「弁護士からこまめに連絡が返ってこなくて不信感が募っている」
「弁護士の変更を検討しているが、委任契約の途中で弁護士を解任する方法やデメリットがわからない」
刑事事件に巻き込まれた場合、適切な防御活動をスピーディーに実施しなければ、不利な刑事処分を下されかねません。ですから、刑事訴追されたときには、少しでも有利な刑事処分を獲得するために、弁護士の協力が不可欠だと考えられます。
ところが、実際に弁護士に依頼をしてみると、嫌疑をかけられた犯罪事実についての弁護実績が少なく捜査機関への対応に頼りなさがあったり、依頼者側からの問い合わせに対するレスポンスが遅かったりなどのトラブルが生じることが少なくありません。そして、弁護士との間の信頼関係が崩れると、人生を左右しかねない刑事手続きを安心して進めることができなくなるでしょう。
そこで、この記事では、弁護士の変更を検討している人のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。
- 弁護士の変更方法・流れ
- 弁護士の変更を検討したほうがいいタイミング・出来事
- 弁護士を変更するときの注意事項
- 信頼できる弁護士を見つける方法
弁護士に不信感があると、刑事事件に関する些細な不安や疑問を解消できないままの状態がつづきかねません。当サイトでは、刑事事件を得意とする弁護士を多数掲載中なので、再委任やセカンドオピニオンの先としてご活用ください。
目次
弁護士の変更方法2つ
まずは、弁護士を変更する2つの方法について解説します。
現在契約中の法律事務所で別の弁護士への変更を申し出る
現在契約中の法律事務所に弁護士がひとりしか所属していない場合には不可能ですが、法律事務所に複数の弁護士が所属しているのなら、同じ法律事務所内の別の弁護士への変更を申し出る方法が考えられます。
同じ法律事務所内で弁護士を変更するメリットは以下のとおりです。
- 新しい弁護士を自分で探す手間・時間をかけずに済む
- 着手金や報酬金の負担を軽減できる可能性がある
- 業務の引き継ぎがスムーズにおこなわれる可能性がある
ただし、法律事務所によっては事務所内弁護士の変更を受け付けていない場合もあります。また、現在契約中の弁護士との間で生じたトラブルの内容次第では、法律事務所側から弁護士の変更を断られる可能性もゼロではありません。
事務所内の弁護士変更については各法律事務所の判断次第なので、可否や手続きの流れについて速やかに確認することをおすすめします。
現在契約中の法律事務所との間の委任契約を解除して別の弁護士を見つける
一般的な弁護士の変更方法が、現在契約中の弁護士・法律事務所との間の契約を解消したうえで、新しく別の弁護士との間で委任契約を締結するというものです。
新しい弁護士を自力で見つけて再契約をするメリットは以下のとおりです。
- 自分の希望・条件に合う信頼できる弁護士と契約できる
- 以前の弁護士との間で生じたトラブルやストレスをリセットできる
- 刑事事件の実績・経験豊富な弁護士の力を借りることで格段に有利な状況を作り出しやすくなる
ただし、捜査機関主導で刑事手続きは着々と進行するので、弁護士を変更するタイミングが遅れると、挽回不可能なほどに不利な状況に追い込まれかねません。新しい弁護士を探し始めてから実際に委任契約を締結するまでには一定の時間を要するため、現在契約中の弁護士に不信感が生まれて変更を検討しているのなら、できるだけ早いタイミングで別の法律事務所に相談する機会などを設けるべきでしょう。
弁護士の変更を検討するべき3つのタイミング
弁護士の変更を検討するべきタイミングを3つ紹介します。
弁護士との間で円滑なコミュニケーションを取れない場合
委任契約締結中の弁護士との間のコミュニケーションが円滑に進まないときには、弁護士の変更を検討するべきです。
たとえば、身内が逮捕されて留置場に身柄を押さえられている場合、家族からすると、留置場での被疑者の様子や今後の刑事手続きの展望は当然気になるはずです。このような状況で、担当弁護士に何度電話をかけても繋がらなかったり、メールのレスポンスが遅かったりすると、依頼者側の不安は一切解消されません。
また、弁護士と連絡が繋がる状況であったとしても、依頼者側からの質問に丁寧に回答してくれなかったり、わかりやすい言葉を選んで説明をしてくれなかったりすると、依頼者側の不満は募るばかりでしょう。
そもそも、受任者である弁護士は、委任者である依頼者側からの請求があるときには、いつでも委任事務の処理状況について報告をしなければいけません(民法第645条)。円滑かつ丁寧なコミュニケーションをとることができない弁護士はある意味債務不履行状態に陥っていると考えられますし、このような弁護士との委任契約を継続したところで、刑事事件で満足のいく結果は得にくいといえるでしょう。
弁護士の業務内容に不満がある場合
弁護士の業務内容に不満や問題点があるときにも、弁護士の変更を検討してください。
たとえば、刑事手続きで有利な処分を引き出すには「早期に被害者との間で示談を成立させること」が重要な課題のひとつですが、弁護士がなかなか被害者に連絡をとってくれなかったり、被害者を怒らせて示談が決裂してしまったりすると、刑事手続きにおいて不利な状況を強いられます。
また、刑事事件に慣れていない弁護士に弁護を任せてしまうと、捜査機関の違法な取り調べに対抗できず、違法と扱われるかどうか微妙なラインの無理な長時間取り調べを強要されたり、供述方針が固まらずに曖昧な供述をしてしまいかねません。
弁護士によって専門分野や刑事事件の取り扱い実績は異なるので、現在依頼中の弁護士の力量に不安を感じたときには、できるだけ早いタイミングで新しい弁護士に切り替えることを強くおすすめします。
弁護士費用に不満がある場合
刑事事件の弁護士費用は法律事務所によって異なります。
たとえば、着手金を無料にしている代わりに報酬金の設定が高い法律事務所、着手金と報酬金を別々に設定している法律事務所、初回の法律相談を無料にしている法律事務所など、さまざまです。
弁護士と契約したあとに、「実は弁護士費用が高すぎるのではないか」「最初に聞いていた費用よりも高い金額を請求されそうで不安だ」などと感じたときには、別の法律事務所に費用面を含めて相談をしたうえで、弁護士の変更を検討するべきでしょう。
弁護士を変更する前に実施するべきこと
現在依頼中の弁護士に何かしらの不安・疑問を抱いたとしても、いきなり変更手続きに進むのはおすすめできません。
ここでは、弁護士を変更する前に検討するべきことや準備事項について解説します。
契約中の弁護士に対して直接不満内容を伝える
まず、いきなり現在契約関係にある弁護士に契約解除・変更を申し出るのではなく、不満点や疑問点を直接伝えて改善を求めましょう。
弁護士も依頼者も人間なので、最初から完全に相性が合うとは限りません。また、弁護士の業務内容について依頼者が勘違いをしている可能性もあります。
依頼者が不満・疑問に感じていると伝われば、弁護士側から何かしらの回答があったり、改善策を講じてもらえたりする可能性があります。話し合いでお互いのミスマッチがなくなれば、建設的な弁護活動を期待できるでしょう。
別の法律事務所のセカンドオピニオンを参考にする
法律に詳しくない素人では、現在契約中の弁護士の対応がおかしいかを判断できません。ですから、現在契約中の弁護士の対応に不満・疑問がある場合には、別の法律事務所に相談してみるのがおすすめです。
弁護士の法律相談では、実際に契約を締結しなくても、依頼者が現在抱えている法律問題について一定のアドバイスを提供してもらえますし、場合によっては、現在契約中の弁護士の対応が適切なものかについて意見をもらえるでしょう。さらに、セカンドオピニオンを受けた弁護士を信頼できると感じたときには、そのまま弁護士の変更について具体的な話を聞くことも可能です。
弁護士会に相談する
弁護士との間でトラブルが生じたときには、その弁護士が所属している弁護士会に相談するのも選択肢のひとつです。
たとえば、明確なセクシャルハラスメントがあったような事案から、弁護士の対応に関する些細な疑問にまで丁寧に対応してくれます。
弁護士会が設置している市民窓口の連絡先については、「全国の弁護士会・弁護士会連合会|日本弁護士連合会HP」からご確認ください。
次に契約する弁護士の目星をつける
実際に弁護士の変更を検討する段階になったとしても、いきなり弁護士に委任契約解除を伝えるべきではありません。
なぜなら、先に現在の委任契約が切れてしまうと、刑事弁護を担当する弁護士がいなくなってしまうからです。
ですから、弁護士を変更するときには、先に次に刑事弁護を任せたい弁護士を見つけて変更の打診をしてからにしましょう。
弁護士を変更するときの流れ
弁護士を変更するときの一般的な流れについて解説します。
次に依頼する弁護士に事情を伝える
弁護士の変更を考えているなら、まずは次に依頼する弁護士を見つけてください。
そして、次に依頼を考えている弁護士と面談機会を設けたうえで、ここまでの経緯や現在契約中の弁護士との間で生じているトラブルの内容を伝えて、引き継いで受任してもらえるかなどについて確認をしましょう。
弁護士によっては、すでに別の弁護士が対応している案件に途中から参画することを嫌う場合もあります。次に受任してもらえる確証を得られていない段階で今の弁護士との委任契約を解除するのはハイリスクです。
現在契約中の弁護士に解任の意思を伝える
次に契約する弁護士が見つかったあとは、現在契約中の弁護士との間で締結した委任契約を解除します。
委任契約は各当事者がいつでも自由に解除できるので(民法第651条第1項)、弁護士の同意がなくても解任できます。
委任契約を解除する方法や費用の清算方法は法律事務所によって異なります。電話やメールだけで一方的に解任の意思を伝えるだけでは足りないことが多いので、円滑に解除手続きを済ませましょう。
新しい弁護士との間で委任契約を締結して事件処理について引き継ぎをしてもらう
弁護士を解任したあとは、刑事手続きの処理に影響が出ないうちに、できるだけ早いタイミングで新しい弁護士との間で委任契約を締結してください。
そして、弁護士間で業務に関する引き継ぎをおこなってもらいましょう。
刑事手続きの場合には担当弁護士が変更したことを捜査機関や裁判所に通告する必要がありますが、これらの業務はすべて弁護士が対応してくれるので、依頼者側が直接捜査機関・裁判所とやり取りをする必要はありません。
弁護士を変更するときの注意事項
弁護士を変更するときの注意事項やデメリットについて解説します。
着手金は返金されない可能性が高い
弁護士を解任する場合には、費用面の清算をする必要があります。
まず、委任契約を途中で解約するとしても、解任する弁護士から支払い済みの着手金は返金されないのが一般的です。というのも、着手金は弁護士に業務を依頼するときに支払う契約料のようなものだからです。
ただし、弁護士側の判断で、着手金の一部が返金される可能性もゼロではありません。途中解約のときの着手金の取り扱いについては委任契約書に記載されているはずなので、お手元の契約書の内容をご確認ください。
業務の進捗状況次第では一定の報酬金を請求される可能性がある
着手金以外にも費用面で注意するべきポイントがもうひとつあります。
弁護士を途中で解約する場合には、弁護士がおこなった業務内容に応じて報酬金の支払い義務が生じる場合があります。
たとえば、示談交渉のために被害者側と何回か連絡を取り合って交渉をしているケース、逮捕・勾留段階の接見を複数回実施したケース、刑事裁判に向けて書面などを準備していたケースなど、弁護士業務の進捗状況に応じて、契約書所定の着手金を支払わなければいけません。
「途中で委任契約を解除して最後まで弁護活動を展開してもらうわけではないのだから、”報酬金”は発生しないのではないか」と思われるかもしれませんが、これは間違いです。委任契約は”結果債務”ではなく”手段債務”なので、依頼を受けた内容がすべて完了しなくても、業務の段階に応じて報酬金は発生します。
途中解約の場合の報酬金の取り扱いについても契約書に記載されているはずなので、お手元の契約書をご確認ください。なお、契約書に途中解約の際の報酬金の取り扱いに関する規定が定められていない場合や、弁護士の業務が不十分であるのに過大な報酬金を請求された場合には、弁護士会に相談をするのも選択肢のひとつです。
解約金・違約金を請求される場合がある
一般論として、委任契約を解除する時期が相手方にとって不利な時期である場合、委任契約を解除した者は相手方に生じた損害を賠償しなければいけません(民法第651条第2項第1号)。
また、委任契約書において、解約時期や解約方法との関係で解約金・違約金の定めがある場合には、弁護士を解任することで解約金・違約金の支払い義務が発生する可能性があります。
なお、実務上、弁護士との間で締結する委任契約について解約金・違約金に関する特別条項が設けられているケースは稀です。
新しく弁護士を選任すると着手金・報酬金を支払う必要がある
「現在契約中の弁護士に対して一定の弁護士費用を支払っているのだから、変更後の弁護士費用は割り引かれるのではないか?」と思われるかもしれませんが、これは間違いです。
弁護士を選任するには、別途着手金・報酬金などの弁護士費用を支払う必要があります。
つまり、解任した弁護士からは着手金が返金されず、また、業務遂行分の報酬金を支払わなければいけないことも含めて考えると、弁護士の変更によって依頼者側の経済的負担は相当重くなるということです。
弁護士費用を負担する経済的な余裕がない状況なら、着手金無料、弁護士費用の後払い・分割払いなどに臨機応変に対応してくれる法律事務所を選ぶのがおすすめです。
弁護士を解任する前に別の弁護士と委任契約を締結することはできない
ひとつの事件に複数の弁護士が就任するケースは少なくありません。
ただし、複数の弁護士が着任して刑事弁護をおこなうのは、各弁護士が複数人で弁護活動をおこなうことに同意をしている場合に限られます。
ですから、刑事事件について新しい弁護士への依頼を考えているのなら、先に現在契約中の弁護士との間で契約解除手続きを済ませて、委任契約の二重状態が発生しないようにしてください。新しく刑事弁護を依頼する弁護士側からも、先に解任手続きを済ませるように説明があるでしょう。
弁護士を解任するタイミングはいつでも良い
刑事事件の取り扱いについて弁護士に不信感などを抱いた場合、刑事手続きがどの段階であったとしても弁護士を解任することは可能です。示談交渉の途中、逮捕・勾留段階、刑事裁判の途中であったとしても、新しい弁護士に切り替えることができます。
ただし、弁護士を解任したからといって、それまでおこなわれた弁護活動がゼロになるわけではありません。たとえば、新しい弁護士を選任しても、すでに成立した示談契約の内容を覆すことはできません(被害者側が示談内容の変更に合意すれば可能です)。また、捜査機関に対しておこなった供述内容もなかったことにはできないので、新しい弁護士は、自分が選任するまでにおこなった防御活動を前提に弁護活動を展開する必要があります。
弁護士を変更しても事態が好転するとは限らない
事件の状況次第では、弁護士を変更しても事態が好転するとは限りません。
たとえば、「弁護士にどれだけお願いをしても警察が捜査をやめてくれない、これは弁護士の力量不足だからだ」などと依頼者が感じることもあるでしょう。しかし、被疑者が刑事事件を起こしたことを示す客観的な証拠が揃っている状況なら、弁護士ができることは限られています。起訴猶予処分や執行猶予付き判決などの軽い刑事処分・判決獲得を目指して情状証拠などを用意することはできても、無罪にすることはできません。
ですから、弁護士の変更を検討しているときには、セカンドオピニオンなどのタイミングを利用して、現在契約中の弁護士がしっかりと仕事をしてくれているのか、弁護士を変更すれば事態が好転する可能性があるのかを事前に確認するのが重要だと考えられます。弁護士を変更しても結果が変わらない可能性が高いのなら、わざわざ労力・費用・時間をかけて弁護士を変える必要はないといえるでしょう。
変更の心配がない優秀な刑事事件に強い弁護士を選ぶ方法
刑事手続きで少しでも被疑者・被告人側にとって有利な状況を作り出すには、捜査段階から裁判に至るまで、刑事事件に強い弁護士のフルサポートが不可欠です。
ここでは、変更の必要性に迫られずに済む優秀な弁護士を選ぶ方法について解説します。
弁護士事務所のHPをチェックする
刑事事件について依頼する弁護士を選ぶときには、必ず法律事務所のホームページを確認してください。
法律事務所のホームページには、法律事務所が力を入れている案件の特徴、各弁護士の経歴、過去の解決実績などが掲載されているので、ご自身が依頼する案件と重複するかをチェックしましょう。
弁護士事務所の口コミを参考にする
Googleの口コミや匿名掲示板・SNSなどで実際に依頼をした人の口コミ・レビューを参考にするのも弁護士選びに役立ちます。
ただし、口コミやネット上の評判は書き込んだ人の主観に基づくものなので、良い意見も悪い意見もあくまでも参考程度に捉えましょう。
刑事事件に強い弁護士を紹介している総合リーガルサイトを活用する
自分だけの力で刑事事件に強い弁護士を選ぶ自信がないのなら、総合リーガルサイトを有効活用するのがおすすめです。
たとえば、刑事事件相談弁護士ほっとラインでは、法律事務所の所在地から弁護士を検索可能なので、アクセスのいい法律事務所を簡単に見つけられます。また、各法律事務所の紹介ページには初回相談無料・土日対応可・夜間対応可・示談交渉対応・逮捕前相談可などの詳細条件も掲載されているので、細かい条件から弁護士を絞り込むこともできます。
委任契約を締結する前に実際に弁護士と面談してみる
委任契約を締結する前に、最低でも1回は弁護士と直接顔を合わせてコミュニケーションをとることを強くおすすめします。
というのも、実際に直接会ってみなければ、弁護士の話し方や熱意、相性が合うかどうかはわからないからです。
弁護士と面談するときの費用面が心配な人は、初回相談無料サービスを用意している法律事務所を優先的に選ぶといいでしょう。
弁護士を変更するべきか迷ったときはすぐにセカンドオピニオンを頼ろう
刑事事件を任せている弁護士に不信感を抱いたときには、いきなり変更手続きを進めるのではなく、弁護士会に相談したり、他の法律事務所のセカンドオピニオンを参考にしたりしてください。
弁護士を変更する必要がある状況なのか、弁護士を変更することで刑事手続き上どのようなメリットが生じるのかなどについて冷静に判断できます。
刑事手続きの結果は今後の人生を左右するものです。弁護士に対する不信感を抱いている状況では安心して刑事弁護を任せることができないので、弁護士に対する不安・不満はできるだけ早いタイミングで解消しましょう。