横領罪の時効は何年で成立する?起こり得るリスクと発覚した場合にするべきことを解説

横領罪の時効は何年で成立する?起こり得るリスクと発覚した場合にするべきことを解説
横領罪の時効は何年で成立する?起こり得るリスクと発覚した場合にするべきことを解説

横領罪の公訴時効は3年〜7年です。期間に開きがある理由は、横領罪にはその内容次第で3つの罪状に分類されるためです。より重い横領罪の場合は、公訴時効も長くなります。

また、横領の公訴時効を迎えたとしても、民事上の責任は残る可能性があるため注意しなければいけません。

この記事では、横領罪の時効と時効の起算日、横領が発覚した場合の対応方法などについて詳しく解説しています。横領を行ってしまった人、今後の対応に悩まれている人はぜひ参考にしてください。

横領罪の時効は3年〜7年

「横領罪」にはその要件によって適用される法律が異なり、時効となるタイミングも異なります。具体的には以下のとおりです。

  • 遺失横領罪は3年
  • 単純横領罪は5年
  • 業務上横領罪は7年

まずは、それぞれの横領罪の適用要件と時効成立時期について詳しく解説します。

遺失物横領罪は3年

遺失物横領罪とは、占有者の意思に反して離脱した占有物を自分のものにした場合に適用される法律です。

遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
引用元:e-Gov|刑法

たとえば、誰かが落とした財布を拾って自分のものにしてしまった場合は、遺失物横領罪が適用されます。この法律による法定刑は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料です。

遺失物横領罪の公訴時効は3年であるため、遺失物横領罪が認められる行為があったときから3年を経過した時点で、検察官は起訴できなくなります。

単純横領罪は5年

単純横領罪とは、自分が占有する他人の所有物を横領した場合に成立します。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。
引用元:e-Gov|刑法

たとえば、友人から預かっているお金を勝手に使ってしまった場合や、友人から借りているゲーム機を売ってしまった場合は、単純横領罪が適用されます。

単純横領罪の法定刑は5年以下の懲役となり、とても厳しい判決が下される可能性があります。ただ、単純横領罪と遺失物横領罪の成否が問題となることが多いです。

なお、単純横領罪の公訴時効は5年であるため、同罪が適用されてから5年を経過した時点で起訴できなくなります。

業務上横領罪は7年

業務上横領罪とは、業務上で自分が占有する他人の所有物を横領した場合に適用されます。

業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。
引用元:e-Gov|刑法

たとえば、会社のお金の管理を担当している人がそのお金を横領した場合などに適用される法律です。業務上横領罪は、横領罪の中でももっとも重たい刑罰となることが多く、法定刑は10年以下の懲役です。

横領した金額によっても異なりますが、高額な場合は実刑判決となるケースが多いため注意しなければいけません。

業務上横領罪の公訴時効は7年であるため、横領をした時点から7年経過すると起訴できなくなります。ただ、業務上横領罪の場合は、すぐに発覚することが多く実際に時効が成立するケースは稀です。

横領罪の時効起算点

横領罪の公訴時効は3年・7年・10年のいずれかです。公訴時効を迎えると、その犯罪について罪に問うことができなくなってしまいます。

しかし、公訴時効を迎える期間の起算点はいつなのか、について把握しておかなければ思いがけないところで公訴されてしまう可能性もあるでしょう。

次に、横領罪の時効起算点について詳しく解説します。

遺失物横領罪の場合

遺失物横領罪は、その行為があったときが起算点です。

遺失物横領罪とは、他人が意図せずに占有から離れてしまったものを自分の物にしてしまった場合に適用される法律です。たとえば、他人が落とした財布からお金を抜き取って、自分のものとして使用してしまった場合などに該当します。

本罪の起算日はその行為があった時点であるため、上記の例で言うと財布からお金を抜き取って自分の物と認識した時点です。

また、「遺失物(落とし物)を拾った直後は、警察へ届けるつもりだったが忙しくて忘れてしまっていた」という可能性も考えられます。この場合、基本的には横領の意思がないため遺失物横領罪は適用されません。

ただ、「届け出るのが面倒くさいから自分の物にしよう」と思い、実際に自分の物として使用してしまった場合はその時点で横領が成立します。よって、その時点から3年後に公訴時効を迎えます。

なお、遺失物は拾得してからしてから7日以内に警察等へ届け出なければいけません。この期間を過ぎてしまうと拾得者としての権利を失ってしまうため、届け出る意思がある場合は早急に届け出ましょう。

単純横領罪の場合

単純横領罪の公訴時効起算点は、その行為があった時点です。

単純横領罪は自分が占有する他人の所有物を横領した場合に適用される法律です。たとえば、友人から預かっているお金を勝手に使ってしまったり、ゲーム機を勝手に売って自分のお金にしてしまった場合などに単純横領罪が成立します。

単純横領罪の公訴時効はその行為があったときから5年です。そのため、上記の例で言うと友人のお金を使ったときから5年、友人のゲーム機を売って自分のお金にした時点から5年で公訴時効を迎えます。

なお、たとえば友人Aからお金を預かっているBが「自分の生活費が足りないから、Aから預かっているお金を勝手に借りよう」とした場合は、成否が分かれます。

上記の例で見ると、友人Aの許可を得ることなく勝手にAのお金を使っています。この時点で本来であれば横領罪が適用されます。しかし、その後に被害弁済が行われていて、Aに何ら被害がない場合は単純横領罪は成立しないと解されるのが一般的です。

ただし、データが入っているゲーム機などの場合は、まったく同じ状態で返すことが難しいため注意しなければいけません。

業務上横領罪の場合

業務上横領罪の公訴時効起算点は、その行為があった時点です。

業務上横領罪は、業務上で自己が占有する物を横領した場合に適用される犯罪です。たとえば、会社のお金を管理している人が、そのお金を勝手に使ったり自分のものにしたりした場合に適用されます。

また、会社の所有物を勝手に売って自分のお金にした場合なども、業務上横領罪が適用されます。

業務上横領罪の起算点は、上記の例で言うと会社のお金や物を勝手に取得した時点です。つまり、その行為があったときから7年経過した時点で、公訴時効を迎えます。

ただし、業務上横領罪の民事上の賠償責任は「被害者または法定代理人が損害もしくは加害者を知ったときから3年」です。つまり、横領を行って7年経過し、公訴時効を迎えて刑事上の責任はなくなっても、民事上の責任は残るということです。

たとえば、会社のお金を使ってしまったが、何もバレずに7年経過して公訴時効を迎えたとしましょう。その後、何らかの事情で7年以上前の横領事件が発覚した場合、公訴することはできません。しかし、民事上の責任を追及することはできます。民事上の責任では、損害賠償金の請求が行われることになるでしょう。

横領罪は必ずバレる?バレる原因とは

横領罪は、他人の所有物を勝手に自分のものにしてしまった場合(横領)に要件を満たす犯罪です。そのため、本来の所有者次第では、横領されている事実に気付かずに時効が成立してしまうケースも多いです。

では、横領罪はどのようなことが原因で被害者にバレてしまうのか、次にその原因について詳しく解説します。

遺失物の所有が発覚した場合

拾得者が遺失物を自分のものにしてしまっていることが発覚した場合は、横領がバレます。たとえば、Aさんが運転免許証が入っている財布を落としてしまい、通行人Bがその財布を拾得したとしましょう。

その後、B氏は職務質問を受けるなどして持ち物を確認され、まったく関係のないAさんの運転免許証を所有していた場合は、遺失物横領罪が発覚します。また、Aさんが落とし物の届出などを行っていた場合は、照会することによってすぐにバレてしまいます。

遺失物を売却した場合

遺失物を売却した場合に横領が発覚する可能性があります。たとえば、物を無くしてしまった人は、警察へ落とし物の届出を行っています。そのため、届出されている物がリサイクルショップ等で売られている場合は発覚する可能性が高いです。

また、物を紛失してしまった本人がリサイクルショップなどで売られているところを発見した場合、お店や警察に相談をします。その結果、売却した人の情報がわかるため、横領罪等で逮捕される可能性があるでしょう。

なお、フリマアプリなどであっても他人の物を売却していれば、バレてしまう可能性は高いです。他人のものを横領して売却しようとしていれば、犯罪の成立要件を満たすため注意してください。

預かっているものを返せない場合にバレる

他人から預かっているものを横領した場合(単純横領)、いざ相手方に「返してほしい」と言われたときに返せなければ、横領罪が発覚します。

たとえば、友人Aに「このゲーム機を◯月◯日まで預かっていて欲しい」と言われ、Bが預かっていたとします。その後、預かっていた物をBが勝手に売却してお金を自分のものにしてしまいました。

約束の期日にAからBに対して「預けていたゲーム機を返して欲しい」と言われた際、Bは手元にないため返すことができません。この時点でAはBが勝手にゲーム機を売ってしまったことを知ります。その結果、横領罪が発覚します。

また、業務上横領罪の場合でも「あるはずのものがない」ということにより調査を行い、結果的に従業員等が勝手に売ってお金を手に入れていたことが発覚します。普段使用しないものであっても、定期的な調査を行っている場合はその時点でバレる可能性が高いです。

お金の流れを確認するため

業務上横領罪では、たとえ会社のお金を管理できる人であってもさまざまな要因によってバレる可能性が高いです。会社などとして組織しているところは、1円単位できっちりお金の流れを把握していなければいけません。

少しでもズレがあれば問題となるため、お金の流れを確認したタイミングで横領罪が発覚する、ということもあり得るでしょう。

横領罪の成立要件と法定刑

横領罪を犯罪ごとに分類すると3種類に分けられます。それぞれ、「横領罪」という括りでは同じですが、成立の要件や法定刑は異なります。次に、横領罪の成立要件と法定刑についてみていきましょう。

遺失物横領罪は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料」

遺失物横領罪についてですがの成立要件は以下のとおりです。

  • 遺失物であること
  • 横領の事実があること

遺失物横領罪の成立要件は上記の通りであり、法定刑は以下のとおりです。

1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料

横領罪の中でも比較的法定刑は軽めです。その理由は「遺失物」を横領しているためです。「つい、魔が差してしまった」「そもそも、遺失物がなければ横領をしていない(できなかった)」とも考えることができます。よって、比較的軽微な法定刑に設定されています。

単純横領罪は「5年以下の懲役」

単純横領罪の成立要件は以下のとおりです。

  • 自己が占有する他人から預かった物であること
  • 横領の事実があること

基本的には上記2点の要件を満たした場合に、単純横領罪が適用されます。

遺失物横領罪との違いは、横領したものが遺失物なのか自己が占有する他人の物なのか、といった点です。前者の場合は遺失物横領罪となりますが、後者の場合は単純横領罪が適用され、法定刑は以下のとおりです。

5年以下の懲役

遺失物横領罪と比較すると相当重い法定刑に設定されています。

本来であれば、所有者が相手を信頼して物を預けています。それにもかかわらず、裏切って横領した行為は厳しく罰する必要があるためです。

業務上横領罪は「10年以下の懲役」

業務上横領罪の成立要件は以下のとおりです。

  • 業務上であること
  • 自己が占有する他人の物であること
  • 横領の事実があること

業務上横領罪の成立要件は上記のとおりです。単純横領罪と比較すると似ている部分が多いです。たとえば、「自己が占有する他人の物を横領した事実」のみであれば、単純横領罪と同じに見えます。

しかし、業務上横領罪の場合は「業務上」であることが成立要件のポイントです。同罪での「業務上」の定義は、「委託を受けて物を管理していること」を差します。

委託には当然金銭が発生しているため、これを「業務」とみなします。業務上で発生した横領罪は、単純横領罪と比較して厳しく罰する必要があるため、法定刑は以下のとおりです。

10年以下の懲役

業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役であり相当重い刑罰です。同罪が単純横領罪と比較して加重されている理由は、法益侵害の範囲が非常に広くなることが予想される上に、刑罰を軽くすることにより犯罪が横行する可能性があるためです。

初めから重い刑罰に設定することにより、犯罪行為の抑制をするといった側面もあります。

横領罪が発覚した場合に起こり得るリスク

横領罪が発覚した場合、さまざまなリスクが起こり得ます。次に、起こり得るリスク内容について詳しく解説します。

解雇の可能性

業務上横領罪が発覚した場合は、勤務先を解雇されてしまう可能性が高いです。会社に損害を与えた事実がある以上は、解雇もやむを得ないと考えるしかありません。

その他の横領罪の場合、直接的に会社へ迷惑をかけることはないでしょう。しかし、逮捕・勾留されたことにより横領の事実が知られ、結果的に厳しい処罰が下されてしまう可能性もあります。

逮捕・勾留の可能性

横領罪が発覚した場合は、逮捕・勾留の可能性があるため注意しなければいけません。逮捕〜勾留〜判決までの大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 逮捕後48時間以内に送検(検察へ事件を送致)
  2. 事件を受けた検察は24時間以内に勾留請求を行う
  3. 勾留決定(10日間)
  4. 勾留延長(10日間)

上記の通りであるため、最長で23日間留置所ないで過ごさなければいけません。ただし、検察が勾留の必要はないと判断した場合は、72時間経過する前に釈放されて在宅捜査へ切り替えられる可能性もあります。

仮に、勾留が継続される場合は最長で23日間は留置所内で過ごさなければいけないため、学校や職場へ行くことはできません。

その後、起訴された場合は勾留が続く可能性があります。不起訴処分となった場合は、釈放されて社会へ戻ります。

懲役刑の可能性

横領罪の法定刑はいずれも懲役の可能性があります。事件の内容次第では、執行猶予がつく可能性も考えられますが、実刑判決となった場合はその期間は刑務所内で過ごさなければいけません。

中でも、単純横領罪や業務上横領罪は法定刑が5年以下の懲役・10年以下の懲役です。それぞれ、最悪の場合は長期間の刑務所内生活となる可能性があります。

なお、横領罪の場合は被害弁済が行われているかどうかが、判決に大きな影響を与えます。詳しくは後述しますが、被害者と示談を成立させておくことで執行猶予付き判決等となる可能性が高いです。できるだけ早めの対応を心がけましょう。

民事責任の可能性

横領罪が発覚した場合は、刑事責任の他に民事責任を負う可能性があります。民事上の責任とは、被害者が被った被害に対する賠償責任を負うことです。

たとえば、友人から預かっていたお金を勝手に使ってしまった単純横領罪の場合、実際に使ったお金の返済義務を負います。これが、民事上の責任です。また、友人がお金を返してもらえなかったことによる損害責任を負う可能性もあります。

たとえば、友人があなたに100万円を預けていたとしましょう。このお金は、自動車を購入するための頭金だったと仮定します。しかし、あなたが100万円を横領してしまったことにより、友人は自動車の購入をキャンセルしなければいけなくなりました。

上記の場合、あなたは友人が自動車を購入できなかったことによる責任を負わなければいけません。仮に、友人が通勤用の自動車を購入しようとしていたが、購入できずにタクシー通勤を強いられた場合、タクシー代を請求される可能性があります。

横領罪を行った場合の対処法

横領罪を行ってしまった場合、早期の対応で懲役刑等を免れる可能性があります。とくに、早期に被害が弁済され、示談が成立していることにより、逮捕・勾留を免れる可能性もあるため、とにかく早い対応が必要不可欠です。

最後に、横領罪を行った場合の対処法について解説します。参考にしてください。

弁護士へ相談する

横領罪が発覚した場合は、直ちに弁護士へ相談をしましょう。逮捕された場合であっても、その後の対応方法について相談ができます。弁護士に依頼した結果、勾留を回避できる可能性もあります。

また、示談交渉なども進めてもらえるため、刑罰へ与える影響も大きいです。できるだけ早めに相談するように心がけてください。

被害の弁済を行う

横領罪で刑罰を軽くするためには、被害弁済は必要不可欠です。実際に横領してしまった金額分等を全額支払う約束をし、実際に弁済を行ってください。

そうすることで心象が良くなり、比較的軽めの刑罰となる可能性が高いです。早めに対応しなければ、刑事事件へ発展して刑罰が確定してしまうかもしれません。すぐにでも弁護士へ相談をして被害弁済を進めていきましょう。

示談交渉を行う

横領罪において、示談交渉の成立はとても大切です。示談を成立させておくことで、被害者の処罰感情がなくなったと判断されるため、刑罰も軽くなります。

また、一括での被害弁済が難しい場合であっても、分割で弁済していくことなどを約束して示談を成立させておきます。そうすることで、被害者の処罰感情がないと判断されます。とにかく、被害者との示談交渉を早期に進めておくことがとても大切です。

まとめ

今回は、横領罪の時効成立時期について解説しました。

横領罪とはいってもその犯罪の内容次第で、3つの種類があります。遺失物の横領罪に適用される遺失物横領罪の公訴時効は、その犯罪があってから3年経過時点です。単純横領罪は犯罪行為から5年、業務上横領罪は犯罪行為から7年でそれぞれ公訴時効を迎えます。

もし、横領罪の公訴時効を迎えた場合は、その罪で公訴することはできません。しかし、民事上の責任は「被害者がその事実を知ってから3年」であるため、民事責任が残っている可能性もあるため注意しなければいけません。

公訴時効を迎える前に犯罪行為が明らかになった場合は、早急に弁護士へ相談をして被害弁済や示談交渉を進めておいたほうが良いでしょう。今回解説した内容をもとに、今後の対応方法を検討されてみてはいかがでしょうか。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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