偽札を製造したり、偽札と分かって使用したりすると、通貨偽造罪や偽造通貨行使罪などの重罪の容疑で逮捕されます。これらの犯罪は相当重い法定刑が定められているので、適切な防御活動を尽くさなければ起訴処分や実刑判決が下される可能性が高いです。
特に、近年ではデジタル編集技術・印刷技術が高度に発展しているので、本物と見間違うほどの品質の偽札を製造するのは難しくはありません。そのため、自分で偽札を製造しなくても知らない間に偽札事件に巻き込まれるリスクも高いので注意が必要です。
そこで今回は、過去に偽札を製造した経験があったり、偽札ではないかと疑いながらも使ってしまった経験がある方、また、ご家族が偽札事件に関与した疑いで逮捕された方のために、以下4点について分かりやすく解説します。
- 偽札製造などの犯行に及んで逮捕されるときの犯罪類型
- 偽札製造などの容疑で逮捕されるときの刑事手続きの流れ
- 偽札製造などの事件が原因で逮捕されたときに生じるデメリット
- 偽札製造事件の容疑をかけられたときに弁護士へ相談するメリット
逮捕・勾留による長期間の身柄拘束、前科、実刑判決などの重いペナルティを避けたいなら弁護士のサポートは不可欠です。偽札製造事件などのテクニカルな刑事事件の実績豊富な弁護士に相談をして、適切な防御活動に尽力してもらいましょう。
目次
- 1 偽札の製造等で逮捕されるときの犯罪類型
- 2 偽札の製造で逮捕されるときの刑事手続きの流れ
- 3 偽札の製造で逮捕されたときに生じるデメリット3つ
- 4 偽札の製造で逮捕されるか不安なときに弁護士へ相談するメリット4つ
- 5 偽札製造で逮捕されるか不安なときは早期に弁護士へ相談しよう
偽札の製造等で逮捕されるときの犯罪類型
偽札の製造等に関与してしまうと、以下の犯罪類型に該当するとして逮捕される可能性が生じます。
- 通貨偽造罪
- 通貨変造罪
- 通貨偽造未遂罪・通貨変造未遂罪
- 通貨偽造準備罪・通貨変造準備罪
- 偽造通貨行使等罪
- 偽造通貨等収得罪
- 収得後知情行使等罪
- 外国通貨偽造等罪・偽造外国通貨行使等罪
- 通貨及証券模造取締法違反
通貨偽造罪
通貨偽造罪とは、「行使する目的で、通用する貨幣・紙幣・銀行券を偽造したとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第148条第1項)。
通貨偽造罪の法定刑
通貨偽造罪の法定刑は「無期または3年以上の懲役刑」です。
一見「通貨を偽造する行為」には人の生命身体を脅かす危険性がないようにも思えるので、「無期または3年以上の懲役刑」は重過ぎるようにも映るでしょう。
ただ、通貨偽造罪の保護法益が「通貨の真正に対する公衆の信用」であることを踏まえると、行使目的の通貨偽造行為が有する社会的な危険性の大きさを理解できるはずです。日本国内で通用する「円」に対する公共的信用が失墜すると、個別取引が一切できなくなるだけではなく、国際社会における日本経済の位置付けが大幅に下落しかねません。通貨偽造行為が有する際限ない危険性に鑑みて、通貨偽造罪の法定刑はかなり重く設定されています。
通貨偽造罪の構成要件
通貨偽造罪の成立要件は以下3点です。
- 通用する貨幣・紙幣・銀行券
- 行使の目的
- 偽造
要件1.通用する貨幣・紙幣・銀行券
通貨偽造罪の客体は「通用する貨幣・紙幣・銀行券」です。
まず、「通用する」とは、「日本国内において強制通用力を有すること」を意味します。単に事実上流通していることでは足りません。
次に、通貨偽造罪の客体は、「貨幣・紙幣・銀行券」に限られます。日常的に我々が使用している「1円硬貨・5円硬貨・10円硬貨・50円硬貨・100円硬貨・500円硬貨・1000円札・2000円札・5000円札・10000円札」だけではなく、現在発行されていなくても使用が許可されている”昔のお金“も通貨偽造罪の客体に含まれます。いわゆる「お金(硬貨・紙幣)」のこととご理解ください。なお、電子マネーやビットコインなどの仮想通貨データが偽造されたとしても、通貨偽造罪で逮捕されることはありません。
要件2.行使の目的
通貨偽造罪の実行行為である偽造は「行使の目的」をもって行われる必要があります。
「行使の目的」とは、「真正な通貨として流通に置くこと」です(東京高判昭和29年3月25日)。また、偽造をした本人が行使する場合だけではなく、他人に行使させる目的で偽造をした場合もここに含まれます(最判昭和34年6月30日)。
したがって、「行使の目的」を欠く偽造行為は、通貨偽造罪の対象から排除されます。たとえば、趣味や教材として使用する目的で通貨を偽造した場合は、偽造された通貨が流通に置かれる有意な危険性が発生するとは認められません。
要件3.偽造
通貨偽造罪の実行行為は「偽造」です。
「偽造」とは、「権限のない者が通貨に似た外観のものを制作・製造すること」を意味します。制作・製造された偽造通貨は、一般人にとって真正の通貨であると誤認させる程度に至っていなければいけません(大判昭和2年1月28日、最判昭和25年2月28日)。
たとえば、カラーコピー機を使用して本物そっくりの日本銀行券を製造した場合には、通貨偽造罪が成立すると認定されるでしょう。
通貨変造罪
通貨変造罪とは、「行使する目的で、通用する貨幣・紙幣・銀行券を変造したとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第148条第1項)。
通貨偽造罪の法定刑
通貨変造罪の法定刑は「無期または3年以上の懲役刑」です。
通貨偽造罪と同じく、「通貨の真正に対する公衆の信用」を失墜させるおそれがあるため、重い法定刑が定められています。
通貨変造罪の構成要件
通貨変造罪の成立要件は以下3点です。
- 通用する貨幣・紙幣・銀行券
- 行使の目的
- 変造
要件1.通用する貨幣・紙幣・銀行券
通貨変造罪の客体は「通用する貨幣・紙幣・銀行券」です。
詳しくは、通貨偽造罪の項目をご確認ください。
要件2.行使の目的
通貨変造罪が成立するには、変造行為が「行使の目的」をもって行われる必要があります。
客体と同様、詳しくは通貨偽造罪の項目を参照してください。
要件3.変造
通貨変造罪の実行行為は「変造」です。
「変造」とは、「権限のない者が真正な通貨に加工を施して通貨に似た外観のものを制作・製造すること」を意味します。通貨偽造罪と同じように、変造によって作出されたものは、一般人が真正な通貨であると誤認する程度でなければいけません。
たとえば、本物の1000円札を2枚使って、これをそれぞれ表裏にはがし、切断したうえで糊付けするなどの工作をして、「折りたたまれた1000円札」のような外観を有する物件を作出した場合が変造例として挙げられます(最判昭和50年6月13日)。
なお、「真正な通貨の同一性」を欠く程度にまで加工行為が行われた場合には、通貨変造罪ではなく通貨偽造罪で逮捕されます。
通貨偽造未遂罪・通貨変造未遂罪
通貨偽造罪及び通貨変造罪は未遂犯も処罰対象です(刑法第151条)。
通貨偽造未遂罪・通貨変造未遂罪の法定刑
通貨偽造未遂罪及び通貨変造未遂罪の法定刑は「無期または3年以上の懲役刑」です。未遂犯と既遂犯とでは法定刑に違いはありません。つまり、偽札などを製造しようとしてさまざまな工具等を準備し、いざ実行に移そうとした段階で、場合によっては相当長期の懲役刑が下されかねないということです。
ただし、既遂犯とは違って、未遂犯は偽造・変造の「実行の着手」があったとしても構成要件的結果が発生していないため、個別事案の事情次第では、刑事処分や判決内容が任意的に減軽される可能性があります(刑法第43条本文)。
また、たまたま通貨偽造等の結果が発生しなかった場合とは異なり、偽札製造犯人自身の判断で既遂惹起の危険性を消滅させたケースでは、いわゆる「中止犯」に該当することを理由に、刑事処分や判決内容が必要的に減免されます(同法第43条但書)。
通貨偽造未遂罪・通貨変造未遂罪の構成要件
未遂犯が処罰対象になるのは「実行の着手」があったときです。
そして、実行の着手があったかどうかは、「既遂犯の具体的・客観的な危険が惹起されたか否か」という基準により、偽札製造事件の個別事情を総合的に考慮して判断されます。
たとえば、偽札を製造するための準備を終わらせて実際に成果物を完成させたが、一般人が誤認する程度の仕上がりにまで至らなかった場合、実行の着手があったと認められるので、通貨偽造未遂罪の容疑で逮捕されるでしょう。
以上を踏まえると、通貨偽造等未遂罪で立件された場合には、未遂処罰についての任意的減免や実行の着手の有無などについて、偽札製造事件固有の事情を丁寧に主張・立証することで、軽い刑事処分や判決内容獲得を目指せると考えられます。弁護士の専門分野や経験次第で刑事責任の範囲が大きく変わってしまうので、かならず刑事弁護に力を入れている専門家までご相談ください。
通貨偽造準備罪・通貨変造準備罪
通貨偽造罪及び通貨変造罪は、準備・予備の段階から処罰対象になります(刑法第153条)。
通貨偽造準備罪・通貨変造準備罪の法定刑
通貨偽造準備罪・通貨変造準備罪の法定刑は「3カ月以上5年以下の懲役刑」です。
通貨偽造未遂罪や通貨偽造既遂罪の法定刑と比較すると軽い内容が規定されているため、丁寧に情状を積み重ねることで執行猶予付き判決を獲得できるでしょう。ただし、組織的な偽札製造事件のように悪質性の高い事案や、偽札製造事件の前歴があるような事案では、いきなり実刑判決が下される可能性も否定できません。
なお、通貨偽造等準備罪に該当するような行為に及んだとしても、その後、実際に通貨偽造行為をした場合には、包括一罪として通貨偽造等準備罪は通貨偽造等罪に吸収されます(通貨偽造等罪とは別に通貨偽造等準備罪で逮捕・有罪になることはないということです)。
通貨偽造準備罪・通貨変造準備罪の構成要件
通貨偽造準備罪及び通貨変造準備罪は、「貨幣・紙幣・銀行券の偽造・変造の用に供する目的で、器械・原料を準備したとき」に成立する犯罪類型のことです。
通貨偽造等準備罪の構成要件は以下2点です。
- 貨幣・紙幣・銀行券の偽造・変造の用に供する目的
- 器械または原料の準備
まず、通貨偽造等準備罪が成立するには、準備行為を「貨幣・紙幣・銀行券の偽造・変造の用に供する目的」で行う必要があります。条文上は「偽造・変造をする目的」だけが記載されていますが、「偽造等をした貨幣・紙幣・銀行券を行使する目的」も必要とするのが判例です(大判昭和4年10月15日)。たとえば、自分で保管するコレクション目的で偽札を製造するために原料を準備した場合には、「偽造・変造の用に供する目的」を欠くと考えられるので、通貨偽造等準備罪で処罰されることはありません。
次に、通貨偽造等準備罪の実行行為は「器械または原料を準備する行為」のみです。これ以外の準備行為は本罪の処罰対象外であり、不可罰です。その一方で、自分で偽造するために準備する場合(自己予備)だけではなく、他人の偽札製造に役立たせるために準備する場合(他人予備)も本罪に含まれます(大判昭和7年11月24日)。また、本罪が成立するには「通貨偽造罪などの実行に適した準備」が必要ですが、かならずしも「通貨偽造等が可能な状態まで」に準備が整っている必要はありません(大判大正2年1月23日)。たとえば、偽札製造用のプリンター・用紙・インクなどを購入した場合、通貨偽造等準備罪で逮捕されることになります。
偽造通貨行使等罪
偽造通貨行使等罪とは「偽造または変造した貨幣・紙幣・銀行券を行使したとき、行使の目的で人に交付したとき、輸入したとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第148条第2項)。
偽造通貨行使等罪の法定刑
偽造通貨行使等罪の法定刑は「無期または3年以上の懲役刑」です。
なお、通貨偽造罪と偽造通貨行使罪の両罪が成立する事案では、両罪は「手段と目的」の関係にあるので、牽連犯として科刑上一罪の処理がされます(刑法第54条第1項後段)。
また、偽造通貨行使等罪は未遂犯も処罰対象です(同法第151条)。
偽造通貨行使等罪の構成要件
偽造通貨行使等罪の構成要件は以下2点です。
- 偽造・変造した貨幣・紙幣・銀行券
- 「行使」「行使目的での交付」「輸入」
まず、偽造通貨行使等罪の客体は「偽造・変造した貨幣・紙幣・銀行券(総称して「偽貨」)」です。偽造・変造されているだけで本罪の客体に該当するとされ、「行使の目的で偽造・変造されたこと」までは求められません。また、自分で偽造・変造した場合だけではなく、第三者が偽造・変造した偽貨を行使しただけの場合にも本罪は成立します。
次に、偽造通貨行使等罪の実行行為は、「行使」「行使目的での交付」「輸入」の3つのいずれかです。「行使」は通貨に対する公共の信頼性を直接侵害するものですが、「行使目的での交付」「輸入」は偽貨が流通する前段階を処罰対象とするものです。
「行使」とは、「偽貨を申請な通貨として流通に置くこと」を意味します。スーパーのレジ清算時に店員に対して直接行使する場合が「行使」の典型例ですが、偽札を自動販売機等で使用する場合や両替に使う場合も「行使」に含まれます(最決昭和32年4月25日)。その一方で、偽貨を見せ金として示すだけだったり、偽貨を保管する手段として第三者に預けたりする場合には、流通に置かれたとはいえないので、偽造通貨行使罪で逮捕されることはありません。
「行使目的での交付」とは、「偽貨であることを告げ、または、偽貨であることを知る者に偽貨の占有を移転すること」です(大判明治43年3月10日)。交付行為は有償・無償のいずれでも本罪の処罰対象とされます。なお、偽貨であることを知らない者に買い物などを依頼して偽貨を渡す場合も、「行使目的での交付」に該当するとするのが判例です(「行使」に該当すると主張する有力説も存在しますが、いずれにしても偽造通貨行使等罪が成立することに変わりません)。
「輸入」とは、「外国から日本国内に陸揚げをすること」を意味します。偽造通貨行使等罪は「偽貨が国内に流通することによる通貨の信用性の毀損」を保護法益としている以上、領空・領海内に搬入することだけでは足りません(大判明治40年9月27日)。
偽造通貨等収得罪
偽造通貨等収得罪とは、「行使の目的で、偽造・変造された貨幣・紙幣・銀行券を収得したとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第150条)。
偽造通貨等収得罪の法定刑
偽造通貨等収得罪の法定刑は「3年以下の懲役刑」です。偽造通貨等収得罪は未遂犯も処罰されます(刑法第151条)。
罰金刑が規定されていないため略式手続きを狙うことはできませんが、通貨偽造罪・同行使罪等と比較すると刑罰内容が軽く設定されているので、初犯であれば、執行猶予付き判決獲得を目指しやすいでしょう。
なお、偽貨を収得した後、偽貨を行使した場合には、偽造通貨等収得罪と偽造通貨等行使罪の両罪が成立し、牽連犯として科刑上一罪(重い方の偽造通貨等行使罪の法定刑の範囲内)で処断されます。
偽造通貨等収得罪の構成要件
偽造通貨等収得罪の構成要件は以下3点です。
- 行使の目的
- 偽造または変造された貨幣・紙幣・銀行券
- 収得
まず、偽造通貨等収得罪は「行使の目的」を要する目的犯です。行使の目的なく収得しただけでは、普及している通貨の信頼性を侵害するおそれがないからです。たとえば、偽造された偽札と分かりながら収得して自宅に持ち帰っただけでは、偽造通貨等収得罪で逮捕されることはありません。
次に、偽造通貨等収得罪の客体は「偽造または変造された貨幣・紙幣・銀行券」です。その真貨が日本の通貨・日本国内で普及している外国通貨でなければいけないので、古い通貨で換金性が認められていないものは含まれません。
そして、偽造通貨等収得罪の実行行為は「偽貨の収得」です。収得には、「偽貨を偽貨と知りつつ取得する一切の行為」が含まれます。たとえば、偽貨を購入する行為、偽貨の交付を受ける行為、偽貨を窃取・詐取する行為などが幅広く具体例として挙げられます。
収得後知情行使等罪
収得後知情行使等罪とは、「貨幣・紙幣・銀行券を収得した後に偽造・変造されたものであることを知り、行使または行使目的で人に交付したとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第152条)。
収得後知情行使等罪の法定刑
収得後知情行使等罪の法定刑は「額面価格の3倍以下の罰金刑または科料(ただし、2,000円以下にするのは不可)」です。科料とは、1,000円以上10,000円未満の金銭納付のことを意味します。(刑法第17条)。
たとえば、10000円札の偽札について本罪の構成要件的行為に及んだ場合には、「2,000円超30,000円以下」の範囲で罰金刑が下されることになります。
収得後知情行使等罪の構成要件
収得後知情行使等罪の構成要件は以下2点です。
- 貨幣・紙幣・銀行券を収得した後に偽造・変造されたものだと知ること
- 「行使」「行使目的での交付」
まず、収得後知情行使等罪で逮捕されるには、「貨幣・紙幣・銀行券を収得した後に偽造・変造されたものだと知ること」という時間関係の成立要件が課される点が特徴的です。自ら知って偽札を貰い受けたり製造したりしたケースと比べて、偽貨であることを知らずに収得した場合は刑法的な非難の程度が小さいと考えられるので、収得後知情行使等罪の法定刑は軽く設定されています。
次に、収得後知情行使等罪の実行行為は「行使または行使目的での交付」に限られます。本罪が対象としている行為類型上、偽造通貨行使等罪の対象である「輸入」は考えにくいからです。
外国通貨偽造等罪・偽造外国通貨行使等罪
日本のお金だけではなく、外国の通貨について偽札を製造するなどの行為に及んだ場合にも、逮捕される可能性が生じます。
外国通貨偽造等罪とは、「行使の目的で、日本国内に流通している外国の貨幣・紙幣・銀行券を偽造・変造したとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第149条第1項)。
そして、偽造外国通貨行使等罪とは、「偽造・変造された外国の貨幣・紙幣・銀行券を行使したとき、行使目的で交付したとき、輸入したとき」を対象とする犯罪類型を指します(同法第149条第2項)。
外国通貨偽造罪等の法定刑
外国通貨偽造等罪及び偽造外国通貨行使等罪の法定刑はいずれも「2年以上の有期懲役刑」です。本罪は未遂犯も処罰対象です(刑法第151条)。
後述するように、通貨偽造等罪の客体が「通用する(日本円の)貨幣・紙幣・銀行券」であるのに対して、外国通貨偽造罪等の客体は「流通している(外国通貨単位の)貨幣・紙幣・銀行券」でしかなく、通貨に対する公共的信用する侵害程度が低いと考えられるので、通貨偽造罪・同行使罪と比較して法定刑が軽く設定されています。
外国通貨偽造罪等の構成要件
外国通貨偽造等罪及び偽造外国通貨行使等罪の構成要件については、通貨偽造罪・通貨変造罪・偽造通貨行使等罪の該当箇所を参考にしてください。
なお、外国通貨偽造罪等の客体要件である「日本国内に通用する貨幣・紙幣・銀行券」とは、「事実上流通していること」を意味します。また、日本国内には、日本の主権の及ぶ領域内だけではなく、日本国内に所在する米軍施設も含まれます(最決昭和28年5月25日)。
通貨及証券模造取締法違反
偽札等を製造した場合には、「通貨及証券模造取締法違反」の容疑で逮捕される可能性が生じます。
通貨及証券模造取締法は、「通貨・政府発行紙幣・銀行紙幣・兌換銀行券・国債証券・地方債証券について紛らわしい外観を有するものを製造・販売すること」を処罰対象とする古い法律です。
通貨及証券模造取締法違反の法定刑
通貨及証券模造取締法違反の法定刑は「1カ月以上3年以下の懲役刑」です(同法第2条、刑法施行法第19条)。
同法違反の刑罰が比較的軽く設定されているのは、後述するように、製造の結果作出された偽札などの外観の仕上がりが粗末なので、通貨に対する公共的信用が侵害される程度が低いと考えられるからです。
通貨及証券模造取締法違反の構成要件
通貨及証券模造取締法違反の構成要件は以下2点です。
- 通貨・政府発行紙幣・銀行紙幣・兌換銀行券・国債証券・地方債証券
- ①について紛らわしい外観を有するものを製造・販売
まず、通貨及証券模造取締法違反の客体は「通貨・政府発行紙幣・銀行紙幣・兌換銀行券・国際証券・地方債証券」です。通貨偽造罪の客体である「通用する貨幣・紙幣・銀行券」だけではなく、国債証券・地方債証券も含まれている点が特徴として挙げられます。
次に、通貨及証券模造取締法違反の実行行為は「紛らわしい外観を有するものを製造または販売する」ことです。ここに言う「紛らわしい外観を有するものを製造する行為」は、特に「模造」と呼ばれます。
通貨偽造罪における「偽造」と通貨及証券模造取締法違反における「模造」の違いは、「製造された偽札等が一般人が真正の通貨と誤認する程度に至っているか」という基準によって判別されます。つまり、一般人をして真正の通貨と誤認させる程度に至っているなら通貨偽造罪が、その程度に至っていない場合には通貨及証券模造取締法違反(場合によっては通貨偽造未遂罪)で逮捕されるということです。
たとえば、日本銀行券や貨幣をデザイン化したり、印刷物などに使用したりする場合、図柄の模造の程度・大きさ・材質・「見本文字」の有無・斜線の有無などの事情が総合的に考慮されて偽造か模造かが判断されます。また、紙幣を撮影した画像データをSNSやホームページ・ブログに掲載しただけでは通貨及証券模造取締法違反には該当しませんが、掲載画像をプリントアウトしてしまうと通貨及証券模造取締法違反で逮捕される可能性が生じるでしょう。
【注意!】製造した偽札を使って他人を騙しても詐欺罪は成立しない
偽札を使って商品を購入した場合には、店頭においてレジ店員に対して欺罔行為に及んでいるので、詐欺罪が成立するようにも思えます(刑法第246条第1項)。
しかし、偽札によって商品を詐取したような事案では、「偽造通貨行使罪のみが成立し、詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収されて別罪を構成しない」とするのが判例実務です(大判明治43年6月30日)。なぜなら、もしこのような事案で詐欺罪の成立を認めてしまうと、収得後知情行使罪に該当する行為をしたときにも詐欺罪が成立することとなり、収得後知情行使罪の法定刑を軽くしている趣旨が没却されてしまうからです。
このような詐欺罪と偽造通貨行使罪の関係を踏まえると、たとえば、偽札を使用して自動販売機などで缶ジュース等を購入した場合にも、窃盗罪は偽造通貨行使罪に吸収されると考えられます。
なお、通貨偽造罪の客体に該当する偽札などを活用して詐欺行為に及んだ場合には詐欺罪で逮捕されることはありませんが、通貨偽造罪の客体への該当性が否定される偽札(おもちゃのお金や通貨及証券模造取締法違反に該当する模造品)を使って釣り銭を騙し取るなどの行為に及んだ場合には、事案の個別事情次第では詐欺罪の容疑で逮捕される可能性を否定できません。偽造通貨行使罪や詐欺罪のいずれが適用されるかによって科され得る法定刑の範囲が大幅に変わってくるので、かならず偽札事件などの刑事弁護の実績豊富な専門家までご相談ください。
偽札の製造で逮捕されるときの刑事手続きの流れ
偽札の製造等が捜査機関に発覚した場合、以下の流れで刑事手続きが進められるのが一般的です。
- 偽札製造事件について警察から接触がある
- 偽札製造事件を起こして逮捕されると警察で48時間以内の取調べが実施される
- 偽札製造事件が警察から検察官に送致される
- 偽札製造事件について検察官が起訴処分・不起訴処分を判断する
- 偽札製造事件が刑事裁判にかけられる
偽札製造について警察から接触がある
偽札製造などの疑いをかけられたとき、以下3つのパターンで警察からアプローチがかけられます。
- 通常逮捕
- 現行犯逮捕
- 任意の事情聴取
偽札製造事件が警察にバレると後日逮捕される可能性が高い
偽札の製造や行使が警察にバレると、後日からでも通常逮捕手続きが実施される可能性が高いです。
通常逮捕手続きとは、「裁判官が事前に発付する逮捕令状に基づいて被疑者を身柄拘束する強制処分」のことです(刑事訴訟法第199条第1項)。
たとえば、早朝自宅にいるタイミングを見計らって逮捕状を持参する捜査員に身柄を押さえられると、その時点から第三者に電話連絡したり警察への連行を拒絶したりできません。身柄拘束期間が満了するまでの間は、捜査機関の権限下に置かれます。
偽札製造の容疑で後日逮捕される典型例
逮捕状が発付されるのは、被疑者が通貨偽造罪等に該当する偽札製造事件等を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、かつ、「留置の必要性がある」と判断されるときです。
そして、留置の必要性があると判断される可能性が高いのは、偽札製造事件や被疑者に以下のような事情が存在するケースです。
- 偽札事件に関与した前科・前歴がある
- 偽札業者などの反社会的組織と関わりがある
- 住所不定・職業不明で逃亡のおそれが高い
- 偽札や製造に必要な設備等を廃棄するなど、証拠隠滅のおそれが高い
- 偽札の行使が疑われる事案において名目上の被害者との間で示談が成立していない
- 偽札事件の全貌が掴めていない、偽札総額が相当高額
- 偽札事件についての警察からの出頭要請を拒絶したり、任意の事情聴取に誠実な対応を期待できない
過去の偽札製造事件は公訴時効が完成するまでいつ逮捕されるか分からない
過去に偽札を製造したり、偽札を知りながら使ったりした経験があるなら、「過去の偽札事件が今さらバレるわけない」と油断するのはハイリスクです。
なぜなら、すべての犯罪行為は公訴時効が完成するまでの間、常に後日逮捕されるリスクに晒され続けるものだからです。特に、軽微な万引き事案などとは異なり、通貨偽造罪はかなり厳しい刑罰が定められている重罪です。事件から数カ月~数年が経過したところで、偽札事件が発覚した場合にはかなり力を入れた捜査活動が実施されるのは間違いないので、偽札製造者や行使した犯人の身元が特定されるのは時間の問題でしょう。
通貨偽造罪・偽造通貨行使罪の公訴時効は15年です(刑事訴訟法第250条第2項第2号)。偽札事件を起こしてから15年が経過するまでは後日逮捕リスクに晒されたままなので、過去の偽札製造などについて警察から現段階で問い合わせがないとしても、すみやかに弁護士に相談のうえ採るべき対応策についてアドバイスをもらいましょう。
偽札製造事件への関与を理由に逮捕されると微罪処分は不可能に近い
警察が捜査活動をスタートした事件は送検されて検察官の最終的な意思決定を仰ぐのが原則です。
ただし、例外的な措置として、一定の軽微な犯罪類型や犯情に情状の余地がある場合、被害者と示談済みで初犯のケースなどでは、検察官に送致せずに警察限りの判断で刑事手続きを終結させることが許されています。この例外的な事件処理を「微罪処分」と呼びます。微罪処分を獲得できれば、身柄拘束期間が短期で済むので社会生活への支障を大幅に軽減できますし、前科もつきません。
しかし、万引き犯や置き引きのような比較的軽微な事件なら、警察に逮捕されたとしても「微罪処分」獲得によって刑事手続きの早期終結を実現しやすいですが、偽札製造などの重罪への関与が捜査機関に発覚したケースでは微罪処分を狙うのは現実的ではありません。なぜなら、通貨偽造罪・偽造通貨行使罪などの偽札製造事件は極めて悪質な犯罪類型にカテゴライズされるので、そもそも微罪処分の対象にはならないからです。
したがって、偽札製造などの容疑で逮捕された場合には、「警察段階での刑事手続き終結」ではなく、「不起訴処分獲得による早期の身柄解放」「在宅事件処理による社会生活への悪影響の回避」を目指すのが適切だと考えられます。警察による取調べに対していかに上手に対応できるかで刑事処分の内容・方法は大きく変わってくるので、できるだけ早いタイミングで刑事事件を専門に取り扱っている弁護士までご相談ください。
偽札の製造や行使の現場を押さえられると現行犯逮捕される
通貨偽造罪や偽造通貨行使罪は、現行犯逮捕によって検挙される可能性もあります。
現行犯逮捕とは、「現に罪を行い、または、現に罪を行い終わった者(現行犯人)に対する逮捕処分」のことです(刑事訴訟法第212条第1項)。偽札を製造している器械を稼働させている現場に捜査員が踏み込んできた場合や、偽札を自販機等で使用して警報機が鳴って警察官がかけつけた場合などでは、被疑者が通貨偽造罪等に該当する犯罪行為を働いたことが明白なので、裁判官が事前に発付する令状なしで身柄拘束されます。
通常逮捕と同じように、偽造通貨行使罪等の容疑で現行犯逮捕された場合、家族や会社に電話連絡したり、自宅に荷物を取りに戻ったりすることはできません。犯行現場で所持品などが押収されたうえで、警察署に連行されて強制的に取調べが実施されます。
偽札事件の詳細次第では任意の出頭要請がかけられることもある
偽札製造などの事件が警察に発覚すると通貨偽造等罪や偽造通貨行使等罪の容疑でかならず本格的な捜査活動が実施されますが、「被疑者の身元が特定されたからと言って、かならず通常逮捕手続きが実施されるわけではない」ということを押さえておきましょう。
なぜなら、警察には犯罪究明のためにどのような捜査手法を採用するかについて大幅な裁量権が認められているからです。「偽札を製造した犯人の身柄を緊急的に拘束する必要性が高い」と判断されると逮捕状が請求されますが、「無理矢理身柄拘束する必要性は低いが偽札事件について話を聴かなければいけない」と判断されると任意処分の一環として出頭要請がかけられて取調べが実施されることも少なくありません(刑事訴訟法第197条第1項、第198条第1項)。
偽札製造などの事件を起こしても任意捜査で刑事手続きがスタートする可能性が高いのは以下のようなケースです。任意ベースで刑事手続きを進めてもらえれば身柄拘束に伴うさまざまなデメリットを回避できるでしょう。
- 偽札製造や偽造通貨の行使が大規模・組織的に行われたわけではない
- 偽札製造などの犯行に関する取調べに誠実に対応している
- 偽札製造に関する証拠を隠滅するおそれがない
- 偽札を店舗などで使った場合には名目上の被害者との間で示談が成立している
- 前科・前歴がなく、偽札製造以外の犯歴もない
偽札製造で逮捕されると警察で48時間以内の取調べが実施される
通貨偽造等罪や偽造通貨行使等罪の容疑で逮捕処分が下された場合、警察署で身柄拘束付きの取調べが強制的に実施されます。取調べに対して否認・黙秘するか否かは被疑者の自由ですが、少なくとも取調べ室に連行されて捜査自体は受けなければいけません。
警察段階で実施される逮捕処分に基づく取調べは48時間以内が原則です(刑事訴訟法第203条第1項)。通貨偽造等罪では微罪処分が下される可能性はゼロに近いので、警察段階における48時間以内の取調べが終わった後は、身柄・証拠書類がすべて検察官に引き渡されます。
逮捕処分によって身柄を押さえられてしまうと、選任した弁護士との接見機会以外は外部と一切連絡をとることができません。そのため、逮捕に基づく身柄拘束によるデメリットを回避・軽減したいのなら、「留置の必要性がないこと」を丁寧に説明して在宅事件扱いを目指すか、捜査機関の取調べに対して誠実に対応して身柄拘束期間を短縮化するしかないと考えられます。偽札製造事件の個別事情によって目指すべき方向性は異なるので、弁護士に相談のうえ、適切な防御活動を展開してもらいましょう。
偽札製造で逮捕された後は警察から検察に送致される
偽札を製造して通貨偽造等罪を理由として逮捕されて警察段階の取調べが終了すると、検察官に関係書類・証拠物と合わせて身柄が送致されます。これを「送検」と呼びます(刑事訴訟法第246条本文)。
検察段階での取調べは原則24時間以内とされ、この制限時間内に公訴提起するか否かが判断されます(同法第205条第1項)。
ただし、通貨偽造罪や偽造通貨行使罪のような重罪については、「今まで総額どれだけ偽札を製造してきたのか」「偽札製造のための器械やノウハウをどのように習得したのか」「製造した偽札をどのようなルートに流したのか」など、真相究明のために相当な捜査活動を展開する必要があるため、「警察段階48時間+検察段階24時間」の限られた時間内だけでは、公訴提起するか否かの判断をできない可能性が低くありません。
このように、偽札製造事件について詳しい取調べをする必要がある場合には、検察官によって勾留請求されるケースが多いです。検察官の勾留請求が裁判官に認められると、身柄拘束期間が10日間~20日間の範囲で延長されます(同法第208条各項)。逮捕期間と同様、勾留期間中も弁護人以外の第三者と連絡をとることはできません。
以上を踏まえると、偽札を製造した疑いで逮捕処分が下されると、検察官による公訴提起判断までの間に最大23日間強制的に身柄が拘束されてしまいます。たとえば、学校や会社などへの影響は甚大なもので、今後の人生プランにも大きな支障が生じることになってしまうでしょう。
偽札製造事件について検察官が公訴提起するか否かを判断する
偽札製造事件についての身柄拘束期限が到来する前に、検察官が起訴処分・不起訴処分のいずれを下すか(公訴提起するか否か)を判断します。
起訴処分とは、「偽札製造事件を刑事裁判にかける旨の訴訟行為」のことです。これに対して、不起訴処分とは、「偽札製造事件を刑事裁判にかけずに検察官限りの判断で刑事手続きを終結させる旨の意思表示」のことを意味します。
偽札製造などの容疑で立件された場合、「検察官による不起訴処分を獲得できるか」が防御活動における最大のターゲットになります。なぜなら、日本の刑事裁判の有罪率は約99%と言われる状況なので、検察官による起訴処分が下された時点で有罪判決・前科がほぼ確定してしまうからです。特に、通貨偽造罪等の事件では微罪処分獲得が不可能なので、「不起訴処分獲得」が最初にして最後の砦になるのが実際のところです。
刑事事件を専門に取り扱っている弁護士に相談すれば、接見交通権をフル活用して取調べへの供述内容や対応方法について臨機応変にアドバイスを提供してくれます。逮捕処分が下されてから公訴提起判断までは時間の猶予がそう多くはないので、できるだけ早いタイミングで弁護士までお問い合わせください。
- 嫌疑なし:偽札製造事件を起こした疑いがない
- 嫌疑不十分:偽札製造事件について公判を維持できるほどの証拠が揃っていない
- 起訴猶予:偽札製造等をしたこと自体は間違いないが、被害額や反省の態度等、諸般の事情を考慮すると不起訴が相当
つまり、偽札製造事件を起こした場合、起訴猶予処分を獲得すれば「実刑も前科もなし」で刑事手続き終結を実現できるということです。「重い犯罪に及ぶと絶対に前科がつく」わけではないので、公訴提起判断までは気を抜かずに防御活動に尽力しましょう。
偽札製造について刑事裁判が開かれる
検察官が偽札製造事件について起訴処分を下した場合、1カ月~2カ月後を目安に刑事裁判が開廷されます。通貨偽造罪等については、いわゆる「略式裁判(略式手続き・略式起訴・略式命令)」を利用することはできません。
公訴事実(容疑をかけられている犯罪事実)について争いがなければ、第1回口頭弁論期日で冒頭手続き・証拠調べ手続き・弁論手続きすべての手続きが即日終了して結審します。これに対して、「偽札を製造したのは間違いないが行使するつもりはなかった」「偽札と知らずに使ってしまった」などと公訴事実を争う場合には、複数の口頭弁論期日を経て攻防が繰り広げられます。
偽札製造などについて通貨偽造罪・偽造通貨行使罪の容疑がかけられている場合には、「実刑判決を回避して執行猶予判決を獲得すること」が刑事裁判における防御活動の最大の目標です。
ただし、上述の通り、通貨偽造罪等で逮捕された場合は執行猶予付き判決の要件を満たすのが簡単ではないので、刑事裁判における執行猶予獲得を得意としている弁護士の力を借りて、執行猶予獲得に繋がる以下のポイントについて丁寧に主張立証を尽くしてもらいましょう。
- 深く反省して再犯の可能性がないことを示す
- 家族などの監督を受けながら社会復帰を目指すことを確約する
- 偽札行使などで名目上の被害者がいる場合には示談を成立させる
なお、最終的に実刑判決が下された場合には、刑務所に収監されて服役することになります。刑期中は社会生活と完全に断絶される厳しい生活が待っており、会社や学校をクビになるのは避けられないでしょう。また、どこの刑務所に服役するかは決まっておらず、犯歴や犯罪事実の内容・性別・年齢などが総合的に考慮されて、全国どこかの刑務施設に振り分けられます。
偽札の製造で逮捕されたときに生じるデメリット3つ
偽札の製造が捜査機関に発覚した場合、在宅事件扱いを受けなければ、逮捕・勾留によって長期間身柄拘束される可能性が高いです。
その結果、被疑者・被告人の立場に追い込まれることによって、以下3点のデメリットに晒されます。
- 通貨偽造などの重罪が会社にバレると厳しい懲戒処分を下される可能性が高い
- 通貨偽造などの重罪に関与する学生に対して学校側から厳しい処分が下される可能性が高い
- 偽札の製造などが原因で前科がつくと社会復帰を困難にするさまざまなデメリットが生じる
偽札製造で逮捕されたことが会社にバレると懲戒処分の対象になる
偽札の製造や使用に関与したことが勤務先にバレると、何かしらの懲戒処分が下される可能性が高いです。
懲戒処分の内容は各社の就業規則のルールにしたがって「戒告・譴責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇」のいずれかが選択されるのが一般的ですが、通貨偽造罪や偽造通貨行使罪のような相当悪質な犯罪に関与した場合には懲戒解雇処分が下されても文句は言えないでしょう。これでは、ふたたび就職活動・転職活動を実施するにも前科が障壁となって社会復帰の道が困難になりかねません。
したがって、偽札製造などの容疑をかけられた場合には、「いかに会社にバレずに刑事手続き終結を実現できるか」がポイントになると考えられます。たとえば、在宅事件扱いを受ければ身柄拘束されることがないので会社にバレようはないですし、取調べに誠実に対応すれば勾留されずに2~3日間の欠勤だけで済ませることも可能です。弁護士と適宜コミュニケーションを取りながら、会社にバレない方策についてもアドバイスを貰いましょう。
偽札製造で逮捕されたことが学校にバレると退学処分等の対象になる
偽札の製造や使用に関与したことが学校にバレると、学則・校則のルールにしたがって厳しい処分が下されます。
処分内容は学校側の考え方次第ですが、譴責・注意などの軽い処分ではなく、停学処分・退学処分を覚悟しなければいけません。
したがって、学生が通貨偽造罪等の容疑で逮捕された場合にも、「学校にバレずに刑事手続きを終わらせること」を目標にするべきだと考えられます。弁護士に相談すれば、「学校に連絡しないで欲しい」という陳述書を捜査機関や裁判所に出すなどの予防策を講じてくれるでしょう。
偽札製造で前科がつくと今後の社会生活にさまざまな支障が生じる
偽札の製造等に関与して有罪判決が確定すると「前科」がつきます。実刑判決だけではなく執行猶予付き判決・罰金刑も前科扱いです。
前科がつくと、今後の社会生活に以下の悪影響が生じます。
- 前科情報は履歴書の賞罰欄への記載義務が生じるので、就職活動・転職活動が難しくなる
- 職種・資格次第では有罪判決・実刑判決・前科を理由に就業制限が生じる場合がある
- 前科や逮捕歴は「法定離婚事由」に該当するので、配偶者からの離婚申し出を最終的に拒絶できない
- 通貨偽造は国家反逆罪のようなニュアンスのある重罪なので海外渡航に制限がかかる(パスポートやビザが発給されない)
- 前科・前歴があるだけで、再犯時の刑事処分・判決内容が重くなる可能性が高い
前科を理由とするさまざまな悪影響を回避したいなら、検察段階で不起訴処分を獲得するしか方法は残されていません(冤罪事件は別です)。現段階で偽札事件について警察から問い合わせがない状況でもいつ後日逮捕されるか分からないので、できるだけ早いタイミングで弁護士へ相談して防御活動についてアドバイスを貰いましょう。
偽札の製造で逮捕されるか不安なときに弁護士へ相談するメリット4つ
偽札製造や行使への関与が疑われるときは、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談するのがおすすめです。
なぜなら、通貨偽造罪などの刑事事件を専門に取り扱っている弁護士へ相談することで以下4点のメリットが得られるからです。
- 製造した偽札を使ってしまったときでも被害者との間で早期に示談交渉をスタートしてくれる
- 偽札製造事件について軽い刑事処分を獲得するために法律を駆使してくれる
- 過去に偽札製造に関与したことが警察に発覚していない段階なら自首するべきか否か判断してくれる
- 偽札と知らずに使ってしまっただけなのに冤罪で逮捕された場合でも無罪獲得に向けて尽力してくれる
偽札製造事件で被害者がいるなら早期の示談成立を目指してくれる
通貨偽造罪は「通貨に対する公共的信用」が保護法益なので、傷害罪や万引き事件のように「明白な被害者」は存在しません。そのため、「被害者との間で早期に民事的解決を済ませることによって軽い刑事処分獲得を目指す」という防御活動が展開できない犯罪類型に位置付けられます。
ただし、偽札を店舗などで使用した場合のように偽造通貨行使罪の容疑がかけられるケースでは、「正規貨幣で支払いを受けられていない」という意味で店舗側に損害が生じていると見ることができます。そのため、偽造通貨行使等罪で逮捕された場合には、「名目上の被害者」との間で早期に示談をまとめることが可能です。
偽札製造について法律を駆使して軽い刑事処分獲得を目指してくれる
弁護士に相談すれば、丁寧な防御活動によってできるだけ軽い刑事処分獲得に向けて尽力してくれます。
たとえば、「製造された偽物の通貨の完成度が一般人を誤信させる程度に至っていないから通貨偽造既遂罪は成立しない」「偽札等を製造したこと自体は間違いないが行使目的ではなかった」など、通貨偽造関連の犯罪類型は構成要件該当性自体を争うことができる場合が少なくありません。また、住所や職業が明確で取調べにも否認せず嘘偽りなく供述している状況なら、「逃亡・証拠隠滅がない」ことを理由として逮捕・勾留処分の効力自体を争うことも可能です。
偽札製造事件について自首するべきか否かを判断してくれる
過去の偽札製造などが現段階で捜査機関に発覚していないとしても、公訴時効15年が完成するまで逃げ切れるとは限りません。
弁護士に相談すれば、過去の偽札製造や偽札使用について自首するべきか否かを検討してくれます。なぜなら、自首には刑の任意的減刑という効力があるからです(刑法第42条第1項)。
自首をすると同時に、取調べに対して誠実に対応すれば、不起訴処分や執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高まるでしょう。
偽札と知らずに使ってしまったときには丁寧な主張で無罪獲得を目指してくれる
偽造通貨行使等罪で逮捕された被疑者のなかには、「知らないうちに偽札を掴まされて通報されてしまった」という冤罪パターンもあり得ます。本来、このような事案は「故意」を欠くため、処罰対処には含まれません。
弁護士に相談すれば、偽札を手にするに至った経緯などを丁寧に主張立証しながら、捜査機関の判断が間違いであることを指摘してくれるでしょう。
偽札製造で逮捕されるか不安なときは早期に弁護士へ相談しよう
偽札を製造したり使用したりすると、通貨偽造罪や偽造通貨行使罪などの重罪の容疑で逮捕されます。初犯で軽はずみな気持ちで偽札に関わっただけでも懲役刑が科されるリスクを伴うものです。
したがって、過去の偽札製造について捜査機関の追及が不安なら、警察から連絡が来る前に弁護士に相談して、現段階でできる限りの防御活動を尽くすのがおすすめです。警察への出頭に同行してくれたり、任意聴取への対応方法などについてもアドバイスを提供してくれるでしょう。