テロ等準備罪は「組織的犯罪集団がテロの計画・準備」を行った場合に成立する犯罪です。一般人や個人に対してはあまり関係のない法律であると言えます。しかし、中には「自分たちにも関係のある法律なのではないか?」と不安を抱えている人も多いでしょう。
この記事では、テロ等準備罪の概要や成立要件、一般人には関係のない話である理由などについて詳しく解説しています。テロ等準備罪によって不安を抱えている人は、本記事で解説している内容をぜひ参考にしてください。
目次
テロ等準備罪とは
テロ等準備罪とは、組織的犯罪集団による犯罪行為を未然に防止するための法律であり、現代における「治安維持法」の位置付けになります。まずは、テロ等準備罪がどういった犯罪なのか?について詳しく解説します。
組織的犯罪集団による犯罪行為を未然に防止するための法律
テロ等準備罪の成立によって、これまでは難しかった「組織的犯罪集団による犯罪行為の未然防止」が可能となりました。
組織的犯罪集団とは、テロ集団や暴力団、外国人マフィアや振り込め詐欺集団など組織的に犯罪行為を行う集団のことを指します。テロ等準備罪が指す「組織的犯罪集団」とは、主にテロ集団のことです。テロ集団はテロを実行する人・集団のことを指し、世界中にテロ組織があります。
テロ集団は組織の主張を認めさせるために行われ、過去には日本国内でもテロ行為が行われています。たとえば、日本赤軍と呼ばれるテロ組織が「国際根拠地建設」構想の元でテロ行為を実行した過去があります。
幸いにもここ数十年は日本国内でテロ行為は行われていないものの、国際テロ組織等から標的とされる可能性も否定はできません。そのため、組織的犯罪集団(テロ集団)による犯罪を防止するため、関係法令の整備を行う必要がありました。
テロを発生させないためには、事前にテロを防止する必要があります。しかし、テロが発生していない場合は処罰するための法律がありませんでした。テロ等準備罪の成立により、今後は「組織的犯罪集団がテロ等の準備をした時点」で処罰できるようになり、未然に防止できるための法整備が進められた流れとなります。
テロ等準備罪は現代における「治安維持法」の位置付け
テロ等準備罪は、現代における「治安維持法」に位置付けられている法律です。治安維持法は大正14年(1925年)に公布され、太平洋戦争が終了した昭和20年(1945年)に連合国軍総司令部およびCHQの命令により廃止されました。
治安維持法は国の体制を変革もしくは画策したりなど、資本主義を否定する人たちを処罰することのできる法律でした。治安維持法が廃止された理由は、一言で言うと「人道に反する悪法」として、連合国軍総司令部およびCHQの命令により廃止されています。
今回、テロ等準備罪が成立し、位置付けとしては「治安維持法」と同等ですが、内容が似て非なるものです。
治安維持法は天皇制を否定する思想を持つ人なども対象に処罰することができた悪法です。一方で、テロ等準備罪はあくまでも組織的犯罪集団のみを対象としており、まったく意味合いや対象が異なります。
テロ等準備罪の成立要件と概要
テロ等準備罪は2017年に成立した比較的新しい法律です。成立要件は細かく定められているため、どういった人が対象となり、どういった場合に成立すのか?と疑問を抱えている人も多いでしょう。
次に、テロ等準備罪の成立要件や概要について詳しく解説します。
テロ等準備罪は2017年に成立した新しい法律
テロ等準備罪は2017年(平成29年)6月15日に成立し、2017年(平成29年)7月11日に施行された比較的新しい法律です。テロ等準備罪の成立によって、テロ等の組織的犯罪を未然に防止し、戦うための国際連合条約である「TOC条約」が可能となりました。
テロ等準備罪が成立した背景としては、上記TOC条約への加盟を行い、組織的犯罪集団によるテロを防止するためです。
また、2020年には東京オリンピックも控えていたことがあり、国際テロの懸念等から2017年に遅ればせながらテロ等準備罪が成立・施行された流れとなります。
TOC条約の締結に影響
テロ等の組織的犯罪を未然に防止し、戦うための国際連合条約である「TOC条約」へ加盟するためには、国内での法整備を行う必要があります。日本はこれまでテロ等の組織犯罪を未然に防止するための法律がなく、国際連合条約であるTOCへの加盟はできていませんでした。
しかし、2017年にテロ等準備罪が成立・施行されたことにより、同年7月にTOC条約へ加盟することができました。
TOC条約に加盟することにより、テロを含む組織的犯罪集団による国際的協力を依頼できるようになります。現在、TOC条約に加盟している国・地域は、日本を含めて187の国と地域です。
TOC条約に加盟している国同士であれば、国際的犯罪集団のテロ行為等を未然に防止するために国際的な協力が可能となります。もし、TOC条約に日本が加盟していなかった場合、組織的犯罪集団である犯人が海外へ逃亡してしまったとき、引き渡しの請求ができませんでした。
しかし、TOC条約に加盟することによって、テロ等を行おうとした組織的犯罪集団の犯人等について、引き渡し請求を行うことができるようになります。他にもさまざまなメリットがあり、TOC条約に加盟するメリットはとても大きいと言えます。
テロ等準備罪の法定刑について
テロ等準備罪の法定刑は、実際に犯した罪の内容や被害程度によって、以下の罰則が定められています。
- 死刑
- 無期懲役
- 10年を超える懲役もしくは禁錮
共謀の場合は以下の罰則が定められています。
- 5年以下の懲役もしくは禁錮
- 4年〜10年の懲役もしくは禁錮
懲役刑および禁錮刑はいずれも刑務所に収監される自由刑です。それぞれの違いは刑務作業が義務付けられているかどうかです。懲役刑は刑務作業が義務付けられている一方で、禁錮刑は義務付けられていません。なお、2025年6月1日以降は懲役刑および禁錮刑が併合された「拘禁刑」となります。
テロ等準備罪の成立要件
テロ等準備罪は「組織的犯罪集団が重大な犯罪を計画し、計画を実行するために準備した場合」に成立する犯罪です。具体的には、以下3つの要件を満たした場合に成立する犯罪であると考えておけば良いです。
- 組織的犯罪集団が関与
- 犯罪の実行を2人以上で計画
- 計画に基づいて実行準備行為が行われている
次に、テロ等準備罪の成立要件について詳しく解説します。テロ等準備罪はどのような場合に成立するのか?と疑問を抱えている人はぜひ参考にしてください。
テロ等準備罪は「組織的犯罪集団が重大な犯罪を計画し、計画を実行するために準備した場合」に成立
テロ等準備罪は「組織的犯罪集団が重大な犯罪を計画し、計画を実行するために準備した場合」に成立する犯罪です。前提として、組織的犯罪集団であること、犯罪の実行を2人以上で計画していること、計画に基づいて実行準備行為が行われていることを満たした場合に成立する犯罪です。
そのため、たとえば一個人が何らかの思想を持って頭の中でテロを計画、考えていたとしても罪に問われることはありません。
2017年5月には当時の法務大臣が「写真を撮りながら歩くとテロ等準備罪の下見に当たる」と発言したことで問題となりました。実際に、写真を撮りながら歩くことでテロ等準備罪に該当することはありません。
あくまでも上記3つの要件を満たしていた場合にテロ等準備罪が成立し、処罰の対象となり得るのです。また、一個人が対象となる犯罪ではないため、過度に心配をしたり不安に感じたりする必要はないでしょう。
1.組織的犯罪集団が関与
テロ等準備罪は、組織的犯罪集団であることが前提です。そのため、一般的な個人が何らかの思想を持ってテロの準備を行っていたとしても罪に問われることはないため安心してください。
組織的犯罪集団とは、先ほども解説したとおり「テロ集団」を指します。具体的には国際テロ組織もしくはテロ組織として認められている組織です。
他にも暴力団や振り込め詐欺グループなど犯罪集団が「組織的犯罪集団」と定義されています。一般的な集まり、サークル等は組織的犯罪集団ではないため、テロ等準備罪の対象にはなりません。
ただし、一般的な集団であっても犯罪を計画している組織であり、テロを行おうとしている場合は組織的犯罪集団(テロ集団)として認められる場合もあるため注意しましょう。組織的犯罪集団の定義は難しいものの、犯罪を犯したり計画したりしていない集団であれば問題ありません。
2.犯罪の実行を2人以上で計画
犯罪の実行を2人以上で計画していなければ、テロ等準備罪には問われません。そもそもテロ等準備罪の成立要件の前提として「組織的犯罪集団」であることが必要です。「組織的」の言葉には「複数人で組織していること」と言う意味合いがあるため、そもそも単独は対象になりません。
たとえば、単独で何らかの思想を持って実際にテロを計画していたとしても、テロ等準備罪に問われることはありません。また、仮に2人以上でテロを計画していたとしても、テロ等準備罪に問うためには「現実的かつ具体的な犯罪行為を計画」している必要があります。
3.計画に基づいて実行準備行為が行われている
テロ等準備罪が成立するためには、計画に基づいて実行準備行為が行われている必要があります。たとえば、何度もお伝えしている通り頭の中で「テロを実行しよう」と考えていても罪に問われることはありません。
具体的かつ緻密に計画し、計画を実行するために準備をしていることが前提です。具体的には、計画を立ててテロに必要となる武器等を準備している必要があります。この条件を満たしていなければ、テロ等準備罪に問うことはできません。
テロ等準備罪の成立により期待できる効果
テロ等準備罪の成立によって期待できる効果は以下のとおりです。
- テロによる被害発生の未然防止
- 国際社会との連携が可能
- 安心・安全な社会の実現
次に、テロ等準備罪の成立によって期待ができる効果について詳しく解説します。
被害発生の未然防止
テロ等準備罪が施行されたことによって、組織的犯罪集団がテロ等を計画した時点で処罰できるようになりました。このことにより、実行される前段階で防止することができ、被害を食い止めることができます。
刑法犯ではとくに重大な犯罪の準備をした場合は「予備罪」が成立します。テロ等準備罪は、刑法犯で言う「予備罪」であると考えておけば良いです。
犯罪の準備をした場合に成立する罪です。たとえば、殺人を犯そうと計画し、凶器を実際に準備した場合に「殺人予備罪」が成立します。
国際社会との連携が可能に
テロ等準備罪が成立・施行されたことによって、テロ等の組織的犯罪を未然に防止し、戦うための国際連合条約である「TOC条約」への加盟が可能となりました。
TOC条約へ加盟することによって、TOC条約へ加盟している189の国と地域(日本を除く)との間で犯人の引き渡しや情報交換が可能です。また、捜査協力も可能となるため、よりテロ対策に有効になります。
TOC条約へ加盟するためには、自国でテロ対策等に関する法律を整備する必要がありました。2017年、日本ではテロ等準備罪という法律が成立・施行されたため、同年にTOC条約への加入を果たしました。
安心・安全な社会の実現
2020年には東京オリンピックが行われました。また、日本国内でも定期的にサミットが行われており、テロ対策を行う必要があります。
今後もオリンピックへの招致、サミット等国際的なイベントが行われる可能性もあります。今後も安心・安全な社会を実現するためにはテロ等準備罪のような法律が必要不可欠です。
テロ等準備罪という法律が成立・施行されたことによって、組織的犯罪集団によるテロ行為等を未然に防止できます。結果的に、安心・安全な社会を実現させるとともに、国際的なイベントも安心・安全に行えるようになっています。
過去に廃案となった「共謀罪」との違い
共謀罪は、過去に3回(2003年・2004年・2005年)国会へ提出されましたが、いずれも廃案となっています。共謀罪は「2人以上が犯罪を行おうと話し合った場合」に成立する犯罪です。
そのため、ただ具体性がないにも関わらず「犯罪を犯そうと話し合った」だけで成立する犯罪であったため、人権や自由を侵害する可能性があるとして廃案になっています。次に、共謀罪とテロ等準備罪は何が違うのか?どのような違いがあるのか?について、詳しく解説します。
共謀罪の概要
共謀罪は過去に3度廃案となっている法律案です。共謀罪は「2人以上が犯罪を行おうと話し合った場合」に成立します。廃案となった主な理由は、犯罪の成立要件が曖昧であり、国民の人権や自由を奪ってしまう可能性があったためです。
共謀罪は解釈の仕方によっては上記のとおり「2人以上が犯罪を行おうと話し合った場合」に成立する可能性もありました。そのため、とくに具体的な話ではなく、実際に犯罪を犯そうとしていないにも関わらず逮捕されてしまう可能性も否定はできません。
たとえば、友達同士で「銀行強盗に入ろう」「〇〇に爆弾を仕掛けてみよう」など、ただ話をしていただけで処罰されてしまう可能性がありました。そのため、人権や自由を奪う可能性のある法律であるとして廃案になっています。
テロ等準備罪は具体的に「組織的犯罪集団が2人以上で計画に基づいて具体的に準備を進めていること」で成立します。つまり、対象・人数・具体的行為等、犯罪の成立要件について具体的に定められている点で大きな違いがあります。
犯罪を行う主体を限定
共謀罪とテロ等準備罪の大きな違いは「犯罪を行う主体の限定」です。共謀罪は対象者は限定されていませんでした。そのため、友人同士でただ話をしていただけであっても成立する可能性のある犯罪です。
一方で、テロ等準備罪は犯罪を行う主体を「組織的犯罪集団」としています。そのため、たとえば友人同士でテロについて話し合っていたとしてもテロ等準備罪には問われません。
仮に、共謀罪が成立・施行されていた場合は、友人同士でテロについて計画をしたり話し合ったりしたりしていると処罰される可能性がありました。その点、テロ等準備罪では「組織的犯罪集団」ではない限り、処罰されることはありません。
対象犯罪の絞り込み
共謀罪は2人以上で「犯罪の計画を立てた場合」に成立する犯罪でした。そのため、対象が抽象的であり、どのような犯罪の話をしても共謀罪が成立するのか?といった点で多くの人に不安を持たせた要因となっていました。
しかし、テロ等準備罪の犯罪は「テロ行為等」として対象犯罪を絞り込んでいます。テロ等の計画・準備をした場合に成立する犯罪であるという点は、共謀罪との大きな違いです。
準備行為が行われた場合に成立
共謀罪は「話し合っただけ」で成立する可能性のある犯罪でした。しかし、テロ等準備罪は、「テロ行為等について計画し、実際に準備した場合」に成立する犯罪です。
そのため、たとえば組織的犯罪集団がテロ行為等について話し合ったり計画をしただけでは、罪に問われません。あくまでも、具体的に計画を立てたうえで準備した場合にテロ等準備罪が成立します。
テロ等準備罪が成立した背景
テロ等準備罪が成立する際、一筋縄で行きませんでした。というのも、賛否が分かれ、反対意見も多かったためです。実際、野党からは「強制採決だ」との声も多く上がりました。
テロ等準備罪はテロ行為を未然に防止するために成立した犯罪ですが、共謀罪同様に「警察のさじ加減で国民が逮捕されてしまうのではないか?」といった反対意見が上がっていたためです。
それでもなお、東京オリンピック等が控えていた2017年。可能な限りテロ等準備罪等の法律整備を進め、安心・安全な国際大会を成功させる必要がありました。このことにより、半ば強引にテロ等準備罪が成立・施行された背景があります。
次に、テロ等準備罪が成立する際の賛成側意見・反対側意見それぞれの意見について詳しく解説します。
テロ等準備罪は議論時に賛否が分かれた
テロ等準備罪は、テロを未然に防止するための法律であり「組織的犯罪集団がテロ等の計画を立てたうえで準備をした時点」で成立する犯罪です。しかし、解釈の方法によっては国民にも影響を与えるのではないか?といった反対意見が多くありました。
一方で、2019年にはラグビー・ワールドカップ2020年には東京オリンピックが開催されることが決定していました。このことにより、テロを差し迫った脅威と認識し、対策をする必要があり、テロ等準備罪を早期に成立・施行させる必要がある。といった賛成意見もありました。
上記のことから反対意見・賛成意見のそれぞれがあった背景があります。最終的には、国民の十分な理解を得られていない中での強制採決となり、今でも意見書を提出されるなど反対意見の強い法律となっています。
賛成側の意見
賛成側の意見としては、テロ等準備罪(組織犯罪処罰法等の一部を改正する法律)が成立することによって、TOC条約へ加盟できることやテロを未然に防止できることなど、テロの脅威を未然に防止できるといった意見が強かったです。
実際、2019年・2020年には日本国内で国際大会が開催されていることが決定していたため、「テロの脅威が差し迫っている状態である」と認識して行動すべきではありました。このことにより、可能な限り早くテロ等準備罪を成立・施行する必要があるという意見が強くあった背景があります。
反対側の意見
一方で反対意見は「警察のさじ加減で国民を逮捕できる」といった意見が強く、反対者も多くいました。実際、テロ等準備罪の成立要件には「組織的犯罪集団」と明記されているため、一般国民が対象となることはありません。
とはいえ、2017年5月には当時の法務大臣が「写真を撮りながら歩くとテロ等準備罪の下見に当たる」と発言したことで問題となった事実もあります。実際、このようなことはないものの、国民の不安を煽った結果を招いたのも事実です。
上記の発言もあり、野党からは「警察のさじ加減でテロ等準備罪によって逮捕され、国民の自由や人権を侵害するのではないか?」といった反対意見が寄せられています。
テロ等準備罪は一般市民に関係のない犯罪
テロ等準備罪は、一般市民には関係のない犯罪です。実際、一般市民がテロ等準備罪によって逮捕されたり処罰されたりするようなことはありません。
先ほども解説しましたが、2017年5月には当時の法務大臣が「写真を撮りながら歩くとテロ等準備罪の下見に当たる」と発言したことで問題となったこともあります。しかし、実際に街中で写真を撮って歩いていても何ら問題はありません(撮影場所・被写体によっては、撮影罪等他の罪に問われる可能性はあります)。
とはいえ、「本当に一般市民がテロ等準備罪で逮捕される可能性はないのか?」といった不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。次に、テロ等準備罪が一般市民には関係のない法律である事実について、詳しく紹介します。
一般の人はテロ等準備罪に問われることはない
一般の人はテロ等準備罪に問われることはありません。その根拠は、テロ等準備罪によって処罰される対象となるのは「組織的犯罪集団」であるためです。
組織的犯罪集団とは、テロ組織や暴力団、詐欺集団など集団となって犯罪行為を行う人たちを指します。そのため、一個人がテロ等準備罪によって逮捕されたり処罰されたりするようなことはありません。
ただし、信仰する宗教が犯罪を行っている場合、組織的犯罪集団の一員として処罰される可能性があるため注意しましょう。たとえば、宗教団体として発足したオウム真理教が最終的にテロ集団と化した背景があります。
上記のように信仰する宗教が組織的犯罪集団と化して犯罪の一端を担うようなことがあれば、あなた自身もテロ等準備罪で逮捕・処罰される可能性があるため注意しましょう。ただ、このような例はごく稀です。一般市民であれば処罰される可能性はないため安心してください。
内心を持っていても処罰されない
テロ等準備罪はあくまでも「計画を立てて準備行為をした場合」に成立する犯罪です。つまり、内心を持っていても処罰されることはありません。
たとえば、あなたが組織的犯罪集団であり、心の中で「テロを起こしてやろう」と思い頭の中で構想を練っていたとしましょう。しかし、これだけではテロ等準備罪は成立しません。
なぜなら国民には「思想・良心の自由」が認められているためです。思想・良心の自由とは、人の精神の自由や思想の自由を保障するためのことであり、自由が認められています。
たとえばあなたが頭の中で「〇〇嫌いだから殺してやりたい」と考えるのも自由です。これは憲法によって認められている自由であり、何人も侵害されることではありません。よって、たとえ内心でテロ等について考えたり準備をしたりしても罪に問われることはありません。
テロ等準備罪によって成立する犯罪は適切に選択されたもの
テロ等準備罪の中には、著作権法や森林法といった一見関係のない法律も含まれています。その理由は、組織的犯罪集団がテロ等の準備をするための資金調達をする可能性が考えられるためです。何ら理由もなく、後付けで一般人を逮捕できるようにするためではありません。
そもそも組織的犯罪集団とは、必ずしもテロ組織のことを指しているわけではありません。暴力団や詐欺集団など組織的に犯罪を行っている集団のことを指します。
そして、たとえば暴力団等の組織的犯罪集団が海賊版DVDを販売して資金を得たうえでテロ行為の計画や準備を進める可能性があります。また、森林内の土砂などを大量に採取して売却し、資金を得る可能性があるでしょう。
上記内容によって得た資金を元にテロ行為の計画や準備を進める可能性があるため、著作権法や森林法といった一見関係のない法律も含まれています。
一般人を逮捕したり処罰をしたりするためにさまざまな法律が含まれているわけではありません。それぞれ理由があるため、安心してください。
監視社会・密告社会になることはない
テロ等準備罪が成立・施行されたことによって、今後、捜査の方法等が変わることはありません。犯罪を犯した人に対して保護観察処分が下されることはあるものの、罪を犯していない者に対して監視するような事はありません。
保護観察処分は少年に対して行うものと成人に対して行うものがあります。また、成人の場合は仮出獄者に対して下される保護観察があります。いずれも遵守事項を守り、定期的に保護司と呼ばれる人と面談を行うことを義務付けている処分です。ただし、監視される処分ではありません。
そもそも、日本の最高法律である日本国憲法により「国民の基本的人権は犯すことのできない永久的な権利」とされています。そのため、テロ等準備罪の成立・施行によって監視社会になったり密告社会になることは絶対に許されません。
また、テロ等準備罪の成立・施行された現代においても、これまでの捜査方法に関する法律が変わっていません。今後も変わることはなく、今後、監視社会・密告社会になっていくことは考えにくいでしょう。
捜査機関による濫用・恣意的運用はできない
テロ等準備罪の成立によって、共謀罪のように「テロ行為等について話をしただけで逮捕されたり処罰されたりするのではないか?」と不安を抱えている人も多いでしょう。しかし、そのような事は絶対にありません。
そもそも、テロ等準備罪は具体的に犯罪行為が明記されているため、捜査機関による乱用や恣意的運用はできない仕組みになっています。そのため、これからの生活が変わったり、突然逮捕されたりするような事はないため安心してください。
テロ等準備罪は人権に十分配慮したもの
過去、廃案となった共謀罪や廃止された治安維持法は、人権侵害の可能性もある内容でした。とくに治安維持法は人権侵害が実際に行われていたことにより、廃止となっています。共謀罪については実際に成立・施行されたわけではないため、一概にはいえません。
しかし、解釈方法によっては「ただ話をしていただけで逮捕される可能性がある」とも考えられていました。このことにより、人権侵害に当たるのではないか?という見方をする人も大勢いました。
しかし、テロ等準備罪は上記のような事は一切なく、条文の内容をより具体的にすることで人々が安心して生活を送れるようにされています。そのため、一般人が不安を感じるようなことは一切ありません。むしろ、安心・安全な社会実現のためにある法律である、と考えておけば良いでしょう。
テロ等準備罪に関するよくある質問
テロ等準備罪に関するよくある質問を紹介します。
Q.テロ等準備罪が成立しなければTOC条約へ入れなかったのですか?
A.テロ等準備罪が成立していなければ、国際条約であるTOCへの加盟はできませんでした。
TOC条約への加盟に条件はありません。しかし、前提条件として自国での「重大な犯罪の合意または組織的な犯罪集団への活動を犯罪とする法整備」が必要でした。そのため、大前提として、TOC条約へ加盟するためには、テロ等準備罪のような法整備を行う必要がありました。
2017年にテロ等準備罪が成立・施行されるまでは、日本国内で上記の条件を満たす法律がありません。そのため、新たに法整備を行い、国際大会等に備えた形となっています。
Q.テロ等準備罪に著作権法や森林法が入っているのはなぜですか?
A.組織的犯罪集団の資金源となる行為を禁止するためです。
テロ等準備罪に一見関係のない「著作権法」や「森林法」が含まれている理由は、組織的犯罪集団の収入源を未然に断ち、テロ行為等を防止するためです。
テロ等準備罪によって処罰される可能性のある「組織的犯罪集団」とは、必ずしもテロ集団を指すわけではありません。たとえば、詐欺集団や暴力団なども組織的犯罪集団に含まれます。
仮に、暴力団関係者が海賊版DVDを販売して利益を得ていた場合、そのお金がテロ等の準備金に充てられる可能性も否定できません。また、森林内にある砂利等を大量に窃取し、売却して利益を得る可能性も考えられるでしょう。
上記のような資金源を断つことによって、テロ行為等を未然に防止しようと考えられています。このことから、テロ等準備罪には一見関係のない森林法や著作権法といった犯罪が含まれています。
Q.テロ等準備罪はなぜ反対意見が多かったのですか?
A.反対側の意見として多かったのは「警察のさじ加減で国民を逮捕できる」です。
テロ等準備罪を拡大解釈すると、警察等の捜査機関が「テロの準備を行った」と判断をした場合に適当な理由を付けて逮捕できるのではないか?と考えた人たちが反対派の主な言い分です。しかし、決してそのような事はないため安心してください。
テロ等準備罪が成立するためには、そもそも「組織的犯罪集団」であるという前提が必要です。そのため、一般人・一個人が何らかの行為を行ったからといって、テロ等準備罪で処罰されることはありません。
また、先ほども解説したとおりテロ等準備罪は、一般人を対象とした法律ではなく、一般人であれば処罰されることもありません。そのため、過度に心配をしたり不安に感じたりする必要はないでしょう。
Q.テロ等準備罪で未然にテロを防止することはできるのですか?
A.テロ等準備罪の成立・施行によって、未然にテロを防止できる可能性が高まっています。
テロ等準備罪は、テロ等の計画・準備をした場合に成立する犯罪です。つまり、テロが発生する前(準備段階)で逮捕をできるようになったということです。
テロ等準備罪が成立するまでは、実際に犯罪が起きてからもしくは予備罪でしか逮捕したり処分を下したりできませんでした。しかし、テロ等準備罪の成立・施行によって、具体的な計画や準備をした時点で逮捕したり処分したりできるようになっています。
また、TOC条約へ加盟したことによって、加盟国との国際的な情報共有が可能となったり犯人の引き渡しができるようになっています。このように、テロ等準備罪にはさまざまなメリットがあります。
Q.なぜ東京オリンピックが開催される時期のみに限定しなかったのですか?
A.期間を絞るメリットがないためです。
東京オリンピックにのみテロが発生するとは限りません。今後、何度も国際的なイベントが日本国内で行われることも考えられます。そのため、法律として成立をさせたうえで長く、テロを未然に防止するためです。
まとめ
今回は、テロ等準備罪について解説しました。
テロ等準備罪は、「組織的犯罪集団がテロ等の計画・準備をした場合」に成立する犯罪です。そのため、一個人・一般人にはあまり関係のない法律であると考えておいて良いです。
中には、「自分たちにも影響を与えるのではないか?」と不安を抱えている人がいるかもしれません。しかし、そのような事はないため安心してください。本記事で解説した内容を踏まえ、少しでも不安を払拭していただければと思います。