出し子で逮捕される可能性はある?出し子で成立する犯罪や今後の流れを解説

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「出し子」とは特殊詐欺グループの役割のひとつであり、被害者から詐取したキャッシュカードを銀行ATM等から引き出す役割を担う人のことを言います。

昨今は、SNSの普及、特殊詐欺の巧妙化に伴い、悪気もなく特殊詐欺に加担をしてしまう人が増えてきています。とくに若い人たちは軽い気持ちで特殊詐欺に加担してしまうケースが多く、ある意味加害者であり被害者とも言えるような状況です。

今回は、出し子とはどういった役割の人物を指し、出し子を行ってしまった場合はどういったリスクがあるのかについて詳しく解説をします。

出し子の役割とは

出し子とは特殊詐欺の役割のひとつであり、被害者から詐取したキャッシュカード等からお金を引き出す役割を担っている人のことを指します。

まずは、出し子とはどういった役割を担っている人のことを指すのか、特殊詐欺ではどういった役割があるのかについて詳しく解説します。

引き出し役のこと

特殊詐欺はさまざまな役割に分類されており、そのうちの一つの役割が「出し子」になります。出し子や受け子(被害者から現金やキャッシュカードを詐取する人物)は、特殊詐欺グループの中でもっとも捕まるリスクが高い役割です。

そのため、特殊詐欺グループはSNSなどを介して知識の少ない10代〜20代をターゲットにして出し子という役割を行わせるケースが多いです。

その他特殊詐欺の役割

特殊詐欺の役割は大きく分けて以下のとおりです。

  • リクルーター
  • かけ子
  • 受けこ
  • 出し子

特殊詐欺グループは大元がいてその下に上記の役割を担っている人たちがいるのが一般的です。

リクルーターとは、大元にもっとも近い人物であり受け子やかけ子といった人材を集めてくる役割を担っている人です。SNS等で募集をしている人をリクルーターと呼びます。

次に、電話をかける役割を担っている人が「かけ子」です。かけ子は海外に拠点を構えていることが多く、警察も見つけにくく捕まりにくいです。また、どちらかというと組織よりの人物で構成されており、受け子や出し子から出世する形でかけ子になるケースが多いです。

受け子は被害者からキャッシュカードや現金等を詐取する役割の人間であり、捕まるリスクはもっとも高いです。なぜなら、被害者側が「騙されたふり」をしている可能性が高く、キャッシュカード等を受け取りに行った際にそのまま逮捕されてしまうためです。

そして、出し子は先ほども紹介したとおり受け子が詐取してきたキャッシュカード等を銀行ATMから引き出す役割をになっています。

出し子は銀行ATMで操作をする必要があるため、必ずカメラに顔や姿が映ってしまいます。そのため、受け子と並んで捕まるリスクが高い役割のひとつです。

出し子に適用される罪状とは

通常、特殊詐欺に関わった人物は全員「詐欺罪」が適用されます。しかし、出し子に限っては「窃盗罪」が適用されることになります。次に、出し子に適用される罪状と、なぜ詐欺罪に問われないのか?について、詳しく解説をします。

原則「窃盗罪」が成立する

特殊詐欺における出し子は、刑法第235条に定められている窃盗罪が成立します。窃盗罪とは「他人の財物を窃取すること」です。

出し子は「銀行ATMから現金を引き出す役割」を担っている人物です。そのため、そもそも詐欺の成立要件である「相手から騙し取る」とういう行為を犯してはいません。そのため、詐欺罪は成立しません。

一方で、窃盗罪は「人の財物を窃取」することで成立する犯罪です。銀行に保管されている他人の財物を窃取していると考えられるため、窃盗罪が成立します。

窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。また、「窃盗=万引き・自転車窃盗」など軽微な犯罪をイメージしている人も多いでしょう。これらの軽微な窃盗の場合は、初犯であれば罰金刑や執行猶予付きの判決が下されるケースが多いです。

しかし、詐欺は重罪であり、万が一詐欺罪に問われた場合は、初犯であっても懲役刑の実刑判決が下される可能性が高いです。このことから、たとえ出し子で窃盗罪に問われたとしても、初犯で実刑判決が下されることになるでしょう。

出し子が「詐欺罪」に問われない理由

出し子が詐欺罪に問われない理由は、詐欺罪の成立要件にあります。詐欺罪の成立要件は以下の4つを満たしている必要があるためです。

  • 欺罔行為
  • 錯誤
  • 財物の処分
  • 財物の移転

まず、詐欺罪が成立するためには「欺罔行為」がなければいけません。欺罔行為とは、被害者のことを騙そうとする意思、そして行為です。たとえば特殊詐欺のかけ子が被害者に電話をかけてお金を騙し取ろうとする行為が該当します。

しかし、出し子は被害者を騙すこともしなければ、直接会ったり話したりすることもありません。そのため、詐欺罪成立要件の1つ目である「欺罔行為」の要件をそもそも満たしていません。

また、錯誤とは被害者が実際に騙されてしまうことを指します。たとえば、息子を装ったかけ子が「会社で大きなミスをしてしまった!」といって被害者を騙し、被害者が実際に「私の息子が会社でミスをしてしまった」と思わなければいけません。

出し子は、銀行ATMからお金を引き出すだけであるため、被害者との干渉はなく、錯誤を発生させるようなこともありません。よって、詐欺罪の成立要件を満たしていないことになり、出し子については詐欺罪は成立しないことになります。

出し子で逮捕される可能性・刑罰の傾向

詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」であり、罰金刑の規定はありません。また、初犯であっても実刑判決が下される可能性が高い犯罪です。

一方、出し子に適用される窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」であり、罰金刑の規定があります。また、詐欺罪と比較して軽い犯罪であり、「出し子であれば、比較的軽い刑罰が下されるのではないだろうか?」と考えている人がいるかもしれません。

次に、出し子で逮捕される可能性や刑罰の傾向について詳しく解説します。

特殊詐欺に関与しているため逮捕の可能性が高い

出し子による窃盗罪の場合は、特殊詐欺に関与しているため逮捕される可能性は高いです。比較的軽微な窃盗(万引き・自転車窃盗)で初犯であれば、逮捕される可能性は低いでしょう。

しかし、特殊詐欺に関与している場合は被害額が大きいうえに上層の組織に連絡が行き、証拠隠滅や逃亡されてしまう恐れがあるため、出し子も逮捕するのが一般的です。

逮捕とは、罪を犯した人の身柄を拘束して取り調べを行うための手続きです。罪を犯したからといって、すべての人が逮捕されるわけではありません。逮捕するためには、一定以上の重犯罪であることもしくは証拠隠滅・逃亡の恐れがあることなどの条件を満たしている必要があります。

また、逮捕後は長期間の身柄拘束を行う可能性があり、社会的な影響も大きくなるため注意が必要です。とくに出し子や受け子といった役割を担う末端の人たちは、使い捨ての駒としか思われておらず、誰も助けてはくれません。軽い気持ちで加担するのはやめましょう。

初犯の窃盗罪であっても実刑判決が下される可能性が高い

出し子の窃盗罪で逮捕された場合、これまでに前科や前歴がなかったとしても、一発で実刑判決が下される可能性が高いです。

そもそも、特殊詐欺で捕まった人の大半は、詐欺罪が適用されます。特殊詐欺による詐欺罪は、初犯であっても実刑判決の可能性がある重罪です。そのため、たとえ窃盗罪が適用された場合であっても、詐欺罪同様に実刑判決が下される可能性が高いでしょう。

実刑判決とは?
実刑判決とは、執行猶予が付かない判決のことを意味します。懲役刑の実刑判決が下された場合は、刑務所へ収容されます。窃盗罪で罰金刑の実刑判決であれば、金銭納付を命令されることになります。

出し子で逮捕された場合の流れ

20歳以上の者が出し子の容疑で逮捕された場合は、そのまま刑事処分を受ける可能性が高いです。実際に、逮捕された場合の流れについて詳しく解説をします。

逮捕

逮捕とは「罪を犯した人物の身柄を一時的に拘束するための手続き」です。逮捕には以下のとおり3つの種類があり、出し子はいずれのパターンでも逮捕される可能性があります。

  • 現行犯逮捕
  • 緊急逮捕
  • 通常逮捕

現行犯逮捕とは、犯行を行っているときもしくは犯行が終了した直後(現行犯)で逮捕できる方法であり、逮捕状がなくても逮捕ができます。たとえば、出し子が銀行ATMを操作して現金を引き出したときに逮捕されるのが現行犯逮捕です。

緊急逮捕とは、指名手配犯など重大な罪を犯した人物を発見した場合に逮捕状がなくても逮捕ができるものです。逮捕後は、直ちに逮捕状を請求しなければいけないという条件付きです。たとえば、あなたに出し子(窃盗罪)の疑いがかかっており、パトロール中にあなたを発見した場合に行える逮捕の方法です。

通常逮捕とは、裁判所に逮捕状の発布を請求して逮捕をする方法であり、もっとも一般的な逮捕手段です。たとえば、警察が防犯カメラ等から出し子であるあなたを特定して裁判所に逮捕状を請求し、ある日、自宅に突然警察官が現れ、そのまま逮捕する方法です。

窃盗罪はいずれの逮捕の可能性もある犯罪です。そのため、仮に現行犯逮捕がなかったとしても、街を歩いているときや自宅で休息しているとき、突然警察官によって逮捕されてしまう可能性があるため注意しなければいけません。

なお、逮捕後は48時間の身柄拘束が行われ、期限が切れる前に検察官へ事件を送致されます。

逮捕をせずに捜査を行うことを「在宅捜査」と言います。比較的軽微な犯罪である場合や、証拠隠滅・逃亡の恐れがない場合は在宅捜査となる可能性もあります。在宅捜査の場合は、期限に定めがありません。しかし、出し子の場合は逮捕される可能性が高いため注意してください。

事件の送致

身柄事件(身柄ごと送致された事件)の場合、事件を引き継いだ検察官は24時間以内に引き続き被疑者の身柄を拘束し続けるかどうかについて判断しなければいけません。

勾留請求の判断

検察官が引き続き勾留する必要があると判断した場合は、勾留請求を行います。勾留請求を行う際は被疑者を裁判所へ連れて行き、裁判官から勾留質問が行われる流れです。

勾留質問では、疑われている犯罪について警察官や検察官が取り調べした内容が読み上げられ、内容に間違いがないか、言いたいことはないかと尋ねられます。何か言い分があれば裁判官に伝え、最終的に裁判官が勾留請求を許可するか却下するか決定します。

勾留請求が認められた場合は、初めに10日間の勾留が可能です。その後、さらに10日間の勾留延長が認められるケースが大半であるため、勾留期間は最長20日間となります。

逮捕〜勾留期間を合計すると23日間となります。この期間は、当然社会へ戻ることができないため、学校へ行けない、会社へ出勤できないなどさまざまな影響がで始めるでしょう。

起訴・不起訴の判断

勾留されている事件の場合は、勾留期間中に被疑者を起訴するか不起訴とするかを判断しなければいけません。不起訴となった場合は直ちに釈放する必要があります。

起訴された場合、被告人(起訴されると呼び名が被疑者→被告人に変わります)は保釈請求は可能となります。保釈請求とは、補償金の支払いなど一定の条件のもとで、身柄拘束を解く制度です。保釈請求が認められると、一時的に社会へ戻ることができます。

ただし、特殊詐欺の出し子の場合は共犯者との口裏合わせや証拠隠滅、逃亡の恐れがあると判断され、保釈請求が認められない可能性もあるため注意しましょう。

なお、起訴には「正式起訴」と「略式起訴」の2種類があります。正式起訴とは、通常通り刑事裁判を行う手続きです。一方、略式起訴とは「100万円以下の罰金」に対して行える起訴方法のひとつです。

略式起訴となった場合は、刑事裁判を行わずに「略式命令」という形で判決が言い渡されて事件が終了します。刑事裁判を行わない分、早期に釈放される点がメリットです。

一方で、刑事裁判が行われないため自分の意見を述べる機会が与えられません。検察官や警察官が取り調べた内容をすべて認める必要があるため、納得ができない場合は刑事裁判を行う必要があります。

窃盗罪の場合は「50万円以下の罰金」という規定があるため、出し子であっても略式起訴される可能性もある犯罪です。

刑事裁判

正式起訴された場合は、そのまま刑事裁判を受けることになります。刑事裁判では、今回の事件について有罪か無罪かを判断し、有罪である場合はどの程度の量刑が妥当かを判断して判決を言い渡します。

釈放が認められている被告人も裁判日程が決まり次第、裁判所へ出廷して刑事裁判を受けなければいけません。身柄が拘束されている人は、拘置所から裁判所へ移送されて裁判を受ける流れになります。

なお、共犯がいる場合や否認事件の場合は裁判期間が長期間になることがあります。とくに特殊詐欺のような犯罪の場合は上部組織から否認をするようにされていたり、共犯がいたりすることが多いです。

刑罰に従って刑に服する

最終的に判決が言い渡された場合は、その判決に従って刑に服することになります。懲役刑であれば、その期間は刑務所に収容されます。

窃盗罪で罰金刑が下されれば、罰金を支払って刑罰は終了です。しかし、罰金を支払えなければ、1日5,000円程度で労役をしなければいけません。結果的に刑務所へ収容されることになるため注意しましょう。

未成年者が出し子を行った場合の処罰

未成年者および18歳・19歳が出し子を行った場合、原則少年事件として扱われることになります。少年事件は大人とは違い「更生」を目的としており、通常であれば保護処分が下されることになります。

昨今は、SNSの普及に伴い、10代の犯罪も増えてきているため注意しなければいけません。とくに、「ATMからお金を引き出すだけ」であり、罪の意識がないもしくは少ないのも問題です。

もし、10代の少年が出し子としてバイトをしてしまった場合、どういった流れで処分が下されていくのでしょうか。詳しく解説していきます。

逮捕

14歳以上の少年については、逮捕される可能性があります。逮捕とは、大人と同じで「身柄拘束を行う手続き」です。14歳未満の少年については「刑事罰に処すことができない」ため、逮捕されることはありません。

14歳以上の少年については、大人同様逮捕から48時間の身柄拘束、検察官送致という流れになります。送致後、勾留の有無を判断しますが、少年事件の場合は観護措置もしくは在宅事件として扱われるケースが多いです。

勾留または観護措置

少年事件における「勾留」も大人と同じです。最長で20日間の身柄拘束が行われます。ただし、少年事件で勾留をするためには「勾留の理由」と「勾留の必要性」が認められなければいけません。

勾留の理由もしくは勾留の必要性が認められない場合は、勾留に代わる「観護措置」が認められます。観護措置では10日間の身柄拘束が可能です。

勾留もしくは観護措置が終了すると、すべての少年事件は家庭裁判所に送られるのが原則です。その後、家庭裁判所は審判(大人で言う裁判のようなもの)を行う必要があると認められる場合は、少年鑑別所に収容して調査を行います。

観護措置では原則2週間の身柄拘束が行われ、事件や少年の生い立ち、性格等の調査をします。また、原則2週間ですが、さらに更新が認められることが多く、大半のケースで4週間の観護措置です。

ただし、共犯がいる場合で意見が食い違っている場合など、さらなる調査が必要な場合は最長で8週間まで観護措置を行えます。

少年審判を受ける

観護措置が終了すると審判を受けます。審判は、大人で言うところの「裁判」ですが、少年については審判と言い、判決ではなく保護処分を下します。保護処分は以下の種類があり、以下いずれかの処分が下されることになるでしょう。

  • 保護観察処分
    社会へ戻って構成を目指す処分です。社会へ戻ることはできますが、定期的に保護司との面談をしなければいけません。また、いくつかの約束事が決められ、守らなければいけません。
  • 少年院送致
    再非行の可能性が高い場合に下される処分です。一定期間矯正施設(少年院)へ収容されて生活を送ります。
  • 児童自立支援施設送致
    比較的低年齢(おおよそ中学生程度まで)の少年について、開放的な施設で構成を目指す必要があると判断された場合に下される処分です。開放的な施設で一定期間共同生活を行い、更生を目指します。
  • 検察官送致
    14歳以上の少年で大人同様に刑事裁判に処するのが適切である、と判断された場合に下される処分です。
  • 知事または児童相談所所長送致
    児童を児童福祉機関の指導に委ねることが妥当であると判断された場合に下される処分です。
  • 不処分・審判不開始
    厳重注意処分、無罪判決といった意味合いが強い処分です。教育的働きかけにより、再非行の恐れが低い場合に下される処分です。

保護処分が確定する

検察官送致(逆送)とならない限りは、何らかの保護処分が確定次第、その処分に従って行動をします。検察官送致となった場合は、20歳以上の大人同様に刑事裁判にかけられ、懲役刑等の刑罰が下されることになります。

なお、16歳以上の少年は「死刑もしくは無期懲役、または1年以上の懲役・禁錮に当たる罪」を犯した場合に検察官送致が可能です。また、18歳以上の場合は原則検察官送致をしなければいけません。

よって、出し子で逮捕された場合、16歳及び17歳であれば逆送の可能性があり、18歳及び19歳は原則逆送されることになるため注意しましょう。

出し子に関するよくある質問

出し子に関するよくある質問を紹介します。

Q.詐欺だとは知らずに加担してしまいました。処罰の対象になりますか?

A.特殊詐欺の役割において「知らなかった」は、基本的に通用しません。

特殊詐欺にはさまざまな役割があります。とくに末端の出し子や受け子の人間は、軽い気持ちでバイト感覚で罪を犯してしまうことが多いです。

しかし、現代において出し子や受け子の行為が「知らなかった」で通用する可能性は極めて低いです。

たとえば、あなたが先輩から「これ、おれのキャッシュカードだから銀行でお金を引き出して来て」と言われたとしましょう。しかしあなたは、初めに「なぜ先輩は自分でお金を下ろしに行かないだろうか?」という疑問を感じるはずです。さらに、キャッシュカードの名義を見れば先輩の名前ではないことは明らかです。

このことから「詐欺かもしれない」というのは容易に想像がつきます。そのため、とくに特殊詐欺においては「知らなかった」ということ自体があり得ません。「知らなかったから許してほしい」というのも基本的には通用しません。

ただし、本当に窃盗の意思(不法領得の意思)がなかった場合は、窃盗罪が成立しません。たとえば、上記例で先輩のキャッシュカードにお金が振り込まれており、日頃から先輩の金庫番的な役割を担っている、など特殊な状況の場合です。

客観的に見て少しでも「詐欺の可能性がある」や「窃盗罪に該当するかもしれない」という認識がある、と判断された場合は窃盗罪になり得ます。あくまでも、上記のように「窃盗や詐欺であると疑う余地がない場合」であれば窃盗罪は成立しません。

とはいえ、現実的に考えて出し子で「知らなかった」が成立する可能性はほぼゼロです。

Q.途中で詐欺だと気づいたのですが、身分証明書を提出しているため途中で辞められません。どうすれば良いですか?

A.警察へ相談をしてください。

途中で詐欺だと気付いた場合は、絶対に加担せずに警察へ相談をしてください。現時点で罪を犯していなければ、逮捕されたり処罰されたりすることはありません。安心してください。

ただし、身分証明書を提出してしまっていたとしても、警察は何らかの被害がない限りは対応できません。たとえば、自宅に詐欺グループが来ている、脅されている、などの実被害がなければ難しいです。

なお、提出した身分証明書は再発行することによって、前の証明書の効力を失います。そのため、身分証明書に関しては再発行の依頼をしておきましょう。

住所がバレている、家族の身分をバラしてしまっているため不安、という人はとりあえず警察へ相談をしましょう。何らかの対応をしてもらうことは難しいものの、アドバイスを受けられる可能性があります。

Q.出し子で捕まった場合、前科はついてしまいますか?

A.捕まっただけでは前科はつきません。

「捕まる=逮捕される」という前提で話をすると、逮捕をされたからといって直ちに前科がつくわけではありません。前科は「有罪判決が確定した時点」でつきます。

そのため、出し子で逮捕されて刑事裁判を受け、最終的に有罪判決が確定した場合は前科がついてしまうため注意しましょう。

Q.受け子と出し子はどちらのほうがリスクが高いですか?

A.受け子も出し子も詐欺グループの末端であり、リスクはとても高いです。

特殊詐欺グループはピラミッド上の組織になっており、上からの監視は厳しいものの、下の者が上の者の情報を知り得ることは絶対にできません。上のものは受け子や出し子に対して何らかの形で指示を出し、自分たちの手を実際に汚さないように動いています。

特殊詐欺グループの中でももっとも逮捕率の高い役割は受け子および出し子であり、上の人間もそのことを承知しています。そのため、使い捨ての駒としか思っていません。捕まれば次の駒を見つけてくるだけであり、自分たちの情報は渡さないため自分たちは捕まるリスクが低い仕組みを作り上げています。

どちらがリスクが低い・高いかではなく、犯罪行為であり罪を犯した場合はたとえ捕まらなくても一生涯不安な思いをして生きていかなければいけません。絶対に手を出さないようにしましょう。

Q.出し子で捕まる確率はどのくらいですか?

A.確率は不明です。

そもそも、捕まった事例は一部しか公表されていないため、確率はわかりません。また、これまでに捕まっていない(成功した事例)があったとすれば、それは警察等も認識していない可能性があるものであり、正確な確率を導き出すのは不可能です。

ただし、出し子はその役割の性質上、ほぼ確実にカメラ等の映像からバレて逮捕されるでしょう。

まとめ

今回は、出し子について解説しました。

出し子は特殊詐欺グループの枠割のひとつではあるものの、詐欺罪ではなく窃盗罪の成立する犯罪です。窃盗罪は、詐欺罪と比較して軽微であり、実際に軽く見てしまう人も多いでしょう。

しかし、特殊詐欺に関わる窃盗罪の場合は、初犯であっても実刑判決が下される可能性が高いため注意しなければいけません。とくに万引きや自転車窃盗のような軽い犯罪と同程度に考えるのはとても危険です。

現在は、SNS等で「闇バイト」と検索をすればいくらでも高額報酬のバイトを発見できます。また、とくに若い人は軽い気持ちで応募をしてしまい、詐欺に加担してしまうケースも珍しくはありません。

詐欺への加担は、人生を棒に振ってしまう行為であり、絶対に許されない行為です。軽い気持ちでの参加はもちろん、たとえどういった理由があったとしても絶対に参加しないようにしましょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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