自首をすることによって、その犯罪に対する罪が軽くなります。そのため、犯罪を犯してしまって後悔をしている人は、すぐにでも自首をして早期の社会復帰を目指したほうが良いでしょう。
この記事では、自首をしたほうが良いケースや自首のメリット・デメリットについて詳しく解説しています。自首をしようかどうか悩まれている人や犯罪を犯してしまった人は、本記事をぜひ参考にしてください。
自首とは|自首と出頭の違いを解説
犯罪を犯してしまった場合、自ら申し出ることにより罪が軽くなることがあります。これを法律的には「自首」と呼びます。
しかし、犯罪を犯して出頭をしたからといって、必ずしも自首に該当するわけではありません。自首が成立しなかった場合は「出頭」になり、減刑に関する規定はありません。まずは、「自首」と「出頭」の違いについて詳しく解説します。
犯罪事実または犯人が特定されていない場合に申し出るのが「自首」
自首とは、捜査機関が犯罪事実または犯人を特定していない場合に自ら申し出た場合に成立します。
たとえば、人の家に入って金銭を窃取したとしましょう。しかし、改めて自分が行ったことを考えると居ても立っても居られずに、窃盗をしたその足ですぐに申し出たとします。この場合、被害者による被害報告や犯人の特定が行われていない可能性が高いです。
そのため、自首が成立する可能性が高いです。逆に、被害者が捜査機関に被害を報告し、事件を認知している場合や犯人が特定されている場合に出頭をしても自首は成立しません。
犯罪事実または犯人が特定されている場合に申し出るのが「出頭」
出頭とは、捜査機関や裁判所へ出向くことを言います。刑法等で明記されている法律用語ではなく、刑罰の軽減に関するルールも定められていません。
たとえば、犯罪を行ったがその犯罪事実を捜査機関等が認知している場合であって、犯人も特定されている場合に警察署へ出頭するケースが該当します。
自首の成立要件は「犯罪事実もしくは犯人が特定されていない場合」に成立します。一方で、出頭は自首の成立要件を満たしていない場合に捜査機関や裁判所に出向くことを指します。
自首は減刑されるが出頭は減刑規定がない
自首が成立した場合は、刑法によって罪の減刑がなされます。
(自首等)
第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。引用:刑法|第42条
出頭の場合は罪の減刑に関する規定はありません。しかし、自ら出頭してきたことを評価して、ある程度反映されることはあります。裁判において評価されてある程度減刑される可能性もあるということです。
もちろん、事件の内容やその後の対応等によって大きく異なるため一概には言えませんが、犯罪を犯してしまった場合は、自首や出頭を検討したほうが良いでしょう。
自首をしたほうが良いケースとは
自首をしたほうが良いケースは主に以下の通りです。
- 罪を犯してしまった場合
- 罪を反省して償う気持ちがある
ただし、自首をしないほうが良いケースもあるため注意してください。次に、自首をしたほうがよいケースとそうではないケースについて詳しく解説します。
犯罪を犯してしまった場合
犯罪を犯してしまった場合は、自首を検討したほうが良いでしょう。たとえ軽微な犯罪であっても、自ら申し出ることによって減刑されるためです。
自首をしなければ、「いつ捕まるのだろう」と常に不安な気持ちを抱えていなければいけません。少しでも「自首をしたい」という気持ちがあるのであれば、早めに自首をしたほうが自分のためです。
また、自首は「犯罪事実もしくは犯人が特定されていない場合」に成立します。そのため、早めに自首をしなければ、成立しなくなってしまう可能性が高いため注意してください。
罪を反省して償う気持ちがある場合
罪を反省して償う気持ちがあるのであれば、すぐにでも自首を検討しましょう。犯罪を犯すと、高確率で警察に犯罪が認知されて処罰されます。犯罪の内容によっては、長期間の身柄拘束の可能性もあるでしょう。
そのため、犯罪を犯したあとは「いつ警察が来るだろうか」「今後、どうなってしまうのだろうか」といった不安な日々を過ごさなければいけません。
時効を迎えるまで毎日毎日不安な思いをして生活をしていることに疲れた人は、すぐにでも自首を検討しましょう。自首をしたとしても処罰される可能性はありますが、罪が軽くなります。何よりも少なからず不安な気持ちは解消されます。
自首をしないほうが良いケースもある
自首は、捜査機関に自分が罪を犯したと申し出ることを言います。そのため、犯罪を犯した場合は、基本的には自首をしたほうが良いと考えるのが当たり前です。しかし、中には自首をせずに被害者と示談交渉を進めたほうが良いケースがあるのです。
自首をすることによって逮捕されたり処罰を受けたりする可能性が高まります。しかし、自首をせずに被害者と示談交渉をすすめ、被害届を出されなければ逮捕されたり処罰されたりする可能性はゼロです。
犯罪は大きく分けて親告罪と親告罪以外の犯罪があります。親告罪の場合は、被害者からの公訴がなければ起訴することができない犯罪です。つまり、親告罪の場合は被害者と示談交渉を進めて被害届を出されなければ、処罰されることはないのです。
一方、親告罪以外の犯罪の場合はその行為が発生した時点で犯罪として成立しています。そのため、仮に被害者と示談交渉が完了していたとしても、検察が「刑事裁判にかけるべきである」と判断した場合は、起訴される可能性があります。
そのため、自首を検討されている人は、初めに弁護士等へ相談をした上で自首をすべきかどうかについて検討をしましょう。
自首のメリットとデメリット
自首のメリットとデメリットについて解説します。
メリット1:逮捕されずに済む場合がある
自首をした場合、逮捕をされずに済む可能性があり、社会生活に与える影響を少なくできる可能性があります。
まず「逮捕」とは、犯罪を犯したと疑うに足りる人の身柄を拘束し、その事件に関する捜査を行うことを言います。つまり、逮捕をされてしまうと身柄を拘束されてしまうため、当然ながら自宅へ戻ることができず、会社や学校へも行くことができません。
また、逮捕後の勾留請求が認められると、最長で23日間は身柄の拘束が続きます。これだけの長期間、身柄を拘束され続けると社会生活に与える影響はとても大きいです。そのため、逮捕をする必要がない人に対しては逮捕をせずに捜査を行うことが基本です。
逮捕は、証拠隠滅や逃亡の恐れがある人に対して行う行為であるため、自首をしてきた人はその可能性が低いと判断され、逮捕されない確率が高まります。自ら自首をしてきた人であれば、「反省している」と見られるため、逃亡や証拠隠滅の可能性が低いためです。
また、自首をしてきた人の多くは捜査にも積極的に協力してくれることから、逮捕をせずに在宅捜査を選択されるケースが多いです。
ただし、犯罪の内容等によってはそのまま逮捕されてしまう可能性もあるため注意してください。事前に弁護士に相談をした上で、自首をするかどうかを決定しましょう。
メリット2:減刑される・不起訴処分で終了することがある
自首をすることによって、罪が減刑されたり不起訴処分で終了したりする可能性があります。そもそも、自首をすることによって減刑できる旨は、刑法に定められています。そのため、少なからず減刑の見込みがある点は自首のメリットです。
また、犯罪の程度次第では不起訴処分となる可能性があります。自首をすると、反省しているとみなされることが多く、とくに被害者と示談交渉が完了している場合は、あえて起訴せずに事件を終結させる可能性もあります。
刑罰が軽くなれば、早期の社会復帰も可能となり今後の人生へ与える影響も少なく済みます。不起訴処分となった場合は、前科が付かないため社会的影響も少ないです。
メリット3:社会的制裁リスクが軽減される
自首をすることによって、社会的な制裁リスクを抑えられます。まず、自首をすることによって、逮捕の可能性が低くなります。さらに、刑罰が軽くなるため不起訴処分となったり罰金刑で済んだりするケースもあるでしょう。
このように、総合的に見て罪が軽くなることによって、社会的な制裁リスクを抑えられる点がメリットです。
逮捕されて勾留が認められた場合は、最長で23日間の身柄拘束が行われます。その後、有罪判決で懲役刑が下された場合は、数年単位で社会復帰を目指せなくなります。
しかし、自首をして逮捕を回避できれば、社会生活を送りながら事件と向き合うことが可能です。さらに、自首によって不起訴となったり罰金刑で済んだりすると身柄を拘束されることはなくなるため、社会生活へ与える影響はとても少ないです。
つまり、自首をすることによって社会復帰を目指しやすくなるということです。ただ、自首をしたからといって必ずしも、身柄の拘束が発生しないとは限りません。
とくに重い犯罪(殺人・強盗等)の場合は、自首をした場合であっても身柄の拘束を行われる可能性が高いです。弁護士としっかり話し合いをした上で、自首について検討するようにしましょう。
メリット4:不安な日常から解放される
自首をすることによって、不安な日常から解放される点がメリットです。犯罪を犯してしまうと、「いつ警察が来るのだろうか」「捕まったらどうなってしまうのだろうか」など、さまざまな不安や疑問を抱えていることでしょう。
常に不安な気持ちを抱え、外を歩いていれば常に視線を感じるようになります。相当なストレスも抱えているはずです。
しかし、自首をしてしまうことによってそういったストレスから解放されます。事前に弁護士等に相談をしておけば、自首をしたあとの流れについても丁寧に教えてもらえます。少なからず不安は解消されるでしょう。
デメリット1:そのまま逮捕されてしまう可能性がある
自首をすることによるデメリットは、自首をしたと同時にその場で逮捕されてしまう可能性がある点です。自首によって、罪が軽くなったり逮捕をされない可能性が増したりなどさまざまなメリットがあります。しかし、罪の軽減以外は法律によって定められていることではありません。
そのため、「自首をすることによって逮捕を回避できる」といった確約はありません。犯罪の傾向や被疑者の態様等を考慮した上で、必要であると判断されれば逮捕されてしまう可能性もあるため注意が必要です。
逮捕をされてしまうと長期間にわたって身柄拘束をされてしまう可能性があります。そのため、逮捕される可能性を覚悟した上で警察署等へ出頭するように心がけてください。
デメリット2:時効成立の可能性がゼロになる
自首をすることによるデメリットに「時効成立の可能性がゼロになる」があります。罪を犯した場合は、しっかり罪を償うことは当然です。しかし、中には時効が成立しそうなギリギリのところにいる人がいるかもしれません。
また、捜査機関が事件を認知していなかったり犯人を特定できていない可能性も考えられます。この場合は、逃げ切れる可能性があるかもしれません。
当然ながら、罪は償うべきであり逃げ切ることは良いことではありません。しかし、「このまま逃げ切れるかも」という可能性を考慮した上で自首を検討したほうが良いでしょう。
自首をするまでの流れ
自首をする方法や注意事項は主に以下のとおりです。
- 警察署や交番へ行って犯罪の申告をする
- 犯罪の証拠や資料を用意しておくと良い
- できるだけ早めに自首をすること
- 弁護士へ相談をすると同行してもらえる
警察署や交番へ行って犯罪の申告をするだけで良い
自首は犯罪を行った本人が警察署等の捜査機関に申し出るだけで良いです。特別な手続きを行う必要はありません。そのため、「自首をしたい」と思ったそのときにそのまま出頭すれば良いのです。
また、警察署等の捜査機関であればどこでも良く、実際に犯罪を行った地域ではなくても問題ありません。たとえば、東京都で犯罪を犯した人が遠く離れた北海道の交番で自首をしても良いのです。
捜査機関とは一般的に警察署や交番などを指します。場所はどこでも良いので、行きやすい場所へ行けば良いでしょう。なお、複数人で犯罪を行った場合であっても、単独で自首をしても構いません。
犯罪の証拠や資料を用意しておくとスムーズに進む
自首は体ひとつで出頭するだけで良いです。しかし、捜査をよりスムーズに進めるためにも、犯罪の証拠や資料等あれば用意して持って行くと良いでしょう。
たとえば、詐欺事件で被害者からキャッシュカードを受け取っていた場合、そのキャッシュカードを持って自首をするとスムーズです。自首は、捜査機関に事件を認知されていない状況も考えられるため、体ひとつで行って「詐欺を行いました」と伝えても被害者等がわかりません。
そのため、証拠となる物を用意して行くと何の事件かすぐにわかり、スムーズに捜査が始められる点がメリットです。なお、証拠類は絶対ではありません。あくまでも「あれば良い」という程度です。
できるだけ早めに自首しなければ意味がない
今回、何度もお伝えしている通り自首は「捜査機関が犯罪を認知していない場合」もしくは「犯人を特定していない場合」のいずれかです。いずれかの条件を満たしていない場合は、自首が成立せず出頭になってしまいます。
出頭と自首では、刑罰に大きな差があります。そのため、少しでも自首をしたいという気持ちがあるのであれば、できるだけ早めに自首をしてください。
弁護士へ相談をした上で同行してもらうと良い
自首をする際は、事前に弁護士へ相談をして同行してもらいましょう。弁護士へ相談をするメリットは、今後の流れについて詳しく教えてもらえたり弁護活動を行ってもらえたりする点です。
自首をする前は「今後どのようになるのだろうか」「いつ頃出てこられるのだろうか」など、さまざまな不安を抱えていることでしょう。弁護士へ相談をすることによってそういった不安を解消できます。また、自首後の弁護活動も積極的に行ってもらえるため、早期の釈放を目指せます。
弁護士へ相談をせずに自首をしても良いですが、相談をすることによってさまざまなメリットを受けられます。そのため、あらかじめ刑事弁護に強い弁護士へ相談をしておくと良いでしょう。
自首に関するよくある質問
自首に関するよくある質問を紹介します。
Q.自首をした後どうなるのか流れを教えてください。
A.すべての人に共通していることは、捜査の開始です。
まず、自首をすると犯人が特定されます。そのため、そのまま逮捕をして捜査を行うか在宅捜査で進めて行くかを決定します。逮捕された場合は、身柄を拘束されて警察署内にある留置所で数日〜数週間程度生活を送りながら取り調べを受けます。
在宅捜査となった場合は、初めに取り調べを受けてから自宅へ戻ることが可能です。しかし、警察や検察から呼び出しがあった場合は出頭し、取り調べを受ける必要があります。
事件の態様等にもよりますが、自首をした場合は逮捕をせずに取り調べを行うケースも多いです。詳細や自首後の流れについては弁護士へ相談をしてみると良いでしょう。
Q.自首は警察署へ電話をかけても成立しますか?
A.電話による自首も可能ですが、電話だけで成立しない点に注意が必要です。
たとえば、110番をして「〇〇の事件を起こしました」や「〇〇事件の犯人です」と伝えても良いです。ただし、その後は警察の指示に従う必要があり、従わなければ自首は成立しません。
たとえば、警察が「今からあなたがいる場所に行くので、その場で待っていてください」と言われて、実際にその場で待っていたとしましょう。この場合は、指示に従っているため自首は成立します。
しかし、電話をかけた後に怖くなって逃げてしまった場合、自首は成立しなくなってしまうため注意が必要です。
Q.万引きをしてしまい、罪悪感で押しつぶされそうです。このまま警察署へ自首しても良いでしょうか?
A.自首をしても良いです。
万引きの場合、常習的ではない場合や被害額が軽微である場合は、微罪処分や不起訴処分といった処分が下される可能性が高いです。そのため、自首をすることにより、微罪処分等となる可能性がとても高まります。
また、店舗へ直接謝罪に行く方法もありますが、この場合、自首は成立しません。しかし、お店側が直接の謝罪を受け入れ、警察への通報を行わない可能性もあります。警察へ通報されなければ、取り調べを受けたり何らかの処分を受けたりすることもありません。
そのため、警察へいって自首をするのと店舗へ行って直接謝罪することのどちらが良いか悩まれている人もいるでしょう。どちらが正解であるといったことはないため、ご自身で選択するようにしてください。
まとめ
今回は、自首をしたほうが良いケースについて解説しました。
自首とは、「捜査機関が事件を認知していない」もしくは「犯人を特定できていない場合」に成立します。上記以外の場合は、出頭になってしまい減刑効果に期待はできません。
そのため、自首をしたいという気持ちが少しでもあるのであれば、早めに捜査機関へ行って申し出たほうが良いです。遅ければ遅いほど、せっかくの「自首をしたい」という気持ちが無駄になってしまう可能性があるためです。
今回解説した内容を踏まえ、まずは自首をする覚悟ができているかどうか、できている場合は弁護士へ相談をした上で一緒に警察署等へ行ってきてください。