万引きは性質上「現行犯逮捕」で警察に捕まることが多い犯罪類型ですが、後日逮捕されるケースも少なくありません。
なぜなら、「万引きは現行犯逮捕に限る」というルールは存在しない以上、他の犯罪と同じように、捜査機関が入念に監視カメラなどをチェックして証拠を収集したうえで通常逮捕に至るというパターンもあり得るからです。つまり、「警察は万引きを捜査しない」と言われることもありますが、これは間違いだということです。
たとえば、万引きの疑いで警察から後日自宅に電話がかかってきて出頭を要請されることもあるでしょう。また、警察がいきなり逮捕状をもって自宅にやってくる可能性も否定できません。さらに、万引きをしたスーパーでふたたび買い物をしている最中に通報される可能性もあり得ます。
いずれにしても、万引きで後日警察の捜査が及んだ場合には、対応を誤ると前科がついたり、身柄拘束付きの取調べを強いられたりする場合もあるので注意が必要です。
そこで今回は、過去の万引きが原因で後日逮捕されるのではないかと不安を抱えている人のために、以下5点について分かりやすく解説します。
- 万引きで後日逮捕されるときの罪状
- 万引きの後日逮捕が行われるタイミング
- 万引きの疑いで後日逮捕された後の刑事手続きの流れ
- 万引きの容疑で後日逮捕された場合に生じるデメリット
- 万引きの嫌疑で後日逮捕されるか不安なときに弁護士に相談するメリット
「万引きはいたずらの範囲の行為だからバレても謝れば問題ない」と油断していると、人生を棒に振るような状況に追い込まれかねません。過去に犯した万引きで少しでも不安を抱えているのなら、刑事事件に強い弁護士に連絡を入れたうえで、今後の対応方法についてすみやかにご相談ください。
目次
万引きは現行犯逮捕だけでなく後日逮捕もあり得る
確かに、テレビ番組やニュースでは「万引き現行犯」の現場が報道されることが多いので、「万引きは現行犯でしか逮捕されない」と勘違いするのも仕方ないでしょう。
ただ、万引きは後日逮捕される可能性がある犯罪です。しかも、万引きの犯行に及んだときの状況次第では、単なる窃盗罪ではなく更に重い被疑事実で追及されることもあり得ます。
そこで、まずは万引きが後日逮捕される可能性や万引きで後日逮捕されるタイミング、万引きで後日逮捕されるケースの犯罪類型について、それぞれ具体的に見ていきましょう。
万引きは後日逮捕されないと噂される理由
繰り返しになりますが、「警察は現行犯逮捕できない場面以外では万引きを捜査しない」「万引きは後日逮捕されない」というのは間違いです。
なぜなら、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときには、捜査機関は、裁判所から発付される逮捕状によって、被疑者を通常逮捕することができるとされているからです(刑事訴訟法第199条第1項)。つまり、犯罪の証拠があって被疑者が特定されている場合には、どのようなタイミングで通常逮捕に至るかは捜査機関が自由に決定できるということです。
このような事情があるにもかかわらず、「万引きは後日逮捕されない」と噂される原因は、以下のような「万引き」という犯罪の実態にあると考えられます。
- 万引き1回あたりの被害額が少ない
- 棚卸しや納品等のタイミングでしか在庫と管理データの不一致に気付きにくい
- 商品がなくなっている原因が万引きなのか管理ミスかの見極めをしにくい
- 万引きの犯行日時を後日特定するには作業コストが重過ぎる
- 監視カメラの設置や万引きGメンの配置には高額費用が発生する
たとえば、とあるスーパーにおいて4月10日に3カ月ぶりに商品の棚卸しを実施したところ、スナック菓子の在庫数とデータ数に大きな乖離があることが判明したとしましょう。
まず、3カ月前に実施した棚卸しから今回の棚卸しまでの間で何かしらの問題が生じたことは明らかですが、万引きによるものとは断定できません。そして、データの不一致の原因が仮に万引きであるとしても、3カ月分の監視カメラ映像をすべて確認して、ようやく犯行・犯人の特定に至ります。ただ、監視カメラの映像をチェックして犯人像が明確になったとしても、当該人物がどこの誰かを確認するには、レジの履歴や周辺の監視カメラ映像、犯人の車両ナンバープレートの調査なども不可欠でしょう。さらに、仮に犯人や万引きの実態が明らかになったとしても、数百円程度のスナック菓子の万引きが明らかになっただけでは厳しい刑事処罰を科しにくいのが実情です。
このように、万引きによる被害額と、万引き犯を完全特定するまでに発生するコストを天秤にかけたとき、被害店舗だけではなく警察も本格的な捜査に踏み出しにくいのが「万引き」という犯罪です。このような実態を踏まえると、「万引きは後日逮捕されない犯罪」ではないが、「万引きは後日逮捕されにくい犯罪」と言えるでしょう。
万引きで後日逮捕されるときには証拠が集まっている
万引きで後日逮捕されるときは「通常逮捕」の方法で刑事手続きが進められます。
万引きの一般的な検挙パターンである「現行犯逮捕及び準現行犯逮捕」とは手続き方法が異なるので、両者の違いについて具体的に見ていきましょう。
万引き犯が現行犯逮捕されるケース
現行犯逮捕とは、「現に罪を行った者、または、現に罪を行い終わった者」を逮捕することです(刑事訴訟法第212条第1項)。準現行犯逮捕とは、「犯人として追呼されている者」「贓物や犯罪に使った兇器などの犯罪関連物を所持している者」「身体や被服に犯行に及んだ顕著な形跡が見られる者」「誰何されて逃走しようとしている者」を逮捕することを指します(同法第212条第2項各号)。
現行犯人及び準現行犯人は犯罪に及んだことが明らかなので、裁判所による逮捕状発付なしでも誰でも逮捕できます(同法第213条)。
たとえば、スーパーで商品をポケットに隠し入れて、レジを通さずに店から出たタイミングで店員に身柄を押さえられた場合には、「私人による現行犯逮捕」です。その後、通報を受けて現場に到着した司法警察職員に身柄が引き渡されるという流れになります。
また、スーパーで品物を鞄に隠し入れてレジを通さずに店から出たところを店員に呼び止められたが、制止を振り切って逃走中に巡回中の警察官に逮捕されたケースが「準現行犯逮捕」に該当します。
万引き犯が後日通常逮捕されるケース
通常逮捕とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときに、裁判所から事前に発付された逮捕状に基づいて行われる逮捕手続きのことです(刑事訴訟法第199条第1項本文)。現行犯逮捕との大きな違いとして、逮捕行為に至る段階で逮捕状が必要か否か、という点が挙げられます。
そもそも、逮捕行為は「強制処分=被疑者の身体の自由を奪う行為」なので、国家権力が強制処分に及ぶには高度な合理性が必要とされます。
そして、現行犯逮捕が認められる場面では、犯行現場で逮捕行為が行われるため、被疑者が犯行に及んだことが明白です。ですから、「強制処分である逮捕行為=身柄拘束処分」に着手したとしても、被疑者の権利自由が不当に制約されることはないと考えられます。
これに対して、通常逮捕が想定される場面では、犯行と逮捕に場所的乖離やタイムラグが存在するので、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りるだけの相当な理由がある」ということを証明できなければ、強制処分である逮捕行為の正当性・合法性を根拠付けることができません。そこで、現行犯逮捕とは違って、通常逮捕に至るためには、事前に裁判所の令状審査が必要とされます。
したがって、万引き犯が後日逮捕されるケースでは、防犯カメラの窃取映像やレジの履歴、目撃者の供述証拠、身元特定に必要な情報照会などの客観的証拠がすでに収集されているのが一般的です。
万引きで後日逮捕されるときは窃盗罪に問われる
万引き犯が後日逮捕される場合、罪状は「窃盗罪」とされるのが一般的です(刑法第235条)。
窃盗罪は、他人の財物を窃取したときに成立します。窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」です。
窃盗罪の構成要件は以下の通りです。
- 他人の財物
- 窃取
- 故意
- 不法領得の意思
他人の財物
窃盗罪は、「他人の財物」を窃取したときに成立する犯罪類型です。
財物には、固体・液体・気体のような有体物だけではなく、管理可能性のあるものが広く含まれるとするのが判例です(大判明治36年5月21日)。
たとえば、スーパーで商品を万引きしたようなケースでは、問題なく財物性が認められるでしょう。
窃取
窃盗罪は、他人の財物を「窃取した」ときに成立する犯罪類型です。
窃取とは、他人が占有する財物を、占有者の意思に反して自分や第三者の占有に移転させる行為のことです。占有とは、財物に対する事実上の支配のことを意味します。
たとえば、ドラッグストアの商品を万引きしたケースに当てはめると、そもそもレジを通していない店舗内の商品に対する占有は施設管理者・店舗経営者が有しています。この状況において、店舗内商品陳列棚の前でポケットや買い物袋のなかに商品を隠し入れると、その時点で商品の占有が施設管理者から万引き犯に移転したと評価できます。
故意
窃盗罪が成立するには、他人の財物を窃取する意思が必要です(刑法第38条第1項)。なぜなら、窃盗罪は故意犯だからです。
故意とは「犯罪事実の認識・認容」を意味します。自分が行った犯罪行為の意味を理解している場合に限って、故意犯として刑事処罰の対象と扱われます。
たとえば、自分の意思で店舗内の商品をポケットに隠し入れたケースでは、当然当該万引き行為に対する認識・認容があったと言えるでしょう。これに対して、気付かないうちに商品が手さげ袋に紛れ込んでしまっていたようなケースでは、「他人の財物を窃取すること」に対する認識・認容が欠けていると考えられるので、窃盗罪は成立しません。
不法領得の意思
窃盗罪が成立するには、不法領得の意思が必要とされます。
不法領得の意思とは、「権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法にしたがって利用・処分する意思」のことです(最判昭和26年7月13日)。不法領得の意思のポイントとして、権利者排除意思と利用処分意思が挙げられます。
万引き事案に当てはめると、自宅に持ち帰って食べるつもりでスーパーのお惣菜を窃取した場合、不法領得の意思が認められるのは明らかでしょう。
これに対して、壊れた自転車を修理する工具をホームセンターから拝借して修理に使った後、ふたたび当該工具を商品棚に戻したケースでは、権利者を完全に排除するつもりではなく財物の効能を一時的に使用するだけなので、権利者排除意思は存在しません。したがって、窃盗罪は成立しないと考えられます。そして、刑法では一時使用は不可罰と扱われるので、有罪になることはありません。
また、店舗に対する嫌がらせ目的でレジを通さずにスーパーから野菜を持ち出して、店舗の外に設置されたゴミ箱に投棄したケースでは、「料理に使う」という財物の本来的な利用目的ではないため、利用処分意思が存在しないと考えられます。したがって、窃盗罪は成立せず、器物損壊罪に問われるだけでしょう(刑法第261条)。
常習的な万引きは常習累犯窃盗罪で後日逮捕され得る
常習として万引きをしている場合には、常習累犯窃盗罪で後日逮捕される可能性があります。
常習累犯窃盗罪とは、過去10年以内に窃盗既遂罪・窃盗未遂罪・窃盗罪と他罪との併合罪で、6カ月以上の懲役刑の執行を3回以上受けて刑務所に収監された経歴がある人物が刑法第235条(窃盗罪)を犯したときに成立する犯罪類型のことです(盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律第3条)。
常習累犯窃盗罪の法定刑は「3年以上の有期懲役」と定められており、刑法犯である窃盗罪よりも重い刑罰内容が定められています。通常の窃盗罪であれば「懲役刑の下限は1カ月」に設定されていますが、常習累犯窃盗罪では「懲役刑の下限が3年」なので、執行猶予付き判決を得られない限り長期間刑務所に収監されることになります。
日常的に万引きをしても後日逮捕されるのが初めてなら常習累犯窃盗罪は成立しない
上述のように、常習累犯窃盗罪における「常習」は厳格な要件が設定されています。「日常的」「常習的」などの日常会話で使う言葉とは異なります。
つまり、万引き癖があって普段から何度も窃盗を繰り返しているケースでも、初めて逮捕される場合はあくまでも初犯扱いです。どれだけ過去に万引きを繰り返していたとしても、常習累犯窃盗罪の対象ではなく、窃盗罪を被疑事実として後日逮捕手続きが進められます。
クレプトマニア(盗症・盗癖)でも無罪獲得は難しい
窃盗罪は再犯率が高い犯罪類型のひとつです。これは、万引きが簡単に手を染めやすい犯罪であることと、クレプトマニア(盗症・盗癖)と呼ばれる精神疾患が原因と言われています。
「病気や精神的な不安定さが原因で万引きをしてしまったのだから、後日逮捕されるのは不当ではないか」と指摘されることも多いですが、クレプトマニアであることを理由として、「心神喪失による無罪」「心神耗弱による刑の減軽」が認められる可能性は低いのが実情です(刑法第39条各項)。
もちろん、他の精神疾患等が合わさって万引き行為に至っているケースでは量刑面で斟酌してもらえる場合もあり得ます。具体的な防御方法の有効性については弁護士までご相談ください。
万引き時の状況次第では事後強盗罪で後日逮捕される
万引きをしたときに店員や他の客ともみ合いになるなどのトラブルを起こしてしまうと「事後強盗罪」で後日逮捕される危険性に晒されます。
事後強盗罪とは、窃盗犯が、窃取した財物を取り返されるのを防ぐ目的・逮捕を免れる目的・罪跡を隠滅する目的で、暴行または脅迫をしたときに成立する犯罪類型のことです(刑法第238条)。
暴行または脅迫の程度は、相手方の反抗を抑圧する程度のものが求められます。また、暴行または脅迫は、窃盗の犯行現場または窃盗の機会の継続中に行われる必要があります(最決平成14年2月14日)。
事後強盗罪の法定刑は「5年以上の有期懲役」です(同法第236条第1項)。また、人を負傷させたときには事後強盗致傷罪として「無期または6年以上の懲役刑」、人を死亡させたときには事後強盗致死罪として「死刑または無期懲役」が科されます(同法第240条)。つまり、万引き後の対応次第では、窃盗罪よりもはるかに重い刑罰が科される可能性があるということです。
たとえば、店舗内で万引きをして店から出ようとしたところ、店員から声をかけられたが、「逮捕されるのはまずい」と感じて逃走するために店員に暴行を加えたケースでは、窃盗罪ではなく事後強盗罪が成立します(店員が負った怪我の程度次第では、事後強盗致傷罪に問われかねません)。
万引きで後日逮捕されるタイミング
万引き犯をどのタイミングで後日逮捕するかは捜査機関側の裁量次第ですが、未来永劫いつまでも逮捕リスクに怯えなければいけないというわけではありません。
個別事案の後日逮捕リスクについては各自弁護士にご相談いただくとして、ここでは一般的な後日逮捕のタイミングについて解説します。
万引きの後日逮捕は1カ月以内が目安
万引きがバレて後日逮捕に向かって捜査が進んでいる場合、実際に後日逮捕に着手されるタイミングは万引きから1カ月以内が目安となります。
たとえば、万引き行為がなされたときの監視カメラ映像の解析、万引き犯特定に必要な周辺の防犯カメラやドライブレコーダーの映像確認などに手間がかかるケースでは、最低でも数日後から1~2週間程度は間が空くでしょう。
その一方で、万引きをした店舗と自宅が近かったり、鮮明な証拠映像などがすぐに見つかったりした場合には、当日や翌日に警察から連絡がくる可能性も否定できません。
万引きの後日逮捕は1年後に行われる可能性も否定できない
万引きの後日逮捕が犯行から1年後に行われる可能性もゼロではありません。
たとえば、万引き被害が多発している店舗が過去に遡って抜本的に万引き犯検挙に向けて警察の協力を仰いだケース、家電製品や最新ゲームなどの高額品を万引きした事案、万引き被害はすぐに発覚したが被疑者特定に時間を要した場合などでは、1年以上前の万引きでも後日逮捕が行われることもあるでしょう。
万引きの後日逮捕がどれぐらいの時期に行われるかは、被害状況や被害店舗の考え方などの諸般の事情によって変動します。「1カ月以上逃げ切ったから安心できる」「数年前の万引きが今さら掘り返されることはない」と高を括るのはおすすめできないので、刑事弁護実務に詳しい専門家の考えを参考にしてみてください。
万引きの公訴時効は7年
万引きの公訴時効は7年です(刑事訴訟法第250条第2項第4号)。そして、公訴時効の起算点は「犯罪行為が終わったとき」とされます(同法第253条第1項)。
公訴時効が完成すると、刑事責任を追及されることはありません。つまり、有罪判決を下されて前科がつくこともなければ、警察に捜査への協力を求められたり、後日逮捕されたりすることもなくなります。
したがって、万引きをしたときから7年が経過すれば後日逮捕されるリスクは完全に消滅すると考えられます。
万引きの民事責任の消滅時効は刑事手続きとは異なる
万引きで刑事訴追されるリスクは7年で消滅しますが、万引きをした場合には、刑事責任とは別に民事責任も発生する点に注意が必要です。
万引きの民事責任では、万引きした商品代金と慰謝料について損害賠償責任が発生します。民事責任は警察とは無関係なので後日逮捕云々の話は出てきませんが、民事責任の消滅時効が完成しない限り、店に犯行及び身元を特定されると賠償請求に応じなければいけません。
万引きに対する損害賠償請求権の消滅時効は以下2つです(民法第724条各号)。
- 被害者が万引きによる損害及び万引き犯を知ったときから3年間
- 万引きが行われたときから20年間
したがって、万引きに及んだときから7年が経過すれば後日逮捕されるリスクは消滅しますが、被害者側の認識次第では、刑事の公訴時効が完成した後でも民事責任を追及される可能性があると考えられます。
万引きで後日逮捕されるときの流れ
それでは、万引きで後日逮捕されるときの刑事手続きの流れについて具体的に見ていきましょう。
- 警察による接触
- 後日逮捕されて検察官送致されると勾留される可能性がある
- 検察官が起訴処分を下すとほぼ前科がつく
- 刑事裁判
万引きは窃盗罪に該当する犯罪なので、厳しい処罰が下される可能性を否定できません。
その一方で、殺人罪などの重大犯罪とは違って、万引きは比較的軽微な犯罪に位置付けられます。
したがって、早期に適切な対策をとれば社会生活への支障を回避・軽減できるので、バレずに済むことをただ祈るのではなく、まずは弁護士に相談をしたうえで今後の方針を決定してもらいましょう。
警察からコンタクトがある
万引きがバレて刑事手続きが進行する場合、最初は警察からアプローチがあります。
ただ、いきなり逮捕手続きに進むわけではなく、基本的には以下3つの接触方法に分類されます。
- 自宅や携帯電話への連絡
- 直接訪問による任意出頭の要請
- 通常逮捕
警察から電話がかかってきて後日呼び出しを求められる
万引き捜査では、万引き犯の会員情報・クレジットカード登録情報などが調査されます。そこで電話番号が判明するので、警察から電話連絡がくることがあります。
電話による問い合わせでは、警察署への任意出頭が求められるのが一般的です。警察署に出頭すると、犯行当日の行動などについて詳しく聴き取り調査が行われます。
なお、警察からの出頭要請は任意捜査の一環でしかないので応じる義務はありません。ただ、要請を無視すると逮捕状を請求されて後日逮捕される可能性が高くなるので、この時点で素直に応じておくのが無難でしょう。
警察による直接訪問で任意出頭を求められる
万引き犯の捜査状況次第では、警察官が自宅にやってきて任意出頭を求められるケースもあり得ます。電話連絡のケースと同じように、あくまでも任意捜査でしかないので出頭を拒絶しても問題ありませんが、応じなかったときの逮捕リスクを考慮すると素直に対応するのが無難です。
任意取調べの結果、万引きの同種前科・前歴が発覚した場合には微罪処分は難しいかもしれませんが、素直に取調べに応じている限りは在宅捜査・在宅起訴による事件終結を目指せます。逮捕による身柄拘束付きの取調べを回避できれば、会社や学校、家族にバレずに済むでしょう。
警察が逮捕状を持参して通常逮捕される
以下のような万引き事案では、逮捕状が請求されて通常逮捕手続きに移行するパターンもあり得ます。
- 複数回の万引き行為が発覚した場合
- 万引きによる被害総額が高い場合
- 窃盗の前科・前歴があることが判明した場合
- 任意出頭に応じなかったり警察からの電話連絡を無視した場合
窃盗の被疑事実で通常逮捕されると、警察署で身柄拘束付きの取調べを受けなければいけません。
逮捕段階の取調べは最大48時間です(刑事訴訟法第203条第1項)。警察署に身柄が押さえられている間は、弁護士以外の外部との連絡は禁止されます。
警察官が身柄拘束の必要なしと判断すれば48時間以内に釈放されますが、「検察官の判断を仰ぐ必要がある」と判断した場合には検察に身柄が送致されます。
このように、万引きで後日逮捕されると厳しい刑事手続きが待っていますが、そもそも、万引きは初犯で被害額が少なければ後日逮捕を回避できる可能性が高いということを忘れてはいけません。
警察の手が及ぶ前に対処した方が円滑な解決を目指せる場合もあるので、俯瞰的に刑事弁護を展開してくれる専門家まで早期にご相談ください。
勾留
逮捕後、万引き犯の身柄を引き取った検察官は、原則24時間以内に起訴・不起訴を決定します(刑事訴訟法第205条第1項)。
例外として、身柄拘束付きの取調べを更に続行する必要があるケースでは、検察官による勾留請求が行われて、原則10日間、最大20日間、身柄拘束期間が延長されます(同法第208条各項)。
ただし、万引きの後日逮捕で勾留請求されるのは、常習的に窃盗をしている場合や、事後強盗の疑いがあるような場合に限られます。被害額の少ない万引き事犯であれば、勾留請求されることなく24時間以内に起訴・不起訴が決定されることが多いでしょう。
起訴処分
逮捕段階及び勾留段階で収集された客観的証拠・供述調書を前提として、検察官は起訴・不起訴を決定します。
起訴処分とは、検察官が万引き事犯を刑事裁判にかける意思表示を内容とする訴訟行為のことです。これに対して、不起訴処分とは、万引き事犯を刑事裁判にかけずに刑事手続きを終了させる意思表示のことを意味します。
なお、日本の刑事裁判の有罪率は99%とも言われているので、起訴処分が下された時点でほぼ有罪になると言っても過言ではありません。
したがって、万引きで後日逮捕されたときは、いかに不起訴処分を獲得できるかがポイントになると考えられます。
刑事裁判
万引きで後日逮捕された後、起訴処分が下されると、公開の刑事裁判手続きに進みます。
シンプルな万引きで起訴された場合には罰金刑が下されるのが一般的ですが、執行猶予中の犯行であったり事後強盗罪に問われているケースでは、実刑判決が下される可能性が高いでしょう。
万引きで後日逮捕されたときに生じるデメリット3点
万引きで後日逮捕されると、厳しい刑事手続きを強いられるだけではなく、以下3点のデメリットが生じます。
- 前科がつくことでさまざまな支障が生じる
- 万引きで後日逮捕されたことが会社にバレると懲戒処分の対象になる
- 万引きで後日逮捕されたことが学校にばれると退学処分等の対象になる
前科がつく
罰金刑・懲役刑のいずれであったとしても、万引きで後日逮捕されて有罪判決が確定すると前科がつきます。
前科情報は非公開情報なので無関係の第三者に前科者だとバレる心配はありませんが、以下のような場面で弊害に晒される危険性があります。
- 履歴書の賞罰欄に記載しなければいけない(隠すと経歴詐称になる)
- 前科があると就けない職業がある
- パートナーにバレると離婚事由になる
- 前科があると入国できない国がある
- 再犯時に刑事処分が重くなる
会社から懲戒処分を下される
まず、万引きの容疑で後日逮捕されて身柄拘束されると会社にバレる場合があります。なぜなら、逮捕・勾留期間が長くなると最低でも数日間は会社を休まざるを得ないので、会社に不信感を抱かれるからです。
そして、万引きで後日逮捕されたことや前科がついたことが会社にバレた場合、懲戒処分の対象になる可能性が高いです。戒告・譴責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇のいずれになるかは就業規則の規定内容次第です。
学校から何かしらの処分を下され得る
会社員と同じように、学生が万引きで後日逮捕されると学校にバレる可能性が高いです。
そして、学校にバレると、学則にしたがって何かしらの処分が下されるでしょう。
ただし、殺人や薬物犯罪などの重罪とは違って、万引きは比較的軽微な犯罪です。厳しい経営方針の学校なら退学処分が下されるかもしれませんが、事情次第では処分なしの場合もあり得ます。
万引きの後日逮捕が不安なときに弁護士に相談するメリット7つ
過去に犯した万引きが警察にバレるか不安な場合や、警察から連絡が入って後日逮捕のリスクに晒されている場合には、刑事事件の実績豊富な弁護士に相談するのがおすすめです。
なぜなら、刑事事件に強い弁護士に相談することで以下7点のメリットが得られるからです。
- 警察に通報されずに過去の万引きについて相談できる
- 万引きで後日逮捕された後にどうなるかを解説してくれる
- 後日逮捕される前に自首するべきか検討してくれる
- 被害者との間で示談交渉を進めて後日逮捕に備えてくれる
- 後日逮捕されたとしても有利な刑事処分獲得を目指して防御活動を展開してくれる
- 後日逮捕で身柄拘束中でも弁護士接見でアドバイスしてくれる
- 盗癖のケアもサポートしてくれる
弁護士に相談しても警察に通報されるわけではない
弁護士に過去の万引きについて相談しても警察に通報されません。
なぜなら、弁護士には守秘義務があるので、相談者や依頼人の利益は守られるからです。
したがって、「過去に犯した万引きについてどうすれば良いか」という相談でも、相談者の利益最大化を目指したアドバイスを提供してくれるでしょう。
万引きを理由に後日逮捕される可能性や逮捕されたときのリスクを教えてくれる
弁護士に相談をすれば、「万引きで後日逮捕された後にどのようなペナルティが科されるか」について事案の状況に即して解説してくれます。
万引きで後日逮捕に怯えている状況では、数々の不安を抱えているはずです。たとえば、「警察から連絡がきたときの対処法」「後日逮捕されるタイミング」「万引きで逮捕されたときに生じるデメリット」など、数え上げたらキリがないでしょう。
ただ、万引きで逮捕される可能性や後日逮捕の後に生じるデメリットは、個別の事案によって中身が異なります。特に、万引き事案は警察の捜査が及ばない可能性もゼロではありませんし、逆に、懲役刑が下される可能性も否定できません。つまり、万引き事案は想定される刑事処分の幅が極めて広いというのが実情です。
したがって、自ら犯した万引き事件について確度の高い今後の流れを知りたいなら、刑事事件の実績豊富な弁護士の見解を参考にするのが最適だと考えられます。
万引きで後日逮捕される前に自首する妥当性を検討してくれる
弁護士に相談すれば、警察に後日逮捕される前に自首する妥当性を検討してくれます。
そもそも、警察に事件が発覚する前に自首をすれば、刑の減軽を期待できます(刑法第42条第1項)。加えて、そもそも万引き犯は微罪処分・不起訴処分・罰金刑の公算が大きい犯罪類型なので、自首によってかなり軽い処分を期待できるでしょう。
もちろん、「自首しなければ警察にバレずに逃げきれたのに、自首してしまったがばかりに前科がついてしまった」ということもあり得ます。ただ、刑事弁護実績が豊富で量刑事情にも精通した弁護士なら、自首すべきか否かの判断を見誤る可能性は極めて低いでしょう。
万引きで後日逮捕されたときに備えて被害者との間で示談交渉を進めてくれる
弁護士に相談すれば、被害者・被害店舗との間で早々に示談交渉を進めてくれます。
万引き被害者との間で示談を成立させるのは民事的解決の意味でも大切ですが、刑事処分の内容を左右するという意味でも意義が大きいです。
なぜなら、万引き犯を後日逮捕するか否か、万引き犯に対する起訴・不起訴、万引き犯に対する判決内容は、「被害回復が済んでいるか」「被害者が処罰を望んでいるか」というポイントが考慮されるからです。つまり、被害者との間で示談が成立していれば、万引きで後日逮捕されるリスクを大幅に軽減できますし、万が一逮捕されたとしても有利な刑事処分獲得に役立つということです。
万引き犯が自ら被害店舗に謝罪に行っても許してもらえるか分かりませんが、交渉ノウハウを有する弁護士が同行したり代理したりすれば、被害者側も冷静に示談に応じてくれるでしょう。
万引きで後日逮捕されたとしても有利な刑事処分獲得を目指して尽力してくれる
万引きが警察に発覚したとしても、弁護士は少しでも有利な刑事処分獲得を目指してさまざまな防御活動を展開してくれます。
たとえば、万引きに至った経緯(貧困やストレス)、計画性の有無、更生を支える家庭環境の有無、反省の態度など、的確な情状を主張立証できれば、万引き事犯なら処分内容がかなり有利に傾くでしょう。
万引きで後日逮捕された被疑者に対して弁護士接見でアドバイスをくれる
万引きで後日逮捕された場合には、被疑者は孤独な状況で厳しい取調べを強いられますが、弁護士なら接見機会で被疑者を励ましつつ、取り調べへの対応方法のコツなどを臨機応変にアドバイスしてくれるでしょう。
たとえば、万引きで後日逮捕されたとき、捜査官は、「被疑事実以外の万引き行為」に対しても疑いの目をもっています。供述過程で立件された万引き事件以外の犯行を自白し、当該自白を元に更に捜査活動が進められて物証が集まってしまうと、再逮捕や勾留期間が延長される危険性が高まります。
もちろん、捜査に対して嘘をつくのは厳禁です。しかし、話す必要がないなら、わざわざ被疑者自身が不利になる情報を提供する必要もないでしょう。
万引き弁護の経験豊富な弁護士なら、捜査機関がどのような証拠を収集し、どこまでの別件を視野に入れているのかを経験則で判断することができます。反省の態度を示しつつも、不利な刑事処分を回避する絶妙なアドバイスを期待できるので、万引きの後日逮捕が懸念されるケースではできるだけ早期に弁護士とコンタクトをとって防御活動の方針を決定するべきだと考えられます。
万引き癖治療の支援団体などを紹介してくれる
万引きは再犯率が高い犯罪類型ですが、盗癖などの精神疾患が原因のケースも少なくありません。
そして、刑事事件に力を入れている弁護士は、カウンセリング施設や民間の支援団体などとのコネクションをもっているので、万引き犯が抱えている根本的な問題からの解決を目指せるでしょう。
万引きの後日逮捕が不安なら刑事事件に強い弁護士に相談しよう
過去の万引き行為は公訴時効を迎えるまでは常に後日逮捕のリスクを伴う状態が続きます。「この前の万引きがいつバレるかわからない」「万引きで逮捕されて会社にバレたらどうしよう」と不安を抱えたままでは、健全な日常を過ごすことはできません。
万引きで現行犯逮捕されていないなら、被疑者側が率先して対策に踏み出すことによって後日逮捕のリスクを大幅に軽減できます。「万引きを隠していたから後日逮捕された」場合と、「万引きを自白したから逮捕されずに済んだ」場合とでは、どちらのメリットが大きいかは言うまでもないでしょう。
刑事事件の経験値が多い弁護士は、万引き事件の実態を総合的に考慮して、現段階で採るべき対処法を提案してくれます。対応が遅れると想像以上に厳しく刑事責任を追及される危険性もあるので、まずは弁護士に今後の方向性をご相談ください。