切り抜き動画は無断投稿は違法になるか?著作権者から訴えられたときの対処法と弁護士に相談するメリット

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切り抜き動画の無断投稿は違法です。

合法的に切り抜き動画を運用したいなら、著作権者との間で話し合いをして、切り抜き動画の投稿について許可を得てください。

著作権者の許可がないのに切り抜き動画を無断投稿すると、権利者が警察に相談をして、刑事訴追される危険性があります。

著作権法違反の法定刑は重く、初犯でも実刑判決が下されかねません。また、事案の状況次第では、逮捕・勾留によって長期間身柄拘束されることもあり得るでしょう。

そこで、この記事では、切り抜き動画の無断投稿トラブルに巻き込まれた人のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。

  • 切り抜き動画を無断投稿したときに適用される犯罪類型と法定刑
  • 切り抜き動画を合法的に投稿する方法
  • 切り抜き動画の無断投稿を理由に立件されたときの刑事手続きの流れ
  • 切り抜き動画の無断投稿を理由に逮捕されたときに生じるデメリット
  • 切り抜き動画の無断投稿が問題視されたときに弁護士に相談するメリット

目次

切り抜き動画の無断投稿は違法

まずは、切り抜き動画の無断投稿が違法になる理由合法的に切り抜き動画を投稿する方法について解説します。

切り抜き動画とは

切り抜き動画とは、元の長時間動画やライブ配信映像の一部を抽出して短尺に再編集された動画のことです。

「動画の要点だけをチェックしたい」「動画のおもしろいポイントを短時間で楽しみたい」などの視聴者ニーズを満たすものとして普及しています。

元動画の著作権者が認知度を向上させるために切り抜き動画を作成するケースもあれば、著作権者とは違う第三者が切り抜き動画を運用するケースも少なくありません。

切り抜き動画の無断投稿が違法になる理由

切り抜き動画の無断投稿は違法です。

というのも、切り抜き動画の無断投稿は、元動画の著作権者の著作権を侵害しているからです。

著作権とは、著作物に対する権利のことです。切り抜き動画の無断投稿は、以下のような理由で著作権侵害に当たると考えられています。

  • 元動画を無断で編集したり、効果音・テロップを付け足したりしているため、著作権者の「翻案権」を侵害している
  • 切り抜き動画を使って元動画の権利者が望まない人たちに無断で配信しているため、著作権者の「公衆送信権」を侵害している
  • 切り抜き動画を編集する過程で権利者に無断で元動画をコピーしているため、著作権者の「複製権」を侵害している
  • 権利者の意に沿わない形で元動画を編集しているため、「著作者人格権(同一性保持権)」を侵害している

YouTubeやTikTokなどでは無料で他人の動画を視聴できますが、無料配信されている動画であったとしても著作権は発生しています。

ですから、他人のコンテンツを無断で切り抜いて動画を作成などすると、それだけで著作権法違反を理由に法的責任を追及されると理解してください。

「引用」という形式を使えば切り抜き動画を合法的に投稿できるようにも思えますが、「引用」と認められるには、自己の著作物のなかで引用部分が明確に区別されている必要があります。ですから、元動画を切り取って再編集しただけのダイジェスト版が「引用」に該当すると判断される可能性は極めて低いでしょう。

切り抜き動画が違法にならないポイント

切り抜き動画を合法的に投稿する方法は以下のとおりです。

  • 著作権フリーの元動画を利用する
  • 著作権者から切り抜き動画の作成・投稿について許可を得る
  • プラットフォームが用意している収益分配システムを活用する

元動画が著作権フリーなら、そもそも著作権侵害が問題になることはありません。

また、著作権者から切り抜き動画の作成などについて許可を得ておけば著作権侵害の法的責任を問われることはありませんが、権利者との間で、収益の分配割合などの契約条件に関する交渉を要する点に注意が必要です。

さらに、YouTubeやX(旧Twitter)では独自に収益分配システムが用意されているので、このプログラムに参加をして、合法的に切り抜き動画を投稿するのも選択肢のひとつでしょう。

切り抜き動画の無断投稿で問われる法的責任

切り抜き動画を無断投稿したときに問われる責任について解説します。

民事の賠償責任

切り抜き動画を無断投稿すると、著作権者から不法行為に基づく損害賠償責任(民事責任)を追及される可能性があります。

著作権侵害事案の賠償額は非常に高額になることが多いです。たとえば、切り抜き動画が原因で元動画の再生回数などが激減し、収益が低下した場合には、営業損害として金銭賠償を求められるでしょう。

刑事責任

著作権法違反には刑事罰が定められているので、著作権法違反を理由に立件されると、刑事責任を問われてしまいます。

著作権法違反の法定刑は極めて重いので、初犯でも実刑判決が下されかねないでしょう。

プラットフォームから受ける制裁

切り抜き動画を無断投稿すると、プラットフォームの規約違反を理由にペナルティが科される可能性があります。

たとえば、アカウントが一時的に利用停止になったり凍結されたりします。

切り抜き動画の無断投稿が原因で刑事訴追されたときの流れ

切り抜き動画の無断投稿などが原因で逮捕されたときの刑事手続きの流れについて解説します。

  • 警察に逮捕される
  • 警察段階の取り調べが実施される
  • 検察官に送致される
  • 検察段階の取り調べが実施される
  • 検察官が起訴・不起訴を判断する
  • 公開の刑事裁判にかけられる

なお、切り抜き動画の無断投稿が警察に発覚したとしても、逮捕されず、在宅事件として処理されるケースも想定されます。

在宅事件扱いになれば任意ベースで刑事手続きが進められるので、身柄拘束によるデメリットを回避できるでしょう。

切り抜き動画の無断投稿を理由に警察に逮捕される

切り抜き動画の無断投稿が立件されると、警察に逮捕される可能性があります。

切り抜き動画の無断投稿を理由に身柄拘束される場合、通常逮捕されるのが一般的です。

通常逮捕とは、裁判官が事前に発付する逮捕状に基づいて執行される強制的な身柄拘束処分のことです。

ある日いきなり捜査員が自宅にやってきて、そのまま身柄を押さえられて、警察署に連行されます。

「仕事の都合があるから別の日にしてほしい」「連行される前に家族や会社に電話連絡をいれたい」などの希望が受け入れられることはありません。

切り抜き動画の無断投稿が警察にバレるきっかけ

切り抜き動画の無断投稿が捜査機関に発覚する代表的なきっかけとして以下のものが挙げられます。

  • 著作権者などの被害者や閲覧者からの通報
  • サイバーパトロール

切り抜き動画の無断投稿がバレたとしても常に警察に逮捕されるわけではない

切り抜き動画の無断投稿が警察にバレたとしても、必ずしも逮捕されるわけではありません。

というのも、逮捕状が発付されるのは、以下2つの要件を満たしたときだけだからです。

  • 逮捕の理由:被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること
  • 逮捕の必要性:逃亡または証拠隠滅のおそれがあること

つまり、切り抜き動画の無断投稿を示す客観的証拠が存在する場合でも、逃亡または証拠隠滅のおそれがなければ、通常逮捕されずに在宅事件として刑事手続きが進められるということです。

在宅事件扱いになれば日常生活に生じるデメリットが大幅に軽減されるので、切り抜き動画の無断投稿を理由に刑事訴追されたときには、在宅事件処理を目指した防御活動を展開するべきだと考えられます。

切り抜き動画の無断投稿について警察段階の取り調べが実施される

逮捕されたあとは、切り抜き動画の無断投稿について、警察段階の取り調べが実施されます。警察段階の取り調べの制限時間は「48時間以内」と定められています。

逮捕後に実施される警察段階の取り調べは拒絶できません。取り調べ以外の時間帯は留置場に身柄を押さえられるので、帰宅・出社は不可能です。また、スマートフォンなどを使って家族や知人などに連絡することも許されません。

切り抜き動画の無断投稿事件が検察官に送致される

切り抜き動画の無断投稿について警察段階の取り調べが終了すると、事件・身柄・証拠物が検察官に送致(送検)されます。

極めて軽微な刑事事件なら微罪処分によって送検を回避できる場合がありますが、切り抜き動画の無断投稿事件について微罪処分が下されることはありません

切り抜き動画の無断投稿について検察段階の取り調べが実施される

送検されると、切り抜き動画の無断投稿について検察段階の取り調べが実施されます。

検察段階の取り調べの制限時間は「24時間以内」が原則です。警察段階の取り調べと同じように、検察段階の取り調べも受忍する必要があります。

ですから、切り抜き動画の無断投稿事件を起こして逮捕されると、警察段階48時間以内と検察段階24時間以内の合計72時間以内の身柄拘束期間が生じると考えられます。

勾留されると身柄拘束期間が延長される

原則的な72時間以内の取り調べだけでは、公訴提起判断に必要な証拠を収集しきれない可能性があります。

そこで、以下のように、捜査活動において「やむを得ない理由」があるときには、検察官による勾留請求が認められています。

  • 権利者や被害者などへの参考人聴取に時間を要する場合
  • 動画を無断投稿したアカウントを被疑者が管理・運営したかの確認に時間を要する場合
  • 削除済みの無断投稿動画の復元に時間を要する場合
  • 切り抜き動画の無断投稿について被疑者が黙秘・否認をしている場合 など

裁判所が勾留状を発付すると、被疑者の身柄拘束期間は「20日間以内」の範囲で延長されます。

ですから、切り抜き動画の無断投稿を理由に逮捕・勾留されると、検察官が公訴提起するかどうかを判断するまでに、最長23日間の身柄拘束期間が生じると考えられます。

検察官が切り抜き動画の無断投稿事件の起訴・不起訴を決定する

逮捕期限・勾留期限が到来するまでに、検察官が切り抜き動画の無断投稿事件を公訴提起するかどうかを決定します。

起訴処分とは、切り抜き動画の無断投稿事件を刑事裁判にかける旨の判断のことです。これに対して、不起訴処分とは、切り抜き動画の無断投稿事件を刑事裁判にかけることなく検察限りの判断で刑事手続きを終了させる旨の判断を意味します。

日本の刑事裁判の有罪率は極めて高いので、起訴処分が下された時点で有罪になることが事実上決定的です。

ですから、有罪になったり前科がついたりすると困るのなら、刑事裁判で無罪判決獲得を目指すのではなく、不起訴処分獲得を目指した防御活動が重要だといえるでしょう。

切り抜き動画の無断投稿事件が公開の刑事裁判にかけられる

検察官が起訴処分の判断を下した場合には、切り抜き動画の無断投稿事件について公開の刑事裁判が開かれます。

刑事裁判が開かれるタイミングは、起訴処分の1ヶ月〜2ヶ月後が目安です。公訴事実に争いがなければ第1回公判期日で結審しますが、公訴事実を争う場合には複数の公判期日をかけて証拠調べなどがおこなわれます。

実刑判決が下されると今後の社会復帰が難しくなるので、執行猶予付き判決や罰金刑獲得を目指した防御活動が重要になるでしょう。

切り抜き動画の無断投稿を理由に刑事訴追されたときのデメリット4つ

切り抜き動画の無断投稿を理由に逮捕されたときの4つのデメリットを解説します。

  • 実名報道のリスクに晒される
  • 逮捕・勾留によって一定期間身柄を拘束される可能性がある
  • 会社や学校から何かしらの処分を下される可能性が高い
  • 有罪になると前科によるデメリットを強いられる

実名報道される可能性が高い

刑事事件が以下のような事情を有すると、テレビの報道番組やネットニュースで実名報道される可能性があります。

  • 社会的関心の高いトピックに関する刑事事件
  • 被害額が高額、被害が深刻な刑事事件
  • 被疑者が逮捕・起訴された刑事事件
  • 著名人や芸能人、社会的地位が高い人物が起こした刑事事件

切り抜き動画や著作権をめぐる犯罪に関する犯罪は世間の関心が高く、また、被害者側が著名人であることが多いため、実名報道のリスクは高いと考えられます。

一度でも実名報道されると、半永久的にインターネット上に犯罪歴に関する情報が残りつづける点に注意が必要です。たとえば、就職や転職、結婚などに悪影響が生じるだけではなく、家族や子どもの実生活にもさまざまなデメリットを及ぼすでしょう。

逮捕・勾留によって強制的な身柄拘束を強いられる

切り抜き動画の無断投稿事件を起こすと、逮捕・勾留によって強制的に身柄拘束される可能性があります。

想定される身柄拘束期間は以下のとおりです。

  • 逮捕段階の警察による取り調べ:48時間以内
  • 逮捕段階の検察官による取り調べ:24時間以内
  • 勾留段階の検察官による取り調べ:20日以内
  • 起訴後勾留:刑事裁判が終了するまで(保釈が認められない場合に限られる)

身柄拘束期間中は外部と連絡をとったり留置場から出たりできないので、会社や学校に刑事事件を起こしたことがバレる可能性が高いです。また、過酷な留置場生活を強いられるので、心身に相当なストレスがかかるでしょう。

会社や学校から何かしらの処分を下される

切り抜き動画の無断投稿事件が会社や学校にバレると、何かしらの処分を下される可能性があります。

たとえば、被疑者が会社員の場合、就業規則の懲戒規程により、戒告・譴責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇のいずれかの懲戒処分が下されます。実名報道されて会社の社会的信用を毀損してしまった場合などでは、クビになるリスクも生じます。

また、被疑者が学生の場合には、退学・停学などの重い処分が下されて、卒業後の進路にも悪影響が生じかねないでしょう。

前科がつく危険性がある

切り抜き動画の無断投稿の容疑で有罪になると、刑事罰が科されるだけではなく、前科がつく点に注意が必要です。

前科とは、有罪判決を下された経歴のことです。実刑判決だけではなく、執行猶予付き判決や罰金刑が下された場合にも、前科として扱われます

そして、前科持ちになると、今後の社会生活に以下のデメリットが生じます。

  • 前科に関する情報は、履歴書の賞罰欄への記載義務・採用面接時に質問されたときの回答義務が生じるので、就職活動や転職活動の難易度が高くなる
  • 前科を隠したまま内定を獲得したり就職をしたりしても、前科がバレると、経歴詐称を理由に内定が取り消されたり、懲戒解雇されたりする
  • 前科を理由に就業が制限される職業や資格がある(警備員、士業、金融業など)
  • 前科は法定離婚事由に該当すると判断される可能性が高いので、配偶者から離婚を求められると拒絶できない(慰謝料や親権、面会交流などの離婚条件も不利になる可能性が高い)
  • 前科を理由にビザ・パスポートが発給制限されると、海外旅行や海外出張に支障が生じる
  • 前科持ちが再犯に及ぶと刑事処分が重くなる可能性が高い など

切り抜き動画の無断投稿がバレたときに弁護士に相談するメリット3つ

切り抜き動画の無断投稿が発覚したときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください。

というのも、弁護士の力を借りることで、以下3つのメリットを得られるからです。

  • 権利者との間で示談交渉を進めてくれる
  • 刑事手続きを有利に進めてくれる
  • 社会生活に生じたデメリットにも対応してくれる

権利者との間で示談交渉を進めてくれる

切り抜き動画の無断投稿が発覚した場合、すみやかに権利者との間で示談交渉を進める必要があります。

示談とは、紛争当事者が直接話し合いをおこなって民事的解決方法について合意形成を目指すことです。

切り抜き動画の無断投稿トラブルの示談交渉を弁護士に任せることで、以下のメリットを得られるでしょう。

  • 著作権関係のトラブルは賠償額・慰謝料額が高額になりかねないが、弁護士が示談交渉に対応することで、相場どおりの示談金条件まで引き下げることができる
  • 宥恕条項や債務不存在確認条項など、示談書に盛り込むべき内容を精査してくれる
  • 被害届や告訴状の取り下げが期待できるので、起訴猶予処分や執行猶予付き判決などの有利な刑事処分を獲得しやすくなる
  • スピーディーな合意形成を期待できるので、紛争の早期解決を目指せる

刑事事件への対応も期待できる

切り抜き動画の無断投稿が原因で刑事訴追リスクに晒されたとしても、弁護士が代理人に就任することで、刑事手続きにおいて以下のメリットを得やすくなります

  • 早期の示談成立によって、刑事事件化自体を防止できる
  • 不起訴処分(起訴猶予処分)獲得によって、有罪や前科のリスクを回避できる
  • 執行猶予付き判決獲得によって、実刑判決を回避できる
  • 早期に適切な防御活動を講じることによって、逮捕・勾留を回避して、在宅事件として処理される可能性が高まる

特に、今後の社会生活への影響を考えると、検察官から起訴猶予処分の判断を引き出すことができるかがポイントになるでしょう。

起訴猶予処分を下すかどうかを判断するときには、犯人の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重・情状、犯罪後の情況などの諸般の事情が総合的に考慮されるので、刑事実務に詳しい弁護士のサポートが不可欠です。

社会生活に生じるデメリットの回避・軽減も目指してくれる

切り抜き動画の無断投稿がトラブルに発展すると、社会生活にもさまざまな支障が生じかねません。

たとえば、無断投稿が原因でSNSで炎上してしまうと、個人情報が晒されたり、誹謗中傷の被害を受けたりします。弁護士に相談すれば、問題の投稿や記事に対して削除請求をしたり、発信者情報開示請求をして慰謝料請求をしてくれたりするでしょう。

また、切り抜き動画の無断投稿が刑事事件化して会社にバレてしまうと、会社から聞き取り調査を受けて、懲戒処分が下されるリスクに晒されます。弁護士に相談すれば、会社への回答方法についてアドバイスをもらえたり、聞き取り調査に同席してくれたりもします

切り抜き動画の無断投稿をしてしまったときは弁護士に相談しよう

切り抜き動画の無断投稿が問題になったときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください

刑事手続きを有利に進めやすくなるだけではなく、有利な示談条件での民事的解決を期待できるでしょう。

刑事事件相談弁護士ほっとラインでは、インターネットをめぐるトラブルへの対応が得意な弁護士を多数紹介中です。弁護士に相談するタイミングが早いほど有利な解決を実現しやすくなるので、速やかに信頼できる弁護士までお問い合わせください。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、勾留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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