恫喝は犯罪になる?成立する犯罪や逮捕された場合のリスク・対処法を解説

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恫喝とは「脅かすこと」「恐れさせること」といった意味合いの言葉です。決して許される行為ではありませんが、犯罪として成立するものではありません。

この記事では、恫喝行為の概要や恫喝が犯罪となるケースについて詳しく解説しています。普段、大きな声をあげたり怒鳴ったりしてしまっている人、逆に恫喝を受けた人は本記事を参考にしてください。

目次

恫喝行為は犯罪になる?

恫喝行為は犯罪になる恐れがあるため注意しなければいけません。しかし、「恫喝罪」という犯罪があるわけではありません。恫喝とは、一般的には「脅すこと」や「恐れさせること」という意味で使用されます。

恫喝を行う行為自体に罪状がつくケースがあるため注意しなければいけません。まずは、恫喝とはどういった行為を指すのか?について詳しく解説します。

恫喝とは

恫喝とは一般的には「人を脅して恐れさせること」という意味で利用される言葉です。たとえば、怒鳴ったり大きな声をあげたりすることを指します。

多くの人は、他人から怒鳴られたり大きな声を挙げられたりすると、恐怖心を感じ、萎縮してしまうでしょう。このように、相手に対して「脅して恐れさせること」を恫喝と言います。

恫喝行為を行う人は、「自分の意見を主張したい」「相手に何かをさせたい」などの理由や事情があります。たとえば、職場の上司が「〇〇をしろ!」と大きな声をあげた場合は、いわゆる恫喝であると言えるでしょう。

また、必ずしも「恫喝=大きな声・怒鳴り声を上げること」とは限りません。言葉の定義としては「人を脅して恐れさせること」であるため、たとえば反社会勢力を名乗った上で静かな口調で「〇〇をしろ」という行為も恫喝に含まれます。

なぜなら、一般的な認識として「反社会勢力=恐れられている組織」と判断できるためです。もし、反社会勢力に属している人がたとえ普通の言葉であっても、「〇〇をしろ」と支持されれば、人は萎縮し、恐怖心を感じて指示に従ってしまうでしょう。

このように、恫喝とはいろいろな意味で「人を脅して恐れさせること」を意味します。もし、反社会勢力ではなくても、人によっては「自分よりもガタイの良い人に命令された」という事実で恫喝に感じてしまうことがあるかもしれません。

「恫喝罪」という罪状はない

恫喝は「人を脅して恐れさせる行為」ですが、「恫喝罪」という犯罪はありません。そのため、恫喝を行ったからといって直ちに処罰されることはないでしょう。

とはいえ、恫喝の行為が犯罪になる恐れもあるため注意しなければいけません。たとえば、「〇〇しろ!」と大きな声で怒鳴った場合、相手に何らかの行為を強要していることになるため「強要罪」という犯罪が成立する可能性があります。

他にも、恫喝をしたうえで人に金銭を要求した場合は「恐喝罪」あるいは「恐喝未遂罪」といった犯罪が成立するため注意しなければいけません。

ただ、被害者となる人が「恫喝をされた」というだけで罪に問うことはできません。たとえば、「電車内で強面の男性に席を譲るよう促された」というケースで、言われた本人は恐怖心を感じ、「恫喝された」と感じてしまうこともあるでしょう。

しかし、相手男性側は「ただ席に座りたかった」あるいは「他の人に席を譲ってあげて欲しかった」という事情があるだけかもしれません。この場合は、男性を直ちに処罰することはできません。なぜなら、男性の発言や行動は罪に問うことができないためです。

被害者が「脅された」や「恐怖心を感じた」と思っても、相手側にその意思がなければ犯罪は成立しません。また、そもそも「恫喝罪」という罪状がない以上、罪を問うことは不可能です。

恫喝行為が犯罪になるケース

恫喝行為は「恫喝罪」という犯罪がないため、その他の罪状によって処罰されます。具体的には、以下のような犯罪が成立し得るでしょう。

  • 発する言葉で「脅迫罪」
  • 金銭を要求すると「恐喝罪」
  • 行為を強要すると「強要罪」
  • 恫喝行為が「威力業務妨害」
  • 場合によっては「強盗罪」

恫喝罪という罪状はないものの、その他の犯罪によって処罰される恐れはあります。次に、恫喝罪で成立し得る犯罪について詳しく解説します。

言葉によっては「脅迫罪」が成立する

恫喝にて発する言葉次第では「脅迫罪」という犯罪が成立する可能性があります。恫喝とは、「人を脅して恐れさせること」です。人を脅す言葉はさまざまですが、以下のような言葉を発した場合は脅迫罪が成立し得ます。

  • お前を(お前の家族を)殺してやる
  • お前を(お前の家族を)殴ってやる
  • お前(お前の家族)の家を燃やしてやる
  • お前を(お前の家族を)監禁するぞ
  • お前を(お前の家族を)攫うぞ
    等々

一語一句合っていなくても、以下の3要件を満たしている場合は脅迫罪が成立します。

  • 被害者及び被害者親族に対する発言であること
  • 生命・身体・自由・名誉・財産に対して
  • 害を加える旨を告知すること

上記の要件を満たしていた場合は、言葉はどうであれ脅迫罪が成立します。たとえば、職場上の上司が部下に対して「お前は本当に仕事ができないな!次同じ失敗したら殴るぞ!」と恫喝をした場合は、脅迫罪が成立します。

脅迫罪の法定刑は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金です。実際に危害を加えなかったとしても、発言した時点で脅迫罪は成立します。

また、発言をした者が実際にその意思がなかったとしても、脅迫罪が成立するため注意しなければいけません。ついカッとなって「〇〇するぞ!」といってしまうことがあるかもしれませんが、これは恫喝ではなく脅迫罪という立派な犯罪であることを覚えておきましょう。

金銭を要求すると「恐喝罪」が成立する

金銭を要求した場合はただの「恫喝」ではなく「恐喝罪」という犯罪が成立します。たとえば、以下のような事例が該当します。

  • 「〇〇されたくなければ金を払え!」
  • 「本当に悪いと思っているならお金を払え」
    等々

恐喝罪は相手に対して「暴力もしくは脅迫を用いて、金銭を要求した場合」に成立する犯罪です。

恫喝は「人を脅して恐れさせること」を指しますが、その延長線上で金銭を要求すると恐喝罪が成立します。たとえば、失敗した人に対して「悪いと思っているなら金を払え!」と言い、実際に金銭を支払わせた場合に恐喝罪によって処罰されるでしょう。

また、恐喝罪は未遂罪であっても成立します。そのため、仮に恫喝・恐喝を受けた相手が金銭を支払わなかった場合であっても、恐喝未遂罪として処罰されてしまうのです。

恐喝罪は「10年以下の懲役」であり、未遂罪の場合も同じく「10年以下の懲役」です。懲役刑しか定められていない重罪であり、執行猶予がつかなければ即時刑務所へ収容されてしまう犯罪であるため注意しなければいけません。

【執行猶予とは】
執行猶予付き判決とは、直ちに刑の執行をせずに猶予期間を与える判決を指します。執行猶予がついた場合は、一度社会へ戻って生活を行い、何事もなく執行猶予期間を満了すると判決された刑期は受けずに済みます。

恫喝をする人の多くは「自分は正しい」「間違っていない」と思い、相手に自分の思いを伝えるために怒鳴り、大きい声をあげて相手を脅かします。その延長線上で金銭を要求し、支払いを求めるケースがあります。

恫喝をする人に悪気はないかもしれませんが、「人を脅して金銭を要求した」という時点で恐喝未遂罪・恐喝罪が成立するため要注意です。

何らかの行為を強要した場合は「強要罪」が成立する

相手に何らかの行為を強要した場合は、強要罪が成立します。強要罪の成立要件は「生命・身体・自由・名誉・財産に対して害を加えると告知」と「義務のないことを行わせること」です。

たとえば「悪いと思っているなら土下座をしろ!さもないと殴るぞ!」などと言い、実際に相手に土下座を行わせた場合に強要罪が成立します。

「悪いことをしたら土下座をして誠意を見せる」という方法もありますが、この行為を強要することは許されません。たとえ、相手が悪かったとしても義務のない行為を強要してしまえば恫喝ではなく、強要罪によって処罰されるため注意しましょう。

ちなみに、強要罪の法定刑は「3年以下の懲役」です。罰金刑の定めがないため、実刑判決が下されれば刑務所へ収容されてしまうことになり、自分自身も多大な影響を受けることになります。

ついカッとなって恫喝をしてしまう人がいるかもしれませんが、一度冷静になり、人に義務のないことを強要するようなことは絶対にやめましょう。

恫喝が「威力業務妨害」に該当する可能性がある

威力業務妨害罪とは、威力を用いて人の業務を妨害した場合に成立する犯罪です。たとえば、恫喝をして人の業務を妨害した場合にこの犯罪が成立します。

具体例をあげると、不手際があった店員に対して恫喝をし、その店員の業務を妨害した場合に威力業務妨害罪が成立します。また、公務員を対象に恫喝を行い、その業務を妨害させた場合は「公務執行妨害罪」という犯罪に抵触するため注意しなければいけません。

威力業務妨害罪の法定刑は「3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金」です。公務執行妨害罪の場合は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」となります。

【懲役・禁錮とは】
懲役刑・禁錮刑はいずれも刑務所に収容される刑罰です。しかし、懲役刑は刑務作業が義務付けられているのに対し、禁錮刑は刑務作業が義務付けられていません。

自分は「恫喝をしただけ」と思っていても、結果的に人の業務を妨害していた場合は、公務執行妨害罪や威力業務妨害罪が成立してしまうため注意してください。

要求次第では「強盗罪」が成立する可能性がある

強盗罪と聞くと、多くの人は「銀行強盗」「コンビニ強盗」などをイメージされるのではないでしょうか。銀行強盗やコンビニ強盗と聞くと、拳銃や刃物を手に取り、行員・店員を脅して金銭を搾取する行為と思われるでしょう。

しかし、そういった物を用いなくても、恫喝を用いて人から金銭等を搾取した場合は、強盗罪が成立する可能性もあるため注意しなければいけません。

たとえば、飲食店で食事をしたあとに店員を恫喝してその場から逃げ去ったようなケースです。この場合は、強盗罪が成立する恐れがあります。上記ケースの場合は、悪意があって行っている行為であるため、当然厳しく処罰されるでしょう。

強盗罪の法定刑は「5年以上の有期懲役」となるため、恫喝を用いて強盗を行った場合は、ほぼ確実に刑務所へ収容されることになるため注意してください。

恫喝のよくある事例

恫喝に関するよくある事例として以下が挙げられます。

  • 過度なクレーマー
  • 過度な要求
  • 「殺す」「殴る」などの発言
  • 上司から部下に対する発言

次に、恫喝に関するよくある事例と成立する犯罪について詳しく解説します。

過度なクレーマー

クレームをいうこと自体は恫喝でもなければ、何らかの犯罪に抵触する可能性は低いです。しかし、過度なクレームは威力業務妨害罪もしくは公務執行妨害罪になる可能性が高いため注意しなければいけません。

そもそもクレームとは「苦情」あるいは「改善要求」のことを言います。苦情や改善要求を伝えることはサービス向上のためにも必要なことであり、受け入れている会社が大半でしょう。

しかし、大きい声で怒鳴るなど恫喝をしてその業務を妨害してしまった場合は、たとえ行っていることに正当性があったとしても犯罪になり得ます。

たとえば「不良品だったから交換して欲しい」と伝えるのは問題ありません。しかし、業者側が「今すぐは難しい」と伝えているにも関わらず、何度も「今すぐだ!」「今すぐ交換しに来い!」と無理な要求をした場合に犯罪が成立し得ます。

なぜなら、電話を受けている人の業務を妨害していることになるため、正当性に欠ける恐れがあるためです。無理なものは無理であり、クレームをいう側もどこかで落とし所を見つけなければいけません。

もちろん、業者側も誠意を見せる必要はありますが、恫喝をして相手の業務を妨害するのは絶対にすべきではありません。

過度な要求(強要)

過度な要求は刑法の定めによる「強要罪」が成立する可能性があるため注意しましょう。たとえば、いわゆるクレーマーが「本当に悪いと思っているなら土下座をしろ!」と伝える行為は、強要罪になり得ます。

自分の主張を伝えることは問題ありませんが、恫喝をして相手に義務のないことを行わせると強要罪という犯罪が成立するため注意しましょう。

苦情を言う際につい、熱くなり「〇〇をしろ!」と言ってしまうことがあるかもしれません。しかし、その発言が犯罪になることを頭に入れておき、冷静な判断を心がけるようにしてください。

「殺す」「殴る」などの言葉を発する

ついカッとなったときに「殺すぞ」「殴るぞ」などの言葉を発してしまうことがあるかもしれません。これもいわゆる恫喝に該当します。また「脅迫罪」という犯罪が成立します。

発言をした者が実際に殺すつもりや殴るつもりがなかったとしても、その発言によって言われた側が恐怖心を感じた場合は脅迫罪が成立してしまいます。そのため、くれぐれも発言には気をつけましょう。

上司から部下に対する発言(パワハラ)

上司から部下に対して恫喝を行うことは、現代ではいわゆる「パワハラ」と呼ばれる行為です。恫喝自体に違法性はないものの、パワハラはパワハラ防止法という法律に抵触する可能性があります。

パワハラ防止法には罰則規定がないため、行ったとしても直ちに罰則を受けることはありません。しかし、行政から助言や指導、勧告を受けることになり、自分自身の立場も危うくなるでしょう。

ちなみに、職場内における恫喝(パワハラ)と認められる行為は、主に以下のとおりです。

  • 大きな声を出す
  • 怒鳴る
  • 厳しい叱責を何度も繰り返す
    等々

また、パワハラ行為(恫喝)が犯罪になる恐れもあるため注意しましょう。たとえば、殴る蹴るの暴行を加えた場合は暴行罪や傷害罪が成立します。「殺す」「殴る」などの発言は、脅迫罪が成立するため注意しましょう。

恫喝で逮捕された場合の流れ

恫喝行為は何らかの犯罪に抵触する可能性があります。もし、犯罪として成立した場合は、逮捕の可能性があるため注意しなければいけません。次に、恫喝で逮捕されてしまった場合の流れについて詳しく解説します。

逮捕

恫喝自体に違法性はありません。そのため、ただ恫喝をしたからといって、直ちに逮捕されたり処罰されたりする心配はないでしょう。しかし、恫喝行為が何らかの犯罪となった場合、逮捕されてしまう可能性があるため注意しなければいけません。

先ほども解説したとおり、恫喝によって成立し得る犯罪は以下のとおりです。

  • 脅迫罪
  • 恐喝罪
  • 強要罪
  • 威力業務妨害
  • 強盗罪

そもそも逮捕とは、「罪を犯したと疑われる人の身柄を拘束する手続き」を指します。罪を犯したからといってすべての人が逮捕されるわけではありません。たとえば、重大な罪を犯した人や逃亡もしくは証拠隠滅の恐れがある人は逮捕をして捜査を行います。

上記例で言うと単純な脅迫罪であれば、比較的軽微な犯罪です。一方で、強盗罪や恐喝罪等は重大な犯罪に分類されます。そのため、恫喝をした場合であって何らかの罪に抵触し、逃亡もしくは証拠隠滅の可能性がある場合に逮捕をして被疑者の身柄を拘束されることになるでしょう。

また、逮捕をせずに捜査を行うことを「在宅捜査」と呼びます。在宅捜査の場合は、警察官や検察官等から呼び出しがあった場合に出頭し、捜査に応じます。

逮捕をされていないだけであって、その後の手続きに大きな違いはありません。また、在宅捜査であっても呼び出しに応じない、証拠隠滅もしくは逃亡の恐れがあると判断された場合は、逮捕される可能性もあるため注意しなければいけません。

逮捕された場合は、逮捕から48時間以内に検察官へ事件を送致しなければいけません。これを「身柄付送致」と言います。一方で、逮捕をせずに検察へ事件を送致することを「書類送検」と呼びます。

書類送検の場合は期間に定めはなく、通常は事件発生から2カ月程度で送検されることが多いです。

また、日本ではすべての事件について送検しなければいけない「全件送致主義」があります。たとえ軽微な犯罪であっても、必ず検察官へ送検しなければいけないと言うものです。

しかし、ただの恫喝(脅迫罪・威力業務妨害罪)など比較的軽微な犯罪の場合は、事件を送致せずに「微罪処分」という形で事件を終了させる場合があります。

微罪処分は、警察官の裁量で決定することができ、比較的軽微な犯罪で本人が反省しているなど、さまざまな事情を考慮して決定されます。微罪処分となった場合は、その時点で事件は終了するため、その後の流れは発生しません。

微罪処分となった場合は、原則その場で事件は終了します。ただし、何か不明な点等があった場合は、警察から連絡が入る場合もあります。この場合は、真摯に対応したほうが良いでしょう。

勾留請求

身柄付送致された場合は、事件が送致されてからさらに24時間以内に被疑者の身柄を引き続き勾留するかどうかを決定しなければいけません。検察官が勾留請求が必要であると判断した場合は、裁判所へ勾留請求を行います。

勾留請求が行われた場合は、被疑者を裁判所へ連れて行って裁判官から勾留質問が行われます。勾留質問では、事件の内容や被疑者についてのことなどを簡単に問われ、最終的に裁判官が勾留の有無を判断する流れとなります。

裁判官が「勾留の必要がある」と判断した場合は、初めに10日間の勾留が認められます。さらに、勾留延長が行われるケースが多く、認められるケースも多いです。そのため、勾留期間は一般的に20日間になることが多いと思っておきましょう。

逮捕から勾留まで合計23日間の身柄拘束が発生します。この間は社会へ戻ることができず、学校へ行けないもしくは会社へ行けないといったことによる弊害が発生し得るでしょう。

起訴・不起訴の判断

勾留されている事件(身柄事件)の場合は、勾留期間中に事件を起訴するか不起訴とするかを判断しなければいけません。起訴された場合は、刑事裁判を受けて判決が下される流れになります。不起訴となった場合は事件は終了し、今後同じ罪で裁かれることはありません。

また、起訴された場合は留置所から拘置所へ移送され、呼び名は「被疑者」から「被告人」へ変わります。また、起訴された場合は保釈請求が可能となります。

保釈請求とは起訴された身ではあるものの、保釈金を支払って一時的に社会へ戻ることを許してもらうための請求です。保釈請求は裁判所に対して行う手続きであり、請求が認められると保釈金を支払って一時的に社会へ戻れます。

保釈請求が認められた場合は、一時的に社会へ戻ることができます。ただ、このときさまざまな条件が付けられます。条件を守らなければ、保釈金が没収されてしまうため要注意です。

なお、すべての事件で保釈が認められるわけではありません。恫喝であっても重大な事件である場合や逃亡・証拠隠滅の恐れがある場合などは、保釈請求が認められず拘置所の中で刑事裁判を待つことになります。

刑事裁判を受ける

起訴された場合は、99.9%の確率で有罪判決が下されます。とくに、恫喝を行った事実がある以上は、高確率で有罪判決が下されることになるでしょう。

有罪判決が下される場合は、被告人に対してどの程度の刑罰を与えるのが妥当であるかを審理し、最終的に判決という形で言い渡されます。

判決に従って刑に服する

判決が下された場合は、その判決に従って刑に服することになります。たとえば「罰金50万円」という判決が下された場合は、有罪判決を受けた者は50万円を納付しなければいけません。「懲役3年」という判決が下された場合は、3年間刑務所内で過ごさなければいけません。

「恫喝」といっても成立する犯罪の種類はさまざまです。その犯罪によって、法定刑は異なります。罰金刑の定めがある犯罪、懲役刑しかない犯罪などさまざまです。

恫喝で逮捕された場合に起こり得るリスク

恫喝は何らかの犯罪に抵触する可能性があります。もし、恫喝行為で逮捕されてしまった場合、以下のようなリスクがあるため注意したほうが良いでしょう。

  • 実刑判決が下される可能性がある
  • 解雇・退学処分となる可能性がある
  • 長期間の身柄拘束の可能性がある
  • 前科がつくことによる影響の可能性がある

次に、恫喝で逮捕されてしまったことによる影響について詳しく解説します。

実刑判決の可能性

恫喝はさまざまな犯罪に抵触する可能性があります。万が一、罪に問われた場合は、何らかの処罰を受ける恐れがあるため要注意です。とくに注意しなければいけないのは「実刑判決」が下される可能性です。実刑判決とは、「直ちに刑罰の執行をすること」を指します。

たとえば、「罰金50万円」や「懲役3年」のような判決が下された場合は実刑判決となります。直ちに刑罰が執行されるため、罰金を支払わなければいけない、直ちに刑務所へ収容される、といったことになり得ます。

一方で、すべての判決が実刑判決となるわけではありません。一般的に「執行猶予付き判決」と呼ばれる判決です。この判決が下された場合は、直ちに刑罰の執行が行われません。

たとえば「懲役3年執行猶予2年」という判決が下された場合、実刑判決とは異なり直ちに刑罰の執行が行われず、2年間猶予期間が与えられます。執行猶予期間中に罰金刑以上の刑罰が確定することなく終了した場合、「懲役3年」という刑罰は執行されません。

このように「執行猶予付き判決」は罪を犯した人にとって大きなメリットがあります。

ただ、執行猶予付き判決は「3年以下の懲役または禁錮もしくは50万円以下の罰金」にしか付けられません。そのため、恫喝によって問われる罪によっては、執行猶予が付けられず、実刑判決となる可能性があるため注意しましょう。

解雇・退学処分となる可能性

逮捕されたり有罪判決が下されたりすることにより、会社を解雇されたり学校を退学になったりする可能性があるため注意しなければいけません。とくに、社内規則で「有罪判決が下された場合は懲戒解雇」などと記載されている場合は要注意です。

恫喝行為が直ちに犯罪となるわけではありませんが、何らかの犯罪に抵触し、有罪判決が下された場合は要注意です。

また、有罪判決が下されないまでも逮捕されたり、取り調べを受けたりすることによるイメージダウンにつながる場合は何らかの処分が下される恐れがあります。恫喝行為は、社会的な影響も大きいため十分に注意しましょう。

長期間の身柄拘束の可能性

恫喝行為を行って逮捕された場合、長期間の身柄拘束の可能性があるため注意しましょう。まず、逮捕されて勾留請求が認められた場合は、最長23日間の身柄拘束が発生します。この期間は、当然社会へ戻ることができず、さまざまな社会的影響を受けることになるでしょう。

また、万が一懲役刑等の判決が下された場合は、さらに長期間の身柄拘束が行われます。会社へ行けない、学校へ行けないといったことによる影響は計り知れません。「たかが恫喝」「悪いことはしていない」と思う人もいるかもしれませんが、気をつけましょう。

前科がつくことによる影響の可能性

有罪判決が下された場合に「前科」というものが付いてしまいます。前科は、自分で言わなければ一般の人に広く知られるものではありません。

しかし、これから就職をしようと考えている人や転職を考えている人は、履歴書の「賞罰欄」に記載をしなければいけません。前科があることにより、今後の就職・転職に大きな影響を与える可能性もあるでしょう。

恫喝で逮捕された場合の対処法

恫喝で逮捕されてしまった場合は、以下の対処法を検討してください。

  • 弁護士に相談をする
  • 真摯に反省する
  • 被害者と示談交渉を行う

次に、恫喝で逮捕されてしまった場合の対処法についても詳しく解説します。

弁護士に相談をする

初めに弁護士へ相談をしましょう。弁護士は、刑事事件において唯一あなたの味方となってくれる人です。適切に弁護活動を行い、勾留を回避したり勾留を短くしたり、刑罰を軽くしたりするために可能な限りのことを行ってくれます。

また、無料で呼べる弁護人制度もあるため、経済的に弁護士へ依頼するのが難しい人は検討されてみてはいかがでしょうか。

たとえば、逮捕後に一度だけ呼ぶことのできる「当番弁護人制度」というものがあります。逮捕後に一度だけという制限があり、弁護活動を行うというよりは、今後の流れや弁護人制度の説明、アドバイス等を行うためにある制度です。

もう一つは「国選弁護人制度」です。国選弁護人制度は、経済的な事情で自分で弁護人を選任できない人に対して、国で弁護人をつけてくれる制度です。

国選弁護人が選任されるタイミングは、身柄事件の場合は勾留確定後、在宅事件の場合は起訴後となります。そのため、勾留を回避するための弁護活動や起訴を回避するための弁護活動を目的としている人にとっては、タイミングが遅いです。

そのため、基本的には私選弁護人を選任したほうが良いでしょう。私選弁護人の費用は弁護士や事件の内容等によっても異なります。そのため、一度相談をされてみてはいかがでしょうか。初回相談料は、30分〜1時間で5,000円〜10,000円程度が相場です。

真摯に反省する

真摯に反省している態度を示しましょう。とくに恫喝行為は「ついカッとなって言ってしまった」という人が多いです。そのため、発言してしまったことを悔い改め、今後、同じことがないように努力をする必要があります。

取り調べにおいては、言いたくないことは言わなくても良いです。ただ、罪を認めるのであれば、相手に対して非を認め、真摯に対応することがとても大切です。

被害者と示談交渉を行う

可能であれば、被害者と示談交渉を進めておくと良いでしょう。とくに軽微な犯罪の場合は、示談交渉の成立有無によって起訴・不起訴の判断が大きく分かれます。

そのため、被害者に対して謝罪の思いがある場合は、誠意を見せるために示談交渉を進めておくと良いです。

なお、注意点として示談交渉をしたからといって、必ずしも不起訴処分となるわけではありません。あくまでも「被害者の処罰感情がない」という事実が、起訴・不起訴に影響を与える可能性があるというだけです。

また、被害者によっては「断固として示談には応じません」という人もいます。とくに、恫喝を受けて「許せない」という気持ちが強い人は、示談交渉には応じてくれません。つまり、示談交渉は必ずしも万能なものではないため注意してください。

恫喝に関するよくある質問

恫喝に関するよくある質問を紹介します。

Q.警察沙汰になったら前科はついてしまいますか?

A.日本では「有罪判決が確定した時点」で前科として履歴が残ります。

警察沙汰になったとしても、必ずしも前科が付くわけではありません。前科が付くのは「有罪判決が確定した時点」です。

有罪判決が確定するまでには、検察官が事件を起訴して刑事裁判で有罪判決を受け、その判決が確定した時点です。そのため、恫喝で警察沙汰になったとしても直ちに前科が付くわけではありません。その点は安心してください。

また、恫喝が何らかの罪に問われ、仮に逮捕されてしまった場合であっても前科は付きません。逮捕はあくまでも「身柄を拘束して取り調べを行うための手続き」であり、有罪判決ではありません。

なお、刑事事件において起訴された場合は99.9%の確率で有罪判決が下されると言われています。そのため、前科を付けないためには「起訴されないこと」が最重要です。起訴されないためには早期に弁護人を付け、適切な弁護活動を行ってもらうようにしましょう。

Q.怒鳴ったり大きな声をあげたりしたら恫喝になりますか?

A.怒鳴ったり大きな声をあげ、相手が恐ろしいと感じた場合は恫喝になる恐れがあります。

恫喝は「人を脅かして恐れさせること」です。そのため、怒鳴ったり大きな声を出して相手が萎縮し、恐怖心を感じてしまった場合、それは恫喝になり得るでしょう。

ただし、何度もお伝えしている通り恫喝自体が違法になるわけではありません。あくまでも、何らかの犯罪を行った場合に初めて犯罪として成立し、処罰されます。そのため「ついカッとなって大きい声を出してしまった……」と、反省することは大切ですが必ずしも犯罪になるわけではないため覚えておいてください。

Q.脅迫罪と恫喝の違いを教えてください。

A.脅迫罪は「殺すぞ」「殴るぞ」など人の身体等に害を加えることを告知することです。一方、恫喝は「人を脅かして恐れさせること」です。

脅迫罪の成立要件は被害者もしくは被害者の家族に対して、「生命・身体・自由・名誉・財産」について何らかの害を加えると告知した場合に成立する犯罪です。たとえば目の前にいる人に対して「殺すぞ」「殴るぞ」などと発言した場合は、犯罪となり厳しく処罰されます。

一方で、恫喝とは「人を脅かして恐れさせること」です。たとえば、目の前の人に対して「調子に乗るな!」「どうしてこんなこともできないんだ!」と大きな声を出したり脅かしたりすることです。恫喝は犯罪ではないため何らかの処分が下されることはありません。

Q.クレーマーは恫喝になり得ますか?

A.クレーマーが直ちに恫喝行為になるとは考えられません。

恫喝行為は決して許されるべきではありませんが、クレームは大切な行為である場合もあります。クレームとは「苦情」や「改善してほしい点を伝える」といった意味合いがある行為です。

クレームを受ける側に不手際があったケースも多く、必ずしも「クレーム=恫喝」と結びつけることはできません。

ただ、度が過ぎたクレームで相手を萎縮させてしまい、結果的に業務を妨害した場合は威力業務妨害罪や公務執行妨害罪といった犯罪が成立し得ます。そのため、冷静に自分の主張を伝えることがとても大切です。

Q.恫喝をしても罪を犯してなければ逮捕されませんか?

A.恫喝は犯罪ではないため、何らかの処罰が下されることはありません。

恫喝自体は犯罪ではないため、当然逮捕されることもなければ、何らかの処分が下されることはありません。しかし、恫喝をしている人は冷静ではなく、ついきつい言葉を発してしまうケースが多いです。この場合、無意識に脅迫をしてしまっている可能性もあるため注意が必要です。

また、職場内で行われる恫喝行為は、いわゆる「パワハラ」に該当します。現在は、パワハラ防止法という法律も施行されています。パワハラ防止法に罰則規定はないものの、指導等が行われるケースもあるため注意しなければいけません。

まとめ

今回は、恫喝の犯罪について解説しました。

恫喝は「人を脅かして恐れさせること」という意味です。また、刑法上「恫喝罪」という罪状はないため、直ちに何らかの罪に問われることはありません。

しかし、恫喝をしたうえで金銭を要求したり強要したりした場合は、恐喝罪や強要罪といった犯罪が成立することになるため注意しなければいけません。また、職場等での恫喝は、パワハラ防止法により指導の対象となる可能性もあります。

恫喝は、ついカッとなって大きな声を出したり怒鳴ったりしてしまう行為です。決して許される行為ではないものの、現状では罪に問われることはありません。

「罪に問われないから行っても良い」というものではないでしょう。また、頭に血が昇っている状態で恫喝をすると、脅迫に当たる言葉を発してしまう可能性もあります。そのため、今回解説した内容を踏まえ、誤った発言等がないようにくれぐれも注意しましょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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