警察等で行われる取り調べは、密室内で行われます。被疑者の心情としては「何があるかわからないため、録音・録画しておきたい」と考えるのは当然です。しかし、基本的に録音や録画は認められていません。
現在は、取り調べの可視化に向けた動きはあるものの、まだまだ不十分であるのも事実です。
この記事では、取り調べ時の録音録画、違法な取り調べが行われた場合の対処法について詳しく解説しています。取り調べ時の録音・録画について詳しく知りたい人は、本記事をぜひ参考にしてください。
目次
警察における取り調べの種類
警察が行う事情聴取で録音することは、法律上は禁止されていません。しかし、実際には難しいのが現実です。そもそも、警察が行う聴取には「任意聴取」と「強制聴取」の2種類があります。
とくに後者の場合は、身柄を拘束したうえで事情聴取が行われるため、そもそも録音機器を取り調べ室に持ち込むことが不可能です。
まずは、警察における2種類の任意聴取について、「どういうものなのか?」を詳しく解説します。録音の可能性を把握するうえで重要な内容であるため、まずは取り調べの種類を参考にしてください。
任意聴取
警察が行う聴取の中で、「任意聴取」というものがあります。任意聴取は、その名の通り「任意」で行われる聴取を指します。任意であるため、当然拒否しても良いです。
任意聴取が行われるパターンとして考えられるのは、主に以下のとおりです。
- 参考人に対する取り調べ
- 逮捕していない被疑者(重要参考人)に対する取り調べ
参考人に対して行う取り調べとは、たとえば事件を目撃していた人に対して行う聴取です。また、直接的に犯罪を犯した疑いはないものの、その犯罪について何らかのことについて知っている可能性がある者に対して「任意」という形で事情聴取を行います。
あくまでも任意であるため、当然断ることもできます。「仕事が忙しい」「話すことはない」といった理由で断っても良いです。しかし、警察としても何らかの事情を知っている可能性が高いと判断しているため、さまざまな方法で任意聴取に応じるように促すでしょう。
そして、逮捕していない被疑者に対して行う取り調べも「任意聴取」と言います。逮捕していない被疑者については、一般的に「重要参考人」と呼ばれます。
重要参考人は、現時点で逮捕状を発布できるほどの証拠が集まっていないものの、犯人である可能性が高いと判断されていると思っておきましょう。そのため、任意聴取後に嫌疑が固まり次第、逮捕という流れもあり得ます。
もちろん、重要参考人であっても「任意」である以上は拒否することも可能です。しかし、拒否することによって、強制聴取を行うために逮捕するケースもあるため注意が必要です。
そもそも、罪を犯したからといってすべての人が逮捕されるわけではありません。逮捕するためには一定の条件を満たしている必要があります。そのため、在宅事件(逮捕せずに事件を進める)と思っていたものの、任意聴取を拒否したことによって逮捕される、といったケースもあるため注意しましょう。
強制聴取
強制聴取は、一般的に逮捕等をして取り調べを行うことを指します。そもそも「逮捕」という行為は、被疑者の身柄を強制的に拘束するための手続きです。
逮捕されると否が応でも身柄を拘束されます。そして、留置所と呼ばれる場所に収容されて1日8時間を超えない時間内で強制的に事情聴取が行われます。
「強制的に事情聴取が行われる」とは言っても、「強制的に事件に関することを話さなければいけない」というわけではありません。被疑者には「黙秘権」という権利があるため、言いたくないことは言わなくても良いです。
ただし、事情聴取には強制的に参加しなければいけないため、強制聴取とも言います。なお、任意聴取を拒否し続けた結果、逮捕して強制聴取となる可能性もあるため注意してください。
警察による取り調べは録音・録画は可能なのか
結論、警察による取り調べの録音・録画は「違法ではない」です。可能か否かで判断をすると、基本的には「難しい」という答えになります。
次に、警察による取り調べは、録音・録画が可能なのか?について詳しく解説します。
取り調べの録音は違法ではない
取り調べ時に録音を行う行為は、違法ではありません。そのため、こっそり取り調べ時に録音をしていても罪に問われる心配はないため安心してください。
取り調べは、警察署内にある「取り調べ室」と呼ばれる場所で行われます。取り調べ室は密室であり、刑事事件における唯一の味方である弁護人が同席することもできません。
そのため、「取り調べ室の中で何が行われているかわからない」「自白の強要をされたらどうしよう」「暴行されるのではないか」など、さまざまな不安を抱えている人も多いでしょう。このことから、「可能であれば取り調べを録音したい」と考えるのも当然です。
しかし、「法律に違反しない」とは言いつつも、現実的に録音・録画をするのは困難です。その理由についても詳しく解説していきます。
警察等に録音が知られた場合はやめるように言われる
録音や録画は法律では禁止されていません。しかし、警察等に録音や録画がバレてしまった場合、やめるように求められます。あなたは、やめることに同意する必要はないですし、「録音・録画をさせてもらえなければ取り調べに応じない」と拒否をしても構いません。
ただし、強制聴取であれば強制的に取り調べは開始されます。任意聴取であれば、録音・録画の有無に関わらず、任意であるため拒否しても問題ありません。
もし、任意聴取で「録音・録画をする」と伝え、警察が拒否をしても録音・録画を継続した場合は、そもそも取り調べが開始されないことが一般的です。警察が、録音や録画を拒否する理由は、捜査に影響を与える可能性があると判断されているためです。
たとえば、取り調べでは特定の事件について詳しく話を聞きます。鎌を掛けるような聞き方をすることもあるでしょう。
もし、録音データが犯人に渡ってしまった場合、「警察がどの程度の情報を把握しているか?」についてある程度推察できてしまう恐れがあります。このことにより、基本的に個人による録音や録画は拒否しています。
なお、「警察が違法捜査を隠蔽するため」などと思われている人がいるかもしれませんが、基本的にそのようなことはないため安心してください。
強制聴取の場合は録音機器を持ち込めない
強制聴取の場合は、「逮捕」という行為によって行われる事情聴取です。そのため、スマートフォンやカメラ、ICレコーダーといった録音・録画機器を含む所持品は、すべて一度押収されます。このことから、そもそも物理的に録音することはできません。
任意聴取の場合は、強制的に所持品を押収することはできないため、隠れながら録音することはできるかもしれません。しかし、警察にバレてしまった場合は、録音データの削除や録音の拒否を求められます。
また、録音機器の任意提出を依頼されることもあるでしょう。この場合はあくまでも任意であるため、提出する義務はありません。しかし、提出しなければ逮捕による強制聴取あるいはそもそも取り調べを行わない、といったことになり得るでしょう。
取り調べにおける録音・録画の義務化とは
じつは、取り調べにおける録画や録音は、義務化されています。ただし、義務付けられている事件は限定的です。また、義務化されている事件においても、大半のケースで録音・録画が実行されていないのが現実です。
次に、法律によって決められている「取り調べの録音・録画の義務化」について、詳しく解説します。
取り調べの可視化を目的に録音・録画が義務化
日本では、取り調べにおける弁護人の立会は認められていません。そのため、取り調べ室という密室の中で、どのような取り調べを受けているかわかりません。
罪を犯した人の多くは法律や取り調べのルールについて把握していないため、被疑者にとって不利となる取り調べが行われているケースも少なからずあります。これらの問題を可視化する目的から一定の事件における取り調べの録音・録画が義務付けられました。
たとえば、否認事件において警察官等が行った誘導質問に乗った形となり、結果的に自白供述証拠が作成されてしまったとしましょう。この場合、被疑者は「そのようなつもりで言っていない」と伝えても、裁判上では被疑者にとって不利になってしまいます。
これまでの裁判では、取り調べで述べた内容(供述調書)も証拠として使用されていました。しかし、取り調べ室という密室の中で警察官というプロ対知識の乏しい素人が異様な空間で取り調べを行います。そのため、被疑者にとって不利となる供述を取られたり、冤罪が発生したりするケースも稀ながらありました。
上記のようなことをなくすために、取り調べにおける録音・録画が現在は義務付けられています。
対象事件は一部の事件に限定
警察の取り調べにおける録音・録画の対象事件は、以下に限られています。
- 裁判員裁判対象事件
- 検察官独自捜査事件
裁判員裁判の対象となる事件は、殺人事件や強盗致死事件など一定以上の重大な事件です。検察官独自捜査事件とは、検察庁自らが検挙もしくは摘発をして独自に捜査を行う事件のことです。
上記事件のうち、身柄を拘束されている被疑者の取り調べについては、録音・録画が義務付けられています。
実情は大半の事件で録音・録画されていない
基本的に初めの取り調べを行うのは、警察官であることが多いです。そのうえ、録音・録画が義務化されている事件は一部に限定されています。そのため、実情として大半の事件において録音・録画がなされていません。
今後、全事件における取り調べの可視化を進めていくものと思われますが、現状ではまだまだ満足な運用ではない点に注意しましょう。
取り調べにおけるルールについて
取り調べは取り調べ室という密室で行われます。そのため、さまざまな不安を抱えて取り調べに出席する人も多いでしょう。「犯人にされるのではないか?」「自白を強要されるのではないか?」など、さまざまなことを考えるのは当然です。
しかし、じつは取り調べにおいては以下のようなルールが定められており、ルール違反があった場合は違法な取り調べとなります。具体的には、以下のようなルールが定められています。
取り調べは1日8時間以内
取り調べは基本的に午前5時から夜の10時までの間で1日8時間以内に制限されています。「基本的に」というのは、たとえば夜中に逮捕された場合は上記時間外であってもすぐに取り調べが行われるためです。
ただし、この場合であっても「1日8時間以内」という制限を守る必要があります。
刑事事件における取り調べは取り調べ対象者の「記憶」を元に供述調書を巻いていきます。そのため、夜中に事件が発生した場合は、可能な限り新鮮な記憶を聴取するために、夜中であっても取り調べが行われるのです。
ただし、原則は午前5時から夜の10時までの間と定められているため、上記以外で特別に認められた事件以外に時間外の取り調べがあった場合は違法となります。
黙秘権を邪魔してはいけない
取り調べを受ける人に対しては、「黙秘権」という権利が認められています。黙秘権とは「自分の意思に反して供述を強制されない権利」のことです。
わかりやすく言えば「言いたくないことは言わなくても良い」という権利です。事件に関することや自分が不利になる恐れのある情報等、言いたくない場合は何も話さなくても問題ありません。
これはすべての被疑者等に認められている権利であり、侵害されてはいけません。当然、取り調べが行われる前に必ず、黙秘権に関する説明を受けられます。
黙秘権を邪魔したり、黙秘権についての説明を行わなかったりした場合は、違法な取り調べであると判断されます。
被疑者の身体に触れる行為
被疑者の体に不用意に触れる行為も禁止です。取り調べは密室内で行われるうえに、過去には暴行等を用いて自白の強要がなされたケースもありました。冤罪を発生させない目的の観点から見ると、被疑者の体に不用意に触れる行為は避けるべきであると考えるのが通常です。
とはいえ、「動く際に触れてしまった」「暴れる被疑者を取り押さえるために触れた」など、事情がある場合は当然ルール違反にはなりません。あくまでも「不用意に触れた場合」であることを覚えておきましょう。
直接・間接的な暴行
直接もしくは間接的に暴行を加えるのも当然に違法です。直接的な暴行とは、取り調べを行っている対象者に対して、殴る蹴るなどの暴行を指します。
間接的な暴行とは、たとえば「殴るふりをする」「物を投げる」といった行為が該当します。これらの行為はすべて暴行であり、当然に許されるべき行為ではありません。
苦痛を強いるような行為・言動
苦痛を強いるような行為・言動もやってはいけません。たとえば、「食事を与えない」「トイレに行かせない」など、日常生活を送るうえで避けられない行為を行わせないような場合です。
苦痛を強いる行為・言動も自白の強要を温床になり得ます。結果的に冤罪が発生する可能性があるため、絶対に許される行為ではありません。
対象者を不安にさせるような行動・言動
対象者を不安にさせるような行動・言動もルール違反です。たとえば、嘘の情報を伝えて不安にさせるような行為を行ってはいけません。
具体的には、仮に在宅事件の取り調べであるとしましょう。そこで、警察官が「あなたの家族事故に遭った」などと嘘の情報を伝えて不安な気持ちにさせます。もちろん、被疑者としては「取り調べを早く終わらせて駆けつけたい」と考えることでしょう。
結果的に、自白の強要や冤罪の原因になり得ます。そのため、対象者を不安にさせるような行動・言動も禁止されています。
違法な取り調べとは
取り調べで話した内容は、すべて証拠として扱われます。しかし、違法な取り調べによって作成された供述調書は、証拠として扱われることはありません。
具体的に、どのような行為が違法なのか?について、詳しく解説します。
黙秘権を侵害した場合
黙秘権を侵害した場合は、違法な取り調べになります。黙秘権は、取り調べを受けている人に認められている「権利」です。この権利は誰であっても侵害することは許されません。
黙秘権は「話したくないことは話さなくても良い」という権利です。「自分が不利になる可能性のある供述を話したくない」と考えている被疑者もいるでしょう。
上記のような人に対して、脅して「事件について話なさい」などと言うと黙秘権の侵害になり得ます。また、黙秘権について説明をしなかったり、誤解を与えるような伝え方をした場合も黙秘権の侵害になり得ます。
長時間の取り調べを行った場合
取り調べの時間は、特別な場合を除いて午前5時〜午後10時までの間で1日8時間以内と決められています。この時間を超える取り調べは違法です。
そもそも、いつ終わるかわからない取り調べを行われると、取り調べを受けている対象者は疲弊してしまいます。精神的に苦痛を感じ、「事件について話さなければ終わらないのではないか?」「やっていないけど、自分がやったと言わなければ終わらないのではないか?」といった不安を感じるでしょう。
結果的に、自白の強要や冤罪の原因になり得ます。そのため、法律によって取り調べを行える時間が決められています。
トイレ・食事を行わせない等の行為
トイレや食事は、人間が生活をするうえで欠かすことのできない行為です。これらの行為を禁止することは許されません。
たとえば「やったことを認めなければ、トイレに行かせない」と言われた場合、やっていなくても「やった」と言わざるを得ません。結果的に、自白の強要・冤罪の原因になるため違法です。
暴言・暴行を行う
暴言や暴行も違法です。警察官等の取調官は、被疑者(罪を犯した者)と推定して事件を進めています。そのため、ときには言葉が乱暴になることがあるかもしれません。しかし、結果的に「脅す」行為になります。
脅された被疑者は恐怖心を抱き、「罪を認めなければいけない」「言いたくないことも言わなければいけない」と感じてしまうでしょう。結果的に、自白の強要・冤罪の原因になり得ます。
苦痛を強いること
苦痛を強いる行為も違法です。苦痛を強いるとは、さまざまなことが考えられます。たとえば、長期間の取り調べ、食事を与えない、トイレに行かせないなどさまざまなことが考えられるでしょう。
対象者に食べ物・タバコを与える
取り調べ対象者に対して、過度に食べ物を与えたりタバコを与えたりする行為は禁止です。当然、食事を与えることは許されていますが、たとえば、普段は提供されていない甘物を支給された場合、対象者は「もっと欲しい」と感じることでしょう。
取調官に対して有利な情報を与えることによって、食べ物やタバコをもらえるのではないか?と感じ、結果的に自白の強要・冤罪の原因になり得ます。そのため禁止されています。
違法な取り調べを受けた場合の対処法
もし、取調官から違法な取り調べを受けた場合、以下の対処法を行いましょう。
- 弁護士へ相談をする
- 黙秘権を行使する
- サイン・押印をしない
次に、違法な取り調べを受けた場合の対処法について解説します。なお、すべての事件で録音・録画がなされているわけではないため、違法な取り調べを受ける可能性はゼロではありません。対処法についてもしっかり把握しておきましょう。
弁護士へ相談をする
まずは、弁護士へ相談をしましょう。逮捕されている被疑者の場合、逮捕後に一度、勾留確定後に一度、無料で弁護士を呼ぶことができます。しかし、すぐにでも弁護士へ相談をしたうえで対応してもらうべきであるため、基本的には私選弁護人を依頼することになります。
また、在宅事件として扱われている場合は、「起訴後」でなければ国選弁護人は付きません。タイミングとしてはとても遅いため、必ず私選弁護人を付けましょう。
弁護人に違法捜査があったことを相談することで、供述調書の有効性を否定してくれます。刑事事件において、弁護人はあなたの唯一の味方です。そのため、必ず弁護人へ相談をしましょう。
黙秘権を行使する
黙秘権を行使しましょう。違法な捜査を受けたとしても「何も言わない・話さない」を徹底しましょう。結果的に自分にとってふりになる供述調書を作成されずに済みます。
黙秘権の侵害があった場合は、直ちに弁護士へ相談をしたうえで対応を検討しましょう。
サイン・押印をしない
供述調書が作成された最後には、読み上げを行ってサイン・押印を求められます。サイン・押印をすることによって、証拠として成立してしまいます。
違法な取り調べである場合は、証拠として扱われませんが、違法性を証明できない可能性もあるためです。万が一、違法な取り調べによって作成された供述調書が有効であると判断された場合は、証拠として扱われてしまいます。そのため、絶対にサイン・押印をしないでください。
取り調べの録音に関するよくある質問
取り調べの録音に関するよくある質問を紹介します。
Q.弁護士の同席は可能ですか?
A.できません。
取り調べ室に弁護士を同席させることはできません。録音や録画も基本的には認められていないため、密室内で取調官と話をしなければいけません。
上記のことから、これまでに何度も違法な取り調べが行われてきました。現在は、取り調べの可視化に向けてさまざまな動きはあるものの、現時点で違法な取り調べから被疑者を守る方法はほぼありません。
そのため、もし違法な捜査が行われた場合は、すぐに弁護士への相談を検討してください。
Q.取り調べはどのような流れで進みますか?
A.取り調べ室に案内されて取り調べが開始されます。
まず、警察署へ出頭もしくは逮捕されて連行されます。そのまま、取り調べ室と呼ばれる場所に入室させられ、黙秘権や当番弁護人制度など必要な情報を被疑者に伝えます。
その後、取り調べが行われる流れです。取り調べにおいては、事件に関することや雑談を行います。雑談は直接事件に関係する内容ではないものの、被疑者をリラックスさせる目的で行われることが多いです。
Q.脅されてサイン・押印をしましたが、証拠として扱われますか?
A.脅されていた場合は、証拠として扱われません。
密室内で行われる取り調べは、自白を強要されたうえで「サイン・押印をしなければ〇〇するぞ」などと脅し文句を言われる可能性もゼロではありません。たとえば、「サイン・押印をしなければ、取り調べは終了しない」と言われた場合、早く取り調べを終わらせたい一心から、サイン・押印をしてしまったとしましょう。
しかし、上記発言が事実であれば、「脅されてサイン・押印をした」ということになるため、証拠としては扱われません。
基本的に、サイン・押印をした場合は証拠として扱われます。しかし、違法な捜査による場合は証拠として成立しません。つまり、仮に自白をしていたとしても、自白証拠に証拠能力は発生しません。
Q.「録音を認めなければ、黙秘します」と言うのは有効ですか?
A.有効ですが、録音を認められるとは限りません。
そもそも、取調官が録音を認めることはほとんどありません。そして、黙秘権は被疑者の権利であるため、侵害をすることもできません。
よって、録音の有無に関わらず、黙秘権を行使しても良いです。仮に、「録音を認めなければ黙秘します」と伝えても、録音は認められないでしょう。取調官は、あの手この手を使って証言してもらおうと努力するまでです。
Q.録画以外で違法捜査を証明することはできますか?
A.証言をすることが大切です。
まずは、違法捜査があった事実を弁護士へ相談してください。弁護士が、あなたから聞いた証言を元に裏付けを行ってくれます。
取り調べは密室内で行われるため、証拠を示すことはとても難しいです。物理的な証拠を表すことができないため、基本的には証言が証拠となると思っておいて良いでしょう。対応方法は個別事案ごとに異なるため、まずは弁護士へ相談されることをおすすめします。
まとめ
今回は、取り調べにおける録音について解説しました。
取り調べを受ける者の心情として「何が行われるかわからないため、できれば録音しておきたい」と考えるのは当然でしょう。しかし、録音や録画は認められていません。
こっそり行ったとしても、罪に問われることはありません。しかし、バレてしまえば録音をやめるように言われます。
そのため、もし違法な取り調べを受けた場合は、弁護士へ相談をするのが得策です。違法な取り調べによって作られた供述調書は、証拠としては扱われません。その場しのぎで発してしまった場合であっても、後から証拠能力を無効にすることも可能です。そのため、必ず弁護士へ相談をしてください。