売春斡旋とは?成立要件やさまざまな事例を詳しく解説

売春斡旋とは?成立要件やさまざまな事例を詳しく解説
売春斡旋とは?成立要件やさまざまな事例を詳しく解説

売春斡旋とは売春行為の斡旋をした場合に成立する犯罪であり、売春防止法という法律によって禁止されています。売春行為に関する処罰規定はないものの、売春斡旋を行った場合は懲役刑や罰金刑といった規定があるため注意が必要です。

本記事では、売春斡旋の定義や成立要件、罪に問われた場合の対処法などについて解説しています。売春斡旋の罪に問われている人や身内が逮捕されてしまった人などは参考にしてください。

売春斡旋とは

売春斡旋とは、売春行為を斡旋した場合に成立する犯罪です。前提として、売春行為は売春防止法という法律によって禁止されています。そのため、売春を斡旋する行為も売春防止法によって禁止されており、犯罪として成立するため注意が必要です。

まずは、売春斡旋の成立要件や罪状、刑罰について詳しく解説します。

成立要件

売春斡旋は、「売春の斡旋をした時点」で成立する犯罪です。たとえば、売春の仲立ちをしたり仲介したりした場合に成立する犯罪であり、男女ともに処罰の対象となります。

また、売春斡旋では実際に売春行為があったかどうかは問われません。前提として、売春斡旋行為があった時点で犯罪として成立するため注意が必要です。

罪状と刑罰

売春斡旋は売春防止法という法律によって禁止されている犯罪であり、同法では以下の通り明記されています。

(勧誘等)
第五条 売春をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者は、六月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三 公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、又は広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。

引用:売春防止法|第5条

売春の勧誘とは、売春行為を行うように勧誘した場合に成立する犯罪です。たとえば、いわゆる立ちんぼやネット上で不特定多数の人に向けて売春の募集を行った場合などは本条文によって処罰されます。

そのため、斡旋ではなく自分自身で売春相手を募集した場合であっても、処罰対象となるため注意しなければいけません。同法に抵触した場合は、6カ月以下の懲役または1万円以下の罰金に処されます。

(周旋等)
第六条 売春の周旋をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
2 売春の周旋をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者の処罰も、前項と同様とする。
一 人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三 広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。
引用:売春防止法|第5条

周旋とは、仲立ちや仲介した人を指します。つまり、売春を斡旋した場合に成立する犯罪です。たとえば、売春行為を行う者と客を引き合わせる役割をになった人は、本条文によって処罰されます。売春の周旋は2年以下の懲役または5万円以下の罰金となるため注意してください。

なお、売春行為そのものも売春防止法によって禁止されています。しかし、売春自体に罰則規定はありません。そのため逮捕されることもありません。ただ、周旋や勧誘によって処罰されるため注意してください。

売春斡旋による逮捕の可能性と判決傾向

売春斡旋を行った場合は、罰則規定のある犯罪行為であるため逮捕の可能性や罰金、実刑判決といった可能性があります。次に、売春斡旋による逮捕の可能性や判決傾向について解説します。

処罰対象となる行為があった場合は逮捕の可能性がある

売春防止法では、売春の勧誘や周旋について罰則規定を設けています。そのため、罰則規定があり、処罰対象となる犯罪を行った場合は、逮捕されてしまう可能性があるため注意しなければいけません。

たとえば、売春のみを行った場合は逮捕されることはありません。なぜなら、売春は売春防止法で禁止されているものの、罰則規定がないためです。

一方で、売春を勧誘したり周旋したりした場合は、先ほど解説した通り罰則規定があります。そのため、逮捕されてしまう可能性があります。

つまり、売春防止法に抵触する行為があったとしても、罰則規定の有無によって逮捕の可能性が変わるということです。斡旋行為は、勧誘や周旋に該当するため、逮捕の可能性もあるため注意してください。

売春斡旋の程度次第で実刑判決の可能性がある

売春斡旋の法定刑は勧誘で「6カ月以下の懲役または1万円以下の罰金」です。周旋の場合は「2年以下の懲役または5万円以下の罰金」です。いずれの場合も懲役刑が定められているため、売春斡旋による懲役の可能性もあります。

ただし、個人で売春斡旋を行っている場合で比較的軽微な場合は、実刑判決が下される可能性は低いです。実刑判決が下されるケースとして多いのは、組織的な犯罪であり、規模が相当大きいような場合です。とくに暴力団等へ資金が流れている場合などは、悪質であると判断されやすくなり、実刑判決の可能性も高くなります。

また、売春の対象が児童であるなど、その他の犯罪も関与する場合は実刑判決となる可能性が高いため注意が必要です。売春斡旋のみでは比較的法定刑は軽めではあるものの、その他の犯罪が成立する可能性にも注意が必要です。

罰金刑や執行猶予判決となる可能性もある

売春斡旋は罰金刑となる可能性がある犯罪です。法定刑でも勧誘の場合は1万円以下の罰金、周旋でも5万円以下の罰金と規定されています。そのため、懲役刑ではなく罰金刑が下される可能性もあります。

罰金刑が下された場合は、罰金を支払うことによって事件は終了します。もちろん、罰金刑としての前科はついてしまうものの、刑務所へ収容されることはないためその点は安心です。

また、実刑判決や罰金刑が下された場合であっても、執行猶予がつくこともあります。執行猶予とは、下された判決を直ちに執行することなく、一定期間猶予し、その期間罰金刑以上の判決を下されなければ失効することを言います。

たとえば、「懲役2年執行猶予3年」の判決が言い渡された場合、直ちに懲役刑を執行するわけではありません。3年間の猶予期間を与え、この期間内に罰金刑以上の判決が下されなかった場合は、懲役2年という刑罰がなくなります。

ただし、執行猶予期間中に犯罪を犯した場合は、その犯罪に加えて懲役2年が加算されます。そのため、執行猶予期間中は自動車の運転を避けるよう言われるケースもあり、社会的な生活の影響もあるでしょう。

不起訴処分で終了するケースもある

売春斡旋は不起訴処分で終了するケースもあります。とくに初犯である場合や反省をしているなど、独別な事情がある場合は不起訴とすることもあるため安心してください。また、売春斡旋の場合は逮捕をせずに取り調べを行い、微罪処分で終了するケースもあります。

【事例別】売春斡旋に該当するケースとは

さまざまな事例ごとに売春斡旋に該当するかどうかについて解説します。

事例1.無許可で風俗店を営んでいた場合

無許可で風俗店を営んでいた場合は、売春斡旋行為に該当する可能性があります。売春斡旋は売春防止法の「売春勧誘」や「売春周旋」に該当します。

この場合は、勧誘行為を行っていなくても周旋行為に該当する可能性があり、売春斡旋として処罰される可能性があるでしょう。売春周旋とは、仲立ちや仲介などをした場合に適用される罪状です。

そのため、たとえば店舗あるいは派遣型風俗店として営業を行い、仲介役を行っていたのであれば立派な犯罪行為(売春周旋)です。

また、無営業での風俗店経営は、風営法でも禁止されています。そのため、売春防止法のみならず風営法でも処罰される可能性があるため注意してください。

事例2.友達を誘って一緒に売春をした場合

友達を誘って一緒に売春をしただけの場合は、売春斡旋には該当しません。たとえば、売春勧誘の観点で見ると、本条文の対象はあくまでも「売春の相手を勧誘した場合」に適用されます。

つまり、あくまでも売春勧誘で処罰されるのは、いわゆる立ちんぼやネット上を介して売春の相手を勧誘した場合です。また、売春周旋の観点から見ても、その友達と売春の相手を結びつけたなど仲介的な役割をになっている場合を除いて、処罰対象にはなりません。

そのため、友達を誘って一緒に売春を行ったケースでは、ただの売春行為にしかなりません。ただし、友達と客(売春の相手)を結びつけた場合は、売春周旋として処罰される可能性があるため注意が必要です。

事例3.デートクラブを営んでおり、キャストが勝手に売春を行っていた場合

いわゆるデートクラブとは、女性と男性のデートをセッティングする場所です。そのため、前提はあくまでも「デートのセッティング」であるため、売春斡旋には該当しません。

また、仮にキャストがデートクラブを利用して売春の相手を探していた場合であっても、運営側がその内容を把握し、感知していない場合は周旋になり得ません。

ただしデートクラブの運営元がキャストと客の売春を把握し、結果的に周旋しているような形になっている場合は、処罰される可能性があるため注意が必要です。

事例4.自分自身で客を見つけて売春を行った場合

自分自身で客を見つけて売春を行った場合は、売春斡旋には該当しません。ただし、ネット等を介して売春の相手を勧誘した場合は、売春勧誘に該当するため、処罰対象になり得ます。

勧誘とは、「公衆の目に触れるような方法で、売春の相手となるように勧誘すること」です。つまり、「売春しませんか?」などと自ら言った場合は、売春勧誘として処罰されます。

上記以外の場合は、ただの売春行為であるため、禁止されている行為ではありますが処罰されることはありません。

事例5.売春相手を紹介したのみであり、管理等を行わずに金銭も受け取っていない場合

売春相手を紹介し、その態様としては管理を行っているわけではなく、金銭も受け取っていない場合です。この場合であっても、売春周旋が該当する可能性があるため注意が必要です。

そもそも、売春周旋は金銭のやりとりや管理の有無は必要ありません。そのため、周旋を行った事実がある以上は、売春周旋として処罰される可能性があります。「お金のやり取りがないから」「管理を行っていないから」と言っても、周旋行為は禁止です。

売春斡旋で逮捕された場合の流れ

売春斡旋は条文によって懲役刑や罰金刑が定められているため、その行為を行った場合は逮捕されてしまう可能性があります。次に、売春斡旋で逮捕されてしまった場合の流れについて詳しく解説します。

逮捕

売春斡旋行為を行った場合は、逮捕されてしまう可能性があります。逮捕とは、逃亡の恐れがある人や証拠隠滅の恐れがある人の身柄を一時的に拘束した上で取り調べを行う手続きのことを言います。つまり、逮捕をされると身柄を拘束されるため、自宅へ帰ることができずに学校や会社へいくことができなくなってしまいます。

ただ、売春斡旋の場合はその行為の事実があったとしても、逮捕をしない場合もあります。とくに、大きな組織的な犯罪ではない限り、証拠隠滅や逃亡の恐れが低いと判断されやすいため、あえて社会的影響の大きい逮捕という手続きを行わないケースがあるのです。

詳しくは次以降で解説しますが、一度逮捕をされてしまうと72時間最長で23日間は身柄を拘束されます。その後、起訴された場合はさらに長期間の間身柄を拘束されることになります。

そのため、普段は真面目に働いている人や学校へ通っている人からすると、社会復帰の機会を失うことにもなり得るため、軽微な犯罪の場合はあえて逮捕しないこともあるのです。

ただし、必ずしも逮捕されないということではありません。組織的な犯罪である場合や悪質な場合、警察官や検察官が必要であると判断された場合は逮捕されるため注意してください。

取り調べ・送致

売春斡旋を行った場合は、取り調べを受けてその後に検察へ事件を送検される流れとなります。逮捕されている場合は、逮捕から送検まで48時間以内に行わなければいけません。逮捕されていない場合(在宅事件)の場合は、通常1〜2か月程度で送検されます。

また、比較的軽微な犯罪の場合は、警察官の判断で検察官へ事件を送検することなく終結させる場合もあります。これを「微罪処分」と言います。微罪処分で終了する場合は、原則身元確認のみを行って終了するため、逮捕されたり何度も取り調べを受けたりすることはありません。

勾留の請求

逮捕されてしまった場合、送検されてからさらに24時間以内に検察官が勾留の有無を判断します。勾留とは、引き続き身柄を拘束して取り調べを行う必要がある場合に請求する手続きです。

勾留請求が認められるためには、逃亡の恐れがあることや証拠隠滅の恐れがあることなど、さまざまな条件を満たしている必要があります。

最長20日間の勾留

勾留請求が認められた場合は、最長20日間の身柄拘束が行われます。この時点で最長23日間は身柄を拘束され続けるため、当然ながら自宅へ戻ることはできません。会社や学校等の社会生活を送ることもできなくなるため、影響も甚大になるでしょう。

起訴・不起訴の判断

勾留されている被疑者の場合は、勾留期間中に検察官が起訴・不起訴の判断をします。起訴とは、裁判を提起することを言い、起訴された場合は刑事裁判を受けることになります。

また、罰金刑が定められている売春周旋・勧誘の場合は、略式起訴にて手続きが行われるケースもあるため覚えておくと良いでしょう。略式起訴とは、簡易的に事件を終了させる手続きであり、刑事裁判を受けるよりも拘束期間が短くなります。

略式起訴となった場合は、即時略式命令が下されて釈放されます。罰金刑の場合のみに適用される手続きであり、即時釈放される点がメリットです。

一方、弁解する機会を与えられず、万が一違法な方法によって集められた証拠があったとしても、心理してもらうことができません。

刑事裁判

起訴された場合は刑事裁判を受けます。刑事裁判では複数回の公判を行って、最終的に判決が言い渡されます。

判決に従って刑に服する

刑事裁判にて有罪判決が下された場合は、その判決に従って刑に服します。懲役刑の場合は刑務所へ収容されて刑期を全うしなければいけません。罰金刑の場合は、罰金を支払うことによって刑に服したことになります。

また、万が一罰金刑が下されて罰金を支払えなかった場合は、労役場にて労役を行わなければいけません。労役場で働くと1日5,000円と換算されます。

売春斡旋にて問われる可能性のある犯罪の場合、最大1万円もしくは5万円程度です。この金額であれば、2日〜10日の労役で罰金を支払えることになります。ちなみに、労役場は土日は休みですが、この間も1日5,000円として換算されます。

売春斡旋の罪に問われた場合の対処法

売春斡旋の罪に問われた場合、早期に対処することで身柄拘束を回避できたり早期の社会復帰を目指せたりします。また、前科を付けずに事件を終結させることも可能です。そのため、次に売春斡旋の罪に問われた場合の対処法について解説します。

弁護士へ相談をする

売春斡旋の罪に問われた場合は、できるだけ早めに弁護士へ相談をしましょう。早期の弁護活動が今後の影響に大きく寄与します。

たとえば、早期に弁護活動を行うことによって、身柄拘束を回避できるかもしれません。また、前科がつかないように弁護活動を行い、結果的に微罪処分や不起訴処分等を勝ち取ることも可能です。

弁護士へ相談をすると費用は発生してしまうものの、できるだけ早い段階で相談をすることが自分の社会復帰のためになるでしょう。

反省して健全な社会復帰を目指すことを約束する

取り調べを受けたり反省の弁を述べたりする機会があった際には、しっかり反省して健全な社会復帰を目指す約束をしましょう。これまで売春斡旋でお金を稼いでいた人は、就職先が決まっていることをアピールし、これからは健全に働いて生活することを約束しましょう。

そうすることで「社会復帰が可能」と判断されやすくなり、結果的に寛大な処分が下されるケースが多くなります。

まとめ

今回は、売春斡旋について解説しました。

売春斡旋は、売春防止法の定めによる売春周旋や売春勧誘に該当する犯罪行為です。これらの犯罪に問われた場合は、懲役刑の定めがあるため刑務所に収容されてしまう可能性があります。

もちろん逮捕の可能性もあるため、社会生活に多大な影響を与えてしまう可能性もあるでしょう。もし、売春斡旋の罪に問われてしまった場合は、本記事で解説している内容を参考にしてください。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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