「警察に相談したのに動いてくれない」「被害届を出したのに何もしてくれない」と感じた経験がある人も多いでしょう。実際、被害を受けて助けを求めたにもかかわらず、思うように警察が対応してくれず、不安や怒りを感じる人は少なくありません。
とくにストーカー、金銭トラブル、誹謗中傷、近隣トラブルなどのように、事件性がわかりづらいケースでは、警察の対応が「遅い」「冷たい」と感じやすい傾向にあります。しかし、警察が動かないのには、理由があります。警察には「民事不介入の原則」があり、刑事事件として立件できる根拠がなければ、たとえ被害を訴えても強制的な捜査に入ることはできません。
また、証拠が不十分な場合や被害内容が軽微と判断される場合も、警察は「事件性なし」として積極的な対応を見送ることがあります。本記事では、警察が動いてくれないと感じる主なケースや、実際に警察が動かない理由をわかりやすく解説します。
目次
警察が動いてくれないと感じる主なケース
警察に被害を相談しても「動いてくれない」「対応が遅い」と感じることは少なくありません。被害の種類や状況によっては、警察の動きが制限される場合があります。まずは、実際によくあるケースを整理し、なぜ警察がすぐに対応できないのかを解説します。
ストーカー・嫌がらせ・誹謗中傷などの被害
ストーカー行為や嫌がらせ、誹謗中傷などの被害では、証拠の有無や被害の具体性が警察の対応に大きく影響します。
- 直接的な接触や脅迫がない
- 証拠として残るメッセージや録音が不足している
- 被害届の内容が曖昧
上記の場合、警察は現行犯逮捕や捜査が難しいと判断し、対応が遅れることがあります。また、SNSやネット上での誹謗中傷は、加害者の特定に時間がかかるため、すぐに動けないケースも多くあります。
金銭トラブル(貸したお金が返ってこないなど)
貸金トラブルや個人的な金銭トラブルは、基本的に民事問題として扱われるため、警察は刑事事件として動けません。たとえば、「貸したお金が返ってこない」というケースの場合は、刑事事件として扱うことができず、警察は動けないため注意しましょう。
そのため、警察に相談しても被害届が受理されない、あるいは受理されても立件が難しいという理由で動きが遅れることがあります。
近隣トラブル・騒音・不法侵入など
隣人トラブルや騒音、不法侵入などのケースでは、警察の介入は原則的に現場確認が必要です。
- 騒音の継続的証拠がない
- 不法侵入の瞬間が確認できない
- トラブルの程度が軽微と判断される
このような場合、警察は「民事の解決を優先すべき」と判断し、積極的に動かないことがあります。ただし、通報があった場合は警察官がその場へ駆けつけ、注意等の対応をするケースが多いです。
ネット上の被害
ネット上の誹謗中傷や個人情報の漏洩・なりすましなども、警察がすぐに動かない代表的なケースです。その主な原因は以下のとおりです。
- 加害者の特定が難しい
- 証拠の保存期間が限定的
- 被害届の提出だけでは刑事事件として立件しづらい
こうした場合は、警察だけでなく弁護士やプロバイダへの相談も併用することで、被害の解決につなげることができます。
警察が動かない理由
警察に相談しても、すぐに動いてもらえないことがあります。その背景には、法律上の制約や警察の運用事情が関係しています。具体的には、以下のような理由で警察が動かないケースがあります。
- 刑事事件と民事トラブルの線引きがあるため
- 被害届の受理ができないため
- 証拠や被害の具体性が乏しいため
- 事件性が低い・軽微と判断されてしまうため
- 人員や優先度の関係で対応が後回しになることも
次に、警察が動かない代表的な理由を詳しく解説します。
刑事事件と民事トラブルの線引きがあるため
警察が対応できるのは、明確に刑事事件として立件可能な事案に限られます。
- 金銭トラブルや契約違反などの民事問題
- 近隣トラブルや小規模な騒音
上記の事案は基本的に民事の範囲であり、警察は刑事事件として動けないことがあります。そのため、被害を受けた側は「警察が動かない」と感じることが多いでしょう。
「被害届」が受理できないため
警察は被害届の受理にあたり、事件性や証拠の有無を確認します。事件性がないと判断された場合は、被害届を受理せずに捜査対象ともなりません。たとえば、以下のようなケースでは被害届が受理されない可能性があります。
- 被害届が不十分で内容があいまい
- 加害者が特定できない
- 被害状況が軽微で刑事責任が問えない
上記に該当する場合は被害届は受理されず、結果として警察が動けません。
証拠や被害の具体性が乏しいため
警察が捜査に着手するには、具体的な証拠や被害の明確化が不可欠です。そのため、以下に該当する場合は、被害届を受理されなかったり捜査をしてくれなかったりする可能性があるでしょう。
- 録音・録画・写真などの物的証拠がない
- 日付・場所・加害者の特定が不明
- 被害の頻度や内容が曖昧
証拠が不十分だと、警察は捜査の実効性が低いと判断し、積極的に動かないケースがあります。
事件性が低い・軽微と判断されてしまうため
警察は限られた人員で捜査を行うため、事件性や被害の重大性を優先します。そのため、以下に該当する場合は、警察が動かないケースもあります。
- 些細なトラブルや一度限りの問題
- 相手に悪意がない場合
- 被害の社会的影響が小さい場合
上記に該当する場合、警察は「刑事事件として扱うほどではない」と判断し、対応が後回しになることがあります。
警察の対応範囲を理解しよう
警察が動くかどうかは、事件性の有無や刑事事件として扱えるかに大きく左右されます。被害を受けた場合に、どこまで警察が対応できるのかを理解することは、適切な行動を取る上でとても重要です。次に、警察の対応範囲について解説します。
警察が動けるのは「犯罪の可能性がある場合」
警察は、犯罪が発生している、もしくは発生する可能性がある場合にのみ対応します。たとえば以下に該当する場合は、捜査対象となるでしょう。
- ストーカーや嫌がらせで身体的危険がある場合
- 金銭をだまし取られた詐欺の可能性がある場合
- 暴力や脅迫など刑法違反の行為が確認できる場合
逆に、単なる口論や軽微なトラブル、民事上の争いは、警察の介入範囲外となるケースが多く、これが「動いてくれない」と感じる原因になります。
民事不介入の原則とは
日本の警察には、民事不介入の原則があります。民事不介入とは、警察が個人間の民事的なトラブルに直接介入しないという原則です。たとえば、以下のようなケースが該当します。
- 貸したお金が返ってこないトラブル
- 契約上のトラブル
これらは民事裁判や交渉で解決する必要があり、警察は基本的に仲裁や介入を行いません。ただし、暴力行為や脅迫が伴う場合は刑事事件として動くことがあります。
告訴・被害届・相談の違いについて
警察への相談には種類があり、それぞれ意味が異なります。
- 告訴:被害者が犯罪として処罰を求める意思表示。特定の刑事事件で必要になる場合があります。
- 被害届:犯罪被害を警察に報告するもので、告訴に比べて形式的。警察が捜査の必要性を判断します。
- 相談:被害の相談やアドバイスを求めるもので、必ずしも捜査につながるわけではありません。
被害内容に応じて、どの方法で警察に連絡するかを選ぶことが重要です。また、証拠を整理して提出することで、警察が動きやすくなる可能性も高まります。
警察に動いてもらうためにできること
警察がなかなか動いてくれないと感じる場合でも、自分の行動次第で対応してもらえる可能性が高まります。次に、警察に動いてもらうために有効な具体策を解説します。
証拠を集めて具体的な被害を示す
警察に対応してもらうには、まず被害の具体性を示す証拠を整理する必要があります。たとえば、メール、LINE、通話履歴の保存、スクリーンショットや動画の記録、契約書や振込履歴などの金銭的証拠。日時・場所・内容を詳細にメモした記録等が有効です。
こうした証拠を提示することで、警察は事件性を判断しやすくなります。とくにネット上の誹謗中傷やストーカー行為では、時系列で証拠を残すことが捜査を後押しします。
相談ではなく「被害届」または「告訴状」を出す
単なる相談では、警察が動かない場合があります。被害を正式に届け出るには、被害届や告訴状の提出が効果的です。被害届は、犯罪被害を報告し、捜査を促すためのものです。一方で、告訴状は特定の犯罪に対して処罰を求める意思表示です。
これらの書面を提出することで、警察は法的根拠に基づき捜査を開始しやすくなります。
相談窓口を変える
同じ内容でも、窓口によって対応が変わることがあります。たとえば、刑事事件なら刑事課、ストーカーやDV被害なら生活安全課へ相談することが大切です。窓口を変えて相談することで、より具体的かつ迅速な対応を引き出すことが可能です。
弁護士を通じて告訴や交渉を行う
弁護士を介して手続きを行うと、以下のようなメリットがあります。
- 被害届・告訴状を正確に作成・提出できる
- 警察への状況説明や捜査状況確認を代行できる
- 加害者との交渉や警察への圧力も適切に行える
とくにストーカーや金銭トラブル、ネット上の誹謗中傷では、弁護士を通すことで警察対応がスムーズになりやすいです。
行政機関・支援団体に併せて相談する
警察だけに頼るのではなく、行政機関や専門の支援団体に併せて相談することも重要です。DVやストーカーの被害であれば都道府県の相談窓口やシェルター、金銭トラブルなら消費生活センター、ネット被害ならインターネットホットラインや法テラスなど、専門機関の支援を受けることで、警察に加えて幅広い支援を受けられます。
上記のとおり、安全確保や被害回復の手段を増やし、警察対応の補完として活用することが可能です。
被害届を受理してもらえないときの対処法
被害届を受理してもらえない場合は、以下の対処法を検討しましょう。
- 被害届受理を拒否される理由を確認する
- 警察署長や本部への申し出を検討
- 検察庁へ直接告訴する
- 弁護士に依頼して再提出・告訴のサポートを受ける
次に、被害届を受理してもらえない場合の対処法について詳しく解説します。
受理拒否の理由を確認する
警察に被害届を提出したのに受理されない場合、まずはなぜ受理できないのか理由を確認しましょう。主な理由としては、事件性が認められない、被害が軽微で刑事事件化が難しい、証拠や被害状況が不十分、民事トラブルで刑事手続の対象外、などが挙げられます。
拒否理由を明確に知ることで、次の対応策を検討しやすくなります。また、警察担当者には受理拒否の文書や記録を残してもらうと、後々の手続きで有利に働くことがあります。
警察本部への申し出
担当窓口で被害届が受理されない場合、警察本部に申し出ることも可能です。書面での申し出や面談を通じて、事件の重要性や証拠の具体性を再度説明することで、受理判断が見直される場合があります。
検察庁へ直接告訴する方法
警察が受理しない場合でも、被害者は検察庁に直接告訴できます。告訴状を提出すれば、検察官が事件性を判断して捜査を指示する場合があります。告訴状には事件の経緯、証拠、加害者情報を詳しく記載し、記録・証拠はできるだけ添付することが大切です。そして、提出後は検察官から連絡や事情聴取が行われる流れです。
弁護士に依頼して再提出・告訴のサポートを受ける
弁護士を通すことで、被害届の再提出や検察への告訴をより確実かつ法的に適切に行えます。弁護士に依頼することで書類作成や証拠整理を正確に行うことができ、警察や検察とのやり取りもスムーズに行えます。
また、受理拒否や対応遅延の理由を法的に確認できたり、加害者との直接交渉や示談交渉を併用できる点がメリットです。とくにネット被害やストーカー、金銭トラブルなどでは、弁護士のサポートにより警察や検察が動きやすくなる効果があります。
民事トラブルとして扱われるケースと対応策
民事トラブルとして扱われた場合は、警察は動けません。具体的には、以下のようなケースは民事トラブルとして扱われるでしょう。
- 金銭トラブル
- SNS・ネットの誹謗中傷やなりすまし
- 近隣トラブル・不法侵入・器物損壊
中には、刑事事件として扱えるケースもありますが、軽微であったり証拠がなかったりする場合は捜査ができないケースもあります。次に、民事トラブルとして扱われるケースと対応策について解説します。
金銭トラブル(貸金・立替金など)
友人や知人、取引先との間で発生する貸金や立替金の未払いは、一般的に民事トラブルとして扱われます。つまり、刑事事件ではなく、民事事件として解決する案件です。対応策としては、まず支払の証拠(振込履歴や契約書、メール・LINEのやり取り)を整理し、内容証明郵便で請求を行う方法が有効です。
それでも解決しない場合は、少額訴訟や通常訴訟を利用して裁判で請求することが可能です。いずれの場合も、まずは警察ではなく弁護士へ相談をするようにしましょう。
SNS・ネットの誹謗中傷やなりすまし
SNSや掲示板での誹謗中傷、なりすまし行為も、警察が「刑事事件として動かない」と判断されることがあります。こうした場合、民事上の損害賠償請求や発信者情報開示請求を検討する必要があります。
対応策としては、まずスクリーンショットやURL、日時などの証拠を確実に保存すること。そして、弁護士を通じて投稿者に対して削除要請や損害賠償請求を行うと、法的に有効な対応ができます。
近隣トラブル・不法侵入・器物損壊
騒音、敷地への不法侵入、器物損壊なども、警察の対応が消極的な場合は民事トラブルとして扱われることがあります。この場合、まず被害状況を記録し、必要に応じて写真や動画を残しておきましょう。
隣人との話し合いで解決できない場合は、調停申立や損害賠償請求を検討しましょう。また、地域の自治体や消費生活センターなどの支援窓口を利用することで、法的手続きの前段階として問題を整理しやすくなります。
被害の深刻度に応じた相談先
被害の内容や深刻度によって、相談先を使い分けることも検討しましょう。身の危険や犯罪の可能性がある場合は迷わず110番、ストーカーやDV被害は生活安全課や配偶者暴力相談支援センターが有効です。
ネット上のトラブルはサイバー犯罪対策課、法的対応や損害賠償が必要な場合は弁護士や法テラスが適切です。適切な窓口に相談することで、迅速な対応と被害の拡大防止につながります。次に、被害の深刻度に応じた相談先についても解説します。
110番・警察相談専用ダイヤル(#9110)
身の危険を感じる場合や、犯罪が発生している疑いがある場合は、直ちに110番通報しましょう。緊急性が低い場合でも、警察相談専用ダイヤル(#9110)を利用すれば、警察官が状況を聞き取り、適切な対応方法をアドバイスしてくれます。
とくに、暴行や窃盗、強制わいせつなどの犯罪被害の場合は、現場の状況や日時、加害者情報を整理して連絡することで迅速な対応が期待できます。
ストーカー・DV相談は生活安全課や配偶者暴力相談支援センターへ
ストーカーや配偶者からの暴力・嫌がらせは、警察の生活安全課や各地の配偶者暴力相談支援センター(DV相談窓口)が対応します。相談者の安全確保や加害者への接近禁止措置、避難先の確保などの具体的な支援が受けられます。
電話やメールでの相談も可能で、匿名での相談も受け付けているケースが多いため、まずは相談されてみてはいかがでしょうか。
ネットトラブルはサイバー犯罪対策課
SNSや掲示板での誹謗中傷、なりすまし、ネット詐欺などは、警察のサイバー犯罪対策課が対応します。投稿者特定のための手続きや、証拠保全の方法、発信者情報開示請求の流れについても助言が得られます。
被害の詳細(URL、スクリーンショット、投稿日時など)を整理して相談することで、より具体的な指示を受けられるでしょう。
弁護士・法テラスへの相談
警察への相談だけでは解決が難しい場合、弁護士や法テラスに相談するのも有効です。弁護士に相談すれば、被害届や告訴の作成、損害賠償請求、示談交渉など法的手続きを一任でき、対応のスピードと確実性が格段に上がります。
法テラスでは経済的に余裕がない場合の無料相談や費用援助制度もあるため、誰でも利用しやすい相談窓口であるため検討されてみてはいかがでしょうか。
警察が動いてくれないときにやってはいけないこと
警察が動いてくれない場合であっても、以下のことは避けましょう。
- 加害者に直接講義・報復する
- ネットやSNSに晒す・拡散する
- 虚偽の通報や誇張した申告をする
次に、警察が動いてくれなくてもやってはいけないことについて詳しく解説します。
加害者に直接抗議・報復する
警察の対応に不満があるからといって、加害者宅へ押しかけたり、脅しや暴力で報復したりするのは絶対にやめましょう。相手に直接接触してしまうと、あなた自身が脅迫罪や暴行罪、傷害罪などで処罰される可能性があり、被害者だった立場が逆転しかねません。
さらに、返ってきた反撃で事態が悪化すると、結果的に警察も動きにくくなります。代わりにできることは、冷静に証拠を固めて再度相談する、弁護士に交渉や警察対応を依頼するなどの法的手続きを取ることです。
ネットやSNSに晒す・拡散する
加害者の氏名や住所、写真、電話番号をネット上で晒したり、誹謗中傷の投稿を拡散する行為は名誉毀損や侮辱罪、プライバシー侵害の問題を引き起こします。とくに事実関係が不確かなまま投稿すると、被害者側が損害賠償を請求されるケースもあります。
さらに、過度な拡散は捜査に支障を来たし、警察が「冷静な対応が期待できない」と判断してしまうこともあります。ネットでの対応は、まずはスクリーンショット等の証拠を確保したうえで、弁護士に削除請求や発信者情報開示を依頼するなど、法的手続きを踏むのが安全です。
虚偽の通報や誇張した申告をする
本当の被害を訴えるために事実を盛ったり、存在しない犯罪をでっちあげて警察に通報することは厳禁やめましょう。虚偽告訴罪や偽計業務妨害罪に問われる可能性があり、刑事責任を負うリスクがあります。
さらに、虚偽や誇張が発覚すると、あなたの信用が失われ、以後の申告や証言の信頼性が大きく損なわれます。被害を正確に、冷静に伝えることが捜査を前に進めるための最良の方法です。どうしても主張が通らないと感じるときは、感情的に誇張するのではなく、弁護士と証拠を精査したうえで正当な手続きを取ることを優先しましょう。
弁護士に相談するメリット
警察がなかなか動いてくれないとき、自分一人で粘り強く交渉しても限界があります。そんなときに頼れるのが法律の専門家である弁護士です。弁護士は、被害内容を法的に整理し、警察や検察が動きやすい形でサポートしてくれます。次に、弁護士に相談する主なメリットを詳しく解説します。
法的に警察を動かす「告訴状」の作成サポート
弁護士に依頼すれば、警察が正式に捜査を行うきっかけとなる告訴状を、法的要件を満たした形で作成してもらえます。告訴状には「被害の具体的内容」「加害者の特定情報」「被害者の意思表示(処罰感情)」が必要ですが、一般の方がこれを正確に書くのは難しいです。
弁護士が関与することで、証拠や法律に基づいた内容になり、受理率が大幅に高まる傾向があります。また、弁護士名での提出は警察に対して一定の法的圧力を与え、軽視されにくくなります。
証拠収集や内容証明などの法的手段が取れる
警察が動く前の段階でも、弁護士であれば法的に有効な証拠の集め方を指導してくれます。たとえば、LINEやメールのやり取り、録音データ、監視カメラ映像などをどのように保存すべきか、裁判で使える形でアドバイスしてもらえます。
また、加害者や関係者に対して内容証明郵便を送ることで、「この件を放置すれば法的措置を取る」という意思を正式に示すことも可能です。こうした法的ステップを踏むことで、加害者が自主的に行動を改めたり、話し合いでの解決に進めたりするケースもあります。
民事・刑事を分けた正しい対応をアドバイスしてもらえる
「警察が動かない」と感じるケースの多くは、そもそも民事トラブルに該当する事案です。たとえば、本記事で解説しているとおり貸したお金が返ってこない、SNSの誹謗中傷などは、刑事事件ではなく民事上の損害賠償請求として扱われることがあります。
弁護士に相談すれば、あなたの被害が刑事事件として告訴すべき内容なのか、それとも民事的に請求すべき内容なのかを正確に仕分けしてくれます。これにより、最短ルートで解決につながる手段を選ぶことができます。
被害者支援制度の利用がスムーズになる
弁護士に依頼すると、被害者支援制度(犯罪被害給付金、支援センター、臨床心理士のカウンセリングなど)をスムーズに利用できるようになります。これらの制度は、手続きや申請書類が複雑なうえ、どの制度が使えるか判断が難しい場合も多いです。
弁護士が間に入ることで、制度の適用条件を確認し、必要書類の作成・提出までサポートしてもらえるため、精神的にも経済的にも負担が軽減されます。
警察が動かない場合でも諦めないことが大切
犯罪被害に遭っているにも関わらず、警察がなかなか動いてくれなければ、「どうすることもできないのか……」と悩んでしまう人も多いでしょう。しかし、諦めずにしっかり対応することで、事件を解決できる可能性があります。
次に、警察が動かない場合でも諦めないことが大切な理由について詳しく解説します。
「諦める=被害が続く」リスクを理解する
警察がすぐに動いてくれないと、「もう仕方ない」と感じてしまう人も少なくないでしょう。しかし、そこで諦めてしまうと、加害者が再び行動を起こす可能性があり、被害が長期化・拡大してしまう可能性があります。自分を守るためにも、まずは「諦めない」という強い意識を持つことが大切です。
適切な窓口・専門家に相談すれば打開策はある
警察が動かない場合でも、相談できる窓口は他にもあります。弁護士や被害者支援センター、法テラスなどの専門機関に相談すれば、警察への働きかけ方や、別の法的手段を取る方法を具体的にアドバイスしてもらえます。
状況に応じて「民事的な対応(損害賠償請求など)」や「刑事的対応(告訴など)」を組み合わせることで、解決の糸口が見つかることも少なくありません。
冷静かつ記録を残す行動が有効
感情的になってしまうと、事実関係の整理が難しくなり、結果として不利に働く場合もあります。警察や弁護士に相談する際は、日時・場所・発言内容・相手の特徴などを冷静に記録しておくことが重要です。
これらの記録は、後に「証拠」として有効活用できます。被害に遭ったときこそ、焦らず一つずつ行動を積み重ねることが、解決への最短ルートになります。
よくある質問
警察が動いてくれないときによくある質問を紹介します。
Q.警察に被害届を出したのに連絡がないのはなぜですか?
A.被害届を出したからといって、必ずしも捜査が開始されているわけではありません。
警察には、被害届を受理する義務はありますが、受理したからといって必ずしも捜査を開始しなければいけないわけではありません。そのため、被害届を受理したものの、対応が後回しになっていたり、捜査が開始されていなかったりするケースがあります。
そのため、被害届を提出したあとに連絡がないケースも多々あります。進捗状況が気になる場合は、一度警察へ問い合わせしてみても良いでしょう。
Q.「民事不介入」と言われたらもうどうにもならないのですか?
A.民事不介入と言われた場合、警察での対応は難しいです。
警察には民事不介入の原則があるため、民事トラブルには関与できません。そのため、警察から「民事不介入」と言われた場合は、これ以上警察へ相談をしても意味がないでしょう。
民事トラブルについては、弁護士が対応してくれるため、まずは弁護士への相談を検討されてみてはいかがでしょうか。
Q.SNSの嫌がらせで警察は動いてくれますか?
A.事件性があると判断されれば、警察が動いてくれるでしょう。
ネット上のトラブルであっても事件性があると判断された場合は、警察が捜査を行ってくれます。たとえば、ネット上での発言が脅迫罪や恐喝罪など何らかの犯罪に抵触する場合です。もし、犯罪として成立しない場合は、警察は動けません。
Q.警察に動いてもらうには弁護士を通すべきですか?
A.弁護士へ相談することで、法的圧力をかけられるでしょう。
警察が動かない場合は、弁護士へ相談をすることで適切な告訴状の作成等さまざまなサポートを行ってくれます。そのため、警察に不満がある場合、初めに弁護士へ相談をしてみるのもひとつの手段でしょう。
Q.警察が対応してくれなかった場合に苦情を出せますか?
A.苦情を受け付けている窓口へ相談しましょう。
警察に対する苦情は、各都道府県の警察本部で受け付けています。文章や電話等で苦情を受け付けているため、苦情を申し出たい場合は活用してみましょう。
なお、苦情を入れたからといって、必ずしも改善されて警察が動き始めるとは限りません。その点は注意してください。
まとめ
警察が動いてくれないと感じたとき、多くの人が「なぜ助けてくれないのか」と憤りや不信を抱きます。しかし、警察はすべての相談に即座に対応できるわけではなく、法律上・運用上の制約の中で動いています。
刑事事件と民事トラブルの線引き、証拠の有無、事件性の有無などが、対応の可否を左右します。もし警察が動かないときは、感情的になって報復行為をしたり、SNSで加害者を晒したりするのは絶対に避けましょう。あなた自身が加害者になってしまうリスクがあるからです。
重要なのは、「どうすれば警察が動きやすくなるか」を冷静に考え、正しい手続きを取ることです。証拠を整理し、被害の具体性を示すことで警察は動きやすくなります。また、被害届や告訴状を正式に提出したり、弁護士に依頼して法的手続きをサポートしてもらったりするのも効果的です。さらに、行政機関や支援団体、法テラスなどを併用すれば、警察の対応だけに頼らず、より広いサポートを受けることができます。
「警察が動かない」と感じたときこそ、冷静な対応と正しい情報が力になります。本記事で解説した方法を参考に、証拠を整え、適切な窓口に相談し、専門家と連携して被害解決へと進めていきましょう。あなたの行動次第で、状況を大きく変えられる可能性は十分にあります。