LINEのトーク履歴は刑事事件で証拠となる?注意事項も詳しく解説

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スマートフォンが日常に欠かせない今、LINEなどのメッセージアプリは、個人間のやり取りの中心となっています。しかし、もしあなたや身近な人が刑事事件に関わることになったとき、「LINEのやり取りは証拠として使えるのか?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

実は、LINEのメッセージ内容は、状況によっては重要な証拠として扱われることがあります。本記事では、LINEが刑事事件でどのように証拠として扱われるのか、その有効性や注意点について詳しく解説します。

LINEは証拠となり得る

LINEでのやり取りは、刑事事件において証拠となり得ます。当然、有利な証拠、不利な証拠それぞれで利用される可能性があります。ただし、犯罪の内容次第では、LINEのやり取りのみで立証することが難しいです。

まずは、LINEのやり取りは証拠になるのか?について詳しく解説します。

LINEは有利な証拠・不利な証拠になり得る

LINEでのやり取りは、刑事事件において証拠として扱われます。LINEは無料のメッセージアプリであり、いわゆるSNSです。連絡ツールとして使用されることが多く、友人やLINEを介して家族や友人等とやり取りをしている人も多いです。

たとえば、あなたが窃盗を行って友人等に「〇〇で〇〇を盗んできた!」などと送信していた場合、あなたが窃盗を犯した証拠の一つとして扱われる可能性が高いです。このように、何らかの犯罪を犯した内容が記載されている場合は、当然、証拠となり得ます。

そもそも、証拠能力として扱うためには、送信した人が特定でき、犯罪の内容等が記載されていることが条件です。たとえば、Aさんが友人Bさんに犯罪となり得るメッセージを送ったとしましょう。

この場合、Aさんのアカウントから送信した事実がある以上、Aさんが何らかの罪を犯した可能性が高いと判断されます。誰かがAさんを陥れる目的でAさんのアカウントを乗っ取り、犯罪のメッセージを送信することは考えにくいです。

そのため、良くも悪くもLINEでのやり取りが犯罪の証拠となり得るため注意しなければいけません。

なお、「誰かが私のスマートフォンを奪って、犯罪のLINEを送っていた」と言っても、その事実を証明することは困難でしょう。具体的に「スマートフォンを奪われる状況下にいたのか?」「誰がどのような目的を持ってそのような行為を行ったのか?」を判断しなければいけないためです。

LINEのやり取りのみでの立証は難しい

LINEのやり取りは、刑事事件の証拠として扱われることもありますが、LINEのやり取りのみで犯罪を立証するのは難しいでしょう。たとえば、殺人事件を例に見ると、凶器やご遺体、その他周辺の防犯カメラに残されている映像等を考慮して判断されます。

仮に、LINE上で「〇〇を殺してしまった」と友人等に送っていたとしても、このメッセージのみで犯罪を立証することはできません。イタズラの可能性や、何らかの病気による虚偽の可能性もあるためです。

しかし、実際にLINE上で細かく犯罪の内容を伝えており、その通りに犯罪が行われていたことが裏付けられた場合は、LINEでのやり取りも証拠として扱われます。

たとえば、ある殺人事件でAさんが殺害されたとしましょう。その後、容疑者として名前が上がったBさんが、友人に対して「Aさんを殺してしまった」という内容のメッセージを送信していたとします。

上記の場合、Bさんを重要参考人として話を聞き、スマートフォンなどを押収してLINE履歴も調べ、Bさんが被疑者である可能性が高いと判断します。もちろん、LINEのやり取りのみで判断することはできないものの、可能性が高くなり、裁判においても証拠として扱われます。

また、犯罪の内容次第ではLINEのやり取りのみが証拠として扱われるケースもあります。たとえば、恐喝罪や強要罪がこれに該当します。

恐喝罪は、暴行や脅迫を用いて相手に対して金銭等を要求する犯罪を指します。たとえばLINE上で「◯月◯日までに〇〇円用意していなければ、暴行を加える」などのようなメッセージを送っていた場合は、恐喝罪の証拠として十分です。

強要罪は、相手の生命や身体、自由、名誉、財産等に加害を加えることを伝えたうえで、義務のないことを行わせる犯罪です。たとえば、LINE上で「今日のミスについて反省しているのであれば、明日、私の目の前で土下座しなさい。

しなければ、会社をクビにします」といったLINEを送信していたとしましょう。

上記の場合は、強要罪が成立します。当然、LINE上でメッセージのやり取りが残っているため、犯罪の証拠として扱われるでしょう。

LINEが刑事事件の証拠となる事例

LINEが刑事事件の証拠となる主な事例は、以下のとおりです。

  • 恐喝・強要等のやり取りが認められる場合
  • 事件に関する証言が認められる場合
  • 事件に関する映像・画像等を共有していた場合
  • その他犯罪のやり取りが認められる場合

次に、LINEのやり取りが刑事事件の証拠として扱われる事例について詳しく解説します。

恐喝・強要等のやり取りが認められる場合

恐喝や強要のやり取りが認められる場合は、LINEのやり取りが証拠として扱われます。たとえば、LINE上で以下のようなやり取りをしていた場合は、証拠になり得ます。

【恐喝の場合】
恐喝罪は「人を恐喝して財物を交付させた場合」に成立する犯罪です。そのため、大前提として「恐喝行為」がなければいけません。恐喝行為は「相手を脅迫して畏怖させる行為」です。

たとえば、「お金を支払わなければ殺す」「お金を支払わなければ殴る」などの言葉がこれに該当します。多くの人は、このような言葉を投げかけられると「怖い」と感じるでしょう。被害者が怖いと感じて財産の交付が発生した時点で恐喝罪が成立します。

つまり、脅して財産等を交付させた場合に成立する犯罪であるということです。脅した内容やお金を支払った事実を確認できる場合は、恐喝罪として成立します。

たとえば、脅された内容がLINE上に残っていたとしましょう。そのうえで、振り込み履歴やキャッシュレス決済サービスによる送金履歴のスクリーンショットがある場合は、これらの情報が恐喝罪の証拠となり、罪に問われる可能性があります。

あなたが加害者である場合、LINEのやり取りを削除していたとしても被害者側のライン上には残っている可能性があります。また、自分から送信した内容であっても、相手がスクリーンショットを撮影していた場合は、証拠として扱われます。

恐喝罪は、未遂で終わった場合も「恐喝未遂罪」という犯罪が成立します。法定刑は、恐喝罪および恐喝未遂罪、いずれも10年以下の懲役です。LINE上で脅して金銭を要求しただけでも10年以下の懲役に問われるため注意しましょう。

【脅迫罪の場合】
脅迫罪とは、「相手の生命、身体、自由、名誉、財産に対して害を加えることを告知した場合」に成立する犯罪です。たとえば、ライン上で以下のようなメッセージを送信した場合は、脅迫罪に問われる可能性があります。

  • 殺す
  • 殴る
  • 裸の写真をばら撒く
  • 誘拐するぞ(攫うぞ)
  • お金を盗るぞ

上記のようなメッセージを送った場合は、脅迫罪として成立する可能性が高いです。脅迫罪は、相手の生命等に対して何らかの害を加えることを告知した時点で成立する犯罪であるためです。

金銭を要求した場合は恐喝罪や恐喝未遂罪が成立しますが、金銭を要求していない場合は、脅迫罪が成立するため注意しなければいけません。

なお、脅迫罪の法定刑は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。非常に重い刑罰が科される可能性があるため注意しましょう。

事件に関する証言が認められる場合

事件に関する証言が認められる場合は、LINEのやり取りが証拠として扱われる可能性が高いです。たとえば、以下のようなLINEのやり取りがあった場合は、証拠として扱われる可能性が高いでしょう。

  • 〇〇を殺した・〇〇を殺す
  • 〇〇に危害を加えた
  • ニュースでやってる〇〇事件の犯人、自分

さまざまな内容が考えられますが、事件に関する証言が認められる場合は、証拠として扱われます。「自分がやった」などと友人等に伝えた場合は、その事実が証拠として扱われ、後から否認しても不利になる可能性が高いです。

事件に関する映像・画像等を共有していた場合

事件に関する映像や画像等を共有していた場合、その内容が証拠として扱われる可能性があります。よくある事例が、何らかの行為を強要して撮影し、撮影したデータを友人等に送付しているケースです。

たとえば、友人間のトラブルで相手に対して土下座を強要し、その状況を撮影していたとしましょう。撮影データを別の友人に共有しているケースです。

何らかのことを強要した人の中には、自分がした悪事を他人に共有したがる人もいます。そういった情報やデータが犯罪の証拠として扱われるケースが多いです。

その他犯罪のやり取りが認められる場合

犯罪のやり取りが認められる場合は、ライン上でのやり取りが証拠として扱われます。たとえば、いわゆる闇バイトの指示をLINEで送っていた場合は、そのやり取りが犯罪の証拠として扱われる可能性が高いでしょう。

他にも、違法薬物のやり取り履歴が残っている場合は、その情報が証拠として扱われます。たとえ隠語を使用していたとしても、警察等の捜査機関であればわかります。

いずれにせよ、何らかの犯罪のやり取りであることが明らかである場合は、証拠として扱われるため注意しましょう。

LINEを証拠として扱うための注意事項

被害者目線で、LINEでのやり取りを証拠として扱う場合は以下のことに注意しておく必要があります。

  • スクリーンショットを撮っておく
  • 明確な内容が記載されていることが重要
  • 送付先の特定が必要
  • LINEのやり取りの入手方法に要注意

次に、LINEを証拠として扱うために注意すべきことについて詳しく解説します。

スクリーンショットを撮っておく

LINEを証拠として扱うためには、その証拠となるやり取り部分のスクリーンショットを撮影しておきましょう。なぜなら、LINEは送信者側で取り消しができてしまうためです。

いざ、LINEを証拠として提出した際に「メッセージの送信を取り消されました」となっていれば、証拠として扱うことができません。そのため、相手に送信を取り消されてしまう前に、スクリーンショットを撮影しておかなければいけません。

なお、スクリーンショットを撮影する際は、日付や時間が見える状態にしておく必要があります。日時がわからなければ、いつ送信されたものなのかわからず、証拠能力として乏しくなる恐れがあるため注意しましょう。

明確な内容が記載されていることが重要

明確に犯罪の内容が記載されていることが重要です。強要罪であれば、何らかのことを強要されている事実が書かれていなければいけません。恐喝罪であれば、金銭の要求があることが必要です。

上記のように、LINEのやり取りを犯罪の証拠として扱うためには、犯罪であることを証明しなければいけません。書き方が曖昧であったり、別の解釈であると受け取られる場合は、証拠として扱われることはないでしょう。

たとえば「これからアイスを買って帰る」というLINEを送ったとしましょう。「アイス」は覚せい剤の隠語ではあるものの、一般的には「アイスクリームを買って帰る」といった意味で使用される言葉です。

そのため、上記のようなLINEのやり取りは、証拠能力としては低いと言えるでしょう。

送付先の特定が必要

LINEのやり取りを証拠として扱うためには、「誰が誰宛に送付した内容なのか」を明確にしなければいけません。LINEは、ニックネームを使用している人も多く、一見して誰が送ったLINEなのかがわかりません。

また、犯罪の内容のLINEを送付してきた本人がLINEを入力し、メッセージを送信したとも限りません。そのため、「誰が送信してきたのか?」についても特定しておく必要があります。

通常は、LINEアカウントの持ち主、友人であればその友人が送信者です。そのため、何らかの罪を犯した人は、LINEアカウントの持ち主である友人であると言えます。

なお、スクリーンショットを撮影する場合も必ず送信者を特定できる状態で撮影しなければいけません。つまり、アカウント名が入るようにスクリーンショットを撮影しておく必要があります。

LINEのやり取りの入手方法に要注意

違法にLINEを入手した場合は、違法証拠収集として証拠能力がなくなる可能性もあるため注意しなければいけません。違法証拠収集とは、違法な捜査によって得られた証拠を指します。

通常、LINEを刑事事件の証拠として扱うためには、令状が発付されたうえで被疑者のスマートフォンを押収し、中身を確認しなければいけません。令状が発付されていなくても、被疑者が任意で提出をした場合は、勝手に中身を確認しても違法ではありません。

しかし、たとえば任意聴取の依頼を受けた被疑者がスマートフォンの提出を拒否していたとしましょう。しかし、取り調べを行ううえで「スマートフォンは持ち込めないため、こちらで預かります」と嘘をつかれ、預けた際に勝手に中身を見られて証拠が発見されたケースがあったと仮定します。

上記の場合は、違法証拠収集に該当するため、LINEのやり取り履歴が刑事事件の証拠として扱うことができなくなります。警察等の捜査機関は、このようなミスを犯す可能性は低いものの、被疑者自身が「罪の疑いをかけられているから、LINE履歴を削除しよう」と考えることがあるかもしれません。

そのため、被害者としてはかならず証拠能力を有する形でLINEのやり取り履歴を残しておくことがとても大切です。

LINEの証拠でよくある質問

LINEの証拠能力に関するよくある質問を紹介します。

Q.スマホを押収されたらLINEを確認されますか?

A.確認される可能性が高いでしょう。

証拠品としてスマートフォンを押収された場合は、スマートフォンに残っているデータを確認される可能性が高いです。スマートフォンにロックをかけている状態であっても、突破される可能性が高いと思っておいたほうがよいでしょう。

多くのケースでは、被疑者自身で捜査員に対して暗証番号やパターンなどを伝えています。もちろん、被疑者自身が暗証番号等を伝える義務はありませんし、黙秘権が認められている以上、黙秘をしていても問題ありません。

しかし、罪を認めている被疑者の場合は「少しでも罪を軽くしたい」という思いから、自ら暗証番号やパターンを教えるケースが多いです。

また、現在のスマートフォンは指紋認証や顔認証などさまざまな方法でロック解除できます。そのため、暗証番号やパターンを教えない被疑者に対しては、裁判所に対して「身体捜査令状」の発付を求めます。

そのうえでスマートフォンのロック解除を試みるケースが多いです。いずれにせよ、押収されている時点で中身を確認される可能性は非常に高いと思っておいたほうが良いでしょう。

Q.削除されたトーク履歴は復元されるのでしょうか?

A.される可能性があります。

LINE上でやり取り履歴を削除していたとしても、完全に削除し切れているわけではなく、専用ツール等を使用することで復元できる場合があります。とくに、警察の捜査対象となっている場合は、復元される可能性が高いと思っておいたほうが良いでしょう。

Q.スマホのパスワードを伝えなければ、LINEを見られませんか?

A.見られる可能性が高いです。

現在のスマートフォンは、指紋認証や顔認証等を用いてロックできる機種が多いです。これらの機種のスマートフォンを所有・押収された場合は、裁判所が発付する「身体捜査令状」に基づいてロック解除を試みます。

上記機種以外の場合は、パスワードを伝えなければロック解除できないため、LINEを見られることはないでしょう。なお、身体捜査令状が発付されているにも関わらず、拒否した場合は過料の制裁を受ける可能性があるため注意してください。

過料とは?
過料とは、金銭を徴収する制裁の一つです。刑事罰である科料や罰金刑とは異なるため、前科は付きません。

Q.どのような内容のやり取りがあれば証拠になり得ますか?

A.犯罪の内容が明らかである場合です。

犯罪の内容が明らかである場合や、犯罪を犯したと思われるやり取り、犯罪前後の記録等が証拠として扱われる可能性が高いです。

たとえば、いわゆる闇バイトの指示をLINE上で受けていた場合は、そのやり取りが証拠として扱われます。また、強盗事件発生直後に被疑者が友人等に対して「大金が入ったから遊びに行こう」などとLINEを送っていた場合、裁判ではこの文章が「大金が入ったというのは、強盗をしたからではないか?」と問われ、証拠として扱われることになるでしょう。

Q.LINE以外のSNSでも証拠になり得ますか?

A.LINEに限らずその他のSNSであっても証拠として扱われます。

たとえば、X(旧Twitter)にて犯罪の記録を投稿していた場合です。他にも、第三者が撮影した動画等が拡散され、証拠として扱われるケースもあります。必ずしも、LINE上でのやり取りのみが証拠として扱われるわけではありません。

まとめ

今回は、LINEのやり取りが証拠能力を有するのか?について詳しく解説しました。

LINE上のやり取りは、刑事事件においても大事な証拠能力として働きます。あなたが被害者であれば、スクリーンショットを撮っておくなどして証拠保全に尽力すべきでしょう。

あなたが加害者であるならば、弁護士へ相談をしたうえで今後の対応を検討したほうが良いでしょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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