痴漢は現行犯逮捕だけではなく後日逮捕される可能性もあります。ニュース報道などのイメージが先行して「痴漢=現行犯逮捕」というイメージが先行しているだけで、防犯カメラ映像や目撃者の証言が集まれば、身元が特定されて後日通常逮捕手続きに移行します。
したがって、「電車内で『痴漢です!』と声をかけられたわけではないから逃げ切れたはず」「痴漢の現場から離れた以上、犯行の証明をされるわけがない」などと油断するのは危険です。痴漢で後日逮捕されるリスクに対処せずに今まで通りの社会生活を営んでいると、ある日突然警察が自宅にやってきて長期間身柄拘束付きの取調べを強いられてしまいます。
そこで今回は、過去の痴漢行為が警察にバレて後日逮捕されるか不安を抱えている人のために、以下5点について分かりやすく解説します。
- 痴漢が後日逮捕される理由ときっかけ
- 痴漢で後日逮捕されるときに問われる犯罪類型
- 痴漢が後日逮捕される場合の刑事手続きの流れ
- 痴漢がバレて後日逮捕された場合に生じるデメリット
- 痴漢で後日逮捕されるか不安なときに弁護士に相談するメリット
公訴時効が完成するまでの間は、過去の痴漢行為についていつ後日逮捕手続きがとられるか分からない不安定な状態に置かれます。さまざまな不安を抱えたままでは建設的な人生を歩めないので、ひとまず刑事事件に強い弁護士に相談したうえで、今後採るべき防御活動についてアドバイスしてもらいましょう。
目次
痴漢は現行犯だけではなく後日逮捕される4つの理由
現行犯逮捕のイメージが強い痴漢事件ですが、現行犯以外の方法で検挙されるケースは意外と多いのが実情です。
痴漢が現行犯逮捕以外の方法で後日逮捕される理由、及び、このような実情と反して「痴漢は現行犯以外では逮捕されない」という間違った認識が広がっている理由は以下4点です。
- 重大な性犯罪である痴漢行為に対しては捜査機関が本格的な後日捜査に踏み出す可能性が高いから
- 公訴時効が完成するまでの間は痴漢行為はいつ後日逮捕されてもおかしくないから
- 犯行現場からの逃亡に成功したとしても、防犯カメラ映像などの証拠から痴漢加害者は簡単に特定されるから
- ニュース報道やSNSでの炎上動画等が原因で「痴漢は現行犯逮捕で検挙されるもの」という先入観が形成されているから
後日逮捕のリスクに晒されている現在採るべき防御策を決定するには、「痴漢は現行犯以外でも逮捕される可能性が高い」という認識を正しくもつことからスタートする必要があります。以下で紹介する各項目を参考のうえ、痴漢が後日逮捕される確率の高さや、過去の痴漢行為についていつまで後日逮捕されるリスクに悩まされ続けるのかをご理解ください。
理由1.痴漢は重大犯罪なので警察が本腰を入れて捜査に取り組む可能性が高いから
そもそも、痴漢は重大犯罪です。「殺人や強盗と比べると痴漢なんて軽微な犯罪では?」と思われるかもしれませんが、その考えは間違いです。少なくとも痴漢は立派な犯罪であることに間違いありませんし、性犯罪に対する厳罰化が進んでいる情勢を踏まえると、被害届の提出などが端緒となって捜査機関が痴漢事件を認知すると、余程の事情がない限り、警察が本格的な捜査活動をスタートするのは間違いないです。
特に、痴漢被害が頻発している路線や、痴漢行為がかなり悪質なケース、通学の時間帯などで未成年が痴漢被害に遭うリスクが高い事案などでは、警察による本格的な捜査活動(防犯カメラのチェックや私服警察官による巡回等)は避けられません。
したがって、「痴漢の現行犯逮捕を免れたから安全だ」と油断するのは危険だと考えられるので、現段階で捜査機関から何の連絡もないとしても、念のために弁護士に相談をして今後の方向性についてアドバイスを貰うべきでしょう。
理由2.痴漢は公訴時効が完成するまでいつ後日逮捕されるか分からないから
警察が逮捕権を行使するタイミングは捜査機関側の裁量に委ねられています。つまり、痴漢は公訴時効が完成するまでの間はいつ後日逮捕されてもおかしくないということです。犯行を裏付ける証拠が固まった段階で後日逮捕手続きに移行するため、痴漢から数日後に後日逮捕されるケースもあれば、数カ月後~1年以上が経過してから後日逮捕されることも充分あり得ます。
したがって、痴漢で後日逮捕される不安がゼロになるのは、公訴時効が完成するタイミングに左右されることになります。ただし、以下のように、公訴時効が完成する時期は痴漢行為に対してかけられている容疑ごとに異なる点に注意が必要です(刑事訴訟法第250条第2項各号)。
容疑をかけられている犯罪類型 | 法定刑 | 公訴時効が完成する期間 |
---|---|---|
強制わいせつ罪 | 6カ月以上10年以下の懲役刑 | 痴漢行為が終わったときから7年間 |
迷惑防止条例違反 | 6カ月以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑(東京都の場合) | 痴漢行為が終わったときから3年間 |
軽犯罪法違反 | 拘留または科料(併科あり) | 痴漢行為が終わったときから1年間 |
たとえば、電車内でスカートの上から臀部付近を撫でたような痴漢行為に対しては迷惑防止条例違反の容疑がかけられるため、犯行当日から起算して3年間は後日逮捕のリスクが生じます。また、下着の内部に直接手を差し入れて直接陰部に触れるような悪質な痴漢行為は強制わいせつ罪の対象になるので、痴漢行為から起算して7年間が経過しなければ後日逮捕のリスクは消滅しません。さらに、痴漢行為を働くためにターゲットに対して執拗なつきまとい行為を働いただけでも軽犯罪法違反に問われかねないので、向こう1年間は後日逮捕される危険性に晒され続けるでしょう。
このように、実際に痴漢行為に及んでから公訴時効が完成するまでの数年間は常に後日逮捕のリスクがつきまとう以上、建設的な社会生活を営むには、捜査機関からの追及があるか否かにかかわらず過去の痴漢行為に関する法的責任は早期に解決を目指すべきです。弁護士に相談すれば自首や示談などの有効性について検討してくれるので、少しでも不安を抱いているなら出来るだけ早いタイミングで刑事事件を専門に取り扱っている弁護士までお問い合わせください。
理由3.防犯カメラ映像や目撃者の証言で痴漢犯人は簡単に特定されるから
「痴漢行為の現場を押さえられない限り物証はないので捕まる心配はない」「仮に痴漢行為の犯行がバレたとしても混雑した電車内なら身元が特定されることはない」という認識は間違いです。
なぜなら、以下のような証拠方法を活用すれば、過去の痴漢行為について逮捕状が発付されるほどの嫌疑は充分固まるからです。
- 被害者や目撃者の証言内容
- 電車などの同乗者がスマホで撮影していた犯行現場を捉えた動画
- SNSなどにアップロードされた犯行現場や逃走中の動画データ
- 駅のホームや電車内、街頭に設置された防犯カメラ映像
- 交通系ICカードや定期券、電子マネーの使用履歴
- 被害者の身体や衣服に付着した繊維、皮膚、体液などの鑑定結果
たとえば、防犯カメラなどの映像に痴漢加害者の顔が鮮明に映っている場合には、ICカードなどのデータを照合すれば簡単に身元特定できるので、被害者の供述などの証拠と合わせれば、痴漢行為から数日後~数週間以内には後日逮捕の手続きに移行するでしょう。これに対して、痴漢犯人の身元が簡単に判別できないようなケースでは、防犯カメラの映像や、犯人が乗車・下車した駅周辺の監視カメラ映像などのチェックに時間がかかるので、半年~1年以上が経過してようやく後日逮捕手続きに駒が進められる可能性も否定できません。
ただし、犯人特定までの期間に多少の差はあるとは言え、さまざまな物証の積み重ねによって過去の痴漢行為が警察にバレるのは時間の問題です。警察からのコンタクトがくる前に採りうる防御策を講じておけば逮捕・勾留による長期の身柄拘束回避を目指せるので、痴漢を理由に後日逮捕されるのが怖いなら、すみやかに弁護士までご相談ください。
理由4.「痴漢は現行犯」という先入観の強さが原因で後日逮捕はないと勘違いしているだけだから
テレビのニュース報道やSNSなどの動画投稿サービスの炎上などで目にする機会が多いのは、電車や駅のホームなどの公共スペースにおける痴漢行為が現行犯逮捕される様子です。これに対して、痴漢行為に及んだ犯人宅に捜査機関が後日逮捕に訪れる瞬間がメディア等を通じて配信される機会はほぼゼロに近いでしょう。このような実情が原因で、「痴漢は現行犯逮捕されるもの」「痴漢は後日逮捕に馴染まない犯罪」などという間違ったイメージが醸成されています。
しかし、そもそも現行犯逮捕と後日逮捕(通常逮捕)は逮捕手続きの要件が異なるだけで、「捜査機関による逮捕権の行使」という意味ではまったく同質の強制処分です。
そもそも、過去の痴漢行為について後日逮捕(通常逮捕)をするには「被疑者が痴漢行為に及んだことを疑うに足りる相当な理由があること」という要件を満たす必要がありますが(刑事訴訟法第199条第1項)、現行犯逮捕(及び準現行犯逮捕)は、痴漢行為が逮捕権者の目の前で行われたり犯行現場から逃走中などの事情が備わっているときに実施されるものなので、わざわざ裁判所が発付する逮捕令状を待つ必要がない、というだけの違いでしかありません。つまり、過去に痴漢行為に及んだことが客観的な証拠として立証できる状況であり、痴漢加害者が明確に特定される状況なら、合法な刑事手続きの一環として後日逮捕は実施されるということです。
したがって、「痴漢の現場から無事に逃げられたから安心だ」と油断をすることは、自首や逮捕前からの示談交渉のチャンスを自ら放棄することに他ならないので、適切なリスクヘッジのために今の段階で刑事事件に力を入れている弁護士に相談することをおすすめします。
痴漢が後日逮捕されるときに問われる犯罪類型
痴漢が後日逮捕されるのは、痴漢行為が以下の犯罪類型に該当するからです。決して、「痴漢罪」という犯罪類型が刑法典等で定められているわけではありません。
- 迷惑防止条例違反
- 強制わいせつ罪
なお、痴漢の行為態様次第では、上記の犯罪類型以外の罪に問われるケースも少なくありません。たとえば、痴漢行為の際にスカートや衣服などを切り刻んだり、相手の衣類に体液などをかけたりした場合には、器物損壊罪(刑法第261条)に該当します。また、同一人物に対する痴漢行為を執拗に繰り返していた場合には、ターゲットに対するつきまといをしているだけで軽犯罪法違反や「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」違反に問われる可能性も生じます。さらに、痴漢行為の被害者を撮影するなどした場合には盗撮の罪も上乗せされるでしょう。
問われる罪責の内容次第では刑事処罰がかなり厳しくなることもあるので、過去の痴漢行為について後日逮捕のリスクを抱えている場合には、弁護士に相談したうえで現段階で採るべき防御策についてお尋ねください。
迷惑防止条例違反で後日逮捕される痴漢行為
痴漢行為が後日逮捕されるとき、その多くは各都道府県が定める迷惑防止条例違反の容疑をかけられます。
たとえば、東京都の迷惑防止条例である「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」では、正当な理由なく、公共の場所・公共の乗り物において、衣服その他の身に着ける物の上から、または、直接に人の身体に触れることで、人を著しく羞恥させたり不安を覚えさせたりする行為に対して、「6カ月以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」を科すとしています(同法第5条第1項第1号、同法第8条第1項第2号)。
迷惑防止条例違反を理由として後日逮捕される可能性がある痴漢行為の具体例は以下の通りです。
- 電車や駅のホームなどで衣服の上から胸・尻・素足・下着・太ももなどに触れる
- 満員電車で過度に密着して下半身を押し付ける
- 公共の空間で被害者の衣服のボタンや下着のホックを外す
- 駅のホームなどですれ違いざまに身体に触れる
ただし、衣服の上から被害者の身体に触れるような痴漢行為でも、長時間にわたって執拗に撫でまわすなどの高い悪質性が認められるケースでは、後述の強制わいせつ罪で立件される可能性もゼロではありません。どのような行為がどの犯罪類型として刑事訴追されるかは捜査機関側の裁量次第なので、厳しい刑事処罰のリスクを抱えている場合には、事前に弁護士に相談のうえ、できる限りの防御活動に尽力しておくことをおすすめします。
また、迷惑防止条例は自治体ごとに規定内容や法定刑に差がある場合が多いので、痴漢行為に及んだ地域の条例内容をご確認ください。
強制わいせつ罪の容疑で後日逮捕される痴漢行為
悪質な痴漢行為の場合には、強制わいせつ罪の容疑で後日逮捕される可能性があります。
強制わいせつ罪とは、13歳以上の者に対して暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をしたときや、13歳未満の者に対してわいせつな行為をしたときに成立する犯罪類型のことです(刑法第176条)。強制わいせつ罪の法定刑は「6カ月以上10年以下の懲役刑」と定められており、迷惑防止条例違反よりも厳しい刑事罰が科されることになります。
強制わいせつ罪の構成要件である「暴行または脅迫」は、相手方の反抗を抑圧する程度のものである必要はありませんが、反抗を著しく困難にする程度のものであることを要します。「反抗を著しく困難にする程度のもの」と表現するとかなり暴力的な行為をイメージするかもしれませんが、以下のように、痴漢行為自体が客観的に見て被害者の意思を相当程度に抑圧していると判断できるケースでは、強制わいせつ罪の成立を認めるのが判例・実務です。
- 衣服や下着の中に手を差し入れて直接乳房・陰部などに触れる行為
- 無理矢理衣服を脱がす行為
- 意に反してキスをする、身体等を舐める
なお、被害者が13歳未満である場合には、暴行・脅迫なしでわいせつ行為をしただけで本罪が成立する点に注意が必要です。そのため、痴漢加害者が被害者の年齢を錯誤していたときにどのような犯罪類型で処断されるかが問題となります。
まず、13歳未満の被害者を13歳以上であると誤信して暴行・脅迫によらずにわいせつな行為に及んだ場合には、強制わいせつ罪の故意を欠くため、強制わいせつ罪は不成立です(別途、迷惑防止条例違反の罪に問われます)。これに対して、13歳以上の被害者を13歳未満であると誤信して暴行・脅迫によらずに痴漢行為に及んだ場合には、強制わいせつ罪の未遂犯が成立するに留まります(刑法第180条)。
痴漢で後日逮捕されるまでの流れとその後の刑事手続き
過去の痴漢行為について後日逮捕されるまでの流れと後日逮捕後の刑事手続きは以下のステップで進められるのが一般的です。
- 痴漢事件について警察からコンタクトがある
- 過去の痴漢行為について後日逮捕された後は警察署で48時間以内の取調べが実施される
- 痴漢事件について警察署で取調べを受けた後は検察官送致される(場合によっては勾留請求される)
- 痴漢事件について検察官が起訴・不起訴を決定する
- 痴漢事件が公訴提起された後は公開の刑事裁判にかけられる
痴漢事件について警察から接触がある
過去の痴漢行為について警察が本格的に捜査活動をスタートして身元特定が済むと、警察から何かしらの方法で接触が行われます。
捜査進捗や痴漢事件の状況次第でアプローチ方法は異なりますが、警察による接触は以下2つに大別可能です。
- 何の前触れもなくいきなり強制処分である通常逮捕が実施される
- 強制処分である通常逮捕が実施される前段階として任意の出頭要請をかけられる
逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合には後日通常逮捕手続きがスタートする
防犯カメラ映像や犯行時の動画などで痴漢行為の容疑が固まった場合、<span class="markerYellow">逃亡・証拠隠滅のおそれがあると判断されると、後日逮捕(通常逮捕)手続きがスタートします。
後日逮捕(通常逮捕)手続きとは、裁判所が発付する「逮捕状」を根拠に実施される強制処分のひとつです。被疑者が自宅に所在することが明らかな早朝に警察官が自宅にやってきてインターホンを鳴らすケース、被疑者が自宅から出てきたところを捜査員に呼び止められるケース、出勤・退勤時に会社近くで声をかけられるケースなど、さまざまなシチュエーションが想定されますが、逮捕状を呈示された後は強制的に身柄が拘束されるので完全に自由が制限されます。
なお、「逮捕は『留置の必要があるとき(逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとき)』に実施されるということは、裏を返せば、警察が逮捕状をもって自宅にやってきたときに勤務先や社会的立場を明確にすれば身柄拘束を免れられるのはないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、裁判所の逮捕状が発付された以上、いったんは警察署への連行を避けられません。逮捕後の取調べの過程で丁寧な対応をすれば早期の身柄釈放も不可能ではありませんが、後日逮捕による身柄拘束自体を回避するのは不可能です。
そのため、痴漢行為の後日逮捕リスクを抱えているケースでは、警察が被疑者に対する直接的なアプローチを開始する前の段階で痴漢犯人自体が自首や示談交渉を開始するのが重要だと考えられます。逮捕状が請求された段階で相当のデメリットが生じかねないので、できるだけすみやかに刑事事件を専門に取り扱っている弁護士までご相談ください。
逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合には後日任意での事情聴取を求められる
過去の痴漢行為に対して捜査活動が進められている場合には、いきなり後日逮捕(通常逮捕)手続きに移行するのではなく、警察から任意の事情聴取を受けるように要請されるケースも少なくありません。
たとえば、痴漢行為に及んだ疑いがあって身元特定までは済んでいるものの痴漢行為について逮捕手続きに移行するだけの客観的証拠までは備わっていないようなケース、身元特定後何度か尾行による捜査活動が繰り返されたが現行犯で痴漢行為に及んだ形跡は存在せず念のために一度話を聞いておくべきだと捜査機関側が判断したようなケースでは、通常逮捕手続きの前段階として任意ベースでの出頭要請がかけられるでしょう。
警察からの任意出頭要請の方法はさまざまです。捜査員が自宅を直接訪問することもあれば、外出中に自宅周辺等で声をかけられることもあるでしょう。また、身元特定の過程でターゲットの電話番号が判明すれば(ICカード情報などから)、携帯電話や自宅の固定電話に警察から電話がかかってくる場合もあり得ます。
任意の事情聴取に応じなくても逮捕状が請求されて後日逮捕されるだけ
令状に基づく強制処分である「後日逮捕」とは異なり、建前上は、任意の事情聴取に応じるか否かは捜査対象者が自由に決めて良いとされています。また、任意の事情聴取中に取調べを拒絶したくなったら、好きなタイミングで取調べを打ち切って帰宅することも可能です。
ただし、過去の痴漢行為についての任意ベースでの取調べを拒絶したり、取調べ自体には応じたものの黙秘を貫いたり虚偽供述などをしたりするのはおすすめできません。なぜなら、任意での事情聴取を適切に運用できないと捜査機関側が判断すると、裁判官に対して逮捕状が請求されて、途中から後日逮捕(通常逮捕)手続きに移行して、無理矢理にでも身柄拘束付きの取調べが実施されることになるだけからです。
たとえば、「警察からの電話連絡を無視する」「約束通りの期日に警察署に出頭しない」「任意の取調べ中に明らかに嘘をついている」「取調べ中の不誠実な態度などを総合的に考慮すると明らかに逃亡のおそれがある」などの事情が認められるケースでは、過去の痴漢行為に対する捜査活動は強行的に実施されるリスクが高まるでしょう。
後日逮捕が実施されるとさまざまなデメリットに晒されるのは避けられません。任意ベースで比較的自由が利く取調べを受けるチャンスを得た以上は、警察からの要請には誠実に対応するべきだと考えられます。
任意の事情聴取へ真摯に対応すれば在宅事件扱いの期待が高まる
警察による任意の事情聴取要請に対して誠実に応じれば、過去の痴漢行為についての刑事手続きが「在宅事件」として扱われる可能性を高めることができます。
在宅事件とは、逮捕・勾留による身柄拘束を受けることなく捜査活動や裁判手続きが進められるタイプの事件処理類型のことです。在宅事件扱いになれば今まで通りの日常生活を送りながら刑事手続きが進められるので、長期の身柄拘束による社会生活へのさまざまな悪影響を回避・軽減できるというメリットが得られます。
痴漢の容疑で後日逮捕されてしまうと、留置の必要がないことを説明できなければ在宅事件に切り替わることはありません。これに対して、被疑者に対するアプローチが任意ベースでスタートする場合には、在宅事件処理の可能性をおおいに見込めます。
もちろん、「在宅事件=無罪」というわけではないので、在宅事件処理になった後も、軽い刑事処分を目指して示談交渉などの防御活動をする必要はありますが、刑事事件に巻き込まれるデメリットを大幅に軽減できるという意味において、「任意の取調べ→在宅事件処理」というルートは痴漢加害者が目指すべき方向性と言えるでしょう。
逮捕後は警察で48時間以内の取調べを受ける
迷惑防止条例違反や強制わいせつ罪の容疑で後日逮捕された場合、警察署において身柄拘束付きの取調べを受けなければいけません。
任意の事情聴取とは違って、後日逮捕後の取調べは”強制処分”として実施されるものなので、どのような事情があったとしても取調べ自体を拒絶することは禁止されています。たとえば、「会社に連絡をしたい」「一度自宅に帰って着替えをしたい」「同居家族が心配するといけないので電話をしたい」などの希望は一切聞き入れてもらえず、拘置所と取調室の往復を強いられます(後述のように、選任された弁護士だけは接見交通権が認められるので面会可能です)。
なお、警察段階で実施される取調べの制限時間は最大48時間です(刑事訴訟法第203条第1項)。48時間以内に痴漢事件についての証拠書類や供述調書がまとめられた後は、検察官に事件が送検されることになります。
痴漢事件が警察から検察に送致される
痴漢の容疑で後日逮捕されて、警察段階で48時間の身柄拘束付き取調べを受けた後、痴漢事件は検察官に送致されます。痴漢事件を受け取った検察官は、原則として24時間以内の取調べを実施したうえで起訴処分・不起訴処分を決定します。
しかし、痴漢行為の被疑者が否認していたり供述内容に曖昧さが残ったりするようなケースでは、警察段階の48時間と検察段階の24時間だけでは取調べ時間が不足する場合があり得るでしょう。
このように、原則的な取調べの時間制限を遵守できないようなケースでは検察官による勾留請求が認められており、10日間~20日間の範囲で身柄拘束期間が延長されます(刑事訴訟法第208条各項)。
後日逮捕された後の警察段階の取調べと同じように、検察段階の勾留期間中の取調べも強制的なものです。そのため、検察官が勾留請求を実施した場合には、逮捕段階からカウントすると、3日間~23日間、外部と一切連絡がとれない状況に追い込まれます。
以上を踏まえると、過去の痴漢行為を理由として後日逮捕されてしまうと相当長期間身柄拘束されて日常生活にさまざまな悪影響が生じる可能性が高まるので、任意ベースでの取調べに誠実に対応するか、後日逮捕後できるだけ早期に示談をまとめる方向性で防御活動を展開するのが重要だと考えられます。刑事事件を専門に取り扱っている弁護士なら身柄拘束期間短縮化に向けて尽力してくれるでしょう。
痴漢事件について検察官が起訴・不起訴を決定する
送検されてから原則24時間以内、もしくは、勾留期間満了期日までに、取調べを経て得られた証拠等を根拠にして、検察官が痴漢事件を公訴提起するか否か(刑事裁判にかけるか否か)を決定します(刑事訴訟法第205条第1項)。
痴漢事件を公訴提起する旨の判断を「起訴処分」と呼びます。これに対して、痴漢事件を刑事裁判にかけることなく検察段階で刑事手続きを終了させる意思表示は「不起訴処分」です。
日本の刑事裁判の有罪率は約99%とも言われているので、検察官が起訴処分を下した時点で、痴漢行為が原因で前科が付くことがほぼ確定します。つまり、痴漢行為が原因で前科が付くことだけは避けたいなら、何としても検察段階で不起訴処分を獲得しなければいけないということです。
痴漢行為に及んだことが事実でも不起訴処分獲得の余地は残されている
「痴漢行為に及んだ以上、刑事裁判にかけられるのは避けられない」というイメージを抱いている人は少なくないでしょう。この先入観が理由となって、警察による後日逮捕を怖いと感じてしまいます。
ただ、痴漢行為に及んだこと自体が間違いないとしても、不起訴処分を獲得できる余地は残されています。なぜなら、不起訴処分には以下3つのパターンが含まれるからです。
- 嫌疑なし(証拠等から痴漢行為をしていないことが明らかなケース)
- 嫌疑不十分(証拠等から痴漢行為をしたと明確には言えないケース)
- 起訴猶予(痴漢行為をしたこと自体は間違いないが、諸般の事情を考慮すると不起訴処分が相当なケース)
たとえば、痴漢行為に及んだこと自体には争いがなくても、初犯で自ら痴漢行為を認めており、真摯に反省をして再犯のおそれがないと判断でき、被害者との間で示談が成立しているようなケースであれば、起訴猶予処分獲得の可能性を見込めます。
つまり、痴漢で後日逮捕された場合には、真摯な姿勢で取調べに対応しつつ、同時に、身柄拘束中で身動きが取れない被疑者に代わって弁護士に示談交渉を進めてもらうのが重要だということです。不起訴処分を獲得できれば有罪・前科を回避できるので、刑事事件の示談ノウハウ豊富な弁護士までご依頼ください。
痴漢事件が刑事裁判にかけられる
過去の痴漢行為で後日逮捕された後、検察官による起訴処分が下された場合には、公開の刑事裁判が待っています。
刑事裁判の期日は検察官による起訴処分から1カ月半~2カ月半後に指定されるのが一般的です。起訴後、逃亡のおそれがなければ保釈請求によって身柄が解放されますが、取調べでの供述内容から「逃亡のおそれあり」と評価されると、起訴後も身柄拘束が続く危険性が高まります。
刑事裁判における証拠調べ手続き・弁論手続きを経て、最終的な判決が下されます。実刑判決・執行猶予付き判決・罰金刑のいずれが下されたとしても前科が付きます。ただし、執行猶予付き判決・罰金刑なら刑務所への収監を回避できるので、公訴提起された場合には実刑判決回避を目指して防御活動を展開するべきでしょう。
痴漢で後日逮捕されたときに生じるデメリット5つ
過去の痴漢行為について刑事訴追されるか不安なときには、警察が後日逮捕に踏み出す前に弁護士に相談するのがおすすめです。
なぜなら、警察からの接触前に適切な防御策に舵を切らず、捜査機関主導で後日逮捕手続きが進められてしまうと、以下5点のデメリットに晒されるからです。
- 後日逮捕後の長期にわたる身柄拘束が理由で学校・会社にバレる
- 痴漢で後日逮捕されたことが会社にバレると懲戒処分の対象になり得る
- 痴漢で後日逮捕されたことが学校にバレると退学処分等のリスクに晒される
- 痴漢事件が報道されると社会的信用が失墜する
- 痴漢で後日逮捕されて前科がつくと今後の日常生活にさまざまな悪影響が生じる
痴漢で後日逮捕後の長期身柄拘束によって学校や会社にバレる可能性が高い
痴漢は重大な性犯罪なので、後日逮捕された後は、数日~数週間身柄拘束付きの取調べを強いられる可能性が高いです。
逮捕・勾留期間中は被疑者自身が外部と連絡することを禁止されるので、学校や会社を休む連絡を自分自身で行うことができません。たとえば、会社を欠勤する際に本人が連絡できないと何かしらのトラブルに巻き込まれたと心配をかけることになりますし、欠勤が数週間に及ぶと別の理由をでっち上げるのも難しいでしょう(病気や怪我を理由にしようにも、保険関係の処理でバレてしまいます)。
痴漢の後日逮捕が会社にバレると懲戒処分を下される可能性が高い
痴漢で後日逮捕された場合、会社の就業規則違反を理由として懲戒処分(戒告・譴責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇)が下される可能性が高いです。
懲戒処分は各社の就業規則の規定内容にしたがって判断されます。たとえば、迷惑防止条例違反なら戒告・譴責程度で済む会社もありますし、強制わいせつ罪なら懲戒解雇処分の可能性も否定できません。また、ニュース報道などによって会社の名誉を傷つけた場合には、不起訴処分を獲得できたとしても、厳しい懲戒処分が下されることもあり得るでしょう。さらに、運良く懲戒処分を免れられたとしても同僚上司からの信用は失墜するので、仕事がやりにくくなることは避けられません。
痴漢の後日逮捕が学校にバレると退学処分等を下される可能性が高い
痴漢で後日逮捕された事実が学校にバレると、退学・停学・訓告などの処分が下される可能性が高いです。特に、痴漢などの性犯罪に対しては厳しい目が向けられるので、仮に学業や生活態度が良好であったとしても、自主退学を迫られることもあり得るでしょう。
なお、会社は数日欠勤するだけで大ごとになりますが、学校は本人が連絡せずに数週間休んでも何かしらの言い訳が通用しやすいです。また、弁護士に相談すれば、警察に対して「学校に連絡するのはやめてほしい」という陳情も出してくれるので、学校にバレるリスクを大幅に軽減できます。
痴漢事件が報道されると社会的信用が失墜する
痴漢などの性犯罪は話題性がある犯罪なので、SNSやニュース報道で取り上げられるリスクも大きいです。そして、仮に過去の痴漢行為が報道されるなどすると、痴漢行為に及んだことが実名付きでインターネット上の情報として残り続けてしまいます。
自分の名前をネット検索しただけで過去の痴漢行為がバレる状況は、今後の社会的信用形成の妨げになるでしょう。
痴漢事件で前科がつくと今後の生活にさまざまな悪影響が生じる
過去の痴漢行為が迷惑防止条例違反や強制わいせつ罪に該当するとして立件されて刑事裁判で有罪判決が下されると前科が付きます。
そして、痴漢事件を理由として前科が付くと、今後の社会生活に以下のような悪影響が生じます。
- 履歴書の賞罰欄への記載義務が生じる
- 前科情報を秘匿して就職・転職しても、入社後に経歴詐称がバレると懲戒処分の対象になる
- 前科があるだけで就業制限が生じる職種がある(士業・警備員・金融業など)
- 恋人との結婚に支障が出る、婚姻関係にあるパートナーから離婚を言い渡される
- パスポートやビザ発給に支障が出る場合があるので、海外渡航が制限され得る
- 痴漢の再犯に及んでしまうと刑事処分が重くなる可能性が高まる
痴漢行為を理由とする前科を回避したいなら、検察官による不起訴処分獲得が必須の課題です。そのためには、痴漢で後日逮捕されてから3日~23日以内に示談成立を目指さなければいけないので、防御活動の効率化を図るために今のうちに弁護士に相談しておくことを強くおすすめします。
痴漢で後日逮捕されるか不安なときに弁護士に相談するメリット5つ
痴漢で後日逮捕されるか不安なときや、過去の痴漢行為を理由として任意の出頭要請がかかったとき、過去の痴漢行為について後日逮捕手続きが実施されたときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談するのがおすすめです。
なぜなら、性犯罪弁護や刑事事件の実績豊富な専門家に相談すれば、以下5点のメリットを得られるからです。
- 弁護士は犯人に代わって痴漢被害者との間で示談交渉を進めてくれる
- 弁護士は後日逮捕される前に痴漢事件について自首するべきか否かを検討してくれる
- 弁護士は少しでも軽い刑事処分獲得を目指して尽力してくれる
- 弁護士だけが厳しい取調べ中に被疑者を直接励ましてくれる
- 痴漢の再犯を犯さないようにカウンセリング施設などを紹介してくれる
弁護士は早期に痴漢被害者との間で示談交渉を開始してくれる
痴漢で後日逮捕された場合の最大の防御活動のひとつが「被害者との示談交渉」です。痴漢被害者との間で示談が成立すれば、「被害者が刑事処罰を望んでいない旨」を捜査機関・裁判所に伝えることで軽い刑事処分が期待できますし、民事的な慰謝料問題も一度に解決することができます。
そもそも、痴漢のような性犯罪の場合、弁護士が代理人として選任されなければ被害者の連絡先を警察から入手できません。また、弁護士が示談交渉を担当しなければ感情的になっている被害者との話し合いが難航するおそれもあります。さらに、逮捕・勾留中の痴漢犯人は身柄拘束中で自由が効かないので、代理人である弁護士でなければ示談交渉を進めることができないでしょう。
刑事弁護や示談経験豊富な弁護士は、性犯罪被害者との話し合いを円滑に進めるノウハウに精通しています。示談金の釣り上げなどにも冷静に対応してくれるので、現実的な示談条件での和解契約締結を目指せるでしょう。
後日逮捕される前に痴漢行為について自首するべきか検討してくれる
過去の痴漢行為について後日逮捕リスクに晒されている場合に弁護士に相談すれば、警察からの連絡がある前に自首するべきか否かを検討してくれます。
まず、警察からのアプローチがある前に犯人自身が痴漢行為を告白すれば、刑の減軽や軽い刑事処分の可能性が高まります(刑法第42条第1項)。たとえば、警察に自首することによって反省の態度をアピールできるので、在宅事件扱いとなったり、被害者不明として不起訴処分に付されたりするでしょう。
また、刑事事件に慣れた弁護士なら、痴漢行為に及んだ当時の状況などを聞き取ることで捜査の進捗状況を予測できるので、そもそも痴漢事件が警察にバレていない状況なら「自首は不要」という判断も下してくれます。
なお、弁護士には守秘義務が課されているので、痴漢行為に及んだことを相談したとしても警察に通報されることはありません。
痴漢の容疑で後日逮捕されたとしても軽い刑事処分獲得を目指して尽力してくれる
弁護士に相談すれば、過去の痴漢行為を理由として刑事訴追されたとしても軽い処分獲得を目指して尽力してくれます。
たとえば、できるだけ早期に示談を成立させることで、勾留回避・不起訴処分獲得・実刑回避などの効果が得られるでしょう。また、警察や検察による取調べへの対応方法や供述内容のポイントも指摘してくれるので、不利な供述調書を作成される不安もなくなります。さらに、被疑者が痴漢冤罪を主張しているケースなら無罪獲得に必要な物証を収集したり、酔っ払いのせいで痴漢行為に及んでしまったケースでは有利な情状証拠を主張立証するなど、法律を駆使して依頼人利益最大化を目指してくれます。
痴漢の容疑で後日逮捕されても弁護士接見で励ましてくれる
弁護士は接見交通権をフル活用して被疑者を励ましたり、捜査状況の進捗状況を推察して取調べへの対応方法についてアドバイスをくれたりします。
そもそも、過去の痴漢行為が原因で後日逮捕された場合、逮捕・勾留期間中は身柄が拘束されるので、被疑者は弁護士としか接見できません。つまり、弁護士が身柄拘束中の被疑者の唯一の味方になるということです。
数日~数週間続く厳しい取調べは被疑者を心身ともに圧迫するものなので、弁護士接見の機会がかなりの励みになるでしょう。
痴漢などの性犯罪の再犯防止のためにカウンセリング施設や医療機関を紹介してくれる
痴漢や盗撮、のぞき、公然わいせつなどの性犯罪は再犯率が高い犯罪類型です。仮に過去の痴漢行為について後日逮捕されて刑事責任を全うしたとしても、その後再犯に及んでしまうと、更に重い刑事処罰のリスクに晒されることになります。
つまり、痴漢のような性犯罪に及んでしまった場合には、刑事手続きを円滑に進めることだけではなく、二度と痴漢行為に及ばないための対策にも配慮しなければいけないということです。たとえば、性依存症を抱えているなら専門のカウンセリング等を受けるべきでしょうし、ひとり暮らしで生活の立て直しが難しい状況なら監護者を選任するなどの環境作りが重要だと考えられます。
性犯罪弁護の実績豊富な弁護士は、性依存症の治療機関や犯罪加害者の社会復帰支援のNPO法人などとのコネクションをもっていることが多いです。これらの支援機関のサポートを受けながら本格的な更生を目指しましょう。
痴漢で後日逮捕されるか不安なときや警察から連絡があったときは早期に弁護士へ相談しよう
痴漢が刑事訴追されるのは現行犯逮捕だけではありません。警察が被害届の提出などで痴漢事件の端緒を掴んだ場合、周辺のカメラ映像などを駆使して身元特定を行い、高い確率で後日逮捕手続きや任意の出頭要請に踏み切る可能性が高いです。
したがって、「痴漢の犯行現場からうまく逃げ切れたからひと安心」と油断するのはハイリスクだと考えられます。警察からのアプローチがある前の段階で弁護士に相談すれば自首などの具体的な対策を検討してくれるので、少しでも不安を抱えているなら刑事事件に力を入れている弁護士のアドバイスを参考にしましょう。