口座を売ってしまったときには、すぐに警察への対応などについて弁護士へ相談することをおすすめします。なぜなら、自分名義の口座を売却すると、「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)」違反や詐欺罪に該当することを理由に逮捕されるからです。
「自分で開設した口座だから勝手に売っても文句は言われないだろう」「生活費に困って仕方なくSNSの口座買取アカウントに連絡してしまった」などの動機・経緯があったとしても、口座売買が警察に発覚すると、逮捕・勾留による身柄拘束を強いられるだけでなく、有罪判決が下される可能性も否定できません。
そこで今回は、過去に口座を売ってしまった経験がある人のために、以下4点についてわかりやすく解説します。
- 口座を売ってしまったときに問われる犯罪類型
- 口座を売ってしまったことが警察にバレたときの刑事手続きの流れ
- 口座を売ってしまったことを理由に逮捕されたときに生じるデメリット
- 口座を売ってしまったときに弁護士へ相談するメリット
弁護士へ相談すれば、少しでも有利な刑事処分・判決内容を獲得するために尽力してくれるだけではなく、生活費の工面方法や借金問題解決に向けた具体的なアドバイスも期待できるでしょう。
目次
口座を売ってしまったときに問われる犯罪類型・罪名
口座を売ってしまったことが警察にバレると、以下2つの罪状で刑事訴追される可能性が高いです。
- 犯罪収益移転防止法違反
- 詐欺罪
どちらの容疑で逮捕されたとしても犯行態様の悪質性など次第で”一発実刑”もあり得るので、口座売買について警察や銀行から連絡があったときには、できるだけすみやかに弁護士までご相談ください。
犯罪収益移転防止法違反
口座を売ってしまったことが発覚すると、犯罪収益移転防止法違反の容疑で逮捕される可能性が生じます。
犯罪収益移転防止法の目的
犯罪収益移転防止法は、「反社会的勢力・組織的犯罪集団・テロリズム集団の資金源や収益移転ルートを断つことによって、国民生活の安全・平和を確保し、経済活動の健全な発展に寄与することを目的とする法律」のことです(同法第1条)。
たとえば、振り込め詐欺やオレオレ詐欺などの特殊詐欺事件やSNSで募集をかけられることが多い闇バイト事件では、被害者からの入金先口座や仲間内で報酬を受け渡しするときの口座に「犯人自身が開設した預貯金口座」が使用されることはないのは明らかでしょう。犯罪捜査を撹乱する目的から、口座売買・口座譲渡などの違法取引で入手した預貯金口座が悪用されるのが一般的です。
つまり、犯罪収益移転防止法によって口座売買・口座譲渡という行為自体を処罰対象とすれば犯罪集団の資金移転が困難になるため、組織的な犯罪行為の抑止になり、ひいては犯罪集団の弱体化に繋がるということです。
なお、犯罪収益移転防止法は「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織的犯罪処罰法)」「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(麻薬特例法)」と相互補完し合う形で、組織的犯罪集団に対する規制立法として機能しています。
口座を売ってしまった行為が犯罪収益移転防止法違反に該当するケース
犯罪収益移転防止法では、「『他人になりすまして銀行などの特定事業者との間における預貯金契約についての役務の提供を受ける目的または第三者にこれをさせる目的』を相手方が有することを知りながら、その者に対して預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、または提供すること」「通常の商取引や金融取引としておこなわれるものであることなどの正当な理由がないのに、有償で預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、または提供すること」を処罰対象にしています(同法第28条第2項)。
たとえば、SNSや匿名掲示板で募集されている高収入のアルバイト案件に応募して自分名義のキャッシュカードや預貯金通帳を売り渡してしまうと、犯罪収益移転防止法違反を理由に逮捕される可能性が生じるでしょう。
犯罪収益移転防止法違反の法定刑
犯罪収益移転防止法第28条第2項違反の口座売却の罪の法定刑は、「1年以下の懲役刑もしくは100万円以下の罰金刑(併科あり)」です(同法第28条第2項、第1項)。
また、口座の売り渡しを”業として”おこなっている場合には、法定刑が「3年以下の懲役刑もしくは500万円以下の罰金刑(併科あり)」まで引き上げられます(同法第28条第3項)。
さらに、口座の売り渡しをするように人を勧誘したり、または広告その他これに類似する方法によって人を誘引しただけでも、「1年以下の懲役刑もしくは100万円以下の罰金刑(併科あり)」の範囲で処断されます(同法第28条第4項)。
自分名義の口座を第三者に売り渡すだけではなく、家族や知人を口座売却に誘うだけでも逮捕リスクが生じるので、預貯金口座を第三者に使わせる行為とは絶対に関わらないようにしてください。
詐欺罪
口座を売ってしまったことが警察にバレると、口座売却に至るまでの経緯次第では「詐欺罪(1項詐欺罪)」で逮捕される可能性も生じます。
口座を売ってしまった行為が詐欺罪に該当するケース
詐欺罪とは、「人を欺いて財物を交付させたとき」を処罰対象にする犯罪類型のことです(刑法第246条第1項)。
詐欺罪の構成要件は以下5点です。
- 欺罔行為
- 錯誤
- 財物の交付行為
- ①②③の間に因果関係があること
- ①②③④に対する故意
たとえば、売ってしまうための預貯金口座を開設する目的を隠したまま銀行などを訪問して、「生活費の管理口座用、給料の振り込み用口座」などと嘘をついて口座開設手続きをおこない、窓口担当職員から預貯金通帳やキャッシュカードを受け取ったケースでは、この時点で1項詐欺罪が成立します。
わかりやすく言い換えると、現在自分が所持している自分名義の預貯金口座を売ってしまったときには「犯罪収益移転防止法違反」の容疑で、預貯金口座を売ってしまう目的で新たに預貯金口座の開設手続きをおこなったときには「1項詐欺罪」の容疑で逮捕されるということです。
なお、1項詐欺罪は未遂犯も処罰対象とされるので(刑法第250条)、口座開設手続き時の窓口対応を担当者が不審に思って預貯金通やキャッシュカードを受け取る前に相当したようなケースでも、1項詐欺未遂罪の容疑で逮捕される可能性が生じます。
詐欺罪の法定刑
1項詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役刑」です(刑法第246条第1項)。犯罪収益移転防止法違反の法定刑「1年以下の懲役刑もしくは100万円以下の罰金刑(併科あり)」と比較するとかなり厳しい刑罰が定められています。
まず、1項詐欺罪の法定刑には罰金刑の定めが存在しません。つまり、検察官に起訴されて有罪判決が下された時点で「拘禁刑」を避けられないので、「どうしても刑務所に服役したくない」と希望するなら、早期の効果的な防御活動によって「不起訴処分を獲得」する必要があるでしょう。
次に、1項詐欺罪の法定刑である懲役刑は「10年以下」と定められているので、後述の通り、「3年以下の懲役刑の言い渡しを受けたとき」という執行猶予付き判決の条件を満たすには、酌量減軽・自首減軽などの防御活動が不可欠です。執行猶予付き判決を獲得できなければ刑期を満了するまで日常生活に復帰できないので、検察官による起訴処分が下された時点で「執行猶予付き判決獲得」が目標になります。
このように、口座を売ってしまったことが警察にバレて、犯罪収益移転防止法違反ではなく1項詐欺罪の容疑で逮捕された場合には、重い刑事処罰のリスクに晒されるため、刑事手続き初期段階から効果的な防御活動を尽くす必要に迫られます。刑事事件を専門に扱っている私選弁護人のサポートを受けながら、少しでも軽い刑事処分獲得に向けて尽力してもらいましょう。
口座を売ってしまったときの刑事手続きの流れ
口座を売ってしまったことが警察にバレたときの刑事手続きの流れは以下の通りです。
- 口座売却の容疑で警察に逮捕される
- 口座を売ってしまった件について警察段階の取調べが実施される
- 口座の売却事件が検察官に送致される
- 口座を売ってしまった件について検察段階の取調べが実施される
- 口座の売却事件を起訴するか検察官が判断する
- 口座の売却事件が公開の刑事裁判にかけられる
なお、「SNSを介して口座を売ってしまっただけだし、メッセージのやり取りも何回かしかしていない」と言い訳したくなるかもしれませんが、口座を売ってしまった相手方は反社会的組織などの犯罪集団である可能性が高いため、口座を売っただけでも組織や他の特殊詐欺事件との関与を疑われる立場に置かれる点にご注意ください。
口座売却の容疑で警察に逮捕される
口座を売ってしまったことが発覚すると、警察に逮捕されます。
逮捕とは、「被疑者の身柄を強制的に押さえる身柄拘束処分」のことです。逮捕には、通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕の3種類の方法がありますが、口座を売ってしまったケースでは「通常逮捕」されるのが一般的でしょう。
口座を売ってしまったために通常逮捕される具体的なケース
通常逮捕とは、「裁判官の事前審査を経て発付された逮捕状に基づき、口座を売ってしまった被疑者の身柄を拘束する強制処分」のことです(刑事訴訟法第199条第1項)。
逮捕状が発付されるのは、「逮捕の理由(被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること)」「逮捕の必要性(被疑者の身柄を強制的に留置する必要性があること(逃亡・証拠隠滅のおそれがあること))」の2つの要件を満たしたときです。
たとえば、以下のようなケースでは、口座を売り渡した行為について犯罪収益移転防止法違反もしくは詐欺罪の容疑で逮捕状が請求される可能性が高いでしょう。
- 住所不定・無職・職業不詳で逃亡するおそれがある場合
- 前科・前歴がある場合
- 自分以外の第三者にも口座の売却行為の勧誘をしている場合
- 口座の売り渡し以外にも特殊詐欺などの組織的犯罪への関与が疑われる場合
- 口座の購入者などの共犯者と口裏を合わせる危険性が高い場合
- 銀行や特殊詐欺被害者との間で示談が成立していない場合
- 売却した口座が特殊詐欺に使用されており、特殊詐欺事件の被害額が高額の場合
- 特殊詐欺事件の被害者の処罰感情が強い場合
- 警察からの任意の出頭要請や事情聴取に応じない場合
口座を売ってしまったことが警察にバレる理由
「自分名義の口座を他人に売ったところでバレるはずがない」というのは甘い考えです。
なぜなら、「口座の売買」のような違法取引をもちかけてくる相手方はまともな人物・業者であるはずがなく、以下のような経緯で口座を売ってしまったことが高確率でバレてしまうからです。
- 売ってしまった口座が特殊詐欺事件などで悪用された結果、口座名義人が捜査対象になって口座売却の事実がバレる
- 高額の入金・出金が繰り返されている取引履歴に不信感を抱いた金融機関が警察に相談してバレる
- 口座買取業者・違法な闇金業者が摘発されて顧客データが原因で警察にバレる
売ってしまった口座は取引相手にどのような形で悪用されるのか想像もつきません。自分とは無関係の範囲でおこなわれる違法行為が原因でバレる可能性が高いので、過去に口座を売ってしまった場合には、できるだけすみやかに弁護士まで相談のうえ、警察への自首などについてアドバイスをもらうべきでしょう。
口座を売ってしまったらいつまで逮捕される?
犯罪収益移転防止法違反や詐欺罪には「公訴時効」という制度が定められています。
公訴時効制度とは、「犯罪類型ごとに定められた公訴時効期間の経過によって検察官の公訴提起権が消滅する制度」のことです。公訴時効期間の経過によって検察官が起訴できなくなる結果、逮捕されることもなくなります(ただし、事情を聴くために捜査活動への協力を求められる可能性は否定できません)。
口座売却事件に関する公訴時効期間は以下の通りです(同法第250条第2項)。
犯罪類型 | 公訴時効期間 |
---|---|
犯罪収益移転防止法違反 | 3年 |
1項詐欺罪 | 7年 |
以上を踏まえると、自分が所有している口座を売ってしまったときには「売ったときから3年」、売却目的で金融機関で口座開設手続きをしたときには「口座開設手続きをしてから7年」で後日逮捕のリスクが消滅すると言えるでしょう。
口座売却の容疑について警察から取調べを受ける
口座を売ってしまった行為が警察にバレると、「警察段階の取調べ」が実施されます。
警察段階で実施される取調べの制限時間は「48時間以内」です(刑事訴訟法第203条第1項)。48時間以内に得られた証拠・供述を前提に、口座売却事件を微罪処分とするのか送検するのかが判断されます。
逮捕処分に基づいて実施される警察段階の取調べを拒否することはできません。また、取調べが実施される時間以外も身柄は捜査機関の管理下に置かれるので、帰宅したり会社に出勤したりすることも禁止されます。さらに、逮捕された段階で所持品はすべて取り上げられて、かつ、逮捕段階は「接見禁止処分」が下されることが多いため、家族と面会するどころか電話連絡をすることも不可能です。
したがって、口座を売り渡した件で逮捕されて身柄拘束された時点で2~3日程度は社会生活から隔離される状態が発生するため、その後微罪処分や不起訴処分を獲得できるか否かにかかわらず、社会生活に一定の制限が生じると言えるでしょう。
口座売却事件が検察官に送致される
口座を売り渡した件についての警察段階の取調べが終了すると、証拠書類・証拠物と合わせて事件が検察官に送致(送検)されます(刑事訴訟法第246条本文)。
なお、後述の通り、微罪処分に付された場合には送検されず、刑事手続き終結とともに身柄が釈放されます(同法第246条但書)。
口座売却について検察官から取調べを受ける
口座売却事件が送検されると、「検察段階の取調べ」が実施されます。
検察段階の取調べの制限時間は「24時間以内」が原則です(刑事訴訟法第205条第1項)。警察段階の48時間と検察段階の24時間を合わせた72時間以内の取調べ中に得られた証拠・供述内容を前提に、検察官が口座売却事件を公訴提起するか否か判断します。
なお、検察段階で実施される取調べ期間中も身柄拘束は続くので、家族や会社に自分の口で電話連絡を入れることはできません。
口座を売り渡して送検されると勾留請求の可能性が高い
逮捕段階で実施される取調べの制限時間は「72時間以内」ですが、事件の態様次第によっては72時間の取調べだけでは充分な捜査活動ができないケースが存在します。特に、口座の売り渡しのような組織的犯罪との関与が疑われる事件類型では、公訴提起判断に至るまでに慎重な捜査活動が求められるでしょう。
そして、このような事情が存在する場合には、逮捕段階72時間に加えて身柄拘束期間を延長するために、検察官による「勾留請求」が認められています(刑事訴訟法第206条第1項)。裁判所が検察官の勾留請求を認めて勾留状を発付したときには、身柄拘束期間は10日間~20日間の範囲で延長されます(同法第208条各項)。
たとえば、口座を売ってしまった事件について勾留請求が予測されるのは以下のような事情が存在する場合です。
- 口座を売り渡した相手方とのTelegramなどの履歴を解析する必要がある場合
- 口座売却以外の特殊詐欺行為などへの加担を追及する必要がある場合
- 売却した口座の取引履歴の確認に時間を要する場合
- 口座の売り渡しについて否認・黙秘している場合
- 防犯カメラ映像の解析や実況見分、参考人聴取などに時間を要する場合
検察官による勾留請求が実施された場合、逮捕段階からカウントすると「最長23日間」捜査機関に身柄を押さえられることになります。たとえば、一般的な会社員をしている場合、3週間以上も本人の口から欠勤理由を説明できないわけですから、勤務先に逮捕・勾留されたことを隠し通すのは不可能に近いでしょう。
口座売却について検察官が公訴提起するか否か判断する
逮捕期限または勾留期限が満了する前に、捜査活動で得られた証拠や供述内容などの諸般の事情を総合的に考慮して、口座を売り渡した事件について検察官が起訴・不起訴を決定します。
起訴処分とは、「口座を売ってしまった事件を公開の刑事裁判にかける旨の訴訟行為」のことです。日本の刑事裁判の有罪率は約99%とも言われているので、検察官が起訴処分を下して刑事裁判にかけられることが確定した時点で有罪判決が事実上確定します。
不起訴処分とは、「口座を売ってしまった事件を公開の刑事裁判にかけずに、検察官限りの判断で刑事手続きを終結させる旨の意思表示」のことです。不起訴処分が下された時点で刑事手続きが終了するので、有罪や前科の不安に怯えることなく社会生活に復帰できます(ただし、前歴は残ります)。
今後の社会生活への影響を考えると、口座を売ってしまって逮捕・勾留されたときには「不起訴処分を獲得できるか」が最大のポイントになると言っても過言ではありません。
ただし、不起訴処分を獲得するには示談などの防御活動が欠かせないのですが、検察官の公訴提起判断までの期間は限られている点に注意が必要です。防御活動を開始するタイミングが遅れると公訴提起判断までに充分な酌量事情を用意できないので、口座売却の件で警察からコンタクトがあった時点で弁護士に相談することを強くおすすめします。
口座売却事件が公開の刑事裁判にかけられる
検察官に起訴処分を下されると、口座を売ってしまった事件が公開の刑事裁判にかけられます。
公開の刑事裁判が開廷されるタイミングは「起訴処分から1カ月~2カ月後」が目安です。公訴事実に争いがなければ第1回公判期日で結審するのが通例ですが、否認事件などでは複数の公判期日を経て弁論手続き・証拠調べ手続きがおこなわれます。
刑事裁判の内容を踏まえて、裁判官が口座売却事件の被告人に対して判決を言い渡します。実刑判決が下されるとそのまま刑務所に服役しなければいけないので、社会生活からの断絶を回避するには、罰金刑や執行猶予付き判決の獲得を目指すことになるでしょう。
口座を売ってしまったときに生じるデメリット6つ
口座を売ってしまったことが警察にバレると、以下6点のデメリットに晒されます。
- 逮捕・勾留によって長期間身柄拘束される
- 口座を売ってしまったことが学校にバレて退学処分などの対象になる
- 口座を売ってしまったことが会社にバレて懲戒処分の対象になる
- 口座を売ってしまったことが原因で逮捕・起訴されると前科者になってしまう
- 自分名義の預貯金口座が利用停止・強制解約されてさまざまな悪影響が波及的に生じる
- 売却した口座が振り込め詐欺などの犯罪行為に悪用される
警察にバレたとしても初期の防御活動次第でこれらのデメリットは回避可能なので、かならず特殊詐欺事件などを得意とする私選弁護人までご相談ください。
逮捕・勾留によって長期間身柄拘束される
口座を売ってしまったことが警察にバレると、逮捕・勾留によって長期間身柄拘束される危険性に晒されます。
- 逮捕された場合:最長72時間
- 逮捕・勾留された場合:最長23日間
- 起訴後勾留が続く場合:刑事裁判が終わるまでの数カ月間
身柄拘束期間が長期化するほど、会社や学校にバレるリスクが高まるだけでなく、厳しい取調べと留置所生活で心身が疲弊するでしょう。
口座を売ってしまったときには、「軽い刑事処分・判決内容を獲得すること」と同時に、「身柄拘束期間を回避・短縮化すること」にも目を向けなければいけません。
警察に逮捕される前に弁護士へ相談することで逮捕・勾留を避けて「在宅事件」として刑事手続きを進めてもらう期待感が高まるので、時効による逃げ切りを狙うのではなく、できるだけ早いタイミングで弁護士までお問い合わせください。
口座売渡しが学校にバレると退学処分等のリスクに晒される
口座を売ってしまったことが学校にバレると、何かしらの処分が下される可能性が高いです。
まず、逮捕・勾留という身柄拘束処分を受けた場合、その間は学校を欠席せざるを得ないため、学校に隠し通すのは難しいでしょう。また、学生同士の交友関係を前提に口座取引がおこなわれていたようなケースでは、捜査活動の一環として学校に連絡がいく可能性も否定できません。
そして、口座を売ってしまって逮捕されたことが学校にバレると、学則・校則の規定にしたがって何かしらの処分が下されます。たとえば、退学処分や停学処分、出席停止などの重い処分が下されることもあれば、戒告・注意などの軽い処分で済むこともあり得ます。
学生段階で重い処分を科されると、学歴にキズがついたり今後の就職活動などに影響が生じかねません。SNSなどでは口座取引で簡単に高額のお金が手に入るような案件が募集されていますが、絶対に手を出すべきではないでしょう。
口座売渡しが会社にバレると懲戒処分のリスクに晒される
口座を売ってしまったことが勤務先にバレると、就業規則の懲戒ルールに則って何かしらの懲戒処分が下される可能性が高いです。
懲戒処分の内容は「戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇」の7種類に分類されますが、反社会的組織との関与さえ疑われる口座売却事件では、懲戒解雇処分が下されても文句は言えないでしょう。
特に、口座を売ってしまったために起訴処分が下されてしまうと「前科」までついてしまうので、今後の転職活動の妨げにもなりかねません。現在の仕事を失ったうえに再就職先まで見つからないとなると、今後の人生プランや生活基盤まで崩れ去ってしまいます。
したがって、口座を売ってしまった経験があるなら、「いかに勤務先に知られずに刑事手続きを終結させるか」がポイントになると考えられます。たとえば、警察に逮捕される前に示談を成立させてその後自首をすれば「在宅事件扱い」で逮捕・勾留という身柄拘束処分を回避できるので、できるだけ早いタイミングで弁護士までご相談ください。
口座売渡しの容疑で逮捕・起訴されると前科がつく可能性が高い
口座を売ってしまったことが捜査機関に発覚して逮捕・起訴されると「前科」がつく可能性が高いです。
そして、前科がつくと、今後の社会生活に以下のデメリットが生じてしまいます。
- 職務経歴書の賞罰欄には前科情報の記載を求められるので、就職活動・転職活動が成功しにくい
- 前科を理由に就業制限を受ける仕事がある(警備員、士業、金融業など)
- 逮捕歴や前科を理由にパートナーから別れを切り出される(身辺調査で発覚する)
- 前科を理由に離婚を言い渡されると拒絶できない(法定離婚事由に該当するため)
- 逮捕されたことが報道されるとインターネット上に前科情報が残り続ける
- 前科を理由にビザ・パスポートが発給されないと、海外旅行・海外出張に制限が生じる
- 前科者が再犯に及ぶと、刑事処分や判決内容が重くなる可能性が高い
自分名義のすべての銀行口座が利用停止・強制解約される
口座を売ってしまったことが捜査機関に発覚したときや、売却した口座が犯罪行為に使われたことが明るみに出たときには、警察から銀行などの金融機関に対して「凍結要請」がかけられます。また、明らかに取引履歴に不審点がある預貯金口座については、銀行側の独自判断によって口座取引がすべて停止される可能性もあります。
そして、口座売買という違法取引が原因で銀行口座などが凍結された場合には、凍結が解除されて当行をふたたび使用できるようになることはありません。金融機関によって取扱いは異なりますが、一時的な利用停止期間を経たあと、金融機関などとの間で締結した約款違反を理由に強制解約されるでしょう。
さらに、口座凍結によって利用停止・強制解約された情報は信用情報機関に提供されるため、他の金融機関の銀行口座が使えなくなるだけではなく、現在契約中の住宅ローン契約・キャッシング契約・カードローン契約・カーローン契約などもすべて強制解約の対象になって一括返済を求められることになります(債権者側との話し合いが不調に終われば法的措置をとられた後、強制執行で財産・給与などが差し押さえられます)。
このように、安易な気持ちで口座を売ってしまっただけでも、少なくとも今後数年はすべての金融機関のサービスを利用できなくなりますし、現段階で家計や経済状況が極めてひっ迫した状況に追い込まれかねません。目先の数万円に釣られただけで社会的にかなり厳しい状況におちいるので、絶対に口座を売るのはやめましょう。
振り込め詐欺などの犯罪行為に悪用される可能性がある
口座を売ってしまうと、売却した口座が振り込め詐欺などの特殊詐欺事件などに悪用されて重大犯罪の片棒を担ぐことになりかねません。
また、反社会的組織や犯罪集団に口座情報などの個人情報を奪われる点にも注意が必要です。たとえば、氏名・住所・電話番号などから勤務先などがバレてしまうと、「他の金融機関でも口座を開設して売り渡せ、拒否すると口座を売却したことを会社や家族にばらすぞ」「受け子として詐欺行為に加担しろ」などという形で脅される可能性もあります。その結果、口座売却以外の犯罪行為にも手を染めることになってしまうため、社会復帰が難しい状況になりかねないでしょう。
口座を売ってしまったときに弁護士へ相談するメリット4つ
自分の口座を売ってしまったときには、できるだけ早いタイミングで弁護士へ相談することを強くおすすめします。
なぜなら、闇バイト事件や特殊詐欺事件などの実績豊富な弁護士へ相談することで以下4点のメリットを得られるからです。
- 口座売却が警察にバレる前に自首するべきか否かを判断してくれる
- 口座売却事件について少しでも軽い刑事処分獲得を目指してくれる
- 口座を売った容疑で逮捕されたとしても接見機会を利用してさまざまなアドバイスを提供してくれる
- 家計管理や債務整理などの民事的な問題についてもケアしてくれる
口座売却が警察に発覚する前なら自首するべきか判断してくれる
口座を売ってしまった行為が警察にバレる前なら「自首」が有効な防御活動のひとつです。
自首とは「まだ捜査機関に発覚しない前に、犯人自ら進んで下着泥棒に及んだ事実を申告し、刑事処罰を求める意思表示」のことです(刑法第42条第1項)。犯罪行為が警察にバレる前に自首をすれば「刑の任意的減軽」というメリットを得られます。
ただし、先ほど紹介したように、犯罪収益移転防止法違反の公訴時効期間は3年であることを踏まえると、公訴時効期間完了間近の状況ならわざわざ警察に犯罪行為を申告する実益は少ないと考えられます。
したがって、口座を売却した時期や売却した口座の使用状況などを踏まえて、弁護士に現段階で自首をするべきか否かを冷静に判断してもらうべきでしょう。
口座売却事件について少しでも軽い刑事処分獲得を目指してくれる
口座を売ってしまったことが警察に発覚したとしても、闇バイト事件や特殊詐欺事件の実績豊富な弁護士へ相談することで軽い刑事処分の獲得を期待できます。
ただし、刑事手続きのステージに応じて目指すべき刑事処分は異なるので、それぞれ解説します。
- 在宅事件処理
- 微罪処分
- 不起訴処分
- 保釈請求
- 略式手続き
- 執行猶予付き判決
在宅事件
在宅事件とは、「逮捕・勾留という身柄拘束処分を受けることなく、口座売却事件に関する捜査手続き・裁判手続きが進められる事件処理類型」のことです。
刑事手続きの最初の段階から在宅事件処理になるパターンもあれば、一度は逮捕・勾留による身柄拘束処分を受けたとしても途中から在宅事件に切り替わるパターンもあります。いずれにしても「身柄拘束によるデメリット」が生じないため、学校バレ・会社バレなどのリスクを回避できるでしょう。
口座を売ってしまった件が警察にバレたのに在宅事件処理が適用されるのは以下のケースです。
- 氏名・住所・職業が明らかで逃亡のおそれがない
- 犯行を自供して真摯に反省の態度を示している
- 銀行や特殊詐欺事件などの被害者との間で示談が成立している
- 口座を売り渡した以外に組織的犯罪行為に関与した疑いがない
- 口座売渡しに関する証拠物(取引相手との連絡ツールやメッセージの履歴)を隠蔽するおそれがない
- 共犯者や協力者が存在しない
- 前科・前歴のない初犯
- 身元引受人がいる
- 捜査機関や裁判所からの出頭要請や事情聴取に素直に応じている
- 捜査活動が進展して身柄拘束をしてまで取調べを継続する意味がない
在宅事件処理扱いを狙うには、「逃亡や証拠隠滅のおそれがないこと」を取調べ中の態度・供述内容や弁護士の働きかけによって捜査機関に伝える必要があります。刑事事件の実績豊富な弁護士なら捜査機関に対する丁寧なアプローチを期待できるでしょう。
微罪処分
微罪処分とは「口座を売ってしまった件を送検せずに、警察限りの判断で刑事手続きを終結させる事件処理類型」のことです(刑事訴訟法第246条但書、犯罪捜査規範第198条)。
警察段階の捜査活動で刑事手続きが終結するので、逮捕による身柄拘束期間は最長48時間以内で済みますし、「起訴されるかもしれない」という不安からも早期に逃れられる点もメリットとして挙げられます。
口座を売ってしまった件が微罪処分に付されるのは以下のような条件を満たすときです。
- 検察官があらかじめ指定した犯罪類型に該当すること(窃盗罪、詐欺罪、占有離脱物横領罪など)
- 犯情が極めて軽微であること(生活苦からやむを得ずに売却してしまったなど)
- 被害額が軽微であること
- 被害者などとの間で示談が成立していること
- 素行不良者ではなく、余罪への関与の疑いがないこと
- 家族・親族・上司などの身元引受人がいること
不起訴処分
「口座を売ってしまった以上、刑事裁判で裁かれるのは仕方ない」と諦める必要はありません。なぜなら、不起訴処分は以下3つに分類されるため、犯罪行為に及んだことに間違いはなくても刑事裁判を回避できる場合があるからです。
- 嫌疑なし:口座を売った疑いがないケース
- 嫌疑不十分:口座を売ったことを基礎付ける十分な証拠が存在しないケース
- 起訴猶予:口座を売った事実自体には間違いないが、諸般の事情を考慮すると公開の刑事裁判にかける必要がないケース
不起訴処分を獲得できれば、有罪判決や前科がつくことなく刑事手続きが終結するので、社会復帰しやすい環境が手に入るでしょう。
なお、起訴猶予にするか否かを判断する際には、犯人の性格・年齢・境遇・犯罪の軽重・犯行に至るまでの経緯・犯罪後の情状などの諸般の事情が総合的に考慮されます(刑事訴訟法第248条)。
検察官が公訴提起判断するまでの限られた時間内に充分な防御活動を尽くす必要があるので、かならず刑事事件を専門に扱っている弁護士までご相談ください。
保釈請求
口座を売ってしまった件について起訴処分が下されたときには、すみやかに保釈請求をする必要があります。なぜなら、起訴後も勾留されると、刑事裁判の公判期日に至るまでの数カ月間ずっと身柄拘束が継続するので、社会生活に甚大な悪影響が生じるからです(刑事訴訟法第60条第1項、第2項)。
詐欺罪や犯罪収益移転防止法違反で逮捕・起訴された場合には、保釈除外事由に該当しない限り「権利保釈」が認められます。また、逃亡のおそれがあるなどの理由で権利保釈が認められないとしても、「裁量保釈」「義務的保釈」によって起訴後勾留を回避することも可能です。
弁護士はすみやかな保釈請求手続きを履践したうえで保釈金納付手続きについてもアドバイスをしてくれるでしょう。
略式手続き
口座売却事件が犯罪収益移転防止法違反で立件されたときには、「略式手続き(略式起訴・略式裁判・略式命令)」による簡易迅速な刑事手続き終結を選択するのも選択肢のひとつです。
略式手続きとは、「簡易裁判所の管轄に属する刑事事件について100万円以下の罰金刑が想定される場合に、被疑者側の同意がある場合に限って、公開の刑事裁判を省略して簡易・簡便な形で罰金刑を確定させる裁判手続き」のことです(刑事訴訟法第461条)。
犯罪収益移転防止法違反の法定刑には罰金刑が掲げられているので、検察官が公判で罰金刑を求刑する予定の場合に限って、略式手続きを選択することが可能です。これによって、略式起訴の段階で刑事手続きが終結するので、刑事裁判にかかる労力や時間を大幅に節約できます(これに対して、詐欺罪の法定刑には罰金刑が存在しないため、詐欺罪の容疑で立件されたときには略式手続きは選択できません)。
なお、略式手続きを選択すると、公開の刑事裁判で反論する機会が失われ、無罪獲得を目指す余地が残されない点に注意が必要です。「罰金刑で前科がついても良いから早期に刑事手続きを終結させたい」「本当は無罪を主張したいが刑事裁判を経ても有罪判断を覆すのが難しい」などの状況でなければ略式手続きを選択する実益は乏しいので、略式手続きに同意するべきか刑事裁判を選択するべきか、弁護士に見定めてもらいましょう。
執行猶予付き判決
口座を売ってしまった結果、逮捕・起訴された場合には、「執行猶予付き判決獲得」を目指した防御活動が不可欠です。
なぜなら、犯罪収益移転防止法違反・詐欺罪のどちらで立件されたとしても懲役刑が下される可能性があるからです。執行猶予付き判決なら、執行猶予期間中は普段通りの社会生活を過ごせますし、執行猶予期間満了によって刑の執行も回避できます。
ただし、執行猶予付き判決を獲得するには、「3年以下の懲役刑・禁錮刑・50万円以下の罰金刑の言渡しを受けたとき」という要件を満たす必要がある点に注意しなければいけません(刑法第25条第1項)。
つまり、犯罪収益移転防止法違反(1年以下の懲役刑)なら通常通りの防御活動で執行猶予付き判決を獲得できますが、詐欺罪(10年以下の懲役刑)の場合には執行猶予付き判決の要件を満たすまで自首減軽や酌量減軽などの防御活動を尽くす必要があるということです。
執行猶予付き判決を獲得するには、取調べは刑事裁判で真摯に反省の態度を示したり、社会更生を誓ったりするなどの工夫が不可欠です。私選弁護人の協力のもと、少しでも有利な判決内容獲得を目指しましょう。
口座売却の容疑で逮捕された後も接見機会を通じて防御方針を明確化してくれる
刑事事件に熱心な私選弁護人へ相談すれば、逮捕・勾留後の被疑者とも積極的な接見機会を作ってくれます。
そもそも、身柄拘束中の被疑者が自由に面会できるのは弁護士だけです。厳しい取調べが繰り返されるなか、自分の唯一の味方になってくれる弁護士と話す機会があるだけで励みになります。また、取調べの内容は捜査活動の進捗を踏まえて時々刻々と変化するものですが、こまめな接見機会で取調べの推移を報告することで、矛盾のない供述方針を確立することができるでしょう。
口座を売るほどお金に困っているなら債務整理なども検討してくれる
口座を売ってしまった被疑者・被告人のなかには、家計ひっ迫などの経済的な理由で違法行為に手を染めてしまったという人も少なくありません。
刑事弁護に力を入れている専門家に相談すれば、以下のような経済的基盤確保に向けたサポートも期待できるでしょう。
- 借金返済で家計が苦しいなら債務整理(任意整理、個人再生、自己破産)を提案
- 生活保護制度、生活福祉資金貸付制度、住宅確保給付金制度などの公的支援制度の案内
- 浪費癖やギャンブル依存症などの問題を抱えているならNPO法人やカウンセリング施設を紹介
- その他、家計収支の安定に向けた具体的なアドバイスを提供
【注意!】当番弁護士制度よりも私選弁護人と契約した方がメリットは大きい
口座を売ってしまった容疑で警察に逮捕された場合、すべての被疑者は「当番弁護士制度」を利用して誰でも初回無料で専門家のアドバイスを聞くことができますが、当番弁護士制度にはデメリットがある点に注意が必要です。たとえば、専門家の実績や性格を選べないので、相性が悪い弁護士がやってくるリスクを排除しきれないでしょう。
そこで、口座売却事件の刑事処分を少しでも軽くして社会復帰しやすい環境を整えたいのなら、私選弁護人と契約することを強くおすすめします。なぜなら、弁護士の実績や年齢、性別、熱意などを総合的に考慮して信頼できる専門家と契約できるからです。
私選弁護人と契約するには着手金・成功報酬などの費用が発生しますが、法律事務所によっては報酬の支払い方法について分割払いなどにも対応してくれる場合があります。弁護士事務所に問い合わせれば費用面の質問にも回答してくれるので、まずはご相談ください。
口座を売ってしまったなら弁護士へ相談を!刑事・民事両面で生活再建を目指そう
どのような事情があったとしても口座を売ってしまう行為は犯罪なので、現段階で警察にバレていないとしても、できるだけ早く弁護士へ相談することをおすすめします。捜査機関への対応・金融機関における処理などについて、現実的なアドバイスを期待できるでしょう。
弁護士への相談を先送りにすると、どこかのタイミングで売却した口座が犯罪行為に悪用されて、場合によっては犯罪組織の構成員として刑事責任を追及されるリスクさえ生じかねません。結果的に不起訴処分を獲得できたとしても、逮捕・勾留によって身柄拘束を強いられるだけでさまざまなデメリットが生じるので、まずは刑事事件に力を入れている弁護士までお問い合わせください。