取り調べにて聞かれる内容は、主に事件のこととあなた自身のことです。被疑者にリラックスをしてもらうため、雑談を行うケースもあります。とくに不安に感じる必要はなく、基本的には聞かれたことに対して答えるだけで良いです。
この記事では、取り調べ時に聞かれる内容や取り調べを受ける際の注意事項について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
取り調べで聞かれる内容
取り調べで聞かれる内容は、主に事件に関することやあなた自身のことです。他にも、プライベートな雑談を行うケースもあります。
まずは、取り調べで聞かれる内容とはなにか?について詳しく解説します。
犯罪に関すること
あなたが犯罪を犯したと疑われている被疑者である場合、取り調べでは事件について詳しく聞かれます。具体的に「いつ、どこで、何をしたのか」について聞かれると思っておけば良いでしょう。
たとえば、人を殴ったという傷害事件である場合「何時頃?」「どこで(場所)?」「誰を(被害者)?」「被害者のどこを部位?」「何で(拳で等)?」を聞かれます。そのうえで、なぜそのようなことを行ったのか(動機)?などを聞かれて供述調書を作成していきます。
供述調書は、証拠としても扱われるため、可能な限り記憶に従って正しい情報を伝えなければいけません。
参考人として取り調べを受ける場合は、事件に関しての内容を話します。たとえば「何を知っているのか?」「何を見たのか?」などについて聞かれると思っておけば良いです。
また、事件とは直接関係がないものの、あなた自身の生い立ちについても聞かれます。生い立ちについて聞いたうえで「身上調書」というものを作成します。
身上調書は事件には直接関係がないものの、これから刑事裁判等をおこなっていくうえで必要な情報です。そのため、聞かれたことに答えるようにしましょう。
プライベートに関すること(雑談)
取り調べにおいては、被疑者をリラックスさせる目的から、事件にまったく関係のないプライベートなことを聞くこともあります。いわゆる雑談です。
取り調べを受ける人には「黙秘権」という権利が与えられているため、話したくないことは話さなくても良いです。しかし、長時間にわたる取り調べで何も話さないのは、取り調べを受ける人にとっても大きなストレスになるでしょう。
そのため、雑談に応じて事件に関することは黙秘権を行使しても良いです。よく弁護人と話し合ったうえで方針を決定していくと良いでしょう。
取り調べの流れ
取り調べは、大まかに以下の流れに従って進められていきます。
- 黙秘権の告知
- 犯罪事実についての説明
- 事情聴取・供述調書の作成
- サイン・押印
次に、取り調べの流れについて詳しく解説します。
黙秘権の告知
初めに黙秘権について告知されます。黙秘権は、取り調べを受ける人に対して与えられた権利の一つです。黙秘権とは、取り調べにおいて「言いたくないことは言わなくても良い権利」です。
たとえば、自分に不利となる恐れのあることは言わない。という選択をしても罰せられたり、自白を強要されたりすることはありません。
黙秘権を行使する場合、とくに何か手続きを行う必要はありません。初めから一言も話さなくても良いですし、自分にとって有利となる発言だけを選んでしても問題ありません。
上記のような説明を取り調べが始まる前に行われます。黙秘権について説明を行わないのは違法です。
犯罪事実についての説明
次に、犯罪事実について説明を受けます。あなたがどのような犯罪で今ここにいるのか?について説明を受けます。
「〇〇をした罪で〇〇罪の疑いがかけられています」のような形で説明を受けます。事情聴取を受けているということは、何らかの心当たりはあるでしょう。もし、何ら心当たりがないのであれば、事情聴取の際にその旨を伝えれば良いです。
事情聴取・供述調書の作成
次に事情聴取を行います。事情聴取では、事件のことやあなたのこれまでのことについて話をします。事情聴取と同時に供述調書というものを作成します。
供述調書は、刑事裁判において証拠として扱われるため注意しなければいけません。供述調書では、あなたが話した内容で文章として作成されます。
たとえば、「私は、◯月◯日◯時頃、〇〇の路上で被害者である〇〇さんの左頬を右手拳で殴打した」などのように書かれます。話した内容はすべて証拠として扱われるため、何を話し、何を話さないかを慎重に判断しなければいけません。
サイン・押印
最後に供述調書にサイン・押印をしてその日の事情聴取は終了します。供述調書を証拠として扱うためには、取り調べを受けた人のサイン・押印がなければいけません。
もし、供述調書等に「自分が話した内容と異なることが書かれている」といった場合は、すぐに訂正を求めてください。サイン・押印をした場合は証拠として扱われ、基本的には後からの訂正はできないため注意してください。
【逮捕の場合】取り調べを受けた後の流れ
取り調べは、逮捕されて行われる場合と在宅事件として捜査される場合があります。まずは、逮捕された場合の取り調べの流れやその後の流れについて詳しく解説します。
逮捕
罪を犯した場合、逮捕されてしまう恐れがあります。逮捕とは、罪を犯した人の身柄を拘束するための手続きです。逮捕後、48時間以内に次のステップ(送致)へ移行しなければいけないと定められており、送致までに大まかな取り調べを行います。
逮捕された場合は、強制的に身柄を拘束され、留置所と呼ばれる場所で生活を送らなければいけません。逮捕後、48時間以内に事件を送致しなければいけないため、逮捕後すぐに取り調べが開始されます。
なお、取り調べは1日8時間を超えない範囲と定められています。また、取り調べが可能な時間も5時〜22時と定められていますが、夜間や早朝に逮捕された場合はこの限りではありません。
とくに現行犯逮捕の場合は、事件直後の記憶を供述調書として取りまとめるため、逮捕後直ちに取り調べが開始されると思っておきましょう。
事件の送致
逮捕後48時間以内に事件を検察官へ送致します。逮捕された被疑者を送致することを「身柄付送致」と呼びます。身柄付き送致された場合は、送致からさらに24時間以内に勾留の有無を判断します。
勾留の必要がないと判断されれば、この時点で在宅事件に切り替わりますが、勾留が認められた場合は最長で20日間の身柄拘束となるため注意しましょう。
勾留請求の判断
検察官は、事件を送致されてから24時間以内に被疑者を勾留するかどうかについて判断します。勾留が必要であると判断した場合は、裁判所に対して勾留請求を行います。
裁判官が勾留の必要があると認めた場合は、勾留を許可する流れです。勾留が認められた場合は、引き続き留置所と呼ばれる場所にて身柄拘束が行われます。
初めに10日間の勾留が可能ですが、勾留延長されるケースが多く、延長が認められればさらに10日間、合計で20日間の身柄拘束となります。
勾留中は検察等から事件について取り調べを受けなければいけません。警察での取り調べ時同様に黙秘権が与えられ、1日8時間を超えない範囲内で取り調べが行われます。
なお、この時点で逮捕から23日間の身柄拘束となるため、学校へ行けない、会社へ行けないといったことによるさまざまな弊害が出てくるため注意しましょう。
起訴・不起訴の判断
勾留された被疑者は、勾留期間中に起訴するか不起訴とするかを判断されます。不起訴となった場合は、事件については終了します。仮に、罪を犯していた事実があったとしても、被害者と示談交渉が成立していることなどを条件に不起訴となることもあるため、可能な限り早めに弁護士へ相談しましょう。
起訴された場合は、正式起訴もしくは略式起訴のいずれかが選択されます。略式起訴の場合は、罰金もしくは科料が科されるため、金銭を支払って事件が終了します。
正式起訴された場合は、刑事裁判を受けなければいけません。刑事裁判で有罪判決が下された場合は、判決に従って刑に服す流れです。
刑事裁判
刑事裁判では、あなたの犯した罪について審理し、有罪か無罪かを判断します。罪を犯した事実がある以上、無罪となる可能性はゼロに近いでしょう。有罪である場合は、どの程度の刑罰に処するべきかを審理し、判決として言い渡します。
刑罰に従って刑に服する
刑罰が確定した場合は、その刑罰に従って刑に服します。罰金刑等の財産刑であれば金銭を支払って終了します。罰金等を支払えない場合は、一日5,000円程度で労役場留置となるため注意しましょう。
懲役刑等の自由刑が科された場合は、一定期間刑務所や拘置所に収監されて過ごさなければいけません。
【在宅事件の場合】取り調べを受けた後の流れ
罪を犯したからといって、必ずしも逮捕されるわけではありません。逮捕するためには、証拠隠滅もしくは逃亡の恐れがある、住所が不定である等、逮捕すべき理由がある場合に限られています。
もし、在宅事件となった場合、取り調べを受けた後はどうなるのか?について知りたい人も多いのではないでしょうか。
次に、在宅事件の場合は取り調べ後にどのような流れで事件は進んでいくのか?について、「被疑者」「参考人」のそれぞれで詳しく解説します。
被疑者の場合
被疑者とは、罪の疑いをかけられている人のことを指します。被疑者として捜査対象になっている場合、逃亡もしくは証拠隠滅の恐れがあると判断されると、逮捕されてしまう可能性もあるため注意しましょう。
そして、被疑者の場合は警察や検察から呼び出しがあった場合は出頭しなければいけません。出頭をし、取り調べが行われます。その日の取り調べが終了すると自宅へ帰ることが許されます。
ただし、出頭するよう言われているにも関わらず、出頭しなかった場合は、逮捕されてしまう恐れがあるため注意しましょう。出頭できない事情がある場合は、その旨を伝えたうえで日程調整を行ってください。
参考人の場合
事件について何らかのことを知っている人のことを「参考人」と呼びます。参考人の場合は、警察等から任意で取り調べに応じるよう求められます。拒否をしても逮捕されることはありません。
また、取り調べが終了した時点で自宅へ帰ることが許されます。取り調べの途中であっても帰ることは許されますが、出頭した以上は最後まで取り調べに応じるよう求められます。
取り調べを受ける際の注意事項
取り調べを受ける際は、以下のことに注意してください。
- 記憶に従って正直に話す
- 誘導尋問には乗らない
- 供述調書の内容をよく確認する
- 誤解がある場合はサイン・押印をしない
次に、取り調べを受ける際の注意事項について解説します。
記憶に従って正直に話す
取り調べを受ける際は、記憶に従って正直に話しをしましょう。「嘘をついてはいけない」という法律はないものの、記憶に従って正直に話しをしたほうが良いです。
たとえば、被疑者が実際に事件を起こした事実があるにも関わらず、「やっていない」と言っても罪には問われません。しかし、その他証拠をもとにあなたが罪を犯したことが証明された場合、否認している事実によって「反省していない」と見なされる恐れがあります。
結果的に厳しい判決が言い渡される可能性が高まるでしょう。さらに、否認事件の場合は、証拠隠滅や逃亡の恐れがあると判断されやすく、結果的に逮捕や勾留、保釈請求を認めないと言ったことになり得ます。
身柄拘束が長期化することになるため、取り調べ時は記憶に従って正直に話しをしたほうが良いでしょう。
誘導尋問には乗らない
警察や検察は、いわゆる「取り調べのプロ」です。一方で、被疑者等の取り調べを受ける人は、これまでに取り調べを受けた経験はゼロに近いでしょう。
そのため、プロが自分たちの欲しい証言を取るために誘導尋問のような質問の仕方をする場合があります。誘導尋問に乗った結果、自分にとって不利な証言が供述調書として作成されてしまう恐れもあります。
上記のことから、話の流れには乗らずにひとつひとつどのように返答をすべきかを考えるべきでしょう。また、供述調書に書かれた内容が、自分の話した内容と齟齬がある場合は、必ず訂正を求めてください。
良くも悪くも供述調書は証拠として扱われるため、誘導尋問には乗らず、自分の意思に反して調書が作成されないようにくれぐれも注意してください。
供述調書の内容をよく確認する
取り調べが終了した後は、供述調書を読み上げます。読み上げの際、内容に誤りがないかどうか、ニュアンスの違いによって誤解を与えないか、についてしっかり確認しておきましょう。
何度もお伝えしている通り、供述調書は良くも悪くも「証拠」として扱われてしまいます。書かれている内容ひとつ、ニュアンスの違いひとつで裁判官等に与える印象は大きく変わります。結果的に、判決等に影響を与える可能性もあるため注意しましょう。
誤解がある場合はサイン・押印をしない
取り調べ終了時、供述調書の内容を読み上げます。その際、少しでも誤解やニュアンスの違いがある場合は、その旨を伝えて訂正を求めましょう。
証拠として扱われてしまう以上、印象ひとつで判決等に大きな影響を与えます。そのため、「これで今日の取調べは終わる」などと考え、供述調書をよく確認せずにサイン・押印をするのは避けてください。
面倒くさがらずにひとつひとつ確認し、誤りがある場合は必ず訂正を求めてください。
取り調べで何を聞かれるのか?についてよくある質問
取り調べで何を聞かれるのか?についてよくある質問を紹介します。
Q.取り調べの対象になった場合、逮捕されますか?
A.取り調べの対象になったからといって、逮捕されるとは限りません。
そもそも、取り調べの対象となる人は、罪を犯した疑いのある人と事件について知っている可能性のある人です。前者である場合は、逮捕の可能性があります。後者の場合、あなたが罪を犯したわけではない限り、逮捕されることはありません。
また、罪を犯した事実があっても、必ずしも逮捕されるとは限りません。逃亡の恐れや証拠隠滅の恐れ、その他逮捕すべき理由がある場合に限って逮捕されます。
ただし、在宅事件であっても逮捕すべき理由がある場合は、その後に逮捕される可能性もあるため注意しなければいけません。また、初めは任意聴取であっても、容疑が固まり次第逮捕となることもあります。
取り調べを受けたからといって、必ずしも逮捕されることはないため、その点は安心してください。不安がある場合は、あらかじめ弁護士へ相談をしておくことも検討しましょう。
Q.取り調べを拒否することはできますか?
A.任意であれば拒否することができます。
任意聴取の場合は、拒否しても良いです。しかし、逮捕された場合は強制聴取となるため、強制的に取り調べが行われます。ただし、取り調べ自体は拒否できなくても黙秘権を行使しても良いです。
なお、被疑者として任意聴取の依頼があるにも関わらず、拒否していると逮捕される可能性があるため注意してください。特別な事情がない限りは、素直に任意聴取へ応じたほうが良いでしょう。
Q.取り調べの内容を録音しても良いですか?
A.録音しても罪には問われませんが、やめるように言われます。
取り調べ時に録音をしていたとしても、何らかの罪に問われることはありません。しかし、録音がバレた場合は、録音をやめるように言われます。もし、録音をやめるように言われても録音を続けた場合は、事情聴取を継続できなくなるでしょう。
なお、逮捕された被疑者の場合は、そもそも録音機器を取り調べ室内に持ち込むことができません。よって、物理的に録音が不可能であることを覚えておきましょう。
Q.取り調べで嘘をつくとどうなりますか?
A.とくに何もありません。
取り調べで嘘をついていても、基本的に何らかの罪に問われることはありません。たとえば、実際は罪を犯しているにも関わらず、「やっていません」と言っても罪には問われません。
ただし、虚偽の告訴をした場合は虚偽告訴罪という犯罪が成立します。たとえば、被害者であるあなたが、実際の犯人を知っているにも関わらず、まったく関係のない人を犯人であると報告し、告訴した場合は虚偽告訴罪が成立します。
嘘を付くこと自体に違法性はないものの、虚偽の申告は避けたほうが良いでしょう。
Q.取り調べ中のトイレや食事はどうすれば良いですか?
A.決まった時間に食事が与えられます。トイレは申告すれば行かせてもらえます。
取り調べは、1日8時間を超えない範囲で行われます。この間に食事の時間が来た場合は、食事を摂らせてもらえます。1時間程度の休憩時間を挟むことが一般的であるため、その間に食事を済ませるものと思っておきましょう。
食事は、身柄拘束されている被疑者の場合は、弁当等の食事が用意されています。在宅事件の場合は、実費で弁当等を購入しなければいけません。突然のことでお金を持っていない場合は、警察官がお金を貸してくれることもあります。
トイレに行きたい場合は、取り調べを行っている警察等に「トイレに行きたい」と伝えれば、取り調べを中断して行かせてもらえます。
まとめ
今回は、取り調べにおいて何を聞かれるのか?について解説しました。
取り調べで聞かれる内容は、あなたの生い立ちや事件に関することです。聞いた内容はすべて供述調書としてまとめ、証拠として扱われます。
今たさまざまなない解説した内容を踏まえ、少しでも取り調べに不安を感じているのであれば、弁護士への相談も検討されてみてはいかがでしょうか。