機密情報の持ち出しは何罪?不正競争防止法違反で逮捕されたときの刑事手続きと弁護士に相談するメリットを解説

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勤務先の機密情報(営業秘密)を持ち出した場合、民事の賠償責任だけではなく、刑事責任を問われる可能性があります。機密情報の持ち出しについて刑事責任を問われるケースでは、不正競争防止法違反や業務上横領罪・窃盗罪などの容疑で刑事訴追されるのが一般的です。

たとえば、機密情報の持ち出しを理由に逮捕・勾留されると、数日〜数週間、捜査機関に身柄拘束されかねません。また、不正競争防止法違反は重大犯罪に位置付けられるので、初犯でも実刑判決が下される可能性があります。

そのため、機密情報を持ち出してしまった場合には、速やかに会社側と示談交渉をおこない、早期の民事的解決を目指すべきだと考えられます。

そこで、この記事では、機密情報を持ち出してしまった人のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。

  • 機密情報の持ち出しに対して適用される可能性がある犯罪類型
  • 機密情報の持ち出しを理由に逮捕されたときの刑事手続きの流れ
  • 機密情報の持ち出しを理由に刑事訴追されたときのデメリット
  • 機密情報を持ち出してしまったときに弁護士へ相談・依頼するメリット

目次

機密情報を持ち出したときに問われる可能性がある犯罪類型

機密情報を持ち出したときに問われる可能性がある犯罪類型について解説します。

  • 不正競争防止法違反
  • 業務上横領罪
  • 窃盗罪
  • 背任罪
  • 個人情報保護法違反

不正競争防止法違反

機密情報を持ち出すと、不正競争防止法違反の容疑で逮捕される可能性があります。

不正競争防止法とは、事業者間の公正な競争やこれに関する国際約束の的確な実施を確保するために、不正競争の防止や損害賠償に関する措置などについて定めた法律のことです。

不正競争防止法では、機密情報の持ち出し行為などを処罰する営業秘密侵害罪を定めています。

営業秘密侵害罪の行為類型

不正競争防止法では、営業秘密侵害罪の行為類型として以下のものを定めています(不正競争防止法第2条第1項第4号〜第10号不正競争防止法第21条第1項各号不正競争防止法第21条第2項各号)。

  • 不正取得罪
  • 不正取得後不正使用・開示罪
  • 領得罪
  • 領得後不正使用・開示罪
  • 在職者不正使用・開示罪
  • 退職者不正使用・開示罪
  • 二次取得者不正使用・開示罪
  • 三次取得者不正使用・開示罪
  • 営業秘密侵害品譲渡等罪

営業秘密侵害罪の典型例が不正取得罪です。

不正取得罪は、図利加害目的(不正の利益を得る目的、または、その保有者に損害を加える目的)で、詐欺等行為(人を欺き、人に暴力を加え、または、人を脅迫する行為)または権利侵害行為(財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為その他の保有者の管理を害する行為)により、営業秘密を取得したときに成立します。たとえば、退職間際に権限なく勤務先のサーバー内の顧客情報データに不正にアクセスし、その顧客情報データをUSBメモリーに保存後、外部に持ち出したようなケースが挙げられます。

また、営業秘密侵害罪は、不正に取得された営業秘密の使用・開示だけではなく、二次取得者や三次取得者の不正使用・開示なども処罰対象としています。営業秘密に何かしらの形で不正に関与すると刑事訴追リスクに晒されると理解しておきましょう。

営業秘密とは

営業秘密侵害罪の客体である「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報であって、公然と知られていないもの、のことです(不正競争防止法第2条第6項)。

ここから、営業秘密に該当するには、以下3つの要件を満たす必要があると考えられています。

  1. 秘密管理性
  2. 有用性
  3. 非公知性

第1に、秘密管理性とは、当該情報に接触できる従業員や外部者などから見て、当該情報が企業にとっての秘密情報であるとわかる程度に秘密管理措置がとられていることを意味します。たとえば、書類に「部外秘」「社外秘」などと記載しているケース、当該情報にアクセスできる者が制限されているケース、施錠などがされた部屋に保管されているケースなどが挙げられます。

第2に、有用性とは、当該情報がサービスの生産・販売・経営効率の改善などの経営活動に役立つものであることです。たとえば、設計図、顧客情報、販売マニュアル、実験データ、価格情報、新規事業計画などが幅広く含まれます。

第3に、非公知性とは、当該情報が公然と知られておらず、保有者の管理下以外では一般の第三者が容易に入手できないことです。

営業秘密侵害罪の法定刑

営業秘密侵害罪の法定刑は「10年以下の拘禁刑または2,000万円以下の罰金刑(併科あり)」です。営業秘密侵害罪は未遂犯も処罰対象とされています。

また、法人の代表などが営業秘密侵害行為に及んだときには、両罰規定として、法人に対して「5億円以下の罰金刑」が科されます。

業務上横領罪

機密情報の持ち出し行為は、業務上横領罪が適用される可能性があります。

(業務上横領)
第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の拘禁刑に処する。
引用:刑法|e-Gov法令検索

業務上横領罪は、業務上自己の占有する他人の物を横領したときに成立する犯罪類型のことです。たとえば、業務上機密情報が記録されたファイルを日常的に管理している者が、当該ファイルを外部に持ち出したケースが挙げられます。

業務上横領罪の法定刑は「10年以下の拘禁刑」です。

窃盗罪

機密情報の持ち出し行為の態様次第では、窃盗罪が適用される可能性もあります。

(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
引用:刑法|e-Gov法令検索

窃盗罪は、他人の財物を窃取したときに成立する犯罪類型のことです。たとえば、機密情報が記載された内部資料を管理する者の隙を見計らって当該ファイルを窃取したケースが挙げられます。

窃盗罪の法定刑は「10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑」です。

背任罪

理屈上、機密情報を持ち出すと、背任罪が適用される可能性があります。

(背任)
第二百四十七条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
引用:刑法|e-Gov法令検索

背任罪とは、他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図り、または、本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときに成立する犯罪類型のことです。

ただし、実務上、機密情報の持ち出しについて背任罪の成否が問題になるケースは極めて稀です。ほとんどの機密情報持ち出し事件は、不正競争防止法違反、業務上横領罪、窃盗罪のいずれかで処理されます。

背任罪の法定刑は「5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑」です。

個人情報保護法違反

個人情報に該当する機密情報を持ち出した場合、個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)違反の容疑で摘発される可能性があります。

第百七十九条 個人情報取扱事業者(その者が法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。第百八十四条第一項において同じ。)である場合にあっては、その役員、代表者又は管理人)若しくはその従業者又はこれらであった者が、その業務に関して取り扱った個人情報データベース等(その全部又は一部を複製し、又は加工したものを含む。)を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
引用:個人情報の保護に関する法律|e-Gov法令検索

たとえば、学習塾の生徒の氏名や所属学校、住所、電話番号などのデータを外部に持ち出したケースが挙げられます。

個人情報保護法違反の容疑で検挙される場合の法定刑は「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑」です。

また、個人情報の持ち出しが問題になるケースでは、両罰規定として、個人情報を持ち出された被害者的側面がある法人にも刑事罰が科されている点が特徴的です。両罰規定によって法人に科される刑事罰は「1億円以下の罰金刑」と定められています(個人情報の保護に関する法律第184条第1項第1号)。

機密情報を持ち出して逮捕されたときの刑事手続きの流れ

機密情報を持ち出して逮捕されるときの刑事手続きの流れについて解説します。

  1. 警察に後日逮捕される
  2. 警察段階の取り調べが実施される
  3. 送検される
  4. 検察段階の取り調べが実施される
  5. 検察官が公訴提起するかどうかを判断する
  6. 刑事裁判にかけられる

機密情報の持ち出しを理由に警察に通常逮捕される

機密情報の持ち出しを理由に逮捕されるケースでは、通常逮捕されるのが一般的です。

通常逮捕とは、裁判官が事前に発付する逮捕状に基づき被疑者の身柄を拘束する強制処分のことです(刑事訴訟法第199条第1項)。

通常逮捕は、平日早朝の自宅など、被疑者が所在している可能性が高いタイミングを狙って実施されます。逮捕状が執行されると、その場で身柄を拘束されて警察署に連行されます。連行されるタイミングを調整したり、連行前に家族や会社などに電話連絡をすることはできません。

機密情報の持ち出し事件について逮捕状が発付される要件

機密情報の持ち出しが発覚したとしても、常に逮捕状が発付されるわけではありません。

というのも、逮捕状が発付されるのは、以下2つの要件を満たしたときに限られるからです。

  1. 逮捕の相当性:被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること
  2. 逮捕の必要性:逃亡または証拠隠滅のおそれがあること

つまり、実際に機密情報を持ち出した事実に間違いがない状況でも、逮捕の必要性がないと判断された場合には、逮捕処分を回避できるということです。

逮捕の必要性があると判断されやすいケース、ないと判断されやすいケースについては、以下の表を参考にしてください。

逮捕の必要性があると判断されやすいケース 逮捕の必要性があると判断されにくいケース
・任意の出頭要請に応じない場合
・任意の事情聴取で否認・黙秘をする場合
・被害者との間で示談交渉が進んでいない場合
・持ち出した機密情報データなどを廃棄・損壊するなどして証拠隠滅を図った場合 など
・任意の出頭要請や事情聴取に誠実に対応している場合
・被害者との間で示談が成立して被害弁償が済んでいる場合
・持ち出した機密情報を警察に提出するなどして誠実に捜査協力している場合 など

機密情報の持ち出しが警察にバレるきっかけ

機密情報の持ち出しが警察にバレるきっかけとして以下のものが挙げられます。

  • 顧客からの問い合わせ
  • 転職先からの連絡
  • SNSなどでの情報発信
  • 社内のシステムログなどの監視
  • 退職時の調査
  • 不自然な行動(不必要なタイミングでのPC初期化、普段とは異なる時間帯におけるアクセス、大量のデータダウンロードなど)
  • 被害を受けた企業からの通報 など

機密情報の持ち出しについて警察段階の取り調べが実施される

機密情報の持ち出しがバレて不正競争防止法違反などの容疑で逮捕されたあとは、警察段階の取り調べが実施されます。

逮捕後に実施される警察段階の取り調べについては受忍義務が課されているので、取り調べ自体を拒否することはできません。その代わりに、警察段階の取り調べには「48時間以内」の制限時間が設けられています(刑事訴訟法第203条第1項)。48時間以内の警察段階の取り調べが終了すると、被疑者の身柄や証拠書類などが検察官に送致されます。

逮捕後に実施される取り調べ期間中は、被疑者の身柄は留置場にとどめられます。帰宅したり会社に出勤したりすることはできません。また、スマートフォンなどの所持品はすべて取り上げられるので、家族や会社に自分で直接連絡をとることも不可能です。

機密情報の持ち出しについて検察官に送致される

機密情報の持ち出しについて警察段階の取り調べが終了すると、被疑者の身柄や証拠書類が検察官に送致されます(刑事訴訟法第246条本文)。

なお、理屈上、一定の軽微な刑事事件については、警察段階で刑事手続きが終了する微罪処分に付されますが(刑事訴訟法第246条但書)、不正競争防止法違反事件のような悪質な刑事事件については微罪処分の対象になる可能性はほとんどゼロに近いでしょう。

機密情報の持ち出しについて検察段階の取り調べが実施される

機密情報の持ち出しについて逮捕後、送検されると、検察段階の取り調べが実施されます。

逮捕後の警察段階の取り調べと同じように、検察段階の取り調べにも受忍義務が課されています。また、身柄拘束されている期間中は、外部との連絡などは一切禁止されます。

検察段階の取り調べの制限時間は「24時間以内」です(刑事訴訟法第205条第1項)。

原則として、警察段階「48時間以内」と検察段階「24時間以内」の合計「72時間以内」の取り調べが終了した時点で、機密情報の持ち出しについて起訴するかどうかが判断されます。

機密情報の持ち出しがバレると勾留される可能性が高い

機密情報の持ち出し事件のような複雑な刑事事件の場合、原則的な72時間以内の捜査活動だけでは、検察官の公訴提起判断に必要な証拠を収集しきれない可能性があります。

たとえば、以下のような「捜査活動上のやむを得ない理由」があるときには、検察官による勾留請求が認められています(刑事訴訟法第206条第1項)。検察官の勾留請求を受けて裁判官が勾留状を発付した場合には、被疑者の身柄拘束期間は最長20日間以内の範囲で延長されます(刑事訴訟法第208条各項)。

  • 被疑者が取り調べで黙秘・否認をしたケース
  • 共犯者の供述内容や客観的証拠と反する供述をしたケース
  • 破壊されたUSBやPCなどのデータ復元に時間を要するケース
  • 会社の関係者や不正取得された情報を受け取った人物などに対する参考人聴取に時間を要するケース
  • 防犯カメラ映像やアクセス履歴、ログ情報などの解析に時間を要するケース
  • 不正に持ち出された機密情報がどのような形で悪用・転用されたかの調査に時間を要するケース など

以上を踏まえると、機密情報の持ち出しがバレて不正競争防止法違反などの容疑で逮捕・勾留されると、検察官が起訴・不起訴を決定するまでに最長23日間の身柄拘束を強いられかねないということです。

これでは、仮に検察官から不起訴処分(起訴猶予処分)の判断を引き出すことができたとしても、被疑者の日常生活にはさまざまなデメリットが生じかねないでしょう。

ですから、機密情報の持ち出しがバレて刑事訴追されたときには、「逮捕されないこと」「逮捕されたとしても早期の身柄釈放を目指すこと」が重要な防御活動のひとつになると考えられます。

機密情報の持ち出しについて検察官が公訴提起するかを判断する

逮捕期限・勾留期限が到来するまでに、検察官が機密情報持ち出し事件を公訴提起するかどうか(起訴処分か不起訴処分か)を決定します。

起訴処分とは、機密情報持ち出し事件を公開の刑事裁判にかける旨の訴訟行為のことです。これに対して、不起訴処分は、機密情報持ち出し事件を刑事裁判にかけることなく検察官の判断で手続きを終了させる旨の意思表示を意味します。

日本の刑事裁判の有罪率は極めて高いため、刑事裁判にかけられることが確定した時点(検察官が起訴処分を下した時点)で有罪判決が事実上決まってしまいます。

ですから、「有罪になりたくない」「前科をつけたくない」と希望するなら、刑事裁判で無罪判決獲得を目指すのではなく、検察官から不起訴処分(起訴猶予処分)の判断を引き出すための防御活動を展開するべきだといえるでしょう。

機密情報も持ち出しについて刑事裁判にかけられる

機密情報の持ち出しについて不正競争防止法違反などの容疑で起訴されると、公開の刑事裁判にかけられます。

公開の刑事裁判が開かれるタイミングは、起訴処分から1ヶ月~2ヶ月頃が目安です。逃亡や証拠隠滅のおそれが継続するなどの事情がある場合には、刑事裁判まで起訴後勾留が継続する可能性があります。

公訴事実を争わない場合には、第1回公判期日で結審します。これに対して、否認事件では、複数回の公判期日を経て証拠調べや証人尋問などが実施されて判決が言い渡されます。

機密情報の持ち出しは重大犯罪であり法定刑は重く設定されているため、初犯でも実刑判決が下されかねないのが実情です。実刑判決が確定すると刑期を満了するまで刑務所への服役を強いられて社会復帰が難しくなるので、執行猶予付き判決や罰金刑などの有利な量刑判断を引き出すための防御活動が重要になるといえるでしょう。

機密情報の持ち出しがバレたときに生じるデメリット5つ

機密情報の持ち出したがバレたときに生じる可能性がある5つのデメリットについて解説します。

  1. 民事責任を追求される可能性が高い
  2. 会社から懲戒処分を下される可能性が高い
  3. 実名報道のリスクに晒される
  4. 長期間身柄拘束される危険性がある
  5. 前科がつく危険性がある

機密情報を持ち出すと民事の賠償責任を追求される可能性が高い

機密情報の持ち出しが発覚すると、民事責任を追求される可能性が高いです。

第1に、民事責任を追求されるときのひとつの形が損害賠償請求です。機密情報の持ち出しは民法上の不法行為に該当するため、機密情報の持ち出しと因果関係がある損害について金銭的な賠償責任を負わされます。

なお、不正競争防止法では、機密情報の持ち出しによって生じた損害賠償額の推定規定が定められています(不正競争防止法第4条第5条)。損害賠償額に関する立証責任が被告側に転換されているので、高額の賠償責任を追求されるリスクが高いです。

第2に、機密情報の持ち出しによって企業側の営業上の利益が侵害されたり、侵害されたりするおそれがあると判断されたりすると、差止請求を受ける可能性があります(不正競争防止法第3条第1項)。差止請求をされると、機密情報の持ち出しの停止や予防への対応を強いられたり、機密情報の持ち出しによって組成された物の廃棄などをしなければいけません(不正競争防止法第3条第2項)。

機密情報の持ち出しのような悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償責任については、自己破産をしても免責されない可能性が高いです。ですから、現実的に賠償可能な範囲での紛争解決を目指して、速やかに会社側と示談交渉を開始するべきでしょう。

機密情報の持ち出しを理由に会社から懲戒処分を下される可能性が高い

機密情報の持ち出しが発覚した時点でも雇用関係が継続している場合には、勤務先から懲戒処分が下される可能性が高いです。

一般的に、懲戒処分の内容は、戒告・譴責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇の7種類に分類されます。就業規則の懲戒規程次第ですが、機密情報の持ち出しのような悪質な事案に対しては、諭旨解雇や懲戒解雇などの厳しい処分が下される可能性が高いです。

また、近年では、転職活動時に、リファレンスチェックやコンプライアンスチェック、身辺調査が実施されることが多いです。機密情報の持ち出しのような事態が発覚すると、転職活動も成功しにくくなるでしょう。

機密情報の持ち出しが立件されると実名報道のリスクに晒される

機密情報の持ち出しが警察にバレて立件されると、テレビの報道番組やネットニュースなどで実名報道される可能性があります。

もちろん、すべての刑事事件が実名報道の対象になるわけではありません。

ただし、一般的には、以下の要素を備えた刑事事件は実名報道される傾向にあります

  • 被疑者が逮捕・起訴された場合
  • 被疑者が著名人の場合、社会的に高い地位・役職・職業に就いている場合、刑事事件に著名な企業が関与している場合
  • 生じた被害が甚大・深刻な場合
  • 社会的関心が高いトピックに属する刑事事件の場合

たとえば、有名企業から機密情報を持ち出して逮捕されたケースや、消費者の個人情報などを含む機密情報が持ち出されて広範な被害が想定されるケースでは、実名報道されるリスクは高まるでしょう。

そして、一度でも実名報道されると、機密情報を持ち出して逮捕・起訴された事実や氏名、顔写真などの情報が半永久的にインターネット上に残りつづけます。たとえば、就職や転職活動が難しくなるでしょうし、結婚や交友関係などにも悪影響が生じる可能性が高いです。

機密情報の持ち出しがバレて逮捕されると長期間身柄拘束されかねない

機密情報の持ち出しが発覚して不正競争防止法違反などの容疑で立件されると、長期間身柄拘束される可能性があります。

刑事手続きにおいて生じる可能性がある身柄拘束期間は以下のとおりです。

  • 警察段階の取り調べ(逮捕段階):48時間以内
  • 検察段階の取り調べ(逮捕段階):24時間以内
  • 検察段階の取り調べ(勾留段階):最長20日間
  • 起訴後勾留:刑事裁判が終了するまで

これだけの身柄拘束期間が生じると、起訴猶予処分や執行猶予付き判決を獲得できたとしても、被疑者の社会生活には以下のようなデメリットが生じます。

  • 取り調べ以外の時間帯は留置場・拘置所に収容されるので帰宅・出社などが不可能になる
  • 身柄拘束期間中はスマートフォンなどの所持品をすべて取り上げられるので、家族や会社と直接連絡が取れない
  • 厳しい取り調べを拒否することはできず、身体的・肉体的なストレスを強いられる
  • 自分の口で外部と連絡がとれない状況がつづくため、周囲の人たちに逮捕された事実を隠しとおしにくくなる

機密情報の持ち出しで有罪になると前科がつく

機密情報を持ち出して不正競争防止法違反などの容疑で有罪になると、刑事罰を科されるだけではなく、前科がつく点に注意が必要です。

前科とは、有罪判決を受けた経歴のことです。実刑判決だけではなく、執行猶予付き判決や罰金刑が確定した場合にも、前科持ちとして扱われます。

そして、前科者になると、今後の社会生活に以下のデメリットが生じます。

  • 履歴書の賞罰欄への記載義務、採用面接で質問されたときの回答義務が生じるので、就職活動・転職活動の難易度が高くなる
  • 記載義務・回答義務に違反して前科の事実を申告せず内定を獲得したり就職を果たしたりすると、その後、前科の事実が発覚したときに、経歴詐称を理由に内定が取り消されたり懲戒解雇処分が下されたりする
  • 前科を理由に就業が制限される資格・仕事がある(士業、警備員、金融業など)
  • 前科を理由に離婚を言い渡されたり結婚話がなくなったりしかねない
  • 前科があると、ビザやパスポートの発給制限を受ける場合がある(海外旅行、海外出張に支障が生じる)
  • 再犯時の刑事処分が重くなる可能性が高い など

日本の刑事裁判の有罪率は極めて高いので、刑事裁判で無罪判決を獲得する方法で前科を回避するのは難しいです。

ですから、今後の人生で前科によるデメリットを受けたくないなら、検察官から起訴猶予処分の判断を引き出すための防御活動を展開するべきだと考えられます。

機密情報の持ち出しがバレたときに弁護士に相談するメリット4つ

機密情報の持ち出しがバレたときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください

刑事事件への対応が得意な弁護士の力を借りることで、以下4つのメリットを得られるでしょう。

  1. 会社側との間で示談交渉を開始してくれる
  2. 自首についてアドバイスを期待できる
  3. 少しでも軽い刑事処分獲得を目指して防御活動を展開してくれる
  4. 日常生活に生じるデメリットの回避・軽減を目指してくれる

早急に会社側と示談交渉を開始してくれる

機密情報の持ち出しが発覚したときには、できるだけ早いタイミングで会社側との間で示談交渉を開始するのがポイントです。

示談とは、刑事事件の被害者・加害者との間で示談条件について話し合いをおこない和解契約を締結することです。

機密情報の持ち出しについて示談が成立すれば、刑事手続きにおいて以下のメリットを得られます。

  • 機密情報を持ち出されれた会社側が警察に相談する前に示談成立に成功すれば、刑事事件化自体を回避できる
  • 機密情報の持ち出し事件が刑事事件化したとしても、早期に示談が成立すれば、起訴猶予処分獲得の可能性が高まる
  • 機密情報の持ち出しについて示談交渉が円滑に進んでいる場合には、逮捕・勾留されずに在宅事件処理される可能性が高まる
  • 機密情報の持ち出しについて不正競争防止法違反などの容疑で起訴されたとしても、示談が成立すれば、執行猶予付き判決などの有利な量刑判断を引き出しやすくなる

そして、機密情報の持ち出しについて示談交渉をおこなうときには、弁護士に依頼をして交渉を代理してもらうのがおすすめです。

弁護士が機密情報持ち出し事件の示談交渉を担当すれば、以下のメリットを得ることができるでしょう。

  • 弁護士は刑事手続きの各段階に間に合うように示談成立を目指してくれる
  • 高額になる傾向が強い機密情報持ち出し事件の示談金条件を支払い可能な条件まで引き下げてくれる
  • 弁護士が代理人として交渉の窓口になることで、会社側の冷静な対応を引き出しやすくなる
  • 宥恕条項や債務不存在条項など、示談書に盛り込むべき内容をしっかりと記載した示談書を作成してくれる

自首についてのアドバイスを期待できる

機密情報の持ち出し行為が捜査機関に発覚していない段階なら、自首が有効な選択肢になります。

自首とは、犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前に犯人自身が捜査機関に犯罪事実を申告し、処罰を求める意思表示をすることです。自首が有効に成立すれば、刑事裁判において自首減軽の恩恵を受けることができますし、起訴猶予処分や在宅事件処理という有利な刑事処分を獲得しやすくなります。

弁護士に相談・依頼をすれば、自首について以下のメリットを得られるでしょう。

  • 機密情報の持ち出しについて事実関係を聴取したうえで、現段階で自首するべきか、自首よりも前に示談交渉を開始するべきか判断してくれる
  • 自首後に実施される事情聴取における供述内容・供述方針を明確化してくれる
  • 自首をする際に警察署まで同行してくれる

少しでも軽い刑事処分獲得を目指した防御活動を展開してくれる

刑事事件への対応が得意な弁護士は、以下のように、刑事手続きの各段階に応じた防御目標を掲げて弁護活動を展開してくれます。

  • 任意の出頭要請がかけられている段階なら、逮捕・勾留といった身柄拘束処分を回避して、在宅事件処理を目指してくれる
  • 逮捕されたとしても、準抗告や取り消し請求などの勾留阻止活動を展開してくれる
  • 検察官から起訴猶予処分の判断を引き出して、刑事裁判の回避を目指してくれる
  • 起訴された場合には、すぐに保釈請求をして、日常生活に生じるデメリットの回避・軽減を目指してくれる
  • 刑事裁判にかけられたとしても、執行猶予付き判決や罰金刑の量刑判断を引き出して、実刑判決の回避を目指してくれる

このなかでも特に重要なのが、検察官から不起訴処分(起訴猶予処分)の判断を引き出すことができるか、という点です。

というのも、現実的には、起訴猶予処分に付されるかどうかで有罪・前科が決まるからです。

起訴猶予処分にするかどうかを決定するときには、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況が総合的に考慮されます(刑事訴訟法第248条)。刑事実務に詳しい弁護士に依頼をすれば、起訴猶予処分の判断を引き出すために役立つ情状証拠などを用意してくれるでしょう。

日常生活に生じるデメリットの回避・軽減を目指してくれる

刑事事件に強い弁護士は、刑事事件以外の面でも被疑者をサポートしてくれます。

たとえば、機密情報の持ち出しについて会社から事情聴取をされた場合、有利な懲戒処分や示談条件を引き出すために、代理人として会社側との間で交渉などを進めてくれます

また、機密情報を持ち出して実名報道された結果、SNSや匿名掲示板などで誹謗中傷の被害を受けたときには、削除請求や発信者情報開示請求、慰謝料請求などの法的措置も取ってくれるでしょう。

機密情報を持ち出してしまったときにはすぐに弁護士に相談しよう

機密情報の持ち出しが発覚したときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしたうえで、会社側と示談交渉を開始してください

早期に示談交渉を開始すれば民事的解決を期待できますし、刑事事件化した場合でも、起訴猶予処分などの有利な刑事処分を引き出しやすくなるでしょう。

刑事事件相談弁護士ほっとラインでは、機密情報持ち出し事件などの刑事事件への対応が得意な弁護士を多数紹介中です。弁護士に相談・依頼するタイミングが早いほど有利な状況を作り出しやすいので、速やかに信頼できる弁護士までお問い合わせください。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、勾留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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