過剰防衛とは「正当防衛の範囲を超えた防衛行為」です。過剰防衛が認められた場合は、罪の減刑もしくは免除となります。しかし、一歩間違えれば自分自身が何らかの罪に問われてしまうため注意しなければいけません。
今回は、過剰防衛の定義や正当防衛との違いについて詳しく解説します。過剰防衛の基準や正当防衛について知りたい人はぜひ参考にしてください。
目次
過剰防衛とは
過剰防衛とは、正当防衛の範囲を超えた防衛行為を指します。過剰防衛が認められた場合は、たとえ自分や自分の家族、財産等を守るために行われた行為であっても罪に問われる恐れがあるため注意しなければいけません。
まずは、過剰防衛とはどういったどういった罪なのか、過剰防衛が認められた場合はどの程度の刑罰が下されるのかについて詳しく解説します。
正当防衛の範囲を超えた防衛行為
過剰防衛とは、「正当防衛の範囲を超えた防衛行為」のことです。正当防衛とは、「自分または他人の権利を守るために行った行為は罰しない」というものです。
たとえば、「家の中にナイフを持った泥棒が入ってきて殺されそうになった」という場面で、あなたが反撃をした場合は正当防衛が認められるでしょう。「自分の権利を守るための行為」と認められるため、正当防衛となる可能性が高いです。
ただ、反撃の程度が過剰である場合は、過剰防衛となる恐れがあるため注意しなければいけません。正当防衛は、あくまでも必要最小限の反撃に止める必要があるのです。
たとえば、上記例で泥棒に入ってきた人が家主が在宅していることに気付き、その場を逃げようとしたとしましょう。相手が逃げようとしているにも関わらず、あなたは泥棒に入られたことに腹を立て、窃盗犯を包丁で刺して殺してしまった場合です。
上記は極端な例ではありますが、正当防衛は認められず、過剰防衛となる可能性があるため注意しましょう。
過剰防衛となる理由は「相手が家主の在宅に気付いてその場を逃げようとしている」この時点で、防衛する必要がないためです。もし、今後も狙われる可能性があると考えるのであれば、防犯対策を行うべきです。
また、そもそも「自分または他人の権利を守るための行為」であった場合に正当防衛が認められます。そのため「窃盗犯がその場から離れようとしている」時点で、「自分または他人の権利は守られている」と解釈するのが通常です。
それにもかかわらず、「泥棒に入ってきた犯罪者だから」や「許せないから」といった理由で包丁で刺して殺してしまう行為は不法行為であると認めざるを得ません。最悪の場合は、殺人罪や殺人未遂罪が適用される恐れもあるため注意しましょう。
過剰防衛となった場合は、刑の減刑・免除される
過剰防衛が認められた場合は、罪に問われる可能性があります。たとえば「正当防衛の目的を持って相手を殴ってしまった」というケースであれば、傷害罪に問われます。「空き巣飯を殺意を持って包丁で刺した」というケースであれば、殺人未遂罪や殺人罪が成立します。
ただし、犯罪としては成立するものの、その刑は情状によって減刑もしくは免除される場合もあるため覚えておきましょう。
過剰防衛は「過剰な防衛行為」であり、過剰防衛を行ってしまった人は上記のとおり罪を犯したことになります。しかし、その行為を行った背景などの事情を考慮したうえで、「過剰ではあるけど仕方がない」というケースは刑の減刑もしくは免除されるということです。
たとえば、女性が帰り道に「体の大きい男の人に襲われた」という場面があったとしましょう。ところが女性は格闘技の経験者であり、相手の男性を殴って大怪我をさせてしまったようなケースです。
上記例の場合は、女性の正当防衛が認められる可能性はあるものの、過剰な防衛行為であった場合は過剰防衛に問われます。しかし、女性が「驚いて咄嗟に手を出してしまった。動いていたので怖くなって動けなくなるまで殴ってしまった」というようなケースです。
「無我夢中」という言葉がありますが、実際に襲われると恐怖心を感じ「この程度なら正当防衛だろう」「これはやりすぎだ」などと冷静に判断することはできません。そのため、多少過剰に行ってしまった行為であれば、その事情などを考慮して刑の減刑もしくは免除されることになります。
過剰防衛で問われる罪とは
過剰防衛によって問われる可能性のある犯罪は以下のとおりです。
- 暴行罪
- 傷害罪・傷害致死罪
- 殺人罪・殺人未遂罪
次に、過剰防衛で問われる可能性のある犯罪と法定刑について詳しく解説をします。
暴行罪
暴行罪とは、刑法208条に規定のある犯罪であり、以下のとおり明記されています。
(暴行)
第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。引用元:刑法|第208条
暴行を加えた結果、傷害にまで至らなかった場合に暴行罪が成立します。傷害とは傷を付けたりケガをさせたりすることを指します。
暴行罪が成立する例は以下のとおりです。
- 押しのける
- 胸ぐらを掴む
- 軽く平手打ち
等々
正当防衛や過剰防衛の話をするうえで、上記のような「暴行罪」が成立するケースはあまりありません。なぜなら、そもそも暴行罪は「暴行の結果、傷害まで至らなかった場合」に成立する犯罪であるためです。
正当防衛や過剰防衛の場合、「襲われたから相手を押しのけてその場を逃げた」という場面はよくあることです。そして、この事実が過剰防衛として認められるケースはほぼありません。
傷害罪・傷害致死罪
過剰防衛はその罪が成立するため、傷害罪もしくは傷害致死罪が成立する可能性があります。傷害罪とは、暴行の結果人にケガを負わせた場合に成立する犯罪です。傷害致死罪とは、結果的に人を死亡させてしまった場合に成立する犯罪です。
それぞれ、刑法に低下のとおり明記されています。
(傷害)
第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。引用元:刑法|204条
(傷害致死)
第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。引用元:刑法|205条
たとえば、あなたの住む家に空き巣が入っていたとしましょう。あなたの帰宅に気付いた空き巣犯は急いで何も取らずにその場を立ち去ろうとしましたが、あなたは空き巣犯を取り押さえて殴り、ひどい傷害を負わせてしまったと仮定します。
まず、空き巣犯は「あなたの帰宅に気付いて何も取らずにその場を離れようとしている」という時点で、正当防衛の要件を満たしていません。それにもかかわらずあなたが空き巣犯を取り押さえ、傷害を負わせた場合に傷害罪が成立します。
また、傷害の結果空き巣犯が死亡してしまった場合、あなたは傷害致死罪という犯罪によって処罰されることになります。ただし、過剰防衛が認められた場合は、刑が減刑されたり免除されたりする可能性はあります。
とはいえ、上記例の場合は「正当な防衛である」とは言えません。また、たとえ防衛行為であったとしても、必要以上に殴って傷害を負わせている以上、あなた自身も罪に問われる可能性があるため注意しなければいけません。
殺人罪・殺人未遂罪
過剰防衛は、殺人罪もしくは殺人未遂罪が成立する可能性もあります。それぞれの法定刑は以下のとおりです。
(殺人)
第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。引用元:刑法|第199条
(未遂罪)
第二百三条 第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。
引用元:刑法|第203条
殺人罪は「人を殺した場合」に成立する犯罪です。殺人未遂罪は「人を殺そうとしたとき」に成立する犯罪です。殺人罪、殺人未遂罪はいずれも「殺意を持っていること」が条件です。
たとえば「自宅に空き巣が入り、空き巣犯を取り押さえて包丁で刺した」という事実であっても、刺した側に「殺意(殺そうとする意思)」がなければ殺人罪は成立しません。つまり、「殺意はなく、自分や自分の財産を守るためにやむを得ず刺した」という状況であれば、傷害罪に問われることになります。
たとえば、急迫不正の侵害が迫っている状況であれば、「護身用のナイフで刺した」という状況でも正当防衛は認められやすいでしょう。一方で、客観的に見て急迫不正の侵害がない場合は、殺人罪や殺人未遂罪に問われる可能性もあるため注意しましょう。
正当防衛の成立要件
過剰防衛とは、正当防衛の範疇を超えて過剰に防衛した場合に認められ、あなたは罪に問われてしまいます。そのため、そもそも正当防衛はどういった場合に成立するのかを把握しておく必要があります。
次に、正当防衛が成立するための3つの要件について以下のとおり解説します。
- 急迫不正の侵害
- 防衛する意思
- 防衛をするための必要最小限の行為であること
それぞれ詳しく見ていきましょう。
急迫不正の侵害
正当防衛が認められるためには、大前提として「急迫不正の侵害」がなければいけません。急迫不正の侵害とは、「他人の不法行為によって自分もしくは他人の財産が侵害されているとき」です。
たとえば、「夜道を歩いていると、後ろから襲われた(襲われそうになった)」場合は急迫不正の侵害が発生していると考えられます。このように、自分もしくは他人が誰かの不法行為によって何らかの被害を受けようとしているという前提がなければいけません。
上記前提がなく相手に暴行を加えた場合は、暴行罪や傷害罪あるいは殺人罪等の罪に問われることは前述のとおりです。簡単に言えば「自分もしくは他人を守るための行為であった」という前提が必要であるということです。
また、急迫不正とは「現時点で不法行為が行われて自分の身体もしくは財産が侵害されている」もしくは「上記状況が差し迫っている」という状況でなければいけません。
そのため、たとえば「〇〇に殺されるかもしれない……」と思ってやってしまった行為であっても、実際に急迫不正の状況が認められなければ正当防衛は成立しません。
具体的には「違法薬物を使用して幻覚を見ており、実際はあり得ないのに『殺されるかもしれない』と勝手に思い込み、相手方に傷害等を与えた」という場合です。この場合は、当然正当防衛は成立しません。
つまり、正当防衛が成立するためには、実際に急迫不正の侵害が認められているという前提条件がなければいけません。
防衛する意思
正当防衛が認められるためには「防衛しよう」とする意思がなければいけません。たとえば空き巣犯と出くわしてしまった人が「なぜ私の家にいるんだ!」と言って腹を立てて暴行した場合は正当防衛が認められません。
一方で、「このままでは自分の身体もしくは財産が危ない!守らなければ!」という意思があって行動した場合は正当防衛が認められます。このように「防衛をする意思」がなければ正当防衛は成立しないため注意して下さい。
防衛をするための必要最小限の行為であること
正当防衛が認められるためには、必要最小限の防衛行為であることが条件です。たとえば、空き巣犯と出くわしてしまい、空き巣犯が何も取らずにその場を逃げようとしているにも関わらず、追いかけて取り押さえ、暴行を加える行為は「必要最小限である」とは言えません。
また「防衛をする必要性」がなければいけません。上記例で言うと窃盗犯は「何も取らずに逃げようとしている」ため、防衛する必要性はないでしょう。なぜなら、守るべきものがないからです。
このように、正当防衛が認められるためには必要最小限の行為であることと防衛の必要性が認められることが必要です。
相手が逃げようとしているにも関わらず、あえて取り押さえて暴行を加えるような行為は決して許されません。ただし、「ただ取り押さえる」という行為であれば正当性は認められます。
なぜなら、相手は「窃盗未遂罪」という罪を犯しているため、私人逮捕の要件を満たしているためです。取り押さえに必要な最小限の行為であれば、正当防衛や過剰防衛といった話にはならないでしょう。
上記範疇を超えた場合は過剰防衛となる
これまでに正当防衛が成立するための3つの要件について解説しました。上記3つの要件を満たしていない場合は、正当防衛は成立しません。また、過剰防衛も成立しません。
過剰防衛は、あくまでも正当防衛の前提があり、そのうえで範疇を超えてしまった場合に認められます。そのため、相手からの不法行為があったとしても「急迫不正の侵害」「防衛の意思」があり、そのうえでやり過ぎてしまったような場合に過剰防衛が認められます。
過剰防衛は、刑の減刑や免除される可能性があります。また、正当防衛が認められれば、罪に問われることはありません。
実際に「急迫不正の侵害」が迫っている状況下で冷静に「ここまでなら正当防衛が認められるだろう」と判断できる人はいません。そのため、「急迫不正の侵害があるか」「防衛の意思があるか」といった点を覚えておくと良いでしょう。
正当防衛・過剰防衛の基準
正当防衛と過剰防衛の基準は、簡単に言えば「やりすぎかどうか」です。前提として急迫不正の侵害があり、そのうえで防衛の意思を持って行ったことであれば、本人からすると正当防衛でしょう。
ただ、客観的に見て「やりすぎ」と判断された場合は過剰防衛として何らかの罪に問われてしまう可能性があります。次に、正当防衛と過剰防衛の基準について詳しく解説します。
防衛行為に正当性が認められるか
正当防衛が認められるためには「防衛の正当性」を認めさせる必要があります。たとえば、街中で急に襲われた場合、そのまま対抗するのではなく「逃げることはできなかったのか?」がポイントになります。
もし、走って逃げられる状況なのであれば、あえて対抗はしないでしょう。対抗をすることによって自分も怪我をする恐れがあるため本末転倒です。
あえて対抗して自分から怪我をしに行ったような場合へ、喧嘩両成敗として両方が処罰される可能性もあります。喧嘩では「どちらから手を出してきた」ということは関係ありません。
正当防衛が認められるためには、「その他の方法がなかったのか?」「防衛行為の正当性はどうなのか?」が大きなポイントとなります。
体格差・年齢・武器の有無
正当防衛と過剰防衛の基準は、体格差や年齢、武器の有無によっても異なります。たとえば、一般的には女性よりも男性の方が力は強いです。そのため、「女性に襲われたから暴行を加え、自己防衛した」というようなケースでは過剰防衛となる可能性があります。
もちろん、性別だけでは判断できない物であるため、実際に過剰防衛となるかどうかはケースバイケースです。
また、極端な例で言うと「大人が小学生に襲われた」という事例の場合、一般的に小学生はまだ成長期の子どもであるため、体格差があるでしょう。もし、襲われたという事実があっても、相手に暴行を加えてしまえば「やりすぎ(過剰防衛)」として認められる可能性もあるため注意しなければいけません。
過剰防衛で逮捕された場合の流れ
過剰防衛が認められた場合は、何らかの罪に問われる可能性があります。次に、万が一過剰防衛で逮捕された場合の流れについて詳しく解説します。
逮捕
過剰防衛が認められた場合、何らかの罪に問われる可能性があります。たとえば「傷害罪・傷害致死罪」や「殺人罪・殺人未遂罪」といった犯罪になり得る可能性があります。
もし、過剰防衛となった場合であっても初めに逮捕されてしまう可能性があるため注意しなければいけません。
そもそも逮捕とは、罪を犯したと疑われる人の身柄を拘束し、取り調べを行うための手続きです。そのため、罪を犯したからといってすべての人が必ずしも逮捕されるわけではありません。逮捕されるためには、重大な犯罪であることや証拠隠滅・逃亡の恐れがあるなど一定の条件を満たしていなければいけません。
過剰防衛の場合は、傷害罪や殺人罪など重大な事件であるケースが多いです。また、逮捕当時は「過剰防衛なのかどうか」といった点がわからないケースも多く、とりあえず逮捕をして取り調べを行うことも珍しくはありません。
逮捕されると逮捕から48時間以内に検察官へ事件を送致しなければいけません。この間は警察官から取り調べを受けることになるため、あなたは正当防衛について主張していくことになるでしょう。
勾留請求
検察官へ事件が送致された場合、送致から24時間以内に引き続き被疑者の身柄を拘束する必要があるかどうかを判断します。もし、勾留の必要があると認められた場合は、被疑者を裁判所へ連れていき、裁判所からの勾留質問を経て勾留するかどうかを裁判官が決定する流れです。
もし、正当防衛が認められたり過剰防衛が認められたりした場合は、身柄の拘束を行わずに在宅事件として扱うケースも多いです。在宅事件となった場合は、直ちに身柄は釈放されて社会へ戻れます。
ただ、勾留請求が認められてしまった場合は、初めに10日間の身柄拘束が行われます。さらに、実務上は延長が認められるケースが多く、プラス10日間の合計20日間の身柄拘束となる可能性があるため注意してください。
ここまでで、逮捕から勾留で最長23日間の身柄拘束が発生する可能性があります。自分は正当防衛だと思っていても、犯罪が成立する可能性があるため注意しましょう。
起訴・不起訴の判断
勾留請求が認められた場合は、勾留期間中に検察官は起訴・不起訴を判断しなければいけません。在宅事件の場合は、期間に定めがないもののおおよそ2カ月程度で起訴・不起訴の判断が行われます。
起訴された場合はそのまま刑事裁判を受けることになりますが、正当防衛もしくは過剰防衛が認められた場合は、刑が免除される場合があります。そのため、状況次第では不起訴となることもあります。
ちなみに、日本の刑事裁判では起訴された場合は99.9%の確率で有罪判決が下されると言われています。有罪判決が下された場合は、前科として履歴が残ってしまうため注意しなければいけません。
そのため、前科を残さないためにも早期に弁護士を付け、正当防衛を主張していったほうが良いです。
刑事裁判を受ける
起訴された場合は、そのまま刑事裁判を受けることになります。刑事裁判で正当防衛が認められた場合は、無罪判決となる可能性もあるでしょう。しかし、日本の刑事裁判では起訴された場合は99.9%の確率で有罪判決が下されると言われています。
とくに、過剰防衛となった場合は刑の減刑はあるかもしれませんが、無罪放免となるケースは少ないです。
判決に従って刑に服する
有罪判決が確定した場合は、その刑罰に従って刑に服することになります。懲役刑であれば、一定期間刑務所に収容されて刑務作業を行います。
罰金刑であれば、罰金を納付してその事件は終了します。とくに傷害罪の場合は過剰防衛が認められれば罰金刑で済む可能性が高いです。いずれにせよ、確定した刑罰に従って罪を償うことになります。
正当防衛を主張するためにできること
正当防衛と過剰防衛は、客観的に見て判断されるものです。自分では「正当防衛である」と思っていても客観的に見ると「過剰防衛である」と判断されてしまうケースも少なくはありません。
次に、正当防衛を主張するためにできる2つのことについて詳しく解説します。
弁護士に相談をする
何らかの犯罪の疑いをかけられてしまった場合は、できれば弁護士に相談をしましょう。とくに正当防衛を主張する場合は、弁護士による弁護活動が今後の処分や判決に大きな影響を与える可能性が高いです。
弁護士は、逮捕された場合は一度だけ無料で呼ぶことができる「当番弁護人制度」というものがあります。この制度は、逮捕後に一度だけという制限があるうえに、今後のアドバイス等を行うためであり、弁護活動を行うものではありません。
そのため、経済的な余裕がある場合は私選弁護人を選任するのが好ましいです。私選弁護人は自分でお金を支払わなければいけませんが、早期に適切な弁護活動を行ってもらえる点がメリットです。
とくに、先ほども解説したとおり起訴された場合は99.9%の確率で有罪判決が下されます。そのため、「起訴されないこと」がとても大切です。
正当防衛を主張する場合は、早期の弁護活動によって不起訴処分となるケースも多いです。そのため、できるだけ早めに弁護士を選任するようにしましょう。
正当性を認めてもらう努力をする
正当防衛は「暴行等を加えているが、その行為は自分または他人の身体・財産を守るための行為であった」ということを主張しなければいけません。
そのため、どうすれば自分の主張を認められるか?について順序立てて説明する必要があります。「急迫不正の侵害があり、こうするしかなかった」という事実を証明しなければいけません。
警察官や検察官はその場にいたわけではないため、状況を知っているのは相手方とあなた、それから目撃者です。ただ、どのように感じたかはあなたしかわかりません。そのため、「〇〇のように感じ、〇〇を行った」と説明をできるよう整理しておく必要があります。
過剰防衛に関するよくある質問
過剰防衛に関するよくある質問を紹介します。
Q.過剰防衛の明確な基準は何ですか?
A.過剰防衛に明確な基準はありません。
正当防衛が認められるかどうかは、司法に関わる人たちで判断をします。たとえば、警察官や検察官、裁判官です。
警察官は初めて捜査を行う人たちであり、原則すべての事件を検察官へ送致しなければいけません。これを「全件送致」と言います。しかし、誰が見ても明らかな場合は検察官へ送致せずに事件を終了させる場合も少なからずあります。
ただ、全件送致の原則に従って、原則事件は検察官へ送致されます。送致された事件は検察官が内容を確認し、必要に応じて取り調べを行い、正当防衛か過剰防衛かあるいはただの犯罪なのかを判断します。
この時点で「正当防衛」が認められれば、不起訴となって即時釈放されることになるでしょう。これは、担当する検察官によっても異なるため「明確な基準」はありません。
また、仮に起訴された場合であっても裁判官が客観的に見て「正当な防衛行為である」と認めた場合は無罪判決あるいは刑の減刑となります。ここにも「正確な過剰防衛の基準」はありません。
人が判断を下さなければいけない以上、どれだけ中立的な立場を意識していたとしても、考え方等によって判決が分かれてしまうことも少なくはありません。
Q.過剰防衛は悪いことですか?
A.過剰防衛は罪に問われる恐れがあります。
過剰防衛は、客観的に見て「やりすぎな防衛行為」です。そのため、可能であれば過剰と判断する前にやめておくべきでしょう。そのため、良いか悪いかで判断するのであれば、犯罪が成立している以上「悪いこと」と判断せざるを得ません。
Q.自分を守るために一生懸命になり、結果的に過剰防衛になった場合は罪に問われますか?
A.客観的に見て過剰な場合は、過剰防衛となる可能性があります。
実際に急迫不正の侵害を受けている人からすると、冷静に判断をして「〇〇までなら正当防衛」と判断できる人は少ないでしょう。もし、そのような判断ができるのであれば、以下にして逃げることができるか?を考えるでしょう。
しかし「正当防衛の範疇を超えてやりすぎた場合」は、過剰防衛になってしまうため注意しなければいけません。
たとえば、反撃をして相手が怯んだ場合、真っ先にあなたは逃げるべきでしょう。しかし、逃げることをせずにさらに攻撃をしたような場合に過剰防衛が認められます。
よって、一般的に見て自分を守るために一生懸命になって行ったことであれば、直ちに犯罪になるとは考えにくいです。
Q.「やられたからやり返す」は過剰防衛になりますか?
A.「やられたからやり返す」は、正当防衛および過剰防衛にはなりません。
正当防衛や過剰防衛が認められるためには、急迫不正の侵害があって防衛の意思があることが前提です。そのため、「やられたからやり返す」だけでは、急迫不正の侵害や防衛の意思は認められません。つまり、そもそも防衛行為ではないと判断されます。
よって、暴行罪や傷害罪等の罪に問われる可能性があります。また、実際に相手からの被害も受けている場合は相被疑として両者が処罰の対象になるため注意してください。
Q.誤想過剰防衛とは何ですか?
A.勘違いをして防衛を行うことを「誤想過剰防衛」と言います。
誤想過剰防衛とは、実際には急迫不正の侵害が迫っていないにも関わらず「迫っているのではないか」と勘違いをして防衛を行った場合の言葉です。たとえば、何もしていないにも関わらず「私はAに殺される。だから、殺される前に私がAを殺さなければ!」と思い込み、実際に行動した場合に成立します。
誤想過剰防衛は、薬物による影響や心の病気、上記例で言うとAからのこれまでの被害状況等によって発生し得ます。誤想過剰防衛はその状況等を考慮して罪に問うかどうかを判断します。
まとめ
今回は、過剰防衛について解説しました。
過剰防衛は「正当防衛の範疇を超えた行為」であり、過剰防衛となった場合は何らかの罪に問われてしまう可能性があるため注意しなければいけません。過剰防衛となった場合は、刑の減刑もしくは免除となります。
しかし、起訴されて有罪判決が下されてしまう可能性もあるため注意しなければいけません。自分が行った行為を正当化するのであれば、可能な限り早期に弁護士へ相談をしたうえで正当防衛を主張していきましょう。