覚せい剤は、使用や譲渡・譲受だけではなく、「所持」をしただけで逮捕されます。
そのため、営利目的所持であろうが、単純所持であろうが、捜査機関に発覚した以上は、逮捕・勾留によって長期間身柄拘束されます。また、覚せい剤所持事件をめぐる状況次第では、刑事裁判にかけられて実刑判決が下される可能性も否定できません。
そこで今回は、覚せい剤と関わりをもった経験があって後日逮捕されるか不安を抱えている方や、ご家族が覚せい剤所持の容疑で逮捕された方のために、以下4点について分かりやすく解説します。
- 覚せい剤に関する犯罪類型
- 覚せい剤の所持で逮捕されたときの刑事手続きの流れ
- 覚せい剤の所持で逮捕されたときに生じるデメリット
- 覚せい剤の所持で逮捕されたときに弁護士へ相談するメリット
薬物犯罪に対する捜査活動は厳しくなっているのが実情です。特に、薬物犯罪の前科・前歴があったり、入手経路に関連して組織的な関与が疑われたりすると、捜査機関から厳しい追及を受けかねません。
したがって、覚せい剤所持などの容疑で刑事訴追されるリスクを抱えている場合には、出来るだけ早いタイミングで弁護士へ相談して、不起訴処分や執行猶予付き判決獲得に向けた防御活動を展開してもらいましょう。
目次
覚せい剤所持に関する犯罪
まずは、覚せい剤を所持したときに問われる罪状の構成要件や法定刑について解説します。
覚せい剤を所持したときに成立する犯罪類型
覚せい剤の所持については、以下2つの犯罪類型が定められています。
- 覚せい剤の単純所持罪
- 覚せい剤の営利目的所持罪
まず、「覚せい剤をみだりに所持したとき」には、覚せい剤の単純所持罪が成立します(覚醒剤取締法第41条の2第1項)。たとえば、覚せい剤を自己使用する目的で所持していた場合が挙げられます。
次に、「営利目的で覚せい剤をみだりに所持したとき」には、覚せい剤の営利目的所持罪が成立します(同法第41条の2第2項)。
なお、覚せい剤の単純所持罪・営利目的所持罪はどちらも未遂犯も処罰対象です(同法第41条の2第3項)。また、「みだりに」は「正当な理由がないのに」程度の意味合いと理解して差し支えありません。
覚せい剤所持の法定刑
覚せい剤の所持で逮捕・起訴された場合、以下の法定刑の範囲で処断されます。
- 覚せい剤の単純所持罪:1カ月以上10年以下の懲役刑
- 覚せい剤の営利目的所持罪:1年以上の有期懲役刑、または、情状により1年以上の有期懲役刑及び500万円以下の罰金刑
覚せい剤所持の法定刑について忘れてはいけないのが、執行猶予との関係です。
つまり、執行猶予が付くのは「3年以下の懲役刑・禁錮刑・50万円以下の罰金刑の言渡しを受けたとき」に限られるので(刑法第25条第1項)、覚せい剤の所持で逮捕・起訴された場合には、執行猶予付き判決も充分に狙えるということです。
ただし、覚せい剤事案では「被害者との示談交渉」という防御活動が通用しません。
そのため、執行猶予付き判決獲得を目指すなら、刑事裁判実績豊富な弁護士へ依頼をして、有利な情状証拠などを揃えてもらうべきでしょう。
そもそも覚醒剤取締法違反の「覚せい剤」とは
覚せい剤所持罪の客体である「覚せい剤」とは、フエニルアミノプロパン(アンフェタミン)・フエニルメチルアミノプロパン(メタンフェタミン)、及び、その塩類、これらのを含有する精神刺激薬のことです(覚醒剤取締法第2条第1項各号)。
一時的な覚醒効果・幻覚効果の後、激しい脱力感・疲労感に苛まれます。また、極めて中毒性が高いために覚せい剤自体を断つことも難しく、乱用・幻覚・妄想に囚われたまま心身がボロボロになります。さらに、覚せい剤使用後の幻覚状態で正気を失ってしまうと、錯乱状態で自動車を運転して交通事故を起こしてしまったり、殺人・強盗などの凶悪犯罪に及んだりして、重い刑事責任を問われる危険性も生じかねません。
なお、匿名掲示板やSNSなどで覚せい剤が取引されるときには、「シャブ」「スピード」「S(エス)」「アイス」「白い粉」「ヤーバー」などの俗称を付けられることが多いです。
覚せい剤所持以外に問われ得る犯罪類型と法定刑
覚せい剤が社会に及ぼす悪影響の大きさに鑑みて、所持以外のさまざまな行為態様が処罰対象とされています。
覚せい剤に関与した被疑者が容疑をかけられ得る代表的な罪状と法定刑は以下の通りです。
行為類型 | 法定刑 |
---|---|
覚醒剤の輸入・輸出・製造 | 1年以上の有期懲役刑 |
覚醒剤の営利目的での輸入・輸出・製造 | 無期もしくは3年以上の懲役刑、または、情状により無期もしくは3年以上の懲役刑及び1,000万円以下の罰金刑 |
覚醒剤の譲渡・譲受 | 10年以下の懲役刑 |
覚醒剤の営利目的での譲渡・譲受 | 1年以上の有期懲役刑、または、情状により1年以上の有期懲役刑及び500万円以下の罰金刑 |
覚醒剤の使用 | 10年以下の懲役刑 |
覚醒剤の営利目的での使用 | 1年以上の有期懲役刑、または、情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金刑 |
覚醒剤原料の輸入・輸出・製造 | 10年以下の懲役刑 |
覚醒剤原料の営利目的での輸入・輸出・製造 | 1年以上の有期懲役刑、または、情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金刑 |
覚醒剤原料の所持・譲渡・譲受・使用 | 7年以下の懲役刑 |
覚醒剤原料の営利目的での所持・譲渡・譲受・使用 | 10年以下の懲役刑、または、情状により10年以下の懲役刑及び300万円以下の罰金刑 |
※「覚醒剤原料」とは、エフェドリン・プソイドエフェドリン・クロロエフェドリン・クロロプソイドエフェドリン・セレギリン・デプレニルなどのこと(覚醒剤取締法第2条第5項)
たとえば、覚せい剤所持の容疑で現行犯逮捕された後、実施された尿検査の結果で陽性反応が出た場合、覚せい剤使用の罪でも立件されかねません。
複数の犯罪類型の容疑をかけられた場合、再逮捕・再勾留が繰り返されて、身柄拘束期間が長期化する危険性が生じます。
覚せい剤所持以外の犯罪について心当たりがあるのなら、速やかに薬物犯罪に強い弁護士へ相談をして、自首などの防御活動について検討してもらうべきでしょう。
【注意!】覚醒剤取締法と麻薬取締法の違い
麻薬取締法(麻薬及び向精神薬取締法)は、麻薬・第1種向精神薬・第2種向精神薬・第3種向精神薬を規制対象とする法律のことです。
覚醒剤取締法・麻薬取締法・大麻取締法・あへん法の4法律を総称して「薬物四法」と呼ばれ、公衆に悪影響を及ぼしかねない違法薬物の規制を行っています。
【注意!】覚醒剤取締法と麻薬特例法の違い
覚せい剤に関わってしまうと、麻薬特例法(国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律)違反の容疑で逮捕される可能性も生じます(麻薬特例法は平成3年に立法された新しい法律なので、薬物四法には含まれません)。
麻薬特例法違反の行為類型は以下の通りです。
行為類型 | 法定刑 |
---|---|
業として行う覚醒剤の輸入、輸出、製造、譲渡、譲受 | 無期または5年以上の懲役刑及び1,000万円以下の罰金刑 |
薬物犯罪収益等の取得・処分事実・発生原因の仮装、隠匿 | 10年以下の懲役刑もしくは500万円以下の罰金刑(併科あり) |
薬物犯罪収益等の取得・処分事実・発生原因の仮装、隠匿の予備行為 | 2年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑 |
薬物犯罪収益等の収受 | 7年以下の懲役刑もしくは300万円以下の罰金刑(併科あり) |
規制薬物としての物品の輸入、輸出 | 3年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑 |
規制薬物としての譲渡、譲受、所持、受交付 | 2年以下の懲役刑または30万円以下の罰金刑 |
薬物犯罪や薬物濫用の公然、あおり、唆し | 3年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑 |
覚せい剤の所持で逮捕されるときの刑事手続き
覚せい剤所持などの覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕されると、以下の流れで刑事手続きが進められます。
- 覚せい剤所持などについて警察から接触がある
- 覚せい剤所持について警察段階の取調べが実施される
- 覚せい剤所持について検察段階の取調べが実施される
- 覚せい剤所持について検察官が公訴提起するか否かを判断する
- 覚せい剤所持の容疑で公開の刑事裁判にかけられる
覚せい剤所持について警察からアプローチがある
覚せい剤の所持などの薬物犯罪が捜査機関に発覚したとき、状況に応じて警察から以下の方法でアプローチをかけられます。
- 現行犯逮捕
- 通常逮捕
- 緊急逮捕
- 任意の出頭要請・事情聴取
覚醒剤取締法違反で現行犯逮捕される場合
現行犯逮捕とは、「現行犯人(現に罪を行い、または、罪を行い終わった者)に対する身柄拘束処分」のことです(刑事訴訟法第212条第1項)。現行犯逮捕は令状主義の例外に位置付けられるため、無令状で誰でも行うことができます(同法第213条)。
たとえば、繁華街などの街中で実施される職務質問や自動車検問の際に覚せい剤を所持していることが判明した場合、交通事故を起こした現場で覚せい剤が見つかった場合などでは、即時に現行犯逮捕されて警察署に連行されます。また、簡易の尿検査によって陽性反応が出た場合には、覚せい剤使用の罪で現行犯逮捕されることもあり得るでしょう。
なお、職務質問や自動車検問のときに見つかった「白い粉末」が覚せい剤であることは簡易検査キットを使った判定ですぐに発覚します。余程特殊な事情が存在しない限り、「見つかった粉末が覚せい剤であることを知らなかった」「知らない間に勝手にポケットに入っていた」などの言い訳は通用しません。また、そもそも職務質問などのタイミングで実施される所持品検査を拒絶することも現実的には難しいでしょう。
- 犯人として追呼されているとき
- 贓物や明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき
- 身体や被服に犯罪の顕著な証跡があるとき
- 誰何されて逃走しようとするとき
覚醒剤取締法違反で通常逮捕される場合
通常逮捕とは、「裁判官の事前審査を経て発付される逮捕令状に基づいて実施される身柄拘束処分」のことです(刑事訴訟法第199条第1項)。裁判官の発付する逮捕状を根拠に、覚せい剤所持罪の被疑者の身体・行動の自由が制限されます(令状主義)。
逮捕状の発付が認められるのは、「逮捕の理由(被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること)」「逮捕の必要性=留置の必要性(被疑者の身柄を強制的に拘束した状態での取調べを実施する必要性)」の2つの要件を満たしたときです(犯罪捜査規範第118条、同規範第122条)。
覚醒剤取締法違反で緊急逮捕される場合
緊急逮捕とは、「長期3年の自由刑にあたるか、それより重い罪に及んだことを疑うに足りる十分な理由がある場合で、かつ、急速を要し、逮捕状を求めるゆとりがないときに、その理由を告げるだけで被疑者の身柄を拘束できる強制処分」のことです(刑事訴訟法第210条第1項)。
緊急逮捕が実施されたときには、被疑者の身柄を押さえた後に逮捕状の発付手続きが実施されます。
覚醒剤取締法違反の容疑で任意捜査が実施される場合
覚せい剤を所持していることが捜査機関に発覚したとしても、常に逮捕手続きが採られるわけではありません。
なぜなら、現行犯逮捕・通常逮捕・緊急逮捕はいずれも被疑者の身柄を拘束する強制処分に分類されますが、覚せい剤所持事件の状況次第では、「逮捕をする必要性」が最初から存在しなかったり、途中で「逮捕をする必要性」が消滅したりするからです(なお、細かい法律論になりますが、各逮捕手続きにおける「逮捕の必要性」はそれぞれ異なる基準・理屈で判断されます)。
ただし、「逮捕の必要性」が存在しないからと言って、覚せい剤所持事件について一切捜査活動が実施されないというわけではありません。「逮捕の必要性」の要件を満たさないときでも、任意捜査によって覚せい剤所持事件に関する捜査活動が展開されます。
任意捜査とは、「被疑者の同意を前提として実施される捜査活動」のことです。たとえば、警察からの出頭要請がかかったタイミングで来署し、あくまでも任意のもと事情聴取が実施されます。そして、事情聴取が終わればそのまま帰宅して、次回の出頭要請までは普段通りの生活を送ることになります(在宅事件)。
覚せい剤所持に関する捜査活動が任意捜査の一環として実施されるのは以下のようなケースです。
- 氏名・住所・職業が明らかで逃亡のおそれがない
- 前科・前歴のない完全初犯
- 覚せい剤所持に至った理由や入手ルートなどを全面的に自供している
- 覚せい剤をめぐる組織的な犯行に加担した疑いがない
- 任意の出頭要請や事情聴取に誠実に対応しており、供述内容に不明確な点や矛盾が存在しない
覚せい剤所持について警察段階の取調べが実施される
覚せい剤所持などの容疑で逮捕された後は、強制的に警察署に連行されて、警察段階の取調べが実施されます。黙秘や全面自供など、取調べ自体に対してどのような態度をとるかは自由です。ただし、取調べ自体を拒絶することはできません。
逮捕処分に基づいて実施される警察段階の取調べには「48時間以内」という制限時間が設けられています(刑事訴訟法第203条第1項)。警察段階で身柄が押さえられている間、事情聴取以外は留置場・拘置所で過ごす必要があります。たとえば、取調べ以外のタイミングで自宅に戻ったり買い物に行ったりすることはできません。また、逮捕された段階でスマートフォンなどの所持品がすべて取り上げられるので、家族や会社に連絡することも不可能です。
これに対して、任意の出頭要請に基づいて実施される取調べについては、警察段階及び検察段階の取調べに期間制限は設けられていません。なぜなら、任意捜査の一環として実施される取調べは被疑者の同意を前提に行われるものなので、被疑者の身体・行動の自由に対する制約が一切存在しないからです。
覚せい剤所持について検察段階の取調べが実施される
覚せい剤所持の容疑について警察段階の取調べが終了すると、事件は検察官に送致されます(刑事訴訟法第246条本文)。
検察段階で実施される取調べの制限時間は「原則24時間以内」です(刑事訴訟法第205条第1項)。つまり、警察段階の取調べ時間と合算すると、「原則72時間以内」に公訴提起するか否かの判断がされるということです。
ただし、覚せい剤所持のような薬物犯罪の場合、72時間の原則的な身柄拘束期間だけでは充分な捜査活動が展開できないケースも少なくありません。
たとえば、テレグラムなどの匿名通話アプリやネット掲示板を経由して覚せい剤を入手したようなケースでは、覚せい剤を売り渡した相手方の情報を解析するのに相当の時間を要します。また、覚せい剤所持について組織的な関与が疑われる場合には、関係者の参考人聴取や共犯者の追跡にもかなりの捜査資源を投入しなければいけないでしょう。
このように、「やむを得ない事情」が存在する場合には、検察官による勾留請求が認められています(同法第206条第1項)。そして、裁判官が勾留状の発付を認めると、覚せい剤所持罪等の容疑で逮捕された被疑者の身柄拘束期間が「10日間~20日間」の範囲で例外的に延長されます(同法第208条各項)。
以上を踏まえると、覚せい剤所持事件のような事件の全体像を把握するのが大変な事件類型では、逮捕段階からカウントして「最大23日間の身柄拘束期間」が生じる可能性があると言えるでしょう。
覚せい剤所持について検察官が公訴提起するか否かを判断する
逮捕・勾留による身柄拘束期限が到来するまでに、検察官が覚せい剤所持等の刑事事件について起訴・不起訴を決定します。
起訴処分とは「覚せい剤所持事件を公開の刑事裁判にかける旨の訴訟行為」のことです。これに対して、不起訴処分は「覚せい剤所持事件を公開の刑事裁判にかけることなく、検察官限りの判断で刑事手続きを終結させる旨の意思表示」を意味します。
理屈上、起訴・不起訴の判断は「刑事裁判を受けるか否か」を左右するだけのものです。
ただし、日本の刑事裁判の有罪率が約99%に至ることを踏まえると、起訴・不起訴の判断には「刑事裁判を受けるか否か」以上の意味がある点に注意しなければいけません。つまり、「検察官が起訴処分を下して刑事裁判にかけられることが確定した時点で、事実上有罪判決を避けられない」ということです。
したがって、「実刑判決が下されること」「前科がつくこと」を嫌うなら、刑事裁判で防御活動を展開するのでは遅く、検察官による公訴提起判断の段階で何としても不起訴処分を獲得する必要があります。薬物犯罪に強い私選弁護人の力を借りながら、効果的な防御活動を展開してください。
覚せい剤所持について公開の刑事裁判にかけられる
検察官が起訴処分を下した場合、覚せい剤所持事件が公開の刑事裁判にかけられます。
公開の刑事裁判が開廷される時期は、起訴処分から「1カ月~2カ月後」が目安です。そして、公訴事実に争いがなければ第1回公判期日で結審して後日判決が言い渡されます。これに対して、「違法薬物の認識がなかった」などの主張によって否認する場合には、複数の公判期日をかけて弁論手続き・証拠調べ手続きが行われて判決言い渡しに至ります。
覚せい剤の所持については、単純所持であれ営利目的所持であれ、初犯でも実刑判決が下される可能性があります。実刑判決が下されると刑期を満了するまで社会生活から完全に隔離されるので、刑事裁判実務の実績豊富な弁護士に依頼をして執行猶予付き判決獲得を目指してもらいましょう。
覚せい剤所持が警察にバレたときに生じるデメリット6つ
覚せい剤の所持が警察にバレて逮捕されると、以下6つのデメリットが生じます。
- 逮捕・勾留によって長期間身柄拘束される可能性が高い
- 覚せい剤所持が学校にバレると退学処分等のリスクに晒される
- 覚せい剤所持が会社にバレると懲戒処分のリスクに晒される
- 覚せい剤所持などの薬物犯罪は実名報道される可能性が高い
- 覚せい剤所持の前科・前歴があると刑事処分が重くなる可能性が高い
- 覚せい剤所持で逮捕・起訴されると前科がつく
逮捕・勾留によって長期間身柄拘束される可能性が高い
覚せい剤所持などの薬物犯罪は、捜査活動が開始すると、長期間身柄拘束される可能性が高いです。なぜなら、薬物犯罪には以下のような特徴があるからです。
- 覚せい剤や注射器・吸引器などの証拠物を隠滅されるおそれがある
- 密売人や他の共犯者と口裏を合わせる可能性がある
- 組織的犯行が疑われる薬物犯罪は入念な捜査活動によって入手経路・密売人情報・顧客情報を収集する必要がある
- 薬物犯罪に及んだ被疑者・被告人は根本的に捜査機関から信用されないことが多い
まず、逮捕・勾留されると公訴提起判断までに最長23日間の身柄拘束期間が生じます。薬物犯罪は入手経路や注射器・吸引機などの捜索差し押さえなどの捜査に時間を要するため、余程的確な防御活動を尽くさない限り、最低でも1~2週間程度は日常生活に復帰できないでしょう。
次に、薬物犯罪で検挙された被疑者・被告人は「証拠隠滅や逃亡のおそれがある」と評価される可能性が高いので、起訴処分が下された後にも「起訴後勾留」が続くケースも少なくありません。保釈請求が認められず起訴後勾留が続くと、「公訴提起から2カ月(その後1カ月ずつ更新可能)」は身柄拘束され続けます(刑事訴訟法第60条第1項、第2項)。
さらに、覚せい剤所持だけではなく、使用などの罪でも立件された場合、再逮捕・再勾留が繰り返された結果、最終的な公訴提起判断に至るまでに身柄拘束期間が数カ月に及ぶこともあり得ます。
刑事処分の内容に関わらず、身柄拘束期間が長期化すると、それだけで会社や学校生活などの日常生活に生じるデメリットは甚大です。刑事実務に詳しい弁護士に相談のうえ、早期の身柄釈放を目指してもらいましょう。
覚せい剤所持が学校にバレると退学処分等のリスクに晒される
覚せい剤所持の容疑で逮捕された事実が学校に発覚すると、何かしらの処分が下される可能性が高いです。特に近年、SNSなどで簡単に薬物を入手できるようになったので、10代の若者が薬物に手を染めてしまうケースが増加傾向にあります。
学生が薬物犯罪に手を染めた場合の処分内容は、学則・校則の規定内容・事件の深刻度・学校生活の様子・事件を起こした経緯・反省の態度などを総合的に考慮して決定されます。
なお、覚せい剤所持のような薬物犯罪に手を染めると譴責処分のような軽い処分で済ませるのは難しく、停学処分・退学処分などの重い処分を覚悟しなければいけません。履歴書に「中退」が記録されると今後の就職活動の難易度が格段に高くなるので、安易な考えで覚せい剤に手を出すのは絶対にやめましょう。
覚せい剤所持が会社にバレると懲戒処分のリスクに晒される
覚せい剤所持の容疑でで逮捕されたことが会社にバレると、何かしらの懲戒処分が下される可能性が高いです。
懲戒処分の内容は各社が定める就業規定にしたがって決まります。ただし、薬物犯罪に手を染めたケースでは「戒告・譴責・減給・出勤停止・降格」などの軽い処分で済むとは考えにくく、「諭旨解雇・懲戒解雇」などの重い処分が下されるでしょう。
さらに、覚せい剤所持事件を起こして会社の信用を低下させた場合や、業務に損害を生じさせた場合には、会社から損害賠償請求をされることもあり得ます。企業が被った損害を個人だけで賠償しきるのは簡単ではないので、かならず刑事・民事両方に強い弁護士に相談してください。
覚せい剤所持などの薬物犯罪は実名報道される可能性が高い
覚せい剤の所持で逮捕されると、実名報道の危険性に晒されます。芸能人だけではなく、一般人が覚せい剤の所持に手を染めただけでも、報道番組やネットニュースに掲載される可能性があります。
実名報道されると、家族・知人・会社にバレて関係性や信頼関係が崩れ去ります。また、見ず知らずの匿名の第三者から被疑者本人や家族に誹謗中傷が繰り返されることもあるでしょう。さらに、Web上に本名・顔写真・職業・事件の詳細が永久に残る状態になるので、社会更生しにくい状況が付きまといます。
そもそも、仮に不起訴処分や無罪判決を獲得できたとしても、逮捕された段階で実名報道されるのが日本メディアの実情です。「絶対に報道されるのは避けたい」と考えるなら、覚せい剤所持の容疑で警察からコンタクトがある前に弁護士へ相談をして、在宅事件処理を目指してもらうしか方法は残されていないでしょう。
覚せい剤所持の前科・前歴があると刑事処分が重くなる可能性が高い
特に違法薬物に関与した前科・前歴がある状況で覚せい剤所持の容疑をかけられると、厳しい刑事処罰を覚悟する必要があります。
たとえば、執行猶予期間中に再犯に及んだ場合、起訴された時点で実刑判決から逃れることはできません。また、仮に執行猶予明けや前歴しかない状況でも、少なくとも逮捕・勾留という身柄拘束処分は回避しにくいでしょう(場合によっては、保釈請求も通りません)。さらに、実際の取調べでも、捜査員からの当たりが強くなるなどの現実的な問題も生じます。
覚せい剤所持で逮捕・起訴されると前科がつく
覚せい剤所持の容疑で逮捕・起訴されると、有罪判決が下される可能性が高いです。
実刑判決であろうが執行猶予付き判決であろうが、有罪判決が下された時点で「前科」がつきます。
そして、前科者になると、今後の社会生活に以下のデメリットが生じます。
- 前科情報は履歴書の賞罰欄への記載義務が生じるので就職活動・転職活動が難しくなる
- 前科を理由に就けない仕事が多い(士業、警備員、金融業など)
- 前科を理由にパスポート・ビザ発給が拒絶されると海外渡航に制限がかかる
- 前科がつくことは「法定離婚事由」に該当するので婚姻関係が破綻する
- 再犯時の刑事罰が重くなる可能性が高い
- 薬物犯罪に対する世間の目は厳しいので、本人の社会復帰だけではなく配偶者や子どもの生活にも支障が生じかねない
覚せい剤所持で逮捕されたときに弁護士へ相談するメリット5つ
覚せい剤所持などの薬物犯罪を理由に逮捕されたときは、出来るだけ早いタイミングで弁護士へ相談することを強くおすすめします。
なぜなら、薬物犯罪の経験豊富な弁護士に相談することで以下5点のメリットを得られるからです。
- 早期の身柄釈放に向けて捜査機関に働きかけてくれる
- 接見機会を利用して取調べの注意点を解説してくれる
- 覚せい剤の認識がなかったことを理由に不起訴処分・無罪判決獲得を目指してくれる
- 少しでも有利な刑事処分獲得に向けて尽力してくれる
- 薬物依存症対策に強い施設などを紹介してくれる
なお、覚せい剤所持の容疑で逮捕されたときには「私選弁護人」を頼るのがおすすめです。なぜなら、私選弁護人は被疑者本人の采配で自由な人物を選任できるからです。
そもそも、逮捕された被疑者は「当番弁護士制度」を利用できます。身柄拘束されてすぐに当番弁護士を呼べば、初回無料で今後の防御方針などについて説明をしてもらえます。しかし、当番弁護士制度ではやってくる人物の実績・キャリア・経験・年齢などについて要望を出すことはできないので、運が悪ければ「覚せい剤所持事件の経験がない弁護士」が担当になる危険性もあります。
私選弁護人に依頼をすると弁護士費用の負担が重くなりますが、その代わりに、覚せい剤などの薬物犯罪の経験豊富な信頼に値する弁護士と委任契約を締結できます。当サイトでも薬物犯罪に強い弁護士を多数掲載しているので、お住まいエリアなどからアクセスしやすい法律事務所までお問い合わせください。
早期の身柄釈放に向けて捜査機関に働きかけてくれる
弁護士は、覚せい剤所持の容疑で逮捕された被疑者の身柄拘束期間短縮化を目指した防御活動を尽くしてくれます。
ただし、捜査活動の進捗状況に応じて、目指すべき防御目標は以下のように異なります。
- 捜査活動実施前:自首
- 逮捕後:逮捕処分の早期解除、勾留阻止
- 勾留後:勾留処分の早期解除
- 起訴後:すみやかな保釈請求
自首
覚せい剤を所持していることが警察に発覚する前なら、「自首」が有効な選択肢になります。
自首とは、「まだ捜査機関に発覚しない前に、犯人自ら進んで下着泥棒に及んだ事実を申告し、刑事処罰を求める意思表示」のことです(刑法第42条第1項)。
たとえば、警察が覚せい剤所持事件を一切把握していないときや、覚せい剤をめぐる事件の全体像を把握しているものの個別の犯人を特定できていないときに、犯人自身が警察に出頭することで自首は成立します。
自首が有効に成立すれば、「刑の任意的減軽」という効果が生じます。つまり、覚せい剤所持の容疑で逮捕・起訴されて刑事裁判にかけられることになったとしても、短い実刑判決や執行猶予付き判決を期待できるということです。
逮捕勾留の解除、勾留阻止
覚せい剤所持の容疑で逮捕・勾留されたとき、弁護士は早期の身柄釈放を目指した防御活動を期待できます。
たとえば、既に供述や証拠が出揃った状況なら、在宅事件への切り替えを捜査機関に働きかけてくれます。また、不当に身柄拘束処分が継続しているなら、準抗告などの法的措置によって対抗してくれるでしょう。
保釈請求
覚せい剤所持の容疑で起訴された場合、起訴後勾留を回避するために「保釈請求」を実施してくれます。
そもそも、覚せい剤事犯は大々的に捜査活動が実施されるので、共犯者との口裏合わせや証拠隠滅を防止するために、起訴後も勾留が続く可能性が高いです。起訴後勾留が続くと「起訴処分から2カ月(その後、1カ月ごとに更新)」留置施設から出ることができません。
保釈請求は以下3種類に分類されるので、状況に応じて適切な手続きを履践してもらいましょう。
- 権利保釈(保釈除外事由に該当しない限り認められる保釈)
- 裁量保釈(裁判官の裁量によって認められる保釈)
- 義務的保釈(身柄拘束期間が不当に長期化している場合に認められる保釈)
接見機会を利用して取調べの注意点を解説してくれる
弁護士は、接見機会をフル活用して被疑者のサポートに徹してくれます。
そもそも、逮捕・勾留中の被疑者と自由に面会できるのは弁護士だけです。厳しい取調べが継続する中、自分の唯一の味方である弁護士と分け隔てなく会話できるだけで相当気持ちは落ち着くでしょう。
また、捜査状況は時々刻々と変化するため、取調べに対する供述方針を明確化して柔軟に対応する必要があります。弁護士は接見機会を通じて捜査状況に探りを入れてくれるので、身柄拘束期間短縮化や軽い刑事処分獲得に役立つアドバイスを期待できるでしょう。
さらに、供述調書に署名・押印するときの注意点や、誘導尋問への警戒方法など、具体的なノウハウも提供してくれます。
覚せい剤の認識がなかったことを争ってくれる
覚せい剤所持の容疑で逮捕された被疑者のなかには、「所持していた薬物が覚せい剤だと認識していなかった」というパターンも存在します。
覚せい剤所持罪は故意犯なので、「覚せい剤を所持すること」に対する認識・認容がなければ罪に問われることはありません。
薬物犯罪に強い弁護士は、「覚せい剤の認識がなかったこと」の立証に役立つ証拠を集めて不起訴処分や無罪獲得を目指してくれるでしょう。
ただし、薬物犯罪をめぐる刑事裁判実務では「違法薬物の認識があったこと(覚せい剤かもしれない、と認識していたこと)」をもって覚せい剤所持の構成要件を満たすと判断されるので、認識がないことを争点にするのは相当困難だとご理解ください。
少しでも有利な刑事処分獲得に向けて尽力してくれる
薬物犯罪に強い弁護士は、覚せい剤所持の容疑で逮捕されたとしても、「不起訴処分」「執行猶予付き判決」など、少しでも軽い刑事処分獲得を目指してくれます。
弁護士は起訴猶予処分獲得を目指してくれる
覚せい剤所持の容疑で逮捕されたときに最初に目指すべきなのが「不起訴処分(起訴猶予処分)」です。
被疑者のなかには、「逮捕されたらかならず刑事裁判で裁かれる」と思い込んでいる人も少なくないでしょう。確かに、薬物犯罪で逮捕された場合には、刑事裁判にかけられる可能性が高いです。
ただし、不起訴処分は以下3種類に分類されるため、防御活動次第では刑事裁判を回避することも不可能ではありません。
- 嫌疑なし:覚せい剤所持罪の疑いがない場合、覚せい剤の故意が完全にない場合、誤認逮捕の場合
- 嫌疑不十分:覚せい剤所持罪を立証する証拠が不十分な場合
- 起訴猶予:覚せい剤所持を裏付ける証拠は揃っているが、諸般の事情を総合的に考慮すると、刑事裁判にかける必要はない場合
起訴猶予に処するか否かを判断するときには、「犯人の性格・年齢・境遇・犯罪の軽重・情状・犯罪後の情況」などの諸般の事象が総合的に考慮されます(刑事訴訟法第248条)。
覚せい剤に手を出さざるを得なかった経緯など、生い立ちから含めた情状証拠の準備が必要になるので、不起訴処分獲得実績豊富な弁護士の力を頼りましょう。
弁護士は執行猶予付き判決獲得を目指してくれる
覚せい剤所持の容疑で逮捕された後、不起訴処分を獲得できなかった場合には、「執行猶予付き判決の獲得」を目指すことになります。
執行猶予とは、「被告人の犯情や事件の諸般の事情を考慮して刑の執行を一定期間猶予できる制度」のことです。執行猶予期間中は普段通りの生活を送ることができます。また、執行猶予期間が満了すれば刑が執行されずに刑事責任を果たしたと扱われます。
なお、執行猶予付き判決を獲得するには、「3年以下の懲役刑・禁錮刑・50万円以下の罰金刑の言渡しを受けたとき」という要件を満たさなければいけません(刑法第25条第1項)。覚せい剤所持罪の法定刑は、単純所持で「1カ月以上10年以下の懲役刑」「1年以上の有期懲役刑、または、情状により1年以上の有期懲役刑及び500万円以下の罰金刑」なので、適切な防御活動を展開しなければ実刑判決が下されてしまいます。
執行猶予付き判決を獲得するには、反省の態度を示したり、薬物からの脱却を目指すための具体的な施策を提示する必要があります。薬物犯罪における執行猶予付き判決獲得実績豊富な法律事務所までご相談ください。
薬物依存症対策に強い施設などを紹介してくれる
覚せい剤などの違法薬物は再犯率が高い犯罪類型に位置付けられます。
そのため、薬物を断ち切るには、薬物依存症の治療やカウンセリング施設への入所などの対策が不可欠です。
薬物事犯に力を入れている弁護士はNPO法人や専門機関とのパイプを持っているので、これらの施設などを紹介してもらうことで本格的な社会復帰を目指しましょう。
【注意!】覚せい剤の所持は示談による減軽は不可能
窃盗罪や各種性犯罪を起こして逮捕されたときには「示談交渉」が有効な防御活動になるでしょう。
しかし、覚せい剤所持罪で逮捕されたときには示談は一切通用しません。なぜなら、薬物犯罪は「被害者がいない犯罪」だからです。
つまり、覚せい剤所持罪の容疑で逮捕されたときには、情状証拠を積み重ねたり、取調べに対して説得的な供述をする作業がより重要になるということです。
覚せい剤所持の容疑をかけられたときにはすぐに弁護士へ相談しよう
覚せい剤所持の容疑で逮捕されたときには、速やかに薬物犯罪に特化した弁護士に相談してください。なぜなら、捜査活動の初期段階から警察主導の取調べを強要されると、不利な供述を引き出されて刑事処分の内容が重くなる危険性があるからです。
当サイトでは、薬物犯罪に強い弁護士を多数掲載しています。費用・実績・専門分野・解決事例などを参照のうえ、お好みの法律事務所までお問い合わせください。