売春は法律違反?違法となる要件と逮捕されるケースを詳しく解説

売春は法律違反?違法となる要件と逮捕されるケースを詳しく解説
売春は法律違反?違法となる要件と逮捕されるケースを詳しく解説

お金などの対償を支払って性交を行った場合は、売春防止法違反となります。しかし、売春自体に罰則規定はないため、逮捕されたり勾留されたりされることはありません。

この記事では、売春の定義や関係法令、売春防止法等で刑罰がある具体的事例などについて解説しています。売春を行ってしまった人、斡旋や勧誘を行ってしまった人などはこれから解説することを参考にし、今後の対応をご検討ください。

「売春」の定義と関係法令・法定刑について

まずは、売春の具体的な定義や関係法令について詳しく解説します。

対償を支払い性交等を行うことを売春という

売春とは、対償の見返りとして性交等を行うことを言います。一般的には、お金を支払うことにより、相手と性交を行うことを指し、体を売ることを売春、買うことを買春、どちらのことも指す場合は売買春と表します。

また、売春の具体的な定義としては「対償を実際に受け取り、もしくは受け取ることを約束して不特定多数の者と性交すること」です。つまり、金銭等のみでなく何らかの対償のやり取りがあった場合は、売春として認められる可能性が高いです。

売春は「売春防止法違反」に該当

売春は、売春防止法という法律によって定められており、以下の通り記載されています。

何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。
引用:売春防止法|e-Gov

上記の通り、売春防止法により明確に禁止事項として記載されています。そのため、売春を行った場合は売春防止法違反に該当します。

ただし、「売買春をした」という事実だけで罰則を受ける規定はありません。つまり、出会い系サイトなどで知り合い、対償のやり取りを約束して実際に渡した上で性交等を行った場合、売春防止法違反にはなるものの罰則を受けることはないことになります。

つまり、売買春をした事実のみで逮捕されたり勾留されたりすることはありません。

ただ、法律によって禁止されていることであるため、罰則規定がないだけで行って良いものではありません。その点は注意してください。

売春斡旋も「売春防止法違反」に該当

売買春を行った当事者は売春防止法違反になっても罰則規定はありません。しかし、売春を斡旋したり勧誘したりした場合は、刑事罰の対象となり得ます。

売春の勧誘をした場合

  • 6か月以下の懲役または1万円以下の罰金

売春を斡旋した場合

  • 2年以下の懲役または5万円以下の罰金

参考:売春防止法|e-Gov

詳しくは後述しますが、その他も売春に関連することを行った場合は刑事罰の対象となり得る可能性があります。あくまでも、売買春を行った当人たちには罰則規定がないというのみであることに注意してください。

児童の場合は「児童売春・児童ポルノ違反」に該当

罰則規定のない売買春は「売春防止法」です。そのため、児童を相手に売買春を行った場合は、その他の法律(児童売春・児童ポルノ法)が適用されて刑事罰の対象となり得ます。

児童とは未成年者(18歳未満)を指します。つまり、18歳未満の者に対して対償を支払う約束もしくは実際に支払って性交等を行った場合は、児童売春・児童ポルノ法違反に該当し、逮捕・勾留される可能性が高いです。

児童売春を行った場合は、その本人に対して以下の刑事罰が科される可能性があります。

  • 5年以下の懲役または300万円以下の罰金

売春防止法違反と比較しても、とても重たい刑事罰を受ける可能性がある点に注意しなければいけません。

なお、児童売春には故意が必要です。そのため、仮に相手が18歳未満であると知らなかった場合は児童売春が成立しません。とはいえ、故意がなかったことを証明するのは難しいです。

前提として罰則規定の有無に関わらず、売春自体が禁止されている行為です。相手が何歳であれ、売春行為自体を行わないようにしたほうが良いでしょう。

売春が違法と認められる要件

売買春は違法です。ただし、直ちに違法となるわけではありません。売買春として認められる要件を満たした場合に違法となります。次に、売買春が違法と認められる要件について解説します。

対償のやり取りがあることもしくは約束した事実があること

売春は、対償のやり取りを約束したり実際に渡したり受け取ったりした事実がなければ成立しません。売春・買春は売買を意味しているため、対償のやりとりが必要です。

そのため、たとえば出会い系サイトで知り合った当人同士がその場の流れで性交等を行ったとしても、売買春には該当しません。ただし、お金をあげることを約束して売買春を行った場合は、違法であると判断されます。

また、「対償」はお金に限りません。たとえば、物を見返りとしてプレゼントしたり、何らかのサービスの見返りなどでも対償として認められて違法となります。

性交を行ったこと

売春防止法では「売春の定義」として、以下のとおり定めています。

この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。
引用:売春防止法|e-Gov

つまり、性交を行わなければ売春は成立しません。

売春の事実が立証できる場合

売春が違法と認められるためには、実際に対償のやり取りを約束もしくは実際に渡していること、性交を行ったことの2点を立証できなければいけません。たとえば、メール等のやり取り履歴や証言などが証拠となり得ます。

事実を立証できなければ売春防止法違反であるとはいえません。また、仮に売春防止法違反となっても、罰則はなく逮捕されることもないため、躍起になって捜査を行うことはないでしょう。

売春で逮捕されるケース

売買春を行った場合、売春防止法違反に該当します。しかし、売春防止法では売買春に対する罰則規定を設けていないため、逮捕されることはありません。

ただ、以下に該当する場合は売春防止法違反として認められ、逮捕・勾留され、刑事罰を受ける可能性があります。

  • 勧誘した場合
  • 斡旋した場合
  • 売春する場所を提供した場合
  • 児童を売春した場合

次に、売春で逮捕される可能性があるケースについて、判例も交えて詳しく解説していきます。

勧誘した場合

売春防止法第5条では、売春の勧誘を禁止しています。万が一、勧誘を行った場合は6か月以下の懲役または1万円以下の罰金に科される可能性があります。

売春の勧誘とは、具体的には以下のようなケースが該当します。

  • 公衆の目に触れるような形で、人に対して売春の相手方となるように声をかける行為
  • 売春の相手方となるように人の前に立ち塞がったり、付き纏ったりする行為(いわゆる客引き行為)
  • 公衆の目に触れるような形で客待ちをしたり、広告を出したりする行為

参考:売春防止法|e-Gov

上記の例で見ると、たとえば客引きをして売春を行ったり、いわゆる立ちんぼのような形で勧誘したりする行為が禁止されていると考えられます。これらの行為を行った場合は、売春防止法第5条の「勧誘」に該当し、6か月以下の懲役もしくは1万円以下の罰金が科されます。

過去の売春防止法(勧誘)違反であると判断された具体事例について解説します。

【事例】
事件番号: 昭和37(あ)289
事件名:売春防止法違反
本事件は、自分自身が売春の相手方となる意思のある者から「売春できる女を紹介できるか?」といった内容のことを聞かれ、実際に紹介した事例です。本事件では、実際に対償(金銭)のやり取りに関する会話が行われ、交渉があったことから売春として成立しています。

また、売春の相手方となる人物を宿泊先の旅館まで一緒に歩いて案内したことが、勧誘に当たると判断され、有罪判決となりました。本事件は最高裁まで争われましたが、上告を棄却されています。

参考:裁判例結果詳細|裁判所

上記事件のポイントは以下のとおりです。

  • 売春として成立しているのか?
  • 勧誘に該当するか?

上記事件は、売春の相手方となる意思のある人物から話を持ちかけられています。被告人となった人物は、「この人は買春の意思がある」と判断をした上で、売春できる女性を紹介しています。また、実際に対償の約束をして性交を行った事実があるため、売春として認められました。

そして、売春の相手方となる意思がある人物から「宿泊先はどこか?」ときかれ、「〇〇の旅館です」と言い、付いて歩いた事実があります。売春防止法5条3項から見ると、当該行為も勧誘に該当すると判断できます。

仮に、売春の相手方となる意思のある人物から声をかけられたとしても、実際に売買春を成立させた事実があり連れて歩けば勧誘と判断されます。

斡旋した場合

売春防止法第6条では、売春の周旋(斡旋)を禁止しています。万が一、周旋を行った場合は2年以下の懲役または5万円以下の罰金が科されます。

売春の周旋とは、以下のケースが該当します。

  • 売春の相手方となるように勧誘すること
  • 売春の相手方となるように勧誘する目的から、人に付き纏ったり立ち塞がったりする行為
  • 広告等により勧誘すること

参考:売春防止法|e-Gov

周旋も勧誘と似ていますが、法定刑はまったく異なります。比較すると、周旋行為のほうが重たくなっています。

勧誘は、不特定多数の人が見れるところで勧誘等を行った場合に該当するものです。たとえば、出会い系サイトのように不特定多数の人が見れる場所で自身の売春を持ちかけたような場合が該当します。

一方、周旋は仲人的な役割を担っている場合が該当します。たとえば、買春する人と売春する人を合わせる役割を担う人は、周旋として処罰される可能性があるでしょう。

過去の売春防止法(周旋)違反であると判断された具体事例について解説します。

【事例】
事件番号: 平成22(あ)1721
事件名:売春防止法違反
本件は、出会い系サイトを利用して買春の意思がある相手方を募る、派遣型売春デートクラブを経営していた者が有罪判決を受けた事件です。

本事件は、経営者である男性が売春を行う女性本人であるかのように装い、相手方が決まり次第、実際に相手方のところへ女性を派遣させていました。仲介を行っていた事実が認められたことにより、売春防止法の周旋に該当すると判断された事例です。

参考:裁判例結果詳細|裁判所

上記事件のポイントは以下のとおりです。

  • 売春が成立するか?
  • 周旋が成立するか?

上記事件は、出会い系サイトを介して金銭のやり取りを約束し、実際に性交等を行っていた事実があります。そのため、売春防止法に定める「売春」に該当すると判断されています。

また、上記案件が売春防止法6条の周旋に該当するか、といった点で最高裁まで争われました。ここで争点となったのは、男性経営者が行った行為が周旋に該当するか否かです。

男性経営者は、出会い系サイトであたかも自分自身が女性であり、自分自身を売春するかのように見せていました。そのため、買春をする相手方も当該経営者に仲介してもらっているという認識を持たずに、売買春が成立しています。

しかし、中身を見れば男性経営者が仲介をしている事実があるため、周旋として成立すると認められました。結果、上告が棄却されて有罪判決が確定しています。

売春する場所を提供した場合

売春防止法第11条では、売春することを知っていながらその場を提供することを禁止しています。万が一、違反した場合は3年以下の懲役または10万円以下の罰金に科されます。また、業として行った場合は、7年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

たとえば、接客を伴う飲食店で働いている従業員が、本来のサービス範囲を超えて店舗の個室で売春を行っていたと仮定します。この場合、店舗を経営する者が売春防止法違反として処罰されることになります。

過去に売春防止法(場所の提供)違反であると判断された事例を紹介します。

【事例】
事件番号:平成25(わ)24
事件名:売春防止法違反
本件は、個室付き特殊浴場を運営する者が、売春防止法違反(場所提供罪)となった事件です。この事件は、買春する意思のある人物から対償(入浴料と称した金銭)を受け取り、当該店舗で売春をさせました。売春を行っていることを認識した上で、場所を提供していることにより、違反と判断された事例です。

参考:裁判例結果詳細|裁判所

上記事件のポイントは以下のとおりです。

  • 売春が成立していたのか?
  • 場所の提供があったか?

まず、前提として入浴料を受け取り、女性従業員に性交等のサービスを行わせていた事実があるため売春として成立します。また、売春を行っていると認識をして、その場所を提供しているため、売春防止法第11条に該当して違反となりました。

本事件は、被告人に対して懲役2年6か月・罰金30万円、執行猶予3年の判決が下されました。また、法人に対しても罰金30万円の判決が下され、追徴金の判決も下されています。とても厳しい判決結果となりました。

児童を売春した場合

売買春をした相手が児童だった場合は、児童売春・児童ポルノ法違反となります。この法律に従い、児童売春を行った者は、5年以下の懲役または300万円以下の罰金に処されます。

本来、売春をした相手が成人している者であった場合は罰則規定がありません。しかし、相手が児童だった場合は、上記の通り厳しい処罰が下されます。

また、児童を対象として勧誘や周旋を行った場合は、売春防止法よりもさらに厳しい処罰が下されます。

児童売春の場合 売春防止法の場合
売買春 5年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金 罰則なし
勧誘 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金
業の場合は7年以下の懲役および1,000万円以下の罰金
6か月以下の懲役もしくは1万円以下の罰金
周旋 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金
業の場合は7年以下の懲役および1,000万円以下の罰金
2年以下の懲役または5万円以下の罰金

参考:売春防止法|e-Gov
参考:児童売春・児童ポルノ法|e-Gov

上記のとおり相手方が成人か未成年かによって罰則の重さが異なります。ただし、相手方が18歳未満であると知らなかった場合は、児童売春に該当しません。

【ケース別】「これって売春?」よくある事例の違法性を解説

売春防止法で売春の定義を以下のとおり定めています。

この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。

引用:売春防止法|e-Gov

対償のやり取りを行って不特定多数の者と性交を行った場合は、すべてが売春とみなされて違法になるのか?という問題が残ります。次に、起こり得る事例を元に「これって売春に該当するのか?」について詳しく解説していきます。

ケース1.風俗店で性交等を行った場合

風俗店で性交を行った場合は、売春防止法の以下の要件を満たしているため違法と判断されます。

  • 対償のやりとりがある
  • 性交を行っている

よって、風俗店で性交を行った場合は違法であると判断されます。また、店舗を経営する者は、売春が行われていることを知っていてその場を提供しているため、場所の提供として違法です。

しかし、実際には性交が伴う風俗店が多く存在しています。これらが摘発されない理由は、いわゆる建前があるためです。

性交がある風俗店舗のことを一般的に「ソープランド」と言います。ソープランドの建前は、浴場(お風呂)です。また、ソープランドを経営するためには、風営法による届出許可を得なければいけません。

風営法の定めるソープランドの定義は以下のとおりです。

一 浴場業(公衆浴場法(昭和二十三年法律第百三十九号)第一条第一項に規定する公衆浴場を業として経営することをいう。)の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業

引用:風営法|e-Gov

つまり、「ソープランドでは性交が行われていない」という建前があります。実際にそういったサービスが行われていても摘発されない理由は、「お客さんと従業員が自由恋愛でそういった関係になった」という建前があるためです。

なお、売春自体に罰則はないため店舗が摘発されたとしても、サービスを受けたお客さんは逮捕されたり勾留されたりすることはありません。

ケース2.交際関係にあると認識していた場合

交際関係にある成人男性・成人女性が性交を行っても何ら違法性はありません。仮に、交際関係にある男女の間で対償のやり取りがあり、性交を行っていた場合でも違法であると認められる可能性は低いです。

なぜなら、売春は「不特定の相手方と性交することをいう」と定義されているため、交際関係にある男女のように特定の人物の場合は適用されません。

よって、交際関係にある人たちが性交を行うために対償のやり取りをしていたとしても、違法であると認められる可能性は低いでしょう。

ケース3.食事・買い物等を対償として性行等を行った場合

食事や買い物を対償として性行為を行った場合、売春防止法違反に該当する可能性があります。売春防止法による売春の定義として「対償を受け、もしくは受ける約束をして」と記載されています。

対象とは、見返りのことを指し、かならずしも金銭等である必要はありません。そのため、食事を提供した見返りに性交を行った場合や、物を買ってもらう代わりに性交した場合は、違法と判断されます。

ただし、初めからそういった認識がなかった場合は違法とはなりません。たとえば、出会い系サイトなどで知り合った男女が食事へ行き、その流れで性交を行った場合は売春に該当しません。

なお、売春防止法違反による売春を行った場合でも、当事者に罰則規定はありませんが、相手が未成年の場合は児童売春・児童ポルノ法違反となります。児童相手の場合は、性交を行うこと自体が違法と認められるため注意してください。

ケース4.初めは対償の約束をしていなかった場合

売春の定義は「対償を受けまたは受ける約束をして不特定の者と性交を行う場合」です。そのため、初めから約束をしていなかったとしても、結果的に対償のやり取りがある場合は違法です。

ただし、売春が成立するためには「性交の対償として」という前提が必要です。そのため、たとえば単なる資金援助であり、性交の対償ではない場合は違法と判断されません。

なお、本ケースの場合も売春防止法違反として認められても罰則規定はないため、逮捕等されることはありません。ただし、相手が児童の場合は逮捕案件となるため注意してください。

まとめ

今回は、売春の定義や関係法令・罰則について解説しました。

売春とは、対償を受けもしくは受ける約束をして性交を行うことを言います。ただ、売春を行ったとしても、売春防止法違反になるのみで罰則規定はありません。つまり、逮捕されたり勾留されたりする心配はありません。

売春防止法違反として逮捕される可能性があるのは、勧誘や周旋、場所の提供をした場合などです。また、売春の相手が児童だった場合は、売買春をした当事者も児童売春・児童ポルノ法違反として逮捕される可能性があります。

売春自体に罰則規定はないものの、法律によって禁止されている行為です。行ってしまったからといって、何らかの刑罰を受けることはないため、自首等を検討する必要はありませんが今後は行わないように注意しましょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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