他人のIDやパスワードを取得して不正ログインをしたり、コンピュータウィルスを悪用して不正にプログラムを実行したりすると、ハッキング(クラッキング)を理由に刑事責任を問われる可能性があります。
たとえば、不正アクセス防止法違反や電子計算機使用詐欺罪などの容疑をかけられると、逮捕・勾留によって長期間身柄拘束されたり、初犯でも実刑判決が下されたりしかねません。
そのため、ハッキング(クラッキング)に及んだときには、できるだけ早いタイミングで防御活動を展開して、刑事責任のリスクの回避・軽減を目指すべきだと考えられます。
そこで、この記事では、ハッキング(クラッキング)を理由に刑事訴追リスクに晒されている人のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。
- ハッキング(クラッキング)に適用される罪状・法定刑
- ハッキング(クラッキング)で逮捕されたときの刑事手続きの流れ
- ハッキング(クラッキング)で逮捕されたときに生じるデメリット
- ハッキング(クラッキング)をしたときに弁護士に相談するメリット
目次
ハッキング(クラッキング)とは
まずは、ハッキング及びクラッキングの内容や具体例、適用される可能性がある犯罪類型について解説します。
ハッキングとは
ハッキング(Hacking)とは、技術的な介入によって、他者のデジタルデバイス、コンピュータシステム、コンピュータネットワークなどにアクセスすることです。
ハッキング自体は、必ずしも悪意でおこなわれるわけではありません。たとえば、ホワイトハッカーという存在があるように、ハッキングは、システムの理解、問題解決、セキュリティの向上など、技術的な興味や善意の目的でおこなわれることも多いです。
ハッキングとクラッキングの違い
ハッキングに似た用語として「クラッキング」が挙げられます。
クラッキング(Cracking)とは、情報窃取やシステムの破壊、データ改竄など、悪意ある目的によっておこなわれる違法なハッキングのことです。
ハッキングには善意・悪意のいかなる目的の行為も含まれますが、クラッキングは悪意のものに限られます。
ハッキング(クラッキング)の具体例
ハッキング(クラッキング)の代表的な手口は以下のとおりです。
| 手口 | 具体例 |
|---|---|
| ログイン情報の窃取 | フィッシングサイト・フィッシングメールを使ってログイン情報を騙し取る手法。ユーザーを偽のログインページに誘導し、そこに入力された情報を盗み出して、得られた情報を悪用して不正アクセスが実行される。 |
| マルウェア | トロイの木馬、ランサムウェア、ボットネット、スパイウェアなどのマルウェアを用いで情報を盗難し、対象のコンピュータを遠隔操作したうえで、機密情報やログイン情報を抜き取る。 |
| 脆弱性を狙った攻撃 | OSやソフトウェアの脆弱性・セキュリティ上の弱点を狙ってシステムなどに侵入する。 |
| その他 | AIを利用したハッキング、高度持続型脅威(APT)、中間者攻撃(MITM)、インジェクション攻撃、ファイルレス攻撃、ソーシャルエンジニアリング、ブルートフォースアタック(辞書攻撃)、クロスサイトスクリプティング、SQLインジェクション、ゼロデイ攻撃、ゾンビコンピュータ化など |
ハッキング(クラッキング)に対して適用される犯罪類型と法定刑
違法なハッキング(クラッキング)は犯罪です。
ここでは、ハッキング(クラッキング)に対して適用される可能性がある罪状について具体的に解説します。
不正アクセス禁止法違反
不正アクセス行為の禁止等に関する法律(通称「不正アクセス禁止法」)では、以下の行為を「不正アクセス行為」と定義しています(不正アクセス禁止法第2条第4項各号)。
- アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く。)
- アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報(識別符号であるものを除く。)又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者の承諾を得てするものを除く。次号において同じ。)
- 電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機が有するアクセス制御機能によりその特定利用を制限されている特定電子計算機に電気通信回線を通じてその制限を免れることができる情報又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為
不正アクセス禁止法では、いかなる理由があったとしても、不正アクセス行為を禁止しています(不正アクセス禁止法第3条)。不正アクセス行為に及んだ場合には、「3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金刑」の範囲で処断されます(不正アクセス禁止法第11条)。
また、不正アクセス禁止法では、不正アクセス行為以外にも以下の行為類型を処罰対象としています。
| 処罰対象の行為 | 法定刑 |
|---|---|
| 他人の識別符号を不正に取得する行為 | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑 |
| 不正アクセス行為を助長する行為に及んだ結果、相手方に不正アクセス行為の用に供する目的があることの情を知ってアクセス制御機能に係る他人の識別符号を提供する行為 | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑 |
| 他人の識別符号を不正に保管する行為 | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑 |
| 識別符号の入力を不正に要求する行為 | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑 |
| 不正アクセス行為を助長する行為 | 30万円以下の罰金刑 |
電子計算機使用詐欺罪
ハッキング(クラッキング)によって他人の財物や財産上の利益を取得した場合、電子計算機使用詐欺罪が成立します(刑法第246条の2)。
(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
(電子計算機使用詐欺)
第二百四十六条の二 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
(未遂罪)
第二百五十条 この章の罪の未遂は、罰する。
引用:刑法|e-Gov法令検索
たとえば、ハッキング(クラッキング)によって他人のネットバンクのログインID・パスワードを取得して預貯金残高を引き出したり第三者の預貯金口座に送金したりした場合などが挙げられます。
電子計算機使用詐欺罪の法定刑は「10年以下の拘禁刑」です。また、電子計算機使用詐欺罪は未遂犯も処罰対象とされます。電子計算機使用詐欺未遂罪の法定刑も既遂犯と同じです。
電子計算機使用詐欺罪の法定刑には罰金刑が定められていません。つまり、有罪になったときには、執行猶予がつかない限り、初犯でも実刑判決が下されかねないということです。
ところが、執行猶予がつくためには「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑の言い渡しを受けたとき」という要件を満たす必要があります。電子計算機使用詐欺罪の法定刑は「10年以下の拘禁刑」なので、適切な防御活動を展開しない限り、執行猶予の対象にさえなりません。
ですから、電子計算機使用詐欺罪の容疑で起訴された場合には、刑事裁判経験豊富な私選弁護人に依頼をして、酌量減軽などを目指した防御活動を展開してもらいましょう。
電子計算機損壊等業務妨害罪
ハッキング(クラッキング)に及び、人の業務を妨害した場合には、電子計算機損壊等業務妨害罪が成立します(刑法第234条の2)。
(電子計算機損壊等業務妨害)
第二百三十四条の二 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
引用:刑法|e-Gov法令検索
電子計算機損壊等業務妨害罪の法定刑は「5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金刑」です。電子計算機損壊等業務妨害罪は、未遂犯も処罰対象とされています。
ウイルス作成罪
ハッキング(クラッキング)を実行する目的でコンピュータウイルスなどのマルウェアを作成した場合には、不正指令電磁的記録作成罪が成立します。
また、ハッキング(クラッキング)を実行する目的でマルウェアなどを取得・保管した場合には、不正指令電磁的記録取得罪・不正指令電磁的記録保管罪が成立します。
第百六十八条の二 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
2 正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
3 前項の罪の未遂は、罰する。
(不正指令電磁的記録取得等)
第百六十八条の三 正当な理由がないのに、前条第一項の目的で、同項各号に掲げる電磁的記録その他の記録を取得し、又は保管した者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
引用:刑法|e-Gov法令検索
不正指令電磁的記録作成罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑」です。不正指令電磁的記録作成罪は、未遂犯も処罰対象とされています。
また、不正指令電磁的記録取得罪・不正指令電磁的記録保管罪の法定刑は「2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金刑」と定められています。こちらについては未遂犯の処罰規定は置かれていません。
その他成立する可能性がある犯罪類型
ハッキング(クラッキング)によって収集した情報を使ってSNSなどで「なりすまし」行為に及んだ場合には、名誉毀損罪や侮辱罪などの犯罪が成立する可能性があります。
(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
(侮辱)
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
(親告罪)
第二百三十二条 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
引用:刑法|e-Gov法令検索
名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑」、侮辱罪の法定刑は「1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金刑、または、拘留もしくは科料」と定められています。
名誉毀損罪や侮辱罪は親告罪なので、告訴権者が刑事告訴をしない限り、刑事責任を問われることはありません。
ですから、名誉毀損罪や侮辱罪の容疑をかけられたときには、できるだけ早いタイミングで被害者との間で示談交渉を開始して、告訴状の取り下げを求めてください。
ハッキング(クラッキング)がバレて逮捕されるときの刑事手続きの流れ
ハッキング(クラッキング)が発覚して逮捕されるときの刑事手続きの流れについて解説します。
- 警察に通常逮捕される
- 警察段階の取り調べが実施される
- 検察段階の取り調べが実施される
- 検察官が公訴提起するかどうかを判断する
- 公開の刑事裁判にかけられる
ハッキング(クラッキング)を理由に警察に通常逮捕される
ハッキング(クラッキング)が発覚すると、警察に通常逮捕される可能性が高いです。
通常逮捕とは、裁判所が発付する逮捕令状に基づいて実施される強制的な身柄拘束処分のことです(刑事訴訟法第199条第1項)。
平日早朝の自宅など、被疑者が所在している可能性が高いタイミング・場所を狙って、逮捕状を所持した警察官がやってきます。そして、逮捕状が執行されると、その場で身柄を拘束されて警察署に連行されます。たとえば、「仕事があるから」などの理由で連行されるタイミングを調整することはできません。また、連行される前に家族・会社などに電話連絡をするのも不可能です。
ハッキング(クラッキング)が警察にバレるきっかけ
ハッキング(クラッキング)が警察に発覚する代表的なきっかけは以下のとおりです。
- ハッキング(クラッキング)の被害者や被害を受けた企業などからの相談で発覚する
- SNSで拡散された被害投稿などがサイバーパトロールで発覚する
- IPアドレスなどの情報からハッキング(クラッキング)に及んだ人の個人情報が特定される など
ハッキング(クラッキング)がバレたとしても常に通常逮捕されるわけではない
ハッキング(クラッキング)が警察に発覚したとしても、常に通常逮捕されるわけではありません。
というのも、逮捕状が発付されるのは、裁判所の審査において以下2つの要件を満たしていると判断されるときに限られるからです。
- 逮捕の相当性:被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること
- 逮捕の必要性:逃亡または証拠隠滅のおそれがあること
つまり、ハッキング(クラッキング)に及んだ事実を証明する客観的証拠が存在した状況であったとしても、逃亡または証拠隠滅のおそれがない(逮捕の必要性がない)と判断される状況なら、通常逮捕によって身柄拘束されることはないということです。
逮捕の必要性がないと判断されるためには、捜査活動に対して以下の対応をするのがおすすめです。
- 警察にハッキング(クラッキング)がバレる前なら自首をして積極的に捜査協力をする
- 警察から出頭要請がかかったときに連絡を無視しない
- 任意で実施される事情聴取で嘘をついたり黙秘・否認をしたりしない
- ハッキング(クラッキング)に関する証拠を隠滅しない
- ハッキング(クラッキング)をした事実に対して誠実に反省の態度を示す
- 早急に被害者との間で示談交渉を開始する など
ハッキング(クラッキング)について警察段階の取り調べが実施される
ハッキング(クラッキング)が発覚して不正アクセス防止法などの容疑で警察に逮捕されたあとは、警察段階の取り調べが実施されます。
在宅事件とは異なり、通常逮捕された被疑者には取り調べの受忍義務が課されているため、警察段階の取り調べは拒否できません(どのような供述をするか、取り調べでどのような態度をとるのかは自由です)。また、取り調べが終わったあとは留置場に身柄をとどめられるため、帰宅したり出勤したりするのは不可能です。また、スマートフォンなどの通信機器はすべて取り上げられるので、直接的に外部と連絡をとることもできません。
ただし、逮捕後に実施される警察段階の取り調べには「48時間以内」という制限時間が設けられています(刑事訴訟法第203条第1項)。いつまでも無制限に警察署に身柄を押さえられるわけではありません。そして、48時間以内の取り調べが終了すると、被疑者の身柄と関係書類が検察官に送致されます。
ハッキング(クラッキング)について検察段階の取り調べが実施される
ハッキング(クラッキング)についての警察段階の取り調べが終了すると、送検されて、検察段階の取り調べが実施されます。
警察段階の取り調べと同じように、検察段階の取り調べに対しても受忍義務が課されています。
検察段階の取り調べの制限時間は「原則24時間以内」です(刑事訴訟法第205条第1項)。そして、警察段階「48時間以内」と検察段階「24時間以内」の合計「72時間以内」の取り調べが終了した段階で、検察官が不正アクセス防止法違反事件を公訴提起するか否か判断します。
ハッキング(クラッキング)で逮捕されると勾留される可能性が高い
ハッキング(クラッキング)事件の事情・経緯次第では、原則的な72時間以内の捜査活動だけでは、検察官の公訴提起判断に必要な証拠を収集できないケースも少なくありません。
たとえば、以下のようなやむを得ない事情がある場合、検察官が勾留請求をして、被疑者の身柄拘束期間の延長を求めてくる可能性が高いです(刑事訴訟法第206条第1項)。
- マルウェアなどの解析、クラッキング経路の特定などに時間を要する場合
- ハッキング(クラッキング)によって生じた被害範囲の画定に時間を要する場合
- 海外サーバが利用されているなど、クラッキング行為の全貌を把握するのに時間を要する場合
- 共犯者の存在が疑われる場合、共犯者との供述が一致しない場合
- 客観的証拠に反する供述をしている場合、黙秘・否認をしている場合 など
検察官の勾留請求が認められた場合、被疑者の身柄拘束期間は「10日間~20日間」の範囲で延長されます(刑事訴訟法第208条各項)。勾留期間中も逮捕段階と同じように被疑者の身体・行動の自由は大幅に制限された状態が継続します。
以上を踏まえると、ハッキング(クラッキング)の容疑で逮捕・勾留されると最長23日間の範囲内で身柄拘束されるリスクが生じるといえるでしょう。被疑者の身柄拘束期間が長期化すると、それだけで日常生活に生じるデメリットが大きくなります。速やかに勾留阻止や早期の身柄釈放を目指した防御活動を展開するべきでしょう。
ハッキング(クラッキング)に関して検察官が公訴提起するかどうか判断をする
逮捕期限・勾留期限が到来するまでに、検察官がハッキング(クラッキング)事件を公訴提起するかどうか(起訴処分か不起訴処分か)を決定します。
起訴処分とは、ハッキング(クラッキング)事件を公開の刑事裁判にかける旨の訴訟行為のことです。これに対して、不起訴処分は、ハッキング(クラッキング)事件を刑事裁判にかけることなく検察官の判断で手続きを終了させる旨の意思表示を意味します。
日本の刑事裁判の有罪率は極めて高いです。そのため、刑事裁判にかけられることが確定した時点(検察官が起訴処分を下した時点)で有罪判決が事実上決まってしまいます。
ですから、「有罪になりたくない」「前科をつけたくない」と希望するなら、刑事裁判で無罪判決獲得を目指すのではなく、検察官から不起訴処分の判断を引き出すための防御活動を展開するべきでしょう。
ハッキング(クラッキング)の容疑で公開の刑事裁判にかけられる
ハッキング(クラッキング)の容疑で起訴されると、公開の刑事裁判にかけられます。
公開の刑事裁判が開かれるタイミングは、起訴処分から1ヶ月~2ヶ月頃が目安です。逃亡や証拠隠滅のおそれが継続するなどの事情がある場合には、刑事裁判まで起訴後勾留が継続する可能性があるので注意が必要です。
公訴事実を争わない場合には、第1回公判期日で結審します。これに対して、否認事件では、複数回の公判期日を経て証拠調べや証人尋問などが実施されて判決が言い渡されます。
ハッキング(クラッキング)行為に対して適用される罪状の法定刑は非常に重いため、初犯でも実刑判決が下されかねません。実刑判決が確定すると。刑期を満了するまで刑務所への服役を強いられて社会復帰が難しくなるので、ハッキング(クラッキング)がバレて起訴されたときには、執行猶予付き判決獲得を目指した防御活動を展開するべきでしょう。
ハッキング(クラッキング)がバレて逮捕されたときのデメリット4つ
ハッキング(クラッキング)が発覚して刑事訴追されたときに生じる可能性があるデメリット4つについて解説します。
- 実名報道のリスクに晒される
- 逮捕・勾留によって一定期間身柄拘束される可能性がある
- 会社や学校から何かしらの処分を下されかねない
- 前科によるデメリットに悩まされつづける
ハッキング(クラッキング)をした事実が実名報道される
刑事事件を起こすと、テレビの報道番組やネットニュースなどで実名報道されるリスクに晒されます。
もちろん、すべての刑事事件が実名報道の対象になるわけではありません。実名報道するかどうかは、報道機関側が裁量で決定できるからです。
一般的には、刑事事件に以下のような特徴がある場合に、実名報道のリスクが高まる傾向があります。
- 被疑者が逮捕・起訴された場合
- 被疑者が著名人だったり、社会的に高い地位、役職、職業についていたりする場合
- 生じた被害が甚大な場合
- 社会的関心が高いテーマに関する刑事事件の場合
SNSやAIが普及してデジタル技術に対する関心が高まっている現在、ハッキング(クラッキング)は社会的関心の高いテーマです。
そのため、イタズラのつもりで他人のSNSをのっとったり、企業の公式ホームページなどに不正に侵入したりすると、それだけで実名報道のリスクに晒されると考えられます。
一度でも実名報道されると、半永久的にインターネット上にハッキング(クラッキング)に及んだ情報が残りつづけます。たとえば、結婚や就職など、実生活にもさまざまな悪影響を及ぼしかねないでしょう。
ハッキング(クラッキング)の容疑で一定期間身柄拘束される
ハッキング(クラッキング)の容疑で刑事訴追されると、強制処分によって、長期間身柄拘束されるリスクに晒されます。
刑事手続きにおいて想定される身柄拘束期間は以下のとおりです。
- 警察段階の取り調べ(逮捕段階):48時間以内
- 検察段階の取り調べ(逮捕段階):24時間以内
- 検察段階の取り調べ(勾留段階):最長20日間
- 起訴後勾留:刑事裁判が終了するまで
これだけの身柄拘束期間が生じると、起訴猶予処分や執行猶予付き判決を獲得できたとしても、被疑者の社会生活には以下のように甚大なデメリットが生じる可能性があります。
- 留置場から出れないので帰宅・出社できない
- 厳しい留置場生活で肉体的・精神的なストレスを強いられる
- 接見の機会以外で外部の人とコミュニケーションをとれない
- 学校や会社、家族などに刑事事件を起こした事実を隠しとおしにくくなる
ハッキング(クラッキング)を理由に会社や学校から処分を下される
ハッキング(クラッキング)が刑事事件化した事実が会社や学校にバレると、何かしらの処分を下される可能性があります。
まず、被疑者が会社員の場合、所属している企業が定める就業規則の懲戒規程に基づき懲戒処分が下されます。懲戒処分は、戒告・譴責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇の7種類です。懲戒規程の内容次第ですが、ハッキング(クラッキング)のような悪質な犯罪に関与すると、会社をクビになる事態も想定されます。特に、実名報道よって会社の社会的信用を毀損してしまった場合には、懲戒リスクが高まると理解してください。
また、被疑者が学生の場合、所属している学校の学則・校則に基づき、退学・停学・訓告などの処分が下されます。退学や停学などの重い処分が下されると、今後の進学や就職活動にも大きな支障が出かねません。
ハッキング(クラッキング)で有罪になると前科がつく
ハッキング(クラッキング)がバレて有罪判決が下されると、刑罰が科されるだけではなく、前科がつく点にも注意が必要です。
前科とは、有罪判決を下された経歴のことです。実刑判決だけではなく、執行猶予付き判決や罰金刑が下された場合にも前科者になってしまいます。
そして、前科持ちになると、今後の社会生活に以下のデメリットが生じます。
- 履歴書の賞罰欄への記載義務、採用面接で質問されたときの回答義務が生じるので、就職活動・転職活動の難易度が高くなる
- 記載義務・回答義務に違反して前科の事実を申告せず内定を獲得したり就職を果たしたりすると、その後、前科の事実が発覚すると、経歴詐称を理由に内定が取り消されたり懲戒解雇処分が下されたりする
- 前科を理由に就業が制限される資格・仕事がある(士業、警備員、金融業など)
- 前科を理由に離婚を言い渡されたり結婚話がなくなったりしかねない
- 前科があると、ビザやパスポートの発給制限を受ける場合がある(海外旅行、海外出張に支障が生じる)
- 再犯時の刑事処分が重くなる可能性が高い など
日本の刑事裁判の有罪率を前提とすると、刑事裁判で無罪判決を獲得するのは至難の業です。
ですから、前科によるデメリットを避けたいと希望するなら、「刑事裁判にかけられないこと=検察官から不起訴処分の判断を引き出すこと」が防御目標になるといえるでしょう。
ハッキング(クラッキング)で逮捕リスクに晒されたときに弁護士に相談するメリット3つ
ハッキング(クラッキング)に該当する行為に及んだときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください。
というのも、刑事事件への対応が得意な弁護士に相談・依頼をすることで、以下3つのメリットを得られるからです。
- 被害者との間で示談交渉を進めてくれる
- 自首するべきか否かを検討してくれる、自首に関するサポートを期待できる
- 起訴猶予処分獲得を目指した防御活動を展開してくれる
ハッキング(クラッキング)の被害者との間で示談交渉などを進めてくれる
ハッキング(クラッキング)の被害者がいる場合、早期に示談交渉を開始するのが有効な防御活動になります。
示談交渉とは、刑事事件の加害者・被害者の間で示談条件について話し合いをすることです。
示談交渉がうまくいって和解契約締結に至ると、刑事手続きにおいて以下のメリットを得ることができます。
- 被害者が警察に相談する前に示談が成立すれば、刑事事件化自体を回避できる
- ハッキング(クラッキング)の被害者との間で示談が成立していることを理由に、在宅事件処理される可能性が高まる
- ハッキング(クラッキング)が刑事事件化したとしても、早期の示談成立によって、起訴猶予処分獲得の可能性が高まる
- ハッキング(クラッキング)で起訴されたとしても、示談成立によって執行猶予付き判決を獲得しやすくなる
もちろん、示談交渉はハッキング(クラッキング)に及んだ加害者本人が直接おこなうことも可能です。
ただし、示談交渉は弁護士に依頼をしたほうがスムーズでしょう。示談交渉を弁護士に依頼するメリットとして以下のものが挙げられます。
- 弁護士が代理人に就くことで、捜査機関経由で被害者の連絡先を入手しやすくなる
- 刑事手続きの各段階に間に合うように示談成立を目指してくれる
- 感情的になっている被害者も、弁護士が交渉相手になることで、冷静に話し合いに応じてくれやすくなる
- 宥恕条項や債務不存在条項など、示談書に盛り込むべき内容をしっかりと記載した示談書を作成してくれる
- ハッキング(クラッキング)事件は賠償額が高額になりやすいが、弁護士が代理人に就任することで、相場どおりの示談条件での合意形成を実現しやすくなる
ハッキング(クラッキング)について自首するべきかを検討してくれる
ハッキング(クラッキング)が警察に発覚していない段階なら、自首をするかどうかについて検討をしてください。
自首とは、犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前に犯人自身が捜査機関に犯罪事実を申告し、処罰を求める意思表示をすることです。自首が有効に成立すれば、刑事裁判において自首減軽の恩恵を受けることができますし、起訴猶予処分や在宅事件処理という有利な刑事処分を獲得しやすくなります。
ハッキング(クラッキング)事件が刑事事件化する前の段階で弁護士に相談すれば、自首について以下のメリットを得ることができるでしょう。
- ハッキング(クラッキング)に関する事実関係を聴取したうえで、現段階で自首するべきか、自首よりも前に示談交渉を開始するべきか判断してくれる
- 自首後に実施される事情聴取における供述内容・供述方針を明確化してくれる
- 自首をする際に、警察署まで同行してくれる
ハッキング(クラッキング)がバレても起訴猶予処分獲得を目指してくれる
刑事事件への対応が得意な弁護士に相談・依頼をすれば、起訴猶予処分獲得を目指した防御活動を展開してくれます。
そもそも、ハッキング(クラッキング)が警察にバレたとしても、必ず刑事裁判にかけられるわけではありません。
というのも、検察官が下す不起訴処分は以下3種類に分類されるからです。
- 嫌疑なし:ハッキング(クラッキング)をした客観的な事実が存在しない冤罪、誤認逮捕の場合。
- 嫌疑不十分:ハッキング(クラッキング)をした客観的証拠が不足している場合。
- 起訴猶予処分:ハッキング(クラッキング)をした事実に間違いがなかったとしても、諸般の事情を総合的に考慮すると、検察段階で刑事手続きを終了させてもよいと判断できる場合。
特に重要なのが、検察官から起訴猶予処分の判断を引き出すことができるかというポイントです。
起訴猶予処分にするかどうかを決定するときには、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況が総合的に考慮されます(刑事訴訟法第248条)。
刑事実務に詳しい弁護士に依頼をすれば、起訴猶予処分の判断を引き出すために役立つ情状証拠などを用意してくれるでしょう。
ハッキング(クラッキング)をしたときには弁護士に相談しよう
ハッキング(クラッキング)行為に及んだ場合には、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください。
刑事事件への対応が得意な私選弁護人の力を借りることで、逮捕・勾留による身柄拘束処分のデメリットを回避し、起訴猶予処分を獲得しやすくなるでしょう。
刑事事件弁護士ほっとラインでは、ハッキング(クラッキング)のようなIT犯罪への対応が得意な弁護士を多数紹介中です。弁護士に相談するタイミングが早いほど有利な状況を作り出しやすいので、速やかに信頼できる弁護士までお問い合わせください。