泥棒で逮捕される時の犯罪類型と刑事手続きの流れとは?窃盗被害者と示談するメリットを解説

泥棒で逮捕される時の犯罪類型と刑事手続きの流れとは?窃盗被害者と示談するメリットを解説
泥棒で逮捕される時の犯罪類型と刑事手続きの流れとは?窃盗被害者と示談するメリットを解説

泥棒事件を起こすと、現行犯逮捕だけではなく後日逮捕されるリスクに晒されます。

そもそも、「窃盗は後日逮捕されない」「窃盗は現行犯以外逮捕されない」などと噂されることも多いですが、これは間違いです。なぜなら、捜査機関が泥棒事件を認知すると、被害者や証人の供述内容や犯行現場を押さえた防犯カメラ映像などを頼りに、逮捕状を請求できるだけの証拠が固められるからです。

したがって、過去の泥棒事件が原因で後日逮捕されるか不安を抱えているなら、警察に身元特定されて呼び出しがかかる前に弁護士に相談をして、示談交渉を進めるのが重要だと考えられます。状況次第では被害申告自体を回避できる可能性がありますし、仮に逮捕されたとしても有利な刑事処分を獲得しやすくなるでしょう。

そこで今回は、泥棒が原因で刑事訴追されるか日々怯えている人や、ご家族が窃盗罪等の容疑で逮捕された人のために、以下5点について分かりやすく解説します。

  1. 泥棒をしたときに容疑をかけられる犯罪類型
  2. 窃盗罪の構成要件及び法定刑
  3. 泥棒で逮捕されるときの刑事手続きの流れ
  4. 泥棒で逮捕されたときに生じるデメリット
  5. 泥棒で逮捕されるか不安なときに弁護士へ相談するメリット

なお、弁護士によって専門分野が異なるので、泥棒事件を起こして困っているのなら、刑事弁護のなかでも特に示談交渉を得意としている専門家を選ぶのがおすすめです。

目次

泥棒が逮捕されるときの犯罪類型

泥棒が逮捕されるときに問われる代表的な犯罪類型は以下の通りです。

  • 窃盗罪
  • 窃盗未遂罪
  • 常習累犯窃盗罪
  • 器物損壊罪
  • 建造物等侵入罪
  • 強盗罪
  • 遺失物等横領罪

「泥棒=窃盗罪」という先入観は危険です。なぜなら、刑事事件は個別事情次第で適用される犯罪類型が異なるので、場合によっては、窃盗罪よりも厳しい刑事処罰が下される可能性があるからです。

過去の泥棒がどのような犯罪類型に該当するのか不安を抱えているなら、すみやかに刑事事件を専門に扱っている弁護士までご相談ください

窃盗罪

泥棒が逮捕されるときの典型的な犯罪類型が「窃盗罪」です。

窃盗罪とは、他人の財物を窃取したときに成立する犯罪類型のことです(刑法第235条)。

泥棒が窃盗罪で逮捕される具体例

泥棒が窃盗罪で逮捕されるパターンは多種多様です。

たとえば、以下のような泥棒が窃盗罪の対象になります。

  • 街中を歩く人のポケットから財布を抜き取る「スリ行為
  • スーパーから商品を盗む「万引き
  • 他人の自宅に侵入して現金や貴金属を盗む「空き巣
  • コインランドリー利用客の衣類等を盗む「下着泥棒
  • ショッピングモールのベンチなどに置き忘れた鞄を盗む「置き引き」(遺失物等横領罪の可能性もある)
  • 通行人の所持するバッグ等を狙う「ひったくり」(強盗罪の可能性もある)

窃盗罪の法定刑

窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」です(刑法第235条)。

理屈上は、泥棒が窃盗罪で逮捕された場合、初犯でも実刑判決が下される可能性があります。ただし、泥棒初犯でいきなり実刑判決が下されるケースは極めて稀で、有罪になる場合でも、執行猶予付き判決か罰金刑が確定するのが大半です。

なお、検察官が起訴処分を下す段階で罰金刑を求刑予定の場合には、公開の刑事裁判ではなく略式手続きによる簡便な事件処理を選択できます(刑事訴訟法第461条以下)。

窃盗罪の構成要件

窃盗罪の構成要件は以下4点です。

  1. 他人の財物
  2. 窃取行為
  3. 故意
  4. 不法領得の意思

第1に、窃盗罪の客体は「他人の財物」です。財物とは、「固体・液体・気体といった有体物のことであり、財産的価値を有するもの」が幅広く含まれます。

第2に、窃盗罪の実行行為は「窃取」です。窃取とは、「他人が占有する財物を、占有者の意思に反して自己または第三者の占有に移転させる行為」のことを意味します。窃取行為の対象である「他人が『占有する』財物」であるか否かは、「他人が当該財物を事実上支配しているか」、すなわち、「占有の客観的事実」「占有しようとする意思(支配意思)」の2つの観点に基づき、各事案の個別事情から総合的に評価されます(「他人の占有」が否定される泥棒事件では、窃盗罪ではなく遺失物等横領罪の成否が問題となります)。

第3に、窃盗罪の主観的要件として「故意」が挙げられます。具体的には、「他人の財物を窃取すること」に対する認識・認容のことです。一般的な泥棒事件では素直に窃盗罪の故意が認められることが多いですが、泥棒本人の主観と客観的事実にズレがある場合に問題になります(いわゆる「抽象的事実の錯誤」)。たとえば、ベンチに置き忘れていた誰の物でもない鞄を置き引きしたつもりだったが(泥棒の主観は「遺失物等横領罪」)、実は隣のベンチに鞄の所有者が座っていた場合(客観的事実は「窃盗罪」)、「重い罪に該当する行為をしたのに、行為時に、その重い罪に該当することを知らなかった場合には、その重い罪によって処断することはできない(刑法第38条第2項)」という責任主義の考え方に基づき、窃盗罪ではなく遺失物等横領罪の範囲で科刑されることになります(最決昭和54年3月27日)。

第4に、窃盗罪の主観的要件として、故意とは別に「不法領得の意思」が挙げられます。不法領得の意思とは、「権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法にしたがって利用・処分する意思」のことを意味します(最判昭和26年7月13日)。たとえば、泥棒した財物を自分で使用したり転売したりする場合には不法領得の意思が存在するので窃盗罪が成立しますが、泥棒した財物を捨てて所有者に嫌がらせをする廃棄目的の場合には窃盗罪は不成立です(別途、器物損壊罪で逮捕されるか否かが問題になるにとどまります)。

窃盗未遂罪

泥棒をした場合、窃盗未遂罪で逮捕される可能性もあります(刑法第235条、第243条、第44条)。

たとえば、泥棒が窃盗未遂罪で逮捕されるのは以下のような事案です。

  • 混雑した電車内で乗客の鞄から財布を抜き取ろうと手を差し向けたがスリ行為に失敗した場合
  • 空き巣に入って居宅内を物色したが金品が見つからなかったので何も盗らずに立ち去った場合
  • バイクに乗って歩行者のスマホをひったくろうとしたが抵抗されたので断念した場合

窃盗未遂罪の法定刑

窃盗未遂罪の法定刑は、窃盗既遂罪と同じ「10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」です。

ただし、既遂犯とは違って、未遂犯で逮捕された場合には、泥棒事件の詳細を総合的に考慮した結果、判決内容や刑事処分が任意的に減軽される可能性があります(刑法第43条本文)。また、窃盗未遂罪に問われる泥棒事件のうち、自分の意思で窃取行為を中止した場合には、刑の必要的減免が効果として定められています(同法第43条但書)。

なお、窃盗未遂罪で逮捕された場合に刑が減軽されるか否かは捜査機関や裁判所の判断次第です。「未遂に終わったから判決や刑事処分はかならず軽くなる」というわけではありません。その意味では、窃盗未遂罪で逮捕されたとしても、被害者との示談交渉や取調べへの対応工夫などの防御活動には尽力するべきだと言えるでしょう。

窃盗未遂罪の構成要件

窃盗未遂罪の構成要件は以下4点です。

  1. 他人の財物
  2. 窃取行為の実行の着手があったこと
  3. 故意
  4. 不法領得の意思

まず、①③④は窃盗既遂罪と同じなので該当箇所をご参照ください。

次に、窃盗未遂罪が成立が成立するには、窃取行為について「実行の着手」が求められます(刑法第43条)。なぜなら、未遂犯処罰とは、構成要件的結果を直接惹起する行為への着手以前の段階まで刑事責任追及の範囲を繰り上げるものなので、「実行の着手があったか否か」という基準によって未遂犯処罰の範囲を画する必要があるからです。

そして、「実行の着手」とは、「既遂の危険が現実的・具体的に惹起されたこと」を意味すると解するのが判例通説で、既遂の危険が惹起されたか否かは、個別具体的な事情や犯人の行為意思などが総合的に考慮されます最決平成16年3月22日)。

たとえば、泥棒目的の空き巣が住宅に侵入して財物を物色した場合には、財物の占有移転行為に着手しなくても、窃盗未遂罪の成立を認めるのが判例です(最判昭和23年4月17日)。また、金品を物色する目的でタンスに近付く行為(大判昭和9年10月9日)、夜間閉店中の店舗に侵入して現金置き場の方へ向かって歩き出す行為最決昭和40年3月9日)、車上狙い事案で自動車のドアの鍵穴にドライバーを差し込んで開けようとした行為(東京地判平成2年11月15日)など、財物の占有移転行為に着手しなくても、実行の着手が認められるケースは相当多いです。

このように、泥棒が窃盗未遂罪で逮捕された場合には、軽い刑事処分獲得のために被害者との間で示談成立を目指すのも重要ですが、個別事案の事情次第では「窃盗罪の実行の着手がなかった」と争うことで無罪獲得の余地も残されているという点を忘れてはいけません。否認事件や事実認定レベルの争いが生じる事件は刑事事件に慣れた弁護士のサポートが不可欠なので、かならず刑事弁護を専門に取り扱っている専門家までご依頼ください

常習累犯窃盗罪

泥棒癖が原因で何度も窃盗罪等で収監歴がある場合には、常習累犯窃盗罪の容疑で逮捕される可能性が生じます(盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律第3条)。

常習累犯窃盗罪の法定刑

常習累犯窃盗罪の法定刑は「3年以上の有期懲役刑」です。刑法犯である窃盗罪及び窃盗未遂罪で逮捕される場合と比べて、法定刑が大幅に引き上げられている点が特徴として挙げられます。

常習累犯窃盗罪の法定刑で注意を要するのが、執行猶予付き判決の要件との関係性についてです。というのも、執行猶予付き判決の対象になるのは「3年以下の懲役刑もしくは禁錮刑または50万円以下の罰金の言渡しを受けたとき」に限られるからです(刑法第25条第1項)。

したがって、常習累犯窃盗罪の容疑で逮捕された場合に実刑判決を回避して執行猶予付き判決獲得を目指すなら、示談交渉や再犯予防策の提示などの防御活動を最大限尽くす必要があると考えられます。

常習累犯窃盗罪の構成要件

常習累犯窃盗罪の構成要件は以下2点です。

  1. 窃盗等について常習性が認められること
  2. 窃盗既遂罪・窃盗未遂罪に該当する泥棒行為に及んだこと

②については、窃盗既遂罪・窃盗未遂罪の構成要件と同様です。

①の常習累犯窃盗罪における「常習性」とは、過去10年以内に「窃盗既遂罪」「窃盗未遂罪」「窃盗罪と他罪との併合罪」で6カ月以上の懲役刑の執行を3回以上受けて刑務所に収監された経歴があることを意味します。

つまり、日常的に泥棒行為に及んでいたが警察に逮捕されたのは初めての場合や、過去に窃盗罪等で逮捕された経験はあるが微罪処分・不起訴処分・執行猶予付き判決・罰金刑で済んでいる場合には、常習累犯窃盗罪の容疑で逮捕されることはないということです。

常習累犯窃盗罪で後日逮捕されるリスクを抱えているということは、適切な形で更生の道を歩めていなかったり、クレプトマニアなどの問題を抱えていたりする可能性が高いです。今回の泥棒事件に関する刑事責任を回避・軽減するのも重要ですが、同時に、二度と泥棒での再犯に至らないような環境整備を目標とするべきでしょう。

器物損壊罪

泥棒が犯行に及んだ場合、器物損壊罪に問われる可能性もあります(刑法第261条)。器物損壊罪とは、他人の物を損壊・傷害したときに成立する犯罪類型のことです。

たとえば、空き巣に侵入する際に被害者宅の窓を割った場合、自転車泥棒をするときに施錠された鍵を壊したりした場合、他人の財物をすぐに廃棄する目的で盗んだ場合などが器物損壊罪の対象事例です。

なお、器物損壊罪は親告罪なので、被害者等による告訴がなければ刑事訴追されることはありません(同法第264条)。

器物損壊罪の法定刑

器物損壊罪の法定刑は「3年以下の懲役刑または30万円以下の罰金刑もしくは科料」です。

窃盗罪の法定刑と比較すると軽いようにも思えますが、犯行態様が悪質で被害額が高額なケースでは実刑判決が下されるリスクに晒されるので、早期の示談成立が重要な防御活動になると考えられます。

なお、窃盗罪と器物損壊罪は「牽連犯」の関係に立つので、たとえば車上荒らしのように窃盗罪と器物損壊罪の両罪が成立するケースでは、窃盗罪の法定刑である「10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」の範囲で有罪判決が言い渡されることになります。

ただし、牽連犯の関係に立つからと言って、「器物損壊罪が刑事手続き上まったく考慮されない」というわけではありません。たとえば、ピッキングによって被害者宅の鍵を破損して泥棒に入った事案では、最初器物損壊罪の容疑で逮捕・勾留された後、途中で窃盗罪で再逮捕・再勾留されて、身柄拘束期間が長期化する可能性が生じるでしょう。複数の犯罪行為に及んだ場合には厳しい刑事手続きが原因で日常生活に生じる悪影響が過大になるリスクを孕んでいるので、すみやかに弁護士へ相談をして被害者との示談交渉を開始してください

牽連犯とは、犯罪の手段もしくは結果である行為が他の罪名に触れる状況のことを指します(刑法第54条第1項後段)。たとえば、泥棒をするために窓を蹴破ったケースでは、窓を蹴って壊す行為(器物損壊罪)と被害者宅に侵入する行為(建造物等侵入罪)が手段であり、泥棒行為(窃盗罪)が目的・結果に分類されます。牽連犯の関係に立つ複数の犯罪行為は、最も重い法定刑が定められている罪によって処断されるのがルールです(科刑上一罪)。器物損壊罪・建造物等侵入罪・窃盗罪のケースに当てはめると、最も重い法定刑が規定されている窃盗罪の範囲で量刑が決定されます

器物損壊罪の構成要件

器物損壊罪の構成要件は以下2点です。

  1. 他人の物
  2. 損壊・傷害

まず、器物損壊罪の客体は「他人の物」です。他人の物には、動産・不動産・電磁的記録媒体が幅広く含まれ、法禁物や法令上違法なものも対象とされます(最決昭和55年2月29日)なお、公務所の用に供する文書または電磁的記録、権利義務に関する他人の文書または電磁的記録、他人の建造物または艦船は器物損壊罪の客体から排除され、別途、公用文書等毀棄罪・私用文書等毀棄罪・建造物等損壊罪で処断されます。

次に、器物損壊罪の構成要件的行為は「損壊または傷害」です。「損壊」とは「物の効用を害する一切の行為(物理的な損壊に限られません)」、「傷害」は客体が動物の場合に用いられます。

建造物等侵入罪

泥棒事件を起こした場合、建造物等侵入罪で逮捕される可能性が生じます。建造物等侵入罪とは、「正当な理由がないのに、人の住居や人の看守する邸宅・建造物・艦船に侵入したり、要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかったとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第130条)。後段は、特に「不退去罪」と呼ばれます。

たとえば、泥棒目的で被害者宅に立ち入った場合、置き引きのターゲットを探すためにショッピングモール内を徘徊した場合などが建造物等侵入罪の具体例として挙げられます。

建造物等侵入罪の法定刑

建造物等侵入罪の法定刑は「3年以下の懲役刑または10万円以下の罰金刑」です。

なお、器物損壊罪と同じように、建造物等侵入罪と窃盗罪も「牽連犯」の関係に立つので、両罪が成立する場合には科刑上一罪として窃盗罪の範囲内で処断されます。また、この点を踏まえて、泥棒が窃盗罪の容疑で逮捕されたときには、あえて建造物等侵入罪については立件しないのが主な実務的運用です。

ただし、空き巣事案のように建造物等侵入罪と窃盗罪の被害者が一致しているケースは別として、スーパーで利用客の財布を盗んだような事案では、建造物等侵入罪の被害者は「店舗」・窃盗罪の被害者は「財布の所有者」になるので、被害者にズレが生じます。つまり、建造物等侵入罪と窃盗罪の両罪で逮捕されてしまうと、各被害者との間で示談交渉を進める必要があるので、時間制限のある刑事手続きのなかで迅速な防御活動が必要になるということです。したがって、泥棒行為が原因で複数の犯罪の容疑をかけられた場合には、刑事弁護・示談交渉の実績豊富な専門家へ相談して効率的な防御活動を進めてもらうことを強くおすすめします。

建造物等侵入罪の構成要件

建造物等侵入罪の構成要件は以下2点です。

  1. 人の住居、人の看守する邸宅・建造物・艦船
  2. 侵入

建造物等侵入罪の客体は「人の住居、人の看守する邸宅・建造物・艦船」です。建物自体だけではなく、建物に付随する囲繞地に侵入した時点で本罪は成立します。建造物等侵入罪の客体である「囲繞地」に該当するには、建物に接してその周辺に存在する付属地であり、管理者が門塀などを設置することによって「建物利用のために供されるもの」であることが明示されていなければなりません(最判昭和51年3月4日)。

建造物等侵入罪の実行行為は「侵入」です。侵入とは、「許諾権者の意思(推定的意思)に反する立ち入り行為」を意味します。たとえば、空き巣に遭った被害者は泥棒の侵入を許諾するはずありませんし、スーパーの管理権限者は買い物利用目的以外の不審者の立ち入りを拒絶しているのは明らかでしょう。

強盗罪

泥棒事件を起こしたときに被害者と接触等があった場合には、強盗罪で逮捕される可能性も生じます。強盗罪とは、暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取したときに成立する犯罪類型のことです(刑法第236条第1項)。

たとえば、留守宅を狙って空き巣に入ったが物色中に被害者が帰宅したために刃物などの兇器で脅して所持していた財布を奪ったようなケースでは、窃盗罪ではなく強盗罪が成立します。

また、窃盗犯人が泥棒をした後、盗んだ物を取り返されることを防ぐため、逮捕を免れるため、罪跡を隠滅するために、暴行または脅迫をしたときには、「事後強盗罪」で逮捕される点にも注意が必要です(刑法第238条)。つまり、空き巣に成功して逃走しようとしたときに家主に見つかって暴力を振るってしまうと、その時点で、窃盗犯から強盗犯に格上げされてしまうということです。

強盗罪の法定刑

強盗罪の法定刑は「5年以上の有期懲役刑」です。これは、ただ単に被害者から財物の占有を奪う窃盗罪と比べると、暴行または脅迫を手段としている点で違法性が高いと判断されているからです。

なお、強盗犯が人を負傷させたときには強盗致傷罪(無期または6年以上の懲役刑)、強盗犯が人を死亡させたときには強盗致死罪(死刑または無期懲役刑)で逮捕されます。また、強盗罪は未遂犯が処罰されるだけではなく(刑法第243条)、強盗予備罪も処罰対象になる点に注意が必要です(同法第237条、2年以下の懲役刑)。

単純窃盗罪に問われるようなシンプルな泥棒をするつもりで空き巣等の行為に及んだ場合でも、逃走中に被害者ともみ合いになるなどしたのなら、現段階で警察から連絡が来ていないとしても、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談することを強くおすすめします。なぜなら、空き巣に入って財物を窃取した段階では窃盗罪のリスクを抱えているだけですが、逃走時に被害者に暴行等を働いた段階で事後強盗罪に該当する「強盗犯」に格上げされますし、さらに、暴行行為等が原因で被害者が死傷した場合には、強盗致死傷罪などの非常に重い刑事処罰の対象になるからです。強盗致死傷罪のような重罪は被害申告された段階で警察が本格的な捜査活動に踏み出すので、後日逮捕されたうえで重い刑事処罰を避けられません。すみやかに弁護士に相談のうえ、被害者との間で丁寧な話し合いの場を設けるべきでしょう。

強盗罪の構成要件

強盗罪(1項強盗罪)の構成要件は以下3点です。

  1. 財物
  2. 手段として暴行または脅迫を用いたこと
  3. 強取

まず、強盗罪の客体は「財物」です。財物の意味するところは窃盗罪と同じなので、該当箇所をご参照ください。

次に、強盗罪が成立するには、手段として「暴行または脅迫」が用いられる必要があります。強盗罪の手段である「暴行または脅迫」は、暴行罪における暴行・脅迫罪における脅迫とは異なり、「被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のもの」でなければならず、この程度に至らない暴行・脅迫行為によって他人の財物を得たとしても恐喝罪が成立するにとどまります(最判昭和24年2月8日)。たとえば、ひったくろうとしたハンドバッグの紐をつかんだまま離そうとしない被害者を自転車によって引きずって転倒させただけでも、被害者の反抗を抑圧する程度の暴行が用いられたと言えるため、窃盗罪ではなく強盗罪が成立します(最決昭和45年12月22日)。

さらに、強盗罪の実行行為は「強取」です。強取とは、「暴行・脅迫によって犯行を抑圧された被害者から財物を奪取すること」を意味します。

遺失物等横領罪

泥棒事件の詳細次第では、遺失物等横領罪の容疑で逮捕される可能性も生じます。遺失物等横領罪(占有離脱物横領罪)とは、「遺失物や漂流物その他占有を離れた他人の物を横領したとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第254条)。

たとえば、路上に落ちている財布をネコババした事例、乗り捨てられた放置バイク・自転車を勝手に自分のものにした事例、ご配達された郵便物や小包をそのまま自分のものにした事例などが遺失物等横領罪の具体例として挙げられます。

遺失物等横領罪の法定刑

遺失物等横領罪の法定刑は「1年以下の懲役刑または10万円以下の罰金刑もしくは科料」です。

窃盗罪と比べると遺失物等横領罪の法定刑は軽いので、たとえば、ショッピングモールのベンチなどに放置されていた(と思しき)鞄などを泥棒して逮捕されたような事例では、「窃盗罪ではなく遺失物等横領罪が成立する」と主張することで軽い刑事処罰を求める手法も有効でしょう。

遺失物等横領罪の構成要件

遺失物等横領罪の構成要件は以下2点です。

  1. 遺失物や漂流物など、他人の占有を離れた他人の物(占有離脱物)
  2. 横領行為

まず、遺失物等横領罪の客体は「占有離脱物」です。「他人の占有に属していない物」が幅広く客体に含まれます。

次に、遺失物等横領罪の実行行為は「横領行為」です。横領行為とは「不法領得の意思を実現する一切の行為」のことを意味します(最判昭和27年10月17日)。そして、「不法領得の意思」とは「占有離脱物について権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思」のことです。たとえば、売買・贈与・質入れ・費消・着服・毀棄隠匿の意思・一時使用の意思など、幅広い行為が「不法領得の意思がある横領行為」と認定されます。

泥棒が窃盗で捕まったらどうなる?刑事手続きの流れを解説

泥棒をしたことが警察にバレると刑事訴追を免れることができません。

窃盗罪などの容疑で泥棒が逮捕されるときの刑事手続きの流れは以下の通りです。

  1. 泥棒事件について警察が接触してくる
  2. 泥棒事件について窃盗罪等で逮捕されると警察で48時間以内の取調べが実施される
  3. 泥棒事件が警察から検察に送致される
  4. 泥棒事件について検察官が公訴提起するか否かを判断する
  5. 泥棒事件が刑事裁判にかけられる

単純窃盗罪のような比較的軽微な犯罪類型であれば、警察の接触段階から丁寧な防御活動を展開しておけば、上述の厳しい刑事手続きの大部分を回避できます。これに対して、事後強盗罪や常習累犯窃盗罪のような悪質な事案では、上述の流れで刑事手続きが進められるのが一般的です。

刑事手続きのステージごとに目指すべき防御活動の方向性が決まっているので、かならず刑事事件の実績豊富な弁護士までご相談ください

泥棒事件について警察から接触がある

泥棒事件を起こした場合、刑事手続きは「警察との接触」でスタートするのが大半です。

警察との接触方法は、以下3つに分類されます。

  1. 過去の泥棒事件について任意の事情聴取が実施される
  2. 過去の泥棒事件について後日逮捕される
  3. 泥棒事件を起こしたタイミングで現行犯逮捕される

泥棒事件について警察から任意の事情聴取を求められる

泥棒事件が警察にバレたとしても、いきなり通常逮捕手続きが実施されるとは限りません。

なぜなら、犯罪の捜査をするについて必要があるときには、捜査対象者の同意を得られる限りにおいて、捜査機関はいつでも対象者に出頭を求めたり、取調べを実施したりする権限が与えられているからです(刑事訴訟法第197条第1項本文)。

たとえば、捜査員が自宅にやってきたり、電話がかかってきたりして、過去の泥棒事件について事情聴取の要請がかけられます。

なお、逮捕・勾留という強制処分は刑事訴訟法で厳格な時間制限が設けられていますが、任意捜査に対しては時間制限がないので、泥棒事件についての刑事処分が確定するまで長期化するリスクがある点にご注意ください。

泥棒事件に関する任意の事情聴取は拒絶できるが応じた方が良い

「任意捜査」という名前の通り、警察による任意の出頭要請・取調べに応じるか否かは、捜査対象者が自由に決めて良いです。「仕事が忙しいので都合がつかない」「警察で話をするのは嫌だ」など、どのような理由で拒絶しても、拒絶したこと自体が咎められることはありません。

ただし、過去の泥棒事件について警察から任意の事情聴取を求められた場合には、出来るだけスケジュールを合わせて誠実に対応することをおすすめします。なぜなら、「任意の事情聴取に応じない=反省していない、逃亡・証拠隠滅のおそれがある」と評価されるので、逮捕状が請求された後、逮捕処分によって強制的に身柄が押さえられる可能性が高まるからです。

任意ベースで取調べが実施される場合、丁寧かつ誠実に対応すれば、捜査対象者のスケジュールや体調などを斟酌して捜査活動を進めてもらえます。これに対して、逮捕状が請求されてしまうと、どのような事情があったとしても強制的に取調べが実施されるので、日常生活にさまざまな悪影響が生じるでしょう。

同じように取調べが実施されるのなら、身柄拘束なし・比較的融通の利く状態の方がメリットは大きいはずです。したがって、警察から呼び出しがあった場合には、できるだけ誠実に対応してください。

泥棒事件について任意捜査が選択される具体例

任意捜査・強制捜査のどちらで刑事手続きが進められるかは捜査機関の判断次第です。

一般的に、泥棒事件が以下のような性質を有するケースでは、任意ベースの手続きが選択される可能性が高いでしょう。

  • 警察からの連絡へ丁寧に対応している
  • 窃盗罪等での前科・前歴がない初犯
  • 住所や職業が明らかで逃亡のおそれがない
  • 泥棒事件について否認していない、証拠等と矛盾した供述をしていない
  • 同種余罪の疑いがない
任意の事情聴取に応じれば泥棒事件の在宅事件扱いの期待が高まる

警察による任意の事情聴取に誠実に対応すれば、泥棒事件に対して窃盗罪の嫌疑がかけられたとしても、在宅事件処理をされる可能性が高まります。

在宅事件とは、「逮捕・勾留という身柄拘束処分なしで、取調べや裁判手続きが進められる刑事事件処理類型」のことです。逮捕・勾留されると身柄拘束期間中は日常生活から切り離されるので、会社に迷惑がかかるなどのリスクに晒されます。在宅事件扱いなら今まで通りの生活を送りながら刑事手続きを進められるので、身柄拘束によって生じるさまざまな弊害を回避・軽減できる点でメリットが大きいでしょう。

ただし、在宅事件扱いになったからと言って、かならず無罪になるとは限りません。捜査機関が刑事裁判にかける必要があると判断した場合には、送検後に在宅起訴され、刑事裁判を受ける必要があります。そのため、在宅事件扱いになったとしてもかならず弁護士に相談をして、不起訴処分や無罪獲得を目指して尽力してもらうべきでしょう。

泥棒事件について後日窃盗罪で通常逮捕される

警察が泥棒事件を認知すると、通常逮捕手続きが実施される可能性があります。

通常逮捕とは、「裁判官が発付する逮捕状に基づいて実施される身柄拘束処分」のことです(刑事訴訟法第199条第1項)。

任意での出頭要請とは異なり、逮捕状が請求された以上、泥棒事件についての取調べは拒絶できません。

泥棒事件について通常逮捕が選択される具体例

泥棒事件が以下のような事情を抱えている場合、任意ベースの刑事手続きではなく、通常逮捕手続きが選択される可能性が高いです。

  • 置き引きや泥棒などの前科・前歴がある
  • 住所不定や無職など、逃亡のおそれがある
  • 盗品転売など、組織的な犯行の疑いがある
  • 盗品を廃棄するなど、証拠隠滅のおそれがある
  • 現場付近で複数の泥棒被害届が出されて関与が疑われる
  • 被害者の処罰感情が強く、任意取調べを拒否している

最初は任意ベースで刑事手続きが進められていても、さまざまな事情が明らかになる過程で、捜査活動の途中で通常逮捕手続きにシフトされる可能性も否定できません。

したがって、泥棒事件で刑事訴追されるリスクを抱えている場合には、刑事事件の実績豊富な弁護士に過去の余罪等についても正直に話したうえで、適切な防御活動の方針を立ててもらうべきでしょう

「窃盗は後日逮捕されない」は間違い

「泥棒などの窃盗犯は現行犯以外では逮捕されない」というのは間違いです。

確かに、泥棒は現行犯逮捕で身柄が拘束されるケースが多いですし、証拠収集の観点から後日逮捕が難しいのは事実でしょう。

ただ、防犯カメラ映像や被害者等の目撃証言、逃走中に利用した駅のICカード履歴など、泥棒事件を立証できるだけの客観的証拠が収集されると、後日通常逮捕手続きを実行するのは可能です。

したがって、「泥棒をしたが現行犯逮捕されなかったから安心」と油断するのではなく、後日逮捕のリスクに備えて、警察から連絡がくる前に弁護士に相談をして自首するべきか否かの判断をしてもらいましょう

公訴時効が完成するまで泥棒は後日逮捕リスクを抱えたまま

過去の泥棒事件は公訴時効が完成するまで常に後日逮捕のリスクを抱えたままです。

公訴時効とは、犯罪が終わった時から一定期間経過すると検察官が公訴提起できなくなる制度のことです。検察官による公訴提起が不可能な以上、公訴時効が完成すると逮捕リスクも消滅します。

公訴時効期間は犯罪類型ごとに異なります。泥棒が問われ得る犯罪類型ごとの公訴時効は以下の通りです(刑事訴訟法第250条第2項各号)。

犯罪類型 公訴時効期間
窃盗罪 7年
器物損壊罪 3年
建造物等侵入罪 3年
強盗罪 10年
遺失物等横領罪 3年

泥棒は現行犯逮捕されることが多い

泥棒事件を起こしたその場で通報されると、現行犯逮捕される可能性が高いです。

現行犯(現行犯人)とは、現に罪を行い、または、現に罪を行い終わった者のことです(刑事訴訟法第212条第1項)。現行犯人に対する逮捕手続きは誤認逮捕のおそれが極めて少ないので、裁判官の発付する令状なしで誰でも実施できます。

また、泥棒として追呼されている者、泥棒の証拠等を所持している者、衣服の汚れなど泥棒をした顕著な証跡がある者、「泥棒!」と誰何されて逃走しようとする者が、窃盗行為等を終えてから時間が経っていないと明らかに認められるケースも、「準現行犯逮捕」の対象です(同法第212条第2項)。準現行犯人が逮捕される場合も、現行犯逮捕と同様、逮捕状なしで身柄拘束されます。

泥棒をして窃盗罪で逮捕されると警察で48時間以内の取調べが実施される

泥棒が窃盗罪等の容疑で現行犯逮捕・後日逮捕された場合には、警察において身柄拘束付きの取調べを強制されます。この間は、自宅には帰宅できませんし、外部の第三者と連絡をとることも許されません。

ただし、任意ベースの取調べとは異なり、警察段階で実施される取調べには「48時間以内」という時間制限が設けられている点に注意が必要です(刑事訴訟法第203条第1項)。身柄拘束期限が到来するまでに得られた証拠・供述調書をもとに、泥棒事件を検察官送致するか微罪処分に付するかが決定されます。

ここで、「逮捕後の身柄拘束期間が48時間に制限されている」という点は、被疑者にとってデメリットがある点を押さえておかなければいけません。というのも、検察官送致されるか否かの判断がされるまでに48時間しか猶予がないので、微罪処分獲得に向けて重要になる「示談交渉」を短期間で済まさなければいけないからです。

したがって、泥棒が窃盗罪等の容疑で逮捕された場合において、身柄拘束期間長期化を避けたいのなら、逮捕されてすぐに示談ノウハウを有する私選弁護人を選任するのが重要だと考えられます。検察官送致の判断がされる前に示談成立に向けて尽力してもらいましょう。

微罪処分とは、「被疑者の身柄・泥棒事件の関係書類を送検せずに、警察限りの判断で刑事手続きを終結させる事件処理類型」のことです(刑事訴訟法第246条但書、犯罪捜査規範第198条)。たとえば、計画性なく泥棒事件を起こした場合、泥棒事件の被害額が2万円以下の場合、泥棒事件の前科前歴がない場合、監護者がいるなどして更生可能性を見込める場合、被害者と示談成立済みで処罰感情が薄い場合などでは、送検を回避して警察段階で刑事手続きが終了する可能性が高いです。

泥棒事件について警察から検察に身柄が送致される

窃盗罪等の容疑で泥棒が逮捕された場合、微罪処分を獲得できない限り、事件・身柄が検察官に送致されます。

泥棒事件を引き受けた検察官は、原則24時間以内の取調べを実施します(刑事訴訟法第205条第1項)。関係書類と取調べの様子を総合的に考慮したうえで、検察官が泥棒事件について公訴提起するか否かの判断を下す、という流れです。

ただし、泥棒事件の態様や被疑者の供述内容次第では、検察段階における取調べが24時間では足りないことも少なくありません。

このように、やむを得ない事情によって時間制限を遵守できない場合には、検察官による勾留請求が認められています(同法第206条第1項)。勾留請求が認められると、10日間~20日間の範囲で身柄拘束期間が延長されて、厳しい取調べが継続します(同法第208条各項)。

以上を踏まえると、逮捕段階からカウントして泥棒事件1件につき最大23日間身柄拘束されるということです。また、器物損壊罪や建造物等侵入罪が別途立件されたり、泥棒事件の余罪が発覚して別の窃盗罪が立件されたりすると、再逮捕・再勾留が繰り返されて身柄拘束期間が数カ月に及ぶことも少なくありません。

刑事責任が確定した後の社会復帰の難易度を下げるには、可能な限り身柄拘束期間の短縮化を目指す必要があります。刑事事件に強い弁護士を選任して、示談交渉を進めると同時に、留置の必要性がないことを丁寧に捜査機関側に伝えてもらうべきでしょう。

泥棒事件について検察官が公訴提起するか否かを決定する

被疑者の身柄拘束期限が到来するまでに、検察官は泥棒事件について起訴・不起訴を決定します。

起訴処分とは、泥棒事件を刑事裁判にかける旨の訴訟行為のことです。これに対して、不起訴処分とは、泥棒事件を刑事裁判にかけずに検察限りの判断で刑事手続きを終結させる旨の意思表示のことを意味します。

検察官による公訴提起の判断について押さえるべきポイントは2点です。

まず、日本の刑事裁判の有罪率は約99%とも言われているので、「泥棒事件が刑事裁判にかけられた時点で有罪判決が下されることがほぼ確定する」ということを押さえておきましょう。つまり、検察官による起訴処分が下された時点で有罪・前科が決定的になるので、どうしても前科を避けたい事情があるのなら、身柄拘束期限が到来するまでに示談を成立させるなどの防御活動が不可欠になります。

次に、「泥棒事件を起こしたこと自体は間違いないのだから、検察官による起訴処分は避けられない」というのは間違いです。というのも、検察官が不起訴処分を下すケースは以下3つに分類されており、「罪を犯した=起訴処分」ではないからです。

  1. 嫌疑なし(泥棒事件を起こした証拠がないケース)
  2. 嫌疑不十分(泥棒事件について窃盗罪等を立証できるだけの証拠が足りないケース)
  3. 起訴猶予(泥棒事件を起こしたことは間違いないが、被害者の処罰感情や犯歴・反省の態度等を考慮して、今回は起訴を見送るべきケース)

したがって、泥棒事件を理由に逮捕・勾留されたとしても、身柄拘束期間中の防御活動次第では不起訴処分を獲得して無罪放免を実現するのも不可能ではないので、かならず刑事弁護ノウハウを有する専門家までご相談ください

検察官による起訴処分を避けられない場合でも、刑事裁判において検察官が罰金刑を求刑する予定のケースでは、略式起訴によって簡易簡便に刑事手続きを終結できます。略式起訴(略式命令・略式裁判)とは、100万円以下の罰金刑に付される簡易裁判所管轄の刑事事件について、正式裁判を行わずに、検察官の提出した書面のみによって審理を行う裁判手続のことです(刑事訴訟法第461条)。公開の刑事裁判で反論する機会は失われますが、公判手続きを遂行する負担をすべて省略できるので、早期の社会復帰が実現するというメリットが得られます。なお、泥棒事件に対して強盗罪の容疑がかけられている場合には略式手続きの対象外です。

泥棒事件が刑事裁判にかけられる

泥棒事件を起こして逮捕・起訴されると、公訴提起から1カ月~2カ月頃を目安に刑事裁判が開かれます。泥棒事件について刑事裁判が開廷される場合は、冒頭手続きにはじまり、証拠調べ手続き・弁論手続きを経て結審し、最終的に判決が宣告されるという流れを経ます。

窃盗罪の容疑で公訴提起された場合には、冤罪事件を除いて、できるだけ判決内容を有利にするための防御活動が重要となります。具体的には、窃盗罪の法定刑が「10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」であることを踏まえると、実刑判決を回避して執行猶予付き判決・罰金刑を目指すことになるでしょう。

なお、執行猶予付き判決・罰金刑なら刑務所への服役を回避できるものの、有罪判決である以上、前科は避けられません。そのため、「どうしても前科によるデメリットだけは避けたい」と考えるなら、検察官の公訴提起判断までに示談をまとめて起訴猶予処分獲得を目指す必要があります

泥棒事件の被害額が少額だったり窃盗罪等の前科がなく初犯のケースでは罰金刑が下される可能性が高いですが、その一方で、前科があったり被害額が高額だったりすると、窃盗罪でも実刑判決が下される可能性が高いです。窃盗罪で実刑判決が下された場合には刑務所に収監されることになりますが、どこの刑務所に服役するかは完全非公表で、服役先が家族等に通知されることもありません。ただし、処遇指標ごとに対応刑事施設がある程度振り分けられているので、収監先が気になる方は「「刑事施設一覧」法務省HPをご参照ください。

泥棒で逮捕されたときに生じるデメリット3つ

泥棒をしているところを現行犯逮捕されたり、過去の泥棒事件が警察にバレて逮捕されたりしたときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談することをおすすめします。

なぜなら、泥棒事件で逮捕されたにもかかわらず早期に適切な防御活動を展開しなければ、以下3点のデメリットに晒されるからです。

  1. 泥棒をして逮捕されたことが会社にバレると懲戒処分を下される
  2. 泥棒をして逮捕されたことが学校にバレると退学処分等の対象になる
  3. 泥棒事件で有罪になると前科がついて今後の社会生活にさまざまな支障が生じる

    泥棒で逮捕されたことが会社にバレると懲戒処分の対象になる

    泥棒が窃盗罪等の容疑で逮捕・勾留されると長期間身柄拘束されるので、当該期間中は欠勤を強いられます。逮捕・勾留されたことを会社にバレずにやり過ごすのは不可能に近いです。また、泥棒行為がSNS等で拡散されたりニュース報道されたりしても会社に隠し通すのは難しいでしょう。

    このような経緯で泥棒事件を起こして逮捕されたことや有罪になったことが会社にバレると懲戒処分が下されます。懲戒処分の種類は「戒告・譴責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇」に大別され、各社の就業規則のルールに則って処分内容が決定されます。たとえば、窃盗初犯で反省の態度を示しているなら戒告等の軽い処分で済む場合もあり得ますし、泥棒事件が大々的に報道されるなどして会社の社会的信用を失墜させてしまった場合には懲戒解雇等の重い処分のリスクも高まります。

    以上を踏まえると、泥棒事件が原因で社会人生活に支障が生じるのを防ぐには、「任意ベースでの在宅事件処理を狙う」「逮捕後の身柄拘束期間を最大限短縮化する」「泥棒事件の被害申告自体を避ける」のが重要な対抗策だと考えられます。そのためには泥棒被害者との間で早期に示談交渉を進める必要があるので、窃盗等で後日逮捕リスクを抱えている場合にはすみやかに弁護士までご相談ください

    泥棒で逮捕されたことが学校にバレると退学処分等の対象になる

    学生が泥棒事件を起こして逮捕された場合にも、学校にバレる可能性が高いです。たとえば、長期に及ぶ身柄拘束によって欠席が続いた場合、ニュース等で報道された場合、学内で泥棒事件を起こして警察による捜索等が実施された場合には、泥棒事件を学校に隠し通すのは難しいでしょう。

    泥棒事件を起こしたことや前科がついたことが学校にバレると学則・校則の規定にしたがって何かしらの処分が下されます。譴責や注意などの軽い処分で済む場合もありますが、犯罪行為に対して厳しい考え方をもっている学校なら退学処分・停学処分などの重い処分が科される可能性も否定できません。

    したがって、社会人が泥棒事件を起こしたときと同じように、学生が泥棒事件を起こした場合にも、できるだけ早期に被害者との間で話し合いの場を設けるのがポイントになると考えられます。刑事事件に慣れた弁護士なら学校への対応方法などを含めて相談できるでしょう。

    泥棒で逮捕されて窃盗罪で有罪になると前科がつく

    泥棒事件が刑事訴追されて有罪判決が下されると「前科」がつきます。前科とは、「有罪判決を受けた経歴」のことです。

    前科がついた場合、日常生活に以下のようなデメリットが生じます。泥棒犯それぞれで境遇が異なるので支障を感じない人もいるかもしれませんが、場合によっては今後の社会生活自体が困難になるリスクに晒されるでしょう。

    • 前科情報は履歴書の賞罰欄への記載義務があるので、就職活動・転職活動の内定率が下がる
    • 前科がつくことで職業・資格に制限が生じる場合がある(士業、警備員など)
    • 前科等の刑事処分歴は「法定離婚事由」に該当するので、配偶者からの離婚申し出を拒絶できない
    • 前科があるとビザやパスポートの発給が制限される場合がある(海外渡航できない)
    • 再犯時の刑事処分・判決内容が重くなる可能性が高い

    なお、「前科情報は戸籍・住民票に掲載される」「前科情報は簡単にインターネット検索できる」「前科がつくと住宅ローンを組めない」などの噂は間違いです。「前科によるデメリット」と称されて流布している情報のなかには誤ったものも含まれるので、少しでも不安な点があるなら弁護士までご確認ください。

    泥棒で逮捕されるか不安なときに弁護士へ相談するメリット4つ

    過去に泥棒事件を起こして後日逮捕の不安を抱えているならすみやかに弁護士までご相談ください

    なぜなら、刑事事件を専門に取り扱っている弁護士に相談すれば以下4点のメリットが得られるからです。

    1. 泥棒被害者と早期に示談交渉を開始して有利な刑事処分獲得に向けて尽力してくれる
    2. 警察に逮捕される前に泥棒事件について自首するべきか否か判断してくれる
    3. 接見交通権を活用して逮捕・勾留中の厳しい取調べへのアドバイスを提供してくれる
    4. 盗癖などへのケアも配慮して本格的な更生を支援してくれる

      泥棒被害者との間で早期に示談成立を目指してくれる

      泥棒事件を起こしたときの最優先の防御活動が「被害者との示談交渉」です。弁護士への相談によって早期の示談成立を期待できます

      示談とは、「犯人と被害者が直接話し合って泥棒事件について民事的な合意を形成すること」を意味します。刑事事件における一般的な示談交渉では、一定の示談金(被害弁償・慰謝料含む)を支払う代わりに、「示談限りで民事的紛争を含めて解決済みとすること」「警察への相談前なら被害申告しないこと」「警察への相談後なら被害届や告訴状を取り下げること」などが条件とされます。

      泥棒事件を起こしたときに被害者との間で早期に示談をまとめるメリットは以下4点です。

      • 早期の示談成立で被害申告を防いで刑事事件化自体を回避できる
      • 弁護士が選任されないと警察から被害者の連絡先を入手できない
      • 処罰感情が薄いことの証明になるので、軽い刑事処分を期待できる
      • 損害賠償請求訴訟等の民事的トラブルも同時に解決できる

      弁護士が示談交渉を代理することで感情的な被害者に対しても冷静な話し合いを実現できますし、泥棒事件の相場通りの示談金額で和解契約を締結できるでしょう。

      過去の泥棒事件について自首の是非を検討してくれる

      自首とは、「泥棒事件について自発的に捜査機関に犯人として名乗り出ること」です。自首によって「刑の任意的減軽」というメリットが得られます(刑法第42条第1項)。

      たとえば、示談条件について被害者の合意が得られない(被害申告を避けられない)状況において、被害者に先回りする形で自首をすれば、微罪処分や不起訴処分の可能性を高められるでしょう。

      ただし、捜査機関にバレるはずのない過去の泥棒事件についてわざわざ自首をして刑事訴追のリスクを抱える必要はありません。というのも、「自首による刑の減軽」は任意的なものなので、泥棒事件の実態次第では「自首したのに起訴された」というケースも考えられるからです。

      刑事弁護の実績豊富な弁護士に相談すれば、泥棒事件の詳細について聞き取りをしたうえで、経験則に基づいて自首が効果的か否かを判断してくれるでしょう。

      泥棒で逮捕・勾留されても接見機会を活用して励ましてくれる

      泥棒事件を起こして窃盗罪等で逮捕・勾留された場合、身柄拘束期間中は弁護人以外と面会できません

      弁護士は接見交通権をフル活用して厳しい取調べを受ける被疑者を励まし、時々刻々と変化する取調べに対する有益なアドバイスを提供してくれるでしょう。

      盗癖などの悩みを抱えている窃盗犯の社会更生を支援してくれる

      泥棒事件を起こしてしまう場合、盗癖(盗症・クレプトマニア)を抱えている可能性があります。このような精神疾患を改善しなければ、今回の泥棒事件について軽い刑事処分を獲得しても、常に再犯リスクを抱えた状態に陥ります。窃盗等の前科・前歴があるまま再犯に及ぶと、次回はさらに重い刑事処罰が科されてしまうでしょう。

      泥棒事件などに力を入れている弁護士に相談すれば、専門カウンセラーや療養機関などを紹介してくれます。泥棒事件を起こす根本原因から見直すことによって、本格的な社会更生の道を歩めるでしょう。

      泥棒の逮捕リスクに対処するなら示談成立が最優先!早期に弁護士へ相談しよう

      泥棒事件を起こしたときには弁護士に相談するのがおすすめです。専門家のサポートによって円滑な示談成立が期待できるので、有利な刑事処分獲得を目指せます。

      ただし、刑事手続きの各ステージには厳格な時間制限が設けられているので、悠長に対応していると「微罪処分のチャンス」「不起訴処分のチャンス」をみすみす放棄することになりかねません。

      したがって、弁護士の力を借りるのなら、できるだけ早いタイミングでの相談が不可欠です。過去の泥棒事件について警察から問い合わせが来る前に相談をして、将来的に起こり得る刑事訴追に対してできる限りの防御策を講じておくべきでしょう。

      刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

      刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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