いじめは「子ども同士のトラブル」として軽視されることもありますが、実際には重大な人権侵害であり、多くのケースで犯罪として成立し得る行為です。暴力や金銭の要求、暴言、物の破壊、ネット上での誹謗中傷などは刑法上の罪に該当する場合があります。警察へ相談すれば捜査や指導といった対応をしてもらえる可能性があるでしょう。
しかし一方で、仲間はずれや無視といった行為は刑法犯には当たらず、学校や教育委員会など別の窓口での対応が必要になることも少なくありません。いじめ被害者が警察に相談した場合は、被害届の提出から始まり、警察による初期対応や加害者への事情聴取、安全確保などが行われます。
加害者が未成年であっても警察の指導対象となり、状況によっては家庭裁判所での保護処分へ進む場合もあります。警察へ相談する際には、被害内容の記録や証拠の整理、第三者の証言確保といった準備が重要です。
また、警察以外にも教育機関や子ども家庭支援センター、弁護士、専門ホットラインなど相談先は複数あり、状況に応じて併用することが解決への近道となります。本記事では、いじめと犯罪の関係、警察への相談の流れ、加害者への対応、事前準備、そして警察以外の相談窓口について詳しく解説します。
目次
いじめと犯罪の関係性とは
いじめが行われている場合、基本的に警察へ相談をしても良いです。ただし、警察が動けるのはいじめが犯罪行為に該当する場合のみです。いじめとして行われる行為の多くは、犯罪として成立するため、警察への相談で動いてくれる可能性が高いでしょう。
まずは、いじめが犯罪に当たるケースと犯罪に当たらないいじめの例、警察が関与できる範囲と限界について詳しく解説します。
いじめが犯罪にあたるケースとは
いじめとしてよく行われる行為のうち、警察が動ける内容(犯罪に当たるケース)は以下のとおりです。
行為 | 罪状 | 法定刑 |
---|---|---|
暴力を振るう | 暴行罪、傷害罪 | 暴行罪:2年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料 傷害罪:15年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金 |
暴言を吐く | 侮辱罪 | 1年以下の拘禁刑もしくは科料 |
強要する | 強要罪 | 3年以下の懲役 |
金銭を要求する | 恐喝罪(未遂罪)、脅迫罪 | 恐喝罪:10年以下の拘禁刑 脅迫罪:2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
物を隠す・壊す | 窃盗罪、器物損壊罪 | 窃盗罪:10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 器物損壊罪:3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料 |
ネット上での悪口 | 侮辱罪、名誉毀損罪 | 侮辱罪:1年以下の拘禁刑もしくは科料 名誉毀損罪:3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
拘禁刑とは 、2025年6月1日から始まった新しい刑罰です。 これまでの刑罰は、刑務作業が義務付けられていた懲役刑と、刑務作業が義務付けられていない禁錮刑という刑罰がありました。 これらの刑罰が一本化されて拘禁刑となりました。
科料とは罰金刑の一つで、1000円以上1万円未満の金銭納付を命じる刑事罰です。「金銭納付」という意味では、罰金刑と同じですが金額によって、科料と罰金刑、刑罰の種類が変わります。
拘留とは、1日以上30日未満の間、刑事施設へ収監する刑事罰です。刑事罰の内容としては、拘禁刑と同様ですが、収監される期間によって 拘禁刑と拘留で分けられます。また、「拘留」と同じ呼び方で「勾留」というものがあります。勾留は、未決勾留者の身柄を拘束するために行われる手続きであり、まったく異なる内容です。
上記はいずれも犯罪として成立するため、警察へ相談することによって対応してもらえる可能性が高いです。
ただし、14歳未満の少年が犯した犯罪については、刑事罰に問うことができません。それでも、警察への相談によって補導や児童相談所への通報など、さまざまな対応が可能となる可能性があるため、犯罪行為が行われている場合は、直ちに警察への相談を検討しましょう。
犯罪にあたらないいじめの例
いじめ行為のすべてが、犯罪として成立するわけではありません。たとえば、以下のような行為は、犯罪ではないため、警察へ相談をしても動いてもらえない可能性が高いでしょう。
- 仲間はずれにする
- 無視をする
上記のような行為は、刑法犯ではないため犯罪として成立しません。とはいえ、いじめ行為であることに間違いはないため、学校の教師や自分の両親へ相談をしてみましょう。
警察が関与できる範囲と限界
警察は、あくまでも犯罪行為として認められる場合やその疑いがある場合にしか捜査したり、指導したりできません。その行為が犯罪に該当するかどうかを慎重に判断し、犯罪性が高い場合は警察へ相談をしても良いでしょう。
勇気を出して警察へ相談をしたとしても、「犯罪ではないため何もできません」と言われてしまう可能性もあるためです。また、犯罪性が高い場合は、どのようなものでも構いません。可能な限りの証拠を持って行くようにしましょう。
被害者がいじめについて警察に相談した場合
被害者がいじめについて警察に相談をした場合、初めに被害届の提出を行います。その後、警察による初期対応と安全確保が行われ、加害者に対する指導等が行われる流れです。
相談後は、警察ができる範囲内でフォローを行ってくれるため、安心をして相談をしてください。次に、被害者がいじめについて警察へ相談をした場合の流れについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
被害届提出の流れと必要書類
被害届とは、犯罪被害に遭った事実を捜査機関(警察等)へ申告するための書類です。犯罪の申告をする際に、必ずしも被害届を提出する必要はありません。しかし、被害届を提出することによって、「犯罪申告をした」という事実を証明することができます。
警察等の捜査機関は被害届の提出を求められた際、それを受理する義務があります。ただし、被害届を提出したからといって、警察等の捜査機関が犯罪の捜査開始することを保障するわけではありません。
被害届を提出する際は、とくに必要な書類はありません。まずは、被害にあった本人や代理人が警察署へ行って、犯罪被害を主張し、「被害届を提出したい」と伝えてください。
すると、警察官が被害届の様式を用意してくれるため、警察官の指示に従って内容を記載し、提出すれば良いです。必要書類はないものの、可能であれば犯罪に遭った証拠、身分証明書の準備があると良いでしょう。
また、告訴状の提出も同時に検討したほうが良いです。被害届は「犯罪被害に遭った」という事実を申告するための書類であるのに対し、告訴上は加害者側に処罰を求める際に提出する書類です。
警察による初期対応と安全確保の方法
警察へ被害届を提出し、受理された場合は事件性を考慮して捜査を開始します。学校内で行われているいじめの場合は、学校への調査等が行われる流れになるでしょう。
そして、被害者自身の安全確保についても検討されます。パトロールの強化や犯罪指導等といった対応がとられることになるでしょう。
加害者への事情聴取や指導の可能性
犯罪事実が認められた場合は、加害者に対して事情聴取を行います。そのうえで、指導を行う流れとなります。犯罪事実が認められたとしても、直ちに逮捕されるわけではありません。
とくに、加害者が未成年者の場合は慎重な捜査をする必要があります。いじめは学校内で行われているケースが多いため、他の生徒のケア等も慎重に行う必要があるためです。加害者も未成年であることから、犯罪意識の低さ等を慎重に考慮しなければいけません。
とはいえ、加害者に対しては、警察等から厳しく指導されることになるでしょう。犯罪事実であることや同じことを繰り返した場合は、保護処分(少年院送致等)の対象になり得る旨を告知し、更生を促します。
相談後に起こり得る手続きやフォロー
警察へ相談をすることで、加害者は警察から指導されます。その後、一般的にはいじめが終了するケースが多いです。なぜなら、警察や児童相談所の介入によって、自分の行ってきたことを悔い改めるきっかけとなるためです。
警察からは、被害者に対して定期的に「その後どうでしょうか?」といった連絡が来るでしょう。いじめがなくなったのであれば、その後のフォローも終了します。いじめが継続している場合は、警察等の継続的な指導が行われる流れです。
加害者が警察に呼ばれた場合に起こること
加害者が警察に呼ばれた場合は、以下の流れで事件が進んでいきます。
- 事情聴取と供述調書の作成
- 警察による指導・注意・捜査
- 逮捕や書類送検の可能性
次に、加害者が警察に呼ばれた際に起こり得ることについて詳しく解説します。
事情聴取と供述調書の作成
犯罪事実が明らかとなった場合や犯罪の疑いが強い場合、警察は加害者に対して事情聴取を行うことになるでしょう。被害者(いじめられている人)の証言を元に「〇〇の犯罪申告があるけど事実か?」といった内容で事情聴取を行います。
加害者の証言を元に供述調書を取りまとめ、証言内容(調書)を証拠として扱います。その後は、犯罪の程度によるものの、必要な保護処分が取られることとなるでしょう。
必要な書類が揃い次第、警察は検察へ事件を送致します。その後、検察側で内容を精査し加害者を起訴するかどうか判断する流れです。いじめは、未成年者同士で行われることが多いため、基本的には少年審判で保護処分が決定することとなるでしょう。
警察による指導・注意・捜査
犯罪事実が明らかとなった場合は、その程度に応じて指導が行われます。指導の内容はさまざまですが、比較的軽微である場合は、口頭注意で終了します。その後も定期的な指導が行われる可能性があります。しかし、刑事罰に科されたり児童福祉上の措置を取られることもありません。
犯罪程度が著しい場合は、指導のみならず家庭裁判所への送致の可能性があります。さらに悪質な場合は、逮捕や書類送検によって、刑事罰を受ける可能性もあるため注意しましょう。
家庭裁判所へ送致された場合は、観護措置を経て少年審判(大人でいう裁判に近いもの)が行われます。その後、何らかの保護処分が下されることになるでしょう。保護処分については、大まかに以下のとおりです。
- 保護観察処分
- 少年院送致
- 児童自立支援施設送致
少年院送致や児童自立支援施設送致が確定した場合は、一定期間少年院や児童自立支援施設に入所します。親元を離れて生活し、自分のこれまでの生活を見つめ直して更生を目指します。
場合によっては逮捕や書類送検の可能性
犯罪の程度によるものの、逮捕や書類送検の可能性があります。逮捕とは、犯罪を犯した疑いのある者の身柄を一時的に拘束するために行われる手続きです。
14歳未満の少年は、刑事罰の対象にならないため逮捕されることはありません。しかし、14歳以上の少年については、逮捕される可能性があるため注意しましょう。
その後は、未成年者であるため家庭裁判所へ送致されて保護処分が決定する流れです。ただし、相当悪質な事件を起こしてしまった場合は、逆送といって、検察官送致となる可能性があります。
検察官送致となった場合は、成人している大人同様に刑事裁判を受けて刑事罰を受けます。未成年者の場合は、通常は「罰を与える」のではなく「更生を促す」ことを目的としているため、基本的には保護処分で終了します。
しかし、たとえばいじめの延長線上で「相手を殺してしまった」「いじめ対象者の家を燃やした」などのようにとくに重大な事件を起こした場合は逆送となる可能性があります。
法的対応や弁護士との連携の重要性
いじめ被害者、いじめ加害者はいずれにせよ、弁護士との連携が必要不可欠です。加害者となった者については、一定の要件を満たすことで国選付添人(国選弁護人と同様)が付きます。
被害者については、自分自身で弁護人を付ける必要があります。しかし、損害賠償請求等の検討をするにあたって、弁護人の協力が必要不可欠です。できるだけ早い段階で弁護人へ相談することを検討しましょう。
相談前に準備しておくべきこと
いじめ被害者は、警察へ相談する前に以下の準備をしておきましょう。
- いじめ内容を記録する
- 写真・動画・LINEなどの証拠の整理
- 第三者の証言を確保
次に、いじめ被害者が相談前に準備しておくべきことについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
いじめの内容を記録する
事前にいじめの内容を記録しておきましょう。いじめられた記憶を思い出して記録に残すことは、精神的にとても負担になります。しかし、いじめに遭った事実を客観的に証明するために必要なことです。
些細なことでも良いので、以下のポイントを抑えたうえでノート等に記録して残しておいてください。
- いじめの日時
- いじめの日時いじめの内容
- 相手の氏名
- 被害状況
- 証拠がある場合は証拠
たとえば、「◯月◯日、〇〇の授業が終了したあと、〇〇(場所)で〇〇(相手の名前)に頬をグーで殴られた。」のように可能な限り詳しく記録しておくことが大切です。
そして、たとえば殴られたことによって頬が腫れた、あざができたなどの証拠がある場合は、スマートフォン等で撮影しておきましょう。また、病院を受診した場合は、診断書や領収書も残しておくと良いです。
写真・動画・LINEなど証拠の整理
写真や動画、LINEなど可能な限り証拠を残して整理しておきましょう。たとえば、いじめ被害に遭っている状況を誰かが撮影していたのであれば、その人からその状況の動画を入手しておく、誰が動画を撮影していたか記録しておくことが大切です。
後に、警察の捜査が行われた際に「〇〇さんが動画を撮影していた」となれば、警察もその人に対して捜査協力を求めやすくなります。実際に動画が残っていれば、その内容が証拠として扱えます。
そして、LINE上でいじめ被害に遭っている場合は、内容を消さずに残しておく、スクリーンショットを撮っておくことが大切です。たとえば、LINE上で「明日までに〇〇万円持ってこなければ、今日と同じ目に遭わす」といった内容が送られてきていれば、恐喝罪が成立します。
このように、些細なことでも構わないため、可能な限り証拠となることを取りまとめて整理しておくことが大切です。
第三者の証言を確保する
第三者の証言がある場合は、証言も確保しておくと安心です。いじめに加担している人は一部であっても、中には「見て見ぬ振り」をしている人がいるかもしれません。
見て見ぬ振りをしている人の中には、「自分が関与することで、今度は自分がいじめ被害に遭うかもしれない」と思い、何もできずにいる人もいます。そのため、可能な限り協力を求めましょう。
見て見ぬ振りをしている人は、「何もできない自分がもどかしい……」と感じている人も少なくありません。そのため、「第三者として証言してくれるだけで良い」と伝えるだけで、協力してくれるかもしれません。
警察以外の相談窓口との併用
いじめ被害に遭っている人は、いじめの内容次第では警察への相談を検討したほうが良いです。しかし、警察への相談に後ろめたさを感じたり、少し抵抗を感じている人も少なくないでしょう。そういった人は、以下の窓口への相談を検討されてみてはいかがでしょうか。
- 学校・教育委員会への相談
- 子ども家庭支援センターや弁護士への相談
- いじめホットラインや専門機関の活用
次に、警察以外の相談窓口についても詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
学校・教育委員会への相談
いじめ被害に遭っている事実を自分が通っている学校、もしくは通っている学校を管轄する教育委員会へ相談してみましょう。
まずは、担任の先生やいじめ相談を受け付けている担当者がいれば、その担当者、校長先生への相談を検討しましょう。学校側の対応に不満がある場合は、教育委員会へ直接相談をしても良いです。
中には、隠蔽体質の学校もあるため、学校への相談は慎重に判断したほうが良いでしょう。学校へ相談することでいじめがエスカレートする可能性がある場合は、教育委員会へ直接連絡しても良いです。
子ども家庭支援センターや弁護士への相談
子ども家庭支援センターでは、いじめを含む子どもの悩み相談に乗ってくれる場所です。今後の対応方法や適切なアドバイスを受けられます。関係機関との適切な連携も行ってくれるため、安心して相談されてみてはいかがでしょうか。
弁護士への相談は、法的手続きを検討している場合に有効です。犯罪として成立する場合は、警察への被害届・告訴状の提出を行ってくれます。また、いじめ加害者に対して弁護士が介入したことを伝えることで、いじめの抑止に繋がる可能性も高いです。
ただし、弁護士へ相談することで弁護士費用が発生します。未成年者が弁護士費用を捻出することは難しいため、まずは親への相談を検討するべきでしょう。
24時間子供SOSダイヤルや専門機関の活用
「24時間子供SOSダイヤル」は、文部科学省が提供する子どもの悩みや相談を受け付ける窓口です。「警察への相談が怖い」「警察へ相談をしても良いのか?」など、警察への相談を躊躇している人でも気軽に相談できます。
原則として、電話をかけた所在地の教育委員会に繋がる仕組みとなっているため、「学校や教育委員会へ相談をしても意味があるのだろうか?」「教育委員会へ直接相談するのが怖い……」と考えている人でも安心です。
電話番号は「0120-0-78310」です。電話は24時間受け付けています。気軽な気持ちで相談をされてみてはいかがでしょうか。
相談時に注意すべきポイント
いじめ被害を相談する際は、以下のことに注意しましょう。
- 感情的にならず事実を整理して伝える
- 相手と直接やり取りをしない
- 個人情報や証拠の取り扱いに注意
次に、いじめ被害に相談をする際の注意事項についても解説します。これから相談を検討されている人は、ぜひ参考にしてください。
感情的にならず事実を整理して伝える
警察やその他関係機関へいじめ相談をする際、つい、感情があふれてしてしまうことがあるでしょう。悔しかった思いや辛かった思い等を思い出して気持ちが溢れることは、十分に理解できます。
しかし、しっかりと状況を説明しなければ、何も始まりません。相談をする前に、「何を伝えるのか」を明確にしたうえで、冷静に事実を伝えられる準備を進めておきましょう。
相手と直接やり取りしないことの重要性
加害者に対して「警察へ相談をします」等と伝えたくなるかもしれませんが、やめておきましょう。なぜなら、そのように伝えることでいじめがエスカレートしたり、要求がエスカレートする可能性が高まるためです。
最悪の場合、証拠を残しているノートやスマートフォンを破棄されてしまう可能性があります。決して簡単なことではありませんが、感情的にはならず、淡々と行動に移すことがとても大切です。
個人情報や証拠の取り扱いに注意
個人情報や証拠の取り扱いには十分注意しましょう。個人情報を不用意に晒してしまう行為は、あなた自身が不利にとって不利に働いてしまう可能性があるためです。
証拠の取り扱いについても、万が一にも破損したり紛失したりすることのないように、取り扱いに注意しておきましょう。必要に応じてバックアップをとっておくなど、冷静に対応することが求められます。
よくある質問
いじめによる警察への相談でよくある質問を詳しく紹介します。
Q.軽いいじめでも警察に相談できますか?
A.軽いいじめでも、犯罪として成立する場合は警察への相談が可能です。
「軽いいじめ」の内容にもよりますが、たとえば「軽く小突かれた」「脅されてジュースを奢らされた」などの行為でも立派な犯罪です。何度も繰り返し行われているような場合は、悪質性が高いと判断されるため、積極的に警察へ相談しましょう。
Q.相談したら加害者にバレますか?
A.いずれバレる可能性があります。
警察へ相談をすることによって、警察は犯罪(事件)として捜査を開始します。そのため、捜査対象者(加害者)に対して事情聴取を行ったり、必要に応じて関係各所との連携を取るため、バレる可能性が高いと思っておいたほうが良いです。
そもそも、加害者に対していじめ行為をやめさせたり何らかの処罰を求めるにあたって、「相手にバレることなく進めること」自体が不可能です。
もし、相手に知られることによっていじめがエスカレートするのではないか?と懸念されているのであれば、しっかりと証拠を集めておくことが大切です。中途半端に知られてしまうと行動がエスカレートする可能性があるためです。
しっかりと証拠を集めておけば、警察も動かざるを得ません。結果的に、適切に処罰される可能性が高まるためです。
Q.被害届を出さない場合はどうなりますか?
A.被害届を出さなくても、犯罪として成立すれば捜査対象となり得ます。
被害届は、犯罪事実を申告するために提出する書類です。犯罪事実があった場合は、必ずしも被害届を提出する必要がありません。
ただし、被害届を提出することによって、被害者であるあなたが加害者に対して「処罰感情が強い」ということを客観的に証明できます。このことによって、捜査が開始されたり、相手に対する処罰が変わったりする可能性が高いです。
そのため、相手に対する処罰感情が強い場合は、被害届や告訴状は積極的に提出するべきでしょう。
Q.警察に相談しても動いてくれない場合は?
A.弁護士やその他機関への相談を検討しましょう。
警察は、事件性がなければ動くことはできません。しかし、弁護士であれば被害状況に応じて相手にいじめをやめるよう伝えたり、損害賠償請求を行ったりすることができます。
また、犯罪にならない犯罪の場合は、学校や教育委員会へ相談をすることで、学校の先生から加害生徒に対して直接指導を行えます。
Q.相談にかかる費用はありますか?
A.警察への相談は費用が発生しません。
警察への相談については、費用は一切かかりません。ただし、後に弁護士へ相談をする場合は、弁護士費用が発生します。弁護士費用は、弁護士によって異なりますが、学生が1人で負担をするのは難しいでしょう。
そのため、可能であれば親へ相談をしたうえで弁護士への相談や費用の捻出方法を検討されてみてはいかがでしょうか。
まとめ
いじめは単なる人間関係の問題ではなく、多くの場合で犯罪行為として成立し得る深刻な問題です。暴行や傷害、恐喝、器物損壊、侮辱、名誉毀損など、刑法に抵触する行為は警察の介入対象となり、被害届や告訴状の提出を通じて正式な捜査や加害者への指導が行われます。
加害者が未成年であっても警察の指導や児童相談所との連携が可能であり、場合によっては家庭裁判所による保護処分に至ることもあります。一方で、仲間外れや無視などの行為は犯罪には当たらないため、学校や教育委員会、家庭、支援センターなどの枠組みで解決を図る必要があります。
いじめの被害を受けた場合、勇気を持って警察や専門窓口に相談することが重要です。その際には、被害状況を客観的に示すための記録や証拠、第三者の証言を可能な限り準備しておくことが解決を早める鍵となります。
さらに、警察だけでなく、24時間子供SOSダイヤルや弁護士、教育機関など複数の相談先を組み合わせることで、より安心感を持って解決に向かうことができます。いじめを「我慢すべきこと」ではなく「社会全体で解決すべき問題」と捉え、被害者が一人で苦しまずに声を上げられる環境を整えていくことが何よりも大切です。