他人の占有を離れた物を自分の物にした場合や、他人が置いている物を自分の物にしてしまった場合、「置き引き」が成立します。しかし、置き引きは犯罪行為であるものの「置き引き罪」という犯罪はありません。
実は、窃盗罪や占有離脱物横領罪(遺失物横領罪)といった法律によって厳しく処罰されるのです。
今回は、置き引きによって成立する犯罪事例や逮捕されてしまった場合の流れなどについて解説します。
目次
置き引きによって成立する犯罪例
置き引きとは、置いてあるものを自分のものにしてしまう行為を指します。「置いてあるもの」の定義は広く、たとえば公園で遊んでいる家族がベンチに置いている荷物は当然「置いてある荷物」になります。
また、落とし物(忘れ物)を自分のものにしてしまった場合も、「置いてあるもの」ではないものの置き引きに該当してしまいます。
つまり、置き引きは大きく分けて2パターン考えられるということです。ひとつ目は置いてあるものを自分の物にしてしまう行為。2つ目が他人の落とし物(忘れ物)を自分の物にしてしまう行為です。
置き引きであることに変わりはないものの、それぞれ異なる犯罪が成立します。たとえば前者であれば窃盗罪、後者であれば占有離脱物横領罪が成立することになっています。
まずは、置き引きがどういった罪に問われてしまう可能性があるのか?について、詳しく解説します。
窃盗罪
他人がその場所に置いている物を勝手に盗んだ場合、刑法に定められている窃盗罪が成立します。窃盗罪については、以下の通り明記されています。
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法|第235条
置き引きは置いてある物を持っていく行為と忘れ物を持っていく行為に大別できます。前者の場合は、悪意を持って持ち去っているためより重たい刑罰が定められている、窃盗罪が適用されてしまいます。
ちなみに、窃盗罪の成立要件は「他人の財物を窃取した場合」です。そのため、つい出来心であっても、窃取した時点で窃盗罪が成立してしまいます。
たとえば、席取りのつもりで荷物を置いている人がいたとしましょう。バッグがブランド物であり、とても魅力的に見えてしまったため、出来心で窃取してしまいそうになることがあるかもしれません。もし、窃取してしまった場合は窃盗罪が適用されます。
心が揺らいでしまっても、一度冷静になって正しい判断を行うようにしましょう。
占有離脱物横領罪
他人の忘れ物を窃取した場合も「置き引き」と言い表します。しかし、忘れてしまっているものを窃取したとしても、窃盗罪が適用されるケースは稀です。実際は、刑法の定めによる「占有離脱物横領罪(遺失物横領罪)」が適用されます。
この法律は、以下の通り明記されています。
第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
引用元:刑法|第2254条
占有離脱物横領罪とは、他人の占有から離れてしまった物を自分の物(横領)にする行為を罰します。たとえば、電車の中でカバンをおき忘れてしまい、そのカバンを他の乗客が自分の物にしてしまった場合などが該当します。
窃盗との大きな違いは、「占有の離脱があったかどうか」です。たとえば、電車の中で眠ってしまい、カバンを盗まれたケースでは、「占有の離脱があった」とは認められにくいです。
占有の離脱とは、基本的には物理的に判断されるためです。具体的に言うと、遺失物・漂流物・その他占有を離れた他人の物を指します。
遺失物とは、簡単に言ってしまえば「無くしてしまった物(紛失物・落とし物)」です。その他占有を離れた物とは、たとえばお店で多くお釣りをもらってしまった場合、店舗側は勘違いをして占有を離脱しています。このようなケースが該当します。
つまり、物理的もしくは錯誤によってその人の占有から離れてしまったものを横領した場合に占有離脱物横領罪(遺失物横領罪)が適用されるということです。
ちなみに、窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。一方、占有離脱物横領罪は、「1年以下の懲役または10万円以下の罰金」となります。
同じ置き引き引きであっても、どちらが適用されるかによって刑罰の重さが全く違います。その理由は、占有離脱物横領罪の場合は「①占有者との信頼関係がないこと」「②他人の占有を侵害していないこと」の2点です。
とくに大きな要素は、②です。占有離脱物横領罪は他人の占有から離れた物を窃取しているためであり、他人の占有を侵害していないことが大きいためです。
置き引きによって逮捕される可能性
置き引きを行った場合、窃盗罪や占有離脱物横領罪が適用されるため、逮捕されてしまう可能性があります。しかし、他人の物を撮ってしまった場合、どのようにしてバレるのか?と、疑問を抱えている人も多いのではないでしょうか。
次に、置き引きによって逮捕される可能性や逮捕される流れについて紹介します。
犯罪行為であるため逮捕の可能性あり
先ほど紹介した通り、置き引きは窃盗罪や占有離脱物横領罪が適用されます。立派な犯罪行為であるため、逮捕されてしまう可能性があります。
しかし、中には占有離脱物(落とし物・忘れ物)を警察へ届け出ようと考えて持ち歩いているケースもあり得るでしょう。この場合は、犯罪としては成立しません。しかし、拾得した場合には直ちに警察へ届出たほうが逮捕されてしまう可能性は低くなります。
仮に、他人の物を置き引きする意思なく、警察へ届け出る目的で拾得し、その後忙しくて一旦自宅へ戻ってしまったとしましょう。この場合であっても、気付いた時点で直ちに届出をすれば犯罪行為としては認められません。
具体的には以下の範囲で届出をすることを覚えておくと良いでしょう。
- 店舗や施設等で拾得した場合は24時間以内
- 道端等で拾得した場合は1週間以内
上記期間を過ぎてしまった場合は、拾得者の権利を失うと言われています。そのため、遅くとも上記期間内に届出を出すようにしましょう。
なお、実際に置き引きをする意思を持って持ち去った場合は、窃盗罪や占有離脱物横領罪で逮捕されてしまいます。十分に注意してください。
防犯カメラによって犯人が特定されるケースが多い
窃盗罪や占有離脱物横領罪は、大半が防犯カメラによって発見されるケースが多いです。被害者が警察等へ届出を出し、防犯カメラの確認等の捜査を行い、犯人を特定します。
とくに置き引きの場合は持ち主自身が所有物をはっきりと覚えているため、特徴を捉えたバッグ等を見つけやすく、犯人逮捕に繋がりやすいです。さらに、持ち主の名前が書いてあるポイントカードや身分証明書等が入っているケースも多く、それを所有している時点ですぐに特定され、逮捕されてしまいます。
盗まれた確証がない場合は捜査されない可能性もある
紛失をしてしまった場合は「盗まれた」という確証がない場合は、捜査が行われません。この場合は、警察へ遺失物届を出して届出があるのを待つしかありません。
また、店舗や施設等で紛失をしてしまった場合は、警察が捜査を行わないのであれば「監視カメラを見せてください」と言いたくなる人もいるでしょう。しかし、第三者が映し出されているカメラを不当に見せることはできず、店舗側から断られるケースが大半です。
そのため、紛失してしまったのか置き引きにあったのか定かではない限り、遺失物届を提出して届出があるのをただ待つしかありません。
置き引きで逮捕された場合の流れ
置き引きで逮捕されてしまった場合、窃盗罪もしくは占有離脱物横領罪が適用されます。先ほども紹介した通り、犯罪行為であるため当然逮捕されてしまう可能性があるため、注意しなければいけません。
次に、万が一逮捕されてしまった場合に起こり得る今後の流れについても解説します。
逮捕・送致
まず、逮捕には以下の通り3つの方法があります。
- 逮捕状を請求して行う「通常逮捕」
- 現行犯で逮捕を行う「現行犯逮捕」
- 指名手配犯などに対し、逮捕状がなくても逮捕できる「緊急逮捕」
置き引きの場合は捜査を行って逮捕状を請求、逮捕を行う通常逮捕もしくは置き引きを行った時点で逮捕される現行犯逮捕の可能性があります。ただ、現行犯逮捕の場合は「このまま警察へ届け出る予定だった」と言ってしまえば罪に問うのは難しくなります。
その他の事情背景などを考慮した上で現行犯逮捕が成立するか否かを判断することになるでしょう。たとえば、常習犯である場合や明らかに持ち主が目の前にいるのに窃取した場合は、置き引き(窃盗)として現行犯逮捕されるでしょう。
いずれの場合であっても「逮捕」であることに変わりはなく、その後の手続き等に変わりはありません。
逮捕をされると、その時から48時間以内に検察官へ事件を送致しなければいけません。そのため、逮捕から48時間は警察署内にある留置施設に収容されて取り調べを受けます。この間は、自宅へ帰ることはできません。
事件送致後は最大24時間以内に検察官が勾留請求の有無を判断します。つまり、この時点で最大72時間(3日間)は、身柄を拘束され続けていることになり、社会生活にも影響がで始めます。
ただし、72時間以内に釈放される方法もあります。一つ目は、逮捕をされなかった場合です。たとえば、捜査を行うために家宅捜索差し押さえ(通称:ガサ入れ)が行われて、その後に任意同行を求められるパターンです。ガサ入れが行われないこともあります。
この場合は、逮捕されているわけではないため、取り調べが終了すると即時釈放されます。その後、警察等に呼び出されたら警察署へ出向いて取り調べを受ける流れです。
初めは任意同行であっても、取り調べを行って容疑が固まり次第、逮捕状を請求→逮捕となるケースもあります。
もう一つが、微罪処分となった場合です。微罪処分とは、検察へ事件を送致せずに事件を終結させることを言います。
基本的には、警察官の判断で行われる物ですが、以下のような要因があると微罪処分が降りやすいです。
- 被害額が軽微
- 被害弁済が行われている
- 被疑者に前科・前歴がない
- 深く反省している
微罪処分となった場合は、即時釈放されて日常生活へ戻れます。窃盗や占有離脱物横領罪であっても、微罪処分となる可能性は十分に考えられます。
もし、いずれにも該当しなかった場合は、検察が勾留の有無を判断する流れになるでしょう。
最長20日間の勾留
検察官が勾留の必要があると判断した場合は、裁判所に対して勾留請求を行います。勾留請求を行うと、被疑者を連れて裁判所へ行きます。最終的に勾留の有無を判断するのは裁判官となります。
ちなみに、勾留請求が認められるためには以下のうちいずれかに該当している必要があります。
- 住所不定であること
- 証拠隠滅の恐れがあること
- 逃亡の恐れがあること
上記に該当しない場合は、基本的に勾留請求は認められません。しかし、実務上は大半のケースで勾留請求が認められます。勾留請求が認められた場合は10日間留置所にて身柄を拘束されます。また、延長が認められた場合はさらに10日間、合計20日間の勾留です。
ここまでで逮捕から最長23日間身柄を拘束され続けていることになります。この期間は、当然自宅へ戻ることもできないため、社会生活にも多大な影響を与えることになるでしょう。
起訴された場合は刑事裁判
検察官は、勾留期間中に起訴・不起訴を判断しなければいけません。もし、起訴された場合は、呼び名が被疑者から被告人に変わり、留置所から拘置所へ移送されます。その後、準備が整い次第、刑事裁判を受ける流れです。
一方、不起訴処分となった場合はそのまま釈放されて事件は終結します。ただ、あくまでも刑事裁判が行われないのみであって、民事による損害賠償が行われる可能性があるため注意しなければいけません。
判決に従って刑に服する
起訴されて刑事裁判が行われた場合、最終的には判決が下されます。判決は、無罪か有罪かを判断し、有罪の場合はどの程度の量刑とするかを決定します。
日本では起訴された場合、99.9%の確率で有罪判決が下されると言われているため、起訴=有罪と考えておくと良いでしょう。置き引きの場合は窃盗罪もしくは占有離脱物横領罪であるため、いずれの場合も懲役刑もしくは罰金刑で有罪判決が下されることになります。
置き引きによって逮捕された場合の影響
置き引きによって逮捕されてしまった場合、今後さまざまな影響が発生する可能性があります。次に、置き引きによって逮捕されてしまった場合に発生し得る影響について解説します。
長期間にわたって勾留される可能性がある
逮捕されてしまった場合、長期間に亘って身柄を拘束されてしまう可能性があります。たとえば、逮捕された時点で最長3日間の身柄勾留、その後勾留が認められた場合は最長20日間の合計23日間勾留され続けることになるでしょう。
土日祝日等は関係ないものの、23日間もの間身柄を拘束され続ければ、社会的な影響は計り知れません。
また、警察等から職場へ連絡をすることはないため、勤務先からすると「無断欠勤が続いている」と思われてしまうかもしれません。仮に、家族や弁護士を通して連絡してもらう場合であっても、逮捕されている事実を告げなければいけません。
さらに、起訴された場合は23日以上の身柄拘束が行われる可能性も懸念する必要があります。長期間に亘って身柄を拘束され続けてしまえば、学校を退学になったり留年したり、会社を解雇されたりなどさまざまな影響が出るでしょう。
前科が残る可能性がある
起訴されて有罪判決が下された場合は、前科が残ります。前科とは、「犯罪を犯して有罪位判決を受けた人」という意味です。周りに知れ渡るものではないものの、さまざまな場面で報告しなければいけないことがあったり、影響が出たりします。
たとえば、就職や転職において履歴書に賞罰欄があれば、記載をしなければいけません。前科が原因で就職・転職に影響を与えてしまう可能性があるでしょう。
また、前科が付かないまでも前歴が残ってしまう可能性もあります。前歴とは、犯罪者として疑われた事実を指します。仮に微罪処分や不起訴となった場合であっても、置き引きを行った事実があった以上、前歴が残るため少なからず影響は出るでしょう。
学校や会社を解雇される可能性がある
置き引きによって逮捕されてしまった場合、前科がついてしまいます。そのため、会社を解雇されたり学校を強制退学となったりする可能性があるでしょう。
仮に、置き引きで逮捕をされてしまったとしても、基本的には会社もしくは学校へ申告をする必要はありません。しかし、長期間に亘って身柄を拘束されてしまう可能性があり、自ら申告をしなければ辻褄が合わなくなってしまいます。
結果的に置き引きによって逮捕されたことが知られてしまい、学校や会社を辞めざるを得ない状況となり得るでしょう。
賠償金の請求をされてしまう可能性がある
置き引きとは、その人の物を盗ってしまう行為です。そのため、相手から賠償金を請求されてしまう可能性があるため、注意しなければいけません。
たとえば、おいてあるカバンの中から財布を置き引きしたとしましょう。中身のお金を抜き取り、バレないように財布を処分してしまった場合、中身のお金や財布の時価を請求されてしまう可能性があります。
置き引きで逮捕された場合の対処法
置き引きで逮捕されてしまった場合は、先ほども紹介した通りの流れが起こり得ます。最終的には、刑事罰を受けるために刑務所へ収容されてしまう可能性もあるでしょう。
そのため、できるだけ早期の釈放を目指し、刑罰も軽くさせるためにはいくつかのポイントを押さえておく必要があります。その上で、しっかり対応することが大切です。次に、置き引きで逮捕されてしまった場合の対処法についても紹介します。
弁護士に相談をする
まず、置き引きによって逮捕された時点もしくは捜査の手が及んでいる時点で、すぐにでも弁護士へ相談をしましょう。弁護士に相談をすることによって、今後の流れ等についてアドバイスをしてくれます。
アドバイスを聞いた上で捜査を受け、しっかり対応することによって早期の釈放も可能となるでしょう。ちなみに、弁護士を呼べるタイミングは呼ぶ弁護人の種類によって以下の通りです。
- いつでも呼べるのが「私選弁護人」
- 逮捕後に一度だけ無料で呼べるのが「当番弁護人」
- 起訴後に付くのが「国選弁護人」
基本的には、私選弁護人を呼ぶのが原則です。しかし、私選弁護人の費用は実費であるため、費用に余裕がない場合は、当番弁護人や国選弁護人となります。費用は発生しないものの、呼べるタイミングが後手後手になる点がデメリットです。
被害者と示談交渉を進めておく
被害者との示談交渉を進めておくことも大切です。置き引きによる示談金の相場は、実際に発生した金額の賠償程度です。
たとえば、10万円入った財布を盗んだのであれば、10万円プラス財布等の金額程度が相場です。ただ中には、財布の中身(カード類や保険証、運転免許証)のみでも戻ればそれで十分と考える人もいます。
そのため、とにかく自分ができる範囲内で精一杯の反省の意を示し、示談交渉を進めておくと良いでしょう。
反省の意を示す
初犯であれば、しっかり反省の意を示すことによって早期の釈放を目指せる可能性が高いです。また、同時に示談交渉を進めておくと、さらに可能性が高まり、微罪処分で終了するケースもあります。
そのため、流れとしては弁護士へ相談をしてアドバイスを受けると同時に被害者との示談交渉を進める、取り調べではしっかり反省の意を示すこと。以上が、置き引きをされた場合の対処法として正しい流れです。
よくある置き引き事例
「置き引き」と言っても、どういった場合が該当するのかがよくわからない、という人も多いのではないでしょうか。次に、よくある置き引きの事例についても詳しく解説します。
パチンコ店でICカードを置き引きされた事例
パチンコ店で遊戯をしていた人が、ICカードを忘れたまま席を離れたとしましょう。次に座った人が、忘れられていることに気付き、ICカードを自分のものにしてしまった場合、置き引きとして処罰されてしまう可能性があります。
とくに、パチンコ店の場合は防犯カメラによってすぐにバレてしまう可能性が高いです。結果的に、出入り禁止となったり警察へ通報されて逮捕されたりといったことになり得ます。
また、パチンコ店で財布を置き忘れてしまい、持っていかれるケースもあります。これも、当然ながら置き引きとして処罰されます。
各所で財布を置き忘れて置き引きされた事例
トイレに入った際、財布をポケットから取り出す人は多いでしょう。また、飲食店等で席に座る際に、ポケットから出す人もいます。そういった際に、つい忘れて外へ出てしまい、置き引きに合うケースがあります。
トイレの場合は個室であり、カメラが設置されていないことから、犯人を特定するのが難しくなります。とくに、不特定多数の人が利用している場合は、入り口のカメラを見ても特定するのが困難になります。
飲食店等の場合は、店舗従業員が片付けの際に気付くケースが大半です。そのため、飲食店等へ問い合わせをすれば、すぐに発見できるでしょう。中には、従業員が置き引きをしてしまうケースもあるためその点は注意が必要です。
荷物を置いたまま寝てしまって置き引きされた事例
電車の中などでカバンを膝の上や自分の横に置いたまま眠りについてしまい、そのままカバン等を持っていかれるケースがあります。この場合も、当然置き引きとなります。また、占有を離脱しているとは言えないため、窃盗罪が成立するケースが多いです。
さらに、駅のカメラ等によってすぐに犯人が特定され、逮捕に至ることが多いです。
置き引きに関するよくある質問
置き引きに関するよくある質問を紹介します。
Q.忘れ物を交番に届けるところで窃盗や占有離脱物を横領する意思はありませんでした。この場合、罪に問われますか?
A.罪に問われる可能性は低いです。
他人が落とした物や忘れてしまった物を持ち出して交番等へ届け出る場合、当然犯罪の意思はないため、窃盗罪や占有離脱物横領罪は成立しません。ただ、「盗む意思はなかった」という言葉にはその行動による裏付けも必要です。
たとえば、他人の落とし物を「届け出るつもりだった」と言いつつ、財布の中身のお金を使ってしまった場合は、そういった言い訳は通用しません。また、いつまでも届出ない場合も「届けるつもりがなかった」は通用しないため注意してください。
たとえば、中には道端で拾って交番へ届けようと考え、そのまま忘れてしまっているケースもあるでしょう。そういった場合は、気づいた時点ですぐに届け出る必要があります。
具体的な期間については、法律による定めがないため一概に判断はできません。しかし、拾得者の権利が一つの基準と考えれば良いでしょう。先ほども紹介した通り、基準は以下の通りです。
- 店舗や施設等で拾得した場合は24時間以内
- 道端等で拾得した場合は1週間以内
ただし、店舗や施設内で拾得した場合は、店員やスタッフに預けたほうが良いでしょう。道端で拾得した場合も、時間的に余裕がないのであればそのままにしておいたほうが良いかもしれません。思わぬトラブルに巻き込まれないようにすることも大切です。
Q.置き引きとスリの違いは何ですか?また、問われる罪も変わりますか?
A.置き引きは、おいてあるものを盗む行為です。スリは、他人のカバンやポケットから抜き取る行為です。
置き引きは、一般的に落とし物や忘れ物を自分のものにしてしまう行為であり、犯罪の名前ではありません。つまり、「置き引き罪」という罪はなく、あくまでも窃盗罪や占有離脱物横領罪が適用されるということです。
一方、スリは他人のカバンの中やポケットの中から盗み取ることを指します。同じく、「スリ罪」という犯罪はありません。スリを行った場合は、窃盗罪が適用されて処罰されます。
Q.食事をした店に財布を置き忘れたにも関わらず、店員に聞くと「なかった」と言われました。どうすれば良いですか?
A.「警察へ相談をしてカメラを一緒に確認してもらう」と伝えましょう。
一般の人が店舗に対して「カメラを見せて欲しい」と伝えても見せてもらえません。もちろん、警察だからといって必ず見せてもらえるものではないものの、捜査協力という形でカメラの映像を見せてもらえる可能性があります。
もし、店員が本当に何もない、何も知らないというのであれば素直にカメラの映像を見せるでしょう。仮に、カメラを見せるのを渋っても、「なぜ、捜査協力をできないのか?」といったところから詰めることで、何かしらの情報が発覚することもあり得ます。
ただし、そもそも店舗にカメラがついていなければ見せてもらうことはできませんので注意してください。警察へ、遺失物の届け出を出すことはできますが、事件性がなければ捜査をしてもらうこともできません。
まとめ
今回は、置き引きを行った場合の罪状や逮捕された場合の流れ等について解説しました。
置き引きは他人の占有を離れた物を自分のものにしてしまったり、置いてある他人の物を盗ったりした場合に成立する犯罪です。しかし、置き引き罪という犯罪は存在せず、占有離脱物横領罪や窃盗罪が適用されます。
もし、魔が差して置き引きをしてしまいそうになったときは、一度冷静になって正しい判断をするように心がけましょう。魔が差して窃取してしまった場合は、窃取した物を直ちに交番等へ届け出ましょう。
万が一、摂取した物を使ってしまった場合は、しっかり被害弁済を行い、早期の釈放を目指したほうが良いでしょう。