出所後に住む場所がないと、刑事責任を果たしたにもかかわらず、社会復帰が難しくなります。
たとえば、仕事が見つからない、生活保護を受けるにも手続きが複雑になる、携帯電話も契約できないなど、さまざまなデメリットを強いられかねません。
そのため、出所後に身寄りがなく困っているのなら、早期に行政などの支援制度にアクセスしたり、元受刑者支援に力を入れている企業に繋がったりすることが重要だと考えられます。
そこで、この記事では、以下の事項についてわかりやすく解説します。
- 出所後に住む場所がなくて困る原因・理由
- 出所後に住む場所がないときの対処法
- 出所後に住む場所がなくて困る事態を予防するコツ
- 懲役や禁錮を避けるために弁護士に相談・依頼するメリット
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目次
出所後に住む場所がない3つの原因・理由
懲役刑や禁錮刑に処された場合には刑事施設への服役を強いられますが、刑期満了によって刑事責任を果たしたと扱われるので、出所後は本格的に社会復帰を目指すことになります。
それでは、なぜ刑事責任を完全に果たした状態なのに、出所後に住む場所がないという事態に陥るのでしょうか。
まずは、出所後に住む場所がない代表的な原因・理由3つについて解説します。
家族や親族からの援助を期待できない
受刑者の多くが社会復帰を目指すときに頼るのが家族や血縁関係です。
刑務所から出所したあと、家族や親族に住む場所を用意してもらったり同居を許可されたりすれば、生活の拠点が定まるので、社会復帰を目指しやすくなるでしょう。
しかし、家族が犯罪に手を染めて刑務所に収監される事態になった場合、家族や親族にも相当な迷惑がかかっていることが少なくありません。たとえば、時事件がテレビの報道番組やインターネットニュースなどで実名報道されると、家族や親族までバッシングを受けて、仕事や日常生活に支障が生じる可能性があります。また、配偶者が「受刑歴がある前科者と一緒に人生を歩むことはできない」と判断して離婚を選択すると、刑務所から出所した頃には帰る家がないという事態に追い込まれます。また、そもそも身寄りがない状態で刑務所に入れられると、出所後に誰も頼ることができず住む場所に困ります。
このように、受刑者にもっとも近い存在である家族や親族に見限られると、出所後に住む場所がなく社会復帰を目指すのが困難になるでしょう。
偏見や悪い噂、収入がないなどの理由で賃貸物件を契約できない
まず、受刑者の大半が刑務所から出所した時点で無職になっています。そのため、出所後に住む場所を確保するために不動産を借りようとしても、経済力がないと判断されて賃貸物件を契約しにくいのが実情です。特に、近年では賃貸物件の多くが家賃保証会社との契約を求めるようになっています。家賃保証会社付きの賃貸物件の入居審査は厳しいので、無職や収入事情が不安定だと入居を断られる可能性が高いです。
また、仮に収入面の問題をクリアしたとしても、刑務所に収監された経歴があることがバレると、家主から入居を断られる危険性があります。たとえば、事件がニュースで実名報道されるとインターネット上にその情報が残り続けるので、入居の申し込みをした時点で家主や不動産業者に前科者であることが発覚します。「犯罪者が入居するとまた事件を起こされるかもしれない」などと偏見を抱かれると、入居が難しくなるでしょう。
さらに、刑務所に収容される前から居住していた家があったとしても、近隣住民に事件を起こしたと知られてしまうと、悪い噂を立てられて引っ越しを余儀なくされかねません。
元犯罪者を支援する仕組みや制度を知らない
刑務所から出所して住む場所に困っている元受刑者の多くは、支援制度などに関する知識が乏しいのが実情です。
犯罪者の社会復帰を支える国の支援制度や民間のサポート体制は充実しているので、この記事で紹介している対処法などをご確認のうえ、利用しやすい団体や支援制度にアクセスしてください。
出所後に住む場所がないときに生じる4つのデメリット
出所後に身寄りがないなどの理由で住む場所がないときに生じるデメリット4つについて解説します。
生活の拠点がないので仕事が見つからない
住む場所がないと仕事が見つかりにくいのが実情です。
たとえば、身元とキャリアが明確な人と住む場所がない元受刑者が同じ求人案件に応募した場合、ほとんどの企業が前者の人を採用するでしょう。また、他の求職者と競合しないケースでも、そもそも住む場所がない求職者には何かしらの後ろめたいバックボーンがあるのではないかと不信感を抱かれるので、企業側から信用を得られずに不採用になる可能性が高いです。さらに、就職活動や転職活動で提出を求められる履歴書には賞罰欄が設けられており、賞罰欄には刑罰を受けた経歴を記載する必要があるので、受刑歴や前科を隠したまま就職活動・転職活動に挑むのは事実上不可能です。
以上の理由から、出所後に住む場所がないと正社員として収入を得るのは難しく、経済的な観点から社会復帰を目指すのは難しいといえるでしょう。
生活の拠点がないのでスマートフォンの契約も難しい
まず、刑務所に服役している間はスマートフォンなどの所持品は全て取り上げられるので使用できません。
また、受刑者の多くが収容期間中に携帯料金を滞納する状態に陥っており、出所する頃には、スマートフォンが強制解約されて”携帯ブラック”になったり、信用情報に傷がついりしています。
さらに、スマートフォンを新しく使うには携帯契約時に各キャリアで定められた必要書類を用意しなければいけませんが、キャリアによっては、定まった住所を有さない人物との携帯契約を拒否する場合があります。
このような事情から、出所後に住む場所がないと、自分名義の携帯電話を所持できず、仕事や日常生活に支障が生じかねないでしょう。
住む場所がないと生活保護を受給するまでのハードルが高くなる
出所後、貯金や仕事がないなどの状況に追い込まれる場合には、自立できるまでの期間、生活保護に頼るのも選択肢のひとつです。
ただし、生活保護を受給するには、お住まい地域を所管する福祉事務所で申請・審査手続きを済ませる必要があります。
ここで問題になるのが、生活保護受給申請者が住所不定のホームレス状態であるという点です。というのも、生活保護の審査にとおるには、申請者に定まった住所が必要だと考えられているからです。そこで、ホームレスなどの住所不定者が生活保護受給申請に通過するには、行政側から紹介される無料定額宿泊所に入所して住所を確定させたり、賃貸物件や仕事を探すサポートに真摯に対応したりしければいけません。
出所後に住む場所がないとはいえ、元受刑者にもさまざまな事情があるはずです。行政から指定された無料定額宿泊所などに入所できない事情があると、生活保護を頼った生活再建は難しいといえるでしょう。
住む場所がないまま追いやられると再犯リスクが高まる
生きていくには、お金や仕事が必要です。しかし、出所後に住む場所がないと、仕事や生活がいつまでも安定しないリスクに晒されます。
すると、仕事を得るために悪い交友関係に再び巻き込まれたり、生活費や食費を捻出するために犯罪に手を染めたりしかねません。
「出所後に住む場所がない状態がつづいて再犯に及ぶ」という負のスパイラルから抜け出すと社会復帰が本当に難しくなるので、出所後はできるだけ早いタイミングで住む場所を確保するなどして安定的な環境を作り上げるべきでしょう。
出所後に住む場所がないときの対処法
出所後に住む場所がないなどの状況に追い込まれたとしても、生きていく以上、少しでもいい状況を作り出すべきでしょう。
ここでは、刑事責任をしっかりと果たしたあと、社会復帰を目指すうえで検討するべき対処法や有効策などについて総合的に解説します。
家族や知人を頼る
出所後に住む場所がないときには、最初に頼りになる家族や親族、友人などがいるかを確認してください。
住む場所を提供してくれたり、仕事を紹介してくれたりする人間関係があれば、一定の労力・時間を要する行政の支援制度などを利用せずに、社会復帰を目指すことができるからです。
行政や民間の支援制度を頼る
出所後に住む場所がなくて困ったときには、行政や民間の各種支援制度を頼るのも選択肢のひとつです。
ここでは、住む場所に困っている服役経験者向けに用意された支援制度を紹介します。
更生保護施設
更生保護施設とは、犯罪や非行に及んで刑事施設や少年院に入所したあと、頼る人や帰る場所がなくて困っている人を一時的に保護し、再出発をサポートする目的で用意された支援施設のことです。全国に102ヵ所の更生保護施設があり、99の更生保護法人、社会福祉法人・NPO法人・一般社団法人1つずつがそれぞれ運営しています。多くの施設が成人男性を保護の対象にしていますが、女性・少年だけを保護対象にしている施設もあります。
更生保護施設の運営方針は各所によって異なりますが、どこでも宿泊場所や食事、入浴施設が提供されたうえで、入所者の状況に応じたサポートがおこなわれます。たとえば、高齢や障害が原因で自立が困難な人が円滑に福祉サービスにアクセスできるような支援、薬物依存で苦しむ人には回復プログラムの提供、就職先を探している元受刑者の就労支援などが挙げられます。
全国の更生保護施設の連絡先については、「全国更生保護法人連盟HP」よりご確認ください。
自立準備ホームを頼る
自律準備ホームとは、更生保護施設と同じように、行き場のない刑務所出所者などを受け入れて、さまざまな社会復帰サポートを提供する施設のことです。
自律準備ホームが元受刑者などに提供する代表的なサービスは以下のとおりです。
- 宿泊場所の供与
- 生活に必要な設備の提供
- 自律準備支援の提供(規則正しい生活習慣、就労・住居確保、交友関係・金銭管理などの支援)
- 入所者との日々の接触
- 原則1日3回の食事の提供 など
更生保護施設として認められるには厳しい設置基準・処遇基準を満たさなければいけません。
これに対して、住む場所がなくて困っている元受刑者に多様な受け入れ先を用意するという目的から、①法人格を有していること、②暴力団等反社会性のある団体または個人との関係がないこと、③経営が安定しており、事業が確実に実施できること、④関係法令の違反がなく、事業運営について社会的信望を有すること、⑤保護観察や更生緊急保護の意義や内容を十分理解していること、⑥個人情報を適切に管理していること、という①〜⑥の要件をすべて満たせば、自律準備ホームとしての登録が認められるようになっています。
そのため、自律準備ホームは、施設ごとに特徴・特色が異なっているのが実情です。
自律準備ホームの所在地や連絡先については、「日本自律準備ホーム協議会HP」からご確認ください。
自立更生促進センターを頼る
自律更生促進センターは、仮釈放者を対象に、入所者それぞれが抱える問題性を踏まえたうえで、専門的処遇プログラム・生活指導・対人関係指導などを集中的に実施する施設のことです。少人数制の定員制を設けて濃密な日々の生活指導・監督をおこなうとともに、強力雇用主・ハローサークの協力を得ながら充実した就労支援を提供しています。
現在、自律更生促進センターは、福島自立更生促進センター・北九州自立更生促進センターの2ヵ所設置されています。各自立更生促進センターの詳細については、「自立更生促進センター(法務省HP)」を参考にしてください。
【福島自立更生促進センター】
- 住所:〒960-8017 福島県福島市狐塚17
- 電話番号:024-525-3200
【北九州自立更生促進センター】
- 住所:〒803-0801 福岡県北九州市小倉北区西港町103-2
- 電話番号:093-562-3146
住宅確保要配慮者居住支援法人を頼る
住宅確保要配慮者居住支援法人とは、低所得者や高齢者、障害者などの住宅確保要配慮者が円滑に民間賃貸住宅に入居できるように、さまざまな支援業務をおこなう法人のことです。都道府県の指定に基づき、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)第40条を根拠に運営されています。
たとえば、登録住宅の入居者への家賃債務保証、住宅相談など賃貸住宅への円滑な入居に関する情報提供・相談、見守りなどの生活支援などの業務を提供しています。刑務所から出所したあと、賃貸物件の入居審査に何度も落ちたり、家賃の支払いが難しくなったりしたときには、住宅確保要配慮者居住支援法人の指定を受けているNPO法人・一般社団法人・社会福祉法人などを頼るといいでしょう。
住宅確保要配慮者居住支援法人の問い合わせ先については、「居住支援法人の問い合わせ先(国土交通省HP)」をご確認ください。
出所者を積極的に受け入れてくれる企業の支援を頼る
出所後に住む場所が見つからずに仕事にも困っているのなら、元受刑者の社会復帰支援に力を入れている企業を頼るのも選択肢のひとつです。
たとえば、住み込み寮や社宅完備の企業、元受刑者を積極的に採用してくれる企業にアクセスできれば、住む場所と仕事を同時に確保できるので、社会復帰を目指す環境が整うでしょう。
なお、2006年度(平成18年度)から、厚生労働省及び法務省主導のもと、刑務所出所者等総合的就労支援対策が実施されており、元受刑者を積極的に雇用した企業には、試行雇用助成金・刑務所出所者等就労奨励金などが給付されるようになっています。ハローワークに問い合わせをすれば協力雇用主の求人情報にアクセスできるので、「ハローワーク一覧(厚生労働省HP)」から最寄りの公共職業安定所をご確認ください。
出所後に住む場所が困るリスクを回避する方法
出所後に住む場所がなくてもさまざまな支援体制を利用すれば社会復帰は不可能ではありません。しかし、現実問題として、定まった住所がなければ社会復帰の難易度が高いのが実情です。
そのため、何かしらの犯罪に及んで刑事訴追のリスクに晒されたときには、出所後に住む場所がなくなる事態そのものを回避するのが重要だと考えられます。
懲役・禁錮を回避するための防御活動に尽力する
刑事訴追されたとしても、すべての被疑者・被告人が刑務所に収容されるわけではありません。
刑事手続きにはさまざまなステージがあり、各段階で適切な防御活動を展開すれば、刑務所に収監される事態を回避できます。
- 比較的軽微な犯罪で検挙された場合には、微罪処分獲得によって警察の捜査段階での刑事手続き終了を目指す
- 警察から検察官に送致されたとしても、不起訴処分獲得によって刑事裁判回避を目指す
- 検察官に起訴処分を下されたとしても、罰金刑や執行猶予付き判決獲得を目指す
できるだけ早いタイミングで被害者との間で示談交渉を進める
窃盗罪や強盗罪、性犯罪などの”被害者がいるタイプの犯罪類型”に及んだ場合には、できるだけ早いタイミングで被害者との間で示談交渉を開始するべきだと考えられます。
示談とは、刑事事件の被害者と加害者との間で直接示談条件について話し合いをおこない、和解契約を締結して民事的解決をすることです。示談契約の内容は個別の案件によって異なりますが、加害者が被害者に対して一定の示談金を支払う旨などが定められることが多いです。
刑事事件と民事事件はまったく別物ですが、被害者との間で示談が成立すれば、以下のメリットを得られます。
- 被害者の処罰感情がないことが示談書に盛り込まれることが多いので、微罪処分・起訴猶予処分・執行猶予付き判決などの有利な処分・判決を獲得しやすくなる
- 被害者が警察に通報する前に示談が成立すれば刑事事件化自体を回避できるので、前科・前歴もつかずに済む
なるべく早く刑事事件に強い弁護士に相談・依頼する
出所後に住む場所がなくなるリスクを回避したいなら、刑事事件を起こしてすぐに弁護士に相談することを強く推奨します。
というのも、刑事事件を得意とする弁護士に相談・依頼すれば、以下のメリットを得られるからです。
- 感情的になっている被害者との間でも冷静に示談交渉を進めて早期の和解契約締結を実現してくれる
- 被疑者・被告人側に有利な情状証拠を揃えて少しでも有利な刑事処分・判決獲得を目指してくれる
- 警察・検察官が実施する取り調べの注意事項を教えてくれるので、不利な供述調書が作成されるのを予防できる
- 逮捕・勾留という身柄拘束処分を回避・短縮化するための防御活動を展開してくれる
- 事件がテレビやネットニュースで報道されないように働きかけてくれる など
なお、刑事事件を起こしたときには、当番弁護士や国選弁護人ではなく、私選弁護人を選任するのがおすすめです。
なぜなら、当番弁護士や国選弁護人は登録している弁護士が順番に担当に就く決まりになっているので、被疑者・被告人と相性が合うかどうかがわからないからです。また、被疑者・被告人が容疑をかけられている刑事事件の経験・ノウハウを有していないリスクもあります。これに対して、私選弁護人なら、依頼者が実績・性格・熱意・年齢・性別・相性などのさまざまな側面から自由に選べるので、信頼できる専門家に弁護を任せることができるでしょう。ただし、私選弁護人に刑事弁護を依頼した場合には、各法律事務所が規定する弁護士費用が発生する点に注意が必要です。
出所後に住む場所がなくなるのが不安なときは弁護士に相談しよう
出所後に住む場所がなくて困ったときには、住居を確保して仕事などを安定させるために、できるだけ早いタイミングで行政などの支援制度にアクセスしてください。求人案件などとの出会いは運に左右されるものでもあるので、場合によっては生活保護制度なども上手に活用しながら、焦らず継続的に粘り強く社会復帰を目指しましょう。
また、出所後に苦境に追い込まれるのを避けたいなら、刑事事件を起こしてすぐに弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。当サイトでは、刑事弁護に強い法律事務所を多数紹介中なので、信頼できる弁護士までお問い合わせください。