共謀罪とは?成立要件、反対されている理由についても詳しく解説

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共謀罪は、2人以上の者が犯罪について話し合い、合意した場合に成立する犯罪です。本来は、組織的犯罪集団を対象としているものの、解釈次第では一般人をも対象となる可能性があります。

この記事では、共謀罪とは何か?どういった場合に成立するのか?について詳しく解説しています。共謀罪について知りたい人は、本記事を参考にしてください。

【成立要件】共謀罪とは

共謀罪とは、2人以上が犯罪について話し合い、合意することによって成立する犯罪です。通常、犯罪は計画して実行して初めて成立します。たとえば、「〇〇を殺害する」と計画しても、計画した段階では殺人罪は成立しません。

「〇〇を殺害する」と計画して実行して初めて殺人罪や殺人未遂罪、殺人予備罪などの犯罪が成立します。しかし、共謀罪は「〇〇しよう」と考え、2人以上で計画した場合に成立する恐れのある犯罪なのです。

まずは、共謀罪とは何か?どのような場合に成立するのか?について詳しく解説します。

「2人以上が犯罪を行うことを話し合うこと」によって成立

共謀罪は、2人以上が犯罪について話し合うことによって成立する犯罪です。ただし、すべての人が対象となるわけではありません。共謀罪は、正式には「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案により新設されることとなる組織的な犯罪の共謀罪に関するもの」です。

つまり、共謀罪が成立するケースは、あくまでも組織的な犯罪集団が2人以上で犯罪について計画し、合意した場合に成立する犯罪なのです。

組織的犯罪集団とは、主に以下のような集団を指します。

  • テロ集団
  • 暴力団
  • 薬物密売組織

つまり、犯罪を行うことを目的として集団で活動している団体を指します。そのため、個人が2人以上で犯罪を行うことを話し合っていたとしても、共謀罪は成立しないと考えられます。

共謀罪は、あくまでもテロ行為等を抑制する目的で成立した犯罪であるため、個人にまで適用は及ばないと考えて良いでしょう。

たとえば、組織的犯罪集団と何ら関与のない2人以上の人が、何らかの犯罪行為を行おうと計画していても実行しなければ罪に問われることはありません。一方で、組織的犯罪集団が、たとえばテロ行為等を計画していた場合は、共謀罪に問われる可能性があります。

ただし、必ずしも一般人に関係のない法律であるとも言い切れません。考え方、捉え方次第では、一般人にも影響が及ぶのではないか?と懸念されています。幅広く解釈できるとの見方もあるため、かならずしも「一般人には関係ないから大丈夫」とは思わないほうが良いでしょう。

共謀罪に問われた場合の法定刑は、主となる犯罪の法定刑によって変わります。たとえば、死刑・10年を超える懲役・禁錮刑の場合は5年以下の懲役です。4年〜10年以下の懲役・禁錮刑については、2年以下の懲役です。

共謀罪は「合意」のみで成立することに懸念されている

共謀罪は「合意」した場合に成立します。そもそも前提として「2人以上で話し合うこと」が要件です。そのため、たとえば2人のうち1人が計画を提案したとしても、もう一方が計画に合意しなければ共謀罪は成立しません。

2人以上が合意して実際に計画をした時点で共謀罪が成立するものです。たとえば、組織的犯罪集団に属するAさんがBさんに対してテロ行為の計画を話したとしましょう。この時点では、共謀罪は成立しません。

AさんとBさんがテロ行為について合意し、実際に計画について具体的に話し合っていた場合に成立すると考えておけば良いです。

つまり、Aさんが心情の範囲内で「〇〇に対してテロ行為を行おう」と考え、心の中である程度計画を立てていたとしても罪には問われないということです。そもそも、心情(思想・良心)の自由は憲法によって保障されているものであるため、侵害されるものではありません。

共謀罪の成立要件

共謀罪の成立要件は以下のとおりです。

  • 2人以上であること
  • 犯罪を行うことを話し合うこと
  • 計画に基づき実行準備行為が行われていること
  • 組織的犯罪集団であることが前提

共謀罪の成立要件について詳しく解説します。

要件1.2人以上であること

共謀罪が成立するためには、前提として「2人以上であること」が条件です。先ほども紹介したとおり、憲法によって思想・良心の自由が保障されています。

思想・良心の自由とは、心の中であれば何を思っていても良いことを保障していることです。たとえば「〇〇のことが許せないから殺してやる」と思っても、罪に問われることはないというものです。

ただ、相手に対して「殺す」などと発言してしまえば脅迫罪等が成立してしまうため注意しなければいけません。

そして、共謀罪は2人以上であることから、実際に口に出していることが前提となります。そのため、共謀罪としての1つ目の要件が満たされることとなります。1人であれば、心の中で何を思っていても、計画をしていても罪に問われることはありません。

要件2.犯罪を行うことを話し合うこと

犯罪を行うことを話し合っていることが共謀罪の要件です。2人以上で何かについて話し合うことは、日常生活であれば当然のことです。そのため、大前提として「犯罪を行うことを話し合っていること」が要件となります。

たとえば、テロ行為は犯罪行為であり、この行為について2人以上で話し合った場合は、共謀罪が成立する可能性があります。

これまでの法律では、実行があって初めて犯罪として成立していました。たとえば、「人を殺そう」と企てて、実際に殺人に使用する道具等を準備した場合に初めて処罰できます。

とはいえ、たとえば「殺人に購入した包丁を購入した」というケースであっても、他の人から見れば、「料理をするために包丁を購入した」というふうにしか見えません。そのため、「包丁を購入した」という事実だけで処罰することはとても難しいです。

しかし、共謀罪は「犯罪について話し合っただけで」逮捕される可能性があるのです。たとえばAが「〇〇(犯罪を行おう)」と言い、Bが「よし、やろう!」といった時点で共謀罪が成立してしまうのです。

とはいえ、人が話し合っている内容を盗聴したり、話していた内容を証明することはとても難しいです。そのため、共謀罪の成立によって危険な団体・危険な人物といったレッテルを貼られ、監視されるのではないか?とも言われています。

場合によっては、個人や団体が行うメールのやり取りや電話の内容を盗聴されるケースがあるのではないか?とも言われており、共謀罪は世論から反対されています。実際、「犯罪の計画を話し合っただけで成立する」となれば、監視社会になる可能性があるかもしれません。

要件3.計画に基づき実行準備行為が行われること

共謀罪が成立するためには、計画に基づいて実行準備等が行われていることが要件です。たとえば、テロ行為を行おうとしている場合は、事前に下見をしりテロに使用する材料を購入したりしている必要があります。

要件4.組織的犯罪集団であることが前提

共謀罪は、前提として組織的犯罪集団であることが要件です。たとえば、テロ集団や暴力団等が該当します。ただし、解釈の仕方次第では、個人にも及ぶのではないか?と言われています。

なお、法務省では以下のとおり回答されています。

Q3 どのような行為が,組織的な犯罪の共謀罪に当たるのですか。一般国民にとって危険なものではないですか。
「組織的な犯罪の共謀罪」には,以下のような厳格な要件が付され,例えば,暴力団による組織的な殺傷事犯,悪徳商法のような組織的詐欺事犯,暴力団の縄張り獲得のための暴力事犯の共謀等,組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の共謀行為に限り処罰することとされていますので,国民の一般的な社会生活上の行為が本罪に当たることはあり得ません。
すなわち,新設する「組織的な犯罪の共謀罪」では,第一に,対象犯罪が,死刑,無期又は長期4年以上の懲役又は禁錮に当たる重大な犯罪に限定されています(したがって,例えば,殺人罪,強盗罪,監禁罪等の共謀は対象になりますが,暴行罪,脅迫罪等の共謀では,本罪は成立しません)。
第二に,(1)団体の活動として犯罪実行のための組織により行うことを共謀した場合,又は(2)団体の不正権益の獲得・維持・拡大の目的で行うことを共謀した場合に限り処罰するという厳格な組織犯罪の要件(注)が課されています(したがって,例えば,団体の活動や縄張りとは無関係に,個人的に同僚や友人と犯罪実行を合意しても,本罪は成立しません)。
第三に,処罰される「共謀」は,特定の犯罪が実行される危険性のある合意が成立した場合を意味しています(したがって,単に漠然とした相談や居酒屋で意気投合した程度では,本罪は成立しません)。
(注)組織的犯罪処罰法における組織的な殺人等の加重処罰の場合と同じ要件であり,実際の組織的犯罪処罰法の組織的な殺人等の適用事例も,(1)暴力団構成員等による組織的な殺傷事犯,賭博事犯,(2)悪徳商法のような組織的詐欺事犯及び(3)暴力団の縄張り獲得,維持のための業務妨害,恐喝事犯等に限られています

引用元:法務省

つまり、組織的犯罪集団のみを対象としているものであり、一個人が共謀罪に問われることはあり得ないとされています。そのため、一個人が共謀罪に怯える心配は不要でしょう。

共謀罪成立の目的

共謀罪成立の目的は主に以下のとおりです。

  • 組織的犯罪の抑制
  • テロ行為の抑制

次に、共謀罪成立の目的について詳しく解説します。

組織的犯罪の抑制

共謀罪の成立によって、組織的犯罪の抑制が見込めます。そもそも、共謀罪は、テロ集団や暴力団などの組織的犯罪集団の組織的犯罪を抑制する目的で成立した罪状です。

共謀罪は「2人以上の人が犯罪について話し合った」だけで成立する犯罪です。つまり、未然に組織的な犯罪を抑制できるか可能性があります。

これまでの法律では、実被害が発生して初めて処罰できるものでした。たとえば、組織的な殺人事件であれば、計画段階で処罰することはできず、被害が発生して初めて捜査を開始して処罰することができます。

しかし、実被害が発生したあとの場合、相手が死亡していたり何らかの被害を受けているため、タイミングとしてはとても遅いです。しかし、共謀罪の成立によって、「犯罪について話し合った時点」で成立するため、抑制効果としては大きいものになります。

テロ行為の抑制

共謀罪は、テロ行為の抑制にも期待が持てます。本記事で何度もお伝えしているとおり「犯罪について話し合っただけ」で成立する犯罪です。そのため、テロと行為等が実行される前に抑制できる可能性が高まります。

また、平成12年に国連総会にて「国際組織犯罪防止条約」が採択されました。この条約は、国際的な組織犯罪を防止することを目的としています。

国際組織犯罪防止条約は国際的な条約であり、日本も締結しています。しかし、国際組織犯罪防止条約への加入は、本国にて共謀罪の犯罪かが条件となっていました。このことにより、日本国内でも共謀罪が成立・施行された流れとなっています。

共謀罪の罰則規定

共謀罪の罰則規定は、各種犯罪の規定によって異なります。そもそも、共謀罪が適用される犯罪は「死刑、無期懲役または4年以上の懲役または禁錮に当たる重大な犯罪」に限定されています。

そのため、上記以下の犯罪の場合はそもそも共謀罪が成立しません。次に、共謀罪の罰則規定について詳しく解説します。

各種犯罪の規定による

共謀罪の罰則規定は、成立する犯罪の種類によって変わります。そもそも、共謀罪は「死刑、無期懲役または4年以上の懲役または禁錮に当たる重大な犯罪」に限定されています。

そして、以下のとおりです。

犯罪の種類 共謀罪の場合
死刑・無期懲役・10年超の懲役または禁錮 年以下の懲役または禁錮
4年〜10年以下の懲役または禁錮 2年以下の懲役または禁錮

たとえば、殺人罪の法定刑は「死刑または無期もしくは5年以上の有期懲役」です。そのため、殺人に関する共謀罪が成立した場合は、5年以下の懲役または禁錮刑に処されます。

そもそも4年以下の犯罪については共謀罪が成立しません。たとえば、暴行罪(法定刑:2年以下の懲役、30万円以下の罰金、拘留、科料)や脅迫罪(法定刑:2年以下の懲役または30万円以下の罰金)の場合は、犯罪を行おうと話し合っても共謀罪が成立しないのです。

対象罪別罰則規定

共謀罪の対象となる犯罪は「死刑、無期懲役または4年以上の懲役または禁錮に当たる重大な犯罪」です。そのため、上記に該当しない犯罪の場合は、話し合ったり合意があったりしても、共謀罪としては成立しません。

とはいえ、共謀罪の対象となる犯罪は数百種類あるため、すべての犯罪について解説をするのはとても難しいです。前提として「死刑、無期懲役または4年以上の懲役または禁錮に当たる重大な犯罪」であるため、それぞれの犯罪の法定刑を把握したうえで、共謀罪が成立するかどうかを把握する必要があります。

そのうえで、法定刑が10年超の懲役・禁錮を超える犯罪なのか、以下の犯罪なのかによって共謀罪に問われた場合の罰則は異なります。なお、共謀罪は併合罪ではありません。

つまり、2つ以上の罪に問われることはありません。たとえば、殺人について話し合いを行なって、共謀罪の要件を満たしたとしましょう。その後、実際に殺人を犯した場合、殺人罪に問われることはあっても、共謀罪に問われることはありません。

一方で、共謀罪の成立要件を満たしたものの、実際に殺人罪を犯していない場合は、共謀罪に問われることはあっても殺人罪に問われることはありません。

共謀罪が反対されている理由

共謀罪はさまざまな理由から、反対意見が多いです。その主な理由としては、以下のとおりです。

  • 刑法の根底を覆すものとして懸念されている
  • 人権侵害の恐れ

次に、共謀罪が反対されている理由について詳しく解説します。

刑法の根底を覆すものとして懸念されている

共謀罪は、刑法の根底を覆すのではないか?と、懸念されています。そもそも、刑法犯は思想によって処罰することはできません。あくまでも、思想を実行に移した時点で犯罪として成立します。

たとえば、「あいつを殺したいくらい憎い」と思っていたとしても、罪に問われることはありません。仮に「絶対に殺してやる」と、第三者に発言していたとしても罪に問われることはありません。

しかし、共謀罪であれば罪に問われる恐れがあるのです。そのため、刑法の根源を覆す恐れがあるとして懸念されています。

人権侵害の恐れ

共謀罪は、人権侵害が懸念されています。なぜなら、解釈の仕方によっては、「心情によっても処罰できる」とも考えられるためです。

また、メールや電話等の盗聴することすらも認められているとも解釈できます。さまざまな理由によって、人権侵害が発生するのではないか?と思われ、懸念されているのです。

共謀罪に関するよくある質問

共謀罪に関するよくある質問を紹介します。

Q.共謀罪はいつ施行されましたか?

A.平成29年(2017年)7月11日に施行されています。

共謀罪は、平成29年7月11日に施行された法律です。これまで、日弁連等は人権侵害の恐れがあるなどとして、強く反対運動をしてきました。また、世論の反対意見も多かったものの、施行されてしまいました。

Q.テロ等準備罪との違いは何ですか?

A.テロ等準備罪と共謀罪は同じとして話されることもありますが、まったく異なる犯罪です。

テロ等準備罪と共謀罪は、同じ犯罪ないし似た犯罪として考えられることが多いです。しかし、まったく異なる犯罪である点に注意が必要です。

まず、テロ等準備罪は組織的犯罪集団などの団体であると明確に対象が定められています。一方で、共謀罪は明確な対象が定められていません。そのため、共謀罪は一般人にも及ぶのではないか?と懸念されている一面があります。

他にも、犯罪の種類の違いもあります。共謀罪は「死刑、無期懲役または4年以上の懲役または禁錮に当たる重大な犯罪」とされており、その種類は676です。一方で、テロ等準備罪は、組織が限定されているうえに対象となる犯罪も限定的です。

また、明確に「犯罪を計画し、準備行為を行っていること」が条件となっており、「テロ等準備罪<共謀罪」のほうが成立しやすいです。

Q.話し合っただけで共謀罪は成立するのですか?

A.話し合っただけで共謀罪は成立するといった解釈の仕方もあります。

法律は非常に曖昧な部分があり、解釈の仕方次第ではさまざまな範囲にわたって処罰される可能性があります。共謀罪の場合は、「話し合っただけで成立する」と解釈することもできるため、人権侵害等の恐れがあると言われています。

Q.海外でも共謀罪のような罪状はあるのですか?

A.ある国は多くあります。

そもそも、国際組織犯罪防止条約へ加入するためには、共謀罪のような罪状を成立させることが条件です。そのため、海外でも似たような罪状があります。ただし、条文等に違いがあるため、日本とまったく同じということはないでしょう。

Q.共謀罪は一般人でも対象ですか?

A.一般人が対象となることはあり得ないとされています。

まず、共謀罪は前提として組織的犯罪集団が犯罪行為の計画等を立てた場合に成立するものである、と解釈されています。そのため、一般人が共謀罪に問われる可能性は低いでしょう。

また、法務省が公開しているQ&Aでも「国民の一般的な社会生活上の行為が本罪に当たることはあり得ません」とされています。このことからも、一般人には及ばないと考えておいて良いでしょう。ただし、解釈次第では一般人に及ぶとも解されるため、注意したほうが良いでしょう。

まとめ

今回は、共謀罪について解説しました。

共謀罪は、2人以上の者が犯罪について話し合って合意した場合に成立する犯罪です。一般の人には及ばないと解されているものの、解釈次第では一般人であっても処罰対象となる可能性があるため注意しなければいけません。

直ちに罪に問われる可能性は低いものの、本記事で解説した内容を踏まえ、今後の動向等について注視していきましょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

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