企業や店舗、学校などで発生するトラブルの中でも、「業務妨害」は刑法で処罰される可能性のある重大な犯罪です。たとえば、SNSでの虚偽の投稿や、悪質なクレーム、無断キャンセル、暴力的な抗議行動なども内容によっては「業務妨害罪」に該当することがあります。
業務妨害は単なる迷惑行為にとどまらず、他人の正当な仕事の遂行を阻害する行為として社会的にも強く非難される行為です。この記事では、「業務妨害罪とは何か」「どのような行為が該当するのか」「逮捕や前科のリスクはどの程度あるのか」について、詳しく解説します。
また、実際に業務妨害で通報された後の流れや、勾留・起訴・刑事裁判に至るまでの経緯についても詳しく解説。「ちょっとしたトラブルが罪になるのか不安」「通報されてしまったがどうすればいいのか」という人は、ぜひ参考にしてください。
目次
業務妨害罪とは?
業務妨害罪とは、他人の業務を妨害する行為を処罰する刑法上の犯罪です。日常生活の中で言う「業務」とは、企業や店舗、病院、学校、役所など、多くの人が関わる社会的活動を指します。
これらの業務を妨害すると、単に当事者だけでなく、従業員や顧客、取引先など、多くの関係者に被害が出る可能性があります。そのため、業務妨害は社会秩序の維持という観点からも刑事罰の対象とされています。
そして、業務妨害罪に該当する犯罪行為は大きく分けて3種類あります。それぞれの特徴や成立要件は異なりますが、いずれも他人の業務の正常な運営を妨げる行為です。まずは、各種類の業務妨害罪について詳しく解説します。
業務妨害罪の種類
刑法と言う法律で規定されている業務妨害罪は、以下の3種類です。
- 偽計業務妨害罪
- 威力業務妨害罪
- 電子計算機損壊等業務妨害罪
これらは目的や手段によって区別され、刑法上の構成要件や処罰内容も異なります。具体的な行為例や成立条件については後述していますので、ぜひ参考にしてください。
偽計業務妨害罪の定義
偽計業務妨害罪とは、虚偽の情報や手段を用いて他人の業務を妨害した場合に成立する犯罪です。刑法第233条に規定されており、主に以下のような行為が該当します。
- 虚偽のクレームや不当な評判を広める
- 偽の注文や予約を入れる
- 虚偽の通知や請求書を送る
偽計業務妨害罪が成立するためには、行為者が故意に虚偽の手段を用い、他人の業務を妨害する意図を持っていることが必要です。つまり、単なる間違いや不注意で虚偽の情報を流した場合は、原則として偽計業務妨害罪には該当しません。
法定刑は「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」です。なお、被害者を受けた損害の大きさや社会的影響の度合いによっても刑が重くなる場合があります。
威力業務妨害罪の定義
威力業務妨害罪は、暴力や威嚇などの「威力」を用いて他人の業務を妨害する行為を行った場合に成立する犯罪です。刑法第234条に規定され、主な行為は以下のとおりです。
- 店舗や会社に押しかけて営業を妨害する
- 従業員や関係者に対する暴行や脅迫
- 集団での妨害行動や座り込み
威力業務妨害罪の場合、実際に被害者が業務を中断したかどうかだけでなく、威力によって業務に支障が生じる恐れがあれば成立することがあります。つまり、未遂の段階でも処罰される可能性があるのです。
この罪の罰則は、2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、または科料とされています。被害の重大性や継続性、行為者の態度によって刑が加重されることもあります。
電子計算機損壊等業務妨害罪の定義
電子計算機損壊等業務妨害罪は、コンピュータやネットワークシステムを破壊したり妨害したりする行為を処罰するもので、刑法第234条の2に規定されています。現代社会では、業務の多くが電子計算機やネットワークを通じて行われるため、この罪の重要性は高まっています。
具体的な行為例は以下の通りです。
- ウイルスやマルウェアを用いて業務用コンピュータを破壊
- サーバーへの不正アクセスや情報改ざん
- 電子メールやシステムへの攻撃による業務妨害
この罪の成立には、行為者が電子計算機等を損壊または業務妨害の目的で操作したことが必要です。単なる操作ミスや過失によるシステム障害は原則として含まれません。
罰則としては、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される場合があります。企業や行政のシステムに対する妨害行為は社会的影響も大きく、刑事処分だけでなく民事上の損害賠償請求も併せて行われることがあります。
業務妨害で通報された後の流れ
業務妨害罪は、刑法犯であり何らかの罪に該当した場合は逮捕、処罰される可能性があるため注意しなければいけません。万が一、業務妨害の罪で逮捕された場合、どのような流れで事件が進んでいくのか?について詳しく解説します。
逮捕
業務妨害の罪に問われた場合、逮捕される可能性があります。逮捕とは、罪を犯した疑いのある人の身柄を一時的に拘束するために行われる手続きです。
逮捕されることによって、最長72時間の身柄拘束が可能となります。逮捕は、強制的に人の身柄を拘束できる手続きであるため、慎重に判断をする必要があります。また、罪を犯した事実があるからと言って、誰でも簡単に逮捕できるわけではありません。
逮捕をするためには、罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠があることに加え、逃亡の恐れや証拠隠滅の恐れがあることが条件です。これらの条件を満たせていない場合は、逮捕することはできません。
ただし、業務妨害の罪を犯している場合は、逮捕されずとも被疑者として任意の取調べに応じる必要があります。その後は、起訴されて刑事裁判にかけられる可能性もあります。つまり、「逮捕されなかったから大丈夫。今後罪に問われることはない」といったことはありません。
勾留請求
逮捕された被疑者は、逮捕から48時間以内に検察官へ身柄付送致されます。その後、検察官が24時間以内に引き続き被疑者の身柄を拘束する必要があるかどうかを判断し、「勾留すべき」と判断された場合は、勾留請求を行います。
勾留請求は、裁判所に対して行い、勾留の有無は裁判官が決定する流れです。勾留が認められた場合は、10日間の身柄拘束が可能となります。ただ一般的には勾留延長が認められるため、さらに10日間、合計20日間の身柄拘束が発生する可能性が高いと思っておきましょう。
勾留請求が認められなかったり、勾留する必要がないと判断された場合は、在宅捜査に切り替わります。在宅捜査に切り替わった場合であっても、業務妨害の罪に問われている状況に変わりはありません。
そのため、「ただ身柄拘束されていない」というだけであって、「何ら罪に問われることはない」というものではないため注意しましょう。
起訴・不起訴の判断
勾留されている被疑者の場合、勾留期間中に検察官が被疑者を起訴するか不起訴とするかを判断します。起訴された場合は、略式起訴もしくは正式起訴のいずれかが選択されます。
略式起訴とは、100万円以下の罰金または科料に対してできる起訴方法であり、刑事裁判を行わずに略式命令(判決に変わるもの)が言い渡されます。刑事裁判が行われない分、早期の事件解決、身柄解放が認められる点がメリットです。
正式起訴された場合は、刑事裁判が行われます。刑事裁判が行われ、判決が確定するまでの間は、原則身柄拘束が継続します。ただし、保釈金を支払って保釈を認める「保釈制度」というものがあります。保釈を目指す人は、弁護人へ相談をしたうえで保釈請求を検討されてみてはいかがでしょうか。
罰金と科料はいずれも金銭納付を命じる財産刑のひとつです。それぞれ異なる点は、金額です。科料は1,000円以上1万円未満の金銭納付を命じる刑罰であり、罰金刑は1万円以上の金銭納付を命じる刑事罰です。ちなみに、罰金刑に上限はありません。
刑事裁判を受ける
正式起訴された場合は、刑事裁判を受けます。刑事裁判では、あなたの犯した罪について有罪か無罪かを判断し、有罪である場合はどの程度の刑罰に処するのが妥当かを判断して判決として言い渡します。
業務妨害の罪となる事実を犯している以上、刑事裁判で無罪判決となる可能性はゼロに近いでしょう。そのため、いかにして減刑を目指すかに照準をあてたほうが良いです。
判決に従って刑に服する
刑事裁判で有罪判決が言い渡された場合は、最終的に言い渡された判決に従って刑に服します。たとえば、拘禁刑が言い渡された場合は、一定期間刑務所に収監されてさまざまなプログラムを実施します。
罰金刑であれば、罰金を支払って事件は終了しますが、罰金を支払えなければ労役場留置となり1日5,000円程度で罰金を支払い終えるまで身柄拘束されることになるでしょう。
逮捕・前科のリスク
業務妨害の罪に問われた場合、逮捕されたり前科がついてしまう可能性があります。これらによるリスクはさまざまなことが考えられます。次に、逮捕・前科によるリスクについても詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
逮捕される場合の条件
逮捕された場合は、身柄を拘束されるため社会的な影響が発生します。たとえば学生であれば学校へ行けない、社会人であれば会社へ出社できない、当然自宅に帰ることもできず、家族に心配をかけてしまう可能性もあるでしょう。
しかし、先ほども解説したとおり、罪を犯したからと言って必ずしも逮捕されるわけではありません。逮捕されるためには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠があること
- 逃亡の恐れがあること
- 証拠隠滅の恐れがあること
まず、あなたが業務妨害の罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠がなければ逮捕はできません。逮捕という行為は、強制的に人の身柄を拘束するための行為です。そのため、万が一にも誤って逮捕をしてはいけません。このことから、「罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠」がなければ逮捕は認められません。
そして、罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠があっても、逃亡の恐れや証拠隠滅の恐れが認められなければ、逮捕はできません。とくに業務妨害罪であっても比較的軽微である場合や、罪を認めて反省しているような場合は、逮捕されない可能性もあります。
前科がつく基準
刑事裁判や略式命令によって有罪判決を受けた場合は、前科が残ります。前科とは、「過去に罪を犯した事実」であり、一生消えることはありません。
たとえば、就職や転職をする際に賞罰欄を記載しなければいけない場合、その欄には過去に有罪判決を受けた内容を記載する必要があります。このことによって、就職や転職に影響を与える可能性があるでしょう。
なお、前科はあくまでも「有罪判決を受けた場合」に付くものです。逮捕をされたけど不起訴処分で終わった、刑事裁判で無罪判決を受けた、という場合は前科は残りません。
社会的信用への影響
業務妨害罪で逮捕されたり前科がついたりすると、社会的な信用を大きく失うおそれがあります。とくに会社員の場合、逮捕の事実や罪を犯した事実を報道等によって職場に知られると、懲戒処分や解雇といった厳しい対応を受けることもあるでしょう。
業務に関連するトラブルやSNSでの投稿が原因の場合は、「会社の信用を傷つけた」と判断される可能性も高いです。また、前科があることで転職や就職活動にも影響が出る可能性があります。
企業は採用時に「素行」や「社会的信用」を重視するため、業務妨害罪の経歴があると採用を見送られるケースもあるでしょう。とくに金融業や公務員など、信頼性が求められる職種では不利になる傾向があります。
さらに、報道やSNSを通じて事件が知られると、近隣住民や知人、友人との関係にも影響が出かねません。社会的評価を失うことで、これまで築いてきた人間関係が崩れるおそれもあるため注意が必要です。
このように、業務妨害罪で前科が付くことは、単なる刑罰にとどまらず、仕事・生活・人間関係など人生全体に長期的な影響を及ぼす可能性があるのです。
就職・資格制限のリスク
業務妨害罪で有罪となり前科が付くと、就職や資格の面でも大きな制限を受けるおそれがあります。とくに、公務員・金融業・教育関係・医療関係など、社会的信用を重視する職種では採用を見送られるケースが少なくありません。
また、弁護士・司法書士・宅地建物取引士・警備員・教員など、一部の国家資格や業務独占資格については、一定期間登録・就業ができなくなる場合があります。たとえば、資格法において「禁錮以上の刑に処された者は登録できない」と定められている場合、刑の執行が終わるまでその資格を失う可能性があります。
さらに、就職活動時の身元調査や、前職からの照会を通じて前科が知られることもあり、採用後のキャリアにも影響するおそれがあります。つまり、業務妨害罪で前科が付くことは、将来の職業選択の幅を大きく狭めるリスクにつながるのです。
具体的な業務妨害の事例
業務妨害罪は、何らかの方法で他人の業務を妨害した場合に成立する犯罪です。主な事例としては、以下のような行為が挙げられます。
- 飲食店レビューでの虚偽投稿
- 会社への嫌がらせ電話
- イベントや試験での妨害
- ネット掲示板での誹謗中傷
- SNSでのデマ拡散
次に、業務妨害罪に該当し得る行為について詳しく解説します。
飲食店レビューでの虚偽投稿
実際に利用していない飲食店について、「食中毒を起こした」「店員の態度が最悪」などのように虚偽の内容を投稿した場合、業務妨害罪に該当するおそれがあります。このような投稿は、店の評判を大きく損ない、来店客の減少や売上低下につながる可能性が高いため、偽計業務妨害罪の対象となります。
口コミサイトやSNS上での軽い書き込みでも、実害や営業への影響が認められれば、刑事事件として立件されるケースがあります。
ただし、実際に店舗を利用し、実体験に基づく口コミである場合は業務妨害の罪は成立しません。たとえば、実際にあなたが「店員の態度が最悪だった」と感じた場合は、その内容を記載しても罪には問われません。
会社への嫌がらせ電話
特定の企業に対して、業務時間中に繰り返し無言電話をかけたり、クレームを装って長時間にわたり対応を強要する行為も、業務妨害罪に該当します。このような行為は、従業員の業務を妨げる「威力業務妨害罪」に当たることがあります。
「ストレス発散」や「腹いせ」のつもりでも、警察への通報や被害届提出につながるケースも少なくありません。
ただし、正当なクレームである場合は業務妨害の罪には問われません。たとえば、特定の企業が提供する商品やサービスに不備があり、そのことに対するクレームや対応を求めている場合は罪に問われません。
イベントや試験の妨害
コンサートやスポーツ大会、資格試験などの開催を妨げる行為も、典型的な業務妨害の一例です。たとえば、虚偽の爆破予告を送信したり、試験会場で騒音を立てるなどして運営を妨げた場合は、威力業務妨害罪が成立する可能性があります。
イベントや試験は多くの人や費用が関わるため、被害が大きく、逮捕・起訴されるリスクも高い傾向にあります。
ネット掲示板での誹謗中傷
インターネット掲示板で特定の企業や店舗、個人に対して根拠のない悪評を書き込む行為も、業務妨害罪として処罰されることがあります。たとえば、「あの会社は詐欺をしている」「あの店は不衛生だ」など虚偽の内容を投稿した場合、閲覧者に誤解を与え、相手の業務を妨げたと判断される可能性があります。
ネット上の書き込みであっても、投稿者の特定は技術的に可能であり、刑事告訴や損害賠償請求に発展することもあります。
SNSでのデマ拡散
SNS上で、特定の会社や店舗に関する虚偽の情報を拡散する行為も、業務妨害罪の対象となります。たとえば、「この店で異物混入があった」「倒産するらしい」といった根拠のない投稿をシェアするだけでも、被害が拡大すれば偽計業務妨害罪に問われる可能性があります。
投稿が拡散されるほど信用失墜の度合いも大きくなるため、意図的なデマ拡散は非常に悪質と判断されやすい行為です。
業務妨害で通報されたときの対処法
あなた自身が業務妨害を犯した認識がなくても、認識の違いで相手側から業務妨害で通報されてしまうケースもあるでしょう。万が一、業務妨害の罪で通報されてしまった場合は、以下の対処法を検討してみましょう。
- 事実確認の徹底
- 軽率な発言やSNS投稿を控える
- 謝罪・示談を検討する
- 弁護士へ相談をする
- 不起訴処分を目指す対応の検討
次に、業務妨害罪で通報された場合の対処法について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
事実確認を徹底する
まずは、どのような理由で通報されたのか、事実関係を正確に確認しましょう。相手がどの行為を「業務妨害」と主張しているのかを把握しないまま対応してしまうと、誤った発言がトラブルを大きくするおそれがあるため注意しましょう。
警察からの事情聴取や連絡があった場合も、感情的にならず、冷静に「いつ・どこで・何をしたのか」を整理することが大切です。SNS投稿や通話記録など、自分の行動を裏付ける証拠がある場合は、削除せずに保管しておきましょう。
軽率な発言やSNS投稿を控える
通報された直後は不安や焦りから、SNSで弁明や反論をしたくなる人も少なくありません。しかし、これらの発言が証拠隠滅や威圧行為と受け取られる可能性があります。そのため、とくに相手や事件内容に関する投稿・コメント・DMのやり取りは控えましょう。
SNS上の発言はスクリーンショットなどで簡単に保存・拡散されるため、不用意な発言が新たなトラブルを生むリスクがあります。自分の立場を守るためにも、発言は控え、弁護士等の専門家の指示を仰ぐことが重要です。
謝罪・示談を検討する
自分の行為に過失や誤解があった場合、被害者との示談や謝罪を検討することで、刑事手続における処分や刑事罰を軽減できる可能性があります。業務妨害罪は親告罪ではありませんが、被害者が許しているかどうかは処分の判断に大きく影響します。
真摯な対応を示すことで、被害届の取り下げや、不起訴処分につながるケースもあります。ただし、示談交渉は慎重に行う必要があるため、弁護士を通して進めることが望ましいです。
親告罪とは、被害者やその関係者から告訴されなければ罪に問えない犯罪を指します。業務妨害に関する罪は、いずれも非親告罪であるため、告訴を必要としません。
弁護士に相談する
業務妨害で通報された場合、早い段階で弁護士に相談することが重要です。弁護士であれば、警察対応の方法や取調べでの発言内容、示談交渉の進め方などを具体的にアドバイスしてくれます。
また、被害者との示談交渉を弁護士が代理で行うことで、感情的な衝突を防ぎ、円滑に解決できる可能性も高まります。とくに、不起訴や前科回避を目指す場合には、弁護士の早期介入が鍵となります。
なお、逮捕された被疑者は一度だけ当番弁護人を呼ぶことができます。ただし、継続的な弁護活動を目的としている制度ではないため、基本的には自分で弁護人を選任したうえで契約を締結する必要があります。
また、在宅捜査となっている人の場合、弁護人が付くのは起訴後です。そのため、不起訴を目指す人にとってはとても遅いため、できるだけ早めに弁護士へ相談することがとても大切です。
不起訴処分を目指す方法
業務妨害で事件化しても、最終的に不起訴処分となれば前科は付きません。不起訴を目指すためには、被害者への謝罪や弁償、示談の成立が非常に重要です。また、悪意がなかったことや反省の意を示すことで、検察官の判断が軽くなる場合もあります。
弁護士を通じて、被害者への誠意を伝え、社会的影響を最小限に抑える活動を行うことで、不起訴の可能性を高められます。万が一起訴された場合でも、執行猶予や減刑を目指す余地がありますので、早めの相談が大切です。
虚偽通報に巻き込まれた場合の対応
あなた自身が、「業務を妨害するつもりはなかった」というケースでも、結果として業務妨害の罪に問われてしまうケースは多くあります。あなたの行為の正当性を主張していく必要があるものの、万が一、虚偽の通報に巻き込まれてしまった場合は、どう対処すれば良いのでしょうか。
次に、虚偽通報に巻き込まれた場合の正しい対応方法についても詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
証拠を残すことの重要性
虚偽の通報に巻き込まれた場合、まず最優先すべきは客観的な証拠を確保することです。通報内容が事実と異なる場合でも、証拠がなければ「虚偽である」と立証することが難しくなります。
防犯カメラ映像、SNSやLINEのやり取り、通話履歴、メール、現場の録音データなど、関係しそうな記録は削除せずに残しておきましょう。警察に事情を説明する際も、これらの証拠があることで、あなたの主張の信頼性が高まります。
虚偽告訴罪で反撃できる可能性
もし相手が意図的に虚偽の内容で通報していた場合、虚偽告訴罪が成立する可能性があります。虚偽告訴罪とは、「人に刑事罰を受けさせる目的で、虚偽の通報や告訴を行う行為」を処罰するものです。
たとえば、あなたを陥れる目的で正当なクレームを業務妨害として通報し、あなたが何らかの業務妨害の罪に問われるようなケースです。
つまり、「事実でないことを知りながら警察に通報した」場合、通報者自身が罪に問われる可能性があります。ただし、この罪を立証するには「虚偽であること」と「刑罰を受けさせる目的」が必要となるため、証拠や経緯を丁寧に整理することが重要です。弁護士を通じて、被害届の提出や刑事告訴を検討しましょう。
慰謝料請求はできるのか
虚偽の通報によって社会的信用を失ったり、職場や家庭で不利益を被った場合、名誉毀損や不法行為に基づく損害賠償請求を行える可能性があります。たとえば、「逮捕された」「会社に知られた」「ネット上で拡散された」といった被害があれば、精神的苦痛に対する慰謝料請求も検討できます。
ただし、相手が「虚偽であると知らなかった」場合などは、請求が認められにくいケースもあるため、法的根拠を整理したうえで慎重に進める必要があります。
弁護士を通じた解決方法
虚偽通報に巻き込まれた場合、自分だけで対応しようとすると、かえって誤解を招いたり、警察とのやり取りで不利になることもあります。弁護士に相談すれば、通報の経緯を整理し、必要に応じて警察や検察との交渉を代行してもらうことができます。
また、相手への慰謝料請求や虚偽告訴罪での対応など、刑事・民事の両面から最適な方針を立ててもらえる点も大きなメリットです。不当な通報によって名誉を傷つけられた場合は、早めに専門家へ相談し、正当な手段で名誉回復を目指しましょう。
よくある質問
業務妨害の罪に関するよくある質問を紹介します。
Q.業務妨害で通報されたら必ず逮捕されますか?
A.必ず逮捕されるとは限りません。
業務妨害の罪を犯したという事実があっても、必ずしも逮捕されるとは限りません。本記事で解説しているとおり、逮捕するためには罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠があること、証拠隠滅や逃亡の恐れがあることが条件です。
仮に、あなたが業務妨害の罪を犯していたとしても、証拠隠滅や逃亡の可能性が低いと判断されれば、逮捕されたり勾留されたりすることはありません。
なお、証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを証明することは難しいものの、素直に罪を認めて反省している態度を示し、比較的軽微であれば逮捕や勾留を回避できるでしょう。
Q.業務妨害で前科がつくのはどんなケースですか?
A.刑事裁判等にて有罪判決が下された場合です。
前科が付く条件は、「有罪判決が下された場合」です。つまり、不起訴処分となった場合や刑事裁判で無罪判決を得られた場合は、前科は付きません。そのため、前科による影響も発生しません。
ただし、捜査対象者となった事実(前歴)は残るため注意しましょう。前歴が何らかの社会生活に影響を与える可能性は低いですが、今後、同じような罪に問われた場合は前歴が影響して厳しい処分や判決が言い渡される可能性が高いです。
Q.ネットでの投稿が業務妨害になる可能性はありますか?
A.あります。
たとえば、ネットへ虚偽の投稿をして特定の企業等の業務を妨害した場合は何らかの業務妨害罪が成立します。具体的には、虚偽の悪評を書いたようなケースが該当します。
たとえば、特定の企業の商品やサービスを実際に利用していないにも関わらず、業務を妨害する目的で「〇〇の商品やサービスは使い物にならない。すぐ壊れた」などのような悪評を書く行為が業務妨害の罪に該当する可能性があります。
ただし、先ほども解説したとおり実際に使用したり体験したりして感じた情報を書き込むこと自体に違法性はありません。
Q.虚偽の通報をされた場合、どう対応すべきですか?
A.まずは、弁護士への相談を検討しましょう。
虚偽の通報をされた場合は、まずは弁護士へ相談をしたうえで対応を検討した方が良いでしょう。また、虚偽の通報をされることによって、あなたが警察の任意の取り調べに応じなければいけない可能性もあります。取り調べに応じる前にも、まずは弁護士に相談をしたうえで、アドバイスを受けてからのほうが良いでしょう。
なお、虚偽通報であることが明らかとなった場合は、損害賠償請求や虚偽告訴罪での告訴検討も可能です。いずれにせよ、弁護人へ相談をしたうえで今後の対応方法を検討することが好ましいでしょう。
Q.弁護士に依頼するとどんなメリットがありますか?
A.処分や減刑に影響を与える可能性が高いです。
業務妨害の罪に問われた場合、遅かれ早かれ弁護人が選任されます。ただ、国選弁護人が付くタイミングは遅いです。たとえば、在宅捜査となっている人である場合は、起訴後に国選弁護人が選任されます。
逮捕・勾留されている被疑者である場合は、勾留確定後に国選弁護人が選任されます。そのため、たとえば不起訴処分を目指している被疑者である場合は、起訴後に選任されてからではとても遅いです。
その点、早期に弁護人へ相談をしておくことによって、不起訴処分となったり仮に起訴されても適切な弁護活動による減刑効果に期待が持てるでしょう。
まとめ
業務妨害罪は、社会生活における秩序を守るために定められた重要な刑罰のひとつです。偽計業務妨害罪・威力業務妨害罪・電子計算機損壊等業務妨害罪のいずれも、他人の業務を妨げた場合に処罰の対象となります。
「軽い気持ちでやった」「悪意はなかった」といった言い訳は通用せず、行為の結果として相手の業務に支障が生じれば罪が成立する可能性があります。また、業務妨害罪で逮捕・起訴されると、前科がついて社会的信用を大きく損なうおそれがあります。
勤務先への影響、就職・転職の制限、資格停止など、人生全体に長く影響することも少なくありません。SNS上の発言や一時的な感情でのトラブル行為が、刑事事件として扱われるケースも増えています。
もし業務妨害の疑いをかけられたり、通報されたりした場合は、早急に弁護士へ相談することが何より重要です。弁護士であれば、逮捕回避・不起訴の可能性を高めるだけでなく、示談や減刑に向けた交渉も行ってくれます。安易な自己判断を避け、法的知識をもって冷静に対応することが、あなたの社会的立場と将来を守る第一歩となるでしょう。