強盗で逮捕される時の構成要件と法定刑とは?示談や刑事事件に強い弁護士に相談するメリットも解説

強盗で逮捕される時の構成要件と法定刑とは?示談や刑事事件に強い弁護士に相談するメリットも解説
強盗で逮捕される時の構成要件と法定刑とは?示談や刑事事件に強い弁護士に相談するメリットも解説

強盗で逮捕されると、逮捕・勾留による長期の身柄拘束付き取調べを強いられるだけではなく、長期の実刑判決を下される可能性が高いです。特に、強盗事件の被害額が高額だったり被害者等が負傷したりした事件では、重い刑事処分・判決内容は避けにくいでしょう。

ただし、重い刑事処罰が予定されている強盗事犯でも、被疑者・被告人側で尽くすべき防御活動に専念すれば、ある程度刑事処分の内容を軽減できる場合があります。たとえば、身柄拘束期間の短縮化不起訴処分の獲得執行猶予付き判決の獲得などに成功すれば、強盗事件に関する刑事責任を果たした後の社会復帰を目指しやすくなるはずです。

そこで今回は、強盗罪の容疑でご家族が逮捕された方や、過去の強盗事件を理由に後日逮捕されるのではないかと不安を抱える方のために、以下4点について分かりやすく解説します。

  1. 強盗で逮捕されるときの犯罪類型と法定刑
  2. 強盗の容疑で逮捕されるときの刑事手続きの流れ
  3. 強盗罪等で逮捕されたときに生じる可能性があるデメリット
  4. 強盗で逮捕されたとき、逮捕されるか不安なときに弁護士へ相談するメリット

強盗罪のような重大犯罪の嫌疑をかけられているとき、刑事手続きの初期段階から適切な防御活動を尽くせるかが今後の命運を左右します。できるだけ早いタイミングで刑事事件に強い弁護士に相談して、少しでも更生を目指しやすい環境作りを目指してもらいましょう。

目次

強盗が逮捕されるときの犯罪類型

強盗事件を起こしたとき、以下の犯罪類型のいずれかの嫌疑をかけられて逮捕されます。

  • 強盗罪
  • 強盗致傷罪
  • 強盗致死罪
  • 事後強盗罪
  • 昏睡強盗罪
  • 強盗未遂罪
  • 強盗予備罪
  • 強盗強制性交等罪及び同致死傷罪

強盗はいずれも非常に厳しい法定刑が定められている重大犯罪です。強盗罪で逮捕されるリスクを抱えているなら、少しでも有利な刑事処分や判決内容を獲得するために、すみやかに弁護士までご相談ください

強盗罪

強盗罪とは、「暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取したとき、または、暴行または脅迫を用いて財産上不法の利益を得たり他人にこれを得させたとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第236条第1項、第2項)。

たとえば、被害者が抵抗できないほどまで殴る蹴るの暴行を加えて財布を奪ったようなケースが挙げられます。

なお、財物を強取したときを「1項強盗」、財産上不法の利益を対象とするときを「2項強盗」と呼びます。

強盗罪の法定刑

強盗罪の法定刑は「5年以上の有期懲役刑」です(刑法第236条第1項)。

刑法上、有期懲役は「1年以上20年以下」とされているので(同法第12条第1項)、強盗罪で逮捕されて有罪になった場合には「5年以上20年以下」の範囲で判決が言い渡されることになります。

なお、後述の通り執行猶予付き判決を獲得するには「3年以下の懲役刑」という要件を満たす必要があるので(同法第25条第1項)、強盗罪で逮捕された場合に執行猶予付き判決獲得を目指すなら、刑事弁護に慣れた専門家に積極的に情状を主張立証してもらうなどの工夫が不可欠です。

強盗罪の構成要件

強盗罪の構成要件は以下5点です。

  1. 強盗罪の実行行為
  2. 強盗罪の結果
  3. 強盗罪の因果関係(実行行為と結果との間)
  4. 強盗罪の故意
  5. 強盗罪の不法領得の意思
強盗罪の「実行行為」とは

強盗罪の実行行為は「暴行または脅迫を手段とする強取です。

まず、強取の手段として用いられる「暴行または脅迫」は、「被害者の反抗を抑圧する程度のもの」でなければいけません(最判昭和24年2月8日)。「被害者の反抗を抑圧する程度に至らない暴行または脅迫」が手段として用いられたに過ぎないケースでは、恐喝罪(刑法第249条)の成否が問題になるにとどまります。

そして、暴行・脅迫が相手方の反抗を抑圧する程度に至っていたかどうかは、「社会通念上、『一般的に被害者の反抗を抑圧するに足る程度のものであるかどうか』という客観的基準によって判断され、具体的事案の被害者の主観を基準として反抗を抑圧する程度に至ったかを判断するわけではない」とするのが判例・実務です。客観的基準に基づいて暴行・脅迫の程度を判断する際には、「被害者側の事情・行為当時の状況・行為者側の事情」等が総合的に考慮されます。

たとえば、体格差がある小柄な被害者に対して何度も殴る蹴るの暴行を加えた場合ナイフや拳銃などの兇器を構えて「動くと殺すぞ」などの脅し文句を投げかけた場合通行人が所持するハンドバッグをひったくる目的で後方からバイクで接近して被害者をそのまま引きずった場合などでは、客観的基準に基づいて明らかに「相手方の反抗を抑圧する程度」の暴行・脅迫が用いられたと言えるでしょう。

次に、「強取」とは、「暴行・脅迫によって反抗を抑圧された被害者から財物を奪取すること」を意味します。たとえば、繰り返し暴行を受けて抵抗できなくなった被害者の意思に反して財物を奪う場合だけではなく、反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫によって抵抗できなくなった被害者自身が財物を差し出した場合、反抗を抑圧されて逃走した被害者が放置した財物を持ち帰った場合、反抗を抑圧された被害者が気付かない隙に財物を奪う場合など、幅広い場面で強盗罪の実行行為性が認定される可能性があります。

強盗罪の「結果」とは

強盗罪の結果は「財物の占有や財産上の利益の移転です。強盗罪は、窃盗罪・詐欺罪・恐喝罪と同じ「移転罪」に分類されるため、「占有の喪失」という法益侵害が違法性の根拠とされています。

そのため、強盗罪の客体である「財産・財産上の利益」は移転性を有するものでなければいけません。たとえば、情報・サービスは移転性が存在しないので、原則として強盗罪は成立しないと考えられます。ただし、飲食店で食事を食べた後の支払いの際に暴行・脅迫を用いて食い逃げをしたような事案のように、料金の支払いに対して提供される有償のサービスについては、「請求できるはずの料金を免脱された」という意味での財産上の損害が被害者側に生じており、「サービスを不正に取得した」という意味で加害者側は財産上の利益を得ていると評価できるので、2項強盗罪が成立すると言えるでしょう。

強盗罪の「因果関係」とは

強盗罪で逮捕されるには、暴行または脅迫→相手方の反抗を抑圧→財物等の移転」という一連の因果関係が必要です。

たとえば、暴行・脅迫が被害者の反抗抑圧に向けられていない場合反抗抑圧に向けられた暴行・脅迫が用いられたとしても相手方の反抗が抑圧されなかった場合など、因果関係の一部が断絶しているときには強盗既遂罪は成立しません。

また、財物を盗んだにその物の占有を確保するために暴行・脅迫が用いられた場合には、暴行・脅迫は財物奪取の手段として用いられたわけではないので、1項強盗罪ではなく、後述する事後強盗罪や2項強盗罪で処断されることになります(最決昭和61年11月18日)。

さらに、強盗以外の目的で暴行・脅迫を用いて相手方の反抗を抑圧した後に財物奪取の意思を生じて、反抗が抑圧された状態を悪用して財物を奪った場合、反抗抑圧状態に陥った相手方に対して「新たな暴行・脅迫」が用いられなければ強盗罪は成立しません。ただし、ここで必要とされる「新たな暴行・脅迫」とは、相手方の反抗を抑圧した者がすでに反抗抑圧状態に陥った者に対して行う暴行・脅迫なので、通常の暴行・脅迫に比べて程度が低いもので足り、反抗抑圧状態を維持・継続させるもので充分だとするのが裁判実務です(東京高判昭和48年3月26日、大阪高判平成元年3月3日)。

強盗罪の「故意」とは

強盗罪は故意犯なので、罪を犯す意思=故意」が必要です(刑法第38条第1項)。

故意とは、「犯罪事実の認識・予見」を意味します。強盗罪について言えば、「暴行または脅迫を用いて相手方の反抗を抑圧し、財物を強取すること」を認識・予見していれば故意が認定されるということです。

つまり、客観的には強盗罪に該当する犯罪事実が発生したとしても、行為者がそれの全部または一部を認識・予見していなければ、強盗既遂罪で処断されることはないということです。

ただし、行為者の主観は強盗罪でなかったとしても、客観的に強盗罪に該当する犯罪事実が発生していることだけを理由に「強盗罪」の容疑で逮捕される可能性はゼロではありません。このようなケースでは逮捕・勾留に実施される取調べへの対応方法や公判における法的主張に相当の工夫が必要なので、かならず刑事事件を専門に扱っている弁護士までご依頼ください

強盗罪の「不法領得の意思」とは

領得罪である強盗罪が成立するには、窃盗罪と同じように不法領得の意思」が必要とされています。

不法領得の意思とは、「権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従いこれを利用処分する意思」のことです(大判大正4年5月21日)。「他人の財物を奪って自分の好きに処分する意思」と分かりやすく言い換えることができるでしょう。

強盗致傷罪

強盗致傷罪とは、「強盗が人を負傷させたとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第240条前段)。

なお、強盗致傷罪についても未遂処罰があるとするのが法律上の規定ですが(同法第243条)、実務上、強盗致傷未遂罪の成否が問題になるケースはほとんど存在しません。

強盗致傷罪の法定刑

強盗致傷罪の法定刑は、「無期懲役または6年以上の懲役刑」と定められています。

「人の傷害」という結果が発生している点を踏まえて、強盗罪に比べて大幅に法定刑が引き上げられているのが特徴です。

強盗致傷罪で逮捕された場合に実刑判決を回避するのはかなり厳しいですが、情状酌量次第で執行猶予付き判決獲得の条件を満たすケースもゼロではないので、刑事事件や示談交渉の実績豊富な弁護士までご相談ください

強盗致傷罪の構成要件

強盗致傷罪の構成要件に関して争いが生じるポイント5つについて具体的に解説します。

第1に、強盗致傷罪の主体である「強盗」には、強盗既遂犯だけではなく、強盗未遂犯も含まれます(最判昭和23年6月12日)。また、後述の事後強盗犯人や昏睡強盗犯人も強盗致傷罪の主体に該当します(大判昭和6年7月8日)。

第2に、強盗致傷罪における「傷害」の程度については、傷害罪における「傷害」と同程度で良いとする判例と、傷害罪における「傷害」よりも限定するべきだとする裁判例で見解が分かれています。そもそも、強盗罪の実行行為である「暴行または脅迫」は「相手方の反抗を抑圧する程度」の激しい態様のものが想定されている以上、単純な強盗罪でも被害者にある程度の傷害結果が生じることは織り込み済みです。そのため、「軽度の傷害」ははじめから強盗罪に含まれているため、被害者側に生じた傷害の程度が深刻なものでなければ、「強盗致傷罪ではなく強盗罪で処断すべき」との反論が可能でしょう。

第3に、傷害の結果が発生する人は、財物等の所有者や強盗罪の被害者に限られません。

第4に、「人の負傷」という結果は、「強盗の手段である暴行・脅迫から生じた場合だけではなく、『強盗の機会』に生じたものが幅広く含まれる」とするのが判例です(大判昭和6年10月29日、最判昭和24年5月28日)。たとえば、強取行為を終えて逃走を図った際に追跡してきた被害者に暴力を振るって怪我をさせた場合、金品強奪目的で被害者宅に侵入した際に住人全員を縛り上げて怪我をさせた場合が具体例として挙げられます。

第5に、強盗致傷罪は、「傷害結果に対して過失がある場合」だけではなく、「傷害結果に対して故意がある場合」にも成立します。つまり、強盗致傷罪のなかには「強盗傷害罪」も含まれるということです。

強盗致死罪

強盗致死罪とは、「強盗が人を死亡させたとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第240条)。

強盗致死罪の法定刑

強盗致死罪の法定刑は、「死刑または無期懲役」です。強盗罪及び強盗致傷罪と比べて、「人の死亡」という重大な結果を生ぜしめた点が重く捉えられて、かなり厳しい法定刑が定められています。

強盗致死罪の場合には情状酌量をしても執行猶予付き判決獲得の条件を満たすことはありません。

したがって、強盗致死罪で逮捕された場合には、「死刑を回避すること」「できるだけ刑期を短縮すること」を目標に防御活動を展開する必要があります。服役期間次第で社会復帰の可能性は大幅に変わってくるので、刑事弁護に力を入れている専門家までご相談ください

強盗致死罪の構成要件

強盗致死罪の構成要件に関して問題が生じ得る6点について具体的に解説します。

第1に、強盗致傷罪と同じく、強盗致死罪の主体には、強盗既遂犯・強盗未遂犯・昏睡強盗犯・事後強盗犯が幅広く含まれます

第2に、強盗致傷罪と同じく、強盗致死罪が成立するにあたって問われる「死亡の結果」は強盗の被害者本人に限られるわけではありません。

第3に、強盗致傷罪と同じく、「人の死亡」という結果は「強盗の機会に生じたもの」と言える場合が幅広く含まれるとするのが判例実務です。

第4に、強盗致死罪には、「死亡結果に過失がある場合」だけではなく、「死亡結果に対する故意がある場合(強盗殺人罪)」も含まれます。つまり、強盗犯が被害者等を殺害する意図で犯行を成し遂げたとしても強盗致死罪のみが成立し、強盗致死罪と殺人罪の観念的競合という処理は行われないということです(大判大正11年12月22日)。

第5に、強盗致死罪は、「強盗犯が人を死亡させた場合」だけではなく、「人を殺害してから財物を奪取する場合」にも成立する点に注意が必要です。殺人罪と遺失物等横領罪で処断されるわけではありません(大判大正2年10月21日)。

第6に、強盗致傷罪が未遂罪を観念し得ないのとは異なり、「強盗が殺人の故意で犯行に及んだが死亡結果が発生しなかったとき」に強盗殺人未遂罪が成立します。

事後強盗罪

事後強盗罪とは、「窃盗犯人が、財物を得た後に取り戻されるのを防ぐため、逮捕を免れるため、証拠を隠滅するために、暴行または脅迫を用いたとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第238条)。

たとえば、空き巣に泥棒に入って金品を物色し終えたところに家主が帰宅し、揉み合いになって暴行に及んだ場合、事後強盗罪で逮捕されることになります。

事後強盗罪の法定刑

事後強盗罪の法定刑は、強盗罪と同じ「5年以上の有期懲役刑」です。

したがって、事後強盗罪で逮捕された場合に執行猶予付き判決獲得を目指すなら、被害者との示談成立は当然として、暴行・脅迫に至ってしまった突発的な経緯などの情状を丁寧に主張立証する必要があるでしょう。

なお、窃盗犯が所定の目的のもとで暴行・脅迫を用いた結果、被害者等を死傷させた場合には、事後強盗致死傷罪の容疑で逮捕されて、さらに厳しい法定刑が科されることになります。

事後強盗罪の構成要件

事後強盗罪は、「他人の財物を窃取した後に暴行・脅迫を用いる」という点が「暴行・脅迫を用いて他人の財物等を強取する」という強盗罪と類似するため、強盗犯として処断されるものです。

そのため、強盗罪との類似性を担保するために、事後強盗罪で逮捕されるには、以下5点の構成要件を満たす必要があると考えられています。

  1. 窃盗犯
  2. 財物を得た後に取り戻されるのを防ぐため、逮捕を免れるため、証拠を隠滅するための「暴行または脅迫」
  3. 暴行・脅迫が窃盗の犯行現場または窃盗の機会継続中に行われること

第1に、事後強盗罪の主体は「窃盗犯です。窃盗とは、「他人の占有する他人の財物を窃取したとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第235条)。たとえば、万引きや置き引き、ひったくり、下着泥棒などが挙げられます。

第2に、事後強盗罪における実行行為は「暴行または脅迫です。強盗罪と同じように、「相手方の反抗を抑圧する程度」のものでなければいけません(大判昭和19年2月8日)。また、暴行または脅迫の相手方は窃盗被害者だけではなく、犯行を目的して追跡してきた第三者や警察官も含まれます。

第3に、暴行または脅迫は、「財物の取り返しを防ぐ目的」「逮捕を免れる目的」「罪跡を隠滅する目的」で行われる必要があります。ただし、実際にその目的が達成されることまでは求められず、暴行または脅迫が行われるだけで足ります。

第4に、暴行または脅迫は、窃盗の犯行現場または機会継続中に行われなければいけません(最決平成14年2月14日)。具体的には、暴行・脅迫は、窃盗行為と時間的・場所的に接着した機会に行われ、被害者などによる財物の取り返しや犯人逮捕の可能性が存在する状況だったり、証人になる被害者などが身近に存在する状況においてなされる必要があるということです。たとえば、窃盗現場から数百メートル離れた時点で、窃盗とは無関係に実施された職務質問に対して暴行・脅迫をもって対抗したようなケースでは、機会継続中とは言えないでしょう(東京高判昭和27年6月26日)。

第5に、事後強盗罪の既遂・未遂は、窃盗罪が既遂か未遂かによって決定するのが判例実務です(最判昭和24年7月9日)。たとえば、相手方の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫が行われたとしても、窃盗自体が未遂にとどまっている場合には、事後強盗未遂罪が成立するに過ぎないので、刑の任意的減軽を主張しやすくなるでしょう。

昏睡強盗罪

昏睡強盗罪とは、「人を昏睡させて財物を強取したとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第239条)。

昏睡強盗罪の法定刑

昏睡強盗罪の法定刑も、強盗罪と同じく「5年以上の有期懲役刑」と定められています。

また、被害者等を死傷させた場合、昏睡強盗致死傷罪として重い刑罰が科される点に注意が必要です。

昏睡強盗罪の構成要件

昏睡強盗罪で逮捕されるには、「人を昏睡させて財物を強取すること」が必要です。

昏睡とは、「薬物などによって人の意識作用に一時的・継続的な障害を生じさせること」を意味します(東京高判昭和49年5月10日)。人の意識喪失までは要求されませんが、昏睡状態にある人の抗拒不能に乗じて財物を強取するだけでは足りません

人を昏睡させる手段は問われませんが、執拗な暴行を用いて人を昏睡状態に追い込んだ場合は昏睡強盗罪ではなく強盗罪の成立を認めるのが実務です。したがって、昏睡強盗罪の対象になるのは、「暴行によらずに昏睡状態を惹起した場合」に限られるでしょう。

強盗未遂罪

強盗罪は未遂犯も処罰対象です(刑法第243条)。

強盗未遂罪の法定刑

強盗未遂罪の法定刑は、「5年以上の有期懲役刑」です。未遂犯の法定刑は既遂犯と同様の範囲で扱われます。

ただし、未遂犯については、刑の任意的減軽を目指す余地が残されています(刑法第43条本文)。この意味では、適切な情状証拠を主張立証すれば、強盗既遂罪よりも執行猶予付き判決獲得の確率を高めやすいでしょう。

強盗未遂罪の構成要件

強盗未遂罪で逮捕されるのは、「強盗既遂の具体的・客観的危険が発生したとき」です。そして、強盗既遂の具体的・客観的危険性が発生したか否かは、個別具体的な事案の詳細や犯人の行為意思などが総合的に考慮されます。

たとえば、犯人が相手方の反抗を抑圧する程度の暴行または脅迫を行ったが財物強取に失敗したようなケースが挙げられます。

強盗予備罪

強盗罪は予備罪も処罰対象です(刑法第237条)。

強盗予備罪の法定刑

強盗予備罪の法定刑は、「2年以下の懲役刑」と定められています。

つまり、強盗既遂罪・強盗未遂罪とは違って、強盗予備罪はそもそも執行猶予付き判決の対象だということです。また、刑事手続きの序盤から適切な防御活動を展開しておけば不起訴処分獲得の難易度も高くはないので、できるだけ早期に刑事事件に強い弁護士へ相談することをおすすめします

強盗予備罪の構成要件

強盗予備罪は、「強盗の罪を犯す目的で、その予備をしたとき」に成立する犯罪類型です。

予備とは、「実行の着手に至る前段階(未遂の前段階)の準備行為等」を意味します。たとえば、強盗時の脅迫に使うためのナイフ等の兇器を購入する行為、強盗時の計画を作成するために被害者宅の地図を入手したり逃走経路を下見したりする行為などは、強盗予備罪の処罰対象になる可能性が高いです。

また、強盗予備罪が成立するには、「強盗の罪を犯す目的」が必要とされます。「強盗をするかもしれない」などの不明確な意思だけでは強盗予備罪は不成立です。

なお、個別事案の事情次第では、事後強盗罪でも予備罪に問われる可能性も否定できません(最決昭和54年11月19日)。たとえば、居直り強盗の未必的故意がある状態で兇器や金品運搬用の鞄などを準備した場合には、事後強盗予備罪として逮捕され得るでしょう。

強盗強制性交等罪及び同致死罪

強盗強制性交等罪とは、「強盗犯人が強制性交等に及んだときや、強制性交等罪の犯人が強盗に及んだとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第241条第1項)。強盗強制性交等罪の法定刑は、「無期または7年以上の懲役刑」と定められています。

強盗強制性交等致死罪とは、「強盗強制性交等罪に該当する行為によって人を死亡させたとき」に成立する加重類型です(同法第241条第3項)。強盗強制性交等致死罪の法定刑は、「死刑または無期懲役刑」です。

強盗強制性交等罪の既遂・未遂は、強制性交等罪の既遂・未遂によって決まる」とするのが判例実務です。また、本罪が成立するには、強制性交等が強盗行為の機会に行われる必要があります。さらに、強盗の着手後に強制性交等の意思が生じた場合も本罪で処断されます(最判昭和30年12月23日)。

なお、強盗行為及び強制性交等のいずれもが未遂に終わったときには、刑の任意的減軽の対象です(同法第241条第2項)。

【注意!】強盗罪と窃盗罪・恐喝罪との違い

強盗罪と近接する犯罪類型として窃盗罪・恐喝罪が挙げられます。

事後強盗罪の箇所で説明した通り、窃盗罪とは、「他人の財物を窃取したとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第235条)。他人の財物の占有を奪う点で強盗罪と同じですが、暴行・脅迫が手段として用いられていない点が異なります

恐喝罪とは、「他人を恐喝して財物や財産上の利益を交付させたとき」に成立する犯罪類型のことです(同法第249条)。恐喝罪の実行行為である「恐喝」とは、「暴行または脅迫によって被害者を畏怖させること」を意味し、恐喝罪における「暴行または脅迫」とは、「相手方の反抗を抑圧しない程度」のものとされます。つまり、強盗罪と恐喝罪はどちらも「暴行または脅迫」を手段とする点で共通していますが、程度に違いがあるということです。

窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」、恐喝罪の法定刑は「10年以下の懲役刑」です。

このように、窃盗罪及び恐喝罪は強盗罪と比べると軽い犯罪類型に分類されるので、個別事案の詳細次第ですが、強盗罪の容疑で逮捕されたときには、「強盗罪の構成要件を満たさない、本件は窃盗罪ないし恐喝罪で処断されるべき」との反論が有効になり得るでしょう。

強盗が逮捕されるときの刑事手続きの流れ

強盗で逮捕されるときの一般的な刑事手続きの流れは以下の通りです。

  1. 強盗の容疑で警察に逮捕される
  2. 強盗の容疑で逮捕された後は警察段階の取調べが実施される(48時間以内)
  3. 強盗事件が警察から検察官に送致される
  4. 検察官が強盗事件を公訴提起するか否か判断する
  5. 強盗事件について起訴処分が下されると公開の刑事裁判にかけられる

強盗の容疑で警察に逮捕される

強盗事件が発覚した場合、以下3つのパターンで警察から接触があります。

  1. 過去の強盗事件について後日逮捕される
  2. 強盗の現場で通報された場合には現行犯逮捕される
  3. 過去の強盗事件が警察にバレても任意の出頭要請をかけられるパターンもあり得る

強盗が後日逮捕されるパターン

過去の強盗行為が捜査機関に発覚した場合、警察に後日逮捕(通常逮捕)されるのが一般的です。被害届や告訴状が提出されたり、防犯カメラ映像等から身元特定されたりすると、後日警察官が逮捕状を持参して身柄確保にやってきます。

通常逮捕とは、「裁判官が発付する逮捕状に基づいて実施される身柄拘束処分」のことです(刑事訴訟法第199条第1項)。強盗罪の構成要件を満たすか、逮捕処分による身柄拘束の必要性(留置する必要性)が高いか、疎明資料が充分に揃っているか、収集した証拠の証明力は足りているか、などの諸般の事情が総合的に考慮されて、通常逮捕手続きに着手するかが判断されます(犯罪捜査規範第118条)。

各強盗事件が抱える個別事情次第ですが、警察が通常逮捕という捜査手法を選択するのは以下のようなケースです。

  • 強盗や窃盗などの前科・前歴がある
  • 住所不定・無職など、逃亡のおそれがある
  • SNSの闇バイトなど、組織的犯行の疑いがある
  • 強盗時の兇器や奪った財物など、証拠を隠滅するおそれがある
  • 強盗の被害額が高額だったり、被害者が負った傷が深刻
  • 強盗被害者の処罰感情が強く、示談も成立していない
  • 強盗事件に関する任意の出頭要請を拒絶していたり、任意取調べ中の供述内容が不明瞭

任意の出頭要請とは異なり、逮捕状に基づく後日逮捕はどのような事情があっても拒絶できません。そして、逮捕権が行使されると、後述するように長期間の身柄拘束付き取調べを強いられます。

したがって、過去の強盗事件を理由として逮捕されるリスクに晒されている場合には、「早期に被害者と示談交渉をスタートして強盗事件の刑事事件化自体を回避すること」「強盗罪の容疑で逮捕された場合にはできるだけ身柄拘束期間を短縮化すること」が防御活動の目標になると言えるでしょう。

強盗が現行犯逮捕されるパターン

強盗の犯行現場で通報されたり、強盗をして逃走中に警察に見つかったりした場合には、現行犯逮捕・準現行犯逮捕によって身柄を押さえられることもあります。

まず、現行犯逮捕とは、「現に罪を行い、または、現に罪を行い終わった者(現行犯人)に対する逮捕処分」のことです(刑事訴訟法第212条第1項)。通常逮捕とは異なり、客観的に見て強盗行為等に及んだことが明白な状況で逮捕権が行使されるので、現行犯逮捕は令状なしで誰でも行うことができます(同法第213条)。

次に、準現行犯逮捕とは、「強盗犯人として追呼されている者、強盗行為の証拠等を所持している者、衣服の汚れなど強盗をした顕著な証跡がある者、強盗犯と誰何されて逃走しようとする者が、強盗に及んでから時間が経っていないと明らかに認められるケースを対象とする逮捕処分」のことです(同法第212条第2項)。準現行犯逮捕も令状なしで誰でも行えます。

現行犯逮捕及び準現行犯逮捕が実施された場合、警察署への連行を回避することはできません。そのため、これらのケースでは逮捕・勾留後に発生する身柄拘束期間をできるだけ短縮化すること」「早期に示談交渉を進めて不起訴処分や執行猶予付き判決獲得を目指すこと」が防御活動の基本方針となります

強盗事件が警察に発覚してもかならず逮捕されるわけではない

前述のように、強盗のような重大犯罪が警察に発覚すると通常逮捕手続きに移行するのが一般的ですが、強盗事件の事情次第では逮捕手続きに移行せずに任意の範囲で捜査活動が進められる可能性もゼロではありません。

捜査機関が逮捕状を請求せずに任意ベースで捜査活動を進めるのは、強盗事件が以下のような特徴を備えている場合です。

  • 前科前歴がない
  • 住所や職業がはっきりして逃亡のおそれがない
  • 強盗関係の証拠物を隠滅するおそれがない
  • 強盗の被害額が少額、暴行・脅迫の程度が比較的軽微、被害者が重大な怪我を負ったわけではない
  • 被害者と示談が成立している、被害者の処罰感情が薄い
  • 闇バイトや反社会的組織などとの関わりがない
  • 事後強盗罪だけではなく窃盗罪に該当する可能性も否定できない
  • 捜査機関からの出頭要請を拒んでいない、任意の取調べで否認せずに犯行を素直に自供している

強盗事件について警察が任意ベースのでの捜査活動を行う場合(通常逮捕手続きに着手しない場合)、強盗犯に対して任意の出頭要請がかけられて、事情聴取が行われるのが一般的です(刑事訴訟法第197条第1項本文、同法第198条第1項本文)。逮捕状に基づく強制的な身柄拘束処分ではないので、出頭要請を拒絶しても良いですし、任意の事情聴取を好きなタイミングで切り上げて帰宅することも許されます。

ただし、強盗事件に関する出頭要請・事情聴取に対して誠実に対応しない場合には、「逃亡や証拠隠滅のおそれが高い」と判断されてその時点で逮捕状が請求され、途中から通常逮捕手続きに移行する可能性も否定できません

したがって、警察から呼び出しがかかったり任意の事情聴取が行われたりする場合には、「任意だから応じなくても大丈夫」という高慢な態度で向き合うのではなく、「身柄拘束なしで捜査手続きを進めるチャンスを無駄にしない」という謙虚な姿勢で可能な限り捜査機関の求めには応じるべきでしょう。なお、任意の出頭要請・事情聴取に応じる際には、事前に弁護士に相談をしたうえで、事情聴取への対応方法・供述内容についてアドバイスをもらっておくことをおすすめします

強盗の容疑で逮捕されると警察で48時間の取調べが実施される

強盗罪等の容疑で逮捕された場合、警察署で身柄拘束付きの取調べが実施されます(これに対して、任意で出頭要請をかけられて事情聴取に応じる場合には、警察署で取調べが実施されるものの、身柄拘束はされずに好きなタイミングで帰宅することが可能です)。

警察段階で実施される取調べには「48時間以内」という制限時間が設けられています(刑事訴訟法第203条第1項)。この48時間以内は原則として弁護士以外との第三者との面会や外部への電話連絡は許されません。また、取調べ以外の時間は拘置所・留置所に収監されます。

なお、窃盗罪のような比較的軽微な犯罪類型の場合には「微罪処分」によって警察段階で刑事手続きが終結する可能性がありますが(刑事訴訟法第246条但書、犯罪捜査規範第198条)、強盗事件のような重大犯罪は微罪処分の対象にはなりません。そのため、警察段階で48時間以内の取調べが実施された後は、身柄・証拠物が送検されて、検察官の判断を仰ぐことになります。

強盗について警察で取調べを受けた後は検察官に送致される

強盗の容疑で逮捕されて警察段階の取調べを終えると、強盗事件が検察官に送致されます。強盗事件は微罪処分の対象外なので、強盗事件の処遇は検察官及び裁判所が決定権を握っています。

検察段階では、「24時間以内」を限度に取調べが実施されるのが原則です(刑事訴訟法第205条第1項)。「警察段階48時間と検察段階24時間の合計72時間以内」で得られた物証や供述内容を前提として、強盗事件を刑事裁判にかけるかが判断されます。

ただし、強盗事件の経過が複雑で慎重に取調べをする必要があるケース、被疑者が強盗事件について黙秘を貫いているケース、強盗事件に関して共犯者が見え隠れするケースなどでは、72時間以内の取調べだけでは真相究明に不十分な場合も少なくありません。

このように、捜査機関がやむを得ない事情によって原則的な「72時間ルール」を遵守できない場合には、検察官による勾留請求が認められています(同法第206条第1項)。勾留請求が認められた場合、被疑者の身柄拘束期間は10日間~20日間の範囲で延長されます(同法第208条各項)。

以上を踏まえると、強盗事件を起こして逮捕された場合、最短72時間、勾留請求された場合には最長23日間社会生活から断絶される期間が生じるということです。

身柄拘束期間が長期化するほど社会生活への悪影響は大きくなるので、強盗の容疑で逮捕された場合には、「身柄拘束期間を可能な限り短縮化すること」「検察官による勾留請求を回避すること」を防御活動の目標とするべきでしょう。

強盗について公訴提起するか否かを検察官が判断する

逮捕状・勾留状の期限が到来する前に、検察官が強盗事件について起訴・不起訴を決定します

起訴処分とは、「強盗事件を刑事裁判にかける旨の訴訟行為」のことです。これに対して、不起訴処分とは、「強盗事件を刑事裁判にかけずに、検察限りで刑事手続きを終結させる旨の意思表示」のことを意味します。

日本の刑事裁判は有罪率が99%以上に匹敵するのが実情です。つまり、検察官が強盗事件に対して起訴処分を下して刑事裁判にかけられると、ほぼ有罪判決が下されるということです。

したがって、「強盗事件に関して実刑判決や前科を避けたい」と希望するなら、検察官が公訴提起の判断をするまでに示談成立を実現するなどして不起訴処分を獲得する必要があるでしょう。

検察官が不起訴処分を下すケースは以下3つに分類されます。

  1. 嫌疑なし:強盗事件を起こした疑いがないケース
  2. 嫌疑不十分:強盗事件について有罪判決を獲得できるだけの充分な証拠が揃っていないケース
  3. 起訴猶予:強盗事件を起こしたことは間違いないが、経緯・反省の態度・被害者の処罰感情などを総合的に考慮した結果、不起訴処分に付するのが相当なケース

つまり、「強盗事件の証拠が揃うとかならず刑事裁判にかけられて有罪になる」というのは間違いだというです。捜査段階で充分に防御活動を尽くして取調べに対して適切な供述方針をもって臨めば、起訴猶予処分獲得による無罪放免も可能です。ただし、強盗罪等を理由に逮捕されてしまうと、検察官の公訴提起判断までに防御活動に専念できる期間は長くても23日間しか与えられません。刑事弁護や示談交渉の実績豊富な専門家の助力のもと、できるだけ早いタイミングでの示談実現を目指してもらうべきでしょう

強盗事件が刑事裁判にかけられる

検察官が起訴処分を下すと、強盗事件が刑事裁判にかけられます

刑事裁判が開廷されるタイミングは起訴処分の1カ月~2カ月後が目安です。公訴事実に争いがなければ第1回口頭弁論期日で結審しますが、強盗罪の構成要件該当性や公訴事実自体を争うような否認事件では複数の口頭弁論期日を経て弁論手続き・証拠調べ手続きが行われます。

強盗罪等の容疑で逮捕・起訴された場合には、実刑判決が下される可能性が高いです。実刑判決が下されると刑期を満了するまで服役を強いられて社会生活への復帰が困難になるので、刑事事件の公判実績豊富な弁護士のサポートを得ながら執行猶予付き判決獲得を目指して尽力してもらいましょう

窃盗罪や遺失物等横領罪などの比較的軽微な犯罪類型で逮捕・起訴された場合において罰金刑を求刑される状況なら「略式手続き(略式裁判・略式命令・略式起訴)」という簡易手続きで刑事事件を終結できます。ただし、強盗罪等で逮捕・起訴された場合には略式手続きを利用することはできません。なぜなら、強盗罪等の法定刑には罰金刑が定められていないからです。したがって、強盗罪で逮捕された場合には、将来的な起訴・公判に向けて刑事事件実績豊富な弁護士を選任するべきでしょう。

強盗の容疑で逮捕されたときに生じるデメリット5つ

強盗事件を起こして逮捕されたときや、過去の強盗事件が原因で逮捕されるか不安を抱えているときには、すみやかに弁護士に相談することを強くおすすめします。

なぜなら、捜査機関主導で刑事手続きが不利な形で進められてしまうと、以下5点のデメリットが発生するからです。

  1. 強盗罪で逮捕されると長期間身柄拘束されて社会生活に支障が生じる
  2. 強盗罪で逮捕されたことが会社にバレると懲戒処分を下される可能性が高い
  3. 強盗罪で逮捕されたことが学校にバレると退学処分等のリスクに晒される
  4. 強盗事件は重大犯罪なので報道される可能性が高く、実名報道によって社会的制裁を受ける
  5. 強盗罪で逮捕・起訴されて前科がつくと今後の社会生活にさまざまな困難が生じる

強盗罪で逮捕されると長期間身柄拘束されるリスクに晒される

上述の通り強盗罪で逮捕・勾留されると、最大23日間身柄拘束期間が継続します。また、起訴後の保釈請求が認められなければ、刑事裁判が終了するまで社会生活への復帰が許されません(実刑判決が確定すると、実生活に復帰するタイミングがないまま刑務所に収監されます)。

数週間~数カ月に及ぶ身柄拘束生活は心身に過大なストレスを与えるものですし、会社や学校にバレる確率が高まります。その結果、これまで積み上げたキャリア等が根本から崩れ去って社会生活への復帰が困難になるでしょう。

強盗で逮捕されたことが会社にバレると懲戒処分の対象になる

強盗罪の容疑で逮捕・勾留されると現在の勤務先に刑事事件を起こしたことがバレる可能性が高いです。なぜなら、逮捕・勾留されると自分の口で欠勤の旨を連絡することも許されませんし、数日~数週間にわたって無断欠勤状態が継続してしまうからです。

そして、強盗事件で逮捕・有罪になった場合には、各社が定める就業規則の内容に従って何かしらの懲戒処分が下されます

一般的に、懲戒処分は「戒告・譴責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇」に大別されますが、強盗事件のような重大犯罪に及んだ場合には、懲戒解雇事由に相当すると判断されても仕方ないでしょう。

強盗で逮捕されたことが学校にバレると退学処分等の対象になる

学生が強盗事件に関与した場合、所属している学校にバレずに刑事事件を終結させるのは難しいのが実情です。たとえば、数日~数週間にわたって欠席が続くと学校が何かしらの不信感を抱くでしょうし、交友関係等を捜査する目的で学校に対して連絡がいくこともあるからです。

そして、強盗事件への関与が学校にバレた場合には、学則・校則の規定にしたがって何かしらの処分が下される可能性が高いです。学生に対する処分は普段の生活態度や更生可能性を含めて判断されるのが一般的ですが、強盗事件のような悪質な刑事事件を起こした場合には、注意や譴責処分などの軽い処分ではなく、停学処分・退学処分などの重い処分を覚悟しなければいけません

強盗で逮捕されるとニュース報道される可能性が高い

強盗事件は社会的に与える影響が大きい深刻な事案なので、ニュース番組やネットニュースで実名報道される可能性が高いです。特に、近年では闇バイト等で強盗事件に関与するケースが頻発しているため、社会的に注目される傾向が強まっています。

一度でも実名報道されてしまうと、強盗事件に関与した情報が半永久的にWeb上に残ってしまいます。現段階で社会的制裁を受けるだけではなく、今後の社会生活にもさまざまな場面で支障が生じかねないでしょう。

強盗で逮捕されて前科がつくと社会復帰が困難になる

強盗事件で逮捕・起訴されたのに入念な防御活動を展開しなければ有罪判決が下されて前科がつく可能性が高いです。

前科とは「有罪判決を受けた経歴」のことです。実刑判決だけではなく、執行猶予猶予付き判決が確定した場合にも、前科は残ります。

そして、前科者になると、今後の社会生活に以下のような悪影響が生じます。

  • 前科情報は履歴書の賞罰欄に記載しなければいけないので、就職活動・転職活動が困難になる
  • 実刑判決・執行猶予付き判決のいずれであっても、前科がつくだけで就業制限を受ける職種・資格がある
  • 強盗罪で前科がついたことを理由にパスポート・ビザ発給が制限されることがあるので海外渡航できなくなる
  • 逮捕歴や前科は「法定離婚事由」に該当するので、配偶者から離婚を求められると拒絶できない(慰謝料も発生する)
  • 前科者が再犯に及ぶと刑事処分や判決内容が重くなる可能性が高い
前科がつくことでさまざまな悪影響が生じるのは事実ですが、「前科によるデメリット」と噂されるもののなかには間違った情報も少なくありません。たとえば、「前科がつくと住宅ローンを組めない」「前科があると賃貸物件を追い出される」「前科は住民票や戸籍に掲載される」というのは嘘です。前科情報は基本的に無関係の第三者にバレることはないので、各人の状況次第では前科による支障を感じることなく社会生活に復帰できる可能性もゼロではないでしょう。

強盗で逮捕されたときに弁護士へ相談するメリット4つ

「過去の強盗事件が捜査機関に発覚して逮捕されるのではないか」と不安を抱えているときや、ご家族が強盗罪で逮捕されてしまったときには、できるだけ早いタイミングで弁護士の力を頼るのがおすすめです。

なぜなら、強盗罪などの重大犯罪に関する刑事弁護に強い専門家に相談すれば、以下4点のメリットが得られるからです。

  1. 強盗事件の被害者との間で早期に示談交渉を開始してくれる
  2. 強盗罪で逮捕されても身柄拘束期間短縮化を目指して尽力してくれる
  3. 強盗罪で起訴されても執行猶予付き判決獲得を目指して尽力してくれる
  4. 過去の強盗事件が捜査機関に発覚する前に自首する妥当性を検討してくれる

強盗被害者との間で早期に示談交渉をスタートしてくれる

弁護士は依頼を受けてすぐに強盗被害者との間で示談交渉をスタートします。

示談とは、「犯人と被害者が直接話し合って強盗事件の解決策について合意を形成すること」です。たとえば、一定の示談金(被害弁償・慰謝料)を支払う代わりに「被害届を出さないこと」「被害届を取り下げること」「処罰感情がないと捜査機関や裁判所に伝えること」が条件にされます。

つまり、強盗被害者が警察に被害届・告訴状を提出する前に示談成立を実現できれば、強盗事件の刑事事件化自体を回避できるということです。また、仮に示談成立が被害届や告訴状が提出された後になっても、民事的解決が済んでいることを理由に不起訴処分や執行猶予付き判決を獲得しやすくなります

ただし、強盗事件のような重大犯罪の場合、怒りや恐怖心を抱く被害者との間で示談を成立させるのは簡単ではありません。

したがって、弁護士なら誰でも良いというわけではなく、刑事事件や示談交渉の実績豊富な弁護士を選任するようにしましょう。

強盗罪で逮捕されても身柄拘束期間短縮化を目指して尽力してくれる

刑事事件に強い弁護士に依頼すれば、身柄拘束期間短縮化を目指して尽力してくれます。

そもそも、逮捕・勾留処分が行われるのは「留置の必要性がある」と捜査機関が判断するからです。つまり、逃亡や証拠隠滅のおそれがなく、取調べにおいて素直に供述をすれば、逮捕・勾留の根拠が失われるということです。

そのためには、時々刻々と推移する取調べに対してどのような供述をするかがポイントになります。弁護士は接見交通権をフル活用して適切な供述方針を立ててくれるでしょう。

強盗罪で起訴されても執行猶予付き判決獲得を目指して尽力してくれる

強盗罪で逮捕・起訴されても弁護士は執行猶予付き判決獲得を目指して尽力してくれます。特に、強盗罪で逮捕・起訴された場合には実刑判決が目前に迫っている状態なので、執行猶予が付くかが強盗犯人の命運を左右すると言っても過言ではないでしょう。

執行猶予付き判決の対象になるには、「3年以下の懲役刑の言い渡しを受けること」が大前提です(刑法第25条第1項)。強盗罪の法定刑は「5年以上の有期懲役刑」なので、自首・示談等の情状を活用して減軽を得る必要があります

執行猶予付き判決の獲得実績豊富な弁護士なら裁判官の心証を良くする情状を効果的に展開してくれるでしょう。

強盗事件について警察から連絡がくる前に自首するべきか判断してくれる

強盗事件が捜査機関に発覚していない段階なら「自首」も効果的です。

なぜなら、強盗犯人自ら事件を起こしたことを名乗り出た態度を好意的に受け取ってもらえる、刑事処分や判決内容の減軽を期待できるからです(刑法第42条第1項)。

特に、強盗罪で逮捕された場合には、不起訴処分や執行猶予付き判決獲得がかなり重要な分水嶺になります。自首による減軽があるか否かで処分内容が大幅に変わってくるので、弁護士に相談のうえ、自首をするタイミングを正確に判断してもらいましょう

強盗で逮捕されるか不安なときには弁護士へ相談しよう!軽い刑事処分獲得には早期の対策が不可欠

強盗事件について刑事訴追のリスクを抱えているときには弁護士への相談が不可欠です。なぜなら、強盗事件は重大犯罪なので、警察にバレた途端かなり厳しい追及が待っているからです。

示談交渉のタイミング次第では刑事事件化自体を回避できますし、実刑判決を回避するには示談交渉を避けて通れません。強盗被害者の心理と捜査機関の活動内容に精通した弁護士の助力を得て、社会復帰しやすい環境整備を目指してもらいましょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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