日本において拳銃の所持は禁止されています。もし、日本国内で許可なく拳銃を所持していた場合は、銃刀法違反によって厳しく処罰されるため注意しましょう。
今回は、拳銃所持の違法性について詳しく解説します。拳銃所持について詳しく知りたい人は、本記事を参考にしてください。
拳銃所持の違法性について
日本国内での拳銃の所持は違法です。銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)という法律によって禁止されています。当然、拳銃の製造や販売等も禁止されています。
狩猟等なんらかの理由で拳銃を所持する必要がある場合は、銃砲所持許可を得なければいけません。まずは、拳銃所持の違法性について詳しく解説します。
拳銃所持は銃刀法違反
拳銃は殺傷能力の高い武器であることから、銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)によって禁止されています。銃刀法第3条では以下のとおり明記されています。
第三条何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、銃砲若しくはクロスボウ(引いた弦を固定し、これを解放することによつて矢を発射する機構を有する弓のうち、内閣府令で定めるところにより測定した矢の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるものをいう。以下同じ。)(以下「銃砲等」という。)又は刀剣類を所持してはならない。
引用元:銃砲刀剣類所持等取締法|第3条
上記法律を一言で表すと「一定の条件を除いて、拳銃を所持してはいけない」というものです。一定の条件とは、警察官や自衛官といった職業上、拳銃を所持する必要がある職業についている人。他にも、猟師、狩猟指導者クロスボウ指導員といった許可を得て拳銃やクロスボウ等を所持している人たちのことを指します。
つまり、上記に該当しない者が拳銃を所持すると違法となり、銃刀法違反によって処罰されるということです。
製造・販売も当然に違法
拳銃の所持は銃刀法違反となりますが、製造や販売も当然違法です。拳銃の販売は、いわゆる「密輸」であり、違反すれば銃刀法違反となります。
なお、銃砲店をとなむためには、猟銃販売事業の許可を得なければいけません。許可を得ずに中の販売等を行った場合は、銃刀法違反によって処罰されるため注意しましょう。
拳銃を所持するためには銃砲所持許可が必要
一般の人が拳銃を所持することは認められていません。ただし、狩猟等何らかの目的がある場合は、許可を得たうえで中の所持が認められています。
拳銃の所持許可を得るためには、医師の診断や技能講習の受講、試験などさまざまな条件をクリアする必要があります。一定の条件をクリアした者のみに主に猟銃の所持許可(免許)が与えられます。
許可なく拳銃を所持すれば、銃刀法違反によって処罰されるため注意しましょう。なお、猟銃所持等の許可を得ていない者は、そもそも拳銃を購入することはできません。
拳銃所持の成立要件と法定刑
拳銃の所持は銃刀法という法律によって禁止されています。具体的に、どういった場合に銃刀法違反となるのか?成立要件について詳しく解説します。また、銃刀法違反に問われた場合の法定刑についても詳しく解説します。
拳銃所持の成立要件
拳銃所持は以下に該当する「鉄砲」を「所持」していた場合に成立する犯罪です。
- 拳銃
- 小銃
- 機関銃
- 砲
- 猟銃
- 空気銃
- その他金属製弾丸を発射する機能を有している装薬銃砲
上記に該当する物を所持していた場合には、銃刀法違反となります。まず、「所持」とは社会通念上、事実上支配すると認められる状態を指します。具体的には、自分の物として家に保管していたり、どこかに隠していたりしている場合であっても「所持」として認められるため注意が必要です。
たとえば、「猟師だった父親が亡くなり、家族は誰も免許を持っていないが、自宅に猟銃がある」というケースでは銃刀法違反にはなりません。ただし、亡くなってから10日以内に許可証を返納し、拳銃を処分しなければいけません。
他にも、「一人暮らしだった父親が亡くなり、猟銃があることを知らなかった」というケースであっても「所持」には該当しません。この場合は、遅滞なく警察等へ相談をしたうえで拳銃の処分を行ってください。
上記のように「所持」とは、悪魔でも自分自身が事実上支配すると認められている状態を指します。それ以外は銃刀法による「所持」には該当しません。
そして、銃刀法によって禁止されている拳銃の種類は「鉄砲」として定義されている物を指します。先ほど解説したものが「鉄砲」と定義されており、モデルガンやエアガン、ガスガン等は銃刀法違反になりません。
拳銃所持の法定刑
拳銃不法所持の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。さらに、所持している拳銃に適合する銃弾を所持していた場合は罪が重くなり、3年以上の有期懲役となります。
また、複数の拳銃を所持している場合や組織的に拳銃を所持していたような場合は、さらに重い罪が科されることになるため注意しなければいけません。拳銃の不法所持のみであれば、1年〜10年以下の懲役ですが、実弾を持っていた場合は3年以上の懲役となり、実刑判決の可能性が高まります。
執行猶予が付かない判決のことを「実刑判決」と呼びます。
執行猶予とは、直ちに刑罰を執行せずに一定期間猶予することを指します。猶予期間中に罰金刑以上の刑が確定しなければ、刑罰は失効します。なお、執行猶予は3年以下の懲役・50万円以下の罰金に対してしか付けられません。
拳銃を発見した場合の対処法
万が一、拳銃を発見してしまった場合は、以下の対処法を検討してください。
- 絶対に触れないこと
- すぐに警察へ連絡をすること
遺品拳銃等の場合は「所持」に該当しないため、罪には問われません。これから解説する対処法を踏まえ、正しい処分を行いましょう。
絶対に触れない
拳銃を発見しても絶対に触れないようにしましょう。拳銃は非常に殺傷能力の高い武器であり、知識のない人が触れてしまうことによって、誤射し、周りの人や自分が怪我をしたり死亡したりする恐れがあります。
そのため、拳銃を発見しても絶対に触れずに、警察等へ通報をしたうえで処分を行ってください。
すぐに警察へ連絡をする
拳銃を発見した場合は、直ちに警察へ連絡をしてください。拳銃があることを知っていながらすぐに通報しなければ、所持をしていた場合は、銃刀法違反に問われる可能性もあるため注意してください。
警察へ通報をすることによって、正しく処分してもらえるため安心してください。また、自分で所持をしていない場合は、罪に問われることはないため安心してください。
何があっても拳銃を所持して出歩くことのないようにしましょ。「所持」として認められてしまったり、事故や事件に巻き込まれたりする恐れがあるため注意しましょう。
遺品拳銃等の場合は罪に問われない
遺品拳銃等、「所持」が認められない場合は罪に問われることはないため安心してください。先ほども解説したとおり、たとえば「猟師であった父親が死亡した」というようなケースで、自宅に猟銃を保管しているようなケースも考えられます。
この場合は、「所持」として認められないため罪に問われることはありません。しかし、遅滞なく拳銃を処分する必要があります。いつまでも拳銃を家の中で保管しているようなケースであれば、「所持」として認められることもあるため注意してください。
もし、拳銃の処分方法がわからない場合は、警察へ連絡をしたうえで処分方法を確認してください。
拳銃所持で逮捕された場合の流れ
拳銃所持は内容次第では重罪です。とくに一般の人が拳銃を所持しているケースは考えにくく、主に反社会勢力等が所持している可能性が高く、重罪となることが多いです。
一般の人であっても拳銃を所持していれば、「1年以上10年以下の懲役」が科されるため、決して軽い刑罰ではありません。万が一、拳銃所持で逮捕されてしまった場合、どのような流れで事件は進んでいくのでしょうか。次に、拳銃所持で逮捕された場合の流れについても詳しく解説します。
逮捕
逮捕とは「被疑者の身柄拘束をするための手続き」です。逮捕された場合は、初めに48時間以内の身柄拘束が可能となります。身柄拘束期間中は警察署内にある「留置所」と呼ばれる場所で生活し、1日8時間を超えない範囲で取り調べが行われます。
罪を犯したからといって、必ずしも逮捕されるとは限らないものの、拳銃所持の場合は逮捕される可能性が高いと思っておいたほうが良いでしょう。なぜなら、拳銃所持は組織的犯罪である可能性が高いためです。
一般の人が拳銃を入手することはとても困難であるため、「拳銃を所持している=密輸」「密輸=組織的犯罪」と見なされるケースが多いです。また、一般の人が拳銃を入手する必要性は低いため、組織的犯罪の可能性が強められます。
組織的犯罪である場合は、逃亡や証拠隠滅等の恐れが非常に高いため、結果的に逮捕して捜査を行うことになるのです。
勾留請求
逮捕された場合は、逮捕から48時間以内に事件を検察官に送致します。その後、さらに24時間以内に引き続き被疑者の身柄を拘束する必要があるかどうかを判断します。組織的犯罪である場合は、「逮捕の必要がある」と判断されやすいでしょう。
もし、検察官が「勾留の必要はない」と判断した場合は、即時釈放されて在宅捜査となります。在宅捜査となった場合であっても、事件が終了するわけではなく、身柄拘束がされないというだけです。そのため、結果的に懲役刑の実刑判決となれば、刑務所へ収監されてしまいます。
勾留の有無は、「身柄の拘束があるかどうか」という違いだけであることを覚えておきましょう。
もし、勾留の必要があると判断された場合は、初めに10日間の勾留が可能となります。一般的には、勾留延長が認められるケースが多く、さらに10日、合計20日間の身柄拘束となるため注意しましょう。
この時点で、逮捕〜勾留で最長23日間の長期拘束となり、社会的な影響も発生してきます。たとえば、学校へ行けない。会社へ出社できない。こういったことによるさまざまな弊害が発生することを覚えておきましょう。
起訴・不起訴の判断
勾留されている被疑者の場合は、勾留期間中に起訴もしくは不起訴の判断がなされます。不起訴となった場合は、今回の事件については終了します。しかし、起訴された場合は、刑事裁判を経て有罪である場合は、判決として刑罰が言い渡される流れです。
なお、起訴方法には「正式起訴」と「略式起訴」の2種類ありますが、拳銃の不法所持で略式起訴が選択されることはありません。なぜなら、略式起訴とは「100万円以下の罰金にのみ」対応できる起訴方法であるためです。
そのため、拳銃の不法所持によって逮捕された場合は、確実に正式起訴となるため注意しましょう。なお、起訴・不起訴の判断は勾留期間中に行われます。
起訴された場合、被疑者は「保釈請求」を行うことができます。保釈請求とは、保釈金を支払って保釈してもらうための申請手続きです。保釈請求をしたからといって、必ずしも認められるとは限りません。
刑事裁判を受ける
正式起訴された場合は、刑事裁判が行われます。刑事裁判では、初めに拳銃所持について有罪か無罪かを判断します。そのうえで、有罪である場合はどの程度の刑罰に処するのが妥当かを判断し、判決を言い渡します。
判決に従って刑に服する
刑事裁判で判決が言い渡された場合、その判決に従って刑に服します。拳銃の不法所持は懲役刑の定めしかないため、有罪判決が確定した場合は、執行猶予付きの判決を目指すことになります。
ただし、組織的な犯罪である場合は、実刑判決になる可能性が高く、刑務所へ収容されることになるため注意しましょう。
執行猶予が付かない判決のことを「実刑判決」と呼びます。
執行猶予とは、直ちに刑罰を執行せずに一定期間猶予することを指します。猶予期間中に罰金刑以上の刑が確定しなければ、刑罰は失効します。なお、執行猶予は3年以下の懲役・50万円以下の罰金に対してしか付けられません。
拳銃所持に関するよくある質問
拳銃所持に関するよくある質問を紹介します。
Q.モデルガン・エアーガンの所持は違法ですか?
A.モデルガンやエアガンの所持に違法性はありません。
モデルガンやエアガンの所持自体は禁止されていません。ただし、「模造拳銃」に該当する場合は、所持が禁止されています。
模造拳銃の定義は以下のとおりです。
- 金属製
- 拳銃に著しく似ているもの
模造拳銃に該当しないためには、以下の措置が必要です。
- 銃口が完全に塞がれていること
- 金属製ではないこと
- 金属製の場合は、表面が黄色もしくは白色であること
モデルガンやエアガンであっても、模造拳銃の場合は所持が禁止されていることを覚えておきましょう。もし、模造拳銃を所持している場合は、直ちに警察へ提出してください。
Q.警察官等が所持しているのは銃砲所持許可によるものですか?
A.警察官等が所持している拳銃は、警察法という法律に従って認められています。
警察法第67条によって、職務上必要であることから拳銃の所持が認められています。よって、銃砲所持許可とは異なると考えて良いです。
Q.暴力団等はなぜ拳銃を所持できているのですか?
A.大半は密輸によるものです。
暴力団は当然に拳銃の所持は認められていません。しかし実際に拳銃を所持し、摘発される事例も少なくはありません。入手経路は個別事案ごとに異なるため、一概には言えません。しかし、多くのケースで、海外からの密輸による入手です。
Q.拳銃は銃砲店等で誰でも購入できるのですか?
A.誰でも購入できるわけではありません。
正規に拳銃を購入しようとすると、銃砲店と呼ばれる場所で購入することになります。しかし、銃砲店で誰でも拳銃を購入できるわけではない点に注意が必要です。拳銃を購入するためには、拳銃所持の許可を得ていなければいけません。具体的には、狩猟免許を所有している人などが該当します。
Q.なぜ日本では拳銃の所持が認められていないのですか?
A.凶悪犯罪の防止を目的としています。
拳銃は非常に殺傷能力の高い武器であり、銃社会であるアメリカを例に見ると、さまざまな凶悪犯罪が発生しています。たとえば、銃乱射事件により多くの人が犠牲になる事件が度々発生していることは周知の事実でしょう。
日本では、そういった凶悪犯罪を防止するために、厳しい審査を行ったうえで許可がある人しか所持できないような仕組みにしています。
まとめ
今回は、拳銃所持について解説しました。
日本国内で拳銃の所持は禁止されており、所持をしていた場合は銃刀法違反として処罰されます。銃規制は非常に厳しく、万が一拳銃所持で逮捕された場合は、長期間の懲役刑もあり得ます。
もし、遺品拳銃等がある場合は、早期に警察等へ連絡をしたうえで正しく処分をしてください。また、自分の拳銃ではないものの、発見した場合も直ちに警察へ連絡をし、処分をしましょう。いつまでも保管していると「所持」と見なされて逮捕される可能性があるため注意してください。