痴漢の示談相場と金額を左右するポイントを紹介!交渉を弁護士に依頼するメリットも解説

痴漢の示談相場と金額を左右するポイントを紹介!交渉を弁護士に依頼するメリットも解説
痴漢の示談相場と金額を左右するポイントを紹介!交渉を弁護士に依頼するメリットも解説

痴漢の容疑をかけられたときにはできるだけ早いタイミングで被害者との間で示談交渉を開始するのが重要です。

なぜなら、痴漢被害者との間で示談が成立して民事的な解決が済んでいれば、これを踏まえて刑事処分が軽くなる可能性が高まるからです。逮捕勾留による長期の身柄拘束や、有罪判決によって付いてしまう前科などを回避できれば、日常生活への影響や社会復帰・更生の難易度を大幅に回避・軽減できるでしょう。

ただし、痴漢行為に及んだ犯人自身が示談交渉に着手しようとしたところで、強い処罰感情を抱いている性犯罪被害者はまともに応じてくれるはずもありません。そのため、痴漢被害者との間で効率的に示談交渉を進めるには、刑事弁護や示談交渉のノウハウを有する弁護士の助けが不可欠になると考えられます。

そこで今回は、痴漢で現行犯逮捕されたり後日逮捕のリスクを抱えていたりする人のために、以下4点について分かりやすく解説します。

  1. 痴漢で逮捕されたときに示談成立を目指すメリット
  2. 痴漢で逮捕されたときに示談をしないと陥るリスク
  3. 痴漢の示談金を決定付けるポイント
  4. 痴漢で逮捕されたときに弁護士に示談交渉を任せるべき理由

後述するように、痴漢で逮捕された場合には厳格な時間制限の下、粛々と刑事手続きが進められるので、防御活動の始動が遅れるほど刑事処分が重くなる危険性が高まります。

「可能な限りスピーディーに示談交渉をスタートすること」が被疑者・被告人にとっての最大の防御活動になるので、すみやかに示談実績豊富な弁護士までご相談ください

目次

痴漢で逮捕されたり容疑をかけられたときに示談を目指すメリット4つ

そもそも、示談とは「私人間の紛争を民事裁判によらずに、当事者間による合意によって解決すること(=和解契約)」のことを意味します。

どのような内容で合意を形成するかは当事者間で自由に決定できますが、一般的な痴漢事案の場合には、「加害者から被害者に対して一定額の示談金(慰謝料、解決金)を支払う代わりに、被害者が警察に提出した被害届を取り下げてもらったり、被害者が有する慰謝料請求権を放棄してもらうこと」を旨とする示談書でサインを交わすことが多いです。

この点、示談はあくまでも民事レベルでの取り決めであることを踏まえると、示談が成立したところで刑事手続きには一切影響がないようにも思えます。

しかし、痴漢事件の捜査実務や刑事裁判では「示談の成否」が以下のような”事実上のメリット”をもたらすため、被害者との示談交渉は決して侮れません。

  1. 痴漢で逮捕されても示談成立で早期の身柄釈放を期待できる
  2. 痴漢で逮捕されても示談成立で不起訴処分の可能性が高まる
  3. 痴漢で逮捕・起訴されても示談成立で判決内容の軽減を狙える
  4. 刑事手続きと同時に民事的な問題も解決を目指せる

メリット1.早期の身柄釈放を期待できる

痴漢被害者との間で示談が成立すれば、捜査機関に身柄を押さえられても比較的早いタイミングでの釈放を期待できます。

示談による早期身柄釈放のメリットを理解する前に、痴漢で逮捕されたときのオーソドックスな刑事手続きの流れを押さえておきましょう。たとえば、痴漢で現行犯逮捕されたケースでは、以下の流れで捜査~判決言い渡しまでが進められます。

  • 警察に現行犯逮捕される
  • 警察署で身柄拘束付き取調べを受ける(最大48時間)
  • 警察から検察に身柄が送致される
  • 検察で身柄拘束付き取調べを受ける(原則最大24時間)
  • 検察官が勾留請求すると身柄拘束付き取調べが10日~20日の範囲で例外的に延長される
  • 検察官が起訴処分を下す(公訴提起)
  • 検察官による公訴提起後1~2カ月後を目安に刑事裁判が開かれる
  • 痴漢事件について必要な証拠調べ手続き・弁論手続きを経た後、判決が言い渡される

痴漢で逮捕されても被害者と示談が成立すれば勾留請求を回避できる

痴漢で逮捕された後すぐに被害者との間で示談が成立すれば、検察官による勾留請求を回避できる可能性が高まります。

なぜなら、検察官が勾留請求するか否かを判断するときには、原則24時間とされる検察段階での取調べを超えて捜査する必要性の有無が争点になるところ、痴漢被害者との間で示談が成立した結果、民事的に解決済みで被害者の処罰感情が薄くなっているような状況では、勾留請求によって徒に取調べ期間を長期化する意義が見出せないと考えられるからです。

ただし、過去に痴漢事件等での前科・前歴がある場合今回発覚した痴漢事件と近接した場所・時間帯に他の被害者から痴漢の被害届が提出されている場合被害者との間で示談は成立しているのに警察・検察による取調べには否認・完黙している場合など、公判維持に向けて更に証拠調べをする必要性が高いと認められるケースでは、痴漢被害者との間で示談が成立していたとしても、勾留請求が行われる可能性が否定できません。勾留請求を回避できるような取調べへの対応方法について担当弁護士と丁寧に協議してください。

痴漢で逮捕されても被害者と示談が成立すれば在宅事件として手続きが進められる

逮捕・勾留によって痴漢が逮捕されのは「逃亡や罪証隠滅のおそれがある」がある場合に限られます。たとえば、痴漢が現行犯逮捕されるのは、犯行現場から逃走する可能性があると判断されるためです。

つまり、裏を返せば、逃亡や罪証隠滅のおそれがなく「留置する必要性がない」と判断できる状況なら、逮捕・勾留を回避できるということです(刑事訴訟法第203条第1項、205条第1項)。

たとえば、電車内で痴漢の現場を押さえられたとしても、被害者や駅員に対して身分証や名刺・連絡先を伝えるなどして身元をしっかりと明かしておけば、現行犯逮捕を回避してそのまま自宅に帰ることができる場合があります。また、仮に逮捕されて身柄拘束されたとしても、取調べ初期の段階から罪を認めて即時に被害者との間で示談を済ませておけば、身柄拘束の必要性はないと判断されるでしょう。

ただし、「留置の必要性がないから逮捕・勾留せずに身柄を解放すること」と「痴漢事件を無罪として扱うこと」は同義ではありません。つまり、「身柄拘束付きの取調べは必要ないが痴漢事件については起訴する必要がある」と判断された場合には「在宅起訴」されるということです。在宅起訴された場合には、刑事裁判の口頭弁論期日に出廷をして手続きに参加することになります。

このように、身柄拘束なしで刑事手続きが進められることを「在宅事件」扱いと呼びます。痴漢事案が在宅事件として処理された場合、有罪判決が下されると前科がつくことは回避できませんが、その一方で、長期間身柄が拘束されることはないので、社会生活への悪影響は最大限回避・軽減できるでしょう。

【注意!】痴漢は示談が成立しても微罪処分(検察官送致回避)の可能性は極めて低い

そもそも、痴漢で逮捕された場合、警察段階で48時間以内、検察官送致後は24時間~20日間の範囲で身柄拘束付きの取調べが実施されます。警察・検察に身柄を押さえられている間は、弁護士以外の第三者と直接連絡を取ることが禁止されるので、身柄拘束期間が長期化するほど、会社や学校に痴漢事件を起こしたことがバレるリスクに晒されるでしょう。

この点、軽微な犯罪類型については、逮捕されて警察に身柄を押さえられたとしても、検察官送致をせずに警察限りの判断で事件を終結させる「微罪処分」という刑事手続きに付される可能性があります。つまり、痴漢で逮捕されたとしても微罪処分を獲得できれば最大48時間の取調べで済むわけですから、有罪判決や前科を回避できるだけではなく、身柄拘束期間を大幅に短縮化することによって会社や学校にバレるリスクを軽減することも可能だということです。

ただし、微罪処分を獲得するための一般的な判断基準として以下の項目が挙げられることを踏まえると、迷惑防止条例違反や強制わいせつ罪の容疑で痴漢が逮捕された場合は、微罪処分獲得の余地は極めて低いと考えられます。

  • 軽微な犯罪類型に該当すること(窃盗罪、詐欺罪、暴行罪、賭博罪など)
  • 逮捕状に基づいて逮捕処分が実行されたわけではないこと(現行犯逮捕など)
  • 犯情が軽微であること(計画性がない、衝動的な犯行、悪質性ではないことなど)
  • 被害額や被害の程度が軽微であること(2万円程度、相手に怪我がないことなど)
  • 被害弁済が済んでいること
  • 素行不良者ではないこと(前科・前歴がないこと)
  • 示談が成立していて処罰感情が薄いこと

原則として、痴漢をしたときに問われる迷惑防止条例違反や強制わいせつ罪は「軽微な犯罪類型」には該当しないと扱われるので、微罪処分の対象外です。

ただし、痴漢初犯現行犯逮捕のケースで、かつ、犯行態様が極めて軽微(衣服の上から少し触れただけ等)であり、示談金の支払いが済んでいるだけではなく、被害者から「刑事処罰をまったく望んでいない」「大ごとにしたくないので早期に穏便な解決を期待している」旨が捜査機関に伝えられている場合には、痴漢で逮捕されても微罪処分を獲得できる余地は残されています。

限られた時間内でかなり厳しい交渉が必要になりますが、どうしても微罪処分による早期釈放を目指すなら性犯罪弁護に強い専門家へすみやかに相談をするべきでしょう。

【注意!】痴漢で逮捕後、身柄拘束期間が長期化すると生じるデメリットは大きい

「痴漢で逮捕された以上、ある程度長い期間身柄が拘束されるのは仕方ない」と諦めるのは危険です。なぜなら、逮捕・勾留による身柄拘束期間が長期化すると、以下のようなデメリットが波及的に生じるからです。

  • 自分の声で会社に欠勤理由を告げられないので痴漢に及んだことがバレる
  • 長期間欠勤が続くことで会社からの信用がなくなる(無断欠勤は2週間を目安に懲戒解雇事由に相当)
  • 長期間欠席が続くので通学先から不信感を抱かれる
  • 配偶者や家族、恋人などに痴漢で逮捕されたことがバレるので関係性が崩れる
  • 長期間外部と連絡できず拘置所と取調べの往復だけの生活は想像以上に心身が疲弊する

痴漢で逮捕されたときは、「刑事処分の内容を軽くすること」も大切な目標ですが、「社会生活への支障をできるだけ回避・軽減して更生しやすい環境を作り出すこと」も看過するべきではありません。したがって、痴漢の容疑をかけられたときには可能な限り早いタイミングで弁護士に示談交渉に動き出してもらったうえで早期の身柄解放を目指すべきだと考えられます。

メリット2.不起訴処分獲得を期待できる(前科を回避できる)

痴漢で逮捕された場合、逮捕・勾留段階で被害者との間で示談を成立させることに成功すれば、検察官による不起訴処分を獲得できる可能性が高まります。

起訴・不起訴の判断時には痴漢事案の事情が総合的に考慮される

不起訴処分とは、痴漢事件を刑事裁判にかけずに検察官限りの判断で刑事手続きを終了させることを旨とする意思表示のことです。これに対して、起訴処分とは、痴漢事件を刑事裁判にかけることを旨とする検察官の訴訟行為のことを意味します。つまり、痴漢事件が刑事裁判にかけられるか否かは検察官の起訴・不起訴の判断によって決定されるということです。

そして、検察官が起訴・不起訴を決定する際には、犯人の性格・年齢・境遇・犯罪の軽重・情状・犯罪後の状況が総合的に考慮されます(刑事訴訟法第248条)。たとえば、決して軽微とは言えない痴漢事案であったとしても、起訴・不起訴の判断までに被害者との間で示談が成立しており、監護者が就いていることによって痴漢再犯のリスクが低いと考えられる場合などには、痴漢事件を犯したこと自体は間違いないとしても不起訴処分(起訴猶予処分)を獲得できるでしょう。

不起訴処分獲得が前科回避の最重要ポイントになる

痴漢事件を起こした場合には、検察官による不起訴処分を獲得できるかどうかが防御活動の大きな分岐点になります。

なぜなら、日本の刑事裁判の有罪率は99%以上とも言われる実情を踏まえると、検察官による起訴処分が下された時点で「有罪=前科」が確定することになるからです。つまり、「痴漢で逮捕されたが、どうしても前科はつけたくない」と希望するなら、検察官による不起訴処分獲得は必須の課題になるということです。

痴漢で逮捕されて身柄を押さえられた場合、逮捕から起訴・不起訴決定までの猶予期間は最短72時間~最長23日間しか与えられません。この制限時間内に被害者との示談成立を目指すには弁護士の助力は必須でしょう。

前科情報は一般に公開されるわけではありませんし、住民票や戸籍にも記載されません。また、住宅ローン審査などにも影響しないので、基本的にはバレる心配はないでしょう。ただし、今後の生活状況や仕事内容次第では、前科がつくことで以下のデメリットに晒される可能性がある点に注意が必要です。

  • 前科は履歴書の賞罰欄への記載義務が生じるので、就職活動・転職活動が困難になる
  • 交際相手による身辺調査で前科がバレると結婚に支障が出る
  • 前科は法定離婚事由に該当するので、配偶者から離婚を求められると拒絶できない(慰謝料等も発生する)
  • 士業や警備員、金融業など、前科を理由に就業制限が生じる職種が多い
  • 前科を理由に懲戒処分や退学処分を下される場合がある
  • パスポートやビザの発給が制限される場合があるので海外渡航に支障が出る
  • 再犯時の刑事処分・判決内容が重くなる可能性が高い
  • 報道されるとインターネット上に一生前科情報が残ってしまう

以上を踏まえると、今後の人生で余計なトラブルを抱えないためには、痴漢で逮捕されたとしても最低限「前科」だけは避けるべきだと考えられます。逮捕後すぐに示談交渉をスタートすれば不起訴処分獲得は充分可能なので、決して諦めずに防御活動を尽くしてください。

メリット3.判決内容を軽くできる(刑務所への収監を回避できる)

痴漢で逮捕された後、諸般の事情を考慮した結果、起訴処分が下されて刑事裁判にかけられることになったとしても、決して諦めてはいけません。

なぜなら、刑事裁判では以下の要素を総合的に考慮して判決内容が決められるので、判決言い渡しまでに被害者との間で示談を成立させることに成功すれば有利な量刑を獲得できるからです。

  • 犯行の動機、計画性
  • 犯行の手段、方法、態様
  • 結果の大小・程度・数量、被害弁償
  • 被告人の性格(反社会性や常習性など)
  • 職業(更生可能性の判断において)
  • 前科、前歴、余罪の有無
  • 反省や自白の有無・程度
  • 社会の処罰感情、社会的制裁、社会的影響
  • 被害者の処罰感情の強さ
  • その他、刑事事件に関係するすべての事情

痴漢被害者との示談成立で罰金刑を目指しやすくなる

痴漢について迷惑防止条例違反に問われている場合、「6カ月以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」の範囲で判決が言い渡されます(東京都「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」の場合)。

つまり、痴漢の前科があったり、痴漢行為についての反省が見られなかったりすると実刑判決が下されるおそれがある一方で、痴漢初犯で被害者と示談済みのケースであれば罰金刑で済む可能性があるということです。

実刑判決も罰金刑も「有罪」であることに違いはありませんが、罰金刑ならお金を納付するだけで罪を償ったことになり刑務所に入らずに済む点がメリットとして挙げられます。

したがって、実刑判決によるデメリットを軽減させるなら、早期に被害者と示談をまとめて罰金刑獲得を目指すべきでしょう。

痴漢被害者との示談成立で執行猶予付き判決を目指しやすくなる

痴漢について強制わいせつ罪に問われている場合、「6カ月以上10年以下の懲役刑」の範囲内で判決が言い渡されます(刑法第176条)。迷惑防止条例違反とは違って罰金刑の規定が存在しない点に注意が必要です。

そもそも、痴漢が強制わいせつ罪に問われるような事案では行為態様の悪質性が問題視されていることが多いので、適切な防御活動を展開しなければ実刑判決を免れることができません。

これに対して、痴漢行為自体は卑劣な内容であったとしても、粘り強く被害者に謝罪の意を伝え続けて示談成立に至れば執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高まるでしょう。

執行猶予付き判決とは、3年以下の懲役刑・3年以下の禁錮刑・50万円以下の罰金刑の言い渡しを受けたときに、情状によって、裁判が確定した日から1年~5年以下の期間が指定されて、刑の執行が猶予される制度のことです。指定された期間内に執行猶予の取消し事由(再犯、保護観察のルール違反など)が発生しなければ、刑は執行されることなく消滅します。

つまり、痴漢行為が強制わいせつ罪に問われているケースでは、「被害者と示談を成立させる(示談金の支払いを済ませる)」「真摯に反省の態度を示す」「再犯しない旨を誓って監護者を就けるなどの現実的な対処法を説明する」などの情状を主張立証することで『3年以下の懲役刑が言い渡される状況』を作り出したうえで執行猶予付き判決を求める、という防御活動が重要になると言えるでしょう。

実刑判決も執行猶予付き判決も「有罪」であることに違いはありませんが、執行猶予付き判決は猶予期間中の生活に気を配りさえすれば刑務所に入らずに済むという点がメリットとして挙げられます。

したがって、刑務所への収監という多大なデメリットを回避するなら、できるだけ早期に痴漢被害者との間で示談をまとめてもらうように弁護士に尽力してもらうべきでしょう。

痴漢被害者との示談成立で略式手続きを目指しやすくなる

痴漢事件について不起訴処分を獲得できないケースでも、刑事裁判における検察官の求刑内容が「罰金刑」であることが事前に確定している事案なら、略式手続き(略式命令・略式起訴)による早期の事件終結を目指すことができます

略式手続きとは、公開の刑事裁判によらずに簡易裁判所における書面審査に基づく刑事裁判手続きのことです(刑事訴訟法第461条以下)。公開の刑事裁判のように口頭弁論期日が指定されるわけではなく、検察官の請求(略式起訴)によって簡便に手続きが終了するので、刑事手続き遂行の負担から早期に解決されるというメリットが得られます。

たとえば、「痴漢事件の態様などを総合的に考慮すると不起訴処分を下すのは難しいが、被害者との間で示談が成立していることを考慮した結果、罰金刑を求刑するのが相当」と検察官が判断しているようなケースでは、検察官による略式起訴の打診に応じることで早期に刑事手続きを終了させて、更生を目指すことが可能となります。

ただし、略式手続きを選択すると公開の法廷で痴漢冤罪を主張する機会が失われる点に注意が必要です。また、略式手続きは「100万円以下の罰金刑または科料」を対象としているため、痴漢事件について強制わいせつ罪の成否を問われているケースは略式手続きの対象外と扱われます(痴漢について迷惑防止条例違反が問われている事案のみ略式手続きの利用が可能)。

【注意!】痴漢で逮捕されて起訴されると実刑判決が下される可能性もある

「痴漢は軽微な犯罪類型」という認識は間違いです。迷惑防止条例違反及び強制わいせつ罪のいずれも法定刑に「懲役刑」が定められている以上、痴漢で逮捕された場合には、適切な防御活動を展開しなければ刑務所に収監されるリスクに晒されます

痴漢事件について実刑判決が確定すると、厳しい規律に縛られた生活をしながら拘置所もしくは刑務所にて収監されます。痴漢の場合は「懲役刑」が下されるので、受刑者として日々刑務作業に従事しなければいけません。もちろん、受刑態度が良好であれば仮釈放が認められることもありますが、仮釈放には刑期の約7割程度の受刑期間を要するのが実情なので、相当期間社会生活から断絶されるのは避けられないでしょう。また、長期間服役することになると、現在の勤務先や学校を除籍されても文句は言えません。さらに、刑期を満了しても「前科者」として社会復帰を目指さなければいけないため、就職活動や経済面でさまざまな困難を強いられます。

したがって、痴漢で逮捕されたとしても、これからの人生のことを考えると、「実刑判決を回避すること」は最低限の課題だと考えられます。特に、痴漢などの性犯罪で逮捕歴がある場合には実刑判決のリスクが高まっている状況なので、被害者との示談交渉・取調べへの対応方法や供述方針についてのアドバイスなど、痴漢事案の実績豊富な弁護士を頼りましょう。

メリット4.民事的問題も同時に解決できる

痴漢で逮捕された後、被害者との間で示談交渉を進めれば、刑事手続きを有利に運ぶことができるだけではなく、民事責任についての法的トラブルも同時に解決を目指せます。

そもそも、「逮捕」「起訴」「刑事裁判」「有罪」「前科」というペナルティはすべて「刑事責任」として科されるものです。これらの刑事責任とは別に、痴漢被害者に対する民事責任(不法行為に基づく損害賠償責任、慰謝料の支払い責任)が発生する点を忘れてはいけません。

仮に、痴漢事件を起こして被害者との間で示談交渉を進めなければ、刑事手続きと並行して、あるいは、刑事手続きが終了した後に、痴漢被害者から慰謝料請求をされることになります。たとえば、運良く不起訴処分を獲得して社会復帰を目指している最中、過去の痴漢事件に関する民事訴訟等への対応を強いられるのは何かと不安でしょうし、最悪の場合には新しい職場の人などに過去の痴漢事件のことがバレる危険性も生じかねません。

痴漢で逮捕された後すぐに実施する示談交渉では、民事責任の一環である慰謝料を含めた解決金を「示談金」として支払うことが条件とされるのが一般的です。そのため、示談が成立した時点(和解契約を締結した時点)で民事的紛争も解決済みにできます。示談が成立した時点ですべての法的責任を果たしたことになるので、建設的に更生の道へと歩み出せるでしょう。

痴漢の示談金額を左右するポイント3つ

痴漢をしたときの示談金額は事案によって異なります。なぜなら、示談金は以下の要素に影響されて合意額に差が生じるものだからです。

  1. 嫌疑をかけられている犯罪類型や行為態様
  2. 痴漢被害者の年齢
  3. 痴漢被害者の処罰感情の強さ

それでは、痴漢の示談金額を左右するポイントについて、それぞれ具体的に解説します。

嫌疑をかけられている犯罪類型の違い

痴漢の示談金相場は嫌疑をかけられている犯罪類型によって差が生じます

そもそも、痴漢で逮捕される場合には、「痴漢罪」などという犯罪に抵触することを理由として検挙されるわけではありません。各都道府県において定められている迷惑防止条例違反か、強制わいせつ罪(刑法第176条)への該当性を疑われて刑事訴追されるのが一般的です。

迷惑防止条例違反は比較的違法性が低い痴漢類型を対象としているため示談金は低額になる傾向にあります。これに対して、強制わいせつ罪は比較的違法性が高い痴漢類型が処罰対象にされているので示談金は高額になる可能性が高いです。

その他、スカートなどを切り裂いたり衣服に精液等を付着させたりすると器物損壊罪(刑法第261条)、電車内において陰部等を露出すると公然わいせつ罪(刑法第174条)、執拗なつきまとい行為やストーキング、盗撮などをした場合には迷惑防止条例違反など、痴漢時の行為態様や状況次第では、さらに刑事処罰が上乗せされる可能性もあります。問われる罪責が増えるほど示談金額も高額になる点にご注意ください。

迷惑防止条例違反を問われる痴漢の行為類型と示談金相場

公共の場所や公共の乗り物において、衣服その他の身に着ける物の上からや、直接的に人の身体に触れることによって、人を著しく羞恥させたり不安を覚えさせたりした場合には、迷惑防止条例違反に該当する痴漢として逮捕されることになります。東京都の迷惑防止条例のケースでは、痴漢の法定刑は「6カ月以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」です。

なお、迷惑防止条例違反の内容は各自治体によって異なるので、刑事訴追のリスクが高まったときには犯行に及んだ地区の条例内容をご確認ください。

迷惑防止条例違反に問われ得る代表的な痴漢の行為類型は以下の通りです。

  • 電車内等で衣服の上から胸・尻・素足・下着・太ももなどに触れる、撫でまわす
  • 電車内等で密着して下半身を執拗に押し付ける
  • 電車内等で衣服のボタンや下着のホックを外す
  • 駅のホーム等ですれ違いざまに身体に触れる

痴漢行為について迷惑防止条例違反の容疑をかけられているケースの示談金相場は20万円~50万円程度と言われています。

なお、後述のように、示談金額は、痴漢犯人と被害者との合意によって決定されるものなので、かならずしも相場通りの範囲に収まるとは限りません。少しでも有利な示談条件での合意を引き出したいのなら、かならず刑事弁護に強い専門家に交渉を依頼しましょう。

強制わいせつ罪を問われる痴漢の行為類型と示談金相場

痴漢の行為態様が悪質なケースでは、強制わいせつ罪の容疑で逮捕される可能性もあります。

強制わいせつ罪とは、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をしたときに成立する犯罪類型のことです(刑法第176条)。被害者の年齢が13歳未満のケースでは、手段としての暴行または脅迫が存在しなくても、わいせつな行為に及んだだけで強制わいせつ罪が成立します。強制わいせつ罪の法定刑は「6カ月以上10年以下の懲役刑」と定められており、迷惑防止条例違反と比較するとかなり重い刑罰が下されることになります。

強制わいせつ罪に問われ得る代表的な痴漢の行為類型は以下の通りです。

  • 無理矢理キスをする行為
  • 下着の中に手を差し入れて乳房や陰部などに触れる行為
  • 意に反して衣服を脱がす行為

痴漢行為について強制わいせつ罪の容疑をかけられているケースの示談金相場は50万円~100万円程度と言われています。ただし、事件の態様や被害者サイドの考え方次第では示談金相場の範囲を超えるリスクがある点にご注意ください。

強制わいせつ罪は故意犯なので、本罪で処断されるには構成要件該当事実についての認識・予見が必要です。したがって、13歳未満の者を13歳以上であると誤信して、暴行・脅迫によらずにわいせつな行為に及んだ場合には、故意を欠くので、強制わいせつ罪は不成立で迷惑防止条例違反で処罰されることになります。これに対して、13歳以上の者と13歳未満であると誤信して、暴行・脅迫によらずにわいせつな行為に及んだ場合には、強制わいせつ罪の未遂犯(刑法第180条)が成立するに留まるでしょう。

被害者の年齢

痴漢の示談金額は被害者側の年齢にも左右されると言われています。

たとえば、中学生・高校生などの未成年を狙った痴漢行為の場合、それだけで犯行の悪質性の高さが証明されます。また、示談交渉の際には両親などの親権者が出てくることも想定されるため、相手側からの赦しを得るには相応の示談金額を提示する必要に迫られるでしょう。

もちろん、「痴漢被害者の年齢が高いほど示談金が安くなる」という意味ではありません。痴漢被害者が成人年齢に達していたとしても、痴漢の行為態様が悪質なケースでは相場の範囲を超えた示談金額で合意に至ることもあり得ます。

少なくとも、被害者の年齢が若年であるほど痴漢行為の悪質性が高く評価されるため、示談金額の引き下げには相当の苦労を要するということです。あまりにも相場と乖離した金額を相手方から提示された場合には真摯かつ丁寧な姿勢で交渉を進めなければいけないので、かならず示談交渉に慣れた弁護士に依頼するようにしてください。

被害者の処罰感情の強さ

痴漢の示談金額は被害者の処罰感情の強さに大きく左右されます

そもそも、痴漢事件の示談とは「痴漢行為について許しを得て法的トラブルを解決する代わりに一定額の慰謝料を差し入れる」ことを内容とするものです。つまり、分かりやすく表現すると、「被害者の赦し」と「示談金額」が天秤に乗るということを意味するものです。

そのため、被害者の処罰感情が強く痴漢加害者に対する怒りが相当のケースでは、赦しを得るために必要な示談金額が必然的に高額になってしまいます。これに対して、被害者の処罰感情がさほど強くなく真摯な姿勢で謝罪に向き合えば希望を受け入れてくれるようなケースなら、赦しを得るために必要な示談金は平均的な金額に収まるでしょう。

したがって、痴漢の示談交渉では、いかに被害者側の感情を逆撫ですることなく丁寧に話し合いを進めることが出来るかがポイントになると考えられます。加害者本人が謝罪に赴いても交渉のテーブルさえ設定してもらえないリスクがあるので、誠実な姿勢で冷静かつ丁寧に痴漢被害者との話し合いを進めてくれる弁護士に一任するのが最適でしょう。

痴漢加害者が示談交渉をスタートする際には、「痴漢被害者は示談交渉に応じる必要性は高くない」という現実を理解する必要があります。なぜなら、被害者側はわざわざ示談交渉に応じなくても、別途民事訴訟を提起して慰謝料請求をすることが可能だからです。したがって、痴漢被害者との間で円滑に示談を成立させるには、「後日民事訴訟を提起する手間を簡略化できることをメリットに感じられる程度の示談金額を提示すること」が重要となります。もちろん、痴漢加害者側の経済力の範囲で金額を提示しなければいけませんが、痴漢事件の早期解決を目指すなら、「示談金額を安く抑えること」よりも、「いかに被害者側からの早期納得を引き出せるか」を優先的に考えるべきでしょう。

【注意!】痴漢の示談金は相場とは無関係に決定される

痴漢の示談交渉では「示談相場」が一定の目安にされるのは事実ですが、「かならずしも示談相場通りの金額で合意が形成されるわけではない」という点に注意をしなければいけません。なぜなら、そもそも示談に応じるか否か、どのような示談条件で合意に至るかは、すべて痴漢被害者・痴漢加害者が自由に決定できるものだからです。

たとえば、痴漢の行為態様が比較的軽微な事件であったとしても、被害者側の処罰感情がかなり強いケースでは、相場通りに30万円~50万円程度の示談金額を提示しても受け入れてもらえない可能性も否定できません。示談交渉が決裂すると、後日民事訴訟等の法的プロセスを経て慰謝料が請求されることになりますが、仮に、民事訴訟を経ても20万円程度の判決が相当な事案であったとしても、被害者サイドが厳しい刑事処罰を望んでいる状況だと、100万円の示談金を提示しても合意に至らないこともあり得るでしょう。

つまり、示談で痴漢事件の早期解決を目指し、かつ、出来るだけ有利な条件で示談についての合意を形成するには、被害者側の怒りを増幅させないような姿勢で粛々と示談交渉を進めつつ、同時に、示談段階で和解契約を締結するメリットを被害者側にも上手く伝えるのがポイントになるということです。「痴漢示談金の相場は〇〇万円なので、この金額で納得してください」などという自分の立場を省みない独りよがりな考え方では円満解決は遠のくばかりです。

「加害者と被害者」という立場をしっかりと理解したうえで被害者側との間で冷静な合意形成を目指すには性犯罪事件に慣れた弁護士のサポートが不可欠なので、痴漢の容疑をかけられたときにはすみやかに刑事弁護の実績豊富な専門家までご相談ください。

痴漢で示談を目指すときに弁護士に依頼するメリット7つ

痴漢で逮捕されたり後日逮捕のリスクに怯えていたりするときは、早期の示談成立を目指すために弁護士へ相談するのがおすすめです。

なぜなら、性犯罪弁護に強い専門家のサポートを得ることで以下7点のメリットが得られるからです。

  1. 弁護士を就けることで痴漢被害者の連絡先が早期に判明する
  2. 弁護士が代理人として交渉を進めると痴漢被害者が冷静に話し合いに応じてくれる
  3. 弁護士が代理人として交渉を進めると痴漢被害者との間で早期に示談が成立する
  4. 弁護士が代理人として示談交渉を進めると適正範囲で示談金額の合意を得やすい
  5. 弁護士が代理人に就くことで示談成立後のトラブルへのリスクヘッジになる
  6. 性犯罪事件に強い弁護士に相談すれば再犯防止に向けたアドバイスも期待できる
  7. 痴漢事件の実績豊富な弁護士に相談することで痴漢冤罪等の法的主張も検討してくれる

痴漢被害者との間で早期に示談が成立すれば、刑事処分を軽くして社会生活への悪影響を最大限軽減できます。刑事事件の経験が浅い弁護士に相談しても即効性のある効果は得にくいので、法律事務所のホームページを確認するなどして、かならず刑事事件の実績豊富な専門家に相談してください

弁護士が選任されていないと被害者の連絡先が分からないことが多い

痴漢被害者との間で示談交渉を進めるには加害者側が被害者に対して直接連絡を取る必要がありますが、そもそも、よほどの事情がない限り、警察は痴漢加害者に対して直接被害者の連絡先を教えてくれることはありません。また、痴漢で現行犯逮捕された現場では、被害者から連絡先を教えてもらうのは不可能に近いです。

ただし、加害者の代理人に弁護士が着任して、当該弁護士から警察に打診があったときにはじめて、被害者側の了承を得た限りにおいて、警察から痴漢被害者の連絡先を入手することができます

したがって、痴漢被害者との間で早期の示談成立を目指すなら、弁護士を経由して被害者の連絡先を知るのがスタートラインになると言えるでしょう。

弁護士相手なら示談交渉を拒絶されるリスクを軽減できる

あくまでも痴漢は性犯罪に分類される犯罪類型であることを踏まえると、連絡先を無事に入手できたとしても、被害者との示談交渉を円滑に進められる確証はない点に注意しなければいけません。

なぜなら、窃盗罪や詐欺罪などの財産犯と比べると、性犯罪の被害者が加害者サイドに抱く嫌悪感は相当強いものだと予測されるからです。たとえば、痴漢という性被害を受けた被害者が過度な恐怖心やPTSDを発症しているケースでは、痴漢加害者との示談交渉によって更に心身に負担が発生するおそれがあるため、示談交渉自体が拒絶される可能性も生じるでしょう。

ただし、痴漢加害者に担当弁護人が就くことによって、痴漢被害者側からの過度な拒絶反応を回避・軽減することができます。たとえば、加害者本人ではなく弁護士が謝罪に赴くというだけで、被害者側はある程度安心感を得られるはずです。また、弁護士はいきなり被害者宅へ訪問するということはせず、事前にアポイントメントをとったうえで、顔合わせのタイミングや方法から丁寧に被害者側と擦り合わせます。さらに、数々の示談経験豊富な弁護士なら、精神的に参っていたり怒りで冷静さを失っている被害者に対しても、相手の気持ちに寄り添いながら話し合いを進める気遣いもできるでしょう。

このように、痴漢の加害者本人では被害者と連絡をとることさえ叶わない状況でも、弁護士に依頼するだけで示談交渉のテーブルを用意することが可能となります。軽い刑事処分や早期の身柄釈放を目指すなら、かならず逮捕後すぐに示談交渉に強い弁護士までご相談ください。

示談交渉のノウハウ有する弁護士なら痴漢被害者と早期に和解契約を締結できる

弁護士に依頼すれば、示談交渉がダラダラと長引くのを防いで短期間で被害者側との合意形成が実現します。

そもそも、示談はあくまでも加害者・被害者の両当事者間での合意形成が前提にあるものなので、「示談交渉の期限」「示談に必要な期間の目安・相場」というものは存在しません。スムーズに合意形成に至れば逮捕後即日で示談書が交わされることもありますし、逆に、示談条件について双方の主張がまとまらなければ数カ月以上交渉が難航するケースも少なくないのが実情です。

ただし、示談交渉が難航して長期化するほど、被疑者・被告人という刑事手続きにおける立場が悪くなる点に注意が必要です。たとえば、逮捕されてすぐに示談が成立すれば検察官送致や勾留請求を回避できたのに、なかなか示談が成立しないと逮捕・勾留による身柄拘束期間が長期化するだけではなく、起訴処分が下されて前科がつく危険性も高まってしまいます。

痴漢事件の示談交渉を弁護士に依頼すれば、「①被害者の連絡先を捜査機関に確認、②被害者への連絡と謝罪の申し入れ、③示談の申し入れと示談金額の提示、④被害者側との条件交渉、⑤示談書の作成、⑥示談金の支払い、⑦警察・検察・裁判所へ示談書を提出」という示談の流れを短期間で実現することが可能となります。刑事手続きの各ステップに設けられた時間制限を考えると、早期の示談成立は今後の人生にとって不可欠だと言えるでしょう。

痴漢事件の示談金が高騰するのを回避できる

痴漢で逮捕されたときに弁護士に相談すれば、示談金の吊り上げや被害者側からの不相当な要求にも厳正に対応してくれるので、示談条件を適正範囲に収めることができるでしょう。

そもそも、痴漢事件を起こした以上、痴漢加害者は被害者に対してあくまでも誠実な対応をする必要があります。”痴漢加害者”という立場を弁えなければいけない以上、「示談金をふかっけてくるのは間違えている」「示談金を吊り上げられて腹が立つ」「加害者から出来るだけ高額の示談金を奪おうとする神経を疑う」などとは口が裂けても言ってはいけません。

ただし、「誠実な対応を求められること」と「被害者側の要求をすべて受け入れること」はかならずしも同義ではありません。たとえば、スカートの上から指先で臀部周辺を数秒間触れたために迷惑防止条例違反に問われたような事件において、「150万円以上を一括払いでなければ示談書にはサインしない」と被害者側から主張されたとしても、示談相場からかなりかけ離れた条件提示なので交渉をする余地は残されています。「迷惑防止条例違反の示談相場は高くても数十万円程度であること」「示談が決裂して民事訴訟に発展したとしても裁判所が認定する慰謝料額は20万円~30万円程度が一般的であること」「加害者の経済事情を酌みしてすぐに支払える最大限の金額が数十万円程度であること」などを誠実かつ粘り強く伝えることによって、強気な被害者からの譲歩を引き出すべきでしょう。

性犯罪の弁護実績や示談交渉の経験豊富な弁護士は、強気な条件提示をする被害者の気を損ねずに譲歩を引き出すノウハウに長けています。適正範囲での”誠意を示す精一杯の示談条件”を相手に理解してもらうには、冷静な交渉を実現できる弁護士の力を頼るのがおすすめです。

「痴漢加害者は痴漢被害者にお金を支払うべき」という理屈は正しいですが、その一方で、「痴漢加害者は痴漢被害者にいくらのお金を支払うべきか」については決まりはありません。あくまでも被害感情と痴漢行為の悪質性などを総合的に考慮してケースバイケースで示談金額が決定されるものなので、金額面での折り合いがつかず、結果として「示談金が安すぎる」などのように被害者の感情を逆撫ですることになってしまいます。痴漢事件の早期解決のポイントは「謝罪と示談金額への納得感をいかに演出できるかです。最初の連絡時の印象、話し方、被害者にかけるべき言葉など、示談に慣れた弁護士は被害者が冷静になるように仕向ける作法に熟知しているので、示談交渉を依頼する専門家選びは慎重に行いましょう。

正式な和解契約書を作成して示談成立後のトラブルを回避できる

弁護士に依頼すれば、必要事項を漏れなく記載した示談書を作成して被害者のサインをもらってくれるので、示談成立後・痴漢事件解決後にトラブルが発展するリスクを回避できます。

痴漢の示談書には、以下の項目が記載されるのが一般的です。

  • 謝罪条項(痴漢をした事実を認め、当該事実に対して反省をしている旨)
  • 示談金についての定め(金額、支払い期限、支払い方法、振込口座など)
  • 清算条項(示談成立後は当事者間に一切の債権債務関係がないことを明示)
  • 接触禁止条項(今後加害者は被害者に接触しない、〇〇線△△駅を利用しないなど)
  • 宥恕条項(示談成立によって被害者が加害者を許し、更なる刑事処罰を望んでいないことを明示)
  • 守秘義務条項(痴漢事件について他言無用)

将来的なトラブルリスクを回避するという観点からは、示談書に盛り込む「清算条項」が重要です。なぜなら、清算条項を明示せずに示談書を交わしてしまうと、今回支払うお金が「何のための示談金か」が不明瞭になってしまい、結果として、示談金を支払った後さらに金銭の支払いを要求される可能性があるからです。悪質な被害者の場合、示談が成立したにもかかわらず、後から会社や実家に連絡するなどの嫌がらせをするケースも少なからず存在します。

示談書は法的拘束力を有する純然たる法的書面なので、法律に詳しくない素人が作成すると”抜け・漏れ・間違い”が生じるリスクが伴います。かならず弁護士の法的知見を反映した示談書を準備してもらいましょう。

痴漢再犯防止に向けたアドバイスも期待できる

痴漢のような性犯罪は再犯率が高い犯罪類型に位置付けられます。そのため、痴漢に及んだ原因が性依存症にあるようなケースでは、性依存症に対するケアを行わなければ根本的な解決にはなりません

刑事事件や性犯罪弁護に力を入れている弁護士に相談すれば、知り合いのカウンセリング施設や専門の医療機関などを紹介してくれます。法的サポート以外の支援も期待できるので、痴漢再犯リスクの軽減を目指せるでしょう。

状況次第では痴漢冤罪も主張してくれる

痴漢冤罪誤認逮捕の被害にあっている場合、被害者の供述や当時の状況から犯行が不可能であったことを証明したり、目撃者の証言を募ったりするなどして、弁護士は無罪獲得の道も探ってくれます

ただし、迷惑防止条例違反等の容疑をかけられて逮捕された後、痴漢行為について否認すると逮捕・勾留期間が長期化する可能性が高いです。しかも、有罪率99%以上とも言われる日本の刑事裁判の実情を踏まえると、どれだけ冤罪を主張しても有罪判決が確定するリスクを排除しきれません。やってもいない痴漢について犯行を認めるのは理不尽なことかもしれませんが、早期に示談を成立させて穏便な解決を図った方がトータルでメリットが大きいとも言えるでしょう。

弁護士に相談すれば、捜査機関や裁判所に冤罪であることを認めさせられる可能性を分析したうえで、一貫して無罪を主張するべきか、無念ながら示談を進めるべきかを判断してくれます。ケースバイケースの慎重な判断が求められるので、かならず痴漢冤罪事件の経験がある弁護士にご相談ください。

痴漢で示談成立を目指すなら弁護士への依頼が必須!早期に相談して円満解決を目指そう

痴漢で逮捕されたときには「早期の示談成立」が重要な防御活動になります。なぜなら、民事的に解決が済んでいるだけで有利な刑事処分を獲得できるからです。

ただし、痴漢のような性犯罪では、怒りや恐怖を覚えている被害者と早期の示談成立を目指すのは簡単ではありません。痴漢事件や示談交渉に力を入れている弁護士にご相談のうえ、示談条件などについて被害者と擦り合わせをしてもらいましょう

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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