下半身の露出行為や過度に性的なファッション(コスプレなど)で出歩く行為は犯罪として逮捕される可能性があります。
特に、下半身露出のような性犯罪が疑われるケースは公然わいせつ罪に該当する違法行為なので、適切な防御活動を展開しなければ厳しい刑事処分が下されかねません。場合によっては、有罪判決が言い渡されて実刑判決が確定する危険性も生じるでしょう。
したがって、露出行為に及んでしまった場合には、警察から取調べがある前の段階からできる限りの対策をとり、可能な限り軽い刑事処分獲得を目指して動き出すべきだと考えられます。
そこで今回は、過去に露出行為に及んでしまって逮捕されるか不安を抱えている人や、露出行為について警察から任意取調べの要請を受けた人のために、以下5点について分かりやすく解説します。
- 露出行為で逮捕されるときの犯罪類型と法定刑
- 露出行為の容疑をかけられたときの刑事手続きの流れ
- 露出行為が原因で逮捕されたときに生じるデメリット
- 露出行為で逮捕されるか不安なときに弁護士に相談するメリット
- 露出行為や露出性の高いファッションはどこからが逮捕の対象になるのか
確かに、強制わいせつ罪・強制性交等罪のような”物理的被害”が発生する性犯罪と比較すると、露出行為は相対的に軽微な犯罪のように思えるかもしれません。
しかし、性犯罪に対する厳罰化が進んでいる昨今の情勢を踏まえると、性犯罪の一類型である公然わいせつ罪該当行為に対しても厳しい捜査が及ぶのは間違いないでしょう。
動き出すタイミングが早いほど防御活動の選択肢が広がるので、些細な不安でもどうぞお気軽に弁護士までお問い合わせください。
目次
露出行為で逮捕されるときの犯罪類型と法定刑
露出行為は以下3つの犯罪類型に該当することを理由に逮捕される可能性があります。
- 公然わいせつ罪
- 迷惑防止条例違反
- 軽犯罪法違反
それでは、各犯罪類型の構成要件及び法定刑について、それぞれ具体的に解説します。
公然わいせつ罪
公然わいせつ罪とは、「公然とわいせつな行為をしたとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第174条)。公然わいせつ罪の法定刑は、「6カ月以下の懲役刑もしくは30万円以下の罰金刑、拘留もしくは科料」と定められています。
公然わいせつ罪の保護法益
公然わいせつ罪の保護法益は「性的秩序・健全な性的風俗」とするのが判例通説です。
したがって、刑法上の”被害者”は保護法益を基準に考えるのが一般的な見解であることを踏まえると、公然わいせつ罪の被害者は「社会全体」であると考えられます。そのため、公然わいせつ罪には「特定の被害者」が存在しないので、示談交渉によって軽い刑事処分を目指す余地が残されていないとも思えるでしょう。
この点、確かに、多数の人々が行き交う街中でいきなり下半身を露出したようなケースでは「社会全体が被害者」という認識は理解しやすいです。
これに対して、特定対象者に向かって電車内等でいきなり露出行為に及んだケースでは、「見せられた対象者」が被害者であるという認識になるのが一般的でしょう。実際、後者の事例では、露出行為の”被害者”は、露出行為に及んだ犯人に対して民事上の損害賠償請求権を有すると考えられます。つまり、刑法上は”被害者”としての地位が与えられないとしても、民事上”被害者”として扱われる人物が存在し得るということです。
以上より、「性的秩序・健全な性風俗」という社会的法益を保護法益とする公然わいせつ罪を犯した場合でも、事案の状況次第では被害者との間で示談をする余地が残されているので、捜査が及んだ場合には出来るだけ早いタイミングで弁護士に相談して軽い刑事処分獲得を目指すことをおすすめします。
公然わいせつ罪の構成要件
公然わいせつ罪の構成要件は以下3点です。
- 公然と
- わいせつな行為
- 「公然とわいせつな行為をすること」に対する故意
①公然と
公然わいせつ罪は、わいせつな行為が「公然と」なされた場合に成立する犯罪類型です。
「公然と」とは、「わいせつな行為を不特定または多数の人が認識できる状態のこと」を指します(最決昭和32年5月22日)。
まず、「公然と」の要件を満たすには「認識できる状態」であれば足りるので、わいせつ行為が実際に不特定または多数の人が認識されることまでは必要ありません。たとえば、インターネットで露出した下半身の動画を配信したが閲覧者がいない段階に動画を削除したようなケースでも、公然わいせつ罪は成立します。また、公園や公道、駐車場などの公共の場所で露出行為に及んだ場合も、周囲に人が居たか否かにかかわらず、公然性が認められるでしょう。
さらに、特定かつ少数の者に対してわいせつ行為を見せた場合でも、それが不特定または多数人を勧誘した結果としてもたらされたケースであれば公然わいせつ罪成立を認めるのが判例です(昭和31年3月6日)。
②わいせつな行為
公然わいせつ罪は、公然と「わいせつな行為」をしたときに成立する犯罪類型です。
「わいせつ」とは、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」を指します(最判昭和32年3月13日【チャタレー事件】)。
したがって、「わいせつな行為」に該当するか否かは、一般社会において行われている良識や社会通念を基準として判断されると考えられます。たとえば、行為者自身はわいせつな行為の認識がなく芸術活動の一環として露出行為に及んだようなケースでも、社会通念上性的道義観念に反すると評価できる以上は、猥褻性が肯定されて公然わいせつ罪で逮捕されることになるでしょう。
③「公然とわいせつな行為をすること」に対する故意
公然わいせつ罪の容疑で逮捕・有罪になるには、「公然とわいせつな行為をすること」に対する故意が必要です。なぜなら、公然わいせつ罪は過失犯ではないからです。
ただし、下半身露出行為や自動車内で性行為に及んだような明白に公然わいせつ罪が成立するようなケースとは異なり、芸術作品・芸術表現の性的描写部分などを理由に公然わいせつ罪で逮捕された場合には、「わいせつな行為をすること」に対する認識がなく、公然わいせつ罪が成立しないようにも思えます。
しかし、公然わいせつ罪における故意の成立については、問題となる行為に対する認識が存在していれば足り、当該行為がわいせつ性を具備することまで必要ではないとするのが判例です(最判昭和32年3月13日【チャタレー事件】)。
したがって、わいせつ性に対する認識の強度程度やわいせつ性について”未必の故意”程度の認識しかなかったなどの事情は、情状による刑の減軽要素でしかなく、公然わいせつ罪の成立自体を否定することはありません(刑法第38条第3項)。
迷惑防止条例違反
露出行為に及んだ場合、各自治体が定める迷惑防止条例違反を理由として逮捕される可能性もあります。
迷惑防止条例の規定内容は自治体によって異なりますが、東京都の迷惑防止条例である「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」では、「公共の場所又は公共の乗物において卑わいな言動をすること」が粗暴行為として処罰対象に掲げられています(同法第5条第1項第3号)。この場合の法定刑は、「6カ月以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」です(同法第8条第1項第2号)。
たとえば、公の場で陰部などを露出した場合には公然わいせつ罪が成立するものの、公共の場で性器は隠しつつも過度に性的な下着姿や異端なコスチュームを着用しているに過ぎないケースでは、公然わいせつ罪で逮捕に及んでも「わいせつ性」が争点になり公判を維持するのが難しくなることが想定されます。このような場合には、「公共の場所で卑猥な言動をした」という要件になら当てはめやすいことから、迷惑防止条例違反を理由に逮捕手続きへ移行する可能性が高いでしょう。
軽犯罪法違反
露出行為に及んだ場合、軽犯罪法違反(身体露出の罪)を理由に逮捕される可能性もあります。
軽犯罪法では、「公衆の目に触れるような場所で公衆に嫌悪の情を抱かせるような方法で、尻・もも・その他身体の一部をみだりに露出する行為」を処罰対象としています(同法第1条第20号)。軽犯罪法違反の法定刑は、「拘留または科料(併科あり)」です。
「その他身体の一部」には、「通常人が衣類などで隠している部分」が含まれると解するのが一般的ですが、時代によってファッションやジェンダーに対する考え方が変化していることを踏まえると、たとえば、へそやわき腹などを露出しただけで軽犯罪法違反に問われる可能性は低いでしょう。
なお、拘留とは、1日以上30日未満の範囲で刑事施設に拘置されることです。また、科料とは、1,000円以上10,000円未満の金銭的刑罰を意味します。懲役刑や禁錮刑などと比較すると拘留・科料は軽微な刑罰にも思えますが、拘留・科料いずれも「刑罰」である以上、有罪判決が確定すると前科がつくことになるので、「軽微であったとしても前科は回避したい」と希望するなら、逮捕・起訴される前の段階で弁護士に相談することを強くおすすめします。
露出行為で逮捕されるまでの経緯・逮捕された後の流れ
露出行為に対する捜査活動・刑事手続きは以下の流れで進められるのが一般的です。
- 警察が露出事件を認知して捜査を開始する
- 逮捕後は警察で取調べが実施される
- 警察から検察に身柄・事件が送致される
- 検察官が起訴・不起訴を決定する
- 露出事件が公開の刑事裁判にかけられる
警察が露出事件を把握して捜査活動をスタートする
露出行為が捜査機関にバレた場合、状況に応じて以下いずれかのパターンで捜査活動がスタートします。
- 現行犯逮捕
- 通常逮捕
- 任意出頭の要請
現行犯逮捕
露出行為に及んでいるタイミングで110番通報されると、かけつけた警察官に現行犯逮捕されます。また、犯行現場に居合わせた一般人に私人逮捕される可能性もあり得ます。
なぜなら、現に罪を行い、または、現に罪を行い終わった者は「現行犯人」とされ、現行犯人は裁判所の発付する逮捕状なしでも誰でもその場で逮捕できるからです(刑事訴訟法第212条第1項、第213条)。
なお、下半身露出などの犯行中だけではなく、以下に該当する者が露出行為等に及んでから間もないと明らかに認められるときには、「準現行犯人」として現行犯逮捕されます(同法第212条第2項)。
- 露出犯人として追呼されているとき
- 贓物や明らかに公然わいせつ罪に用いたと思われる証拠物を所持しているとき
- 身体や被服に露出行為等の顕著な証跡があるとき
- 露出犯人として誰何されて逃走しようとするとき
たとえば、駅のホームで下半身を露出してすぐに服を着直したが、周囲の人が騒ぎ出して現場から離れようとしたところ、数名の目撃者に追跡されて身柄を押さえられたようなケースでは、公然わいせつ罪の準現行犯人として私人逮捕されたと当てはめることができます。なお、私人逮捕によって身柄が押さえられた場合には、現場にかけつけた司法警察職員などにすぐに身柄が引き渡されることになります(同法第214条)。
通常逮捕
露出行為に及んだ場合、現行犯以外でも後日逮捕される可能性があります。この場合には、通常逮捕の方法で被疑者の身柄が拘束されることになります。
通常逮捕とは、被疑者が公然わいせつ罪などを犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときに、裁判官があらかじめ発付する逮捕状を根拠として実施される逮捕手続きのことです(刑事訴訟法第199条第1項)。
なお、逮捕手続きには、現行犯逮捕・通常逮捕以外に「緊急逮捕」という方法が存在しますが、緊急逮捕は「死刑、無期懲役、長期3年以上の懲役刑・禁錮刑にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合」にのみ実施できる手続きなので、「6カ月以下の懲役刑」を法定刑とする公然わいせつ罪について緊急逮捕はあり得ません。
露出行為が後日逮捕されるのは客観的な証拠が揃っているとき
露出行為に及んだ場合、目撃者の証言や周囲の防犯カメラ映像などが証拠になって犯行が露見することも少なくありません。
また、街中に設置された監視カメラやドライブレコーダー映像、電車の移動履歴などを照合すれば、露出行為に及んだ犯人の身元を特定することも簡単です。
したがって、「露出行為の現場から無事に逃走できたから警察に捕まることはない」と安易に考えるのは危険です。警察が逮捕状を請求して通常逮捕手続きに移行した段階で厳格な時間制限のもと刑事手続きが進められてしまうので、すみやかに弁護士に相談をして警察から連絡がある前に採るべき防御策(示談交渉や自首等)を講じてもらうべきでしょう。
露出行為は公訴時効が完成するまでいつ通常逮捕されるか分からない
露出行為が警察にバレて後日逮捕されるタイミングは事案によって異なります。
ただ、確かに言えることは、公然わいせつ罪の公訴時効が完成するまでは、露出行為に及んだ以上、いつ通常逮捕されるか分からないということです。そして、公然わいせつ罪の公訴時効は「露出行為が終わったときから3年」で完成します(刑事訴訟法第250条第2項第6号)。
したがって、過去に露出行為を行った場合には、当該行為から3年が経過するまでの間は、いつ警察が通常逮捕手続きに移行するか分からない状況に追い込まれると考えられます。このような不安定な状況では健全な社会生活を営むことができないので、早期に事件解決を目指して建設的な人生を歩み出すために、すみやかに弁護士に相談をして今後の方策についてアドバイスをもらいましょう。
任意出頭の要請
露出行為がバレて後日捜査機関の追及が及ぶ場合でも、かならず通常逮捕手続きに移行するわけではありません。
具体的には、逃亡や罪証隠滅のおそれがないケース、露出行為など性犯罪に関する前科前歴がない完全初犯のケース、すでに実質的な被害者との間で示談が成立しているケースなどでは、警察からの「任意での事情聴取の要請」で刑事手続きがスタートする可能性もあるということです。
露出行為の任意出頭要請は犯人にとってメリットが大きい
警察からの任意出頭要請は、自宅訪問や電話連絡などのさまざまな方法によって行われるのが一般的ですが、「過去の露出行為が警察にバレてしまった。これで人生終わりだ」などと不安を感じる必要はありません。なぜなら、通常逮捕手続きではなく任意ベースで刑事手続きがスタートした点で、露出犯人にとって大きなメリットを見出せるからです。
たとえば、後述のように、露出行為が公然わいせつ罪に抵触するとして逮捕されると身柄拘束付きの取調べを強いられますが、任意の事情聴取では身柄は拘束されずに済みます。身柄拘束されないということは、(通常逮捕手続きに移行しない限り)好きなタイミングで帰宅できますし、会社・学校・家族と自由に連絡をすることも可能です。結果として、露出行為に及んだことを理由として捜査が進んでいることを会社・学校に隠し通しやすくなります。
したがって、警察から任意での事情聴取を要請された場合には、恐怖や不安から逃げようとするのではなく、弁護士に相談したうえで警察への対応方法についてアドバイスを貰うべきでしょう。
ただし、逮捕・勾留後の取調べは時間制限があるのに対して、任意捜査は状況を総合的に考慮しながら進められるので、手続き終結までに相当の時間を要する可能性も否定できません。たとえば、後述のように、逮捕・勾留なら最大でも23日間に限定されますが、任意での捜査は数カ月にも及ぶこともあり得る点に注意が必要です。
露出行為についての任意出頭要請に応じると微罪処分獲得を目指しやすい
漏出行為について警察から任意出頭要請がかかった場合、これに誠実に対応すれば、微罪処分獲得の余地を見出せます。
微罪処分とは、事件を検察官送致せずに、警察限りの判断で事件を終結させる刑事手続きのことです。警察限りの判断で露出行為事件が終結するので、長期間身柄が拘束されることもなければ、前科がつくこともありません(刑事訴訟法第246条但書、犯罪捜査規範第198条)。
ただし、露出行為事案を微罪処分にするかの判断の際には、以下の要素が総合的に考慮される点に注意が必要です。つまり、「任意取調べに応じればかならず微罪処分扱いになる」というわけではありません。
- 軽微な犯罪類型であること(万引きや軽犯罪法違反など)
- 犯情に斟酌の余地があること(計画性がないことなど)
- 身元引受人が存在すること
- 被害者の処罰感情が薄いこと(示談成立、被害届の取り下げなど)
- 被害弁済が済んでいること(示談金の支払いが済んでいること)
- 素行不良者ではないこと(前科前歴がないこと)
したがって、逮捕勾留による長期の身柄拘束や前科によって今後の社会生活に悪影響が生じるのを回避したいのなら、警察から任意出頭要請がかかった段階で弁護士に相談をして微罪処分獲得を目指して尽力してもらうべきでしょう。
露出行為についての任意出頭要請に応じると在宅事件処理を目指しやすい
露出行為について警察からの任意出頭要請に真摯に対応すれば、在宅事件扱いで手続きを進めてもらえる可能性が生じます。
在宅事件とは、逮捕・勾留による身柄拘束を受けずに普段通りの社会生活を営みながら捜査・裁判が進行する事件類型のことです。
そもそも、逮捕・勾留の根拠は「逃亡や罪証隠滅のおそれがあること」でした。つまり、「逃亡や証拠隠滅のおそれが低い場合」に限って露出行為事案が在宅事件として処理されるということを意味します。
在宅事件として処理された場合、微罪処分を獲得できなくても、日常生活を過ごしながら事件が検察官送致されます。また、不起訴処分を獲得できなくても、普段通りの生活に何の変化もない状況で在宅起訴されて、公判期日に出廷すれば良いだけです。さらに、罰金刑の見込みが強く略式手続きを利用できる場合には、公開裁判を経なくても有罪判決が確定するので、任意の出頭要請から判決確定までの間、数回程度、警察署・検察庁で取調べを受けるだけで刑事手続きが終結します。
このように、露出行為事案のような比較的軽微な犯罪類型の場合、逃亡や罪証隠滅のおそれがないことを丁寧に説明するだけで、日常生活への支障を大幅に軽減することができます。警察からの任意出頭要請がなされた時点で弁護士に相談すれば在宅事件を目指して防御活動を展開してくれるので、できるだけ早期にお問い合わせください。
露出行為についての任意出頭要請を拒絶すると通常逮捕されるリスクに晒される
過去の露出行為について警察から連絡があったとき、犯人自身だけで冷静に状況を分析・判断するのは簡単ではないでしょう。
そのため、過去の露出行為について警察から任意での出頭要請を受けた場合でも、被疑者側が以下のような間違った対応をとってしまうと、途中で通常逮捕手続きに移行する危険性がある点に注意が必要です。
- 任意の事情聴取を拒否する
- 警察からの電話連絡を無視する、着信拒否する
- 約束した日時に警察署を訪問しない
- 任意取調べ中に明らかな嘘をつく、犯行を否認する
- 取調べの過程で反省の態度を示さない
そもそも、露出行為について警察から問い合わせがあった時点で、捜査はある程度進んでおり、捜査機関は犯罪を立証できるだけの証拠を揃えていると理解するべきです。後日逮捕手続きではなく任意ベースでの捜査手法が選択される理由は、「自白がなければ立件できないから」ではなく、「犯行態様が軽微などの事情を酌んでくれた結果、捜査機関側の”好意”で任意捜査が選択されたから」でしかありません。このような状況において、捜査機関の意向に真正面から対立するような態度・対応をとると、容赦なく逮捕状が請求されて通常逮捕されても文句は言えないでしょう。
したがって、任意の出頭要請に応じる場合には、通常逮捕手続きに移行されずに済むような対応方法について、事前に弁護士のアドバイスを受けるべきだと考えられます。
逮捕後の取調べ
露出行為を理由として逮捕された後は、警察において取調べが実施されます。逮捕後に実施される取調べに対して黙秘を続けるのは自由ですが、取調べ自体を拒絶することはできません。
警察段階の取調べについては「48時間以内」という時間制限が設けられています(刑事訴訟法第203条第1項)。逮捕処分は被疑者の身体の自由に制約を与える強制処分であるため、時間無制限の取調べは違法です。
なお、露出行為の容疑が固まって逮捕手続きに移行したとしても、その後の取調べのなかで「留置する必要がない」と判断された場合には、その時点で身柄が釈放されることになります。警察限りの判断で微罪処分に付されることもありますし、在宅事件に移行して刑事手続きが進められることもあり得るでしょう。
検察官送致
警察における48時間以内の取調べが実施された後、露出行為の嫌疑が深まった場合には検察官に事件が送致されます。
検察段階の取調べの上限は「24時間」が原則で、留置の必要がないと判断されるケースでは即時に身柄が釈放され、留置する必要性が高いケースでは後述の起訴処分が下されます(刑事訴訟法第205条第1項)。
ただし、露出事案について24時間を超えて更に捜査をする必要があるケース(被疑者が完黙していたり反省の態度が見られない等)では、検察官による勾留請求によって身柄拘束期間が延長される危険性に晒される点に注意が必要です。勾留請求が行われた場合には、10日間~20日間の範囲で取調べ期間が引き延ばされます(同法206条第1項、208条)。
つまり、露出行為が原因で逮捕・勾留された場合には、起訴・不起訴が確定するまでに最大23日間身柄拘束されかねないということです。身柄拘束期間が長期化するほど社会から断絶される時間も長くなるので、会社・学校などへの説明に窮することになるでしょう。
起訴・不起訴の決定
露出事件についての身柄拘束期間が到来するまでに、検察官は事件を刑事裁判にかけるか否かの判断を下します。
まず、露出行為事案を刑事裁判にかける判断のことを「起訴処分」と呼びます。日本の刑事裁判の有罪率は90%以上とも言われているので、検察官が起訴処分を下した時点で有罪判決が下されることがほぼ確定し、前科を避けられません。
これに対して、露出行為事案を刑事裁判にかける必要がなく、検察官限りの判断で刑事手続きを終結させる判断のことは「不起訴処分」と呼ばれます。不起訴処分が下された時点で刑事手続きが終了するので、前科がつくことはありません。
したがって、不起訴処分を獲得できるかが前科によるデメリットを回避できるか否かの分岐点になると言えるでしょう。逮捕されてから検察官による起訴・不起訴が決定されるまでの時間は限られているので、早期に被害者との示談交渉を進めるためにできるだけ早いタイミングで刑事弁護に強い専門家までご相談ください。
刑事裁判
検察官によって起訴処分が下された後、露出行為事案は公開の刑事裁判にかけられます。
公然わいせつ罪のような”標準的”な犯罪類型の場合、起訴処分から約1カ月~2カ月後を目安に第1回の口頭弁論期日が指定されるのが一般的です。露出行為などについて特に争いがなければ初回期日で結審しますが、否認事件やわいせつ性への該当性が争点になるような事案では、弁論手続き・証拠調べ手続きに複数の期日が必要になります。
そして、供述内容や防犯カメラ映像などの証拠、被告人の反省の態度や犯行に至った経緯などの事情が総合的に考慮された結果、判決が言い渡されます。実刑判決・執行猶予付き判決・罰金刑のいずれであったとしても、有罪判決が確定した以上は、かならず前科がつく点に注意が必要です。
つまり、露出行為事案が刑事裁判にかけられた場合には、実刑判決が下されるのか、執行猶予付き判決・罰金刑が下されるのかが分岐点になるということです。今後の社会生活への影響を考えると何としても実刑判決は回避するべきなので、刑事事件の実績豊富な弁護士に効果的な防御活動を展開してもらいましょう。
露出行為で逮捕されたり有罪になることで生じるデメリット5つ
露出行為に及んで現行犯逮捕されたり、捜査機関に発覚して後日逮捕されると、適切な防御活動を展開しなければ有罪判決が下される可能性が高いです。
このように、捜査機関側の思うがままに刑事手続きが進められてしまうと、被疑者・被告人には以下のデメリットが生じます。
- 身柄拘束期間が長期化すると露出行為で逮捕されたことが学校や会社に隠しにくくなる
- ニュース報道されると社会的制裁が下される
- 現在の勤務先にバレると何らかの懲戒処分を下される可能性が高い
- 現在の通学先にバレると退学処分のリスクが高まる
- 露出行為について有罪判決が確定すると前科によるデメリットに悩まされ続ける
状況次第ではどうしても避けることができないデメリットも存在しますが、刑事手続き初期の段階から防御活動を尽くせば、これらのデメリットを回避・軽減できる可能性が高まります。
「露出行為が警察にバレたら人生終わり」という考えは安易で、警察にバレた後の対処法を誤らなければ社会復帰への影響は避けることができるので、かならず刑事事件に強い弁護士に相談してください。
身柄拘束期間が長期化すると会社や学校にバレる可能性が高まる
露出行為について公然わいせつ罪の容疑で逮捕・勾留されると最大23日間身柄が拘束されて外部と連絡がとれない状態に陥ります。また、複数の露出行為の容疑をかけられている場合には、再逮捕・再勾留が繰り返されて、数カ月にも及ぶ拘禁生活が続く危険性も否定できません。
これだけ長期にわたって外部と連絡がとれないと、会社や学校への連絡に窮するでしょう。特に、会社は自分の口で欠勤理由を告げることができないので、何かしらのトラブルに巻き込まれたことを隠しきるのは不可能に近いです。また、逮捕されたことや有罪判決が下されたことを会社に秘匿し続けると、それ自体が就業規則違反に問われる危険性もあります。さらに、実刑判決が下されると否が応でも出勤・通学できなくなるでしょう。
したがって、露出行為の容疑で逮捕されたり有罪判決が下されたりしたことを会社や学校にバレずに済ませるには、捜査が及んだとしてもできるだけ身柄拘束期間を短縮化するための防御活動が重要になると考えられます。在宅事件扱い・微罪処分・勾留執行停止・不起訴処分の獲得・早期の保釈請求など、社会生活への悪影響を軽減できる手段は意外と多いので、早いタイミングで弁護士に相談することを強くおすすめします。
性犯罪者として社会的信用を失う
露出行為のような性犯罪は話題性が大きく世間に与えるインパクトが強いので、ニュース報道やネット記事で実名報道される可能性があります。また、公共の場所で露出行為に及ぶと、動画に撮られてSNSなどで拡散されるリスクにも晒されます。
このように、露出行為に及んだことが実名・顔写真付きで報道されると、Web上にいつまでも情報が残り続けるため、身近な人に名前を検索されるだけで過去の露出事件がバレかねません。また、近隣住民や地元の同級生など、幅広い範囲の人に性犯罪者としてのレッテルを貼られることになるので、社会的信用が大幅に失墜することになるでしょう。
会社にバレると懲戒処分を下される可能性が高い
露出行為に及んだことを理由として逮捕・有罪判決などの処分が下されたことが会社にバレると、何らかの懲戒処分が下される可能性が高いです。懲戒処分の内容は、就業規則にしたがって「戒告・譴責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇」のなかから選択されますが、就業規則の内容は企業ごとに異なります。
たとえば、起訴猶予処分を獲得できたとしても報道などで会社の名誉を失墜させたケースでは懲戒解雇が下されかねません。これに対して、公然わいせつ罪で有罪判決が下されたとしても、執行猶予付き判決・罰金刑で済めば戒告・譴責程度で済む可能性もあります。
なお、会社側からの懲戒処分内容に不満がある場合には、労使紛争に持ち込んで処分を争う余地が残されています。刑事事件に強い弁護士に相談すれば労使間の問題にも柔軟に対応してくれるでしょう。
学校にバレると退学処分等を下される可能性が高い
露出行為に及んだことを理由として逮捕・有罪判決などの処分が下されたことが学校にバレると、学則・校則にしたがって処分が下される可能性が高いです。
たとえば、刑事事件について厳しい考え方をもっている会社の場合、退学処分もあり得ます。これに対して、普段の学生生活などを総合的に考慮した結果、更生の余地があると判断された場合には、譴責・停学処分で済む場合もあるでしょう。
なお、学内で露出行為に及んだようなケースでは学校に対して捜索等が実施されるために隠しきるのは難しいですが、学校とは無関係の場所における露出行為なら、捜査機関に対して「学校には連絡しないで欲しい」旨の要望を出すことができます。警察側が聞き入れてくれるかは状況次第ですが、丁寧な対応をすれば学校にバレずに刑事手続きを終了させることも不可能ではないので、弁護士にアドバイスを求めましょう。
前科がつくことで今後の社会生活にさまざまな支障が生じる
露出行為が公然わいせつ罪などで立件されて有罪判決が確定すると「前科」がつきます。
そして、前科がつくと、今後の生活に以下の悪影響が生じる可能性が高いです。
- 履歴書の賞罰欄への記載義務が生じるので就職活動・転職活動の難易度が上がる
- 履歴書に記載せずに経歴詐称をしても内定後にバレると懲戒処分の対象になる
- 士業や金融業など、前科があるだけで就けない職種が生じる
- 身元調査で前科がバレると結婚が上手くいかないリスクが生じる
- 前科は法定離婚事由に該当するので離婚を拒絶できないし、配偶者から慰謝料等も請求される
- 前科を理由にパスポートやビザ発給が拒否されかねない(海外渡航制限が生じる)
- 再犯時に刑事処分や判決内容が厳しくなる可能性が高い
特に、露出行為のような性犯罪に対する世間からの風当たりはかなり強いので、たとえば、窃盗罪や遺失物横領罪などの前科がある場合よりも、厳しい社会的制裁に晒されかねないでしょう。
したがって、<span class="markerPink”>露出行為が捜査機関に発覚した場合には、基本的に「検察段階で不起訴処分を獲得して前科を回避する」ことを第一目標とするべきだと考えられます。
なお、「前科がつくと住民票・戸籍に載る」「前科情報は一般公開される」「前科がつくと各種ローンを組めない」などは間違いです。前科情報は秘匿性の高いプライバシーに属するため、上述の場面で使用されるに限られます。
露出行為で逮捕・前科回避を目指すときに弁護士に相談するメリット5つ
露出行為で現行犯逮捕されたり、後日逮捕のリスクに晒されている場合には、弁護士に相談することを強くおすすめします。
なぜなら、刑事弁護や性犯罪弁護の実績豊富な専門家のサポートを受けることができれば、以下5点のメリットを得られるからです。
- 被害者との間で早期に示談交渉を進めてくれるので有利な刑事処分を獲得しやすい
- 過去の露出行為が捜査機関に発覚する前に自首するべきか否かを判断してくれる
- 逮捕・勾留中の被疑者と積極的に接見機会を設けて、励ましつつ取調べへのアドバイスを提供してくれる
- 露出行為などの性犯罪をやめられない人を専門治療機関等に繋いでくれる
- 事案の状況次第では、「わいせつ性」などの構成要件該当性自体を争って無罪獲得を目指してくれる
刑事手続きのステージが進むほど、被疑者・被告人側の防御活動の選択肢は狭まってしまいます。社会復帰や更生の難易度を考慮すると「軽い刑事処分獲得」は必須の課題なので、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談しましょう。
被害者との間で早期に示談交渉を進めてくれる
弁護士に依頼をすれば、露出行為を見せられた実質上の”被害者”との間で示談交渉を進めてくれます。加害者本人が示談交渉をしても性犯罪被害者が冷静に話し合いに応じてくれる可能性は低いですが、交渉に慣れた弁護士が代理することで効率的・効果的に示談成立を目指せるでしょう。また、そもそも弁護士が選任されていなければ、警察が被害者の連絡先を教えてくれる可能性は低いです。
被害者との間で示談が成立し、示談金の支払いが済んでいれば、警察・検察の刑事処分が軽くなる見込みが強くなりますし、仮に起訴処分が下されて刑事裁判にかけられたとしても、実刑判決を回避できる可能性が高まります。
なお、示談金や慰謝料の相場は事案の状況や露出行為の程度、被害者の処罰感情の強さなどによって異なります。数十万円程度で合意に至る場合もあれば、(加害者側に経済力があるのであれば)数百万にも上る可能性があります。また、先ほど紹介したように、露出行為は直接的な加害者が存在しなくても成立する犯罪類型なので、事案の状況次第では示談をするべき相手が存在しないこともあり得るでしょう。
捜査機関に発覚する前に自首を検討してくれる
露出行為について現行犯逮捕されなかったケースでは、弁護士に相談すれば自首するべきか否かを冷静に分析してくれます。
そもそも、「警察から連絡がない段階で自分から罪を認めるなんてバカらしい」と考える人もいるでしょう。ただ、警察からの問い合わせがくる前に露出行為について自首をしたり、自ら警察署に出頭したりすれば、反省の態度があることを酌んで刑事処分や刑罰内容が減軽され得るというメリットが生じる点を看過するべきではありません。
ただし、誰も周りにいない深夜の駐車場に停車させた自動車内で下半身露出に及んだようなケースでは、公然わいせつ罪の構成要件を満たすのは事実であるものの、目撃者がいないような状況において捜査が及ぶリスクは極めて少ないですし、示談をするべき相手方も存在せず、しかも、仮に警察に出頭しても微罪処分に付されるのが目に見えています。このようなケースでわざわざ自首する必要性は低いと言えるでしょう。
性犯罪や刑事弁護に強い専門家は、詳細な聴き取り調査をしたうえで、刑事訴追される可能性・事前に自首する有効性・自首する前に示談交渉を進めるべきか否かなどを総合的に考慮してくれます。「公訴時効が完成するまで逃げ切りたい」という気持ちも理解できなくはありませんが、逃亡期間が長期化するほど刑事処分が重くなるリスクに晒されるので、少しでも後日逮捕の不安を抱えているなら弁護士までご相談ください。
逮捕・勾留中の被害者と積極的に接見機会を設けてくれる
逮捕勾留によって身柄拘束中の被疑者と面会できるのは接見交通権を有する弁護人だけです。
弁護士なら、厳しい取調べを受けて疲弊している被疑者を接見機会に励ましてくれるでしょうし、取調べの様子などを聴き取りながら捜査の進捗状況を把握して供述方針について具体的なアドバイスを提供してくれます。
露出行為をやめられずに困っている人に専門機関を紹介してくれる
露出行為など、性犯罪を繰り返してしまう人のなかには、露出症などを患っている可能性も否定できません。このような人の場合、仮に立件された露出行為について不起訴処分等の軽い刑事処分を獲得できたとしても、性癖等を矯正できていないために、再犯に及んでしまう危険性が高いです。
したがって、病気や障害などが原因で露出行為に及んでしまう場合には、丁寧に刑事手続きを遂行することだけではなく、「二度と性犯罪を犯さないような環境」を作り出すのがポイントだと考えられます。性犯罪弁護や刑事事件に力を入れている専門家なら、提携している専門カウンセリング機関や医療機関を紹介してくれるので、根本的な更生を目指しやすいでしょう。
露出の高いファッションで嫌疑をかけられた場合には構成要件該当性自体を争ってくれる
下半身露出のような明白な公然わいせつ罪では争う余地は残されていません。
その一方で、近年では幅広いファッションが普及し、ジェンダーに対する考え方もアップデートしていることを踏まえると、露出度の高いコスプレ・シースルー・下着・水着などで公共の場所を徘徊したようなケースでは、「わいせつ行為」「卑猥な言動」「みだりに露出する」という要件への該当性自体を争って無罪を目指せる場合があります。
「警察に逮捕されること」と「有罪になること」はまったく別次元のことなので、弁護士と相談のうえ、状況次第ではしっかりと無罪を目指すべきでしょう。
露出行為で犯罪の嫌疑をかけられたときは早期に弁護士へ相談しよう
露出行為で現行犯逮捕されたときや、過去の露出行為を理由として後日逮捕のリスクに晒されているときには、できるだけ早い段階で弁護士に相談することを強くおすすめします。
なぜなら、公然わいせつ罪や迷惑防止条例違反で逮捕されると、長期間身柄拘束されて実刑判決が下されるリスクに晒されるからです。
弁護士の力を借りれば、早期に被害者との間で示談を進めたり有利な情状証拠を揃えたりすることで、微罪処分や不起訴処分、執行猶予付き判決獲得を目指せるでしょう。