国選弁護人への依頼方法とは?メリット・デメリットについても詳しく解説

国選弁護人への依頼方法とは?メリット・デメリットについても詳しく解説
国選弁護人への依頼方法とは?メリット・デメリットについても詳しく解説

国選弁護人は、経済的な事情から自分で弁護人を依頼することが難しい人を対象にした制度です。依頼する方法は「国選弁護人を選任してほしい」と警察官等に伝えるだけで良いです。

しかし、国選弁護人を呼ぶためには条件を満たしている必要があります。また、いつでも誰でも呼べるわけではありません。この記事では、国選弁護人制度の概要や利用条件、その他の弁護人制度について詳しく解説しています。

【概要】国選弁護人制度とは

国選弁護人制度とは、貧困等を理由に弁護人を選任することができない人のための制度です。まずは、国選弁護人制度の概要と付けられる条件について詳しく解説します。

貧困等が理由で弁護人を選任することができない人のための制度

国選弁護人制度は、貧困等の理由によって自分自身で弁護人を選任することができない人に対し、国費で弁護人を選任する制度です。

刑事事件において、弁護人を付けられる権利はすべての人が有しています。また、推定無罪の原則という考え方があることから、すべての人が平等に弁護人を付けられる権利、守られる権利を有していなければいけません。

たとえ、自分自身で弁護人を付けることができない人であっても、「付けられる制度・権利」がある必要があります。

もし、国選弁護人がなければ、経済的な理由で自分を守ってくれるべき弁護人を付けることができません。弁護人がいなければ、刑事裁判を受けるうえでさまざまな不利益を受けることになり得ます。

「お金がない」ことによって、何らかの不利益を受けることがあってはいけません。すべての人が平等に公平な裁判を受けるための制度が国選弁護人制度であると考えれば良いでしょう。

国選弁護人を依頼できるタイミングは「起訴後」もしくは「勾留後」

国選弁護人を付けられるタイミングは、起訴後もしくは勾留後のいずれかです。

身柄拘束が行われている身柄事件の場合は、勾留請求が認められた時点で国選弁護人を選任することができます。身柄拘束が行われていない在宅事件の場合は、起訴されたのちに国選弁護人を選任できます。

弁護人を付けられるタイミングとしては、とても遅いのが現実です。私選弁護人であれば、自分のタイミングで選任することができ、勾留を回避したり起訴を回避したりするために弁護活動を行ってもらえます。

しかし、国選弁護人制度の場合は、勾留回避・不起訴処分へ向けた弁護活動を行ってもらえない点がデメリットです。そのため、国選弁護人制度は、最低限の権利のみ守られている制度であるということを覚えておきましょう。

国選弁護人を呼ぶための資力条件は「50万円以上の流動資産」

国選弁護人を呼べる人は、「経済的な事情によって私選弁護人を選任することができない人」です。つまり、私選弁護人を選任することが原則であり、国選弁護人は救済措置的制度であることを覚えておきましょう。

国選弁護人を選任できる資力の基準は「50万円以上の流動資産があるかどうか」です。流動資産とは、預貯金等のようにいつでも自由に使える資産を指します。

そのため、持ち家がある人、マイカーがある人であっても「50万円以上の流動資産」がなければ、国選弁護人を依頼できます。

国選弁護人の依頼方法

国選弁護人を依頼する方法は、被疑者なのか被告人なのかによって異なります。

被疑者とは、起訴される前の人です。つまり、勾留請求が認められた被疑者のことであり「被疑者国選」と呼ばれています。一方、起訴された者のことを被告人と呼び、被告人が選任する国選弁護人を「被告人国選」と言います。

被疑者国選と被告人国選は状況が異なるため、弁護人の依頼方法も異なるため注意しなければいけません。次に、国選弁護人の依頼方法についても詳しく解説します。

被疑者国選の場合

被疑者国選の場合は、身柄を拘束されているため以下の方法で選任を依頼します。

  • 警察官等に「国選弁護人を依頼したい」と伝える
  • 必要書類を記入
  • 裁判所による審査のうえ、国選弁護人が選任される

それぞれの手順について詳しく解説します。

【注意事項】
国選弁護人は被疑者本人からのみ依頼可能です。家族や友人等から呼ぶことはできません。ただし、私選弁護人や当番弁護人の場合は家族や友人から自由に呼ぶことができます。

1.警察官等に「国選弁護人を依頼したい」と伝える

勾留請求が認められた被疑者は、起訴されるまで引き続き警察署内にある留置場に収容されています。そのため、留置担当の警察官等に「国選弁護人を呼んでほしい」と意思表示するだけで良いです。

また、勾留請求は裁判所にて行われるため、検察官や裁判官から国選弁護人に関する説明を受けることがあります。この場合、検察官や裁判官に対して「国選弁護人を依頼したい」と意思表示しても良いです。

先ほども解説しましたが、国選弁護人は本人からしか呼ぶことはできません。家族等から呼ぶことはできないため、自分から意思表示をしましょう。

2.必要書類を記入

「国選弁護人を依頼したい」と意思表示をすると、国選弁護人選任に必要となる書類を渡されます。書類に必要事項を記入したうえで、警察官等に渡してください。

必要書類は以下の2点です。

  • 国選弁護人の選任請求書
  • 資力申告書

1枚目は、国選弁護人の選任を請求するための書類です。必要記入箇所は、漏れなく記入を行ってください。

2枚目は、被疑者自身の資力を申告する書類です。国選弁護人は、50万円以上の流動資産がある場合は、原則、利用できません。そのため、資力申告書に偽りなく記載しましょう。すべての記入が完了すると、警察官等は裁判所へ上記2枚の書類をFAX等で送付します。

3.裁判所による審査のうえ、国選弁護人が選任される

FAX等で届いた書類を裁判官が審査をします。とくに、資力申告書を調査したうえで国選弁護人の対象となるかどうかを確認し、認められれば裁判所から法テラスへ連絡が行く流れです。

裁判所から連絡を受けた法テラスは、国選弁護人名簿を裁判所へ提出し、裁判所が国選弁護人を選任するまでが一連の流れとなります。

これまでの3ステップを完了し、弁護人が被疑者に接見に来るまでの時間はおおむね24時間以内です。交流が認められている被疑者は20日以内に起訴・不起訴を判断する必要があるため、可能な限り迅速な弁護活動を行う必要があります。

被告人国選の場合

被告人国選の場合は、身柄拘束が行われていません。そのため、国選弁護人を付けられるのは起訴されたあとです。国選弁護人選任までの流れは、以下のとおりです。

  • 起訴状に添付されている用紙で選任希望を行う
  • 裁判所による審査のうえ、国選弁護人が選任される
【注意】
被告人国選は、「勾留されていたが処分保留で釈放され、その後に起訴された場合」も利用できます。被疑者国選は「勾留されていた期間中」しか利用できないため、その後に改めて国選弁護人を選任する必要があります。

1.起訴状に添付されているアンケート用紙で国選弁護人の選任希望を行う

被告人国選は、起訴された場合に利用できる国選弁護人制度です。起訴された人のことを「被告人」と呼ぶことから、被告人国選と呼ばれています。

被告人国選は、身柄拘束が行われていない人が対象であるため、自宅等に起訴状が送られてきます。起訴状の中には、「国選弁護人を依頼するかどうか」といった内容のことが記載されているアンケート用紙が同封されています。

同封用紙に必要事項を記入のうえ、裁判所へ提出すると国選弁護人が選任される流れです。書類提出から選任までの大まかな流れは、被疑者国選と同じです。

2.裁判所による審査のうえ、国選弁護人が選任される

被疑者国選同様、裁判所にて必要事項を審査したうえで国選弁護人が選任されます。とくに、資力等で問題がなければ国選弁護人は選任されるため安心してください。

なお、被告人国選は「起訴されたあと」に選任できる国選弁護人制度です。タイミングとしては、とても遅いため経済的な余裕がある人は、私選弁護人の相談を検討したほうが良いでしょう。

国選弁護人に依頼するメリット・デメリット

国選弁護人を依頼するメリットとデメリットについて詳しく解説します。

メリット1.費用負担が少ない

国選弁護人は、原則自己負担は発生しません。「原則」というのは、例外もあるということであり、「国選弁護人=絶対に費用が発生しない」というものではない点に注意してください。

国選弁護人制度は、経済的な事情から自分で弁護人を依頼できない人を助けるための制度です。そのため、基本的には自己負担は発生することなく利用できる制度であるという認識に相違はありません。

ただし、例外として裁判所が訴訟費用を被告人に支払わせる場合があります。なぜなら、有罪判決が下された被告人は、原則訴訟費用を負担しなければいけないためです。また、後から資力が十分にあることがわかったような場合は、国選弁護人の報酬や訴訟費用を負担させられてしまうことがあります。

なお、実務上は国選弁護人制度の性質上、裁判官が「被告人に訴訟費用を負担させない」という判断をすることが多いです。そのため、「国選弁護人は費用が発生しない」と考えておいても問題はありません。

メリット2.自分で弁護人を探す必要がない

国選弁護人の選ばれ方は、各都道府県の弁護士会によっても若干差はあるものの、基本的には「国選弁護を受けても良い」と考えている弁護士が名簿に登録されています。登録されている弁護人の中からランダムで国選弁護人が選任されるため、自分で弁護人を選ぶ必要がありません。

刑事事件で弁護人を依頼する場合、「どのように選べば良いかわからない」と考えている人も多いのではないでしょうか。その点、国選弁護人制度であれば、ランダムで決定してもらえるため、煩わしさがありません。

ただ、私選弁護人制度と比較して報酬が少ない国選弁護人名簿へ登録している弁護士は、さまざまな事情を抱えています。たとえば、経験が浅い弁護士が刑事事件に慣れるために登録している場合もあれば、刑事事件に熱心な弁護人が登録をしている場合もあります。どの弁護人に当たるかはわからないため注意してください。

デメリット1.タイミングが遅い

国選弁護人が付けられるタイミングは、「勾留確定後」もしくは「起訴後」のいずれかです。タイミングとしてはとても遅い点がデメリットです。

私選弁護人であれば、自分の好きなタイミングで弁護人へ依頼ができます。当然、勾留を回避したり起訴を回避したりするための弁護活動を行ってもらうことも可能です。しかし、国選弁護人の場合は勾留確定後もしくは起訴後のいずれかとなってしまうため、勾留の回避や不起訴を勝ち取るための弁護活動を行ってもらうことができません。

とくに、日本の刑事裁判においては一度起訴されてしまうと99.9%の確率で有罪判決が下されます。そのため、起訴されないための弁護活動が必要ですが、国選弁護人を待っていれば叶いません。

国選弁護人はメリットの多い制度ではあるものの、タイミングとしてはとても遅い点に注意が必要です。

デメリット2.原則、弁護人を解任したり変更したりできない

原則、弁護人を解任したり変更したりすることはできません。弁護人も人間であるため、相性や弁護方針等で合う・合わないがあることは当然です。また、国選弁護人はランダムに選ばれるため、お互いに自分たちで選ぶことができません。

私選弁護人の場合は、お互いに合わなければ弁護人を解任したり弁護人側から辞任したりすることができます。しかし、国選弁護人は相当な十条がない限りは、変更ができないため注意してください。

デメリット3.条件を満たしている必要がある

国選弁護人を利用するためには、条件を満たしている必要があります。一つは、「資力」です。原則、50万円以上の流動資産がある人は利用できません。

そして、被告人国選の場合は起訴されている人、被疑者国選の場合は勾留されていることが条件となります。これらの条件を満たしていない人は、国選弁護人制度を利用できないためデメリットです。

国選弁護人以外の選択肢

国選弁護人制度は何度もお伝えしているとおり、タイミングとしてはとても遅いです。早期に弁護活動を開始してもらうことによって、勾留を回避したり不起訴となったりする可能性もあります。

また、早期に相談をすることで今後の流れを把握できたり、取り調べを受ける際のアドバイスなどを知ることができます。

次に、国選弁護人以外の弁護人制度についても詳しく解説します。経済的な事情で弁護人を選任することが難しい人も利用できる制度です。ぜひご利用ください。

当番弁護人制度

当番弁護人制度は、「逮捕されたあとに一度だけ弁護人を呼ぶことができる制度」です。一度しか呼ぶことはできないものの、逮捕されて不安なときに今後の流れや取り調べのアドバイス等を受けられる点がメリットです。

また、当番弁護人制度は自分で費用を負担する必要もないため安心です。当番弁護人を希望する場合は、警察官等に「当番弁護人を呼んでください」と伝えれば良いです。ちなみに家族から呼ぶこともできます。

刑事被疑者弁護援助事業

刑事被疑者弁護援助事業は、逮捕から勾留もしくは起訴されるまでの間、弁護活動を行ってくれる弁護人の報酬を立て替える制度です。

国選弁護人を依頼できるのは勾留もしくは起訴されたあとです。そのため、国選弁護人が選任される以前に弁護人へ依頼する場合は、私選弁護人と一度しか呼ぶことのできない当番弁護人しかありません。

たとえば、不起訴処分を勝ち取るために弁護活動を行ってほしい、被害者と示談交渉を進めてほしいなどの事情がある場合は、刑事被疑者弁護援助事業の制度を利用します。勾留確定前・起訴前であっても自己負担なく弁護人を選任できます。

なお、刑事被疑者弁護援助事業は原則、弁護士費用を立て替える制度です。そのため、いずれは返済をしなければいけない点に注意してください。

国選弁護人に関するよくある質問

国選弁護人に関するよくある質問を紹介します。

Q.国選弁護人はやる気がないのは本当ですか?

A.弁護人は職責があるため、やる気がないということはあり得ません。

弁護人は弁護人としての責任があります。そのため、適当な弁護活動等を行うことはありません。

ただ、実情として国選弁護人制度は経済的に余裕がない被疑者や被告人を対象とした制度です。そのため、経済的な余裕がなくて示談交渉を進められない、保釈金を納められない、といった事情により弁護活動に制限がかかってしまう可能性はあるかもしれません。

これは、弁護人のやる気の問題ではなく、被疑者や被告人の経済的な事情であるため致し方のないことです。弁護人は弁護人として、できる限りの弁護活動を行うため「やる気がない」ということは絶対にありません。

Q.国選弁護人を呼べるのは誰ですか?

A.国選弁護人を依頼できるのは本人のみです。

国選弁護人を依頼できるのは、被疑者もしくは被告人となった本人のみです。たとえ家族であっても、国選弁護人を呼ぶことはできません。なお、私選弁護人や当番弁護人の場合は家族から呼ぶこともできます。

Q.私選弁護人から国選弁護人へ変更することは可能ですか?

A.可能ですが、条件を満たしている必要があります。

私選弁護人から国選弁護人へ変更をすることは可能ですが、初めに私選弁護人を選任している時点で、資力基準を満たしていない可能性が高いです。資力基準を満たしていない場合は、「私選弁護人として弁護活動を行ってくれる弁護人がいない」という前提が必要です。

一方で、国選弁護人から私選弁護人へ変更することは可能です。私選弁護人を選任した時点で国選弁護人は解任となります。

まとめ

今回は、国選弁護人の依頼方法について解説しました。

国選弁護人制度は、経済的な事情で弁護士費用を支払えない人を対象とした制度です。選任できるタイミングは、勾留確定後もしくは起訴後となる点に注意が必要です。

国選弁護人以外にも当番弁護人制度や刑事被疑者弁護援助事業といった制度があるため、これらの制度も検討されてみてはいかがでしょうか。経済的な事情がある人でも利用しやすい制度が整えられているため安心してください。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

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