刑事事件における私選弁護士の依頼方法とは?注意事項も詳しく解説

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私選弁護人へ依頼する方法は「〇〇弁護士を呼んで欲しい」と伝えるだけで良いです。家族等が呼ぶ場合は、直接弁護士事務所に相談をすると被疑者がいる警察署に駆け付けてくれます。

この記事では、私選弁護士の依頼方法や注意事項、メリットについて詳しく解説しています。犯罪の疑いをかけられている人、家族や友人等が逮捕されてしまった人など、私選弁護人への依頼を検討している人はぜひ参考にしてください。

目次

私選弁護士の依頼方法

私選弁護人は誰でもいつでも呼ぶことのできる弁護人制度です。私選弁護士は、その名の通り「自分で選んで呼べる弁護人」であるためです。他の弁護人制度は、費用が発生しないため逮捕後や起訴後・勾留後など、呼べるタイミングが決められています。

私選弁護人であれば、自分のタイミングで呼ぶことができるため、できる早めに呼んで最大限の恩恵を受けましょう。

まずは、私選弁護人へ依頼する方法について、詳しく解説します。

自分で呼ぶ場合は警察官等に「〇〇弁護士事務所の〇〇弁護士を呼んでほしい」と伝える

犯罪の疑いをかけられている本人(被疑者)が呼ぶ場合は、警察官等に「〇〇弁護士事務所の〇〇弁護士を呼んでください」と伝えれば呼んでもらえます。

被疑者本人が弁護人を呼ぶ場合は、上記のとおり弁護人を指名しなければいけない点に注意が必要です。

とくに逮捕されている被疑者の場合、スマートフォンなどを使用できないため、「刑事弁護に強い弁護人を探す」ということができません。そのため、自分の知っている弁護人を呼ぶことしかできない、というデメリットがあります。

もう一つ、逮捕されている被疑者が私選弁護人を見つける方法として、当番弁護人制度を利用して依頼する方法があります。

当番弁護人制度とは、逮捕後に無料で一度だけ弁護人を呼べる制度です。弁護人の指定はできませんが、刑事弁護に強い弁護人が接見に来ます。当番弁護人制度は「逮捕後に一度だけ」という制限があるものの、そのまま私選弁護人として依頼することができます。

また、私選弁護人はいつでも依頼することができるため、逮捕される可能性があるときは、事前に弁護人を探して依頼しておいても良いでしょう。

家族・友人が呼ぶ場合は直接弁護士事務所へ相談をする

私選弁護人は本人以外でも依頼することができます。本人以外の人が呼ぶ場合は、ネットを利用できるため、検索をして刑事弁護に強い弁護人を探し、依頼する流れとなります。

依頼方法は、弁護士事務所へ電話をかけたり直接行って「刑事弁護を依頼したい」と伝えれば良いです。その後、話を聞いたうえで契約を締結する流れとなります。

なお、被疑者が逮捕された場合、たとえ家族であっても直後は面会にいけません。もちろん、連絡を取ることもできないため、「本人も自ら私選弁護人を呼び、家族も別の弁護人を呼んでしまった」ということが起こり得ます。

この場合、同時に2人の私選弁護人がついている状態になってしまいます。刑事訴訟法では原則3人まで私選弁護人を付けることができるため、法律上は問題ありません。しかし、私選弁護人は費用が自己負担であるため2倍の費用が発生することになり得ます。

特別難しい事件を除いて、刑事事件で2人以上の弁護人が付くメリットはほとんどありません。そのため、万が一、誤って2人以上の弁護人が選任されてしまった場合は、どちらかの解任を検討したほうが良いでしょう。

【本人が呼ぶ場合】私選弁護士に依頼するまでの流れ

本人が私選弁護人を依頼するまでの流れは、以下のとおりです。

  • 警察官等に私選弁護人を依頼する
  • 弁護人が接見に来る
  • その後の依頼は直接委任契約を交わす

次に、本人が私選弁護人を呼ぶ際の流れについて、詳しく解説します。

1:警察官等に私選弁護人の依頼をする

本人が私選弁護人を呼ぶ場合、自分で弁護人を呼ぶことはできません。なぜなら、取り調べを受けている際はスマートフォン等の利用は禁止されているためです。また、逮捕された場合は、スマートフォンも預けなければいけないため「自分で依頼する」ということができません。

そのため、基本的には警察官等に依頼をして私選弁護人を呼ぶ流れになります。

ただし、在宅事件の場合は身柄拘束が行われないため、自分で弁護人を探して依頼できます。ただ、弁護人へ依頼するタイミングは少し遅れてしまうため、その点は注意が必要です。

2:接見に来る

警察官等に依頼した弁護人は、早い段階で被疑者が取り調べを受けている警察署へ接見に来てくれます。

逮捕されている場合、逮捕直後は家族であっても面会はできません。しかし、弁護人の場合は面会(接見と言います)が許されています。そのため、まずは依頼した弁護人と接見をして今後のことについて話し合いをする流れです。

3:その後の依頼を継続する場合は弁護士に直接依頼する

接見に来た弁護士に依頼をする場合は、その場で委任契約を締結し、弁護活動を開始してもらいます。弁護活動では、今後の取り調べに向けたアドバイスを受けたり被害者がいる場合は示談交渉を進めたりします。

本人が私選弁護人を呼ぶ場合の注意事項

被疑者本人が私選弁護人を呼ぶ場合は、以下のことに注意してください。

  • 本人はスマートフォン等を利用できない
  • 元々知っている弁護士もしくは逮捕前に依頼済みの弁護士を呼び必要がある
  • 当番弁人制度を利用して私選弁護人を選任する方法もある

次に、被疑者本人が私選弁護人を呼ぶ場合の注意事項について詳しく解説します。

本人はスマートフォーン等を利用できないため弁護士を調べられない

捜査の対象となっている人は、基本的にスマートフォン等を利用できません。そのため、「自分で弁護士を探して依頼する」という行為ができないため要注意です。

とくに逮捕されている被疑者は、留置所に入るタイミングで携帯電話等の通信機器が押収されます。

また、警察官等に「刑事弁護に強い弁護人を調べて呼んでほしい」と伝えても、探してもらうことはできません。なぜなら、弁護人も人間であり、被疑者との相性があるためです。

警察官が「この弁護士が良い」と思って呼んでも、実際に被疑者の想定している弁護士ではないことが多々あります。警察官は責任を取れないため、具体的な指示を出されなければ弁護人を探して呼ぶことはできません。

元々知っている弁護士もしくは逮捕前に依頼済みの弁護士である必要がある

逮捕されて勾留されている被疑者が私選弁護人を呼ぶ場合は、具体的に弁護人の指示をしなければいけません。たとえば「〇〇弁護士事務所の〇〇弁護士を呼んでほしい」と伝えなければいけません。

また、「〇〇弁護士会に所属する〇〇弁護士」という伝え方でも良いです。弁護士を特定できる言い方であれば良いです。

ただ、、逮捕されている被疑者の場合はスマートフォンを利用できないため、元々知っている弁護士でなければ依頼できません。そのため、逮捕される恐れがある場合は早めに弁護士を探しておいたほうが良いです。

可能であれば、逮捕される前に依頼をしておくとスムーズに弁護活動を開始できます。

知っている弁護士がいない場合は当番弁護士経由で依頼する方法もある

知っている弁護士がいない場合は、当番弁護士経由で依頼する方法もあります。

当番弁護人制度とは、逮捕された被疑者が一度だけ無料で弁護人を呼べる制度です。警察官等に「当番弁護人を呼んでください」と伝えると呼んでもらえます。当番弁護人が来て接見している際、「このまま私選弁護人として依頼をしたい」と伝えれば私選弁護人を付けることができます。

当番弁護人は自由に選べないため、誰が来るかはわかりません。しかし、早期に私選弁護人をつけたいと考えている人は、一つの手段として検討してみると良いでしょう。

【家族等が呼ぶ場合】私選弁護士に依頼するまでの流れ

家族等が私選弁護人を呼ぶ場合の流れは、以下のとおりです。

  1. 弁護士を探す
  2. 弁護士事務所へ電話等で相談をする
  3. 依頼方法の検討・料金の説明
  4. 委任契約締結

それぞれの流れについて詳しく解説します。

1:弁護士を探す

初めに刑事弁護に強い弁護士を探しましょう。インターネット等で検索をすると、刑事弁護の実績が豊富な弁護士がヒットするため、事務所の場所や対応可能時間などを考慮して依頼する弁護士を決定します。

なお、弁護士資格を有している人であれば、誰でも刑事弁護は可能です。しかし、日本国内にある法律は1,000種類を超えているため、「弁護士=刑事弁護に対応している」というわけではありません。

たとえば、刑事弁護に強い弁護士がいる一方で、借金問題に強い弁護士や民事問題に力を入れている弁護士などさまざまです。そのため、刑事事件における私選弁護人を選任する場合は、必ず「刑事弁護に対応していて、実績が豊富な弁護士」に依頼しましょう。

2:弁護士事務所へ電話等で相談をする

インターネット検索等で発見した弁護士事務所へ直接電話をかけ、刑事弁護の依頼である旨を伝えましょう。

刑事弁護はできるだけ早めに行動し、早期の弁護活動を行うことがとても大切です。そのため、初めに電話にて相談をしたほうが良いです。

メールやLINEを利用して相談できる弁護士事務所もありますが、問い合わせが来ていることに気付かず、初動が遅れてしまう可能性もあります。そのため、問い合わせ用電話から直接相談すると良いです。

3:依頼方法の検討・料金の説明

弁護士や事務員と電話でやり取りを行ったあと、事件の内容や希望などを聞き取りします。そのうえで料金の説明が行われます。料金を聞き、納得をしたうえで委任契約の締結となります。

ちなみに、弁護士への報酬は大きく分けて着手金と成功報酬金に分けられています。着手金とは、弁護士が弁護活動を開始するにあたって必ず発生する費用です。相場は、依頼する弁護士によって異なりますが、税込11万円程度に設定している事務所が多いです。

成功報酬とは、その事件について成功した場合にのみ発生する費用です。たとえば、勾留されずに済んだ、不起訴処分となった、大幅に減刑されたといった場合に発生する費用です。成功報酬も弁護士によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

その他費用として、実際に発生した費用を別途請求される場合があります。たとえば、事件内容を調べるために遠方へ行く必要がある場合は、日当+交通費が発生します。

4:委任契約

弁護士の弁護内容に納得できた場合は、委任契約を締結します。委任契約の締結が完了した時点で私選弁護人としての弁護活動を開始します。

まずは、被疑者のところへ接見に行き、早速話をするところから始まり、事件内容に合わせて適切な弁護活動を行っていく流れです。

刑事事件において私選弁護人へ依頼するメリット

刑事事件における弁護人制度は、私選弁護人のほか国選弁護人という選択肢もあります。国選弁護人であれば、無料で弁護人をつけられるため経済的負担は軽いです。

しかし、私選弁護人へ依頼することによって得られるメリットがあります。次に、私選弁護人を依頼するメリットについて詳しく解説します。

すぐに弁護士が駆けつけてくれる

私選弁護人の場合、依頼した時点ですぐに駆けつけてくれます。刑事事件では早めの弁護活動がその後の処分等に大きな影響を与えます。そのため、依頼後すぐに駆けつけてくれる私選弁護人は大きなメリットです。

国選弁護人の場合は、被疑者が勾留された時点もしくは起訴された時点でしか選任されません。タイミングとしてはとても遅く、とくに「勾留を回避したい」と考えている被疑者からすると国選弁護人を待っている余裕はありません。

早期に弁護活動を開始できる

私選弁護人へ相談をすることで、早期に弁護活動を開始できます。国選弁護人の場合は勾留確定後もしくは起訴後となるため、タイミングとしてはとても遅いです。

たとえば、逮捕直後に私選弁護人を選任し、被害者と示談交渉を進めてくれていたとしましょう。早期に弁護活動を開始しているため、早期に示談交渉が成立し、結果的に不起訴処分等となる可能性が高まります。

日本の刑事事件において、起訴された場合は99.9%の確率で有罪判決が下されると言われています。そのため、前科をつけないためには、とにかく早めに弁護活動を行い、起訴を回避することがとても大切です。

国選弁護人の場合はタイミングとしてとても遅いため、私選弁護人への依頼を検討するべきです。

処分や判決に大きな影響を与える

私選弁護人は何度もお伝えしているとおり、早期に弁護活動を開始できます。これは最大のメリットであり、今後の処分や判決に多大な影響を与えます。

たとえば、早期に弁護活動を開始することによって勾留を回避できるかもしれません。また、起訴を回避できる可能性も高まるでしょう。

長期間の身柄拘束は社会復帰にも多大な影響を与えます。会社を解雇されたり学校を退学になったりしてしまうこともあります。そのため、私選弁護人へ依頼をして早期に弁護活動を行ってもらい、勾留回避・起訴回避を行うための適切な弁護を行ってもらいましょう。

私選弁護人の依頼方法に関するよくある質問

私選弁護人に関するよくある質問を紹介します。

Q.土日や夜間でも相談はできますか?

A.土日や夜間でも相談をできる弁護士事務所はあります。

刑事事件においては24時間365日休みなく逮捕されたり取り調べを受けたりする可能性があります。そのため、刑事弁護を行っている弁護士事務所では、緊急ダイヤルを設けているところがあります。

夜間や休日でもつながる電話窓口を設置し、いつでも対応できるように準備しているため安心してください。また、刑事事件においては早期の弁護活動が重要であるため、遠慮することなく電話をしてください。

Q.彼女・彼氏という立場でも依頼はできますか?

A.私選弁護人であれば、彼氏・彼女、友人等であっても依頼可能です。

私選弁護人や当番弁護人は本人以外であっても誰でも呼べます。婚姻関係にない彼氏や彼女といった関係性であっても問題ありません。

ただし、国選弁護人に限っては本人しか呼べません。彼氏・彼女はもちろんのこと、家族であっても呼べないため覚えておいてください。

Q.私選弁護人の依頼費用はどのくらいですか?

A.依頼する弁護人、事件の内容によって大きく変動するため一概には言えません。

弁護士へ支払う費用は弁護士と依頼人の間で自由に決定して良いことになっています。そのため、「刑事弁護の費用は〇〇万円」のように言うことはできません。

また、刑事弁護の場合、事件の内容や難易度によって費用は大きく異なります。さらに、有名な弁護士や実績が豊富な弁護士になればなるほど費用は高額になります。

おおよその目安としては、着手金で10万円〜50万円、成功報酬で50万円〜100万円程度は最低でもかかると考えておいたほうが良いです。なお、委任契約を締結する前に必ず弁護士から料金の説明があります。納得したうえで契約を締結しましょう。

Q.弁護士費用を払える余裕がありません。何か立て替え制度等はありますか?

A.弁護士事務所で分割払いに対応している場合があります。また、刑事被疑者弁護救助制度という制度を利用できます。

刑事事件における弁護士費用は高額であるため、弁護士事務所で分割払いに対応しているところがあります。そのため、費用が払えない場合は、事前に弁護士事務所へ分割払いの対応可否について確認してください。

また、刑事被疑者弁護救助制度を利用すれば私選弁護人の費用を日本弁護士連合会(日弁連)が立て替えてくれます。

刑事被疑者弁護救助制度を利用するためには、資産要件があるものの、「弁護士費用を払える余裕がない」と悩まれている人であれば利用できる可能性が高いです。当番弁護人として来た弁護士に相談をしてください。

まとめ

今回は私選弁護人の依頼方法について解説しました。

私選弁護人は警察官等に対して「〇〇法律事務所の〇〇弁護士を呼んで欲しい」と伝えれば警察官が呼んでくれます。家族や友人、彼氏・彼女といった立場の人でも依頼ができます。

また、刑事事件においては私選弁護人が原則です。経済的な理由で私選弁護人をつけることが難しい場合を除いて、基本的には私選弁護人を選任しなければいけません。

もし、費用面で不安がある場合は、弁護士事務所の分割払いや刑事被疑者弁護救助制度の利用を検討されてみてはいかがでしょうか。

私選弁護人は、早期に弁護活動を開始できるため、今後の処分等にも大きな影響を与えます。できるだけ早めに依頼をして弁護活動を開始してもらうようにしましょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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