微罪処分とは?概要や条件、流れについて詳しく解説

NO IMAGE

微罪処分とは「警察だけで事件を終了させること」を指します。通常は、全件送致の原則によってすべての事件を検察官へ送らなければいけません。しかし、あえて送致せずに警察で事件を終了させる処分です。

微罪処分になることによって、被疑者側にはさまざまなメリットが発生します。たとえば、刑事罰を受けずに済んだり、早期の釈放に期待ができたりします。

とはいえ、すべての事件・被疑者が無条件で微罪処分を受けられるわけではありません。詳しくは本記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。

微罪処分とは

微罪処分とは、警察だけで事件を終了させることを指します。通常、事件が発生した場合は、検察官へ事件を送致しなければいけません。これを「全件送致の原則」と言います。

しかし、あえて事件を送致せずに警察だけで事件を終了させるケースがあり、これを「微罪処分」と呼ぶのです。まずは、微罪処分とは何か?について詳しく解説します。

警察だけで事件を終了させること

微罪処分とは、比較的軽微な罪を犯した場合に警察段階で事件を終了させることです。通常、事件が発生した場合は検察官へ送致し、そのうえで起訴・不起訴の処分がなされます。起訴された場合は、略式命令もしくは刑事裁判で判決が下される流れです。

基本的には大小に関わらず、すべての事件を検察官へ送致しなければいけません。これを「全件送致の原則」と言います。

しかし、例外として検察官に指定された事件については、微罪処分で事件を終了させることができるようになっています。「検察官が指定した事件」について明確な基準はないものの、比較的軽微な犯罪であり、以下に該当する場合は微罪処分となる可能性があります。

  • 初犯であること
  • 監督者がいること
  • 犯情が軽微であること
  • 弁償や示談が成立している
  • 被害者の処罰感情が和らいでいる

初めに、前提として初犯でなければいけません。初犯とは、「前科がある人」を指すわけではなく、過去に罪を犯したことがない人(前歴もない人)のことを指します。

次に、監督者がいることも条件です。通常は、家族等が監督者として被疑者の監督を行います。監督者がいなければ、微罪処分とはならないため、家族等に相談をしてみましょう。

犯情とは簡単に言えば「犯罪の状況」です。犯罪に至るまでにどういった事情があったのか、動機、目的などさまざまな状況のことを犯情と言います。微罪処分となるためには、犯情が軽微であることが条件です。

被害者がいる事件の場合、被害者の処罰感情が処分へ与える影響はとても大きいです。被害者は、弁償や示談が成立している場合は処罰感情が和らぎます。よって、弁償や示談と被害者の処罰感情が和らいでいることは、微罪処分の必須条件です。

微罪処分は担当警察官の裁量で決定する

微罪処分は「検察官が指定した事件」でなければいけませんが、微罪処分を下すかどうかは、担当警察官が判断します。微罪処分はいわゆる「厳重注意」であり、検察官が指定した事件のうち、警察官が厳重注意で終了すべきと判断した場合は微罪処分で終了します。

微罪処分の流れ

  • 微罪処分となる場合の流れは以下のとおりです。
  • 警察署での取り調べ
  • 身元引受人を呼ぶ・身元引受書を書く
  • 釈放される

次に、微罪処分となる場合の流れについて詳しく解説します。

1.警察署での取り調べ

微罪処分となる人は、何らかの犯罪の疑いをかけられている人です。そのため、初めに警察署での取り調べが行われます。

取り調べでは、しっかりと罪を認めたうえで反省している態度を示しましょう。そうすることで、微罪処分となる可能性が高まります。

なお、微罪処分となる場合であっても、初めに逮捕されることもあるため注意しましょう。逮捕せずに捜査を行う場合は、「在宅捜査」と言います。在宅捜査の場合は、自宅に帰れますが警察からの呼び出しには応じなければいけません。

2.身元引受人を呼ぶ・身元引受書を書く

微罪処分となるためには、監督者が必要です。通常は親や配偶者などの家族がなります。身元引受人に警察署に来てもらい、身元引受書と呼ばれる書類を書きます。

3.釈放される

「2」までの手続きがすべて終了した時点で身柄を釈放されます。この時点で事件は終了し、今後警察等に呼び出されることはありません。ただし、何らかの不明点等がある場合は、警察から電話がかかってくることもあるため、しっかり応じましょう。

微罪処分で終了する条件

微罪処分で終了するためには、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 初犯であること
  • 監督者がいること
  • 犯情が軽微であること
  • 弁償や示談が成立している
  • 被害者の処罰感情が和らいでいる

先ほども簡単に解説しましたが、改めて詳しく解説します。微罪処分を目指している人は、ぜひ参考にしてください。

初犯であること

微罪処分を得るためには、初犯であることが前提条件です。初犯とは、「初めて罪を犯すこと」です。つまり、これまでに罪を犯したことがない(犯罪の疑いをかけられたことがない)人でなければいけません。

以下のような人は「初犯」には該当しないため注意してください。

  • 前科・前歴がある人
  • 今回の事件は初めてではあるものの、過去に別の罪を犯している人

前科とは罪を犯して有罪判決が下されたことがある人を指します。初犯ではないため、当然微罪処分の対象にはなりません。前歴とは、有罪判決は下されていないものの、犯罪の疑いをかけられたことがある人です。

たとえば、過去に微罪処分を受けている人、不起訴処分となったことがある人などは、前歴が残っているため、今回も微罪処分となることはありません。

監督者がいること

微罪処分を得るためには、監督者がいることが条件です。あなたは罪を犯した事実があるため、今後同じことがないように監督する人がいなければいけません。

一般的には家族が選ばれますが、会社の上司や婚約者、友人などでも可能です。ただし、監督できる立場にある人でなければいけないため、可能な限り近しい間柄の人が好ましいでしょう。

比較的軽微な犯罪であること

微罪処分となるためには、「比較的軽微な犯罪であること」が条件です。とはいえ、法定刑が重い犯罪であっても対象となるケースがあります。具体的には以下のような犯罪が微罪処分の対象となります。

  • 窃盗罪(法定刑:1カ月以上10年以下の懲役または50万円以下の罰金)
  • 暴行罪(法定刑:2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金)
  • 詐欺罪(法定刑:10年以下の懲役)
  • 占有離脱物横領罪(法定刑:1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料)
  • 軽犯罪法違反(法定刑:拘留・科料)
【拘留・科料とは】
拘留とは1日以上30日未満の間刑務所に収監する自由刑の一つです。科料は1,000円以上1万円未満の金額を支払わせる財産刑の一つです。

示談が済んでいること

被害者と示談交渉が済んでいること、もしくは被害弁済が行われていることが条件です。たとえば窃盗罪の場合、窃盗したものと同等の金額を弁済したうえで示談金を支払っていることが条件です。

示談交渉は弁護士を介して行うのが一般的であるため、まずは弁護士へ相談をしたうえで今後の対応を検討していくと良いでしょう。

被害者の処罰感情がないこと

被害者の処罰感情は処分決定に大きな影響を与えます。被害者の処罰感情が厳しい場合は、当然厳しい処分や判決が言い渡されるでしょう。一方で、示談が成立していて処罰感情が和らいでいる場合は、微罪処分となる可能性が高まります。

微罪処分のメリット

微罪処分となった場合、被疑者側に大きなメリットがあります。具体的には、以下のようなものがあります。

  • 前科が付かない
  • 刑罰を受けずに済む
  • 早期の釈放に期待ができる

次に、微罪処分となるメリットについて詳しく解説します。

前科が付かない

微罪処分となった場合は、前科が付きません。前科は、「有罪判決が確定した時点」で付くものであるため、たとえば略式命令が下された場合や刑事裁判で有罪判決が下された場合などに「前科」として履歴が残ります。

前科が付いてしまった場合、履歴書にある「賞罰欄」に有罪判決の内容を書かなければいけません。このことにより、就職や転職に影響を与える可能性が高くなります。

他にも、海外旅行時に前科の内容を申告しなければいけなかったり、入国を断られたりすることがあります。職業制限によって一定期間、特定の職種に就くことができないといったデメリットもあるため注意しなければいけません。

上記のように前科によるデメリットはたくさんあります。しかし、微罪処分となった場合は前科が付かないため、上記のような影響を受けずに済む点がメリットです。

刑事事件において、起訴されてしまった場合の有罪率は99%と言われています。そのため、早い段階で微罪処分を得て、前科が付かないように行動することがとても大切です。

刑罰を受けずに済む

微罪処分の場合、何らかの刑罰を受けずに済みます。有罪判決が下された場合、拘留や科料、懲役刑・禁錮刑や罰金刑など何らかの処分が下されてしまいます。

財産刑であれば罰金・科料を支払わなければいけず、経済的な損失を受けることになるでしょう。自由刑であれば、一定期間刑務所に収監されてしまうため、日常の社会生活でも大きな影響が出ることはいうまでもありません。

微罪処分であれば、いわゆる「厳重注意」で済むため、刑事罰を受けずに済む点が大きなメリットです。今後の影響も最小限に抑えられるため、大きなメリットであると言えるでしょう。

早期の釈放に期待ができる

微罪処分となった場合、早期の釈放に期待ができます。通常、逮捕〜勾留で長くて23日間の身柄拘束が発生します。その後、起訴された場合は判決が確定するまでの期間勾留されるため、さらに長期間の拘束が続くことになるでしょう。

しかし、微罪処分となった場合は検察官への送致がないため、逮捕後48時間以内での釈放が可能です。そのため、社会的な影響も少なく済む点がメリットです。

とはいえ、微罪処分となる事件の多くは在宅捜査となるケースが多いため、そもそも身柄拘束されないことが多いでしょう。いずれにせよ、早期に事件が終了する点は大きなメリットになります。

微罪処分となるためにやるべきこと

本記事で解説しているとおり、微罪処分には大きなメリットがあります。そのため、多くの人が微罪処分を得たいと考えていることでしょう。微罪処分を得るためには、自分自身で早期に行動しておくことがとても大切です。

具体的には以下のことを検討しておくと良いでしょう。

  • 弁護士による適切な弁護活動を行ってもらう
  • 反省している態度を示す
  • 被害者と示談交渉を行う

次に、微罪処分となるためにやるべきことについて解説します。

弁護士による適切な弁護活動を行ってもらう

弁護士による適切な弁護活動を行ってもらうことが大切です。先ほども解説したとおり、微罪処分を得るためには、被害者に対する被害弁済・示談の成立が条件です。そもそも、被害者との交渉は弁護人が行うものです。

そのため、まずは弁護人へ相談をしたうえで適切な弁護活動を行ってもらい、さらに被害者との交渉も同時に進めていってもらうことが大切です。

なお、逮捕された事件の場合、初めに一度だけ無料で当番弁護人を呼ぶことができます。しかし、当番弁護人は今後の流れや取り調べに応じるためのアドバイスをするための制度であり、継続的な弁護活動を目的としてはいません。

また、後に国選弁護人を選任することもできますが、国選弁護人をつけられるタイミングは「起訴後」もしくは「勾留後」のいずれかです。微罪処分を目指している人からするとタイミングはとても遅いです。

そのため、微罪処分を目指すためには、私選弁護人を選任する必要があります。私選弁護人は、費用は自分で支払わなければいけないものの、自分の好きなタイミングで依頼可能です。

反省している態度を示す

必ず反省している態度を示しましょう。自分の犯した罪を認め、今後同じことがないようにどうしていくのか?について具体的に話、実行できるように約束することが大切です。

また、被害者に対してしっかりと謝罪をし、被害弁済の意思等を見せたうえで確実に弁済・示談交渉を進めておくことが大切でしょう。

被害者と示談交渉を行っておく

微罪処分となるためには被害弁済・示談交渉の成立が条件です。そのため、できるだけ早めに示談交渉を進め、成立させておくことが大切です。事件が進み、勾留が確定したり起訴されたりしてしまうと微罪処分が下されることはなくなってしまいます。

示談交渉は単にお金を支払えば良いだけではなく、被害者に対する謝罪の意を伝えることも大切です。自分と向き合い、弁護人と話し合ったうえでしっかりと対応していきましょう。

微罪処分の注意事項

微罪処分は刑事処分の一つであり、いわゆる「厳重注意」のようなものです。そのため、被疑者にとっては大きなメリットがあります。しかし、以下のような注意事項もあるため覚えておいたほうが良いでしょう。

  • 前歴が残る
  • 民事責任は消えない
  • 身元引受人が必要

次に、微罪処分の注意事項について解説します。

「前歴」が残る

微罪処分となった場合、「前科」は残りませんが「前歴」は残ります。前歴とは「犯罪の嫌疑をかけられて捜査の対象となった履歴」です。前歴が日常生活に影響を与えることはありません。

しかし、過去に犯罪の嫌疑をかけられて捜査の対象となった履歴が残ることにより、今後何らかの罪を犯した場合に影響を与える可能性があります。たとえば、今後別件で捜査の対象となった場合、前歴が影響して厳しい処分が下される可能性があります。

また、2度目以降は微罪処分となることもなくなるため注意しなければいけません。

民事責任は消えない

罪を犯した場合、刑事責任と民事上の責任を負います。刑事責任は「微罪処分」という処分が下されて終了しますが、民事責任は消えません。民事責任とは、被害弁済や賠償金等、不法行為によって発生した損害に対する責任です。

たとえば窃盗罪であれば、窃盗をした物品相当額の返済を求められたり、窃盗されたことによって発生した損害の補填等を民事上の責任として負わなければいけません。

たとえ刑事責任で「微罪処分」となった場合であっても、民事上の責任も同時に消えるわけではないことを覚えておきましょう。

身元引受人が必要

微罪処分となるためには、身元引受人が必須条件です。身元引受人がいなければ、微罪処分にはなりません。そのため、あらかじめあなたを監督できる立場にある身元引受人を用意しておく必要があります。

通常は親や配偶者などの家族がなりますが、会社の上司や恋人、友人でもあなたの監督をできる人であれば認められることがあります。

微罪処分に関するよくある質問

微罪処分に関するよくある質問を紹介します。

Q.前歴が残ることによって何か影響はありますか?

A.日常生活を送るうえで何らかの制約を受けることはありません。

前歴の場合は、日常生活を送るうえでの何らかの制約はありません。この点は前科との大きな違いです。

ただし、前歴は「過去に犯罪の嫌疑をかけられて捜査の対象となった履歴」であるため、今後も捜査対象となった場合は前歴が影響します。たとえば、あなたが窃盗の罪で微罪処分になったとしましょう。

しばらくして、また窃盗事件を起こしてしまった場合、過去の前歴を確認することによって窃盗事件を起こしたのが2度目であることが発覚します。その結果、厳しい処分が下されてしまうことになるでしょう。

Q.逮捕された場合でも微罪処分となる可能性はありますか?

A.逮捕されても微罪処分となる可能性はあります。

そもそも逮捕とは、罪を犯した疑いのある人の身柄を一時的に拘束するための手続きです。基本的には「逃亡の恐れがある」もしくは「証拠隠滅の恐れがある」場合に限って行える手続きです。

その場では逮捕されてしまったとしても、上記の疑いが晴れた時点で在宅捜査に切り替わります。また、逮捕は最大で48時間の効力しかありません。この間で示談交渉等を行えるのであれば、微罪処分となる可能性はあるでしょう。

Q.警察が行う厳重注意と微罪処分は異なりますか?

A.同じであると考えて良いでしょう。

微罪処分も厳重注意も同じものであると考えておいて良いでしょう。ただし、違う意味合いで使用されるケースもあるため注意しましょう。

たとえば、微罪処分は未成年者には適用されません。仮に何らかの非行事実が認められる少年に対して警察官が叱責することもあり、これを「厳重注意」と表すこともあります。この場合は、微罪処分ではなく「厳重注意」となります。

Q.微罪処分とならなかった場合、今後どのようになりますか?

A.微罪処分で事件は終了するため、何も起きません。

微罪処分が下された時点で事件は終了します。今後、何らかのことを行う必要はありません。ただし、刑事上の責任を終えても民事責任は残ります。そのため、民事責任を果たしていない場合は、引き続き弁護人と相談をしたうえで今後の方針を決めていけば良いでしょう。

Q.微罪処分となった場合、親や学校、会社に連絡が行くことはありますか?

A.基本的に警察から連絡することはありません。

罪を犯したとしても、未成年者ではない限り親や学校、会社へ連絡がいくことはありません。ただし、微罪処分となるためには身元引受人が必要です。そのため、親や会社の上司に相談をしなければいけない場面も出てくるでしょう。

そういった場合は、自分から身元引受人となる人に相談をすることになります。

まとめ

今回は、微罪処分について解説しました。

通常、すべての事件は検察官へ送致しなければいけません。これを「全件送致の原則」と言います。しかし、送致せずに警察官で事件を終了させることが「微罪処分」です。

微罪処分となった場合は、被疑者にとって大きなメリットになり得ます。早期の釈放に期待できたり、刑事罰を受けずに済んだりするため、起訴されて何らかの刑罰が下されるよりは良いでしょう。

微罪処分を得るためには、さまざまな条件を満たしている必要があります。今回解説した通りであるため、微罪処分を目指したい人は、まずは弁護人に相談をしたうえで被害者との交渉を進めていくようにしましょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

刑事事件コラムカテゴリの最新記事

PAGE TOP