下着泥棒で逮捕されたときは早期の示談交渉が不可欠!弁護士に相談するメリットと立件後に何をすべきか解説

下着泥棒で逮捕されたときは早期の示談交渉が不可欠!弁護士に相談するメリットと立件後に何をすべきか解説
下着泥棒で逮捕されたときは早期の示談交渉が不可欠!弁護士に相談するメリットと立件後に何をすべきか解説

下着泥棒が逮捕されるのは、窃盗罪建造物等侵入罪に該当するからです。たとえば、コインランドリーにある下着を置き引きするケースや、被害女性の自宅ベランダに干してある下着を盗むようなケースが代表例として挙げられます。また、下着泥棒の現場で被害者と鉢合わせて揉み合いになるなどした場合には、事後強盗罪という重い犯罪の容疑で逮捕される危険性に晒されます。

そして、「下着泥棒ぐらいで逮捕されたり重い処罰が下されたりすることはないだろう」と油断してはいけません。なぜなら、仮に窃盗罪で逮捕されたとしても、数日~数週間に及ぶ身柄拘束付き取調べを強制されるだけでなく、捜査過程で多数の余罪が発覚すると実刑判決が下される可能性も否定できないからです。

そこで今回は、家族が下着泥棒で現行犯逮捕されてしまった方や、過去の下着泥棒が原因で後日逮捕されるのではないかと不安を抱えている方のために、以下3点について分かりやすく解説します。

  1. 下着泥棒が逮捕されるときの犯罪類型と法定刑
  2. 下着泥棒が逮捕されるときの刑事手続きの流れ
  3. 下着泥棒をしてしまったときに弁護士へ相談するメリット

性犯罪厳罰化の流れが強まっていること及び各所に防犯カメラ等が設置されている現状を踏まえると、過去の下着泥棒が今になって刑事事件化する可能性は高いと考えられます。

警察からの接触の有無にかかわらず、現段階で刑事事件に強い弁護士へ相談すれば、幅広い選択肢から適切な防御活動を選択してくれるので、刑事手続きを有利に進めることができるでしょう。

目次

下着泥棒で逮捕されるときに問われる罪

下着泥棒は、以下の犯罪類型の容疑で逮捕されることが多いです。

  • 窃盗罪
  • 住居侵入罪(建造物等侵入罪)
  • 事後強盗罪

ここからは、各犯罪類型の構成要件や法定刑、どのようなシチュエーションの下着泥棒が該当するのかについて解説します。

窃盗罪

一般的に、下着泥棒が逮捕されるときには「窃盗罪」の容疑をかけられます。

窃盗罪の構成要件

窃盗罪は「人の財物を窃取したとき」に成立する犯罪類型です(刑法第235条)。

下着泥棒が窃盗罪で逮捕されるには、以下4つの構成要件を満たさなければいけません。

  1. 他人の財物
  2. 窃取
  3. 故意
  4. 不法領得の意思

第1に、窃盗罪の客体は「他人の財物です。他人の財物とは「空間の一部を占める有形的存在をもつ有形物(固体・液体・気体)であり、財産的価値を有するもの」を意味します。他人の所有する下着に財物性が認められるのは明らかです。

第2に、窃盗罪の実行行為は「窃取です。窃取とは「他人が占有する財物を、占有者の意思に反して自己または第三者の占有に移転させる行為」と解釈されています(最決昭和61年7月18日最決平成元年7月7日)。たとえば、洗濯ばさみを外してベランダに干してある下着を掴み取ってポケットに入れて持ち去った場合には、所有者から下着泥棒に下着の占有が移転しています。

第3に、主観的構成要件として「故意が必要です。窃盗罪は故意犯なので、下着泥棒が窃盗罪で逮捕されるには、「他人の財物を窃取すること」に対する認識・認容が求められます。下着泥棒のケースで故意の有無が争点になる可能性は極めて低いでしょう。

第4に、刑法典の条文には記載されていませんが、窃盗罪が成立するには、故意とは別の主観的構成要件として「不法領得の意思」が必要と解釈されています。不法領得の意思とは「権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法にしたがって利用・処分する意思(権利者排除意思と利用処分意思」のことです(最判昭和26年7月13日)。たとえば、「自己の性欲を満たす目的」「転売する目的」は下着の一般的な利用方法とは言えないとも思えますが、これを否定すると窃盗罪に問えなくなってしまうので、下着泥棒のケースではかなり幅広い使用目的が「不法領得の意思(利用処分意思)」に含まれるとするのが実務的運用です。

なお、「不法領得の意思」との関係で論点になることが多いのが、いわゆる「一時使用目的(使用窃盗)」の問題です。具体的には、「『財物の占有を奪ったのは間違いないが、後で返却するつもりだった』という場合には「権利者排除意思」が存在しないので、窃盗罪は成立せず不可罰と取り扱われる」という問題を指します。ただし、「一時使用目的で財物を持ち去ったかどうか」というのは犯人の供述だけで立証されるわけではなく、財物の性質や持ち去った後の経過などの諸般の事情を総合的に考慮して判断される点に注意が必要です。したがって、性犯罪の一環として行われる下着泥棒事案において、「後で下着を返却するつもりだった」という反論は採用されにくく、基本的には不法領得の意思(権利者排除意思)が認定されることになります。

窃盗罪の法定刑

窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」です(刑法第235条)。

下着泥棒をした人のなかには「窃盗程度で警察は動かない」「下着泥棒で逮捕されても怒られる程度で素直に謝れば許してもらえるはず」というように、下着泥棒や窃盗罪を軽視している人もいるはずです。

しかし、窃盗罪は罰金刑だけではなく「10年以下の懲役刑」も法定刑に掲げられている点に注意する必要があります。なぜなら、犯行態様や被害総額、被害者の処罰感情の強さや更生見込み次第では、初犯でもいきなり実刑判決が言い渡されて刑務所に収監される危険性が存在するからです。

また、下着泥棒で逮捕された場合、家宅捜索で押収された証拠物や他の下着泥棒事件との手口の類似性などから、余罪が発覚するケースも少なくありません。余罪が発覚すると下着泥棒事件ごとに窃盗罪で逮捕・有罪になり、本罪・余罪が「併合罪」として扱われて「15年以下の懲役刑」まで法定刑が引き上げられます(刑法第45条、同法第47条本文)。

さらに、実刑判決に対して執行猶予が付されるには「3年以下の懲役刑・禁錮刑・50万円以下の罰金の言渡しを受けたとき」という要件を満たさなければいけないので、「10年以下の懲役刑」が法定刑である窃盗罪で執行猶予付き判決を獲得するには、情状酌量の要素を効果的に主張・立証する必要もあるでしょう(刑法第25条第1項柱書)。

以上を踏まえると、比較的軽微な犯罪類型に位置付けられることが多い窃盗罪ですが、法定刑は決して軽いものではないということが分かります。厳しい刑事処罰を免れるには刑事手続きの初期段階から防御活動を尽くさなければいけないので、かならず下着泥棒事案や示談交渉の実績豊富な私選弁護人へお問い合わせください

過去に下着泥棒などの窃盗で実刑判決を言い渡された前科がある人が再犯に及んで逮捕された場合、「常習累犯窃盗罪」の容疑で逮捕されるリスクが生じます。常習累犯窃盗罪とは、刑法典に定められている窃盗罪の加重類型のことで、「過去10年以内に『窃盗既遂罪』『窃盗未遂罪』『窃盗罪と他罪との併合罪』で6カ月以上の懲役刑の執行を3回以上受けて刑務所に収監された経歴がある者が、窃盗既遂罪・窃盗未遂罪に該当する泥棒行為に及んだとき」に成立し、法定刑が「3年以上の有期懲役刑」まで引き上げられている点が特徴的です(昭和5年法律第9号(盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律))。有罪判決を受けても下着泥棒をやめることができない場合には盗癖等の精神疾患を抱えている可能性が高いので、弁護士に執行猶予付き判決獲得へ向けて尽力してもらうと同時に、治療・療養のための専門機関を紹介してもらいましょう

下着泥棒に失敗しても窃盗未遂罪で逮捕される

下着泥棒に失敗しても罪に問われないわけではありません。

「窃盗罪の『実行の着手』があったとき」には、窃盗未遂罪の容疑で逮捕されます(刑法第243条、同法第235条)。

実行の着手とは「既遂犯の結果発生の具体的・客観的危険が惹起されたこと」と理解されています。そして、既遂犯の結果発生の具体的・客観的危険が惹起されたタイミングは事案の個別事情を総合的に考慮するのが実務的運用です。

たとえば、夜中コインランドリーに置き忘れた下着があるか物色する目的で入店して実際に下着を発見するに至ったが、窃取しようと近付いたタイミングで他の利用客がやってきて泥棒を諦めたようなケースでは、実行の着手があったと見て窃盗未遂罪で逮捕される可能性もゼロではありません。また、ベランダに干してある下着に手をかけた状況で通行人に目撃されて逃走を図ったケースでも、実行の着手は認められるでしょう。

窃盗未遂罪で逮捕された場合、窃盗既遂犯と同じ「10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」の範囲で量刑が決められます。ただし、現行犯逮捕されたり目撃者がいたために逃走したりして下着泥棒に失敗したような「障害未遂」のケースでは「刑の任意的減軽、下着泥棒をしようと思ったが自分の意思で止めた「中止未遂」のケースでは「刑の必要的減免というメリットを得られます(刑法第43条)。任意的減軽・必要的減免の効果を手にするにはそれぞれ情状酌量に値する事情を主張したり中止に至った経緯を丁寧に立証する必要があるので、かならず刑事事件を専門に扱っている弁護士にご依頼ください

下着泥棒が遺失物等横領罪で逮捕されるのは稀

一般論として、置き引きや自転車泥棒などの事件では、窃盗罪と遺失物等横領罪(占有離脱物横領罪)のどちらが成立するのかが問題とされることが多いです。

なぜなら、窃盗罪の法定刑が「10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」であるのに比べて、遺失物等横領罪の法定刑は「1年以下の懲役刑または10万円以下の罰金刑・科料」とかなり軽い刑罰で済むので、窃盗罪の容疑で逮捕されたとしても「本件は窃盗罪ではなく遺失物等横領罪が適用される事案である」という法的主張が有効な防御方法になることがあるからです。

ただし、下着泥棒事件について遺失物等横領罪の成否が問題になるケースは極めて限定的だと考えられます。なぜなら、ベランダに干してある下着やコインランドリーに置き忘れた下着など、下着泥棒の客体である「下着」は常に誰かの占有下にあるからです。つまり、どのようなシチュエーションで行われる下着泥棒でも、基本的には「被害者や店舗管理者の占有」を奪っている状態が発生するので、遺失物等横領罪の成否が問題になることはありません

下着泥棒について遺失物等横領罪の成否が問題となり得る具体例を挙げるなら、「コインランドリーの利用客が洗濯済みの衣服を持ち帰ろうとしたが、店舗の外に出たところで下着を落としてしまい、それに気付かないまま帰宅してしまった。公道上に落とされたままの下着を発見した犯人がそれを手に取って持ち去った」といったケースが考えられます。もちろん、現実的にあり得ないことではないので、遺失物等横領罪の成否について検討に値する事案であるかどうかを弁護士に確認してみる価値はあるでしょう。

住居侵入罪(建造物等侵入罪)

下着泥棒は「住居侵入罪(建造物等侵入罪)」の容疑で逮捕される可能性もあります。

住居侵入罪(建造物等侵入罪)の構成要件

住居侵入罪(建造物等侵入罪)は「正当な理由がないのに、人の住居や人の看守する邸宅・建造物・艦船に侵入したとき」に成立する犯罪類型です(刑法第130条前段)。建造物等侵入罪は未遂犯も処罰対象になります(同法第132条)。

建造物等侵入罪の構成要件は以下3点です。

  1. 正当な理由がない
  2. 人の住居や人の看守する邸宅・建造物・艦船
  3. 侵入

第1に、建造物等侵入罪が成立するには、人の住居等への侵入に「正当な理由がない」場合に限られます。たとえば、下着泥棒のような違法な目的での立ち入り行為は明らかに正当な理由がないと言えます。

第2に、建造物等侵入罪の客体は「人の住居や人の看守する邸宅・建造物・艦船です。たとえば、下着の所有者の自宅、コインランドリーなどは、問題なく建造物等侵入罪の客体になります。また、住宅や建造物の囲繞地も本罪の客体に含まれるとするのが判例実務なので、被害者宅の庭や門扉、コインランドリーの駐車場、マンションの共用スペースなどに侵入した時点で、本罪は成立すると考えられます(最判昭和51年3月4日)。

第3に、建造物等侵入罪の実行行為は「侵入です。侵入とは「管理権者の意思(推定的意思を含む)に反した建造物等への立ち入り行為」を指します(最判昭和58年4月8日)。たとえば、下着泥棒のような違法な目的をもって訪問してくる人物に対して、住居やコインランドリーの管理権者が立ち入りを許可するわけがないので、実行行為性が認定されるのは明白です。

住居侵入罪(建造物等侵入罪)の法定刑

住居侵入罪(建造物等侵入罪)の法定刑は「3年以下の懲役刑または10万円以下の罰金」です(刑法第130条)。

執行猶予付き判決の要件は「3年以下の懲役刑・禁錮刑・50万円以下の罰金の言渡しを受けたとき」なので、住居侵入罪等で逮捕・起訴されても執行猶予が付される可能性が高いですが、適切な防御活動を尽くさなければ実刑判決も否定できない点に注意しなければいけません。

なお、窃盗罪及び窃盗未遂罪と住居侵入罪等は「牽連犯」の関係に立ち、科刑上一罪として処理されるため(同法第54条第1項)、軽い法定刑が定められている住居侵入罪等についてわざわざ逮捕手続きが行われるケースは極めて少ないです(仮に窃盗罪と住居侵入罪の両方で逮捕・起訴したとしても、最終的には、窃盗罪の法定刑の範囲内で判決内容が言い渡されて、住居侵入罪の法定刑は一切影響を与えないからです)。

事後強盗罪

下着泥棒事件を起こしたときの状況次第では、事後強盗罪で逮捕される可能性も生じます。

事後強盗罪の構成要件

事後強盗罪は「窃盗犯が、財物を取り返されることを防ぐ目的・逮捕を免れる目的・罪跡を隠滅する目的で暴行または脅迫をしたとき」に成立する犯罪類型です(刑法第238条)。

たとえば、被害者宅のベランダに侵入して洗濯中の下着を盗んだところで帰宅した家主と鉢合わせし、下着を取り返そうと向かってきた被害者に対して暴力を振るった場合には、「窃盗罪と暴行罪・傷害罪」ではなく、「事後強盗罪」として逮捕されることになります。

このように、空き巣のような軽い気持ちで下着泥棒に及んだとしても、犯行時の状況次第では強盗犯として厳しい処罰が科される可能性も否定できません。

特に、過去に犯した下着泥棒について後日逮捕されるのではないかと不安を抱えている場合や、逃走時に被害者などと諍いが生じた記憶がある場合には、事後強盗罪で立件されるリスクも想定したうえで、現段階で示談交渉等に踏み出す必要がありますできるだけ早いタイミングで弁護士に相談のうえ、自首や示談交渉を含めて今後の防御方針を明確化してもらいましょう。

事後強盗罪の法定刑

事後強盗罪の法定刑は「5年以上の有期懲役刑」です(刑法第238条、第236条第1項)。

「下着泥棒(窃盗犯人)が犯行後に暴行等を用いた」という事後強盗犯と、「暴行等を手段として下着を強取した」という強盗犯には高い類似性が存在するため、強盗罪と同じ法定刑の範囲で刑罰が科されます。

なお、「3年以下の懲役刑・禁錮刑・50万円以下の罰金の言渡しを受けたとき」という執行猶予の条件に鑑みると、下着泥棒が事後強盗罪の容疑で逮捕・起訴されるとかならず実刑判決が下されるかのようにも思えますが、これは間違いです。なぜなら、酌量減軽(情状酌量)などが認められると、事後強盗罪でも執行猶予付き判決の対象になり得るからです(刑法第66条、同法第71条、同法第68条第3号)。

したがって、下着泥棒が事後強盗罪の容疑で逮捕・起訴された場合には、判決言い渡しまで決して諦めることなく適切な防御活動を尽くすべきだと考えられます。仮に執行猶予付き判決を獲得できずに実刑判決が下されたとしても、刑期短縮の効果も期待できるでしょう。

下着泥棒が事後強盗罪の容疑をかけられるときに注意を要するのは、被害者に死傷結果が生じた場合です。なぜなら、事後強盗はあくまでも強盗犯と扱われるので、被害者に死傷結果が生じた場合には「強盗致死傷罪」で逮捕・起訴されるからです(同法第240条)。強盗致傷罪の法定刑は「無期または6年以上の有期懲役刑」強盗致死罪の法定刑は「死刑または無期懲役」というようにかなり厳しい刑罰を科されるリスクに晒されるので、刑期短縮を目指して被害者との示談交渉などの防御活動に尽力するべきでしょう。

下着泥棒で逮捕されるときの刑事手続きの流れ

下着泥棒が警察に発覚した後の刑事手続きの流れは以下の通りです。

  • 下着泥棒事件について捜査活動がスタートする
  • 下着泥棒で逮捕されると警察段階の取調べが実施される
  • 下着泥棒事件が警察から検察官に送致されます
  • 下着泥棒事件について検察段階の取調べが実施される
  • 下着泥棒事件を公訴提起するか検察官が判断する
  • 下着泥棒事件が刑事裁判にかけられて判決が確定する

下着泥棒事件について警察が捜査活動をスタートする

下着泥棒事件が警察に発覚した場合、以下の方法で警察との接触機会が生じます。

  • 過去の下着泥棒事件について通常逮捕される
  • 下着泥棒の犯行現場で現行犯逮捕される

過去の下着泥棒がバレると警察に後日逮捕される

過去に犯した下着泥棒事件が後日警察に発覚した場合、通常逮捕」という強制捜査によって警察に身柄を押さえられます

通常逮捕とは「裁判官の事前審査を経て発付される逮捕令状に基づいて実施される身柄拘束処分」のことです(刑事訴訟法第199条第1項)。裁判官が発付する令状を根拠に、被疑者の身体・行動の自由が制約されます(令状主義)。

たとえば、早朝、逮捕状を持参した捜査員が自宅にやってきてこれを呈示されると、その場で手錠をかけられて警察署へ連行されます。「今日はこれから大事な会議があるから別の日にして欲しい」「家族に電話で説明をしたい」などの要望は一切聞き入れてもらえません。

過去の下着泥棒事件が警察にバレる理由

「下着泥棒程度の軽微な犯罪では警察は動かない」「過去の下着泥棒が今さらバレて逮捕されるわけがない」などの思い込みは危険です。

なぜなら、そもそも下着泥棒は窃盗罪や事後強盗罪に該当する歴とした犯罪行為ですし、以下のきっかけや捜査活動によって用意に犯罪行為や被疑者の身元が特定されるからです。

  • 下着泥棒の被害者が告訴状・被害届を提出すると警察に事件がバレる
  • マンションの管理人やコインランドリーの経営者が被害届・告訴状を提出すると警察に事件がバレる
  • 被害者本人や通行人などの目撃者の証言で犯人の容姿や逃走経路が明らかになる
  • 各所に設置された防犯カメラやドライブレコーダーの録画データを解析すれば犯行や身元特定は容易い
  • 逃走車両のナンバープレートや公共交通機関利用時のICカードの登録情報から身元特定される
過去の下着泥棒は公訴時効が完成するまで通常逮捕の対象になる

過去の下着泥棒事件はいつ蒸し返されて通常逮捕されるか分かりません。ただ、その一方で、過去に下着泥棒事件を起こした場合、寿命を迎えるその日まで未来永劫逮捕リスクに晒され続けるというわけでもない点を理解する必要があります。

なぜなら、刑法犯罪については「公訴時効」という制度が用意されており、犯罪行為から一定期間が経過して公訴時効が完成することによって検察官の公訴提起権が消滅し、この付随的効果によって、捜査機関が逮捕権を行使することもなくなるからです(刑事訴訟法第253条第1項)。

ただし、公訴時効期間は犯罪行為によって異なる点に注意が必要です。下着泥棒が容疑をかけられる可能性が高い犯罪類型に関する公訴時効期間は以下をご参照ください(同法第250条各項各号)。

犯罪類型 公訴時効期間
窃盗罪・窃盗未遂罪 7年
建造物等侵入罪 3年
事後強盗罪 10年
強盗致傷罪 15年
強盗致死罪 公訴時効制度の適用外
通常逮捕の要件

過去の下着泥棒事件が警察に発覚した場合、すべてのケースで通常逮捕手続きが実施されるわけではありません。

なぜなら、合法的に通常逮捕手続きを行うには、逮捕状の発付要件である以下2点を満たす必要があるからです(犯罪捜査規範第118条、同法第122条)。

  1. 逮捕の理由
  2. 逮捕の必要性

逮捕の理由とは「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること」のことです。また、逮捕の必要性とは「留置の必要性(被疑者の身柄を強制的に拘束した状態での取調べを実施する必要性)」を意味します。

被害届・参考人供述調書・捜査報告書・疎明資料等の証拠を総合的に考慮して、逮捕状を発付するべきか否かが判断されます。

下着泥棒が通常逮捕される具体例

下着泥棒事件について逮捕状が発付されて通常逮捕手続きがスタートするのは以下のようなケースです。

  • 住所不定・無職・職業不詳で逃亡するおそれがある場合
  • 下着泥棒などの性犯罪や窃盗罪などの前科・前歴がある場合
  • 下着泥棒の余罪への関与が疑われる場合
  • 下着泥棒の証拠品(盗んだ下着や犯行当時に着用していた衣服等)を隠滅するおそれがある場合
  • 下着泥棒事件の被害が大きい(盗まれた下着の被害額が高額、暴行を加えられた被害者が重い怪我を負った)
  • 下着泥棒事件についての任意の出頭要請を拒絶した場合
  • 下着泥棒事件に関する任意の事情聴取で黙秘・否認した場合、供述内容に矛盾点が存在する場合
  • 下着泥棒の被害者の処罰感情が強い場合
  • 下着泥棒事件について反省しておらず更に犯行を重ねる危険性がある場合

下着泥棒の犯行現場で通報されると現行犯逮捕される

下着泥棒は現行犯逮捕によって身柄が押さえられることも少なくありません。

現行犯逮捕とは「現に罪を行い、または、罪を行い終わった者(現行犯人)に対する身柄拘束処分」のことです(刑事訴訟法第212条第1項)。

下着泥棒が現行犯逮捕される具体例

ベランダやコインランドリーの下着を物色しているところを目撃者や被害者に110番通報されて、かけつけた警察官に現行犯逮捕されるパターンが典型例として挙げられます。

また、被害女性宅に忍び込んでタンスをあさっているところに帰宅した被害者ともみ合いになり、物音や悲鳴を聞いた隣人などが通報することによって検挙される例も考えられます。

さらに、過去の下着泥棒事件の捜査活動が進む過程で捜査線上に被疑者として浮かびあがった人物に対して尾行がおこなわれ、警察官が見ている前で犯行に及んで即座に現行犯逮捕されるケースもあり得るでしょう。

現行犯逮捕は逮捕状なしで行われる

現行犯逮捕は「令状主義の例外に位置付けられます。

令状主義とは、「逮捕・差押えなどの最も人権侵害の危険性が強い強制処分について、捜査機関だけの判断でこれらの処分をできるのではなく、原則として裁判官の事前審査を要求する制度」のことです(日本国憲法第33条、同法第35条)。逮捕処分は「被疑者の身体・行動の自由」を侵害する側面が強いので、原則として、逮捕処分を実行する理由があるか否かについて客観的な立場である裁判官の事前審査が必要とされます。

ただし、現行犯逮捕が問題になる場面では、違法な犯罪行為がまさに目の前で行われている状況なので、わざわざ裁判官の事前審査によって逮捕する根拠があるかを判断する必要がありません。このような状況なら、冤罪のリスクも極めて少ないと考えられます。

以上の理由から、通常逮捕手続きとは異なり、現行犯逮捕は逮捕状発付手続きを省略して行っても良いと扱われます(刑事訴訟法第213条)。

現行犯逮捕は捜査機関以外の第三者でも行うことができる

現行犯逮捕は「検察官・検察事務官・司法警察職員以外の一般私人」でも行うことができます(刑事訴訟法第213条)。

たとえば、下着泥棒の犯行現場を通りかかった第三者が犯人を取り押さえた場合、その時点で現行犯逮捕が成立したと扱われます。

私人逮捕が行われた後は、地方検察庁・区検察庁の検察官や司法警察職員に身柄が引き渡されます(同法第214条)。

下着泥棒の犯行現場から逃走しても準現行犯人として現行犯逮捕される

現行犯逮捕は「現行犯人(現に罪を行い、または、行い終わった者)」に対して行われることから、犯行現場における身柄拘束処分と言い換えることができます。

ただし、「犯行現場から逃走すれば現行犯逮捕されない」「犯行現場から離れてしまえば通常逮捕の危険性に備えれば良いだけ」というわけではない点に注意が必要です。

なぜなら、現行犯逮捕の適用対象は「準現行犯逮捕」と言われる場面にも拡張されているからです。

準現行犯逮捕とは「以下4つの要件のいずれかを満たす者が、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときに実施される無令状の身柄拘束処分」を意味します(刑事訴訟法第212条第2項)。

  • 下着泥棒として追呼されているとき
  • 贓物や明らかに下着泥棒の用に供したと思われる兇器や盗んだ下着などの証拠物を所持しているとき
  • 身体や被服に下着泥棒に及んだ顕著な証跡があるとき
  • 「下着泥棒だ!」と誰何されて逃走しようとするとき

下着泥棒で逮捕された後は警察段階の取調べが実施される

下着泥棒が現行犯逮捕・通常逮捕された場合には、強制的に警察署に連行されて、警察段階の取調べが実施されます。取調べ自体に対してどのような態度をとるかは自由ですが、取調べ自体を拒絶することはできません。

警察段階で実施される取調べには「48時間以内」という時間制限が設けられています(刑事訴訟法第203条第1項)。これは、「身体・行動の自由」に対する過度の制約を伴う逮捕処分が無制限に行われることを禁止する趣旨です。

警察段階で身柄が押さえられている間、取調室で尋問等が行われる以外のときは留置場・拘置所で過ごさなければいけません。取調べ以外のタイミングで自宅に戻ったり買い物に行ったりすることは禁止されます。また、逮捕された段階でスマートフォンなどの所持品がすべて取り上げられるので、家族や会社に連絡することも不可能です。

下着泥棒事件が警察から検察官に送致される

下着泥棒事件について警察段階の取調べが終了すると、身柄・事件・証拠物がすべて検察官に送致(送検)されます(刑事訴訟法第246条本文)。

なぜなら、捜査活動が実施された事件に関する処遇の決定権は検察官が握っているからです。

下着泥棒事件について検察段階の取調べが実施される

下着泥棒事件が送検された後は、検察庁に身柄が移されて取調べが実施されます。検察段階でも取調べが実施されるのは、下着事件を公訴提起するか否かを慎重に判断するためです。

原則として、検察段階で実施される取調べの制限時間は「24時間以内」です(刑事訴訟法第205条第1項)。

したがって、下着泥棒について窃盗罪等の容疑で逮捕された場合には、「合計72時間以内(警察段階48時間と検察段階24時間)」の身柄拘束期間を耐える必要があります。

ただし、下着泥棒事件の個別事情次第では、「72時間以内」だけでは公訴提起判断のために必要な取調べを充分に行うことができないケースも少なくありません。

そこで、「やむを得ない理由」によって原則的な取調べの時間制限を遵守できない場合には、検察官による勾留請求が認められています(同法第206条第1項)。担当裁判官が勾留請求を認めた場合には、被疑者の身柄拘束期間が「10日間~20日間」の範囲で延長されます(同法第208条各項)。

下着泥棒事件について勾留請求が行われる可能性が高いのは以下のときです。

  • 下着泥棒事件について多数の余罪に関与した疑いがある場合
  • 下着泥棒以外にも露出行為や盗撮、児童ポルノ製造などへの関与が疑われる場合
  • 下着泥棒の被害者や目撃者が多く、参考人聴取に相当の時間を要する場合
  • 下着泥棒の犯行準備・下見の様子や犯行現場、逃走中の様子を確認するために膨大な防犯カメラ映像を確認する必要がある場合
  • 下着泥棒事件について被疑者が黙秘・否認している場合
  • 下着泥棒事件に関する供述内容に矛盾点や疑問が残る場合
  • 実況見分や鑑定に時間を要する場合

以上を踏まえると、下着泥棒で逮捕・勾留された場合には、「最長23日間」という長期の身柄拘束を受忍しなければいけないと考えられます。

注意を要するのが、「警察段階48時間と検察段階24時間の合計72時間以内(勾留された場合は最長23日以内)」という時間制限は事件単位で判断されるという点です。つまり、1件の下着泥棒事件について窃盗罪の容疑で逮捕・勾留されただけで最長23日間の身柄拘束を受忍する必要があり、別途建造物等侵入罪や余罪の下着泥棒事件で再逮捕・再勾留が繰り返された場合には、公訴提起までに数カ月の身柄拘束取調べを強いられる危険性があるということです。身柄拘束期間中は日常から完全に隔離された状態が続くので、学校生活や会社員生活にも相当の悪影響が生じかねないでしょう。

下着泥棒事件について検察官が公訴提起するか否かを判断する

逮捕・勾留による身柄拘束期限が到来するまでに、検察官が下着泥棒事件について起訴・不起訴を決定します。

起訴処分とは「下着泥棒事件を公開の刑事裁判にかける旨の訴訟行為」のことです。これに対して、不起訴処分とは「下着泥棒事件を公開の刑事裁判にかけず、検察限りの判断で刑事手続きを終結させる旨の意思表示」を意味します。

理屈上、起訴・不起訴の判断(公訴提起の判断)は「刑事裁判手続きに移行するか否か」という意味を有するだけですが、日本の刑事裁判の実態を踏まえると、起訴・不起訴の判断にはこれ以上の意味が含まれる点に注意しなければいけません。

なぜなら、日本の刑事裁判の有罪率は約99%と言われているので、実質的には「刑事裁判にかけられること」と「有罪になること」はほぼ同義だからです。つまり、検察官が下着泥棒事件に対して起訴処分を下した時点で有罪になるのが確定的になり、前科もついてしまうということです。

下着泥棒事件が公開の刑事裁判にかけられて判決が言い渡される

検察官の起訴処分によって、下着泥棒事件は公開の刑事裁判にかけられます

公開の刑事裁判が開廷される時期は、起訴処分から1カ月~2カ月後が目安です。そして、公訴事実に争いがなければ第1回公判期日で結審して後日判決が言い渡されますが、否認事件の場合には複数の公判期日をかけて弁論手続き・証拠調べ手続きが行われて判決言い渡しに至ります。

ここで注意を要するのが、検察官が起訴処分を下した後の身柄拘束処分についてです。具体的には、保釈請求が通らずに起訴後勾留が認められてしまうと、「公訴提起から2カ月(その後1カ月ずつ更新可能)」は身柄拘束され続けるということです(刑事訴訟法第60条第1項第2項)。

したがって、下着泥棒事件の態様や被疑者・被告人の態度次第では、判決が確定するまでの数カ月~年単位で身柄拘束が継続するリスクに晒されると考えられます(実刑判決が確定した場合には、そのまま刑務所に収監されます)。

下着泥棒事件を起こしたときに弁護士へ相談するメリット4つ

ご家族が下着泥棒で現行犯逮捕・通常逮捕された場合や、過去の下着泥棒事件が警察にバレて後日逮捕されるのではないかと不安を抱えているときにはすみやかに弁護士までご相談ください

なぜなら、刑事事件や性犯罪弁護に強い専門家に相談することで、以下4点のメリットを得られるからです。

  1. 弁護士は下着泥棒事件の被害者との間で早期の示談成立を目指してくれる
  2. 弁護士は下着泥棒事件について可能な限り有利な刑事処分獲得を目指してくれる
  3. 弁護士は刑事責任以外に生じ得る法律問題や実生活への悪影響にも配慮してくれる
  4. 弁護士は下着泥棒の犯人が本当の意味で更生を目指せるように配慮してくれる

なお、下着泥棒で逮捕されたとき、すべての被疑者に「当番弁護士制度」を利用して初回無料で接見機会を設ける権利が与えられていますが、可能であれば、被疑者自身で「私選弁護人」を選任することをおすすめします。

なぜなら、当番弁護士制度を利用したとしても、被疑者と相性が良く刑事弁護の経験豊富な弁護士が接見にやってくるとは限らないからです。

これに対して、被疑者自身の刑事事件や性犯罪弁護・示談交渉の実績豊富な私選弁護人と委任契約を締結すれば、効率的な防御活動によって刑事責任を回避・軽減し、社会復帰しやすい環境を整えてくれるでしょう。

下着泥棒の被害者との間で示談交渉を進めてくれる

刑事事件を専門に使っている弁護士に依頼すれば、下着泥棒事件の被害者と早期に示談交渉を開始してくれます。

示談とは「下着泥棒事件の当事者同士で解決策について直接話し合いを行い和解契約を締結すること」です。

示談成立によって軽い刑事処分(微罪処分や不起訴処分など)を獲得しやすくなるだけではなく、捜査機関に発覚する前に示談成立に成功すれば下着泥棒事件の刑事事件化自体も回避できる場合があります。

標準的な下着泥棒事件の示談条件

下着泥棒事件の示談条件では、以下の内容が約束されるのが一般的です。

  • 加害者が被害者に対して、下着泥棒事件で生じた損害や慰謝料、治療費等を「示談金」として支払う
  • 被害者宅や被害店舗周辺に近付かない
  • 被害者は、既に提出した被害届や告訴状を取り下げて、「処罰感情がないこと」を捜査機関や裁判所に伝える
  • 被害者が警察に相談していない場合には、今後被害届や告訴状を提出しない

なお、示談(和解契約)はあくまでも当事者間の合意に基づくものなので、どのような内容の示談契約を締結するかは個別事案によって異なります。この意味で、「示談金の相場」と言われるものは目安でしかなく、交渉次第で相当変動し得る点にご注意ください。

下着泥棒事件は示談交渉相手が複数になる可能性が高い

下着泥棒事件の示談交渉は相当労力がかかる可能性がある点に注意が必要です。

なぜなら、下着泥棒が捜査機関に発覚すると芋づる式に多くの余罪が判明し、その結果、複数被害者との間での示談交渉を同時並行的に進めなければいけないからです。また、コインランドリーなどでの下着泥棒事件が窃盗罪や事後強盗罪だけではなく建造物等侵入罪でも立件された場合には、利用客との示談交渉以外に、被害店舗との間での示談交渉にも労力を割く必要にも迫られるでしょう。

特に、逮捕・勾留された場合、「送検判断まで48時間以内」「勾留判断まで72時間以内」「公訴提起判断まで72時間~23日以内」という厳格な時間制限のもと刑事手続きが進められる点に注意が必要です。タイムリミットが到来するまでに示談成立を実現できなければ、軽い刑事処分を獲得するチャンスを失うことになりかねません。

以上を踏まえると、下着泥棒事件の示談交渉を被疑者本人・被疑者のご家族だけでやりきるのは相当大変なことだとご理解ください。

下着泥棒事件の示談交渉を弁護士に依頼するメリット

下着泥棒の示談交渉は弁護士が代理人として行った方が効果的でしょう。

なぜなら、示談交渉を弁護士に委任すれば以下4点のメリットが生じるからです。

  • 下着泥棒の被害者が連絡先提供に対して同意してくれやすい
  • 感情的になっている被害者と冷静に話し合いを進めることができる
  • 豊富な示談交渉ノウハウによって相場通りの示談条件で合意を形成できる
  • 示談交渉に要する労力をすべて代理してくれる

特に、下着泥棒のような性犯罪の場合、弁護士を代理人として選任しなければ示談交渉を開始することさえ叶わない可能性も否定できません。というのも、示談交渉を始めるには被害者の連絡先を入手することから始めなければならず、警察経由で被害者側に連絡先を教えて欲しい旨を伝えてもらう必要がありますが、性犯罪加害者本人が連絡先入手を打診しても、恐怖心や怒りを抱いている被害者側からの同意を得られないことが多いからです。

交渉のスタート段階で躓くと、その後の話し合いに充分な時間をかけることができなくなってしまいます。スピード感をもって民事的解決を実現するために、示談交渉を行う際には、かならず刑事事件や示談実績豊富な私選弁護人までご依頼ください

下着泥棒で逮捕されてもできるだけ軽い刑事処分獲得を目指してくれる

刑事事件を専門に扱っている弁護士は、下着泥棒事件に関する刑事手続きのステージに応じて、できるだけ軽い刑事処分獲得に向けて尽力してくれます

ここからは、刑事手続きの段階に応じて目指すべき防御活動の目標について、それぞれ解説します。

自首

過去に起こした下着泥棒事件について警察から直接問い合わせがない状況なら「自首」という選択肢が防御活動上の効果を発することもあります。

自首とは「まだ捜査機関に発覚しない前に、犯人自ら進んで下着泥棒に及んだ事実を申告し、刑事処罰を求める意思表示」のことです(刑法第42条第1項)。

たとえば、出来心でコインランドリーに置き忘れてあった下着を盗んでしまったが、良心の呵責に苛まれた結果、自ら警察署に出頭した場合には、「刑の任意的減軽」という恩恵を期待できます</span>。また、仮にすでに被害申告されて捜査活動が実施されている段階でも、「自ら出頭した」という点が肯定的に受け入れられるので、微罪処分・不起訴処分などの軽い刑事処罰獲得にも資するでしょう。

ただし、過去の相当数の下着泥棒の余罪がある場合や、下着泥棒事件を起こしてからすでに数年が経過しており公訴時効完成間近のような場合には、わざわざ自首をしたために重い刑事責任を問われることにもなりかねません。

したがって、過去の下着泥棒事件について警察が問い合わせ等がないとしても、できるだけ早いタイミングで弁護士の意見を参考にするべきだと考えられます。捜査実務や刑事弁護の経験豊富な専門家に相談すれば、現段階で自首するのが効果的なのか、もう少し様子を見るべきなのかを冷静に判断してくれるでしょう。

在宅事件

逮捕・勾留によって生じる強制的な身柄拘束への防御活動として「在宅事件処理」が役立ちます。

在宅事件とは「逮捕・勾留という身柄拘束処分を受けることなく、下着泥棒事件に関する捜査手続き・裁判手続きが進められる事件処理類型」のことです。

在宅事件なら数日~数週間(場合によっては数カ月)に及ぶ強制的な身柄拘束がなくなるので、刑事手続きに巻き込まれることによって生じる日常生活への悪影響を大幅に軽減できます。

下着泥棒で在宅事件処理になる可能性があるケース

過去の下着泥棒事件が警察に発覚したとしても、常に通常逮捕手続きが選択されるわけではありません。被疑者に任意の出頭要請がかけられて、警察署で任意ベースの事情聴取が行われるケースも多いです。

また、下着泥棒事件について通常逮捕・現行犯逮捕されたとしても、「留置の必要性」がないと判断された場合には、身柄拘束が解かれて在宅事件に切り替わるパターンもあり得ます。

このように、在宅事件処理には「最初から在宅事件」「途中から在宅事件」の両パターンが存在することになりますが、このような刑事事件処理の恩恵を享受できのは、下着泥棒事件が以下のような要素を有している場合です。

  • 氏名・住所・職業が明らかで逃亡のおそれがない
  • 下着泥棒について犯行を自供して真摯に反省の態度を示している
  • 下着泥棒の被害者との間で示談成立済みで、被害者の処罰感情が薄い
  • 容疑がかかっている本罪以外の余罪への関与の疑いがない
  • 下着泥棒事件における被害額が少額、被害者のケガの程度が軽い
  • 下着泥棒事件の証拠物(盗んだ下着や犯行時に使った道具・服装)を隠滅するおそれがない
  • 下着泥棒事件の共犯者が存在せず単独犯として実行された
  • 前科前歴のない完全初犯
  • 家族や監督者の存在によって更なる犯行に及ぶ危険性がない
  • 任意の出頭要請や事情聴取に素直に応じている
下着泥棒が在宅事件処理になったときの注意点

在宅事件には「強制的な身柄拘束を回避できる」というメリットが存在する一方で、在宅事件には以下の注意事項がある点を見落としてはいけません。

  • 捜査機関や裁判所からの出頭要請に応じなければ途中から通常逮捕手続きに移行する
  • 任意の事情聴取で下着泥棒事件について否認すると通常逮捕手続きに移行する
  • 在宅事件は「任意捜査」の一環として実施されるので、捜査機関が数カ月から年単位に及ぶ可能性がある
  • 在宅事件処理でも無罪になることが確定するわけではなく、在宅起訴によって公開の刑事裁判にかけられて有罪になることも少なくない

したがって、下着泥棒事件が在宅事件処理の対象になったとしても、軽い刑事処分(微罪処分・不起訴処分・執行猶予)獲得を目指した防御活動は同時並行的に実施する必要があると考えられます。

微罪処分

過去の下着泥棒事件について通常逮捕や任意の事情聴取を受けている場合や、下着泥棒事件で現行犯逮捕された場合には、「微罪処分獲得」が防御活動の最初の目標になります。

微罪処分とは「下着泥棒事件を送検せずに、警察限りの判断で刑事手続きを終結させる事件処理類型」のことです(刑事訴訟法第246条但書、犯罪捜査規範第198条)。微罪処分に付された場合には、身柄拘束期間を相当短縮化できるだけではなく、無罪になるので前科もつかないというメリットが得られます。

そもそも、下着泥棒事件に関わらず、警察が捜査活動を実施した事件は送検して検察官の判断を仰ぐのが原則です。

しかし、警察が認知して捜査を実施した事件すべてを送検すると、検察庁の事務処理能力が追い付きません。

そこで、「あらかじめ検察官の指定を受けた一定の犯罪類型については、送検をせずに、警察限りの判断で刑事手続きを終結できる」という運用が採用されています。

下着泥棒事件が微罪処分の対象になるには、以下の要素が総合的に考慮されて決定されます。

  • 窃盗罪などの比較的軽微な犯罪類型の嫌疑をかけられていること(事後強盗罪、強盗致死傷罪は微罪処分の対象外)
  • 犯情が軽微であること(下見や変装などの計画性がない、衝動的な動機で下着泥棒をしたこと)
  • 下着泥棒の被害が軽微であること(被害額2万円以内、全治1週間程度のケガなど)
  • 示談成立済みで被害弁償が済んでいること
  • 素行不良者ではなく、下着泥棒の余罪への関与の疑いもないこと
  • 家族や上司など、身元引受人がいること

なお、これらの要素を満たしたとしても、かならず微罪処分に付されるとは限りません。刑事事件に強い弁護士は捜査機関や裁判所に対して意見書を提出するなどの方法によって微罪処分相当をアピールしてくれるでしょう。

勾留回避

下着泥棒で通常逮捕・現行犯逮捕された場合には、「勾留回避」に向けた防御活動が重要です。

通常逮捕・現行犯逮捕された場合、「警察段階48時間以内」「検察段階24時間以内」の身柄拘束付き取調べは覚悟しなければいけません。ただ、「合計72時間以内」の身柄拘束期間だけで公訴提起判断までたどり着けば、早期に保釈請求を行うことによって日常生活に復帰することができます

これに対して、逮捕処分に基づく原則72時間以内だけの取調べだけでは足りず、検察官による勾留請求が行われると、10日間~20日間の範囲で身柄拘束期間が延長されてしまいます。過酷な取調べによって心身が疲弊するだけではなく、会社や学校にバレる可能性が高まり、公訴提起判断がされる頃には日常生活に復帰するのが困難になってしまいかねません。

捜査段階で刑事弁護に強い私選弁護人に依頼すれば、下着泥棒の被害者との示談交渉や検察官に対する意見書の提出などによって「勾留阻止」を目指し、早期の身柄釈放を実現してくれるでしょう。

不起訴処分

下着泥棒の容疑で逮捕・勾留された場合には、「不起訴処分獲得」が防御活動の重大目標になります。

上述の通り、日本の刑事裁判の実態を踏まえると、検察官の起訴処分によって刑事裁判にかけられることが確定した段階で「有罪・前科」がほぼ確定します。つまり、「有罪・前科」の回避を目指すなら何としても不起訴処分を獲得しなければいけないということです。

そして、「下着泥棒をしたことは間違いない以上、刑事裁判にかけられるのは避けようがない」というのは間違いです。

なぜなら、不起訴処分が下される根拠は以下3パターンに分類されるので、実際に下着泥棒をしたことが認定されても不起訴処分獲得の余地は残されているからです。

  • 嫌疑なし:下着泥棒をしていない誤認逮捕のケース
  • 嫌疑不十分:下着泥棒を立証する充分な証拠が存在しないケース
  • 起訴猶予:下着泥棒を立証する証拠は揃っているが、諸般の事情を総合的に考慮すると、刑事裁判にかける必要はないケース

下着泥棒の容疑で逮捕・勾留された場合、起訴猶予処分を獲得するには、「被害者との示談交渉」「取調べに対する供述方針の明確化」「余罪に関する認否の方針」「更生を目指すための環境構築」などの防御活動に早期に取り組む必要があります。逮捕されてから公訴提起判断までには限られた時間しか残されていないので、逮捕されてすぐに刑事事件に強い私選弁護人までご相談ください。

保釈請求

下着泥棒の容疑で逮捕・起訴された場合には、できるだけ早いタイミングで「保釈請求」を行う必要があります。

なぜなら、検察官が起訴処分を下した(被告人になった)後になって「起訴後勾留」処分が下されると、起訴処分から2カ月(その後、1カ月ごとに更新)も留置施設から出ることができないからです(刑事訴訟法第60条第1項、第2項)。仮に下着泥棒事件について執行猶予付き判決が下されたとしても、逮捕から判決言い渡しまでの数カ月以上、社会生活から断絶された状態が続きますし、実刑判決が確定すると一度も日常生活に戻ることなく刑務所に服役しなければいけません。

保釈請求は以下3種類に分類されるので、立件された下着泥棒事件にかけられた容疑などの個別事情を考慮したうえで、私選弁護人に適切な手続きを履践してもらいましょう。

  • 権利保釈(保釈除外事由に該当しない限り認められる保釈)
  • 裁量保釈(裁判官の裁量によって認められる保釈)
  • 義務的保釈(身柄拘束期間が不当に長期化している場合に認められる保釈)

略式手続き

下着泥棒事件に対して起訴処分が下されて、かつ、検察官が公判において罰金刑を求刑する公算が大きい場合には、「略式手続き(略式起訴・略式裁判・略式命令)」を選択することでメリットを得られることがあります。

略式手続きとは「簡易裁判所の管轄に属する刑事事件について100万円以下の罰金刑が想定される場合に、被疑者側の同意がある場合に限って、公開の刑事裁判を省略して簡易・簡便な形で罰金刑を確定させる裁判手続き」のことです(刑事訴訟法第461条)。略式手続きを選択すれば、公開の刑事裁判に関する手続きをすべて省略できるので、検察官の起訴判断時点で刑事手続きが終結します。

ただし、略式手続きはあくまでも「罰金刑が言い渡される場合」を対象にしているため、下着泥棒事件が事後強盗罪・強盗致傷罪で逮捕・起訴されるケースは略式手続きの対象外になります。また、略式手続きを選択すると、公開の刑事裁判で反論する機会を放棄することになる点に注意が必要です。

刑事事件の実績豊富な私選弁護人は、捜査活動や刑事裁判の行く末を冷静に分析できるので、「略式手続きを選択して罰金刑を妥協点とするべきか、刑事裁判で罰金刑の減額や無罪を目指すべきか」を判断してくれるでしょう。

執行猶予

下着泥棒事件が刑事裁判にかけられる場合には、「執行猶予付き判決を獲得して実刑判決を回避すること」が防御活動の方針になります。

執行猶予とは「被告人の犯情や事件の諸般の事情を考慮して刑の執行を一定期間猶予できる制度」のことです。執行猶予期間中は今まで通りの日常生活を送ることができますし、無事に執行猶予期間を満了できれば刑が執行されることもありません

ただし、執行猶予付き判決の対象になるには「3年以下の懲役刑・禁錮刑・50万円以下の罰金刑の言渡しを受けたとき」という要件を満たす必要があります(刑法第25条第1項)。

つまり、窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」、事後強盗罪の法定刑は「5年以上の有期懲役刑」である点を踏まえると、下着泥棒が逮捕・起訴されたときに執行猶予付き判決を獲得するには、酌量減軽などの防御活動を駆使しなければいけないということです。かならず刑事裁判での実績を誇る私選弁護人までご相談ください。

下着泥棒で立件されたときの刑事責任以外のトラブルにも配慮してくれる

刑事事件の実績豊富な弁護士に依頼すれば、刑事責任以外に発生するトラブルにも配慮してくれます

下着泥棒で逮捕されたときに生じ得るトラブルは以下の通りです。

  • 配偶者との離婚トラブル(慰謝料・親権・財産分与など)
  • 学校や会社から下された懲戒処分をめぐるトラブル
  • SNSなどで拡散された個人情報や名誉棄損に対する慰謝料請求・削除要請

盗癖などの下着泥棒犯人自身が抱えている問題にも目を向けてくれる

そもそも、窃盗や性犯罪は再犯率が高い犯罪類型に位置付けられます。これは、犯人が盗癖(クレプトマニア)性嗜好障害・強迫的性行動症・性依存症などの精神疾患等を抱えていることが多いからです。

刑事事件に力を入れている弁護士に相談すれば、提携しているカウンセリング施設や治療機関・NPO法人などと繋げてくれるので、犯罪からの脱却・本当の意味での更生を目指しやすいでしょう。

下着泥棒で逮捕されるか不安なときはすぐに弁護士へ相談しよう

下着泥棒事件に関与した場合には、できるだけ早いタイミングで弁護士へ相談することを強くおすすめします。

なぜなら、刑事手続きの初期段階から優秀な専門家の支援を受ければ、防御活動の選択肢が広がり、軽い刑事処分を獲得しやすくなるからです。

各法律事務所のホームページを確認すれば弁護士の専門分野や過去の実績が簡単に分かるので、性犯罪弁護や示談実績豊富な私選弁護人までお問い合わせください。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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