ハプニングバーは「客同士のハプニング発生」を前提としているバーです。体裁はバーですが、実態はハプニングを楽しみに来ている客ばかりです。
ハプニングバーの違法性についてよく議論されますが、適切な許可を得ており、ルールや法律を守っている店舗であれば違法性はありません。つまり、ハプニングバー自体は何ら犯罪性はないということです。
ただし、ルールを守らなかったり法律に違反したりしていると犯罪になり、逮捕されてしまう可能性もあるため注意しなければいけません。
この記事では、ハプニングバーの利用上のルールや犯罪となるケース、ならないケースについて解説しています。また、実際に摘発された場合の事例についても解説しているためぜひ参考にしてください。
目次
ハプニングバーの体裁と利用ルールとは
ハプニングバーの体裁は「飲食店(バー)」です。そのため、基本的には「お酒を飲むところ」と考えれば良いです。ただハプニングバーは「ハプニングが発生するかもしれない」という前提があり、そのことを目的に来店する客が多いです。
まずは、ハプニングバーの体裁と利用する際のルールについて詳しく解説します。
基本的には飲食店(バー)と同じ
ハプニングバーは「バー」と書かれているとおり、その体裁はお酒を楽しむ場である「バー」です。さまざまなコンセプトを取り入れながらお酒を楽しむ「コンセプトバー」というものもありますが、前提は最低限の接客を主にしたバーであることに変わりはありません。
ハプニングバーはいわゆる「客同士でのハプニングが起こるかもしれない」または「ハプニングが起こっても良い」というコンセプトのバーです。大きな括りとしてはバーではあるものの、内容的にはコンセプトバーに近いと考えておけば良いでしょう。
客同士でハプニングが発生する仕組み
ハプニングバーは客同士でいわゆる「ハプニング」が発生するかもしれない、もしくはハプニングが発生しても良い場所です。ハプニングバーで言うハプニングとは、突発的行為を指します。
ハプニングバーには個室が用意されており、ハプニングバーに来客した客同士がその個室に入ってハプニング(突発的行為)が発生する仕組みです。
利用上のルールは店舗によって異なる
ハプニングバー利用上のルールは、店舗によって大きく異なります。一般的には「ハプニングが発生する可能性がある場所」という認識で相違はありませんが、細かいルールが定められているケースがあるため要注意です。
利用店舗側のルールを守らなければ思わぬトラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。また、利用者側が何らかの犯罪を犯してしまう可能性もあるため注意しなければいけません。
たとえば、「何らかのマーク等をつけている客は、ハプニングを目的としていない」と言ったルールがあったとしましょう。このルールを認識せずに、マークをつけている客にしつこく言い寄ったり突発的行為を強要した場合などが該当します。
そのため、ハプニングバーごとに設定されているルールをしっかりと把握したうえで、法律及びルールを守って楽しく遊ぶように心がける必要があります。
ハプニングバーの利用者が犯罪に該当する場合
ハプニングバーの利用に際して、経営者側ばかりに違法性が注目されがちです。しかし、その実態や内容次第では、ハプニングバーの利用者が犯罪に該当するケースがあるため注意しなければいけません。
たとえば、ハプニングバーは「ハプニングの発生を前提としている」ことは間違いありません。しかし、さまざまなコンセプトやルールがある中で、自分の認識だけで行動をしてしまうと強制わいせつ罪や不同意性交等罪に問われてしまう可能性があります。
次に、ハプニングバーの利用者が犯罪に該当してしまうケースについて詳しく解説します。
公然とわいせつな行為を行った場合は「公然わいせつ罪」が成立する
ハプニングバーは客同士のわいせつな行為が発生することを前提としています。しかし、公然とわいせつな行為を行った場合は、公然わいせつ罪が成立するため注意しなければいけません。
たとえば、店舗内で不特定多数の人が見れる状況下でわいせつな行為を行った場合、客側が公然わいせつ罪に問われます。また、店舗側で個室を用意していた場合であっても、不特定多数の人がその行為を見れる状況下にあれば、同罪が成立します。
相手の同意がない場合は「不同意わいせつ罪」「不同意性交等罪」が成立
相手の同意を得ずにわいせつな行為を行った場合は、不同意わいせつ罪もしくは不同意性交等罪が成立します。
ハプニングバーは、客同士でわいせつな行為(いわゆるハプニング)が発生することを前提としているバーです。そのため、ハプニングバーにてわいせつな行為を行ったとしても、違法性は問われません。
しかし、ハプニングバーに来ているからといって、すべての人を対象にわいせつな行為を行って良いと言うものではありません。たとえば、カップルで来ている客の場合、ハプニングバーの雰囲気をカップル同士で楽しみたいと考えている人も多いです。
また、男性女性問わず「この人とのハプニングは起こしたくないな……」と考えている人もいるでしょう。客はそれぞれ自分なりにさまざまな意思を持っています。そのため、「ハプニングバーに来ている客であれば、誰でもわいせつな行為をしても良い」と認識していると犯罪になり得ます。
ちなみに、不同意わいせつ罪は「わいせつな行為」を行った場合に成立する犯罪です。一方、不同意性交等罪は「性交等」を行った場合に成立する犯罪です。
「不同意」の定義は、相手の同意を得ずにもしくはもしくは暴行や飲酒等によって意思を表明することができない状態にしたうえで行為を行うことを指します。
不同意わいせつ罪の法定刑は「6カ月以上10年以下の拘禁刑」であり、不同意性交等罪の場合は「5年以上の有期拘禁刑」です。
拘禁刑とは?
拘禁刑とは自由刑のひとつであり、懲役刑および禁固刑を統合させた刑罰です。拘禁刑は「必要な刑務作業を行わせることができる」と明記されており、刑務作業が義務付けられていません。
なお、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪は婚姻関係等に関わらず成立する犯罪です。そのため、カップルや夫婦でハプニングバーへ遊びに行き、そういった行為を相手に強要した場合も成立する恐れがあります。
その他トラブル発生時は暴行罪・傷害罪の可能性もある
ハプニングバーはバーがある店舗ないで「ハプニング」が発生する仕組みです。そのため、多くの人がハプニングが発生することを前提に来店していることでしょう。
しかし、ハプニングを発生させたい客とそうではない客の間で相違が発生し、暴行等のトラブルが発生してしまうケースもあります。この場合、当然ながら暴行罪や傷害罪といった犯罪が成立し、逮捕されて有罪判決が下されてしまうでしょう。
ハプニングバー経営者が犯罪に該当する場合
ハプニングバーを経営している側が犯罪になる可能性もあります。たとえば、客が公然わいせつ罪に問われた場合は、店舗経営者側も「公然わいせつほう助」が成立する可能性があります。
また、ルールを守ってハプニングバーを経営していなければ、風営法違反に問われてしまう可能性もあるため要注意です。次に、ハプニングバーの経営者側が犯罪になるケースについても解説します。
客が公然わいせつ罪に問われた場合「公然わいせつほう助」の可能性
客が公然わいせつ罪に問われた場合は、店舗側も「公然わいせつほう助罪」が成立する可能性があるため要注意です。
公然わいせつ罪とは「公然とわいせつな行為をした場合」に成立する犯罪です。たとえば、ハプニングバーの店舗内で堂々とわいせつな行為をした場合に成立します。
ハプニングバーは客同士のハプニングを前提としていますが、あくまでも店舗内に設置してある個室等でハプニングが発生します。そのため、たとえば他の客がいる前で公然とわいせつな行為を行った場合は、公然わいせつ罪が成立するのです。
また、公然とわいせつな行為が行われているにも関わらず、店舗側が何ら注意等せずにその行為を行わせていた場合は、公然わいせつをほう助したことになります。よって、公然わいせつほう助罪が成立するのです。
風営法違反に問われる可能性もある
風俗営業を行う場合は風営法許可の届出を行う必要があります。もし、届出を行うことなく風俗営業等を行っていた場合は、風営法違反として処罰されてしまう可能性が高いです。
たとえば、午前0時を過ぎて営業を行う場合や女性従業員(サクラ)を雇ってハプニングを発生させるような場合は風営法許可が必要です。また、客同士の売春行為を黙認していた場合などは、店舗側も売春防止法違反に問われてしまう可能性があります。
ハプニングバーの利用で犯罪者にならないための方法
ハプニングバーの利用は一歩間違えると犯罪に抵触してしまいます。安全に楽しむためには、法律を理解して店のルールを守ることが大切です。
次に、ハプニングバーの利用で犯罪者にならないための方法について詳しく解説します。
店のルールを守って楽しむ
ハプニングバーはハプニングの発生を前提としているバーですが、店舗ごとに様々なルールを設けています。店舗のルールを守らなければ、何らかの犯罪が成立してしまう可能性もあるため注意しなければいけません。
また、客同士でさまざまなトラブルが発生する可能性も懸念されます。初めて行く店舗では事前にルールを把握したうえで、不明な場合はしっかり確認してから楽しむようにしましょう。
法律を理解して違法性がない範囲で楽しむ
ハプニングバー自体に違法性はありませんが、楽しみ方を間違えたり店舗側が適切な許可取得をしていなかったりする場合は、思わぬトラブルに巻き込まれてしまう可能性が高くなります。
そのため、自分自身でハプニングバーに関係する法律を把握し、怪しい店には立ち入らないように自己防衛することがとても大切です。
たとえば、ハプニングバーでハプニングが発生したとしても、金銭のやり取りがあった場合は売春防止法違反に該当します。また、ハプニングバーにいる客であってもあとから「同意はなかった」と言われてしまう可能性もあるでしょう。
さまざまなリスクがあることを理解したうえで、自己防衛をしっかり行ったうえで楽しみましょう。
ハプニングバーにて実際に発生した摘発事例
ハプニングバーの摘発事例について解説します。
事例1.ハプニングバー「眠れる森の美女」事件
東京都渋谷区にあったハプニングバー「眠れる森の美女」が摘発された事例です。本事例では経営者及び従業員合計10名が「公然わいせつほう助」の疑いで逮捕されました。また、実際に行為を行っていた客が公然わいせつ罪で逮捕されました。
公然わいせつほう助罪は客が公然とわいせつな行為を行っていた場合、その場所を提供したことによって成立する犯罪です。眠れる森の美女では、個室を用意していたもののマジックミラーになっており、内側からは見えなくても外側からは見える仕組みになっていました。
客同士のわいせつな行為が公然と見られるようになっていたことから、摘発された事例です。
事例2.ハプニングバー「BAR EDEN 九二五九」摘発事例
ハプニングバー「BAR EDEN 九二五九」は、経営者や従業員合計6名が「公然わいせつほう助」の罪で逮捕されました。同店舗では、ダーツの罰ゲームとして客が全裸になることがあったようです。
同店は風俗営業の許可をとっていなかったため、当然ながら店舗で裸になることは許されません。結果的に、客は公然わいせつ罪に問われ、経営者は場所を提供したとして公然わいせつほう助罪が適用されました。
ハプニングバーの利用が犯罪になってしまった場合のリスク
ハプニングバーの利用が犯罪に該当し、逮捕されてしまう可能性もあります。万が一、逮捕されてしまった場合は以下のようなリスクが発生するでしょう。
- 逮捕の可能性
- 長期間の身柄拘束の可能性
- 有罪判決による前科の可能性
- その他社会的リスクの可能性
次に、ハプニングバーの利用が犯罪になってしまった場合のリスクについても詳しく解説します。
逮捕の可能性
ハプニングバーの利用が犯罪になった場合、逮捕されてしまう可能性があります。逮捕されてしまうと、身柄を拘束されて取り調べを受けることになるため、勤務先にバレてしまったり家族にバレてしまったりする可能性が高いです。
ハプニングバーへ行っていたことがバレてしまうことによる影響はもちろんのこと、犯罪を犯して逮捕されてしまった事実による影響も甚大です。
長期間の身柄拘束の可能性
逮捕されてしまうとそのまま長期的に勾留されてしまう可能性があります。初めに逮捕されると48時間以内に事件を送致する必要があります。その後24時間以内に勾留の有無を判断する流れです。
上記流れで最長72時間(3日間)の身柄拘束が発生します。さらに、勾留が認められた場合は10日、延長が認められればさらに10日の合計20日です。これで23日間の身柄拘束が発生します。
長期間の身柄拘束が発生すると、当然ながら会社へ出社することができません。学生であれば、学校へ行くことができません。最悪の場合、解雇されたり退学処分となったりする可能性もあり、社会的な影響はとても大きくなってしまいます。
有罪判決による前科の可能性
犯罪を犯して有罪判決が確定すると、前科が付いてしまいます。前科は「賞罰欄」がある履歴書に記載する必要があり、就職・転職時に不利になってしまう可能性があります。
また、前科は一生残り続けてしまうため、再犯を犯した場合などにさらに厳しい処罰が下されてしまうこともあるでしょう。とくに同じ犯罪を繰り返した場合は、一度目は執行猶予付き判決が下されても、二度目以降は実刑判決が下されることになるでしょう。
その他社会的制裁リスクが起こり得る
ハプニングバーの利用で犯罪を犯してしまうと逮捕されたり身柄拘束をされたり、有罪判決による影響が発生したりなど、さまざまなリスクが発生します。全国ニュースで報道される可能性もあり、名前を検索するだけでヒットしてしまう状況になることもあり得ます。
犯罪を犯してしまうとさまざまな社会的リスクを負うことになります。就職や転職が難しくなることもあるでしょう。そのため、ハプニングバーを楽しむ際は法律と店舗のルールをしっかり守り、節度を持って遊ぶようにしなければいけません。
ハプニングバーの犯罪に関するよくある質問
ハプニングバーに関するよくある質問を紹介します。
Q.ハプニングバーに来ている女性と性交等を行った場合、犯罪になり得ますか?
A.ルールや法律を守っている場合は犯罪にはなりません。
ハプニングバーは客同士の「ハプニング」が発生する前提の店です。ハプニングの内容はさまざまですが、最終的に性行為まで至ってしまってもそこに違法性はありません。
そもそも、ハプニングバー自体が適切な届出等を行っている場合は違法性がないため、店舗で女性と知り合って性行為を行っても何ら問題はありません。
ただし、無理やり性行為を行ったり店舗のルールに反して公然とわいせつな行為を行った場合などは犯罪になるため注意してください。
Q.すべてのハプニングバーが摘発されていない理由は何ですか?
A.そもそもハプニングバー自体に違法性がないため、すべてが摘発されるわけではありません。
前提として、ハプニングバーは違法ではありません。摘発されるハプニングバーは、何らかの違法行為を行っていることが原因です。そのため、「ハプニングバー=すべて摘発対象」となるわけではありません。
Q.ハプニングバーに行っただけ(性交等はしていない)場合は犯罪になりますか?
A.違法性はありません。
そもそもハプニングバー自体に違法性はありません。また、ハプニングバーに行ったとしても犯罪は成立しません。また、性交等を行った場合であっても金銭のやり取りがなく、強制等でなければ違法性はないため安心してください。
ただし、店舗側のルールを守らなければ、ルール違反となるため注意しなければいけません。
Q.過去にハプニングバーへ行った際、身分証明書のコピーを取られました。あとから逮捕される可能性はありますか?
A.違法行為を行った場合は、逮捕されてしまう可能性はあります。
たとえば、あとから相手に「同意していないのにわいせつな行為をさせられた」といった被害報告があった場合、店舗に保存してある免許証を元に逮捕されることがあるでしょう。ただし、とくに違法行為を行っていない場合は逮捕されることはないため安心してください。
ハプニングバーが免許証(身分証明書)の提出を求める理由は、年齢確認や身分が明らかかどうかといった意味合いがあります。悪用等されるわけではないため安心してください。
Q.ハプニングバーの利用で逮捕されたらどうすれば良いですか?
A.まずは弁護士に相談をしてください。
ハプニングバーの利用で逮捕された場合は、何らかの違法行為があったことが疑われます。そのため、まずは弁護士へ相談をしたうえで今後のアドバイスを受けてください。
早期に弁護士へ相談をしておくことで早期に弁護活動を行ってもらうことができ、その後の影響を最低限に抑えられる可能性があります。そのため、まずはすぐに弁護士へ相談するようにしましょう。
なお、逮捕後に一度だけ弁護人を呼べる「当番弁護人制度」があります。「逮捕後」という制限はあるものの、知識として覚えておけば万が一のことがあった際も安心です。
まとめ
今回は、ハプニングバーの違法性について解説しました。
ハプニングバー自体に違法性はなく、店のルールや法律を守って楽しむ分には何ら罪に問われることはありません。しかし、ルールを守らなければ犯罪になってしまうため注意が必要です。
また、事例から見てもわかるように店舗側では「ルール上OK」とされていることであっても、それが犯罪になる可能性もあるため注意しなければいけません。たとえば、店舗内のルールで「罰ゲームとして裸になること」が許されていたとしても、法律的には公然わいせつ罪が成立します。
また、店の作り的に公然わいせつが成立してしまう事例もあります。そのため、犯罪者にならないためには、店のルールのみではなく法律も理解したうえで適切に楽しむ必要があります。今回解説した内容を踏まえ、楽しく正しく遊べるようにしましょう。