殺人教唆罪の成立要件とは?過去の事例や罪に問われた場合の対処法を解説

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人を殺せば「殺人罪」が成立しますが、人が殺人を犯すようにそそのかす行為は、殺人罪の教唆犯として処罰対象になるため注意しなければいけません。

つい、軽い気持ちで言ってしまったとしても、教唆された相手方が本気に捉え、殺人を犯してしまうかもしれません。この場合、教唆犯は正犯と同様に殺人罪として処罰されるため注意しなければいけません。

今回は、殺人教唆とはどういった犯罪なのか、罪に問われた場合はどのような刑罰が下されるのかについて詳しく解説します。

殺人教唆とは

殺人教唆は刑法第61条に定められている犯罪です。「教唆」という言葉を日常的に使う人は少ないですが、意味は「そそのかすこと」「犯罪を行うように仕向けること」です。

まずは、殺人を教唆した場合に成立する犯罪や殺人教唆の概要について詳しく解説します。

殺人を教唆した場合に成立する犯罪

「殺人を教唆」とは、殺人を犯すようにそそのかすことや犯罪を行うように仕向けることです。たとえば、殺し屋にお金を支払って殺人を依頼した場合に「殺人を教唆した」と認められます。

殺人を教唆した場合に成立する犯罪は「殺人罪の教唆」という犯罪が成立します。

つまり、人をそそのかしたり犯罪を犯すように仕向けた場合は、殺人罪の教唆という犯罪に問われて処罰されるということです。

刑法上「殺人教唆罪」という罪名はありません。つまり、「殺人を教唆した罪=殺人罪の教唆」となります。つまり、たとえば万引きを教唆した場合は、「窃盗の教唆」です。ちなみに、教唆した相手が殺人という目的を達成することができず、未遂で終わった場合は「殺人未遂の教唆を行った」として処罰されます。

刑法第61条に定められている犯罪

教唆については刑法第61条にて以下のとおり明記されています。

第六十一条 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
2 教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。

引用:刑法|第61条

先ほども解説したとおり、刑法条の罪名に「殺人教唆罪」はありません。あるのは「教唆の罪」です。つまり、殺人を教唆した場合は、刑法199条に定められている殺人罪の教唆を行った罪に問われます。

第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

引用:刑法|第199条

教唆は正犯の刑を科すると書かれているため、殺人の教唆の罪に問われた場合は、死刑または無期懲役もしくは5年以上の懲役に処されます。ただ、実際は実際に殺人を実行した正犯のほうが重い処分が下されることが多いです。

殺人教唆の成立要件

殺人教唆の成立要件は以下のとおりです。

  • 殺人を教唆したこと
  • 意図を持って故意に教唆したこと
  • 正犯者が実行したこと

初めに、殺人を教唆したことが成立要件の1つです。殺人の教唆とは、先ほども解説したとおり「殺人をそそのかすこと」を指します。たとえば「〇〇を殺してくれればお金を支払う」などとそそのかす行為です。

人を殺すように脅された場合は、教唆は成立しません。たとえば、「〇〇を殺さなければ、私がお前を殺す」と言われたような場合は、教唆ではないため処罰されることはありません。そもそも何らかの罪に問われることはありません。

2つめの要件は「意図を持って故意に教唆すること」です。たとえば、友達のいわゆるノリでふざけて「〇〇を殺してくれ」と言っても罪に問われることはありません。なぜなら、故意に教唆を行っているわけではなく、その場の冗談であるためです。

一方で、殺人を教唆した者が故意を持って「本当に実行してほしい」と思いながら依頼した場合は、教唆が成立します。

そして、3つめの要件は「正犯者が実行したこと」です。実際に殺人という目的を達成して初めて、殺人に対する教唆が成立します。

また、たとえば殺人という目的を達成することができず、未遂で終われば正犯者は殺人未遂罪に問われます。教唆を行った者も同様に殺人未遂罪の教唆に問われます。

わかりやすい例で言うと、殺し屋に殺人を依頼した場合です。仮に殺し屋が存在したとして、その人に依頼をすると、「実際に殺人という目的を達成してくれる」いった事実は把握しているでしょう。そのうえで殺人を依頼したとしましょう。

この時点で要件の1および2は満たしていることになります。さらに、殺し屋が実際にその任務を達成した場合は、あなたは殺人を教唆した罪に問われることになります。

殺人教唆の法定刑

教唆は「正犯と同じ」と明記されています。つまり、殺人罪の教唆に問われた場合は、殺人罪と同じ法定刑に処されます。

殺人罪の法定刑は「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」です。そのため、自分が殺人という罪を犯していなくても、死刑になる可能性もあるため注意しなければいけません。

中には「自分で手を下さなければ大丈夫」と考えている人がいるかもしれませんが、そのようなことはありません。正犯と同じであるため、死刑や無期懲役の可能性があります。

また、仮に極刑や無期懲役を避けられたとしても、懲役刑となる可能性が非常に高いのが殺人罪です。

執行猶予は3年以下の懲役または禁固刑の場合にのみ付けることができます。つまり、殺人罪は執行猶予の可能性はなく(情状酌量等によって減刑された場合を除く)、必ず刑務所に収容されてしまうことになります。

執行猶予とは?
執行猶予とは、刑の執行を猶予することを言います。たとえば「懲役3年執行猶予3年」の場合、懲役3年という刑罰を直ちに執行せず、3年間執行を猶予します。これを執行猶予と言い、猶予期間中に罰金刑以上の刑が確定しなければ刑罰は執行されません。

ただし、刑法上の教唆は「正犯と同じ」とされていますが、実際は正犯よりも刑罰が軽くなることが多いです。

正犯よりも刑罰は軽くなるものの、懲役刑の可能性は高いため「教唆なら罪は軽い」などと考えないほうが良いでしょう。

その他類似犯罪との違い

実は、「人が殺されている」という事実は同じであっても殺罪人の教唆のほかさまざまな法律によって処罰される可能性があります。

たとえば、教唆は「犯罪を教唆して実行された場合」に成立する犯罪です。殺人罪の教唆は、殺人を行うようそそのかす行為を指します。しかし、自分から「私のことを殺してください」とお願いすると、殺人教唆ではなく自殺幇助という罪が成立します。

また、殺人を教唆(そそのかした)事実はないものの、手助けをした場合は殺人幇助罪という罪に問われます。

そのため「人が殺された」という事実は同じであっても、実際はさまざまな法律によって処罰される可能性があります。次に、殺人教唆に類似した犯罪についても詳しく解説します。

自殺幇助との違い

自殺幇助(ほうじょ)とは、自殺の手伝いをした場合に成立する犯罪です。たとえば、首吊り自殺を検討している人に対して、ロープを用意したり首にロープをかけやすいように手助けをすることによって成立する犯罪です。

また、自殺志願者が「私のことを殺して欲しい」と伝え、実際に殺した場合は嘱託殺人という罪が成立します。殺人を教唆しているとも受け取れますが、自死の場合は嘱託殺人という犯罪です。

また、自殺をするよう教唆した場合は、自殺教唆が成立します。たとえば「死ね」と言って自殺させるような行為を指します。

自殺教唆は、あくまでも自分の意思決定によって自死した場合に成立する犯罪です。そのため、脅迫や恐喝等を用いて自死に追い込んだ場合は、自殺教唆ではなく殺人罪が成立するため注意してください。

自殺幇助、嘱託殺人、自殺教唆はいずれも同じ条文に明記されている犯罪です。法定刑は「6カ月以上7年以下の懲役または禁錮」です。

殺人の教唆と比較すると刑罰は軽いです。その理由は、「自死=自分の意思決定に基づいているため」です。あくまでも自分の気持ちを優先させ、相手に協力してもらっているためです。自殺教唆も脅迫や恐喝を用いておらず、あくまでも自分で自死を選択しています。

殺人罪との違い

殺人罪と殺人教唆の違いは、自分で殺人を犯したかどうかと言った違いです。殺人罪は自分で人を殺した場合に成立する犯罪である一方、教唆は殺人の教唆を行った場合に成立する犯罪です。

教唆の場合は、自ら手を出していないものの、法定刑は正犯(実際に人を殺した人)と同じです。ただし、実務上は正犯よりも刑罰が軽くなる傾向にあるため、正犯とまったく同じとはなりません。

殺人未遂罪との違い

殺人未遂罪は、殺人を行おうとしてその目的を達成しなかった場合に成立する犯罪です。殺人未遂罪が成立するためには「この人を殺そう」とする意思がなければいけません。

そして、教唆は殺人未遂罪の場合も成立します。殺人の教唆を行い、ある人が実際に殺人を決行した場合であってもその目的を達成できなかった場合は、殺人未遂罪の教唆になります。

教唆は「人をそそのかして殺人を行わせ、実際に目的を達成した場合」に成立する犯罪です。よって、その目的が達成されなかった場合は、殺人罪の教唆ではなく殺人未遂の教唆になります。

殺人幇助罪との違い

殺人幇助(ほうじょ)罪とは、積極的に殺人の手伝いを行った場合に成立する犯罪です。ただし、教唆同様に「殺人幇助罪」という罪名があるわけではありません。あくまでも、殺人罪の幇助ということになります。

たとえば、Aが殺人を犯すことを決めたとき、Bが殺人を犯すために必要となるナイフを用意した場合にBが問われる犯罪です。

上記例は、「Aに対してナイフを渡したあるいは売った」ことによって成立する犯罪ではなく、あくまでも「殺人を犯すと知っていながら、Aに対してナイフを売った・渡した」場合に成立します。

殺人の幇助罪は「正犯よりも刑罰を軽くする」と書かれているため、実際に犯行を行った者よりは軽い刑罰が言い渡されるでしょう。

ちなみに、殺人教唆を行ったものが、殺人に使用する道具を渡したりほう助したりしたような場合は、共同正犯による殺人罪が成立する可能性があります。

共同正犯とは?
共同正犯とは、その犯行に一緒に関わった者であることを指します。たとえば、殺人の手助けを行うために、逃走用車両を用意して運転手として待ち構えていた場合や、殺人の見張りを行なっていたような場合です。この場合は、ほう助罪や教唆ではなく共同正犯として殺人罪が適用されます。

傷害罪・傷害致死罪との違い

傷害罪は暴行等を行った結果、相手に傷害を与えてしまった場合に成立する犯罪です。また、傷害の結果、相手を死亡させてしまった場合は傷害致死罪が成立します。

たとえば、「人のことをナイフで刺した」という事実があった場合、殺意があれば殺人罪や殺人未遂罪が成立します。一方で、殺意がなかった場合は傷害罪や傷害致死罪が適用されます。

また、傷害罪や傷害致死罪に対しても教唆は成立します。たとえば「〇〇をナイフで刺して欲しい」と伝えて実際に刺して傷害を負わせた場合に教唆が成立します。

殺人教唆で逮捕された場合の流れ

殺人の教唆は殺人罪と同等の刑罰が下されてしまう可能性があります。当然ながら犯罪として成立するため、逮捕されて身柄拘束を受け、刑事裁判を経て刑が確定する流れとなります。

次に、殺人の教唆で逮捕されてしまった場合の流れについて解説します。

逮捕・身柄を拘束

殺人教唆が認められる場合は、逮捕される可能性が高いと思っていて良いでしょう。

犯罪を犯したからといって、必ず逮捕されるわけではありません。逮捕は、その人の身柄を拘束する行為であるため、逃亡や証拠隠滅の恐れがあるなど特別な条件がない限りは、認められていません。逮捕されなければ、在宅事件として取り調べ等を受けます。

逮捕には以下3つの種類があります。

  • 逮捕状を請求して行う「通常逮捕」
  • 現行犯を逮捕する「現行犯逮捕」
  • 指名手配犯を発見した場合など、逮捕状がなくても逮捕ができる「緊急逮捕」

殺人教唆の罪に問われた場合、通常逮捕となるケースが多いでしょう。通常逮捕の一般的な流れは、警察官等が内偵捜査を行って証拠や被疑者の生活パターンを見極め、裁判所に逮捕状の発布を請求します。

逮捕状が発布され次第、被疑者の自宅に行って逮捕状を見せて逮捕すると言った流れが一般的です。必ずしも自宅で逮捕されるわけではないものの、内偵捜査で被疑者の行動パターンを把握したうえで逮捕しやすいタイミングを確認して逮捕します。

逮捕は、被疑者の身柄を拘束する手続きであり、逮捕後は初めに48時間の身柄拘束が発生します。この間は刑務所内にある留置施設で過ごすことになります。

殺人教唆は、殺人正犯から発覚するケースが多いです。たとえば、正犯が逮捕された後に取り調べを受け「〇〇から依頼を受けて殺人を行った」と証言した場合、裏付けを行って逮捕する流れとなります。

検察官へ事件を送致し勾留の有無を判断

身柄事件の場合逮捕後48時間以内に検察官へ送致しなければいけません。

身柄事件とは?
身柄事件とは、容疑者の身柄を拘束して取り調べを行う事件のことを指します。身柄拘束が発生しない事件を在宅事件と呼びます。また、送致のことを身柄付送致、在宅事件の場合は書類送検と呼びます。

事件を引き継いだ検察官は、さらに24時間以内に被疑者を引き続き身柄拘束するかどうかを判断する必要があります。殺人の罪教唆の場合は、引き続き身柄拘束が必要であると判断されるケースが多いため、そのまま裁判所へ行って勾留質問を経て勾留が確定します。

勾留が確定すると、私選弁護人が付いていないもしくはつけることができない被疑者については、国選弁護人が選任されます。勾留前は当番弁護人を一度だけ呼ぶことができます。その他、私選弁護人であれば自分のタイミングで弁護人を呼べますが、実費で費用を支払わなければいけません。

最長20日間の身柄拘束

勾留請求が認められた場合、通常は10日間の身柄拘束が可能です。しかし、実務上は身柄拘束の延長が認められるため、さらに10日の合計20日間の身柄拘束が行われることになります。

この時点で最長23日間の身柄拘束が発生します。勾留中は、留置所にて身柄を拘束されるため、学生であれば学校へ行けない、社会人であれば出勤できません。

長期間の勾留により、退学もしくは解雇といった処分が下されることもあるため、社会的な影響も大きい点に注意しなければいけません。

起訴・不起訴を判断

検察は、身柄付事件の場合は勾留期間中に起訴・不起訴を判断しなければいけません。不起訴の場合は、直ちに身柄を釈放してその事件については終了します。しかし、殺人罪の教唆という事実がある場合は、ほぼ確実に起訴されます。

起訴には略式起訴と正式起訴の2種類があり、前者は刑事裁判を受けることなく判決が確定する仕組みです。そのため、被告人としては早期の釈放を目指せるというメリットがあります。

しかし、略式起訴は100万円以下の罰金もしくは科料(1,000円以上1万円未満の金銭納付刑)の場合しか適用されません。殺人罪(教唆)の場合は死刑または無期もしくは5年以上の懲役であり、罰金刑の規定はありません。

上記のことから殺人罪の教唆で起訴された場合は正式起訴となり、刑事裁判を受けることになります。

起訴された場合は刑事裁判・判決に従って刑に服する

正式起訴された場合は、刑事裁判を受けて最終的に判決が下されます。判決に不服がある場合は、控訴や上告が可能であり、最終的に確定した判決に従って刑に服します。

殺人教唆で逮捕されてしまった場合の対処法

殺人の教唆を行った事実がある以上、逮捕されて長期間の身柄拘束、最終的には懲役刑が確定する可能性が高いです。少しでも刑罰を軽くし、早期に社会に戻ってくるためには以下の対処法を検討しましょう。

直ちに弁護士へ相談

まずは、直ちに弁護士へ相談をしましょう。

逮捕されたあとは一度だけ当番弁護人を呼ぶことができます。また、勾留請求が認められた場合は国選弁護人が選任されます。

しかし、当番弁護人は一度だけしか呼ぶことができず、今後の流れや取り調べに関するアドバイスを受けることしかできません。本格的な弁護活動を行うことができないまま、勾留請求に至って勾留が行われます。

その後、国選弁護人が選任されるものの、国選弁護人が付くタイミングは勾留後であるためタイミングとしては遅いです。

そのため、経済的な余裕がある場合は、直ちに私選弁護人を呼びましょう。私選弁護人は自分の好きなタイミングで呼ぶことができます。そのため、早期に弁護活動を行ってもらえるというメリットがあります。

初期対応がその後の判決等に大きな影響を与えることもあるため、できるだけ早めに弁護人を呼ぶと良いことを覚えておいてください。

事件ごとに適切な弁護活動を行ってもらう

殺人罪の教唆は殺人正犯と同等の罪の重さです。しかしながら、実際に犯行を行っているわけではないため、事件に応じた適切な弁護活動を行うことで、刑罰が軽くなる可能性も考えられます。

弁護士によっても得意分野・不得意分野があり、実績の豊富さもまったく異なります。そのため、刑事事件に強い弁護人に依頼をしたうえで適切に弁護活動を行ってもらうようにしましょう。

誠心誠意反省の態度を示す・遺族等に対して謝罪の意を示す

誠心誠意反省の態度を示し、遺族に対して謝罪の意を示しましょう。刑事事件において、被害者や遺族の処罰感情は、判決に大きな影響を与えます。

殺人に関与した場合は、遺族としての処罰感情はとても厳しいものでしょう。しかし、あなたはできる限りの誠意を見せ、心の底から謝罪をすることが唯一できることです。

判決の有無の問題ではなく、1人の人間として過ちを犯してしまった事実を認め、正しく対処することがとても大切です。

すべて正直に話をする

取り調べを受けた際は、できるだけありのままのことを正直に喋ってしまったほうが良いです。

刑事事件においては、「言いたくないことは言わなくても良い」「自分に不利になることは言わなくても良い」黙秘権という権利が与えられます。また、黙秘権を行使したとしても、裁判上、不利になることはありません。

そのため、言いたくないことをあえていう必要はありません。とはいえ、知っている事実をすべて話し、反省している態度を示すことで「再犯の可能性は低い」「反省している」と判断されやすくなり、有利に働く可能性があります。

殺人教唆でよくある質問

殺人教唆でよくある質問を紹介します。

Q.殺人教唆の最高刑はどのくらいですか?

A.殺人教唆は、殺人罪と同じであるため最高刑は「死刑」です。

殺人罪の法定刑は「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」です。殺人教唆を行った人も殺人と同等の刑罰が与えられるため、最高刑は死刑です。一番刑罰が軽くなったとしても5年以上の懲役刑です。

ちなみに、執行猶予は3年以下の懲役刑以下しか付けることができません。よって、殺人教唆の罪に問われた時点で、実刑判決がほぼ確定します。

ただし、最低刑は5年以上の懲役ではあるものの、情状酌量等によって刑罰が軽くなることがあります。よって、殺人罪や殺人罪の教唆であっても場合によっては、執行猶予付判決が下される可能性もあるでしょう。

Q.殺人教唆に未遂罪はありますか?

A.教唆は単体の判事行為であり、殺人未遂の教唆は成立し得ます。

まず、「殺人教唆罪」という犯罪は成立せず、それぞれを別に考える必要があります。つまり「殺人罪」と「教唆」は別々に考えなければいけません。

要するに「殺人(罪)」を犯すように「そそのかした(教唆)」した場合に成立するのが、殺人罪の教唆です。よって、教唆はあくまでもおまけのようなものであり、どのような犯罪にも成立するものです。

そのため、当然ながら人を殺そうとして失敗に終わった(殺人未遂)場合、その背景に殺人を教唆したものがいれば、その人も殺人未遂の教唆罪(殺人未遂と同等)が成立します。

つまり、そもそも「教唆罪」という考え方はなく、犯罪をそそのかした場合にそそのかした者も処罰するというのが刑法上の考え方です。そのため、窃盗や詐欺などであってもそそのかした事実があれば、各犯罪の教唆を行った者として処罰される仕組みです。

Q.「自分を殺して欲しい」と依頼するのは殺人教唆に該当しますか?

A.「自分を殺して欲しい」と依頼するのは、殺人教唆に該当しません。

「自分を殺して欲しい」依頼をした人は、自分が死にたいと考えるいわゆる自殺志願者です。また、言い換えれば自死を希望する人です。

依頼があって殺害した場合は、嘱託殺人という犯罪が成立します。この犯罪は、前述の通り被害者(殺された人)から依頼があり、その希望を達成するために殺人を犯すことを指します。たとえば、日本では認められていない安楽死を医師が行うような場合に成立する犯罪です。

一方で、自殺志願者を勝手に殺すような行為は、殺人教唆や嘱託殺人ではなく、単なる殺人行為に該当します。

「死にたい」と口にしていたとしても「殺して欲しい」と依頼をしたわけではないため、嘱託殺人は成立しません。

まとめ

今回は、殺人教唆について解説しました。

殺人教唆は「殺人教唆罪」という犯罪があるわけではなく、殺人罪の教唆を行った人として裁かれます。教唆は、犯罪を犯した正犯と同等の刑罰が下されるとされています。

そのため、殺人教唆の場合は死刑または無期もしくは5年以上の懲役となるため注意しなければいけません。

「本当に殺すとは思っていなかった」は通用せず、正犯が実行した時点で教唆を行った者は処罰の対象になります。また、殺人の目的を達成できずに未遂で終わった場合も、殺人未遂の教唆犯として処罰されることになるため注意しましょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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