刑事事件は事件発生から刑の執行までの間、さまざまな手続きや流れを踏んで行われます。この記事では、刑事事件の具体的な流れや、流れに伴う期間等について詳しく解説しています。
刑事事件の流れについて詳しく知りたい人は、ぜひ本記事を参考にしてください。
刑事事件の流れ
刑事事件の流れは以下のとおりです。
- 事件発生
- 告訴・告発・投書等もしくは捜査機関からの送致
- 事件の受理
- 事件処理
- 起訴・不起訴の判断
- 公判請求・略式命令請求・即決裁判請求
- 刑事裁判
- 判決の確定
- 刑の執行
主に上記の流れで事件は進んでいきます。具体的な内容や期間について詳しく解説します。
事件の発生
初めに刑事事件の対象となる事件が発生します。たとえば「殺人事件が発生した」「窃盗事件が発生した」「傷害事件が発生した」など、さまざまな事件の発生が刑事事件の始まりです。
ただ、事件が発生しただけでは事件の捜査は開始されません。まずは、警察が事件を認知する必要があるためです。事件を認知して初めて警察が事件として捜査を開始します。
警察が事件を認知するためには、次で詳しく解説しますが主に告訴・告発・投書・捜査機関からの送致によります。また、告訴や告発を必要としない非親告罪の場合は、通報により事件を認知して捜査を開始するケースもあります。
非親告罪とは被害者等からの告訴がなくても起訴できる犯罪のことを指します。たとえば暴行罪・傷害罪・殺人罪などの犯罪は、非親告罪にあたり、被害者からの告訴は必要ありません。一方で、著作権法違反のような犯罪は被害者からの告訴が必要となります。
告訴・告発・投書等もしくは捜査機関からの送致
警察等の捜査機関は、告訴・告発・投書・捜査機関からの送致によって事件を認知して捜査を開始します。
告訴とは、告訴権者(被害者や被害者の代理人)が警察官や労働基準監督署など、犯罪が行われている事実を申告し、罪を犯した者の処罰を求めるための手続きです。告訴ができる人は被害者本人もしくは代理人と定められており、これらの人以外からは認められていません。
たとえば、被害者が死亡しているようなケースでは、被害者の親族が代理人に該当します。死亡していない場合は、被害者の代理人弁護士が告訴をできます。
告発は、告訴と異なり第三者から犯罪の申告をして罪を犯した者に対して処罰を求めることができる制度です。まったく知らない第三者からの告発が可能である点が告訴と告発の違いです。
投書とは書面によって事件を知らせる行為のことを指します。警察が事件を認知するためには、現行犯・自首・通報・被害届などなどさまざまなきっかけがあります。そのきっかけの一つが「投書」と呼ばれるものです。
通常、刑事事件の流れは「事件の認知→警察等の捜査機関が捜査を開始」というのが一般的です。そのため、検察官が事件を捜査する場合は、警察からの事件の送致がなければいけません。これを「捜査機関からの送致」と言います。
詳しくは後述しますが、検察は事件を送致されなければ原則捜査を開始できません。しかし、「検察官認知」と呼ばれる方法を用いると検察官は自ら捜査を開始できるようになります。
事件の受理
何らかの事件を認知すると、捜査機関は事件として受理するかどうかを決定します。いわゆる「事件化するかどうか」です。すべての事件について事件化をするのではなく、犯罪の態様などを総合的に判断して事件化の有無を判断することになります。
たとえば、暴行事件が発生したとしても、必ずしも事件化して捜査をするとは限りません。比較的軽微な犯罪である場合は、当事者の話を聞いたうえで事件化するかどうか判断するため、「事件化しない」といった選択となる場合もあります。
なお、被害者もしくは第三者等から事件の告訴・告発があった場合は、相手に対して処罰を求めていることが明らかです。このことから、法律的には義務はないものの、正当な理由がない場合は事件を受理する必要があると解釈されています。
事件処理
事件を受理すると当該事件について捜査を開始します。捜査は、警察官等の捜査機関が初めに行う初動捜査のほか、逮捕状等の各種発布、犯人の逮捕等が含まれています。
事件が発生した場合、捜査機関は事件について捜査をして被疑者を特定するのが初めの段階です。その後、事件が関係している場所に家宅捜索に入ったり逮捕状を請求して逮捕したりするのが一般的です。
しかし、すべての事件において逮捕されるわけではありません。たとえば、逮捕をせずに任意聴取という形で捜査を行うケースもあります。これを「在宅捜査」と言います。一方で、逮捕して取り調べ等を行うことを「身柄事件」と呼びます。
たとえば、罪を犯したあなたに対して警察官が「〇〇の事件について確認したいことがあるので、警察署まで来てほしい」と伝えて捜査を行うのが「在宅事件」です。在宅捜査の場合は、逮捕されていないため身柄の拘束はありません。
一方で、警察等の捜査機関が捜査を行って逮捕状を請求し、あなたの目の前に現れて「逮捕状が発布されていますので、通常逮捕します」と言うと逮捕されます。逮捕は、身柄の拘束が伴うため、しばらく家に帰ることはできません。
任意聴取もしくは逮捕をして取り調べを行うことも「捜査」と呼び、事件処理に含まれています。
その後、検察官へ事件を送致しなければいけません。これは「全件送致主義」に基づいているものです。全件送致主義とは、すべての事件を検察官へ送致しなければいけないという原則のことを指します。
身柄事件で送致されると、検察官は被疑者の身柄を勾留する必要があるかどうかを判断する必要があります。もし、勾留の必要があると判断された場合は、最大で20日間の身柄拘束(勾留)されることになるでしょう。
起訴・不起訴の判断
身柄事件の場合は、勾留期間中に被疑者を起訴するか不起訴とするかを判断します。不起訴となった場合は、その事件については終了します。しかし、起訴された場合はそのまま刑事裁判を受けたり略式命令が下されたりして最終的に判決が下される流れです。
在宅事件の場合は、起訴までの期限は決められていません。一般的には送致(書類送検)されてから2か月〜3か月程度で起訴もしくは不起訴の判断がなされます。
公判請求・略式命令請求・即決裁判請求
起訴には大きく分けて「正式起訴」と「略式起訴」の2種類があります。正式起訴とは、通常通り刑事裁判を行って判決を言い渡すものです。
一方で、略式起訴(略式裁判・略式命令請求)とは、検察官の請求で行える請求の一つであり、刑事裁判を開かずに即時略式命令という形で判決を言い渡します。略式起訴は、100万円以下の罰金もしくは科料相当の罪を犯した場合に選択される可能性があります。
罰金・科料はいずれも刑罰の名称です。また、いずれも金銭の納付を命じる刑事罰であることに変わりはありません。罰金刑は1万円以上の金銭納付を命じる刑罰であり、科料は1,000円以上1万円未満の金銭納付を命じる刑罰という違いがあります。
略式請求がなされた場合は、裁判所で審理を行って認められた場合は略式命令が下されます。被告人側のメリットとして、刑事裁判を行わないため、早期の釈放に期待できます。一方で、刑事裁判が開かれないため、弁解する機会を与えられない点がデメリットです。
そして、そのほかに「即決裁判請求」というものがあります。即決裁判請求は、通常の刑事裁判と比較してスピーディーに裁判が進められる手続きです。
比較的軽微な犯罪である場合や犯罪事実が認定されることが明らかである場合は、「即決裁判請求」を選択することがあります。
刑事裁判
正式起訴された場合や即決裁判請求された場合は、刑事裁判を行うことになります。刑事裁判では、犯罪事実について審理し、被告人が有罪か無罪かを判断します。有罪である場合は、どの程度の刑罰に処するのが妥当かを判断し、判決として言い渡す流れです。
なお、日本の刑事裁判においては、起訴された場合は99%の確率で有罪判決が下されると言われています。
判決の確定
刑事裁判が結審すると、裁判長から判決が言い渡されます。検察官もしくは被告人は、判決に納得ができない場合は、さらに上級の裁判所へ訴えることができます。
ただし、上級の裁判所に訴える場合は、判決確定の日から2週間以内に行わなければいけません。この期日を過ぎてしまうと、判決が確定します。また、最大でも3回までしか裁判を行うことはできません(これを三審制と言います)。
財産刑・自由刑・生命刑
刑事裁判で確定する可能性のある刑罰は、大きく分けて「財産刑」「自由刑」「生命刑」の3種類です。
財産刑とは、罪を犯した人に対して金銭納付を命じ、経済的な罰を与える刑罰です。財産刑には「罰金刑」と「科料」があります。1,000円以上1万円未満の金銭納付を命じる刑罰が科料、1万円以上の金銭納付が罰金刑と区別されます。
自由刑とは、罪を犯した人の身柄を拘束する刑罰です。自由刑には「懲役刑」「禁錮刑」「拘禁刑」「拘留」の4種類があります。懲役刑は、一定期間刑務所へ収監され、刑務作業が義務付けられています。
禁錮刑は、一定期間刑務所へ収監されるものの、刑務作業が義務付けられていない刑事罰です。悪意のない犯罪や比較的軽微な犯罪の場合は禁錮刑となる場合があります。
拘禁刑とは懲役刑と禁錮刑を合わせた刑罰であり、2025年6月1日に施行される刑罰です。つまり、2025年6月1日以降に懲役刑もしくは禁錮刑に当たる判決を受けた場合は、拘禁刑という刑罰が下されることになります。
拘留とは、1日以上30日未満の間刑務所へ収容されて刑務作業が義務付けられている刑事罰です。被疑者の身柄拘束を行う「勾留」と読み方は同じですが、意味は異なるため注意してください。
そして、「生命刑」とは罪を犯した者自らの死を持って罰を受けるものであり、いわゆる死刑です。死刑囚は、死ぬことが刑罰であるため、刑務作業が義務付けられていません。
執行猶予付判決・実刑
判決が言い渡された場合、「ただし◯年間刑の執行を猶予する」と付け加えられる場合があります。これは、いわゆる「執行猶予付判決」です。一方で、執行猶予が付かなかった判決のことを「実刑判決」と呼びます。
執行猶予が付くと直ちに刑の執行が行われません。たとえば「懲役3年執行猶予5年」という判決が下された場合は、「懲役3年」という刑罰を直ちに執行せずに5年間猶予します。
5年間は社会に戻って生活を行い、罰金刑以上の判決が下されることなく満了した場合は、懲役3年という刑罰は失効します。よって、刑務所へ収容されずに済みます。
ただし、執行猶予期間中に罰金刑以上の判決が確定してしまった場合は、「懲役3年」という刑罰も同時に執行されることになるため注意しなければいけません。
刑の執行(罰金徴収・刑務所への収容)
判決が確定した時点で刑が執行されます。罰金刑であれば、罰金を納付して事件は終了します。もし、罰金を支払えなければ労役場留置となり、1日5,000円程度で全額納付できるまで刑務所内で刑務作業を行うことになります。
懲役刑等の判決が確定した場合は、「刑執行開始時調査」という調査が行われた後に刑が執行されます。刑執行開始時調査は、主に受刑者となる人の精神状態や身体状況、犯罪歴などを調査して収容先の刑務所が決定します。
刑執行開始時調査おおむね10日程度で完了し、完了次第刑務所へ移送される流れです。
刑事事件の定義と責任
刑事事件とは、刑事罰の定めがある罪を犯した場合に成立し、罪に問われます。たとえば刑法という法律では、さまざまな犯罪について刑罰を定めています。他にも身近な犯罪としては、労働基準法や軽犯罪法などがあります。
次に、刑事事件における定義と罪に問われた人の責任について詳しく解説します。
刑事罰の定めがある罪を犯した場合に成立
刑事事件とは、刑法等刑事罰の定めがある罪を犯した場合に警察等の捜査機関が事件化して捜査等を行うことを言います。刑事罰のある犯罪は主に刑法です。刑法には、刑罰と刑罰を科せられる行為等が明記されています。
たとえば、殺人を犯したら殺人罪に問われ、法定刑は死刑もしくは無期懲役または5年以上の有期懲役です。このように「殺人を犯した場合(刑罰が科されるべき行為)」と「死刑もしくは無期懲役または5年以上の有期懲役(刑罰)」が記載されている罪を犯した場合に刑事事件として扱われます。
法律に定められた刑事罰を負う責任がある
刑事事件に発展した場合、最終的には検察官によって起訴されて刑事裁判を受けて判決が下されます。刑事事件に発展すると、何らかの刑事罰を受ける可能性があります。
たとえば、刑法に定められている罪を犯した場合は、刑法内に規定されている刑事罰の範囲内で何らかの処分が下されることになるでしょう。ただし、比較的軽微な犯罪である場合は、刑事罰を下さずに事件を終了させる場合もあります。
これを「微罪処分」と言います。たとえば、被害額が少額で常習性が認められない万引き(窃盗罪)の場合は、微罪処分となる可能性が高いです。通常、窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
しかし、さまざまな事情を考慮したうえで微罪処分として事件を終了する場合があるのです。そのため、刑事事件に発展したからといって、必ずしも刑事罰を受けるとは限りません。
刑事事件と民事事件は異なる
裁判所で取り扱う事件はさまざまですが、主なものとして刑事事件の他に民事事件というものがあります。刑事事件は、罪を犯した者に対して裁判を行い、判決を言い渡して財産刑・自由刑・生命刑のいずれかの刑罰を下すものです。
一方で民事事件とは、民事上の不法行為に対して争う事件であり、刑罰のような罰則規定はありません。たとえば、飲酒運転で交通事故を起こし、人に大怪我をさせてしまったようなケースです。
上記例の場合、刑事事件としてあなたの行った行為について刑罰が下されます。同時に、民事事件として被害者もしくは被害者遺族に対して損害賠償金を支払わなければいけません。これを民事上の責任・民事事件と呼びます。
民事事件においては、罪を犯したものに対して罰を与えるものではなく、あくまでも被害者や被害者遺族に対する損害賠償が目的です。通常は、被害者や被害者遺族からの請求によって民事事件・民事裁判が行われることになります。
刑事事件で重要となるポイント
被疑者が刑事事件において重要視すべきポイントは以下のとおりです。
- 不起訴処分を目指す
- 刑罰の減刑を目指す
- 無罪判決を目指す
次に、刑事事件で重要となるポイントについて詳しく解説します。
不起訴処分を目指す
刑事事件においては、いかにして不起訴処分を目指すか?について注力すべきです。起訴されてしまった場合の有罪確率は99%と言われており、ほぼ不可能です。
そのため、とくに冤罪である場合はすぐに弁護人へ相談をしたうえで不起訴処分を勝ち取る努力をしましょう。
また、実際に罪を犯していた場合であっても、軽微な犯罪の場合は不起訴処分となる可能性があります。そのため、弁護人と相談をしたうえで不起訴となる可能性がある場合は、被害者と示談交渉を進めるなどして、不起訴処分を目指しましょう。
なお、不起訴処分となった場合は前科は付きません。前科は、刑事裁判を行って有罪判決が確定した時点で記録として残ります。前科による影響を懸念されている人も、不起訴処分となるように尽力すべきでしょう。
刑罰の減刑を目指す
実際に罪を認めている場合や不起訴となる可能性が低い場合は、刑罰の減刑を目指します。同じ罪の内容であったとしても、罪を犯した背景やこれまでの生活、情状等を総合的に判断して減刑される可能性があります。
たとえば、殺人事件を起こしてしまった場合、法定刑は「死刑もしくは無期懲役または5年以上の有期懲役」です。仮に、殺人事件を起こした人が全く反省しておらず、遺族を挑発するような行為を繰り返していた場合、相当厳しい処分が下されます。
一方で、介護疲れによる犯行であり、被告人本人もとても反省・公開しているような場合であれば、執行猶予付きの判決が下されることもあります。
通常、執行猶予は、3年以下の懲役にしか付けることができません。しかし、情状などを考慮して減刑して執行猶予付き判決を下すこともあるのです。殺人事件においては稀なケースではあるものの、他の犯罪であれば情状による減刑により、執行猶予付き判決が下される可能性も高いです。
執行猶予が付けば、社会に戻って日常生活を送ることができます。そのため、しっかりと反省している態度を示し、被害者や被害者遺族に謝罪をするなど誠心誠意対応して減刑を目指しましょう。
無罪判決を目指す
もし、罪を犯していないのであれば、無罪判決を勝ち取るための努力をします。通常、起訴された刑事事件において無罪判決を勝ち取ることはとても困難です。
そのため、冤罪なのであれば不起訴処分を目指すのが良いです。また、警察官や検察官はあなたが犯人であると特定しているため、事件について否認し続けることによって長期間の身柄拘束の可能性もあります。
それでも「やっていないことはやっていない」と強い意志を持ち、弁護人とよく話し合ったうえで無罪判決を勝ち取りに行きましょう。
刑事事件における弁護人制度の概要
刑事事件に発展した場合、必ず弁護人(弁護士)が付きます。基本は自分で弁護人を選任しなければいけませんが、経済的事情等によって難しい場合は無料で弁護人を付けることもできます。
次に、刑事事件における弁護人制度についても詳しく解説します。
当番弁護人制度
当番弁護人制度とは、逮捕された被疑者が一度だけ無料で弁護人を呼べる制度です。警察官等に「当番弁護人を呼んでほしい」と伝えればその日の当番となっている弁護人が原則24時間以内に警察署へ来てくれます。
当番弁護人を呼べる条件は「逮捕されていること」です。つまり、在宅捜査となっている被疑者は当番弁護人制度を利用できません。代わりに、お住まいの地域に事務所を構えている弁護人に初回相談をしてみると良いでしょう。有料であることが大半ですが、適切なアドバイスを受けられます。
当番弁護人制度の利用については料金は発生しません。しかし、一度しか呼ぶことができず、弁護活動を行うというよりも今後の流れや取り調べに対するアドバイスを受けられる制度であると思っておきましょう。弁護活動を希望する場合は、別途実費で弁護人を選任する必要があります。
私選弁護人制度・国選弁護人制度
刑事事件で利用できる弁護人制度は、大きく分けて「私選弁護人制度」と「国選弁護人制度」があります。どちらも弁護人制度であることに変わりはなく、弁護人が被疑者や被告人の代理人となって適切な弁護活動を行ってくれます。
ただし、私選弁護人は自分で弁護人費用を支払わなければいけません。とはいえ、自分のタイミングで自分に合った弁護人を選任できる点が最大のメリットです。
一方で、国選弁護人は自分でお金を払う必要はありません。しかし、利用できる人は経済的条件等を満たしている必要があります。さらに、身柄事件であれば勾留確定後、在宅事件の場合は起訴後でなければ選任されません。そのため、タイミングとしてはとても遅い点に注意が必要です。
刑事事件の流れに関するよくある質問
刑事事件の流れに関するよくある質問を紹介します。
Q.刑事事件の期間はどのくらいですか?
A.刑事事件の内容によって大きく変動します。
捜査機関等が事件を認知し、被疑者を逮捕して身柄事件となった場合は、逮捕から勾留まで23日間です。その後、不起訴もしくは略式起訴で終了した場合は23日程度で事件は終了します。
しかし、正式起訴された場合はプラス2カ月〜3カ月程度の期間がかかるケースが多いです。とはいえ、否認事件である場合や共犯者がいて言い分が異なる場合、起こした事件が多い場合はさらに期間が延長するケースがあります。
在宅事件の場合は、通常書類送検から2カ月〜3カ月程度で起訴・不起訴の判断がなされます。正式起訴された場合は、プラス2カ月〜3カ月程度の期間がかかるため、半年程度はかかると思っておいたほうが良いでしょう。
Q.刑事罰と民事上の責任は異なりますか?
A.刑事罰と民事上の責任は異なります。
刑事罰と民事上の責任は異なるため、それぞれで責任を負う可能性があります。たとえば、「お酒を飲んで車を運転し、人に怪我をさせてしまった」というケースで見てみましょう。
この場合、初めに運転免許の取り消し処分となる可能性があります。これは「行政処分」です。次に、警察に逮捕されたり裁判で有罪判決が下されたりします。これは「刑事罰」です。さらに、被害者や被害者遺族に対して慰謝料や賠償金を支払う必要があり、これは「民事上の責任」となります。
上記のとおり、犯罪の種類によってさまざまな責任が生じ、それぞれ別であることを覚えておきましょう。
Q.逮捕された場合は刑事事件として扱われ、裁判が開かれるのでしょうか?
A.必ずしも刑事事件として扱われるわけではありません。
逮捕された場合であっても、微罪処分で終了する場合があります。逆に、逮捕されずに在宅事件となっても、その後に正式起訴されて有罪判決が確定するケースもあります。
「逮捕=必ず事件化」といったこともありませんし、「逮捕されなかったから大丈夫」といったこともありません。また、逮捕された場合であっても、略式起訴や不起訴となる可能性もあるため、必ずしも刑事裁判が行われるとは限りません。
Q.正式裁判と略式裁判は何が違いますか?
A.正式裁判は通常通り法廷で裁判を行います。略式裁判は、検察官に略式請求された場合に裁判官が審理します。
正式裁判とは、検察官から正式起訴された場合に通常通り刑事裁判を開いて審理し、最終的に判決を言い渡すのが一般的な流れです。一方で、略式裁判は、検察官から略式請求された場合に裁判官が判断し、略式命令を下します。
略式裁判では裁判は開かれない裁判手続きです。罰金刑等が確定して即時釈放される点が最大のメリットです。
Q.横領事件は刑事事件ですか?民事事件ですか?
A.どちらにもなり得ます。
横領罪(単純横領罪等)にはさまざまな種類の罪状があります。いずれも刑法に定められており、刑事罰の定めもあります。よって、横領が認められた場合は、刑事事件として扱われることになるでしょう。
一方で、横領被害を受けた側から民事責任を追求するための裁判が開かれる可能性があります。この場合は、民事事件として別途裁判が行われ、審理されることになります。
上記のことから、横領事件は刑事事件および民事事件の両方で行われる可能性が高いです。
まとめ
今回は、刑事事件の流れについて解説しました。
刑事事件は、さまざまな手続きを踏んで進んでいきます。罪を犯した人が日常生活を送っている間も、捜査機関は地道に捜査を行って証拠を固めていきます。そのため、遅かれ早かれ警察に発見されて刑事事件として扱われることになるでしょう。
刑事事件は長期間にわたってさまざまな手続きが行われます。そのため、罪を犯した人は長期間の身柄拘束の可能性もあるため注意しなければいけません。