逮捕から最大72時間(3日間)は身柄を拘束されているため、当然自宅へ帰ることはできません。学校や出社もできないため、逮捕後から社会的な影響がで始めます。
そして、警察官は軽微な犯罪の場合は微罪処分を言い渡すことができるようになっています。微罪処分とは、軽微な犯罪であって本人が反省しているといった事情がある場合に、検察官へ事件を送致することなく終結させることです。
微罪処分となった場合、事件は終結して即時釈放されます。たとえば、のぞき行為であっても軽犯罪法違反で逮捕されてしまった場合は、微罪処分となる可能性があります。ただ、刑法の定めによる住居侵入罪や建造物侵入罪の場合は厳しく対応される可能性が高いです。
最長20日間の勾留
逮捕から48時間以内に事件を送致し、それからさらに24時間以内に検察官は勾留請求の有無を判断します。勾留請求が必要であると認められる場合は、裁判所へ行って勾留の必要性を最終的に判断してもらう流れです。
ちなみに、勾留が認められるためには、以下の要件を満たしている必要があります。
- 定まった住所がない場合
- 逃亡の恐れがある場合
- 証拠隠滅の恐れがある場合
上記いずれかの恐れがある場合は、裁判所によって勾留が必要であると判断されます。仮に、勾留請求が認められると10日間の勾留が行われます。さらに、延長が認められた場合は勾留日数が10日間増えるため、勾留期間は合計20日間です。
この時点で最大23日間身柄を拘束され続けているため、会社や学校、家族等に心配されたり影響がで始めたりするでしょう。
起訴された場合は刑事裁判
勾留期間中に検察官は、事件を起訴するか不起訴とするかを判断しなければいけません。起訴された場合は、事件は刑事裁判によって審理されることになります。不起訴となった場合は、即時釈放されて事件は終結します。
のぞき行為は、さまざまな法律によって処罰される可能性がある犯罪行為です。罰金刑のみならず、懲役刑もあり得るため十分に注意しましょう。
判決に従って刑に服する
起訴された場合は、刑事裁判を受けて判決に従って刑に服します。懲役刑であれば、その期間刑務所に収容されて刑務作業を行うことになります。もし、罰金刑になった場合は罰金を納めて終了する流れです。
のぞきの場合、逮捕されてしまう罪状にもよりますが罰金刑となるケースが多いです。また、刑事裁判にかけることなく略式起訴によって終結することも多いため、早期の釈放を目指して早めに動くことも大切です。
のぞき行為で逮捕された場合の対処法
のぞき行為で逮捕されてしまった場合、先ほども解説した通り長期間の身柄拘束や刑事罰を受ける可能性があります。万が一、長期間の身柄拘束が行われてしまうと、日常生活にも多大な影響を与える可能性が高いです。
そのため、できるだけ早期の釈放を目指し、刑罰を軽くするための対処法についても把握しておくと良いでしょう。次に、のぞき行為で逮捕されてしまった場合の対処法についても解説します。ぜひ参考にしてください。
弁護士へ相談をする
まず、逮捕された時点もしくは捜査の手が及んでいることを知った時点で弁護士へ相談をしておきましょう。その上で、今後の対応方法についてアドバイスを受けておくと良いです。
ちなみに、弁護士を呼べるタイミングや方法は以下の通りです。
- いつでも呼べる「私選弁護人」
- 逮捕後に1回だけ無料で呼べる「当番弁護人」
- 勾留請求が認められた場合に付く「国選弁護人」
原則は、自分でお金を支払って弁護士に刑事弁護を依頼する「私選弁護人」です。ただ、費用が実費であるため、経済的な事情で呼べない人はまず、当番弁護人に相談をしてアドバイスを受けましょう。
その後、万が一勾留請求が認められてしまった場合は、国選弁護人が付きます。費用は、国で負担するため発生しません。ただ、弁護人がつくタイミングが遅いため、リスクを最小限に抑えるためには私選弁護人が必要です。
被害者と示談交渉を済ませておく
弁護士へ相談をした後に被害者との示談交渉を進めておきましょう。示談交渉では、しっかりと謝罪をした上で金銭等を支払い、嘆願書を依頼します。嘆願書は、「加害者を許し、処罰を望みません」というものです。
嘆願書に法的効力はないものの、被害者が処罰感情を望んでいないことがその後の刑罰等に影響を与える可能性が高いです。そのため、示談交渉を進めておくことで早期の釈放を目指せるようになります。
反省の意を示す
しっかりと反省をした上で今後同じことを繰り返さないと誓いましょう。捜査にもしっかり協力し、被害者にも謝罪をした上で反省している態度を示すことで、刑罰が軽くなる可能性があります。
のぞき行為でよくある質問
のぞき行為でよくある質問を紹介します。
Q.マンションのカーテンが開いていて、たまたま目に入ってしまった場合は犯罪ですか?
A.のぞき行為に該当しません。
のぞき行為は、本来であれば隠されている空間や物などを見る行為を指します。そのため、たまたま目に入ってしまったようなケースでは、見てしまった人が処罰されることはありません。
一方で、人に見せつける行為(露出)は公然わいせつ罪に問われる可能性がある立派な犯罪行為です。たとえ、自室内であっても明らかに人の目に入るような状況でわいせつな行為等を行った場合は、犯罪になります。そのため、そういった場面に出会った場合は迷わず通報して良いです。
Q.のぞきの意思はなく、たまたま見えてしまいました。その後、「のぞき」として逮捕されたらどうすれば良いですか?
A.弁護士へ相談をしましょう。
のぞき行為は、その行為を行おうとした意思がなければ罪には問われません。そのため、たまたま目に入ってしまったようなケースでは、罪に問われることはなく、冤罪であるためその旨を伝えれば良いです。
ただし、現場の様子次第では「意思はなかった」が通用しない可能性もあるため注意しなければいけません。
たとえば、男性が女性用マークがついている公衆トイレに侵入してのぞき行為を行った場合、「のぞきの意思はなかった」は通用しません。当然、逮捕されるでしょう。しかし、何かの手違いで女性用トイレに男性用マークがついて誤って侵入し、結果的にのぞきを行ってしまった場合は、罪に問われることはありません。
このように、「意思」はその人が感じたことや思ったこと以外でも、客観的な情報も加味した上で総合的に判断されます。
Q.のぞきの定義は何ですか?
A.のぞき行為とは、相手に知られることなくこっそり覗く行為です。
のぞきとは、本来であれば隠されているような場所や物をこっそりと覗き込む行為のことを指します。ただ、広義ではさまざまな捉え方をされており、隠れてこっそり覗いていなくてものぞき行為に該当するケースがあります。
たとえば、異性が裸でいることを容易に想像できる空間(大衆浴場等)に、異性の格好をして侵入する行為です。周りからは「同姓である」と思われているため、のぞき行為に該当し、条例違反や軽犯罪法によって処罰される可能性があります。
まとめ
今回は、のぞき行為を行った場合について解説しました。
のぞき行為は、立派な犯罪行為であり軽犯罪法や各都道府県の条例違反に問われる可能性があります。また、のぞき行為を目的として住居や建物に侵入した場合は、刑法の住居侵入罪・建造物侵入罪に問われます。
いずれの場合も厳しい罰則規定がある犯罪であり、何よりも被害を受けた相手方が負う被害はとても甚大です。
のぞき行為は、相手に知られていないことを前提としています。しかし、バレてしまった場合のリスクや被害者の被害を考えると、絶対に行うべきではありません。もし、のぞきを行おうとしたり繰り返し行っているのであれば、絶対にやめましょう。