建造物侵入罪は、正当な理由なく人の住居や建造物などに侵入する犯罪のことです(刑法第130条前段)。いわゆる「不法侵入」を取り締まる犯罪と理解できます。
ただし、建造物侵入罪は「他人の管理する建物内に侵入してやろう」という明確な侵入の意識をもつときだけに成立するわけではありません。たとえば、痴漢目的で駅構内をうろついたり、ストーカーをするために被害者が居住しているマンションの敷地内に立ち入ったりしたときにも、迷惑防止条例違反やストーカー規制法違反とは別に建造物侵入罪に問われる可能性があるものです。
そこで今回は、建造物侵入罪の容疑で警察から出頭要請をかけられて不安を抱えている方や、ご家族が建造物侵入罪の容疑で逮捕された方のために、以下4点についてわかりやすく解説します。
- 建造物侵入罪の構成要件・法定刑
- 建造物侵入罪の容疑で逮捕されるときの刑事手続きの流れ
- 建造物侵入罪の容疑で逮捕されたときに生じるデメリット
- 建造物侵入罪の容疑をかけられたときに弁護士へ相談するメリット
建造物侵入罪は比較的軽微な犯罪類型に位置付けられますが、犯罪であることに変わりはない以上、逮捕されると身柄を拘束された状態で厳しい取調べを強いられます。また、窃盗罪などの別件での再逮捕・再勾留の準備段階で身柄を押さえられることが多いので、結果として、身柄拘束期間が長期化しかねません。
弁護士への相談によって早期の身柄釈放や不起訴の可能性が高まるので、建造物侵入罪の容疑で逮捕されたときや警察から出頭要請がかかったときには、すみやかに刑事事件に強い弁護士までお問い合わせください。
目次
建造物侵入罪とは
建造物侵入罪とは、「正当な理由がないのに、人の住居、人の看守する邸宅、建造物、艦船に侵入したとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第130条前段)。
住居などに侵入してから退去するまで継続して犯罪が成立する「継続犯」と理解されています(最決昭和31年8月22日)。
まずは、建造物侵入罪の構成要件・法定刑・具体例について解説します。
建造物侵入罪の構成要件
建造物侵入罪の構成要件は以下3点です。
- 正当な理由がない
- 人の住居、人の看守する邸宅、建造物、艦船
- 侵入
正当な理由がない
建造物侵入罪の1つ目の構成要件は、人の住居などに対する侵入に「正当な理由がないこと」です。わかりやすく表現すると、「人の建造物などに立ち入るときに違法な目的をもっていること」を意味します。
たとえば、窃盗や強盗目的で見ず知らずの人の一軒家に侵入するとき、スリ目的で休日の百貨店に立ち入るとき、盗撮やのぞき目的で公衆トイレに侵入するときなどでは、明らかに正当な理由なく立ち入っていると言えるでしょう。
人の住居、人の看守する邸宅、建造物、艦船
建造物侵入罪の2つ目の構成要件は、正当な理由のない侵入の客体が「人の住居、人の看守する邸宅、建造物、艦船であること」です。
「人の住居」とは、「人の日常生活に利用される場所」のことです。一戸建てのような建造物だけに限られず、人の日常生活に利用されている場合であれば、艦船や車両、ホテルや旅館の一室も「人の住居」に含まれます。さらに、家出をした子どもが現に居住する者の許可なく立ち入る場合にも、「人の住居」への侵入が認められます(最判昭和23年11月25日)
「邸宅」とは、「居住用の建造物のうち、住居以外のもの」のことです。たとえば、居住者の存在しない空き家や、閉鎖中の別荘などが「邸宅」に該当します。
「建造物」には、「住居、邸宅以外の建物」が幅広く含まれます。駅構内、雑居ビルの駐車場、大阪万博公園内の太陽の塔、国民体育大会会場スタンドのスコアボードなどについて、実際の裁判例・判例で建造物性が認められています。
「艦船」とは、「軍艦、船舶」のことです。
邸宅、建造物、艦船については、それぞれ「人の看守する」という要件を満たさなければいけません。具体的には、「人の立ち入り・滞留について許諾権を有する看守者が、建物などを事実上管理・支配するための人的・物的設備を施すこと」を意味します。
建造物侵入罪の客体には「囲繞地」も含まれる
「人の住居」「人の看守する邸宅・建造物」には、建物自体だけではなく、建物に付属する囲繞地も含まれます。
囲繞地とは、「建物に接してその周辺に存在する付属地であり、管理者が門塀などを設置することによって建物の付属地として建物利用のために供されるものであることが明示されているもの」のことです(最判昭和51年3月4日)。このような囲繞地は、建物自体に準じて無関係な立ち入りを制限することについて保護の必要性・相当性を認めることができるため、建造物侵入罪の客体に含まれると考えられます。
侵入
建造物侵入罪の3つ目の構成要件は、正当な理由がないのに建造物などに「侵入すること」です。
侵入とは、「建造物への管理権者の意思に反した立ち入り」のことです(最判昭和58年4月8日)。建造物侵入罪の保護法益は「誰に立ち入りを認めるか」を決定できる管理権だと考えられるので、許諾権者(住居権者・管理権者)の意思・推定的意思に反する立ち入りは、すべて建造物侵入罪の実行行為である「侵入」に該当すると扱われます。
たとえば、公共の図書館は本来誰でも自由に立ち入ることができる場所ですが、「図書館の階段やトイレで盗撮をする目的を有する人物」に対して図書館の管理権者が立ち入りを許諾するとは考えにくい以上、推定的意思に反することを理由に「侵入」に該当すると言えるでしょう。
建造物侵入罪の法定刑
建造物侵入罪の法定刑は、「3年以下の懲役刑または10万円以下の罰金刑」です(刑法第130条)。
執行猶予付き判決の対象は「3年以下の懲役刑もしくは禁錮刑、または、50万円以下の罰金刑の言い渡しを受けたとき」なので(刑法第25条第1項)、建造物侵入罪だけで逮捕・起訴されたとしても、初犯で適切な防御活動を展開すれば、いきなり実刑判決が下されることはないでしょう。
建造物侵入罪は未遂犯も逮捕される
建造物侵入罪は未遂犯も処罰対象です(刑法第132条、同法第44条)。
建造物侵入未遂罪の法定刑は、既遂犯と同じく「3年以下の懲役刑または10万円以下の罰金刑」です。
ただし、実行に着手したものの未遂にとどまった場合には「刑の任意的減軽」という恩恵を受けることができます。さらに、自分の意思に基づいて中止に至った場合は「刑の必要的減免」という効果を得られます(同法第43条)。
建造物侵入罪で立件される具体例
建造物侵入罪の容疑で逮捕される具体例として以下のものが挙げられます。
- 肝試し目的で墓地に立ち入った場合
- いたずら目的で閉園中の遊園地に立ち入った場合
- 盗撮や痴漢をする目的でショッピングモールに立ち入った場合
- 万引きをする目的でスーパーに立ち入った場合
- 援助交際をする目的で駅構内に設置された多目的トイレに立ち入った場合
- 好意を寄せる異性をストーキングする目的で被害者が居住している集合住宅の敷地内を徘徊した場合
このように、建造物侵入罪の容疑で逮捕されるケースには、「単純に建造物などに侵入した場合」だけではなく、「建造物侵入罪以外の犯罪が成立する場合」も含まれる点に注意が必要です。
たとえば、女性用トイレに侵入している男性を発見した第三者の110番通報を受けてかけつけた警察官に建造物侵入罪の容疑で現行犯逮捕された後、捜査活動が実施されるなかで盗撮などの迷惑防止条例違反の容疑が固まった場合には、再逮捕・再勾留によって身柄拘束期間が長期化する可能性があります。
なお、他の犯罪行為に及ぶ目的で建造物などに侵入した場合には、両罪の関係は「牽連犯」の関係(手段と目的の関係)に立つと考えられるので、成立する犯罪のうちもっとも重い刑罰の範囲で処断されます(刑法第54条第1項後段)。たとえば、建造物侵入罪(3年以下の懲役刑または10万円以下の罰金刑)と窃盗罪(10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑)の両罪が成立するケースでは、窃盗罪の法定刑の範囲内で判決が言い渡されます。
【注意!】建造物侵入罪と住居侵入罪の違い
住居侵入罪は、客体を「人の住居」に限定したときの呼称です。これに対して、建造物侵入罪の客体は「人の住居、人の看守する邸宅・建造物・艦船」です。
したがって、建造物侵入罪は住居侵入罪を包摂した犯罪類型と言えるでしょう。
なお、建造物侵入罪であったとしても住居侵入罪であったとしても、法定刑に差異はないので、両罪の違いについて意識する必要はありません。
【注意!】建造物侵入罪と不退去罪の違い
刑法第130条では、建造物侵入罪と合わせて「不退去罪」についても定めています。
不退去罪とは、「許諾権者の許諾を得て住居や建造物などに立ち入った者が、退去するように要求を受けたにもかかわらず、その場所から退去しなかったとき」に成立する犯罪類型のことです。建造物侵入罪と同じく、「3年以下の懲役刑または10万円以下の罰金刑」の範囲で処断されます(刑法第130条後段)。
建造物侵入罪は「許可のない立ち入り」を処罰対象とするのに対して、不退去罪は「許可なく居座り続けること」を処罰対象とするものです。
ただし、先ほど紹介したように、建造物侵入罪は「継続犯」であることを踏まえると、本来「許可なく居座り続けること」は建造物侵入罪でも処罰可能なはずです。そのため、不退去罪は、「当初建造物侵入罪が成立しない場合」を対象とする補充的な犯罪類型であると理解されています(最決昭和31年8月22日)。
建造物侵入罪についての刑事手続きの流れ
捜査機関から建造物侵入罪の容疑をかけられたとき、以下の流れで刑事手続きが進められるのが一般的です。
- 警察が建造物侵入事件を把握する
- 建造物侵入罪の容疑について警察段階の取調べが実施される
- 建造物侵入罪の容疑について検察段階の取調べが実施される
- 検察官が建造物侵入事件を公訴提起するか否か判断する
- 建造物侵入罪の容疑で公開の刑事裁判にかけられる
警察が建造物侵入事件を把握する
警察が建造物侵入を知ったときから刑事手続きがスタートします。
捜査機関が建造物侵入事件を知った状況に応じて、刑事手続きの開始方法は以下3つに大別されます。
- 犯行を現認したときは「現行犯逮捕」
- 逃亡などのおそれがあったり余罪の可能性があったりすると「通常逮捕」
- 逃亡などのおそれがないときには「在宅事件(任意の事情聴取)」
建造物侵入罪の容疑で現行犯逮捕されるケース
現行犯逮捕とは「現に罪を行い、または、罪を行い終わった者(現行犯人)に対する身柄拘束処分」のことです(刑事訴訟法第212条第1項)。通常逮捕や緊急逮捕と違って、逮捕状なしで警察官以外の一般私人でも実行できる点が特徴として挙げられます(同法第213条)。
建造物侵入罪の容疑で現行犯逮捕されるのは以下のようなケースです。
- 深夜墓地などで騒いでいるところを近隣住民に110番通報された場合
- 空き巣に入るために一軒家の敷地内で侵入口を探しているところを家主に見つかって通報された場合
建造物侵入罪の容疑で通常逮捕(後日逮捕)されるケース
通常逮捕とは、「裁判官の事前審査を経て発付される逮捕令状に基づいて実施される身柄拘束処分」のことです(刑事訴訟法第199条第1項)。たとえば、平日早朝に逮捕状を持参した捜査員が自宅にやってきて、逮捕状を呈示されたうえで、そのまま身柄が押さえられることが多いです。
逮捕状が発付されるのは、「逮捕の理由(被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること)」「逮捕の必要性(留置の必要性、証拠隠滅や逃亡のおそれがあること、被疑者の身柄を拘束したうえで取調べを実施する必要性があること)」という2つの要件を満たしたときに限られます(犯罪捜査規範第118条、同規範第122条)。
建造物侵入罪の容疑で通常逮捕(後日逮捕)されるのは以下のようなケースです。
- 被疑者が住所不定・無職・職業不詳で「逃亡のおそれ」がある場合
- 建造物侵入時の衣服などの「証拠物を隠滅するおそれ」がある場合
- 窃盗罪、強盗罪、ストーカー規制法違反、迷惑防止条例違反などの別件の容疑もかかっている場合
- 被疑者に前科・前歴がある場合
- 捜査機関からの事前の出頭要請を拒否した場合
- 捜査機関で実施される任意の事情聴取中に犯行を否認したり、供述内容に矛盾がある場合
- 建造物侵入事件などの被害者の処罰感情が強い場合
建造物侵入罪が任意捜査の対象になるケース
建造物侵入事件が警察に発覚したとしても、逮捕処分に基づいて強制的に身柄拘束されるのではなく、任意ベースで捜査活動が展開されるケースも少なくありません。
任意捜査とは、「対象者の協力のもと実施される捜査活動」のことです。たとえば、捜査員から出頭要請がかけられ、警察署に出頭したうえで事情聴取が実施されます。事情聴取が実施されるとき以外は普段通りの生活を送ることができるので、逮捕処分のような強制的な身柄拘束期間は生じません(在宅事件)。
建造物侵入事件について任意ベースの捜査活動が実施されるのは以下のようなケースです。
- 氏名・住所・職業が判明しているため「逃亡のおそれ」がない場合
- 捜査機関の要請に基づいて証拠を素直に提出している場合
- 捜査機関の取調べに対して素直に犯行を自供して反省の態度を示している場合
- 建造物侵入事件などの被害者との示談成立済みで、処罰感情がない場合
- 窃盗罪や迷惑防止条例違反などの余罪への関与の疑いがない場合
- 被疑者に前科・前歴がない場合
通常逮捕・現行犯逮捕と違って、任意の出頭要請・事情聴取に応じる義務はありません。たとえば、「警察には何も話したくないから」「仕事が忙しくて出頭する余裕がないから」「捜査員の態度が腹立たしくて何も話したくないから」など、どのような理由であっても出頭要請・事情聴取を拒絶することは可能です。
ただし、任意の出頭要請・事情聴取へ素直に応じないと「逃亡・証拠隠滅のおそれがある」と判断されて逮捕手続きに移行するリスクに晒される点にご注意ください。
【注意!】建造物侵入罪は犯行から3年経過で逮捕リスクが消滅する
建造物侵入事件を起こしたとしても、未来永劫いつまでも逮捕リスクに晒されるわけではありません。なぜなら、建造物侵入罪は「犯行から3年」で公訴時効が完成するからです(刑事訴訟法第250条第2項第6号)。
公訴時効とは、「法定刑ごとに定められた公訴時効期間の経過によって検察官の公訴提起権が消滅する制度」のことです。公訴時効が完成すると起訴されずに済むので、警察に逮捕される心配もなくなります。
ただし、建造物などに侵入したときの様子が防犯カメラ映像に記録されていたり目撃者が多数存在したりする場合、過去の建造物侵入事件は捜査機関に発覚するため、3年の公訴時効期間を逃げ切るのは簡単ではありません。建造物侵入事件からしばらく経った後に逮捕・起訴されると、事件から逮捕までに築いた生活や社会的地位が無に帰するので、まずは弁護士へ相談のうえ、過去の建造物侵入事件について現段階で自首をするべきか、被害者との間で示談交渉を進めるべきかなどについて冷静に検討してもらいましょう。
警察段階の取調べが実施される
建造物侵入事件が警察に発覚した後は、警察段階の取調べが実施されます。
まず、現行犯逮捕・通常逮捕に基づいて実施される警察段階の取調べには「48時間以内」という制限時間が設けられています(刑事訴訟法第203条第1項)。取調べを拒絶することや、取調べ以外の時間に自宅へ戻ることはできません。また、身柄拘束期間中はスマホなどの所持品がすべて取り上げられるので、自宅や会社に電話連絡を入れることも不可能です。
これに対して、在宅事件(任意捜査)で実施される警察段階の取調べには制限時間は設けられていません。逮捕処分とは違って身柄拘束をされずに済む一方で、警察側のスケジュールも考慮したうえで取調べのタイミングが決定されるので、警察段階の取調べ期間が数カ月以上に及ぶこともあります。
以上の警察段階の取調べを経て得られた証拠や供述内容などを前提に、建造物侵入事件が検察官に送致されるのか微罪処分に付されるのかが決定されます。
検察段階の取調べが実施される
建造物侵入事件が送検された場合(刑事訴訟法第246条本文)、検察段階の取調べが実施されます。
まず、建造物侵入罪の容疑で現行犯逮捕・通常逮捕された場合、検察段階で実施される身柄拘束付きの取調べの制限時間は「24時間以内」が原則です(同法第205条第1項)。ただし、やむを得ない理由によって「警察段階48時間と検察段階24時間の合計72時間以内」の取調べ時間を遵守できない場合には、勾留請求によって「10日間~20日間」例外的に身柄拘束期間が延長されます(同法第206条第1項、同法第208条各項)。つまり、建造物侵入罪の容疑で逮捕・勾留された場合、検察官が起訴・不起訴を決定するまでに最長23日間日常生活から隔離されるということです。
これに対して、建造物侵入罪の容疑について在宅事件で捜査活動が進められる場合、警察段階と同じように、検察段階の取調べにも時間制限は設けられていません。検察から要請がかかったタイミングで検察庁に出頭し、事情聴取を受けることになります。
警察段階及び検察段階の取調べで得られた証拠や情状証拠などを前提に、検察官が建造物侵入事件を公訴提起するか否かを決定します。
検察官が起訴・不起訴を判断する
警察段階及び検察段階の取調べが終了すると、検察官が建造物侵入事件の起訴・不起訴を決定します。
起訴処分とは、「建造物侵入罪に係る事件を公開の刑事裁判にかける旨の訴訟行為」のことです。これに対して、不起訴処分とは、「建造物侵入罪に係る事件を刑事裁判にかけずに、検察限りの判断で刑事手続きを終結させる旨の意思表示」を意味します。
不起訴処分が下されると刑事裁判を経ずに刑事手続きが終了するので、有罪になって刑罰が科されることもなければ、前科がつくこともありません。
その一方で、日本の刑事裁判の有罪率は約99%以上とも言われているので、検察官の起訴処分で刑事裁判にかけられることが確定した時点で、有罪判決が下されることが事実上決定したようなものです。
したがって、「刑事罰を科されたくない」「前科がつくのは困る」と考えるのなら、かならず不起訴処分を獲得しなければいけません。特に、建造物侵入罪の容疑で逮捕された場合には公訴提起判断までの時間が限られているので、スピーディーかつ効率的な防御活動を展開するために、かならず刑事事件を専門に扱っている私選弁護人までご相談ください。
公開の刑事裁判にかけられる
検察官が建造物侵入事件について起訴処分を下した場合、公開の刑事裁判を経て判決が言い渡されます。
刑事裁判の公判期日は「起訴処分後1カ月~2カ月後」が目安です。公訴事実に争いがなければ第1回公判期日で結審に至るのが通例ですが、管理権者からの許諾の有無について錯誤があったなどの反論を展開する場合には複数の公判期日を経て弁論手続き・証拠調べ手続きがおこなわれます。
初犯で建造物侵入罪のみの容疑をかけられているケースなら微罪処分・不起訴処分獲得の公算が大きいですが、過去に余罪があったり建造物侵入罪以外の罪(窃盗罪・強盗罪・ストーカー規制法違反など)でも起訴されてしまったりする場合には実刑判決が下される可能性も否定できません。
実刑判決が確定すると刑期を満了するまで服役を強いられるので、社会復帰・更生が極めて難しくなります。そのため、建造物侵入罪などの容疑で刑事裁判にかけられたときには、「執行猶予付き判決や罰金刑獲得」
を目指した防御活動に力を入れるべきでしょう。かならず刑事裁判実績豊富な私選弁護人までご相談ください。
建造物侵入罪で立件されたときに生じるデメリット4つ
建造物侵入罪の容疑で立件されたときに生じる可能性があるデメリットは以下4点です。
- 建造物侵入罪でも逮捕・勾留による身柄拘束を強いられる可能性がある
- 建造物侵入罪で逮捕・起訴されたことが学校や会社にバレるとペナルティを科されかねない
- 建造物侵入事件の状況次第では実名報道される危険性に晒される
- 建造物侵入罪の容疑で逮捕・起訴されると前科によるデメリットを被り続ける
建造物侵入罪でも逮捕・勾留によって長期間身柄拘束される可能性がある
建造物侵入罪は比較的軽微な犯罪類型に位置付けられることが多いですが、犯罪であることに変わりはありません。そのため、被疑者の前科・前歴の有無や示談の成否、他の犯罪についての刑事責任の有無次第では、建造物侵入罪の容疑で逮捕・勾留されることも充分あり得るでしょう。
たとえば、建造物侵入罪のみの罪状で逮捕・勾留されたとしても、最長23日間身柄拘束される危険性があります。また、建造物侵入罪の容疑で逮捕された後に、窃盗罪などの”余罪”について再逮捕・再勾留された場合や、空き巣犯が複数の窃盗事件で立件された場合、最初に逮捕されてから公訴提起判断に至るまでに数カ月に及ぶ拘置所生活が継続しかねません。
逮捕・勾留に基づく身柄拘束期間中は留置所・拘置所から一切出ることができないため、たとえば、学校への出席・会社への出勤も不可能です(自分の口から欠勤理由を伝えることもできません)。また、長期に及ぶ拘置所生活で心身は疲弊しきってしまいます。たとえば、冷静な判断ができない状況で厳しい取調べを受け続けると、自分にとって不利な供述をしてしまいかねないでしょう。
学校や会社にバレると印象が悪く何かしらの処分を下される可能性が高い
建造物侵入罪の容疑で逮捕・勾留されると、数日~数週間に及ぶ身柄拘束期間が生じるため、勤務先や学校に刑事事件を起こしたことを知られる可能性が高いです。
まず、会社に建造物侵入事件などの刑事事件を起こしたことがバレると、就業規則にしたがって懲戒処分(戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇)が下されます。たとえば、いたずら目的や泥酔しただけで入ってはいけない場所に侵入したに過ぎず、厳重注意だけで済んだ場合には、戒告などの軽い処分で済むこともあるでしょう。これに対して、迷惑防止条例違反などの容疑でも刑事訴追されたような事案では、懲戒解雇処分を下されても文句は言えません。
また、学校に建造物侵入事件を起こしたことが知られると、学則・校則にしたがって何かしらの処分が下されます。たとえば、生徒の更生可能性を重んじる校風であれば注意や一時的な出席停止で済みますが、犯罪行為に対して厳しい態度をとる学校であれば停学処分・退学処分が下される可能性もあります。
学校や会社から何かしらの処分を下されるということは、今まで積み重ねた学歴・経歴・キャリアがすべて無に帰するということです。刑事手続き初期段階の防御活動次第で学校バレ・会社バレのリスクを大幅に軽減できるので、刑事事件を専門に扱っている私選弁護人まですみやかにお問い合わせください。
犯行態様や別件の内容次第では実名報道される可能性もある
建造物侵入罪で逮捕されると、テレビの報道番組やネットニュースで実名報道される可能性があります。特に、犯行態様が悪質だったり、強盗事件などの別罪でも立件されたりするケースでは、実名報道のリスクが高まるでしょう。
一度でも実名報道されてしまうと、インターネット上に一生犯罪情報が残り続けます。また、話題性を集める刑事事件では犯人の身元や勤務先などが特定されるため、日常生活に多大なる支障が生じます。さらに、就職活動や転職活動、結婚や親族関係などの妨げにもなりかねません。
実名報道のリスクを避けるには「逮捕されないこと」が何より重要です。建造物侵入罪のような比較的軽微な犯罪の容疑をかけられている場合なら、早期の示談成立や警察への自首によって逮捕回避の可能性を見出せるので、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談することを強くおすすめします。
建造物侵入罪などの容疑で逮捕・起訴されると前科がつく
建造物侵入罪の容疑で逮捕・起訴されると、有罪判決が確定して前科がつく可能性が極めて高いです。
そして、前科者になってしまうと、今後の社会生活に以下のような悪影響が生じます。
- 前科情報は履歴書の賞罰欄への記載義務が生じる
- 就職活動や転職活動で前科がバレる可能性が高いので、書類審査さえ通過しにくくなる
- 前科を隠して内定を獲得しても、後にバレると経歴詐称を理由に懲戒処分の対象になる
- 有罪判決や前科を理由に就業制限される職種・資格がある(士業、警備員、金融業全般など)
- 前科や逮捕歴を理由にパートナーとの関係や結婚生活が崩壊する(前科は法定離婚事由に相当)
- 前科を理由にパスポート・ビザ発給が制限されると、海外旅行や海外出張の妨げになる
- 前科者が再犯に及ぶと重い刑事責任を科される可能性が高まる
建造物侵入罪で逮捕されるか不安なときに弁護士へ相談するメリット9つ
建造物侵入罪の容疑で逮捕されたときや、過去の建造物侵入について警察から出頭要請がかかったときには、すみやかに刑事事件に強い弁護士に相談することをおすすめします。
なぜなら、弁護士に相談することで以下9点のメリットを得られるからです。
- 被害者との間での迅速な示談交渉を期待できる
- 建造物侵入罪以外の別件についての防御活動も期待できる
- 早期の身柄釈放を目指してくれる
- 逮捕・勾留中の被疑者と積極的に接見機会を設けてくれる
- 微罪処分獲得を目指してくれる
- 不起訴処分(起訴猶予処分)獲得を目指してくれる
- 略式手続きに同意すべきか慎重に判断してくれる
- 執行猶予付き判決獲得を目指してくれる
- 捜査機関に発覚する前に自首するべきか否か判断してくれる
なお、建造物侵入罪の容疑で逮捕された後は、すべての被疑者に「当番弁護士制度」を利用する権利が与えられます。当番弁護士制度を利用したい旨を捜査機関に伝えることで、身柄拘束中の被疑者のもとに当番弁護士がすぐにやってきて、初回無料で刑事手続きの流れや弁護方針についてアドバイスを提供してくれます。
ただし、当番弁護士制度を利用しても、どのような実績・年齢・性別の弁護士がやってくるかはわかりません。相性が悪い当番弁護士にあたってしまうと、せっかくの接見機会が無駄になってしまいます。
したがって、少しでも有利に刑事手続きを進めたいのなら、当番弁護士制度を頼るのではなく、最初から被疑者自身の責任で私選弁護人と契約するべきでしょう。経験や得意分野、刑事弁護への熱意などを総合的に考慮して信頼できる専門家を選ぶことによって、安心して示談交渉や捜査機関への働きかけなどを任せることができるでしょう。
被害者との間で早期の示談成立を期待できる
弁護士に依頼することで、建造物侵入事件の被害者との間で早期の示談成立を見込めます。
示談とは、「刑事事件の当事者同士で民事的な解決策について直接話し合いをおこない、和解契約を締結すること」です。
本来示談は民事的な賠償問題について話し合うものですが、当事者間で示談が成立していることを理由に、軽い刑事処分(微罪処分・不起訴処分・執行猶予付き判決など)を期待できるという特徴があります。
建造物侵入罪の容疑をかけられた事件の示談交渉では、以下の示談条件で合意を目指すのが一般的です。
- 加害者が被害者に対して建造物侵入事件についての賠償責任を「示談金」として支払う
- 加害者は提出済みの被害届・告訴状を取り下げる
- 加害者は捜査機関や裁判所に対して「処罰感情がない旨」を伝える
- 被害者側が捜査機関へ被害申告していない状況なら、示談金の支払いによってトラブル解決とする
- 加害者は今後一切被害者宅周辺に近付かない、被害店舗等に立ち入らない旨を誓約する
弁護士に示談交渉を依頼することで、感情的になっている建造物侵入事件の被害者と冷静な話し合いを設けることができます。また、そもそも建造物侵入事件の被害者の連絡先がわからないとしても、弁護士が着任することによって警察経由で連絡先を入手しやすくなるでしょう。さらに、示談条件について示談ノウハウ有する弁護士のチェックを受けることで、示談相場と乖離したあまりに高額の示談条件を強要される事態も回避できます。
特に、建造物侵入罪の容疑ですでに逮捕されてしまった場合には、「微罪処分の獲得期限」「不起訴処分の獲得期限」までの時間が限られている点に注意が必要です。48時間以内、72時間以内、最長23日以内という期間内に示談が成立しなければ有利な刑事処分獲得が遠のいてしまうので、スピーディーかつ効果的な示談交渉を展開するために、かならず刑事弁護に強い専門家までご依頼ください。
建造物侵入罪だけではなく別件での逮捕リスクに備えた防御活動を期待できる
そもそも、建造物侵入罪の容疑で逮捕されるケースでは、後々余罪についての捜査活動が展開されることが少なくありません。たとえば、空き巣やスリ目的で他人の住宅や店舗に立ち入った場合には、最初に建造物侵入罪の容疑で現行犯逮捕されたとしても、後から窃盗罪の容疑で再逮捕される可能性が高いです。
このような事案で「全体として」有利な刑事処分を獲得するには、建造物侵入罪の被害者との間で示談交渉を進めるだけではなく、窃盗事件について窃盗被害者との間でも同時並行的に示談交渉を進めたり、窃盗事件に至った経緯や生活状況、盗癖などの情状を粘り強く主張し続ける必要があります。
弁護士は事件全体の聞き取りをしたうえで今後の刑事手続きの流れを想定してくれるので、警察からの出頭要請がかかった時点や建造物侵入罪の容疑で逮捕された時点から、余罪についての防御活動も積極的かつ同時並行的に展開してくれるでしょう。
早期の身柄釈放を目指してくれる
建造物侵入罪などの容疑で逮捕されたとしても、弁護士は「早期の身柄釈放」を重要な目標に掲げたうえで、状況に応じてさまざまな防御活動を展開してくれます。
「身柄拘束」という刑事手続きのデメリットに対して、手続きの状況に応じて目指すべき目標は以下の通りです。
- 逮捕前なら「在宅事件」で身柄拘束自体を回避する
- 逮捕されたら「微罪処分」で検察官送致を回避する(身柄拘束期間は最長48時間)
- 送検されたら「勾留回避」で身柄拘束期間短縮化を目指す(身柄拘束期間は最長72時間)
- 逮捕・勾留されたら「不起訴処分獲得」で刑事手続き終結を目指す(身柄拘束期間は最長23日間)
- 起訴されたら「保釈請求」で起訴後勾留を回避して即時釈放を目指す
- 刑事裁判では「罰金刑、執行猶予付き判決」獲得によって実刑判決回避を目指す
たとえば、これらの身柄拘束期間短縮化に役立つ目標を達成するには、「できるだけ早いタイミングで示談を成立させること」「警察や検察官の事情聴取には可能な限り協力的な姿勢を見せること」「無罪獲得の余地がなく証拠が揃っている状況なら素直に犯行を自供すること」「建造物侵入事件などに対して真摯に反省の態度を示して再犯しない旨を誓うこと」などのコツを踏まえる必要があります。
立件された建造物侵入事件ごとに身柄拘束処分回避・軽減に役立つ防御活動は異なるので、かならず刑事事件の実績豊富な私選弁護人までご依頼ください。
接見機会を活用して被疑者を励ましてくれる
建造物侵入罪などの容疑で逮捕されると、被疑者の行動・身体の自由は大幅に制限されて、日常生活からは完全に隔離されます。たとえば、逮捕段階は「接見禁止処分」が下されることが多いため、帰宅すること、家族や会社に電話連絡を入れることだけではなく、家族などの第三者と面会する機会も奪われてしまいます。このような隔離状況で厳しい取調べが実施されるため、被疑者の心身は相当疲弊し、「やってもいないことをやった」と嘘の自白をしてしまったり、捜査機関側に有利な供述調書を作成されたりしかねないでしょう。
ただし、被疑者の依頼を受けた弁護士だけでは例外的に扱われ、逮捕・勾留中の被疑者は、いつでも立会人なく弁護士と接見することができ、また、書類は物の授受をすることができます(刑事訴訟法第39条第1項)。
つまり、逮捕・勾留中の被疑者にとって弁護士だけが自分の味方としていつでも自由に面会できて、取調べに対するアドバイスや捜査活動に対峙する勇気をもらえる存在だということです。
身柄拘束中の被疑者が効果的な防御活動を展開するには弁護士とのこまめな接見機会が非常に重要な意味をもつので、かならず刑事弁護に熱心な私選弁護人までご依頼ください。
微罪処分獲得を目指してくれる
弁護士に相談すれば、建造物侵入罪の容疑をかけられたとしても「微罪処分獲得」を目指してくれます。
微罪処分とは、「建造物侵入事件を送検せずに、警察限りの判断で刑事手続きを終結させる事件処理類型」のことです(刑事訴訟法第246条但書、犯罪捜査規範第198条)。たとえば、建造物侵入罪の容疑で逮捕されたとしても、微罪処分獲得によって身柄拘束期間が最長48時間以内で済みますし、在宅事件として捜査活動が進められていたとしても「起訴されるのではないか」という不安を早期に払拭することができます。当然ながら、有罪判決が下されることもなければ、前科がつくこともありません。
建造物侵入事件が微罪処分の対象になるのは、事件や被疑者が以下のような特徴を有する場合です。
- 検察官があらかじめ指定した軽微な犯罪類型に該当すること(窃盗罪、占有離脱物横領罪、傷害罪、暴行罪、建造物侵入罪など)
- 犯情が極めて軽微であること(計画性がない衝動的な犯行、やむにやまれぬ同情できる動機があったことなど)
- 建造物侵入などの犯行によって生じた被害が軽微であること(被害額2万円以内、全治1週間程度の怪我が目安)
- 被害者との間で示談が成立しており被害弁償が済んでいること
- 素行不良者ではないこと(前科・前歴がないこと)
- 家族・親族・上司など、更生に資する身元引受人がいること
ただし、建造物侵入罪を微罪処分に付するか否かの判断については警察に大幅な裁量が認められているので、これらの諸事情を満たすようなケースでも微罪処分が見送られて送検される可能性も否定できません。
したがって、微罪処分による早期の刑事手続き終結を目指すなら、捜査機関に対して「微罪処分が相当である旨」を継続的に上申し続ける必要があるでしょう。
不起訴処分(起訴猶予)獲得を目指してくれる
弁護士に相談すれば、建造物侵入罪の容疑で逮捕・送検されたとしても、「不起訴処分(起訴猶予処分)獲得」を目指してくれるでしょう。
先ほど紹介したように、不起訴処分とは「建造物侵入事件について公開の刑事裁判を見送り、検察官限りの判断で刑事手続きを終結させる旨の意思表示」のことです。不起訴処分の獲得によって「有罪や前科」というデメリットを回避できます(刑事裁判にかけられるとほとんどの事件が有罪になるので、不起訴処分獲得が有罪回避の最終ラインと言えるでしょう)。
建造物侵入事件を起こした人のなかには、「他人の住宅などに違法な目的をもって侵入したことに間違いはないので、刑事裁判にかけられるのは仕方がないのではないか」と最初から諦めている被疑者が少なくありません。しかし、これは間違いです。
なぜなら、検察官が不起訴処分を下すのは以下3つの類型に分類されるので、建造物侵入罪に係る被疑事実に関する証拠がそろっている場合でも「起訴猶予」という形で刑事裁判を回避することが可能だからです。
- 嫌疑なし:建造物侵入罪に及んだ証拠が存在しない(建造物侵入罪を基礎付ける事実関係が存在しない)ケース
- 嫌疑不十分:建造物侵入罪に及んだことを立証する証拠が不足しているケース
- 起訴猶予:建造物侵入罪に及んだこと自体は間違いないものの、諸般の事情を総合的に考慮すると、刑事裁判にかける必要がないと判断できるケース
起訴猶予処分に付するかどうかは、犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情況などの諸般の事情が総合的に考慮されます(刑事訴訟法第248条)。
示談の成否や取調べにおける供述方針が不起訴処分獲得を左右するので、かならず刑事手続き初期段階から私選弁護人に依頼をして効率的な防御活動を展開してもらいましょう。
略式手続きによる早期の刑事手続き終結を検討してくれる
建造物侵入罪の容疑をかけられたときに忘れてはいけないのが、「略式手続き(略式起訴・略式裁判・略式命令)」です。
略式手続きとは、「簡易裁判所の管轄に属する刑事事件について100万円以下の罰金刑が予測される場合に、被疑者側の同意がある場合に限って、公開の刑事裁判を省略して簡易・簡便な形で罰金刑を確定させる裁判手続き」のことです(刑事訴訟法第461条)。
たとえば、建造物侵入罪だけで逮捕・起訴された場合、最終的に科される判決内容は「3年以下の懲役刑または10万円以下の罰金刑」です。そして、判決内容は検察官の求刑を踏まえて決定されるので、たとえば、「検察官が刑事裁判で10万円以内の罰金刑を求刑すること」を公判の方針として決めている場合には、刑事裁判手続きを経た結果、判決で罰金刑が言い渡される公算が高いと言えます。わざわざ罰金刑を確定させるためだけに、起訴処分後数カ月の期間をかけて裁判手続きをおこなうのは訴訟経済に反しますし、被疑者・被告人側の負担にもなりかねません。
このように、「前科がつくのはやむを得ないが罰金刑で済むなら良しとする」「裁判官の面前で反論を主張する機会を放棄しても特段のデメリットは生じない」などの事情がある場合に利用できるのが略式手続きです。検察官からの略式手続きに同意をすることで略式起訴段階で刑事手続きが終結するので、社会復帰を目指すタイミングを大幅に前倒しできるでしょう。
ただし、建造物侵入罪以外にも窃盗罪や強盗罪などの余罪で刑事訴追されているケースでは、そもそも略式手続きを利用できないケースが少なくありません(たとえば、強盗罪の法定刑は「5年以上の有期懲役刑」なので略式手続きの対象外です)。また、別件の窃盗罪で処断されるとしても、「占有の有無」「窃取への該当性」などの法律論や事実認定を細かく争いたい場合には、略式手続きを選択せずに公開の刑事裁判でしっかりと争うべきです。
刑事裁判の経験豊富な弁護士なら、略式手続きによる罰金刑を妥協点にするべきかを冷静に判断してくれるでしょう。
執行猶予付き判決獲得を目指してくれる
建造物侵入罪などの容疑で逮捕・起訴されたとしても、刑事事件の実績豊富な弁護士は「執行猶予付き判決」の獲得によって実刑判決回避を目指してくれます。
執行猶予とは、「判決で指定された一定期間が何のトラブルも生じずに経過することによって刑の執行が消滅する制度」のことです。執行猶予期間中は普段通りの生活を送ることができますし、執行猶予期間が明ければ実刑判決が科される心配もなくなります。
なお、執行猶予付き判決の対象になるには、「3年以下の懲役刑・禁錮刑・50万円以下の罰金刑の言渡しを受けたとき」という要件を満たさなければいけません(刑法第25条第1項)。
たとえば、建造物侵入罪単体で逮捕・起訴された場合には標準的な防御活動を展開するだけで執行猶予付き判決の対象になりますが、建造物侵入罪と合わせて窃盗罪・強盗罪・不同意わいせつ罪などの容疑で逮捕・起訴された場合には、積極的な防御活動によって自首減軽・酌量減軽などを目指す必要があるため、警察から出頭要請がかかる前から優秀な私選弁護人の支援を受けるのが理想だと言えるでしょう。
自首するべきか否かを判断してくれる
建造物侵入事件などの犯罪行為が警察に発覚する前であれば、「自首」も重要な選択肢のひとつです。
自首とは、「まだ捜査機関に発覚しない前に、犯人自ら進んで建造物侵入などの犯罪行為に及んだ事実を申告し、刑事処罰を求める意思表示」のことです(刑法第42条第1項)。有効な自首が成立すれば、「刑の任意的減軽」というメリットを得られます。
ただし、公訴時効完成直前に自首をする意義はそう大きくはありませんし、自首にはタイミング・要件など注意すべき点が少なくありません。
過去の建造物侵入事件などの犯罪行為について警察から出頭要請がかかっていないとしても、いきなり自首を検討するのではなく、まずは弁護士に相談をして自首を含めた今後の方針についてアドバイスをもらうべきでしょう。
建造物侵入罪の容疑で逮捕されるか不安なときは弁護士へ相談しよう
建造物侵入罪の容疑で逮捕されたとしても、初犯で示談が成立すれば厳しい刑事処分を回避しやすいです。
これに対して、建造物侵入罪以外の容疑をかけられている事案では、建造物侵入罪での逮捕をきっかけに窃盗罪・強盗罪・迷惑防止条例違反などの本格的な捜査活動に発展するリスクに晒されます。
比較的軽微な犯罪に位置付けられる建造物侵入罪ですが、事件の全貌や刑事手続きの流れを冷静に分析しなければ想像以上の刑罰が科されて日常生活に多くの支障が生じかねません。
刑事手続き初期段階の防御活動が今後の運命を左右すると言っても過言ではないので、警察からの連絡の有無にかかわらず、できるだけ早いタイミングで刑事事件を専門に扱っている弁護士までお問い合わせください。