電車内での盗撮行為は当然ながら犯罪行為です。そのため、当然ながら逮捕されたり実刑判決が下されたりするケースもあるため注意しなければいけません。
この記事では、電車内での盗撮行為がどう言った法律に抵触するのか、逮捕されてしまった場合はどうなってしまうのかについて詳しく解説しています。
もし、「電車内で盗撮をしたい…」や「盗撮が癖で…」と悩まれている人は本記事を参考にした上で、自分の戒めにしてください。また、盗撮がバレてしまった人、後日逮捕に怯えている人も本記事を参考にしてください。
電車内での盗撮の罪状とは
電車内での盗撮行為は、撮影罪もしくは迷惑防止条例違反に該当する可能性があります。まずは、それぞれの成立要件や法定刑について詳しく解説します。
撮影罪
2023年に新しい法律「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法(略称:性的姿態等撮影罪)」が施行されました。
この法律では性的な姿態を撮影する行為等を禁止しており、電車内での盗撮行為もこの法律に抵触することになります。
撮影罪については、上記法律で上記の通り明記されています。
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
引用元:性的姿態等撮影罪|第2条
つまり、電車内で盗撮をした場合は上記法律によって処罰されることとなります。法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。
迷惑防止条例違反
盗撮行為は、各都道府県の定めによる迷惑防止条例でも明記されています。たとえば、東京都の場合は以下の通り書かれています。
第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
二 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)引用元:東京都迷惑防止条例|第5条
電車内は当然ながら「公共の乗り物」に該当するため、迷惑防止条例違反に該当します。東京都の迷惑防止条例違反に該当した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
また、常習性が認められる場合は2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます。撮影罪もそうですが、いずれの場合も懲役刑があり得る犯罪であるため、十分に注意してください。
電車内で盗撮をした場合は逮捕される可能性がある
電車内で盗撮を行った場合、逮捕されてしまう可能性があります。逮捕は大きく分けて「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」の3種類があり、痴漢によって可能性がある逮捕は、通常逮捕もしくは現行犯逮捕です。
まずは、電車内での盗撮が原因で逮捕される可能性や仕組みについて解説します。
現行犯逮捕の可能性
現行犯逮捕とは、現行犯の場合に限って逮捕状がなくても逮捕をできる権利のことを言います。電車内での盗撮は、その場で見つかって逮捕されるケースも多く、その場合は現行犯逮捕となります。
また、現行犯逮捕は一般の人でも行うことができます。これを「私人逮捕」と言います。
私人逮捕とは、逮捕権を持たない一般の人が逮捕することを言います。基本的には現行犯でなければいけない、逃亡の可能性があるなどさまざまな条件を満たしている必要があります。
たとえば、電車内で盗撮しているところを他の乗客に見られ、その場で「この人盗撮しています」と捕まえられてしまった場合は私人逮捕が成立します。私人逮捕後は直ちに警察官へ引き渡す必要があるため、そのまま身柄を拘束されることになるでしょう。
後日逮捕(通常逮捕)の可能性
警察官等が捜査を行って逮捕状を請求し、逮捕状を持って逮捕することを「通常逮捕」と言います。通常逮捕は、電車内での盗撮を行ったあとに逮捕されることが一般的であるため、後日逮捕とも言います。
たとえば、電車内で盗撮を行ったあなたが今日はその場を逃れられたとしましょう。しかし、警察等が捜査を行って証拠を集め、逮捕状を持って被疑者宅等に現れます。
その後、逮捕状を見せた上で「◯時◯分通常逮捕します」と言って逮捕を行います。また、同時に家宅捜索差押が行われるケースが多いです。自宅内やパソコン、スマートフォンの中にある盗撮データなどを差し押さえて証拠として取り扱うためです。
また、順番が逆になることもあります。初めに家宅捜索を行って証拠品を集め、任意同行を求めてその後に通常逮捕ということもあるため、初めに逮捕されなかったとしても安心はできません。
電車内の盗撮で逮捕された場合の流れ
電車内での盗撮行為は当然ながら犯罪です。そのため、逮捕されてしまう可能性があるため注意しなければいけません。次に、万が一電車内で盗撮をして逮捕されてしまった場合、どう言った流れで物事が進んでいくのかについても解説します。
逮捕
初めに、盗撮行為を行った時点で現行犯逮捕されてしまう可能性があります。仮に、その場を逃げ果せたとしても、後から逮捕(通常逮捕)されてしまう可能性もあるため、注意しなければいけません。
通常逮捕の場合は逮捕状を持った警察官が目の前に現れ、逮捕状を見せた上で逮捕を行います。現行犯逮捕の場合は、逮捕状が必要ない逮捕の種類であるため、その場で手錠をかけられて警察署へ連行されていきます。
なお、逮捕時には「〇時〇分、〇〇の容疑で〇〇(現行犯・通常)逮捕する」と言ってから逮捕しなければいけません。時間を伝える理由は、その後の手続きにおいて〇〇時間に行わなければいけない、など定められていることがあるためです。
逮捕後48時間以内に事件を送致
逮捕をされるとそのまま身柄を拘束されることになります。その後、逮捕された時刻から48時間以内に検察へ事件を送致しなければいけません。48時間以内に事件に関する取り調べ等を受けます。
また、当然ながら身柄を拘束されているため会社や学校、家族等へ心配をかけてしまうことになるでしょう。
とくに、逮捕をされたからといって警察から勤務先等に電話をかけることはありません。本人が希望し、「勤務先に事情を話してほしい」と言った場合は、電話をかけてもらえる場合もあります。
また、逮捕後は一度だけ当番弁護人制度によって弁護士と話をすることができます。このとき、取り調べを受ける際のアドバイス等を受けることになりますが、ついでに「家族へ電話をしてほしい」と伝えれば、電話をしてもらえます。
送致から24時間以内に勾留請求の有無を判断
事件を送致すると、検察官は24時間以内に勾留請求の有無を判断しなければいけません。勾留とは、このまま身柄を拘束した上で取り調べを行う必要があるかどうかを判断します。
検察官が「勾留が必要である」と判断した場合は、裁判所にて勾留請求を行って最終的な判断を行う流れです。
検察官や裁判官が「勾留の必要がない」と判断した場合は、そのまま釈放されて在宅捜査に切り替わります。また、検察官へ事件を送致することなく、微罪処分で事件が終了する場合も即時釈放されます。
在宅捜査となった場合は、警察や検察の出頭要請に応じて取り調べを受けます。微罪処分となった場合は、そのまま事件が終結するためとくに何かを行う必要はありません。
盗撮事件の場合は、常習性がない場合や被害者との示談交渉が済んでいる場合などさまざまな条件を元に在宅捜査や微罪処分となる可能性があります。
最大20日間の勾留
勾留請求が認められた場合は、初めに10日間の勾留が行われます。そして、実務上はさらに10日間の勾留延長が認められるケースが多く、勾留期間は20日間程度となります。
逮捕から勾留期間を合計すると23日間は身柄を拘束され続けるため注意が必要です。当然ながら、外部とのやり取りは不可能であり、学校や職場へいくこともできません。最悪の場合は、退学や解雇といった処分が下されてしまうかもしれません。
起訴・不起訴を判断
勾留が認められた場合は、20日以内に検察官は起訴・不起訴を判断しなければいけません。不起訴となった場合は、そのまま釈放されて事件が終結します。起訴された場合は、そのまま刑事裁判へ移行する流れです。
なお、不起訴とは「事件の事実がない」や「冤罪であった」など、犯罪行為を立証できない場合のみではありません。実際に電車内で盗撮を行っていたとしても、常習性や被害者との示談交渉状況などさまざまな状況を鑑みて、不起訴となることもあります。
不起訴処分を目指すためには、早期に弁護士へ相談をしておくことが大切です。できるだけ早めに弁護士へ相談をし、早い社会復帰を目指したほうが良いでしょう。
刑事裁判
起訴された場合は、刑事裁判にかけられます。刑事裁判では、有罪か無罪かを初めに判断し、有罪の場合は量刑まで決定します。
また、刑事裁判にはかけずに略式起訴という形で事件を終結させる場合もあるため、覚えておくと良いでしょう。略式起訴は裁判手続きがない分、早期の釈放が可能であるなどのメリットがある一方で、自らの意見を伝えたり弁解したりする機会を与えられない点がデメリットです。
略式起訴となった場合は、直ちに略式命令が下されて釈放されます。しかし、仮に違法捜査で得た証拠があったとしても、あなたは何も言うことはできないためそういった点はデメリットであるということです。
なお、盗撮事件の場合は略式起訴となるケースも多いため、検討しておくと良いでしょう。
判決に従って刑に服する
刑事裁判や略式起訴にて下された判決に従って、最終的に刑に服することで事件が終結します。盗撮事件の場合、初犯であれば大半が罰金刑で終了します。ただ、実刑判決の可能性もあるため注意してください。
電車内盗撮の判決傾向
電車内での盗撮は、さまざまな事情によって判決傾向が変わります。次に、状況別による判決傾向について解説します。
被害者の処罰感情で判決が大きく変わる
電車内での盗撮事件において、被害者の処罰感情は判決に大きな影響を与えます。処罰感情とは、大きく分けると「厳罰に処してほしい」という厳しい感情と、「寛大な判決をお願いします」という感情があります。
当然のことながら、被害者の処罰感情が強ければ強いほど、厳しい判決傾向になるのは当然です。
また、盗撮被害を受けた人からすると、ほとんどの人が「厳しい処罰を求めたい」と考えるはずです。自分が被害にあった以上、徹底的に処罰してほしいと考えるのは当然の感情であると言えるでしょう。
しかし、加害者がしっかりと反省しており、金銭の支払いを行うことなどで処罰感情を軽減できる場合があります。これを一般的には「示談交渉」と言います。
示談交渉では、「加害者は反省しています。〇〇万円の支払いをします」と言った和解案を元に交渉して被害者に対して許しを乞います。許してもらえた場合は、検察官等に対して「嘆願書」と言うものを提出するのが一般的です。
ここで言う嘆願書とは「私は処罰を望みません」などと伝える書類を指します。たとえば、「私は、被疑者〇〇から謝罪があり、示談も済んでいます。そのため、寛大な判断をお願いいたします」のように書いて提出します。
上記のような内容の嘆願書が提出された場合は、「被害者である人が処罰を望んでいない」と言うことが明らかになるため、寛大な判決となることが多いです。
一方で、嘆願書では「私は、〇〇の盗撮行為によって、甚大な被害を受けています。厳罰を望みます」といった内容を書くこともできます。この場合は、被害者の処罰感情が強いため、判決傾向も重くなるため注意が必要です。
つまり、刑罰を少しでも軽くするためには、しっかり反省している態度を示した上で示談交渉を完了させておくことが大切です。
犯行の態様・反省の態度による
犯行の態様や本人の反省度合いによっても判決傾向が大きく変わります。たとえば、深く反省しており、2度と同じことを繰り返さないと何度も口にし、態度にも出ているような人の場合は、比較的刑罰も軽くなるでしょう。
また、反省の態度を示すだけではなく、具体的にどのように改善していくのかを伝えられている人は良いです。とくに盗撮は一種の性癖でもあるため、中には治療が必要な人もいるでしょう。そういった人であれば「しっかり治療を受けて改善していく」と言えば、反省の態度を示せます。
一方で、反省の態度を示すことなく「出たらまた同じことを繰り返す」などと言っている人の場合は、再犯の可能性が高いため刑罰も重たくなります。
前科・前歴によって変わる
前科や前歴がある人は「犯罪傾向が進んでいる」と判断されるため、厳しい判決が下されることが多いです。とくに、同じような犯罪で何度も有罪判決を受けている人の場合は、常習性が強いと判断されて厳しい判決が下されやすくなります。
初犯の場合は略式起訴・執行猶予付き判決が多い傾向
電車内での盗撮で逮捕された場合、初犯か常習犯かによっても異なります。初犯の場合は比較的寛大な判決が下されるケースが多く、略式起訴や執行猶予付きの判決となる場合が多いです。2回目以降の場合は、実刑判決となるケースが多いため注意が必要です。
なお、略式起訴とは刑事裁判にかけることなく事件を終結させる法的手続きです。略式起訴を行うと即時略式命令が下されて判決に代わります。略式起訴は100万円以下の罰金か科料の場合のみ適用されます。
執行猶予とは、刑罰の執行を猶予することです。たとえば「懲役1年6カ月、ただし刑の執行を3年間猶予する」の場合、直ちに懲役1年6カ月の刑罰を執行しません。3年間の猶予を与え、この期間内に罰金刑以上の刑罰を受けなければ懲役刑は消滅します。
ただし、執行猶予期間中に罰金刑以上の刑罰が確定した場合は、猶予されていた懲役1年6カ月が加算されることになります。
電車内の盗撮に関するよくある質問
電車内での盗撮に関するよくある質問を紹介します。
Q.電車内で盗撮をした場合の示談金相場はいくらですか?
A.電車内で盗撮をした場合の示談金相場は、一概に言えませんが概ね20万円〜30万円程度です。
示談金は相手に対して支払う賠償金的な意味合いがあります。そのため、金額に下限もなければ上限もありません。ただ、一般的な相場で見ると20万円〜30万円程度になることが多いです。
なお、示談交渉は上記の金額を支払えばうまくいくとは限りません。被害者が「絶対に許せない」という意思を持っている場合は、どれだけのお金を積んだとしても示談が成立することはないでしょう。
難しい問題ではありますが、自分自身が早期の釈放を目指すためにもできるだけ早期に示談交渉を完了させておいたほうが良いです。しっかりと誠意を見せた上で、第三者(弁護士)に任せて交渉成立を目指しましょう。
Q.容姿の撮影等は盗撮に該当しますか?
A.盗撮の定義は「通常、衣服で隠されている下着や体を撮影すること」を指すため、この条件を満たしていない場合は撮影罪には問われません。
たとえば「綺麗な女性が歩いているな…」と思ってカメラを向けて撮影したとしましょう。この場合は、「通常、衣服で隠されている下着や体」を撮影したわけではないため、撮影罪には該当しません。
ただし、別の犯罪が成立する可能性があるため注意が必要です。たとえば上記例の場合は、肖像権の侵害に該当します。肖像権の侵害は刑法犯ではないため、逮捕されたり実刑判決を受けたりすることはありませんが、民法上の責任を負う可能性があるため注意が必要です。
たとえ容姿以外の撮影であっても、プライバシーの観点から民法上の責任を負うこともあるため注意が必要です。
Q.電車内での盗撮は後日逮捕の可能性もあるのですか?
A.防犯カメラ等で証拠を集め、後日逮捕されてしまう可能性もあります。
電車内での盗撮は一般的に見ると現行犯逮捕のほうが多いです。なぜなら、盗撮行為はその場で発覚することが多いためです。その場を逃げ切れてしまった場合、そもそも犯行に気付かれていないケースが多いため、傾向的には現行犯が多いです。
ただ、被害に気づいている人がその場では言うことができず、後日、警察等へ相談をして捜査を行う場合もあります。この場合は、捜査を行って証拠を集め、逮捕状を請求して逮捕をする流れになることもあるため注意が必要です。
まとめ
今回は、電車内での盗撮行為について解説しました。
電車内での盗撮は、当然ながら犯罪行為であり撮影罪や迷惑防止条例違反といった法律によって処罰されます。いずれの犯罪も100万円以上の罰金刑や1年〜3年程度の懲役刑があり得る犯罪です。
盗撮行為は中にはバレずに済んでしまうケースもあるでしょう。しかし、バレてしまった場合は被害を受けた人のみならず、自分自身も多大な影響を受けることになり得ます。十分に注意してください。