インサイダーで逮捕されるときの刑事手続きの流れとは?金商法の要件や課徴金について解説

インサイダーで逮捕されるときの刑事手続きの流れとは?金商法の要件や課徴金について解説
インサイダーで逮捕されるときの刑事手続きの流れとは?金商法の要件や課徴金について解説

世間には未公表の重要事実を特別に入手して株式の取引をすると、インサイダー取引規制違反を理由に逮捕される可能性があります。

たとえば、「勤務先で売上げが良い新商品の製造・販売ラインだけ子会社化する話を耳にしたので、今のうちに株式を購入して株価が上がったタイミングで売り抜けを狙えばローン返済に役立つだろう」「営業職を担当しているため他社の社外秘情報へ簡単にアクセスできる。未公表の事実を相場予想に役立てて株式取引をすれば老後の資産形成の助けになるだろう」などの安易な考えで証券市場の公平性を歪める態様で株式等の取引をおこなっただけでも、金融商品取引法違反の容疑をかけられかねません

そして、インサイダー取引規制違反の法定刑は重いため、悪質な取引状況が発覚すると、初犯でも実刑判決や高額の罰金刑・課徴金の負担を強いられる可能性があります。今まで築いた社会生活が崩れ去ってしまうだけでなく、今後のキャリア形成や人生プランにも大きな支障が生じかねないでしょう。

そこで今回は、過去の株式取引がインサイダー規制に違反することを理由に捜査機関から出頭要請を受けた方や、ご家族がインサイダーの容疑をかけられた方、現在入手した情報を使って株式取引をしても法律的に大丈夫なのか不安を抱えている方のために、以下5点について分かりやすく解説します。

  1. インサイダー取引規制の概要
  2. インサイダー取引規制に抵触する行為や法定刑、ペナルティ
  3. インサイダー取引規制違反の容疑で逮捕されるときの刑事手続きの流れ
  4. インサイダー取引規制違反で逮捕されたときに生じるデメリット
  5. インサイダー取引規制違反の容疑で逮捕されたときや、逮捕されるか不安なときに弁護士へ相談するメリット

インサイダー取引に対しては個別具体的にかなり詳細な要件が設定されているので、自覚がないうちに金融商品取引法違反を犯してしまっているケースも少なくありません

当サイトでは、インサイダー取引などの金融商品取引法違反事犯の実績豊富な法律事務所を多数掲載中なので、できるだけ早いタイミングで弁護士までご相談ください

目次

インサイダー取引の基本知識

まずは、インサイダー取引が規制される趣旨や構成要件・罰則など、基本知識について解説します。

インサイダー取引とは

インサイダー取引とは、「上場会社の関係者などが、その職務や地位によって知り得た投資者の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報を利用して、自社株式等を売買することで、自己の利益を図ろうとする行為」のことです。

上場会社の特定情報にアクセスしやすい特定の立場にいる人物が、一般の証券市場では公開されていない重要事実を活用して株式等の取引をすると、一般投資家と比べて著しく有利な状況を作り出すことができます。そして、この状況は一般投資家にとっては極めて不公平です。

証券市場の公正性・健全性が害されて一般投資家の信頼が失墜すると、金融市場の動きが不活性化し、経済不振を招きかねません。

したがって、インサイダー取引規制は、金融市場の公正性・健全性に対する一般投資家の信頼性を確保する趣旨で設定された規制だといえるでしょう。

インサイダー取引規制に該当する要件

インサイダー取引規制に該当する禁止行為は次の2つです。

  1. 株式などの売買等をする行為
  2. 情報伝達行為

株式などの売買等をする行為

インサイダー取引規制に抵触する1つ目の行為は、「株式などの売買等をする行為」です。具体的には、以下5つの要件を満たす行為がインサイダー取引に該当するとして規制されます(金融商品取引法第166条)。

  1. 上場会社の役職員等の会社関係者が
  2. その会社の業務等に関する重要事実を
  3. 自身の職務等に関して知った場合おいて
  4. その重要事実が公表される前に
  5. その会社の株式の売買等をする行為
要件1.上場会社の役職員等の会社関係者

インサイダー取引の主体は、「上場会社の役職員等の会社関係者」です。

上場会社の役職員等の会社関係者の具体例として以下の人物が挙げられます(金融商品取引法第166条第1項各号)。

  • 当該上場会社等の役員、代理人、使用人その他の従業者:役員、正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト、パート、上場会社の子会社の役職員など
  • 当該上場会社等の会社法第433条第1項に定める権利を有する株主、優先出資法に規定する普通出資者のうちこれに類する権利を有するものとして内閣府令で定める者、会社法第433条第3項に定める権利を有する社員:発行済株式3%以上保有する株主など
  • 当該上場会社等に対して法令に基づく権限を有する者:許認可権限をもつ公務員など
  • 当該上場会社等と契約を締結している者、締結の交渉をしている者:取引先、顧問弁護士、会計士、コンサルタント業者など

なお、これらの者が会社関係者でなくなったとしても、1年以内であればインサイダー取引の規制対象に含まれます。

また、取引をした本人が企業関係者に直接的に該当しなくても、企業関係者から情報を受領した者や、企業関係者の家族・同居人・子どもなどが株式の取引をしたときには、インサイダー取引規制違反を理由に逮捕される可能性があります。

要件2.その会社の業務等に関する重要事実

インサイダー取引規制が及ぶのは、「その会社の業務等に関する重要事実」を公表前に知ったときです。

重要事実の具体例として以下のものが挙げられます(金融商品取引法第166条第2項各号)。

  • 当該上場会社等の業務執行機関が決定または不決定をしたこと(自己株式や募集新株予約権の引き受け募集、資本金・資本準備金・利益準備金の額の減少、株式や新株予約権の無償割当て、株式分割、剰余金の配当、株式交換、株式移転、株式交付、合併、会社分割、事業譲渡・譲受、解散、新製品や新技術の企業化、業務上の提携などの「決定事実」)
  • 災害や業務遂行の過程で当該上場会社等に損害が生じたこと、主要株主が異動したことなどの「発生事実
  • 当該上場会社等の売上高、経常利益、純利益、四半期決算の数値などについて、公表された直近の予想値に比較して当該上場会社等が新たに算出した予想値や当事業年度の決算において差異が生じたこと(決算情報
  • 当該上場会社等の運営、業務、財産に関する重要な事実であつて投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす「バスケット条項」(株主優待制度の創設・変更・廃止など)
  • 当該上場会社等の子会社に関する重要事実
  • 当該上場会社等の資産運用会社に関する重要事実

なお、重要事項への該当性は個別事案によって判断される場合も少なくありません。

たとえば、代表取締役や代表執行役の異動の決定は適時開示事項には該当するものの、一般的には、インサイダー取引規制上の重要事実には該当しないと評価される傾向にあります。

しかし、たとえば、異動する代表取締役が当該企業に対して強い影響力を有する創業者であったり、世間的な関心度の高い人物であったりするときには、その人物の辞任によって株価が大きく変動する可能性が高いです。このような事情が存在する場合には、一般投資家の投機判断に著しい影響を及ぼすと考えられるため、「バスケット条項」への該当性が肯定され得るでしょう。

各重要事実には「軽微基準」が定められており、軽微基準の範囲内であれば重要事実への該当性が否定されます(軽微基準以内に収まる未公表の重要事実を使って株式などを取引してもインサイダー規制には抵触しないということです)。たとえば、「株式無償割当てによって割り当てられる株式の割合が1株当たり0.1未満」「災害に起因して生じる損害額が純資産額の3%に相当する額未満と見込まれること」などが挙げられます。このように、インサイダー取引規制に抵触する重要事実の範囲に対しては相当細かいルールが設定されているので、株式等の売却などに少しでも不安があるなら、事前に弁護士への相談をおすすめします
要件3.自身の職務等に関して知る

インサイダー取引規制の対象になるのは、「その職務や地位によって」知り得た重要事実を利用したときです。

たとえば、友人同士の何気ない会話のなかで企業買収などの未公表の重要事項を耳にして当該企業の株式を購入したときには、インサイダー取引に該当することを理由に逮捕される可能性があります。

また、社内でたまたま重要事実を立ち聞きしたときや、アフターファイブの飲み会の席で未公表の情報の話を知ってしまったときにも、具体的なシチュエーション次第ではインサイダー取引規制の適用を受ける可能性を否定できません。

「偶然知ってしまった」「一方的に聞いてしまった」という偶発的な状況でも、当該情報を利用して株式などの売買等に及ぶと逮捕されるリスクに晒されかねないので、少しでも株式取引等に不安があるときには、事前に弁護士へ相談することを強くおすすめします

要件4.重要事実の公表前

インサイダー取引規制の対象になるのは、「重要事実の公表前」に株式などの売買等をしたときです。

つまり、重要事実が公表された後であれば、当該情報を利用して株式などを売買等してもインサイダー取引規制違反を理由に逮捕されることはないというこです。

「公表」とは、以下の法令に規定された方法によって情報が開示されることを意味します(金融商品取引法第166条第4項)。たとえば、週刊誌などを通じて重要情報がリークされただけでは、インサイダー取引規制における「公表」には該当しません。

  • 2社以上の報道機関に対して重要事実が公開されて、12時間経過したこと
  • 証券取引所の適時開示情報閲覧サービス(TDnet等)により公衆の縦覧に供されたこと
  • 有価証券届出書等に記載し、電子開示システム(EDINET)により公衆の縦覧に供されたこと
要件5.会社の株式の売買等をする行為

インサイダー取引規制の中核的な対象行為は以下の3つです(金融商品取引法第166条第1項柱書)。

  • 当該上場会社等の特定有価証券等にの売買その他の有償の譲渡、譲受け、合併・分割による承継
  • デリバティブ取引(先物取引、オプション取引、スワップ取引など)

まず、インサイダー取引規制の対象行為は「売買等の”有償“の譲渡など」を意味するので、無償でおこなわれる贈与による株式譲渡・譲受けや、相続による株式取得は、インサイダー取引規制の対象外です。

その一方で、未公表の重要事実を知って上場株式の売買等をおこなったものの、利益が少額しか出なかったときや、逆に、損失が出たときでも、売買等を有償で取引した以上、インサイダー取引規制違反を理由に逮捕される可能性が生じます(インサイダー取引規制では「利益の額」「損失の発生」などの結果は要件に挙げられていません)。

また、インサイダー取引規制では「取引数量」も要件に掲げられていないので、1株・1単元などの少量の株式売買でもインサイダー取引規制に違反します。

さらに、インサイダー取引規制では「取引の目的・動機」も問われない点にも注意が必要です。たとえば、不当な利益を得る以外の目的(子どもの入学金を準備したい、住宅ローンを返済したい、老後の資産形成のために長期的な投資をしたいなど)であったとしても、インサイダー取引規制違反を理由に逮捕されかねません。

なお、以下に該当する場合、インサイダー取引規制は適用除外されます(金融商品取引法第166条第6項)。

  • 株式の割当てを受ける権利の行使による株券の取得
  • 新株予約権の行使による株券の取得
  • オプションの行使による売買等
  • 株式買取請求または法令上の義務に基づく売買等
  • 防戦買い
  • 株主総会決議等の公表後に行う自己株式の取得
  • 安定操作取引
  • 普通社債券等の売買等
  • 知る者同士の証券市場によらない取引
  • 一定の知る前契約に基づく売買等、特別事情に基づく売買であることが明らかな売買等

情報伝達行為

インサイダー取引規制の中核的なターゲットは「株式などの売買等」ですが、金融商品取引法では、証券市場の公正性・健全性をより確実に保護するために、「株式などの売買等」の周辺行為である「情報伝達行為」もインサイダー取引規制の対象にしています。

具体的には、「上場会社等の会社関係者であって、当該上場会社等の重要事実を知った者は、他人に対して、当該重要事実が公表される前に株式等の売買などをさせることによって他人に利益を得させる目的や、他人の損失発生を回避させる目的で、当該業務等の重要事実を伝達し、または、当該売買等をすることを勧めてはいけない」と規定されています(同法第167条の2第1項)。

インサイダー取引の法定刑

インサイダー取引に及んだときの法定刑は、「5年以下の懲役刑もしくは500万円以下の罰金刑(併科あり)」です(金融商品取引法第197条の2第13号)。

また、情報受領者が実際に株式等の売買などに及んだときには、情報伝達行為に及んだ者も、「5年以下の懲役刑もしくは500万円以下の罰金刑(併科あり)」の範囲で刑事罰を科されます(同法第197条の2第14号)。

さらに、インサイダー取引によって犯人が財産を得たときには、その取得状況や損害賠償の履行の状況などの諸般の事情を踏まえたうえで、財産の全部または一部が没収されます(同法第198条の2第1項)。財産を没収するべき場合において、犯人から財産を没収できないときには、没収予定の価額相当の金銭が追徴されます(同法第198条の2第2項)。

たとえば、インサイダー取引規制違反によって得た財産は原則として没収・追徴されるため、インサイダー取引で100万円で買い付けた株式を売却して150万円を得たときには、150万円が没収・追徴の対象になります(差益の50万円ではありません)。「インサイダー取引で取得した利益はすぐに使ってしまったので賠償できない」などの言い訳は通用しないので注意が必要です。

なお、法人の代表者・代理人・使用者・その他の従業員が、その法人または人の業務・財産に関連してインサイダー取引に及んだときには、法人に対して「5億円以下の罰金刑」が科されます(同法第207条第1項第2号)。

インサイダー取引の課徴金

インサイダー取引規制に違反すると、刑事罰とは別に「課徴金納付命令」が下される可能性があります(金融商品取引法第175条)。

課徴金とは、「国家が国権に基づいて徴収する租税以外の金銭」のことです。インサイダー取引などの法令違反行為が発覚したとき、審判手続きを経てペナルティとして課徴金の納付を求めるべきか否かが判断されます(同法第178条以下)。

以下のように、インサイダー取引がおこなわれたシチュエーションごとに課徴金の算定方法は異なります。

  • 違反者が「自分の計算」で株式などの売買等をした場合:得た利益または回避した損失の全額(「売買価格」と「情報の公表後2週間の間に記録された、売買価格から最も乖離した価格」の差額)
  • 投資運用業者が「顧客(他人)の計算」で株式などの売買等をした場合:運用報酬の3倍の金額
  • 投資運用業者が「顧客以外の他人の計算」で株式などの売買等をした場合:売買等に関して受け取った対価相当額
  • 情報伝達行為が売買等の媒介・取次ぎ・代理を業とする過程でおこなわれた場合:その業務に関して顧客から受け取った手数料等の3倍の金額
  • 情報伝達行為が有価証券の募集・売出し等の取扱いを業とする過程でおこなわれた場合:その業務に関して顧客から受け取った手数料等の3倍の金額(有価証券の引き受けにも及んだときには、引き受け対価の1/2)
  • その他の情報伝達行為:第1次情報受領者が得た利得相当額の1/2の金額

なお、1つのインサイダー取引行為に対して課徴金・刑事罰の両方が科されることもありますが、刑事罰として財産の没収・追徴が実施されたときには、当該財産の価額に相当する金額が課徴金の額から控除されます(同法第185条の7第15項、同法第185条の8第1項)。

インサイダー取引で逮捕された具体例

インサイダー取引が発覚した事例を紹介します。

村上ファンド事件

村上ファンド事件は、村上ファンドの代表者である村上世彰がニッポン放送株の取引でインサイダーをした容疑で逮捕された事件です。ライブドアによるニッポン放送株大量取得問題に関連して、村上ファンドはライブドアがニッポン放送株式の発行済み株式総数の5%を超える取引をおこなう意向を事前に入手しており、この情報を秘密裡に悪用して同株を合計193万3,100株売買したと見られています。

日経社員インサイダー事件

日系社員インサイダー事件は、日経新聞の社員が新聞編集者という立場で新聞に掲載予定の未公開情報を事前に入手して株式の取引をおこなって逮捕された事件です。インサイダー取引により合計で数千万円以上の利益を得ていたと疑われています。

東都水産株式会社株券に係る内部者取引事件

東都水産株式会社株券に係る内部者取引事件は、東都水産株式会社の社外取締役を務めていた三印三浦水産株式会社が「株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実」を事前に入手し、公表前に株券8,000株を合計2,900万円で買い付けた事件です。

公開買付者との契約締結交渉者の役員によるファミリーマート株式に係る内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告

公開買付者との契約締結交渉者の役員によるファミリーマート株式に係る内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告事件は、インサイダー取引規制違反者が、「伊藤忠商事がファミリーマート株式の公開買付けをおこなう決定をした事実」を事前に知りながら、情報未公表時点でファミリーマート株式合計2,000株を買付価額合計3,497,800円で買い付けた事件です。

インサイダー取引で逮捕されるときの刑事手続きの流れ

インサイダー取引規制違反を理由に逮捕されるときの代表的な刑事手続きの流れは以下の通りです。

  1. 証券取引等監視委員会による調査・告発
  2. 金融商品取引法違反の容疑で検察官に逮捕・勾留される
  3. 検察官がインサイダー取引事案について公訴提起するか否かを判断する
  4. インサイダー取引事件が公開の刑事裁判にかけられる

証券取引等監視委員会による調査・告発

インサイダー取引は、日本取引所自主規制法人による証券市場の調査や内部告発をきっかけに「証券取引等監視委員会(Securities and Exchange Surveillance Commission)」に発覚します。

証券取引等監視委員会とは、市場の公正性・透明性の確保及び投資者保護の観点から、証券会社等の検査や、証券市場における犯則事件の調査等をおこなう機関のことです。インサイダー取引の疑いがある事案が発覚したときには、刑事訴追の必要性などを判断するために、個別事案について調査を実施します。

逮捕

証券取引等監視委員会が調査を実施した事案について刑事訴追の必要性があると判断したときには、検察庁に告発をするのが一般的な流れです(一般的な刑事事件とは異なり、金融商品取引法違反の事案は専門性が高いので、警察段階の捜査活動は省略されることが多いです)。

そして、インサイダー取引規制違反事件について容疑が深まったときには、通常逮捕手続きに移行します。

インサイダー取引規制違反の容疑で通常逮捕されるとどうなる?

通常逮捕とは、「裁判官の事前審査を経て発付される逮捕令状に基づいて実施される身柄拘束処分」のことです(刑事訴訟法第199条第1項)。

逮捕状が執行された時点で被疑者の身柄が拘束されて、警察署に連行されます。「仕事があるから別の日に出頭したい」「警察に連行される前に家族に電話連絡を入れたい」などの要望は一切聞き入れてもらえません(令状主義)。

インサイダー取引で通常逮捕される場合

逮捕状が発付されるのは、以下2つの要件を満たすときです(犯罪捜査規範第118条、同規範第122条)。

  1. 逮捕の理由:被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること
  2. 逮捕の必要性:留置の必要性があること(逃亡または証拠隠滅のおそれがあること)

たとえば、インサイダー取引規制違反事件が次のような事情を有するケースでは、逮捕状が発付されたうえで、検察庁で身柄拘束付きの取調べを受けなければいけません。

  • 経済犯罪などの前科・前歴がある場合
  • 長期的にインサイダー取引等をおこなっており、余罪への関与が疑われる場合
  • インサイダー情報を入手するときに違法アクセスや建造物等侵入などの別罪を犯した可能性がある場合
  • スマートフォンやパソコンなど、証券取引に使用した端末などの証拠物を隠滅するおそれがある場合
  • 長期的に高額のインサイダー取引に関与した場合
  • 組織的にインサイダー取引で利益を得ていた場合
  • インサイダー取引について任意の出頭要請を拒絶した場合
  • インサイダー取引の事情聴取で黙秘・否認をした場合
  • 住所不定・無職・職業不詳で逃亡するおそれがある場合

インサイダー取引規制違反の容疑で逮捕された後に検察段階の取調べ

インサイダー取引規制違反の容疑で逮捕された後、検察官による強制的な取調べが実施されます。

否認や黙秘などどのような態度をとるかは自由に決めることができますが、逮捕処分に基づく取調べ自体は拒絶できません。また、逮捕処分に基づく身柄拘束期間中は、自宅に戻ったりスマホなどで家族に連絡を入れることも不可能です。

なお、検察官に逮捕された場合、「原則48時間以内」に公訴提起するか否かが判断されます(刑事訴訟法第204条第1項)。

インサイダー取引規制違反の容疑で逮捕されたときは勾留請求される可能性が高い

インサイダー取引規制違反事件の詳細次第では、「48時間以内」という制限時間だけでは公訴提起判断できるだけの証拠を収集できないケースも少なくありません。

「やむを得ない理由」によって捜査機関が原則的な制限時間を遵守できないときには、検察官による勾留請求が認められています(刑事訴訟法第206条第1項)。

検察官の勾留請求が認められて裁判官が勾留状を発付すると、例外的に「10日間~20日間」の範囲で身柄拘束期間が延長されます(同法第208条各項)。

勾留請求される可能性が高いのは、インサイダー取引規制違反事件に以下の事情が存在する場合です。

  • 長期的に相当数のインサイダー取引へ関与した疑いがある場合
  • 重要事実を入手したプロセスを調査するための参考人聴取に時間を要する場合
  • スマホやパソコンの取引履歴の調査や解析に時間を要する場合
  • インサイダー取引について被疑者が黙秘・否認している場合、供述内容に矛盾点が残る場合
  • 複数人でインサイダー取引が実施されて共犯関係をあぶりだす必要がある場合

勾留請求されると、場合によっては身柄拘束期間が数週間に及ぶリスクも生じます。そして、身柄拘束期間が長期化するほど、心身への負担や日常生活への支障が大きくなります。

インサイダー取引規制違反の容疑で逮捕されたとき、「軽い刑事処分を獲得すること」だけではなく、「身柄拘束期間を短縮化すること」も重要な防御目標です。弁護士に相談するタイミングが早いほど効果的な防御活動が期待できるでしょう。

インサイダー取引規制違反の容疑で逮捕されるのは公訴時効が完成するまで

過去にインサイダー取引に及んだとしても、未来永劫逮捕リスクを抱えるわけではありません。インサイダー取引について公訴時効が完成すれば、刑事訴追されるリスクが完全に消滅します。

公訴時効とは、「所定の公訴時効期間が経過することで検察官の公訴提起権が消滅する制度」のことです。

インサイダー取引規制違反の公訴時効は「5年」です(刑事訴訟法第250条第2項第5号)。インサイダー取引に該当する行為が終わったときから5年が経過することで、刑事責任を問われることはなくなるでしょう(同法第253条第1項)。

なお、過去のインサイダー取引について最初から”時効逃げ切り”を狙うのは適切ではありません。なぜなら、刑事訴追されるタイミングが遅れるほど築き上げたキャリア等への影響が大きくなりますし、いつ内部告発によって過去のインサイダー取引が露見するかわからないからです。

したがって、過去にインサイダー取引へ関与した経験があるなら、念のために現段階で弁護士へ相談することを強くおすすめします「現段階で自首をするべきか、捜査機関から問い合わせが来るまでは公訴時効完成を狙うべきか」を冷静に判断してくれるでしょう。

起訴

逮捕期限や勾留期限が到来する前に、検察官がインサイダー取引規制違反事件を公訴提起するか否か(起訴が不起訴)を決定します。

起訴処分とは、「金融商品取引法違反事件を公開の刑事裁判にかける旨の訴訟行為」のことです。日本の刑事裁判の有罪率は約99%以上とも言われているので、起訴処分が下された時点で実質的に有罪が確定します。

これに対して、不起訴処分とは、「金融商品取引法違反事件を公開の刑事裁判にかけることなく、検察官限りの判断で刑事手続きを終結させる旨の意思表示」を意味します。有罪や前科を回避できるだけではなく、社会復帰を目指すタイミングを前倒しできるのがメリットです。

以上を踏まえると、インサイダー取引規制違反の容疑で逮捕・勾留されたときには「不起訴処分の獲得」が最大の防御目標といえます。証券取引等監視委員会や検察庁から問い合わせがあった時点で弁護士へ相談をして、早期に防御活動をスタートしてもらいましょう。

刑事裁判

インサイダー取引規制違反の容疑で起訴されると、公開の刑事裁判を受けなければいけません。

刑事裁判の公判期日は「起訴処分から1カ月~2カ月後」が目安です。起訴処分後の保釈請求が通らなければ、刑事裁判までの期間中も起訴後勾留が続く可能性があります(刑事訴訟法第60条第1項、第2項)。

検察官が主張する公訴事実に争いがなければ、第1回公判期日で結審するのが通例です。これに対して、「重要事実を入手したことはない」などの否認事件では、複数の公判期日を経て証拠調べ手続き・弁論手続きが実施されて、判決言渡しに至ります。

インサイダー取引規制違反の罪で逮捕・起訴されたときには、「実刑判決を回避すること(執行猶予付き判決や罰金刑を獲得すること)」が最大の防御目標です。経済犯罪や金融商品取引法違反の実績豊富な私選弁護人までご依頼のうえ、少しでも軽い刑事処分獲得を目指しましょう。

インサイダー取引で逮捕されたときに生じるデメリット4つ

インサイダー取引について金融商品取引法違反の容疑で逮捕されたときには、以下4つのデメリットに晒されます。

  1. 他の刑法犯罪と同じように逮捕・勾留によって長期間身柄拘束されかねない
  2. 金融商品取引法違反の容疑で逮捕された時点で実名報道リスクに晒される
  3. 勤務先から懲戒処分が下される可能性が高い
  4. 金融商品取引法違反の容疑で逮捕・起訴されると「前科」がつく可能性が高い

インサイダー取引は通常の犯罪と同じように長期間身柄拘束される可能性がある

殺人罪や強盗罪などの刑法犯罪と同じように、金融商品取引法違反の容疑で逮捕されたときも身柄拘束を避けることはできません

つまり、検察官に逮捕されただけでも2日間、勾留請求されると最長22日間、社会生活から完全に隔離されるリスクがあるということです。さらに、否認事件や逃亡・証拠隠滅のおそれがあるときには、起訴後勾留によって刑事裁判までの数カ月間拘置施設から出ることができません。

身柄拘束期間が長期化するほど、キャリアや日常生活に生じるリスクは大きくなります。早期の防御活動によって身柄拘束期間の短縮化を実現できるので、刑事事件実績豊富な私選弁護人の力を頼りましょう

インサイダー取引で逮捕されると実名報道リスクに晒される

インサイダー取引規制違反の容疑で逮捕されると実名報道される可能性が生じます。

そもそも、すべての刑事事件が報道番組やネットニュースで配信されるわけではありません。どのような刑事事件を報道するかについては報道機関の裁量次第で、一般的に、社会的関心度が高い事件や被害状況が深刻な重大事件などが実名報道の対象になることが多いです。

そして、インサイダー取引などの経済犯罪は注目度が高いトピックなので、少額の株式取引であったとしても実名報道のリスクに晒されます

一度でも実名報道されると、インターネット上に事件の情報が一生残り続けるので、今後の転職活動やライフステージに支障が生じかねません。

実名報道を避けるには「逮捕されないこと」が何より重要です。証券取引等監視委員会の調査が入った段階や検察庁から任意の出頭要請を受けた時点で防御活動に力を入れることで「在宅事件化」を実現できるので、できるだけ早いタイミングで弁護士までご相談ください

インサイダー取引を理由として懲戒処分が下される

インサイダー取引を理由に金融商品取引法違反の容疑で逮捕されたことが勤務先にバレると何かしらの懲戒処分を下される可能性が高いです。

どのような懲戒処分が下されるかは、各社が規定する就業規則の懲戒事由の内容次第です(一般的な懲戒処分は「戒告・譴責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇」に分類されます)。

たとえば、自分の勤務先の職務をきっかけに重要事実を入手してインサイダー取引に及んだようなケースでは懲戒解雇処分を下されても文句は言えないでしょう。その一方で、家族や友人などを経由して得た未公表情報を使って単発的な株式取引で利益を上げた事案では戒告や譴責などの軽い処分で済む可能性があります。

刑事事件に強い弁護士に相談すれば会社にバレないような工夫を凝らしてくれたり、重過ぎる懲戒処分に異議を申し立ててくれたりするでしょう。

インサイダー取引で逮捕・起訴されると前科によるデメリットに晒され続ける

インサイダー取引に及んだことがきっかけで金融商品取引法違反の容疑で逮捕・起訴されると、刑事責任を問われるだけではなく、「前科」によるデメリットに苛まれる可能性が高いです。

前科とは、「有罪判決を受けた経歴」のことです。実刑判決だけではなく、執行猶予付き判決や罰金刑が確定したときも、前科が付きます。

前科者になると、今後の社会生活に以下のデメリットが生じます。

  • 前科情報は履歴書の賞罰欄への記載義務が生じる(就職活動・転職活動が困難になる)
  • 前科を理由に制限される職業・資格がある(士業、警備員、金融業など)
  • 前科は「法定離婚事由」に該当する(配偶者から離婚を求められると最終的には拒絶できない)
  • 離婚問題に発展したときに、慰謝料や親権などで不利な条件を強いられる可能性が高い
  • 前科を理由にビザ・パスポートの発給制限を受けると、自由に海外旅行・海外出張できなくなる
  • 前科がある状態で再犯に及ぶと、刑事処分が重くなる可能性が高い

前科によるペナルティを回避するには、何としても不起訴処分を獲得するしかありません

そのためには、検察段階で実施される取調べで有利な情状証拠を示す必要があるので、できるだけ早いタイミングで経済犯罪に強い弁護士のアドバイスを参考にしましょう

インサイダー取引で逮捕されそうなときに弁護士へ相談するメリット3つ

インサイダー取引で逮捕されるか不安なときや、金融商品取引法違反の容疑で任意の出頭要請を受けたときには、すみやかに弁護士へ相談することを強くおすすめします。

というのも、金融商品取引法事案などの経済犯罪を得意とする弁護士の助けを借りることで、以下3点のメリットを得られるからです。

  1. 不安を感じている株式取引等が金融商品取引法のインサイダー取引規制に抵触するか判断してくれる
  2. 少しでも軽い刑事処分獲得を目指して手続きの段階に応じた防御活動を展開してくれる
  3. 接見機会を通じて被疑者にさまざまなメリットをもたらしてくれる

当サイトでは金融商品取引法関連のトラブルに強い弁護士を多数掲載中なので、アクセスの良い法律事務所までお問い合わせください。

取引状況を総合的に確認して違反事実を認めるべきか否か判断してくれる

金融商品取引法では、インサイダー取引について詳細な要件を設定しています。たとえば、インサイダー取引に該当する重要事実は法律に列挙したものに限られます。一般には知られていないような情報を入手したとしても、法定の重要事実に該当しない限りはインサイダー取引規制には違反しません。

また、実際にその未公表情報を使って株式取引をしたとしても、違反事実を立証できるだけの客観的証拠が揃っていない限り、金融商品取引法違反で立件される心配はありません。

弁護士に相談をすれば、実際の株式等の売買の状況を金融商品取引法の規定に照らし合わせて、刑事訴追されるリスクを分析してくれるでしょう。

少しでも軽い刑事処分獲得を目指してくれる

弁護士に相談をすれば、刑事手続きのステージに応じて少しでも軽い刑事処分獲得を目指した防御活動を期待できます。

インサイダー取引が発覚する前なら「自首」

インサイダー取引が証券取引等監視委員会や捜査機関に発覚する前なら、「自首」が有効な選択肢になります。

自首とは、「まだ捜査機関に発覚しない前に、犯人自ら進んでインサイダー取引に及んだ事実を申告し、刑事処罰を求める意思表示」のことです(刑法第42条第1項)。

自首が有効に成立すれば、「刑の任意的減軽」というメリットを得られます。たとえば、金融商品取引法違反の容疑で逮捕されたとしても、自首をした事実をもって不起訴処分や執行猶予付き判決・罰金刑を獲得しやすくなるでしょう。

ただし、いつでも自首をすることが正解だというわけではありません。なぜなら、過去のインサイダー取引が発覚しないまま5年が経過すれば公訴時効の完成を狙えるからです。

したがって、過去のインサイダー取引が捜査機関等に発覚していない状況なら、まずは弁護士へ相談をして、現段階で自首をするべきか否かについて判断をしてもらうことをおすすめします。そして、自首が適切な事案であれば、自首後に実施される事情聴取での供述方針などを明確化してもらい、少しでも有利な刑事処分獲得を目指しましょう

インサイダー取引がバレた後なら「在宅事件」

インサイダー取引が検察官に発覚したときには、「在宅事件化」を目指すべき状況です。

在宅事件とは、「逮捕・勾留という身柄拘束処分なしで刑事手続きが進められる事件類型」のことです。あくまでも「任意の出頭要請・事情聴取」という形式で捜査協力することになるので、逮捕されたときのように拘置所に身柄を押さえられることもありませんし、事情聴取が終われば自宅に戻ることも可能です。

そして、インサイダー事件が在宅事件扱いになるには、「逮捕の必要性がないこと」を示すのがポイントです。たとえば、以下のような状況や対応をすれば、逮捕処分を回避しやすくなるでしょう。

  • インサイダー取引に至った経緯や取引の全貌について素直に自供する
  • インサイダー取引をしたときのスマホやPCの取引履歴を提出する
  • 情報提供者や情報の入手方法について嘘偽りなく供述する
  • インサイダー取引をしたことに対して真摯に反省の態度を示す
  • 任意の出頭要請や事情聴取を拒絶しない

なお、「身柄拘束されないこと」と「不起訴処分を獲得すること」はまったく別問題なので、在宅事件の対象になったからといって防御活動に手を抜くのは厳禁です。実際、在宅事件として複数回の事情聴取を経た後、「在宅起訴」されて刑事裁判にかけられるケースは少なくありません。

インサイダー取引の容疑で逮捕された後なら「勾留阻止」

インサイダー取引が原因で金融商品取引法違反の容疑で逮捕された後は、「勾留阻止活動」に力を入れましょう

なぜなら、検察官に逮捕された後そのまま公訴提起判断に至ると身柄拘束期間は48時間以内で済むのに対して、勾留請求されると最長22日間に及ぶリスクがあるからです。

拘置所生活は想像以上に心身の負担になるものです。また、身柄拘束期間が長引くほど社会生活への支障も大きくなります。

弁護士は勾留阻止に役立つような供述方針を明確化してくれるでしょう。

インサイダー取引の容疑で逮捕・勾留された後なら「不起訴処分獲得」

インサイダー取引について金融商品取引法違反の容疑で逮捕・勾留されたときには、「不起訴処分の獲得」が最大の防御目標になります。

逮捕・勾留された被疑者の多くは、「インサイダー取引をした以上、刑事裁判にかけられてもやむを得ない」と諦めてしまいがちです。

しかし、不起訴処分は以下3種類に分類されるので、実際にインサイダー取引に及んだとしても不起訴処分(起訴猶予処分)を獲得するのは不可能ではありません

  • 嫌疑なし:インサイダー取引をした証拠がない誤認逮捕・冤罪のケース
  • 嫌疑不十分:インサイダー取引を立証する証拠が不足しているケース
  • 起訴猶予:インサイダー取引をしたことに間違いはないが、初犯の事情を総合的に考慮すると刑事裁判にかける必要性に乏しいケース

起訴猶予処分に付するか否かを判断するときには、「犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情況」などの諸般の事情が総合的に考慮されます(刑事訴訟法第248条)。

経済犯罪に強い弁護士は起訴猶予処分獲得に役立つ情状証拠を揃えて検察官に働きかけをしてくれるでしょう。

インサイダー取引の容疑で起訴されるなら「略式手続き」

インサイダー取引について金融商品取引法違反の容疑で起訴されるときには「略式手続き」の利用がポイントになる場合があります。

略式手続き(略式起訴・略式命令・略式裁判)とは、「簡易裁判所の管轄に属する刑事事件について100万円以下の罰金刑が想定される場合に、被疑者側の同意がある場合に限って、公開の刑事裁判を省略して簡易・簡便な形で罰金刑を確定させる裁判手続き」のことです(刑事訴訟法第461条)。所定の罰金を納付した時点で刑事手続きが終了するので、社会復帰のタイミングを大幅に前倒しできます。

ただし、インサイダー取引規制違反の法定刑は「5年以下の懲役刑もしくは500万円以下の罰金刑(併科あり)」なので、略式手続きの対象になるためには、検察官が実施する事情聴取で丁寧に情状をアピールして求刑予定の刑罰を引き下げる必要があります。また、略式手続きの利用に同意した時点で「有罪・前科を回避すること」を諦めなければいけない点に注意しなければいけません。

インサイダー取引規制違反事件の状況によって略式手続きに同意するべきか否かの判断は分かれます。略式手続きに同意をして罰金刑を落としどころにするべきか、刑事裁判で量刑について争うべきかについて、経済犯罪の経験豊富な弁護士の意見を参考にしてください。

インサイダー取引の容疑で起訴された後は「執行猶予付き判決獲得」

インサイダー取引の容疑で起訴されたときには、「執行猶予付き判決の獲得」が防御目標になります。

なぜなら、インサイダー取引の規模次第では初犯でも実刑判決が下される危険性があるからです。実刑判決が確定すると、刑期を満了するまで刑務所から出ることができません。これでは、社会復帰の難易度が大幅に高まってしまいます。

執行猶予とは、「所定の執行猶予期間を無事に過ごすことで実刑判決が執行されるリスクがゼロになる制度」のことです。刑務所に収監されることなく日常生活を送ることができるので、キャリアなどが途絶える心配はありません。

ただし、執行猶予付き判決の対象になるのは、「3年以下の懲役刑・禁錮刑・50万円以下の罰金刑の言渡しを受けたとき」だけです(刑法第25条第1項)。インサイダー規制違反の法定刑は「5年以下の懲役刑もしくは500万円以下の罰金刑(併科あり)」なので、事案の状況次第では執行猶予の対象になりません。

したがって、インサイダーの容疑で起訴されたときに執行猶予を狙うには、自首減軽や酌量減軽などの防御活動を駆使する必要があります。刑事裁判経験豊富な弁護士のアドバイスを参考に、執行猶予付き判決獲得によって少しでも社会復帰の可能性を高めましょう。

接見機会を通じて身柄拘束中の被疑者にさまざまなメリットを提供してくれる

インサイダー取引が発覚して逮捕された被疑者には接見禁止処分が下されることが多いので、身柄拘束期間中は家族などの第三者とは一切面会できません。

ただし、被疑者には「接見交通権」が保障されているので、唯一弁護士とは立会人なしで自由に面会可能で、また、書類や物の授受をおこなうことができます(刑事訴訟法第39条第1項)。

刑事事件を専門に扱っている弁護士は、接見機会をフル活用して以下のメリットをもたらしてくれるでしょう。

  • 被疑者の唯一の味方として被疑者を励ましてくれる
  • 時々刻々と推移する捜査状況を踏まえて供述方針を明確化してくれる
  • 「被疑者ノート」を差し入れて違法捜査を予防してくれる
  • 家族や会社への連絡役を担ってくれる

【注意!】インサイダー取引の容疑をかけられたときには私選弁護人と契約しよう

逮捕されたすべての被疑者は「当番弁護士制度」を利用できます。当番弁護士制度とは、身柄拘束中の被疑者が初回無料で弁護士と接見できる機会を保障する制度のことです。

ただし、インサイダー取引のような専門性の高い容疑で逮捕されたときには「私選弁護人」と契約することを強くおすすめします。なぜなら、当番弁護士制度を利用してもどのような弁護士が接見にやってくるか事前に分からないからです。たとえば、インサイダー取引のような専門性が高い刑事事件を担当したことがない専門家や弁護士歴の浅い新人では、効果的な経済犯罪弁護活動を期待できません。

私選弁護人なら、専門家の実績や専門分野、年齢、弁護士歴などを踏まえて、信頼できる専門家と個別に契約を締結することができます。費用負担は重くなりますが、軽い刑事処分を獲得できる可能性は高まるでしょう。

インサイダー取引で逮捕されるか不安なときは弁護士へ相談しよう

金融商品取引法のインサイダー規制では相当細かい要件が定められているので、知らない間に違法な株式取引に手を染めてしまっている可能性があります。そして、インサイダー取引の刑罰や課徴金はかなり重いので、捜査機関主導で摘発をされると、初犯でも厳しいペナルティが科されかねません

少しでも有利に刑事手続きを進めるには、早い段階から適切な防御活動に専念する必要があります。

当サイトでは、インサイダー取引などの経済犯罪を得意とする法律事務所を多数掲載しておりますので、アクセスの良い信頼できる弁護士まですみやかにお問い合わせください。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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